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== 副作用 ==
== 副作用 ==
めまいと吐き気が頻発する。高プロラクチン血症はほとんど起こらない。<ref name="pmid18254107">{{cite journal |author=Bhattacharjee J , El-Sayeh HG . |title=Aripiprazole versus typicals for schizophrenia. |journal=Cochrane Database Syst Rev. |volume=1 |pages=CD006617 |year=2008|month=1|day=23 |pmid=18254107|doi=10.1002/14651858.CD006617.pub3}}</ref>。

成人で10%以上発生する副作用は、体重増加、頭痛、動揺、不安、不眠、吐き気、便秘、立ち眩み。
成人で10%以上発生する副作用は、体重増加、頭痛、動揺、不安、不眠、吐き気、便秘、立ち眩み。
子供では眠気、食欲増加、鼻詰まり。
子供では眠気、食欲増加、鼻詰まり。

2015年10月31日 (土) 03:31時点における版

アリピプラゾール
Aripiprazole.svg
Aripiprazole-3d-ball-model-V.png
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
ライセンス EMA:リンクUS FDA:リンク
胎児危険度分類
  • C
法的規制
  • 処方せん医薬品、劇薬
投与方法 経口(錠剤、散剤、液剤、口腔内崩壊錠)、筋注**:日本未発売剤形)
薬物動態データ
生物学的利用能87%
血漿タンパク結合>99%
代謝肝臓 - CYP3A4 and CYP2D6
半減期75h (未変化体と同様の活性を有する代謝物OPC-14857 : 94h)
排泄糞、尿
識別
CAS番号
129722-12-9
ATCコード N05AX12 (WHO)
PubChem CID: 60795
DrugBank APRD00638
ChemSpider 54790
KEGG D01164
化学的データ
化学式C23H27Cl2N3O2
分子量448.385
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アリピプラゾール(英:Aripiprazole、商品名:エビリファイ®)は、大塚製薬が発見・開発し、世界60カ国・地域以上で承認されている非定型抗精神病薬の一つである[1]。略称はARP。2006年1月に許可。

2009年、アメリカのFDA自閉症児の癇癪を抑制する作用を承認した[2]。 8週間の短期的データによると、自閉症児は興奮抑制と多動・常動(繰り返し目的のない行動)を示した。副作用に体重増加と鎮静、振戦、よだれがあった。長期的な転機が明確でない[3]


剤形及び規格

  • 錠剤(素錠):3mg, 6mg, 12mg(12mgは2007年に発売)
  • 口腔内崩壊錠:3mg, 6mg, 12mg, 24mg - 2012年5月発売
  • 内用液0.1%(分包):3mL, 6mL, 12mL - 2009年4月発売。飲みやすいようにオレンジ味である[4]
  • 散剤:1%
  • 持続性水懸筋注用:300mg, 400mg

作用機序

明確な作用機序は不明である。

in vitroでのミクログリアの活性化を阻害する。 ミクログリアを賦活するインターフェロン-γ(IFN-γ)との共培養モデルにおけるオリゴデンドロサイトアポトーシスを抑制する。 IFN-γにより活性化されたミクログリアからの腫瘍壊死因子(TNF-α)の生産を阻害する。 ミクログリアにおけるシグナル伝達兼転写活性化因子1(STAT1)の活性化因子のリン酸化を減衰させる。 これらによってミクログリアの活性化によって引き起こされるオリゴデンドロサイトの損傷を低減を通じて抗精神病作用を有し得ることが示唆されている[5]

アリピプラゾールを含む非定型抗精神病薬in vitroにおいて、インターフェロンγで刺激したミクログリアからの一酸化窒素と炎症性サイトカインの放出を大幅に阻害することが実証されている。 ミクログリアの活性化によって誘導されるニューロン損傷はまた、共培養実験により調べました[6]

ミクログリア活性化の阻害を介して抗炎症作用を有することが実証されている[7]

ミクログリアが低下しているマウスは学習記憶に欠陥があることが示されている。ミクログリアの数を一時的に減少させたマウスでは、他のマウスとの社会的接触の減少と同時に、毛づくろい行動の増加が見られ、OCD自閉症スペクトラム疾患のような疾患に見られる繰り返し行動との類似が示唆される[8]

大部分の統合失調症患者は、第二世代抗精神病薬(SGA)による治療中に強迫症状が発現する[9]。 自閉症児はアリピプラゾールにより、興奮抑制と多動・常動(繰り返し目的のない行動)を示した[3]

ドパミン受容体

脳内のドパミン作動性ニューロンが形成する中脳辺縁系および中脳皮質系に作用し、ドパミン刺激を調節する。アリピプラゾールはドパミンのパーシャルアゴニストとしての作用を有し、最大で内因性ドパミン活性の約25%の作用を示す[10]:37。また前シナプスのドパミン自己調節受容体にも結合し、前シナプスにおいてドパミン放出量を調節する作用を有する。このためドパミンシステムスタビライザー(DSS)ともいわれる。

ドパミンが不足している前頭前皮質ではこれを増量させて感情表出能力や無為・自閉などの陰性症状を改善し、またドパミンが過剰に作用している中脳辺縁系ではこれを減少させて幻覚、妄想などの陽性症状を改善する。

また、適度なドパミン活性があるために側座核に作用することで快楽消失などを伴わず、統合失調症患者の物質濫用を防ぐことができる。

セロトニン(5-HT)受容体

5-HT1Aパーシャルアゴニスト

同じ抗精神病薬でSDAに分類されるペロスピロンや抗不安薬であるタンドスピロンと同じ5-HT1A受容体のパーシャルアゴニストでもあり[11]、タンドスピロンが抗うつ作用や抗不安作用を示すことから、アリピプラゾールも同様の効果を発現するとされる。[要出典]
5-HT1Aパーシャルアゴニストは前頭前皮質の血流を改善し、認知機能の向上も期待される[12]

また、タンドスピロンによって、EPSや攻撃性、妄想が軽減したとの報告があり、同様にアリピプラゾールもそのような効果は発現するとされる。[要出典]

この5-HT1A受容体を介した薬理作用から、「ドパミン・セロトニンシステムスタビライザー」と呼ばれることがある[11]

5-HT2Aアンタゴニスト

また、5-HT2A受容体のアンタゴニストとしても高い親和性を有することから、錐体外路症状(EPS)の発現を抑えることが報告されている。これらのドパミン及びセロトニンを介した機序から、陽性・陰性症状の改善と安定化や、従来の定型及び非定型抗精神病薬の副作用であった錐体外路症状をアリピプラゾールは発現しにくいという特徴をもつ。[要出典]


このように、脳内ドパミンシステムにおいては他の抗精神病薬と比較して、有意な特異的作用を有している。だが、2010年現在の日本では統合失調症急性期の薬物療法のファーストチョイスとしてリスペリドンオランザピンが使われることが多い、しかし、アリピプラゾールが統合失調症急性期にファーストチョイスとして使用されることも多くなってきた。[要出典]

アリピプラゾールの秀でた点は、代謝系や鎮静系に関する受容体への親和性が極めて低いことである。しかし、これまでの抗精神病薬ではあまり見られなかった投与初期の不眠や激越、アカシジアなどの副作用が目立つようになった[13]

また、抑うつ状態に対し、抗うつ薬があまり有効でない場合、少量のアリピプラゾールを加えることによって抗うつ効果を増強させることができる症例も報告され、実際の医療現場でも応用されている。

抗うつ薬併用は、アリピプラゾールの作用を増強している。[要出典]

虚偽記載

アメリカ食品医薬品局FDA)は、こうした作用機序を製品ラベルに記載することが、薬物に対する誤解を招くとして警告しています。 特許請求の内容は「アリピプラゾールの作用機序は不明、パーシャルアゴニストの可能性がある。」というものであるため。 特に、双極性障害大うつ病の患者における、エビリファイの作用機序にパーシャルアゴニストの特性が確立されていません。 処方薬推進事務局(OPDP)は、上記で示したFD&C法の違反をやめるよう大塚に要求している。[1]

禁忌・注意

  • 糖尿病またはその危険因子のある者は糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡などが起こる可能性があるため、高血糖の症状に十分注意する。特に喉の渇き、多尿、多食、脱力感などがあった場合は直ちに医師に相談すること。
  • バルビツール酸誘導体等の強い影響下にある者は投与できない。
  • アドレナリンを服用中の者は血圧降下作用が増強する可能性があるため、注意すること。
  • 肝障害のある者は悪化させる場合があるため、慎重に服用すること。
  • 眠気、集中力の低下などが起こる場合があるが(添付文書によると傾眠の副作用は1〜5%未満)、その他の統合失調治療薬と比較すると軽度である(むしろ、アリピプラゾールは前頭葉におけるドーパミン系の活性化により、認知機能を改善する効果が知られている)[要出典]

併用注意

CYP2D6阻害剤との併用でアリピプラゾール血中濃度が2〜3倍に上昇する。それは、パロキセチンフルオキセチンで強く、セルトラリンエスシタロプラムシタロプラムフルボキサミンで弱い。[2]

過量投与

急性過量摂取の子供や大人は、軽度の鎮静から昏睡までの中枢神経系の抑制が明らかになっています。これらの患者におけるアリピプラゾール及びジヒドロアリピプラゾールの血中濃度は、通常の治療レベルの3〜4倍上昇した。これまでに死亡は記録されていない。[3]

離脱症状・依存性

ヒトでの耐性・乱用・身体依存の可能性については検討されていない。サルでの身体依存試験では、突然の投与中止で離脱症状が観察された。[4]

副作用

めまいと吐き気が頻発する。高プロラクチン血症はほとんど起こらない。[14]

成人で10%以上発生する副作用は、体重増加、頭痛、動揺、不安、不眠、吐き気、便秘、立ち眩み。 子供では眠気、食欲増加、鼻詰まり。 不穏、震え、筋肉の強張りなどの不随意運動は成人と子供で報告されているが、割合は少ない。 原因不明の突然死が頻度不明で報告されている。[5]

健常者を対象とした臨床試験では4mgで被験者全員が夜間覚醒を示し、多くが眠気と傾眠を示したとの報告がある。尚、健常者を対象とした臨床試験では6mgが最大用量とみられる。[6]

神経遮断作用がない、ドパミンD2受容体の部分的作動薬であるため、従来の抗精神薬に比べ副作用が少なく安全性は非常に高い。[15] 不眠、神経過敏、アカシジア(じっとしていることができない)、振戦(手足の震え)、不安、体重減少、筋強剛、食欲不振などが報告されている (これらの副作用は添付文書によると5%以上)。また、患者の1〜5%未満ではあるが、うつ状態の誘発、1%未満は躁状態を誘発する可能性がある。

また、本剤は肝臓で代謝されるため、アルコールの摂取は悪影響を与えることがある。そのため、飲酒は控える方が望ましい。

用量・用法

発売当初は以下の用法が推奨された。しかし現在は外来においては1日12mg〜18mgを開始用量として適宜増減する方法が推奨されてきている。

統合失調症の場合、成人に1日6mg〜12mgを開始用量として、1日6mg〜24mg を維持量とする。1回または2回に分けて経口投与し、1日30mgを超えないようにする。なお年齢や症状に応じて適宜減量する。
効果を発揮するまでに約2週間必要なため、2週間以内に増量しないことが望まれる。

また急性期や不安・不眠・焦燥を伴う統合失調症においてはGABA系神経を活性化させるベンゾジアゼピン系薬剤やバルプロ酸ナトリウムの併用が単剤投与より有効である。[要出典]

受賞

脚注

  1. ^ 一般名の語尾は "-azole" となっているが、IUPAC命名法の通り構造式内には「窒素を1つ以上含む複素5員環化合物」が存在せず(存在しているのは複素環式アミンピペラジンである)、アゾールではない。
  2. ^ “FDA Approves Aripiprazole to Treat Irritability in Autistic Children”. Medscape Today. (2009年11月24日). http://www.medscape.com/viewarticle/713006 2010年4月28日閲覧。 
  3. ^ a b Ching H, Pringsheim T (16 5 2012). “Aripiprazole for autism spectrum disorders (ASD).”. Cochrane Database Syst Rev. (5): CD009043.. doi:10.1002/14651858.CD009043.pub2. PMID 22592735. 
  4. ^ 「統合失調症患者が示した aripiprazole 内用液の「飲み心地」に関する検討」『臨床精神薬理』第2号、2011年2月、 283-288 頁。
  5. ^ Seki Y, Kato TA, Monji A, Mizoguchi Y, Horikawa H, Sato-Kasai M, Yoshiga D, Kanba S. (12 2013). “Pretreatment of aripiprazole and minocycline, but not haloperidol, suppresses oligodendrocyte damage from interferon-γ-stimulated microglia in co-culture model.”. Schizophr Res. 151 (1-3): 20-28. doi:10.1016/j.schres.2013.09.011. PMID 24100191. 
  6. ^ Kato TA, Monji A, Yasukawa K, Mizoguchi Y, Horikawa H, Seki Y, Hashioka S, Han YH, Kasai M, Sonoda N, Hirata E, Maeda Y, Inoguchi T, Utsumi H, Kanba S. (7 2011). “Aripiprazole inhibits superoxide generation from phorbol-myristate-acetate (PMA)-stimulated microglia in vitro: implication for antioxidative psychotropic actions via microglia.”. Schizophr Res. 129 (2-3): 172-182. doi:10.1016/j.schres.2011.03.019. PMID 21497059. 
  7. ^ Kato T, Mizoguchi Y, Monji A, Horikawa H, Suzuki SO, Seki Y, Iwaki T, Hashioka S, Kanba S. (7 2008). “Inhibitory effects of aripiprazole on interferon-gamma-induced microglial activation via intracellular Ca2+ regulation in vitro.”. J Neurochem. 106 (2): 815-825. doi:10.1111/j.1471-4159.2008.05435.x. PMID 18429930. 
  8. ^ Yang Zhan, Rosa C Paolicelli, Francesco Sforazzini, Laetitia Weinhard, Giulia Bolasco, Francesca Pagani, Alexei L Vyssotski, Angelo Bifone, Alessandro Gozzi, Davide Ragozzino & Cornelius T Gross. (2014). “Deficient neuron-microglia signaling results in impaired functional brain connectivity and social behavior”. Nature Neuroscience 17: 400-406. doi:10.1038/nn.3641. 
  9. ^ Schirmbeck F, Nieratschker V, Frank J, Englisch S, Rausch F, Meyer-Lindenberg A, Rietschel M, Zink M. (10 2012). “Polymorphisms in the glutamate transporter gene SLC1A1 and obsessive-compulsive symptoms induced by second-generation antipsychotic agents.”. Psychiatr Genet. 22 (5): 245-252. PMID 22531293. 
  10. ^ エビリファイ錠3mg/エビリファイ錠6mg/エビリファイ錠12mg/エビリファイ散1% インタビューフォーム” (2014年1月). 2015年3月27日閲覧。
  11. ^ a b “The antipsychotic aripiprazole is a potent, partial agonist at the human 5-HT1A receptor.”. Eur J Pharmacol (441): pp. 137-140. (Apr 2002). PMID 12063084. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12063084. 
  12. ^ 住吉 大幹「セロトニン1A 受容体と統合失調症患者の認知機能および治療」『臨床精神薬理』第2号、2011年2月、 349-356 頁。
  13. ^ 『今日の治療薬 2011』2011年、837頁。ISBN 978-4524263622 
  14. ^ Bhattacharjee J , El-Sayeh HG . (23 1 2008). “Aripiprazole versus typicals for schizophrenia.”. Cochrane Database Syst Rev. 1: CD006617. doi:10.1002/14651858.CD006617.pub3. PMID 18254107. 
  15. ^ 高橋一志. 向精神薬の今(1)抗精神病薬. 日本医事新報. 2014; 4709:14-21.
  16. ^ [http://www.otsuka.co.jp/company/release/2006/0616_01.html 抗精神病薬 「エビリファイ」 仏プリ・ガリアン(Prix Galien)賞を受賞(大塚製薬ホームページ)2011年7月14日閲覧]

外部リンク