里山資本主義

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里山資本主義(さとやましほんしゅぎ)とは、藻谷浩介NHK広島取材班の共著による著書・造語であり、また両者が提唱する、里山のような身近なところから水や食料・燃料を手に入れ続けられるネットワークを用意しておこうという思想のことである[1]

2013年7月に発売された『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』が反響を呼び、発売3ヶ月で16万部を突破、作家の佐藤優や歌手の加藤登紀子が推薦し、首都圏だけでなく本の舞台となった中国山地など全国で売れている。

2014年の時点で、日本の貿易赤字を悲観している。また、日本は、1人当たりのGDPが世界20位以内の水準であり、失業率も先進国で最低水準であるため、経済成長という刹那的な「マネー資本主義」に陥ってはいけないとしている。

概念[編集]

藻谷浩介が唱える里山資本主義は、「マネー資本主義」の対義語として作られた。著書『里山資本主義日本経済は『安心の原理』で動く』(KADOKAWA(角川oneテーマ21)、2013年)において「お金が乏しくなっても水と食料と燃料が手に入り続ける仕組み、いわば安心安全のネットワークを、あらかじめ用意しておこうという実践」であると述べている。また同書のなかで藻谷浩介は安心のネットワークとお金が地域内を循環するのが「さとやま」であり、これが未来をつくるサブシステムであると述べている。ただし、里山資本主義は、マネー資本主義の否定では決してなく、都会よりも田舎暮らしのほうがいいという単純な話ではないとしている。また、藻谷は「里山資本主義の考え方は、現在のマネー経済だけでなく、日本社会が抱える地域の過疎化、少子化と急激な高齢化という問題を克服する可能性も秘めている」と述べている。藻谷は「普通に真面目で根気のある人が、手を抜きながら生きていける社会が、里山にはある。里山の暮らし方は世界に通用する」と述べている。

様々な普及団体[編集]

里山コンソーシアムは末松弥奈子(ジャパンタイムズ代表取締役会長)を代表とする Japan Times Satoyamaが推進するコンソーシアムは、各地の里山資本主義の実践者たちを支援し、その活動を国内外に紹介してきました。発足から2年がたった今、これからの実践者にとってよすがとなるような記録と考察を残したいという思いのもとにスタートしたのが本書のプロジェクトである。

日本古来・自然由来の資源に、地域で暮らす人々の手によって新たに交換可能な価値を与え、安心で将来性のある地域社会をつくる『里山資本主義』。そのビジョンの実現に向けて実践者を支援するとともに、創刊120年余の歴史を持つジャパンタイムズの紙面・Webサイトや取材網を活用し、日本の地方創生を「Satoyama」を通じて発信している。

里山資本主義の実践と取り組み[編集]

木の燃料利用 きっかけは技術革新として石油缶を再生利用した手作りのエコストーブ(少量の木切れを完全燃焼させて、おいしく煮炊き+暖房)。 広島県庄原市の和田さん(過疎を逆手に取る会)の仲間が発明。 (マネー資本主義から 里山資本主義の時代へ 2014年6月20日より)

木質バイオマスペレットによる発電  集成材工場の副産物(産業廃棄物)である木屑をペレットに 成型し、専用ボイラーで燃やすと、極めて高効率の発電が実現。実際に岡山県真庭市ではペレットは灯油の半額、電力の1割が木からできているとされる。(マネー資本主義から 里山資本主義の時代へ 2014年6月20日より)

耕作放棄地活用 耕作放棄地は無用の土地なではなく先人による多年の土作りにより、肥えた土があると主張(マネー資本主義から 里山資本主義の時代へ 2014年6月20日より) 先人による給水システム造りにより、水もある 。そこで藻谷浩介があげる懸念と実際の問題としてはそれらの土地の多くが狭い棚田で、大規模経営に向かず、担い手は引退 始まっている新たな取り組み(NHK広島制作の番組の中より)。

肉と野菜の例として島根県邑南(おおなん)町「味蔵」「耕すシェフ」。

淡水魚の例として鳥取県八頭町「ホンモロコ養殖」。

牛の放し飼いの例として島根県石見山中「州濱さんの牛乳」。

果実の例として山口県周防大島町「ジャムズガーデン」 。

麦の例として広島県尾道市「おへそカフェ」。

麦の例として 「尾道帆布」 広島県庄原市などがあげられる。

出典[編集]

  1. ^ 藻谷浩介氏が新刊「里山資本主義」 - 読売新聞、2013年9月25日(アーカイブ)

参考文献[編集]

  1. 今週の本棚:伊東光晴・評 『里山資本主義』=藻谷浩介、NHK広島取材班・著毎日jp(毎日新聞) 2013年9月01日
  2. 長薗安浩 ベストセラー解読(週刊朝日) 里山資本主義 著 藻谷浩介、NHK広島取材班BOOK.asahi.com 2013年9月13日
  3. 『里山資本主義』藻谷浩介・NHK広島取材班著 著者インタビューPRESIDENTS ONLINE - プレジデント 2013年11月13日
  4. 里山資本主義が日本社会を救う 藻谷浩介月刊日本 2013年10月28日
  5. 【関西新刊案内】藻谷浩介さん・NHK広島取材班 『里山資本主義』MSN産経west 2013年9月27日
  6. ニュース 本よみうり堂 藻谷浩介氏が新刊「里山資本主義」YOMIURI ONLINE(読売新聞) 2013年9月25日
  7. 「里山資本主義」藻谷浩介とNHK取材班、原価0円で地域再生を目指す新しいモデルがベストセラーにハフィンポスト 2013年10月23日
  8. 『里山が持つ意味 藻谷 浩介さんに聞く 安心の種火、現代に灯そう 豊かさを考え直す」日本経済新聞2014年7月26日夕刊5面
  9. マネー資本主義から 里山資本主義の時代へ 2014年6月20日
  10. (2017) Srividya Hasumi Nemani Fujiwara THE RENAISSANCE OF THE SATOYAMA ~The Sustainable Development and Social Capital Nexus~