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「アラン・ムーア」の版間の差分

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{{Infobox writer
<!-- 英語版の記事 [[:en:Alan Moore]] 16:16, 8 February 2006の版より作成 -->
| name = アラン・ムーア<br>Alan Moore
{{Infobox 作家
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| occupation = [[漫画原作者]][[漫画家]][[小説家]]<br />音楽家、魔術師、神秘家
| genre = SF、一般フィクション、ノンフィクション、スーパーヒーロー、ホラー
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* フィリス・ムーア
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* [[メリンダ・ゲビー]](2007&ndash;)
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'''アラン・ムーア'''(Alan Moore、[[1953年]][[11月18日]] - )は[[イギリス]]出身の[[漫画原作者|漫画家]]・漫画原作者。代表作に『[[ウォッチメン]]』『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』『[[フロム・ヘル]]』などがある。小説の執筆や、舞台でのパフォーマンス活動も行っている。
* [[リーア・ムーア]]
* アンバー・ムーア
}}
}}
'''アラン・ムーア'''(Alan Moore, 1953年11月18日-)は主に[[アメリカン・コミックス|コミック]][[スクリプト (アメリカンコミック)|原作]]で知られる[[イングランド人]]作家。代表作に『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』、『[[ウォッチメン]]』、『[[バットマン: キリングジョーク]]』、『[[フロム・ヘル]]』がある<ref>{{cite web|url=https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/book-deals/article/86238-bloomsbury-acquires-two-book-projects-by-alan-moore.html|accessdate=2022-02-02|title=Bloomsbury Acquires Two Book Projects by Alan Moore|archivedate=2022-02-03 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220203061622/https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/book-deals/article/86238-bloomsbury-acquires-two-book-projects-by-alan-moore.html |publisher=Publishers Weekly|date=2021-05-04}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.thebookseller.com/news/bloomsbury-bags-alan-moores-story-collection-and-five-volume-fantasy-series-1257897|accessdate=2022-02-02|title=Bloomsbury bags story collection and five-volume fantasy series from Alan Moore|publisher=The Bookseller|date=2021-05-04|archivedate= 2022-02-02|archiveurl= https://www.thebookseller.com/news/bloomsbury-bags-alan-moores-story-collection-and-five-volume-fantasy-series-1257897}}</ref>。英語圏では同業者や批評家の間で広く認められており、コミック史上最高の[[漫画原作者|原作者]]とされることがある{{Sfn|Ayres|2021|pp=1–2}}{{Sfn|Parkin|2009|loc=No. 19&ndash;30/2302}}。ポップカルチャーで引用されることが多く{{sfn|Parkin|2009|loc=No.117–126, 181/2302}}<ref name=carter2011>{{cite journal|author=James Bucky Carter |year=2011|title=Introduction: Teaching the Works of Alan Moore|journal= SANE journal: Sequential Art Narrative in Education|volume=1|issue= 2|url= http://digitalcommons.unl.edu/sane/vol1/iss2/1|accessdate=2022-01-22}}</ref>、文芸家や映像作家への影響が大きいことで知られている<ref name=guardianwhy/><ref name=guardiangoodbye>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/books/2019/jul/18/goodbye-alan-moore-the-king-of-comics-bows-out|accessdate=2022-02-02|title=Goodbye, Alan Moore: the king of comics bows out|publisher=The Guardian|date=2019-07-18|archivedate=2022-02-16 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220216094955/https://www.theguardian.com/books/2019/jul/18/goodbye-alan-moore-the-king-of-comics-bows-out }}</ref>。


1970年代後半に英国で漫画家として活動を開始した。原作者に転向して [[:en:2000 AD (comics)|''2000 AD'']] や [[:en:Warrior (comics)|''Warrior'']] などの雑誌に寄稿するようになると、テロリストの主人公がファシズム政権と戦う『Vフォー・ヴェンデッタ』(1982年)や、[[スーパーヒーロー]]・コミックを現代的に再定義する『[[マーベルマン/ミラクルマン|マーベルマン]]』(1982年)で名を挙げた。その後米国の大手出版社[[DCコミックス]]に起用され、『[[スワンプシング]]』誌を皮切りに[[バットマン]]や[[スーパーマン (架空の人物)|スーパーマン]]のようなメジャーなキャラクターを手掛け、在英コミック原作者として初めて米国で成功を収めた{{Sfn|Parkin|2002|p=7}}。オリジナル作品『ウォッチメン』(1986年)は洗練された語りと[[ポストモダニズム|ポストモダン]]なジャンル[[脱構築]]によって高く評価され、「コミックの歴史を通した最高傑作」とも呼ばれている<ref name=csm>{{cite web|url=https://www.csmonitor.com/Books/chapter-and-verse/2012/0201/Watchmen-prequels-provoke-debate-in-comic-book-community|accessdate=2022-03-04|title='Watchmen' prequels provoke debate in comic book community|publisher=The Christian Science Monitor|date=2012-02-01|archivedate= 2021-02-25|archiveurl= https://web.archive.org/web/20210225215225/https://www.csmonitor.com/Books/chapter-and-verse/2012/0201/Watchmen-prequels-provoke-debate-in-comic-book-community}}</ref><ref name=bunshun/>。同作はメインストリーム・コミック{{refnest|「メインストリーム」とは、歴史的にコミックブック出版の主流を占めてきたスーパーヒーロー・ジャンルとその周辺のファンタジーや冒険ものを意味する{{sfn|Ayres|2021|p=215}}。|group=†}}全体の作風を一変させただけでなく、一般読書界からも人気を集め、米国においてコミックの社会的地位が向上する一因となった<ref>{{cite web|url=https://www.bbc.com/culture/article/20160809-watchmen-the-moment-comic-books-grew-up|accessdate=2022-03-04|title=Watchmen: The moment comic books grew up|publisher=BBC|date=2022-03-04|archivedate=2021-04-19 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20210419202545/https://www.bbc.com/culture/article/20160809-watchmen-the-moment-comic-books-grew-up }}</ref>。
== 紹介 ==
子供向けでつまらないものとして退けられがちなアメリカンコミックの世界に、成熟した文学的な感覚を持ち込んだ功績により評価されている。ムーアの実験は、文学からの影響や成人向けのテーマ、挑戦的な題材などの作品内容にとどまらず、独特な効果の採用や、文字と絵の異なる組み合わせなどの表現形式にまで及ぶ。ムーアの作品は、[[ウィリアム・S・バロウズ]]、[[トマス・ピンチョン]]、[[イアン・シンクレア]]などの文学者や、ニューウェーブSF作家の[[マイケル・ムアコック]]、ホラー作家の[[クライヴ・バーカー]]、映像作家の[[ニコラス・ローグ]]など、幅広いジャンルからの影響を受けている。コミックに成人向けのテーマを持ち込んだ先駆的作品『The Adventures of Luther Arkwright(ルーサー・アークライトの冒険)』で知られるイギリスの漫画家[[ブライアン・タルボット]]は、間違いなくムーアの作品に最も大きな影響を与えている。


1980年代末からは[[表現の自主規制]]の是非や[[アメリカン・コミックスにおけるクリエイターの権利|著作権の帰属]]を巡ってDC社と絶縁し、自己出版と小出版社での活動が中心になった。歴史と社会の総体を描いた『フロム・ヘル』(1989年)や、児童文学の古典とポルノグラフィを組み合わせた ''[[:en:Lost Girls (graphic novel)|Lost Girls]]''(1991年)などの実験的作品を発表した後、新興のスーパーヒーロー系出版社[[イメージ・コミック|イメージ・コミックス]]を経て{{仮リンク|アメリカズ・ベスト・コミックス|en|America's Best Comics}}という出版レーベルを立ち上げ、[[ヴィクトリア朝文学]]から登場人物を借りた『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』(1999年)や、神秘学による精神の解放を描いた『[[プロメテア]]』(1999年)など{{sfn|Ayres|2021|p=145}}、創作や集合的想像力をテーマとする作品を残した{{sfn|Ayres|2021|p=115}}。それらの完結とともにコミック原作を引退し、2016年には大部の小説 [[:en: Jerusalem (Moore novel)|''Jerusalem'']] を発表した。
ムーアは、「{{仮リンク|儀式魔術|label=儀式魔術師|en|Ceremonial magic}}でもあり、[[古代ローマ]]の蛇神{{仮リンク|グリュコーン|en|Glycon}}を崇拝している」と主張している。


ムーアは奇人として有名である<ref>{{cite web|url=https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/comics/article/31998-catching-up-with-alan-moore.html|accessdate=2022-03-03|title=Catching Up with Alan Moore|date=2005-11-08|publisher=Publishers Weekly}}</ref>。[[オカルト|神秘主義者]]<ref name="Babcock">{{Cite journal|last=Babcock|first=Jay|date=May 2003|title=Magic is Afoot: A Conversation with Alan Moore about the Arts and the Occult|url=http://www.arthurmag.com/2007/05/10/1815/#more-1815|journal=Arthur Magazine|issue=4|accessdate=2022-02-05}}</ref>、{{仮リンク|儀式魔術|en|Ceremonial magic|label=儀式魔術師}}、[[アナキズム|アナキスト]]<ref name="Heidi, pt1">{{Cite web|url=http://www.comicon.com/thebeat/2006/03/a_for_alan_pt_1_the_alan_moore.html|author=MacDonald|first=Heidi|title=A for Alan, Pt. 1: The Alan Moore interview|date=2005-11-01|website=The Beat|publisher=Mile High Comics/Comicon.com|accessdate=2022-02-18|archiveurl=https://web.archive.org/web/20060505034142/http://www.comicon.com/thebeat/2006/03/a_for_alan_pt_1_the_alan_moore.html|archivedate=2006-05-05}}</ref>でもあり、作品の多くでこれらのテーマを扱っている。神秘学関連の[[アバンギャルド|前衛的]]な[[スポークン・ワード]]公演を行うこともある。自作のハリウッド映画化には否定的だが、その意思に反して『フロム・ヘル』(2001年)、『[[リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い|リーグ・オブ・レジェンド]]』(2003年)、『[[Vフォー・ヴェンデッタ (映画)|Vフォー・ヴェンデッタ]]』(2005年)、『[[ウォッチメン (映画)|ウォッチメン]]』(2009年)などが公開されるに至っている。著作権の所在が争われている一部の過去作の再版では、ムーアが名を出すことを拒んだため '''The Original Writer'''{{翻訳|原著者}}とだけクレジットされている<ref>{{Cite web|url=http://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/why-alan-moore-has-become-650954|title=Why Alan Moore Has Become Marvel's 'Original Writer'|author=McMillan|first=Graeme|website=The Hollywood Reporter|date=2013-10-25|archiveurl=https://web.archive.org/web/20170810092627/http://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/why-alan-moore-has-become-650954|archivedate=2017-08-10|accessdate= 2022-02-18}}</ref>。
ムーアの作品は、これまで数多く映画化、ドラマ化されているが、ムーアはすべての作品において一切の協力を拒んでおり、原作者としてクレジットされる事すら拒否している。例えば『ウォッチメン』は、映画版とドラマ版が作られているが、いずれも作画を担当したデイヴ・ギボンズのみが原作者として表記されている。


== 歴 ==
== 歴 ==
=== 生い立ち ===
=== 生い立ち: 1953-1978 ===
[[ファイル:Northampton_town_centre_-_geograph.org.uk_-_1411176.jpg|左|サムネイル|ムーアが半生を過ごした[[ノーサンプトン]]の中心部。]]
[[1953年]][[11月18日]]、[[イングランド]]地方[[イースト・ミッドランズ]][[ノーサンプトンシャー]][[ノーサンプトン]]にて、[[醸造所]]の労働者アーネスト・ムーアの子として生まれ、[[労働者階級]]が多数を占める街で生まれ育った。ノーサンプトンの中でも特に貧しい土地として知られていたこの故郷をムーアは深く愛し、その土地に住む人々との繋がりを大切にしているとインタビューで答えている。子供時代から[[図書館]]で様々な本を読み耽り、独学で幅広い知識や雑学を身に付けるなど読書や知識収集を好んだ。またコミックや小説などの創作にも興味を示し、[[1960年代]]には既に雑誌の読者欄へ絵や文章を投稿する日々を送っていた。
1953年11月18日に生まれる<ref name=britishcouncil>{{cite web|url=https://literature.britishcouncil.org/writer/alan-moore|accessdate=2022-01-12
|title=Alan Moore - Literature|publisher=British Council|date=2021-11-18|archivedate= 2022-01-11|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220111165536/https://literature.britishcouncil.org/writer/alan-moore }}</ref>。共に暮らす家族は醸造所に勤める父アーネストと印刷労働者の母シルヴィア、弟、そして迷信深いが威厳ある{{行内引用|ヴィクトリア朝風の女家長{{sfn|Groth|1990a|p=58}}}}こと母方の祖母だった{{Sfn|Khoury|2003|p=14}}{{sfn|Parkin|2013|p=23}}。労働者階級の一家は、ムーアの信じるところによると代々[[ノーサンプトン]]に住んでいた{{Sfn|Khoury|2003|p=11}}。放蕩者だった父方の曾祖父は[[カリカチュア]]を嗜んでおり、パブで描いて支払いの代わりにしていたという<ref name=guardianinterview/>。それを除けば芸術や文学とは無縁の家系だった{{Sfn|Groth|1990a|p=59}}。


市内でも特に公共サービスが少なく非識字率も高い地区「バロウズ<ref group=†> The Boroughs、歴史上の borough([[バラ (行政区画)|バラ]])は自治都市を意味する。</ref>」で育つが、そこの住民とコミュニティには愛着を感じていた{{Sfn|Khoury|2003|pp=13–16}}。研究者ジャクソン・エアーズによると、ムーアは労働者階級の育ちを通じて[[共同体主義]]、個人の対等、自主自律の感覚をバランスよく身に着けた{{sfn|Ayres|2021|p=11}}。
一方、正規教育については[[小学校]]の時点までは優等生として好成績を修め、[[:en:Eleven plus exam|Eleven plus exam]]([[初等教育]]修了試験の一種)を経て[[グラマースクール]]に進む許可を得た。しかし奔放なムーアは反抗的な生徒として教師から敵視される存在になり、17歳の時に学内での[[LSD (薬物)|LSD]]密売で放校処分となった。この件についてムーアは「麻薬の売人としてはセンスがなかった」と冗談交じりに回想している。因みにLSDについては人に勧める気はないと断った上で「素晴らしい体験だった」と発言している。
{{Quote|quote=そこが私の教室だった。バロウズで自分に誇りを持つには、まっとうな人間であるしかない。横暴な奴に立ち向かうしかない。それは子供のころの私に深く刻み込まれた。人生の指針としては悪くない。|source=アラン・ムーア(2012年)<ref name=guardianinterview/>}}


5歳で読むことを覚えて{{行内引用|雑食性の読書家}}となり、地元の図書館から本を仕入れた{{sfn|Parkin|2013|p=25}}。スプリング・レイン初等学校に入学するころ{{Sfn|Khoury|2003|p=17}}コミックを読み始めた。初めは [[:en:The Topper (comics)|''The Topper'']] や [[:en:The Beezer|''The Beezer'']] のような英国の週刊コミック誌 だったが、やがて貨物船の[[バラスト|底荷]]として米国から流れてくる『[[フラッシュ (DCコミックス)|フラッシュ]]』『[[バットマン|ディテクティヴ・コミックス]]』『[[ファンタスティック・フォー]]』などを漁るようになった{{Sfn|Khoury|2003|p=31}}{{sfn|Parkin|2013|p=19}}。英国の片田舎での暮らしに比べれば、アメリカン・コミックに描かれる大都市は未来世界のようだった<ref name=allreviewsyanashita/>。自身でもそれらを真似たコミック作品を描き始め、友人に回覧して小銭を集めては子供支援団体に募金したという<ref name=guardianinterview/>{{sfn|Parkin|2013|p=26}}。
===初期の活動===
放校後から数年は清掃会社の掃除夫や革製品工場の職人、ガス会社の作業員など様々な職を転々としていたが、1971年に付き合っていた恋人と一度目の[[結婚]]してから徐々に[[風刺漫画]]家としても活動する様になった。作曲家[[クルト・ヴァイル]]の名をもじったカート・ヴァイルの筆名を用いて、音楽雑誌[[ニュー・ミュージカル・エクスプレス|NME]]などに幾つかの[[アンダーグラウンド・コミック]]風の[[一コマ漫画]]を発表した。ノーザンツ・ポスト紙では、[[ジル・ド・レイ]]の筆名で漫画『Maxwell the Magic Cat(魔法の猫マクスウェル)』を1986年まで週刊連載した。


初等教育の終わりに{{仮リンク|イレブンプラス (試験)|en|Eleven-plus|label=イレブンプラス}}試験に合格し、ノーサンプトン・[[グラマースクール]]への入学資格を得た{{Sfn|Groth|1990a|p=60}}。そこで教育の高いミドルクラス層と初めて出会い、初等学校でトップの成績だったのが最底辺になったことを知って衝撃を受けた{{sfn|Parkin|2013|pp=27-28}}。その後、学校を嫌うようになり、勉強にも興味を持てず、公教育には子供に{{行内引用|規則順守、服従、退屈への順応}}を教え込むための{{行内引用|隠されたカリキュラム}}があると考えるようになった{{Sfn|Khoury|2003|pp=17–18}}。
作画家としては生計を立てられないと見極めを付けたムーアは、原作に専念することを決意し、[[マーベル・コミック|マーベル]]UKの『2000AD』誌と『ウォリアー』誌に漫画原作を投稿した。作画のアラン・デイヴィスと組んだ『Captain Britain([[キャプテン・ブリテン]])』は人気を博し、 ムーアが手掛けた『D.R. and Quinch(D・Rとクィンチ)』や『The Ballad of Halo Jones(ヘイロー・ジョーンズのバラード)』は『2000AD』誌の看板漫画となった。しかし、作者の権利が軽んじられていたことに不満を募らせたムーアは、『Halo Jones』を未完のままにして、1986年に『2000AD』誌を去った。この後のムーアは、複数の出版社を転々と渡り歩くことになる。


1960年代後半から黎明期のコミック[[ファンジン]]で詩やエッセイ、イラストレーションを発表し始め、ファン活動を通じて{{仮リンク|スティーヴ・ムーア (漫画家)|en|Steve Moore (comics)|label=スティーヴ・ムーア}}(血縁なし)など後の共作者の多くと知り合った<ref name=britishcouncil/>{{sfn|Parkin|2013|p=32}}<ref name=quietus>{{cite web|url=https://thequietus.com/articles/04603-alan-moore-interview-unearthing-2 |accessdate=2022-02-08|publisher= The Quietus|title= Hipster Priest: A Quietus Interview With Alan Moore|date=2010-07-13}}</ref>。また自身でも学校で詩の同人誌 ''Embryo''{{翻訳|胚、萌芽}}を発刊した{{sfn|Parkin|2013|p=33}}{{Sfn|Khoury|2003|pp=33–34}}。ムーアの人格形成には[[1960年代のカウンターカルチャー]]が深く根差しており、この時期の作品にも英国のアンダーグラウンド雑誌『{{仮リンク|Oz (雑誌)|en| Oz_(magazine)|label=Oz}}』の影響が強かった{{sfn|Parkin|2013|p=31}}{{sfn|Parkin|2009|loc=No.191/2302}}。
この時期のムーアの『ウォリアー』誌に掲載された主要作品としては、1950年代の[[スーパーヒーロー]]を革新的な方法で復活させた『マーヴェルマン』(北米では版権問題により、『ミラクルマン』と改題された)、近未来の英国[[ファシスト政権]]と戦う無政府主義のテロリストを描く『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』、[[吸血鬼]]と[[人狼]]の一家が登場するコメディ『The Bojeffries Saga(ボージェフリーズ・サーガ)』が挙げられる。


1971年、[[ヒッピー]]文化に交わる中で覚えた[[LSD (薬物)|LSD]]を持ち込んだことが元でグラマースクールを放校された{{sfn|Ayres|2021|p=12}}{{sfn|Parkin|2013|p=38}}{{Sfn|Booker (ed.)|2014|p=711|loc="Moore, Alan" by Eric Berlatsky}}。校長はムーアが{{行内引用|在校生の風紀に悪影響を与える}}から入学させないようにと近隣の学校に通達を出したという{{Sfn|Khoury|2003|p=18}}<ref name=bbcroots>{{Cite news|url=http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7307303.stm|title=Comic legend keeps true to roots|last=Rigby|first=Nic|newspaper=BBC News|date=2008-03-21|accessdate=2022-02-05|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090311235237/http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7307303.stm|archivedate= 2009-03-11}}</ref>。
=== メインストリーム業界における活躍 ===
[[Image:Alan Moore.jpg|thumb|right|アラン・ムーア(2006年)]]
ムーアのイギリスでの活動に注目した[[DCコミックス]]の編集者レン・ウィーンは、1983年にDCの低迷タイトルの一作であった『[[スワンプシング]]』の原作者としてムーアを起用した。ムーアは、基本的な設定を大きく変更し、ホラーとファンタジーの形式によって社会や環境問題を描く実験的なストーリーを描き、たちまち人気作品となる。


{{Quote|quote=LSDは素晴らしい経験だった。人に勧めるつもりはないが、私にとっては、なんというか、現実が確定したものではないという考えを叩きこんでくれた。いつも見ている現実は一つの確かな現実だが、それがすべてではない。まったく違うものが同じくらい確かな意味を持つような、異なる視点が存在する。そう知ることで私は根底から変わった。|source=アラン・ムーア(2003年){{Sfn|Khoury|2003|pp=19–20}}}}
『スワンプシング』を成功させたムーアは、DCから引き続き、さまざまな作品を任される。これらの仕事には[[グリーンアロー]]やオメガマン、『ヴィジランテ』における二編、さらに[[バットマン]]や[[スーパーマン]]の原作が含まれていた。中でも、スーパーマンの最終章として描かれた『[[スーパーマン: ザ・ラスト・エピソード]]』と、悪役ジョーカーのキャラクターを掘り下げ後の作品に大きな影響を与えた『[[バットマン: キリングジョーク]]』は傑作として知られる。


それから数年間はトイレ清掃や{{仮リンク|皮なめし|en|Tanning (leather)|label=皮なめし工}}などの仕事をしながら実家で暮らした<ref name=heraldscotland>{{Cite web|url=http://www.heraldscotland.com/news/13207942.Graphic_Content__from_the_archive___Alan_Moore/|title=Graphic Content: from the archive - Alan Moore|website=HeraldScotland|accessdate=2022-01-11|date=2015-03-30|archivedate= 2022-01-11|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220111170521/https://www.heraldscotland.com/opinion/13207942.graphic-content-archive---alan-moore/}}</ref>。このころは ''Embryo'' を通じて加入した{{仮リンク|アーツ・ラボ|en|Arts Lab|label=ノーサンプトン・アーツ・ラボ}}の例会が数少ない他人との交流の機会だった{{sfn|Parkin|2013|p=42}}。アーツ・ラボはジャンルを問わず芸術家が交流する全国的な[[1960年代のカウンターカルチャー|カウンターカルチャー]]運動で{{sfn|Parkin|2013|pp=42–44}}、ノーサンプトンのグループはせいぜい2–30人程度の無名の集まりにすぎなかったが、ムーアはそこで作詞や劇作、演技に目を開かれた{{sfn|Parkin|2013|pp=42–45}}{{Sfn|Groth|1990a|p=62}}。特に[[ポエトリーリーディング|詩の朗読]]には自分で天分を感じたという。これらの経験は後の執筆や公演活動の基礎となった<ref name=parkin2014/>{{sfn|Parkin|2013|pp=42–45}}。
1986年、代表作である『[[ウォッチメン]]』の連載を開始(作画はデイヴ・ギボンズ)、翌1987年にグラフィックノベルとして一冊にまとめられると、ムーアの名声は揺るぎないものとなった。スーパーヒーローが実在するもうひとつのアメリカ現代史を構築し、核戦争の影に怯える冷戦下の世界での探偵劇が描かれる。『ウォッチメン』に登場するスーパーヒーローはいずれも極めて人間的であり、物語は複数の視点から複雑に描かれている。宿命論や自由意志、倫理観といった、それまでのメインストリーム・コミックにおいて重要視されていなかった哲学的な問題に取り組んでいる。


1970年代にはファンダムとは距離を置くようになっていたが、ヒーローコミックは読み続けていた。多くは凡作だと感じたが、[[ジャック・カービー]]の「{{仮リンク|フォースワールド|en|Fourth World (comics)}}」や[[フランク・ミラー]]期の『[[デアデビル]]』には引きつけられた{{sfn|Groth|1990a|pp=65–66}}{{sfn|Parkin|2013|pp=54–55}}。それ以上に熱中したのはユーモア誌『[[MAD (雑誌)|MAD]]』や{{sfn|Groth|1990a|p=65}}、[[アート・スピーゲルマン]]と{{仮リンク|ビル・グリフィス|en|Bill Griffith}}による [[:en:Arcade (comics magazine)|''Arcade: The Comics Revue'']] 誌だった。後のエッセイでは同誌を{{行内引用|[[アンダーグラウンド・コミックス]]というそもそもの思想のほとんど完璧な到達点}}と呼んでいる{{sfn|Parkin|2013|pp=55–56}}。
同時期の[[フランク・ミラー]]の『[[バットマン: ダークナイト・リターンズ]]』や[[アート・スピーゲルマン]]の『[[マウス (オルタナティヴ・コミック)|マウス]]』、[[ギルバート・ヘルナンデス]]の『[[ラブ・アンド・ロケッツ]]』と並び、『ウォッチメン』は1980年代後半を代表する大人向けのアメリカン・コミックの一冊となり、ムーアはたちまちコミック業界における有名人となった。この注目を嫌ったムーアはファンダム活動を避けるようになり、コミックコンベンションにも長らく参加していない。


1973年の終わりに同じノーサンプトン生まれのフィリス・ディクソンと交際を始め、市内のアパートで同棲した{{sfn|Parkin|2013|p=48}}。その後すぐに結婚してより広いアパートに移り、{{仮リンク|ガス委員会|en|Gas board}}の下請け会社で事務仕事をした{{sfn|Parkin|2013|p=48}}。しかし仕事に満足できず、芸術的な活動で生計を立てようと考えた{{Sfn|Khoury|2003|pp=34–35}}。1977年の秋にフィリスが妊娠すると、赤ん坊の顔を見ると決心が鈍ると考えたムーアは勤めを辞めてコミックを描くことにした{{Sfn|Parkin|2013|p=59}}。
また、『ウォッチメン』は、『スワンプシング』以来のムーアとDCとの確執を更に広げた点でも特筆される。DCはこのシリーズに登場するスマイリーバッジ・セットの限定版を販売したが、このセットはタイアップ商品ではなく景品であると主張し、ムーアとギボンズに対しロイヤリティを支払わなかった。これがきっかけでDCへの不信感をつのらせたムーアは当時進められていた企画『トワイライト・オブ・スーパーヒーローズ』を放棄し、以後DCとは仕事をしないと宣言するに至る。


=== 漫画家としての活動初期: 1978-1983 ===
英国時代の代表作である『マーヴェルマン』はアメリカでは[[イクリプス・コミック]]より(マーベル・コミックからの商標権侵害に対する苦情により)『ミラクルマン』と改題されて再版された。出版社に対するムーアや作画家らの著作権の主張にも関わらず、ムーアのストーリーは終了させられ、『ミラクルマン』のキャラクターは新たな原作者の[[ニール・ゲイマン]]と作画家のマーク・バッキンガムに引き継がれた。『ミラクルマン』のキャラクターに対する法的な所有権は不明確なものとなり、長きにわたって再販されない幻の作品となっていた。21世紀になってようやく再販されたが、ムーアは単行本に自身の名前を出すのを拒否した。
それまでにもアマチュアとしてオルタナティヴ系の媒体に[[コミックストリップ]]を寄稿したことはあった。過去にローカル紙 ''Anon'' に描いた風刺4コマ ''Anon E. Mouse''{{翻訳|アノニーマウス}}は掲載紙の穏健な政治志向に合わず5回で終わっていた(1974&ndash;5年){{sfn|Parkin|2013|p=49}}。1978年2月、アーツ・ラボの人脈を通じてオックスフォードのアングラ隔週刊紙 ''Back Street Bugle'' に ''St. Pancras Panda''{{翻訳|パンダの[[セント・パンクラス駅|セント・パンクラス]]{{refnest|「[[くまのパディントン]]」のパロディ{{sfn|Parkin|2009|loc=No.202/2302}}。|group=†}}}}を無償で寄稿し{{Sfn|Parkin|2013|p=62}}、翌年3月まで描き続けた{{Sfn|Parkin|2013|p=66}}。『MAD』誌に影響を受けた1回10&ndash;15コマのギャグ漫画だった{{Sfn|Parkin|2013|p=62}}。初めて対価を得たのは『[[ニュー・ミュージカル・エクスプレス|NME]]』誌に掲載された[[エルヴィス・コステロ]]と[[マルコム・マクラーレン]]のイラストレーションだった{{Sfn|Parkin|2013|pp=62–63}}。


1979年末から1980年の初めにかけて、コミック原作者の友人スティーヴ・ムーア{{Sfn|Baker|2005|p=20}}と組んで作画を担当し、コミック数編を音楽雑誌 ''Dark Star'' に寄稿した{{sfn|Parkin|2009|loc=No.204–207/2302}}。作曲家[[クルト・ヴァイル]]をもじった Curt Vile{{翻訳|「不愛想で下品な」}}という筆名を使っていた{{Sfn|Booker (ed.)|2014|p=711|loc="Moore, Alan" by Eric Berlatsky}}。このとき作り出したキャラクターに粗暴な[[サイボーグ]]傭兵{{仮リンク|アクセル・プレスボタン|en|Axel Pressbutton}}がいる{{Sfn|Parkin|2013|p=64}}。
ムーアとデヴィッド・ロイドはDCにおいて『Vフォー・ヴェンデッタ』の連載を再開し、『Vフォー・ヴェンデッタ』はフルカラーのグラフィックノベルとして出版された。しかし、DCがコミックにも年齢制限を設けるとした事に対し、ムーアは[[フランク・ミラー]]や[[ハワード・チェイキン]]と共に争い、『Vフォー・ヴェンデッタ』を完結させた後にDCでの仕事を打ち切った。


それからすぐに発行数25万部の音楽週刊誌 [[:en:Sounds (magazine)|''Sounds'']] で{{行内引用|[[レイモンド・チャンドラー|チャンドラー]]を気取った口調の}}探偵が「ロックンロールの死」を調査する[[アンダーグラウンド・コミックス]]風の連載 ''Roscoe Moscow''(1979年3月&ndash;1980年6月)が始まり{{sfn|Parkin|2013|pp=64–65, 68}}<ref>{{cite web|url=http://sequart.org/magazine/8752/alan-moore-roscoe-moscow/|accessdate=2022-01-10|title=Alan Moore’s Roscoe Moscow|publisher= Sequart Organization|date=2008-08-13|author=Andrew Edwards|archivedate=2021-03-01 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20210301110130/http://sequart.org/magazine/8752/alan-moore-roscoe-moscow/}}</ref>、週35[[ポンド (通貨)|ポンド]]の定期収入を確保することができた。しかしそれだけでは生まれたばかりの娘{{仮リンク|リーア・ムーア|en|Leah Moore|label=リーア}}を養うことができず、{{仮リンク|求職者手当 (イギリス)|en|Jobseeker's Allowance|label=失業給付}}を申請して補った{{Sfn|Khoury|2003|p=36}}。同誌では Curt Vile として音楽評やインタビュー記事の執筆も行った{{Sfn|Parkin|2013|p=65}}。''Roscoe Moscow'' が終わると、アクセル・プレスボタンを主人公とするSFパロディ ''The Stars My Degradation''{{翻訳|わが落ち行くは星の群{{refnest|タイトルはSF小説 ''The Stars My Destination''{{small|(邦題: [[わが赴くは星の群]])}}の引用{{Sfn|Booker (ed.)|2014|p=711|loc="Moore, Alan" by Eric Berlatsky}}。|group=†}}}}(1980年7月&ndash;1983年3月)が後を引き継いだ{{Sfn|Parkin|2013|pp=64, 68–69}}{{sfn|Parkin|2009|loc=No.207-212/2302}}。基本的にムーアが一人で描いていたが、連載終盤はライターとして多忙になったためスティーヴ・ムーアに原作を任せた{{sfn|Parkin|2013|p=132}}。これら2作にはすでに特徴的な[[メタフィクション|自己言及性]]、過密な書き込み、凝ったコマ割りが見て取れる{{sfn|Ayres|2021|p=26}}{{sfn|Barlatsky|2011|loc=No. 57/5874}}。
=== インディペンデントでの活動 ===
この後のムーアは、イクリプス・コミックから出版された[[中央情報局|CIA]]による諜報活動の歴史を描いた作品『Brought to Light』(作画/ビル・シェンキェウィッツ)や、ムーア自身により新設された出版社マッド・ラブから出版された、反同性愛法への抗議運動であるアンソロジー『AARGH (Artists Against Rampant Government Homophobia)』などの様々な作品を手掛けた。


1979年からは地元の一般紙 [[:en:Northampton Herald & Post|''Northants Post'']] で[[コミックストリップ]] ''[[:en:Maxwell the Magic Cat|Maxwell the Magic Cat]]''{{翻訳|魔法の猫マクスウェル}}を描き始めた{{sfn|Parkin|2013|p=187}}{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 212–216/2302}}。編集者の注文に応じた子供向け作品で、シンプルな絵で描かれた5コマ漫画だが、政治的テーマや[[シュルレアリスム]]が紛れ込むことがあった{{sfn|Parkin|2013|p=67}}。筆名 Jill de Ray は子供殺しで知られる歴史上の[[ジル・ド・レ]]にかけたものだった{{Sfn|Booker (ed.)|2014|p=711|loc="Moore, Alan" by Eric Berlatsky}}。これによって週10ポンドの増収となり、失業給付を受けずに済むことになった{{sfn|Parkin|2013|p=68}}。同作は長期連載となったが{{Sfn|Khoury|2003|p=36–37}}、1986年に掲載紙が地元コミュニティにおける[[同性愛者]]の立場を否定的に書いたのが理由でムーアによって打ち切られた<ref>Moore, Alan. ''Maxwell the Magic Cat'' (Northants Post, 1979–1986) TPB. Acme Press. 1986–1987. Vol. 1: {{ISBN|978-1-870084-00-0}}. Vol. 2: {{ISBN|978-1-870084-05-5}}. Vol. 3: {{ISBN|978-1-870084-10-9}}. Vol. 4: {{ISBN|978-1-870084-20-8}}</ref>。
漫画家による自費出版の提唱者である[[デイヴ・シム]]の主張に影響され、ムーアはマッド・ラブを通して、[[カオス理論]]や[[ブノワ・マンデルブロ]]の数学的アイデアから着想を得た『Big Numbers』全12章に取りかかった。作画家のビル・シェンキェウィッツは参考写真に大きく依存した画風を用い、第3章はそのぞんざいな作画によりムーアと共同出版社であるツンドラから没にされた。シェンキェウィッツの元アシスタントのアル・コロンビアが彼に代わって第3章を完成させたが、第4章は未だ保留されたままである。現時点(2006年7月)において、『Big Numbers』は最初の2章が出版されたのみであり、シリーズは中断されている。


これらの活動を通して、作画家としての才能に見切りをつけて原作に専念すべきだと考えるようになった{{Sfn|Baker|2005|p=15}}。コミック原作の基本(絵と内容が重複するナレーションは不要、一コマでは一つの出来事しか描かない、など)についてはスティーヴ・ムーアから教わった{{sfn|Parkin|2013|pp=60–61}}。執筆先として英国の主要なコミック雑誌の一つ [[:en:2000 AD (comics)|''2000 AD'']]{{refnest|当時の週間販売部数は12万部だった{{sfn|Parkin|2013|p=102}}。|group=†}}に狙いを定め、人気連載「{{仮リンク|ジャッジ・ドレッド (コミック)|en|Judge Dredd|label=ジャッジ・ドレッド}}」の[[スクリプト (アメリカンコミック)|スクリプト]]を書いて投稿した。同作は{{仮リンク|ジョン・ワグナー|en|John Wagner}}が書いていた時期で、新人の原作者は求められていなかったが、ワグナーの共作者{{仮リンク|アラン・グラント|en|Alan Grant}}はムーアの投稿作に将来性を見て取った{{Sfn|Bishop|2009|pp=75–76}}。グラントに投稿を続けるよう示唆されたムーアは没を出されながらアイディアを送りつけ続け、やがてSF[[読み切り]]シリーズ [[:en:Tharg's Future Shocks|''Future Shocks'']] に定期的に作品が掲載されるようになった{{sfn|Parkin|2013|pp=61, 71}}。''Future Shocks'' は多くのコミック作家が修業時代に携わったことで名高く{{sfn|Ayres|2021|p=28}}、ムーアも後に{{行内引用|本当に、本当に連載が欲しかった。短編は書きたくなかった。… 来る依頼は短い4&ndash;5ページの短編だけで、その中に何もかも詰め込まなければならなかった。でも今になってみれば、ストーリーの組み立て方を学ぶにはこの上ない教育だった}}と回想している{{Sfn|Baker|2005|pp=21–22}}。
ムーアは[[スティーブン・R・ビセット]]編集によるホラー・アンソロジー『Taboo』にも二編の連載作品を寄稿した。1880年代の世界の縮図として[[切り裂きジャック]]事件を描いた作品である『[[フロム・ヘル]]』は、エディ・キャンベルによる煤けたペンとインクの画風で描かれ、完結までに10年を要し、『Taboo』廃刊後も二つの出版社で連載された後に、エディ・キャンベル・コミックからグラフィック・ノベルとして一冊にまとめられた。


=== マーベルUK、''2000 AD''、''Warrior'' : 1980–1986 ===
=== メインストリームへの帰還 ===
ムーアは1980年から1986年まで英国コミックの原作を書き続けた。{{仮リンク|マーベルUK|en|Marvel UK}}、''2000 AD''、''Warrior'' が競うように大量の仕事を依頼してきたという{{Sfn|Khoury|2003|p=57}}。それらはギャグからシリアスまで幅広かったが一貫した作家性を感じさせ、同時代の原作者の中ですぐに頭角を現した{{sfn|Parkin|2013|p=142}}。英国でコミックブック文化が成熟していく時期であり{{sfn|Ayres|2021|p=17}}、伝記作家{{仮リンク|ランス・パーキン|en|Lance Parkin}}は{{行内引用|英国のコミックシーンはかつてないほど盤石になり、読者が歳を重ねても卒業していかないのは明らかだった。コミックはもはや小さい男の子だけのものではなく、ティーンも([[Aレベル]]や大学の学生もいた)読むようになっていた}}と書いている{{Sfn|Parkin|2002|p=20}}。
数年間にわたるメインストリーム外部での活動の後に、ムーアは再び[[イメージ・コミック]]他の出版社でのスーパーヒーロー・コミック業界に舞い戻った。ムーアはかつて彼自身がアメリカン・コミック業界に及ぼした影響が、有害なものであったと感じていた。ムーアの模倣者の多くは、彼の作品の革新的な着想ではなく、暴力性と残虐性のみを模倣していた。スーパーヒーロー・ジャンルでのイノセンスの放擲に対する反論として、ムーアは作画家のスティーブン・R・ビセットやリック・ヴェイチ、ジョン・トートレーベンと共に、マーベル・コミックの初期作品のパスティーシュであるシリーズ『1963』を発表した。


マーベルUKでは1980年から翌年にかけて『{{仮リンク|ドクター・フー・マガジン|en|Doctor Who Magazine|label=ドクター・フー・ウィークリー}}』や『スターウォーズ・ウィークリー』に短編をいくつか書いた。それらのシリーズに関心がなかったため、内容は自己流だった{{sfn|Ayres|2021|pp=27–28}}。やがて『{{仮リンク|ザ・マイティ・ワールド・オブ・マーベル|en|The Mighty World of Marvel|label=マーベル・スーパーヒーローズ}}』誌の連載「[[キャプテン・ブリテン]]」を任された(1982年&ndash;)。前任者デイヴ・ソープのストーリーラインは並行世界{{refnest|ソープとムーアがこの作品で導入した並行宇宙の一つ、「{{仮リンク|アース616|en|Earth-616}}」は後に[[マーベル・ユニバース]]公式の作品世界となった<ref name=rereadcb2/>。|group=†}}を股にかけた散漫なものだったが{{sfn|Carpenter|2016|p=39}}、それを引き継いだムーアは現代的なスーパーヒーロー作品として大団円に導いた<ref name=rereadcb2>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/01/09/the-great-alan-moore-reread-captain-britain-part-2/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: Captain Britain, Part 2|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-01-09|archivedate=2021-12-10 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20211210030157/https://www.tor.com/2012/01/09/the-great-alan-moore-reread-captain-britain-part-2/}}</ref>。残留した作画家{{仮リンク|アラン・デイヴィス (漫画家)|en|Alan Davis|label=アラン・デイヴィス}}については{{行内引用|コミックメディアへの愛とコミックで稼いでいることへの純粋な喜びが、描線、コスチュームデザイン、表情のニュアンス一つ一つからあふれ出している}}と称賛しており<ref name="Moore, Alan 2002">{{Cite book|last=Moore|first=Alan|last2=Davis, Alan|title=Captain Britain|date=1 February 2002|publisher=Marvel Comics|isbn=978-0-7851-0855-9}}</ref>、その後何度も共作している{{sfn|Parkin|2009|loc=No.277/2302}}。
『[[スパイダーマン]]』『[[ドクター・ストレンジ]]』『[[アイアンマン]]』『[[ファンタスティック・フォー]]』『[[アベンジャーズ (マーベル・コミック)|アヴェンジャーズ]]』の初期作品を題材に、ムーアはこれらのコミックを当時のスタイルで、当時の性差別問題や資本主義礼賛を含めて、90年代の読者に紹介した。このシリーズには大規模な広告ページも含まれており、マーヴェルの大袈裟な編集コラムや[[スタン・リー]]の方針を風刺していた。


[[ファイル: Judge Dredd.jpg|左|サムネイル|160px|''2000 AD'' 誌の人気キャラクター、[[ジャッジ・ドレッド]](写真)はタフな法の番人である<ref>{{cite web|url=https://eiga.com/news/20130524/8/|accessdate=2022-02-02|title=原作者と主演俳優が特別映像で「ジャッジ・ドレッド」を語る!|publisher=映画.com|date=2013-05-14|archivedate=2022-02-01 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220201161252/https://eiga.com/news/20130524/8/}}</ref>。ムーアのヘイロー・ジョーンズはその対極のキャラクターだった。]]
『1963』は、主人公達が1990年代にタイムトラベルし、典型的なイメージ・コミックの残忍で暴力的なキャラクターと邂逅するエピソードで終わる筈であった。『1963』のスーパーヒーロー達は、彼らの後継者達の有り様に衝撃を受け、4色印刷からグレイ・シェーディングへの表現形式の変化すらが批判の対象となる。このエピソードはイメージ・コミックと作家チームとの対立のため、実現しなかった。
''2000 AD'' 誌はSFシリーズ ''Future Shocks'' や ''Time Twisters'' でムーアの作品を50編以上掲載した{{Sfn|Bishop|2009|pp=75–76}}<ref>[http://2000ad.org/?zone=droid&page=profiles&choice=ALANM Index of Moore's stories for ''2000 AD''] at 2000ad.org (retrieved 25 July 2020)</ref>。それらは高く評価され、やがて連載の話が回ってきた。それと前後して音楽誌での活動を打ち切り、本格的に原作業に専念することになる{{sfn|Ayres|2021|p=29}}。最初の企画は当時話題だった映画『[[E.T.]]』を模倣しろというものだった。求めに応えて書かれた [[:en:Skizz|''Skizz'']](1983年&ndash;、作画{{仮リンク|ジム・ベイキー|en|Jim Baikie}})は異星人スキズが地球に不時着して少女ロクシーに助けられる物語だが、[[脱工業化社会|ポスト工業化時代]]の失業問題と社会的混乱を基盤としており{{sfn|Ayres|2021|p=29}}、{{行内引用|{{Interp|『E.T.』の[[スティーヴン・スピルバーグ|スピルバーグ]]ではなく、社会派脚本家の}} {{仮リンク|アラン・ブリーズデール|en|Alan Bleasdale}}から多くを借り過ぎた}}作品だという{{Sfn|Bishop|2007|p=94}}<ref name=rereadskizz>{{cite web|url=https://www.tor.com/2011/12/19/the-great-alan-moore-reread-skizz/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''Skizz''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2011-12-19|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015045/https://www.tor.com/2011/12/19/the-great-alan-moore-reread-skizz/}}</ref>。続いて ''[[:en:D.R. & Quinch|D.R. & Quinch]]''{{翻訳|D.R.とクインチ}}(1983年&ndash;、作画アラン・デイヴィス)が連載された。米国のユーモア誌『{{仮リンク|ナショナル・ランプーン|en|National Lampoon}}』の人気キャラクター「O.C.とスティッグス」{{refnest|日本でも映画『{{仮リンク|突撃!O・Cとスティッグス/お笑い黙示録|en|O.C. and Stiggs}}』(1987年、監督[[ロバート・アルトマン]])が公開されている。|group=†}}をSFにしたような、暴力的な宇宙人の不良少年コンビを主人公にしたギャグ作品だった<ref name=rereaddrquinch>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/05/07/the-great-alan-moore-reread-dr-a-quinch/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''D. R. & Quinch''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-05-07|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015041/https://www.tor.com/2012/05/07/the-great-alan-moore-reread-dr-a-quinch/}}</ref>。ムーアは{{行内引用|{{仮リンク|デニス・ザ・メニス・アンド・ナッシャー|en|Dennis the Menace and Gnasher|label=デニス・ザ・メニス}}<ref group=†>米国に同題の別作品『デニス・ザ・メニス{{small|(邦題: [[わんぱくデニス]])}}』がある。</ref>の伝統にならった作品、ただし主人公は熱核融合を操る}}{{Sfn|Bishop|2007|p=99}}といっている。{{仮リンク|イアン・ギブソン (漫画家)|en|Ian Gibson (comics)|label=イアン・ギブソン}}と共作した [[:en:The Ballad of Halo Jones|''The Ballad of Halo Jones'']]{{翻訳|ヘイロー・ジョーンズのバラッド}}(1984年&ndash;)は一般に ''2000 AD'' 誌で連載した作品のベストとみられており{{Sfn|Ayres|2021|p=33}}、自身でも{{行内引用|もっとも上手くいった作品}}と述べている{{Sfn|Khoury|2003|p=58}}。同誌で主流だったバイオレンスSFの形式を反転させて、遠い未来の世界に生きる{{行内引用|特に勇敢でも賢くも強くもない{{sfn|Parkin|2013|p=9}}}}失業者の女性を主人公にしていた{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 476–493/2302}}。一人称の語りは「個人的なものは政治的である」と主張した[[フェミニズム#第二波フェミニズム|第二波フェミニズム]]の流れを汲む自伝的[[アンダーグラウンド・コミック]]から影響を受けていた{{sfn|Parkin|2013|pp=8}}。英国の社会状況を反映した物語は若者の共感を集めた{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 478–480, 490–502/2302}}。


[[ファイル:Guy_Fawkes_portrait.jpg|サムネイル|[[ガイ・フォークス]]は『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』の主人公「V」の外見的・思想的モデルとなった。]]
『1963』に続き、ムーアは[[ジム・リー]]の『WildC.A.T.s』やロブ・ライフェルドの『[[:en:Supreme (comics)|シュプリーム]]』『[[ヤングブラッド]]』『[[グローリー (漫画)|グローリー]]』などの原作を手掛けた。ムーアの手により、『シュプリーム』は、1940年代のモート・ワイジンガー時代の『[[スーパーマン]]』コミックスへの、ポスト・モダン的なオマージュ作品となった。
三つ目の寄稿先は、''2000 AD'' とマーベルUKの編集に関わっていた{{仮リンク|デズ・スキン|en|Dez Skinn}}が1982年に創刊した月刊誌 [[:en:Warrior (comics)|''Warrior'']] である{{sfn|Parkin|2013|pp=79, 95}}。同誌は原稿料が低い代わりに執筆者に作品の著作権を渡す方針を取っており(当時の英語コミックでは異例のことだった){{sfn|Parkin|2013|pp=80–81, 160}}、作家の書きたいものを書かせてくれた{{sfn|Parkin|2013|p=158}}。ランス・パーキンによるとムーアが原作者として本領を発揮するようになったのは ''Warrior'' 誌からである{{Sfn|Parkin|2002|p=21}}。ムーアが創刊号で始めた二つの連載は、テーマと形式の両面で革新的なものだった{{sfn|Ayres|2021|p=13}}。『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』は近未来の英国に舞台を取った[[ディストピア]]・スリラーで、[[アナキズム|アナキスト]]の主人公は[[ガイ・フォークス]]の装束をまとい、テロによって政府を打倒しようとする。作画は{{仮リンク|デイヴィッド・ロイド|en|David Lloyd (comics)}}による。当時の英国首相[[マーガレット・サッチャー]]に対するムーアの失望を反映した作品で<ref name="Heidi, pt1"/>、性的少数者を迫害する[[ファシスト]]国家はサッチャー政権の未来の姿として想像されている{{sfn|Ayres|2021|pp=45–47}}。この作品はムーアの代表作の一つとして長年にわたってカルト的な支持を保つことになる{{Sfn|Parkin|2002|p=22}}。


もう一つの連載『[[マーベルマン/ミラクルマン|マーベルマン]]』は英国で1954年から1963年にかけて刊行されていた同題作品のリブートで、オリジナル版は米国の『[[キャプテン・マーベル (DCコミックス)|キャプテン・マーベル]]』を焼き直したヒーロー物だった{{sfn|Parkin|2009|loc=No.331–335/2302}}。原作を依頼されたムーアは、子供のころ読んだパロディ作品「[[スーパーデューパーマン]]」の影響のもとで{{sfn|Parkin|2013|pp=21, 87}}{{行内引用|[[キッチュ]]な子供向けのキャラクターを1982年の現実世界に置く}}ことを決め、科学と進歩への牧歌的な信頼から生まれた主人公を核テロと直面させた{{Sfn|Parkin|2009|loc=No.335–340/2302}}。作画は主に{{仮リンク|ギャリー・リーチ|en|Garry Leach}}とアラン・デイヴィスが担当した<ref>{{Cite book|last=Khoury|first=George|title=Kimota!: The Miracleman Companion|date=1 September 2001|publisher=TwoMorrows Publishing|location=Raleigh, North Carolina|isbn=978-1-893905-11-5}}</ref>。この作品に込められたリアリズム、ジャンル[[脱構築]]、詩的なナレーションといった手法は後世のスーパーヒーロー・ジャンルに巨大な影響を与えることになる<ref>{{cite web|url=https://www.tor.com/2011/10/31/the-great-alan-moore-reread-marvelman-miracleman-part-1/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''Marvelman/Miracleman'', Part 1 |publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2011-10-31|archivedate= 2022-02-08|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220208151820/https://www.tor.com/2011/10/31/the-great-alan-moore-reread-marvelman-miracleman-part-1/ }}</ref>。遅れて始まった3つ目の連載 ''The Bojeffries Saga''{{翻訳|ボージェフリー家のサガ}}はイングランドの労働者階級として暮らす[[吸血鬼]]と[[狼男]]の一家を主人公にしたコメディで、ムーア自身の子供時代が反映されている{{sfn|Parkin|2009|loc=No.437–440/2302}}{{sfn|Parkin|2013|p=97}}。作画は{{仮リンク|スティーヴ・パークハウス|en|Steve Parkhouse}}による。''Warrior'' 誌は26号で消滅し、これら3作は連載中途で終わったが<ref name="OGWS">{{Cite book|last=Knowles|first=Christopher|others=Illustrated by Joseph Michael Linsner|title=Our Gods Wear Spandex|publisher=Weiser|date=1 November 2007|page=199|isbn=978-1-57863-406-4}}</ref><ref name="RCMB">{{Cite book|last=Bongco|first=Mila|title=Reading Comics: Language, Culture, and the Concept of the Superhero in Comic Books|publisher=Taylor & Francis|date=17 May 2000|pages=182–183|isbn=978-0-8153-3344-9}}</ref><ref name="TBTMP">{{Cite book|last=Khoury|first=George|title=True Brit|publisher=TwoMorrows Publishing|date=July 2004|location=Raleigh, North Carolina|pages=23–25|isbn=978-1-893905-33-7}}</ref>、『Vフォー・ヴェンデッタ』と『ミラクルマン』(法的な問題で『マーベルマン』から改題)は後に米国の出版社に版権が売られて書き継がれることになる。
=== アメリカズ・ベスト・コミックス ===
『WildC.A.T.s』の原作を手掛けた後に、ムーアはリーの企業であるワイルドストームのためのABC(アメリカズ・ベスト・コミックス)の出版ラインを創設した。しかしながら、出版が始まる前にリーがワイルドストームをDCに売却したために、ムーアは不本意ながらも再びDCの傘下で働かざるを得なくなった。ABCでの作品としては、


<!--1982年と1983年に英国コミック関係者の団体{{仮リンク|ストリップ・イラストレーション協会|en|Society of Strip Illustration}}から最優秀原作者に選出されたムーアだったが<ref name=Hahn>[http://www.hahnlibrary.net/comics/awards/american-other.php "Other American <nowiki>[sic]</nowiki> Awards,"] Comic Book Awards Almanac. Retrieved Dec. 11, 2020.</ref>-->ムーアは英国コミック界で成功を収めながら、[[アメリカン・コミックスにおけるクリエイターの権利|クリエイターの権利]]が守られていないことに不満を募らせていた{{Sfn|Bishop|2007|pp=105–106}}。1985年には[[ファンジン]] ''Arkensword'' のインタビューに答えて英国出版社ではもう書かないと宣言した。ただしIPC社を例外とし、{{行内引用|理由は単に、IPCがこれまでウソをついたり、ごまかしたり、そういうクソみたいな扱いをしなかったからだ}}と語った{{Sfn|Bishop|2007|pp=105–106}}<!--Bishop2007の内容は未確認。この位置にこの出典を置くのは、[[:en:Alan Moore]]の旧版(例: oldid=324344609)や、[[:en: Creator's Bill of Rights]]などにならっている-->。しかしその後、同社の ''2000 AD'' が作品の著作権を保有していたことにほかのクリエイターと共同で抗議し、1986年には寄稿を止めた。全9部の構想だった ''Halo Jones'' は第3部までで未完に終わった<ref name=rereadhalo>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/04/09/the-great-alan-moore-reread-the-ballad-of-halo-jones/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''The Ballad of Halo Jones''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-04-09|archivedate=2022-02-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015046/https://www.tor.com/2012/04/09/the-great-alan-moore-reread-the-ballad-of-halo-jones/}}</ref>{{Sfn|Bishop|2007|pp=110–111}}。ムーアは主義主張をはっきり口にする人物で、特に著作権の帰属や創作上の制約については強硬であったため、その後もキャリアを通じて数多くの出版社と絶縁することになる<ref name="Heidi, pt1"/><ref name="Heidi, pt2">{{Cite web|url=http://www.comicon.com/thebeat/2006/03/a_for_alan_pt_2_the_further_ad.html|author=MacDonald|first=Heidi|title=A for Alan, Pt. 2: The further adventures of Alan Moore|date=2005-11-01|website=The Beat|publisher=Mile High Comics/Comicon.com|accessdate=2022-02-18|archiveurl=https://web.archive.org/web/20060419040811/http://www.comicon.com/thebeat/2006/03/a_for_alan_pt_2_the_further_ad.html|archivedate=19 April 2006}}</ref>{{sfn|Parkin|2013|p=159}}。
*『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』(作画/ケヴィン・オニール) - [[アラン・クォーターメイン]]や[[ブラム・ストーカー|ジキル博士とハイド氏、透明人間、ブラム・ストーカー]]の『[[ドラキュラ]]』に登場するヴィルヘルミナ・マリーなど、[[ヴィクトリア朝]]の娯楽小説の登場人物を集合させたパロディ作品。
*『[[トム・ストロング]]』(作画/クリス・スプラウス他) - [[ドック・サヴェジ]]や[[ターザン]]などのスーパーマン以前のスーパーヒーローが題材。
*『[[トップ10]]』([[:en:Top 10 (comics)]])(作画/ジーン・ハおよびザンダー・キャノン)- 超能力者ばかりが住む都市を舞台にした警察物。
*『[[プロメテア]]』(作画/J・H・ウィリアムズ三世)ムーアのオカルティズムへの知識を総動員したファンタジー
*『Tomorrow Stories』


=== アメリカのメインストリーム界とDCコミックス: 1983–1988 ===
=== インディペンデントへの復帰 ===
[[ファイル: NYCC 2014 - Swamp Thing & Poison Ivy (15488238596) (cropped).jpg|左|サムネイル|150px|沼の怪物[[スワンプシング]](2014年の[[コスプレ]])。]]
アメリカズ・ベスト・コミックで企画していた多くの作品が終了すると、DCが自分の作品に干渉していることに不満を募らせていたムーアは、再度コミックスのメインストリームから手を引くことを決意した。
1983年、米国の2大コミック出版社のひとつ[[DCコミックス]]の編集者{{仮リンク|レン・ウィーン|en|Len Wein}}は ''2000 AD'' 誌のムーア作品に注目し{{sfn|Ayres|2021|p=13}}<ref name="WeinDaddy">{{Cite journal|last=Ho|first=Richard|date=November 2004|title=Who's Your Daddy??|journal=Wizard|issue=140|pages=68–74}}</ref>、古臭く不人気なモンスター物だった『[[スワンプシング|ザ・サガ・オブ・スワンプシング]]』の原作を依頼した。ムーアは作画家{{仮リンク|スティーヴン・R・ビセット|en|Stephen R. Bissette}}、{{仮リンク|リック・ヴィーチ|en|Rick Veitch}}、{{仮リンク|ジョン・トートレーベン|en|John Totleben}}らとともにスワンプシングというキャラクターの再創造を行った{{Sfn|Dolan (ed.)|2010|p=206|loc="1980s" by Matthew K. Manning, "Writer Alan Moore was creating a whole new paradigm&nbsp;... Jumping on board ''The Saga of the Swamp Thing'' with issue No. 20, Moore wasted no time in showcasing his impressive scripting abilities. Moore, with help from artists Stephen R. Bissette and Rick Veitch had overhauled Swamp Thing's origin by issue #21."}}。表現様式の実験が行われたほか、性交・月経といったタブーを破る題材や環境問題のような社会的テーマが取り入れられ、シリーズの舞台である[[ルイジアナ州|ルイジアナ]]の文化にも取材されていた<ref name="OGWS"/><ref name="RCMB"/>{{sfn|Carpenter|2016|pp=54, 59–60}}。また同誌で{{仮リンク|スペクター (DCコミックス)|en|Spectre (DC Comics character)|label=スペクター}}などDC社の忘れられていたオカルト関連キャラクターを数多く復活させ{{sfn|Parkin|2013|p=149}}、新キャラクターとして[[ジョン・コンスタンティン]]を登場させた{{Sfn|Dolan (ed.)|2010|p=213|loc="1980s" by Matthiew K. Manning, "John Constantine, the master magician and future star of Vertigo's ''John Constantine: Hellblazer'', was introduced in a Swamp Thing story from writer Alan Moore, with art by Rick Veitch and John Totleben."}}{{refnest|コンスタンティンはイングランドの労働者階級を出自とする魔術師で、後に{{仮リンク|ジェイミー・デラノ|en|Jamie Delano}}の原作で発刊された個人誌『{{仮リンク|ヘルブレイザー|en|Hellblazer}}』は300号を発行する長寿シリーズになり、2005年に[[コンスタンティン (映画)|映画化]]された{{sfn|Parkin|2009|loc=No.559–562/2302}}{{Sfn|Parkin|2009|p=219}}。|group=†}}。ムーアは『スワンプシング』誌を第20号(1984年1月)から第64号(1987年9月)まで4年近く書き続け{{Sfn|Parkin|2002|p=82}}、月間発行部数を1万7千部から10万部以上に伸ばした{{sfn|Parkin|2009|loc=No.604/2302}}。この成功を受けて、DC社は英国から原作者を起用して{{refnest|{{仮リンク|グラント・モリソン|en|Grant Morrison}}、[[ニール・ゲイマン]]など{{sfn|Ayres|2021|p=19}}。| group=†}}、知名度の低いキャラクターに思い切った改作を行わせるようになった<ref name="OGWS" /><ref name="RCMB"/>。研究者グレッグ・カーペンターによると、当時の米国コミックはファン出身の書き手がマニアックなストーリーを再生産する停滞期であり、新しい感覚の流入(ブリティッシュ・インヴェイジョン{{翻訳|英国の侵攻}}と呼ばれた)は影響が大きかった{{sfn|Carpenter|2016|pp=6–7, 12}}。これが米国で「文学的な」コミックを生み出した流れの一つとなった{{sfn|小田切|2007|p=173}}{{sfn|Ayres|2021|p=215}}。


1985年の春からDC社のほかの二線級シリーズに携わり始め、『{{仮リンク|ヴィジランテ (DCコミックス)|en|Vigilante (comics)|label=ヴィジランテ}}』誌には家庭内暴力を扱った前後編を書いた(第17&ndash;18号、1985年){{sfn|Carpenter|2016|p=55}}{{sfn|Parkin|2009|loc=No.595/2302}}。やがて編集部からの評価が高まり、DC最大のスーパーヒーローの一人である[[スーパーマン (架空の人物)|スーパーマン]]を書く機会を与えられた。「{{仮リンク|他に何を望もう|en|For the Man Who Has Everything}}」と題されたエピソードは{{仮リンク|デイヴ・ギボンズ|en|Dave Gibbons}}の作画で1985年に刊行された{{Sfn|Dolan (ed.)|2010|p=214|loc="1980s" by Matthiew K. Manning, "The legendary writer Alan Moore and artist Dave Gibbons teamed up once again with the just-as-legendary Man of Tomorrow for a special that saw Superman&nbsp;... held in the sway of the Black Mercy."}}。完璧な善性と無敵の能力を持つスーパーマンのキャラクターを掘り下げて、心の奥では失われた故郷への思いと普通人として生きる願いを抱いているという心理ドラマを描いていた{{sfn|Carpenter|2016|pp=55–57}}。続いて1986年に大ベテランの作画家{{仮リンク|カート・スワン|en|Curt Swan}}と共作した「[[何がマン・オブ・トゥモローに起こったか?]]」は、『[[クライシス・オン・インフィニット・アース]]』で[[DCユニバース|DC世界]]が全面的にリニューアルされる直前に、旧バージョンのスーパーマンのフィナーレとして企画された記念碑的作品だった{{sfn|Carpenter|2016|p=459}}{{Sfn|Dolan (ed.)|2010|p=220|loc="1980s" by Matthiew K. Manning, "In 'Whatever Happened to the Man of Tomorrow?', a two-part story written by Alan Moore and illustrated by Curt Swan, the adventures of the Silver Age Superman came to a dramatic close."}}<ref>{{Cite journal|last=Mohan|first=Aidan M.|date=February 2013|title=Whatever Happened to the Man of Tomorrow? An Imaginary Story|journal=Back Issue!|issue=62|pages=76–80|publisher=TwoMorrows Publishing|location=Raleigh, North Carolina}}</ref>。『[[グリーンランタン]]』シリーズでも、1985年に「生ける惑星」{{仮リンク|モゴ|en|Mogo}}を登場させたほか{{sfn|Carpenter|2016|p=55}}<ref>{{Cite web|url=http://io9.com/5812496/a-beginners-guide-to-everything-green-lantern|title=A beginner's guide to Green Lantern|first=Alasdair|author=Wilkins|date=2011-06-16|accessdate=2022-02-03|publisher=io9|quote=''DC Universe: The Stories of Alan Moore'' features three absolutely crucial Green Lantern stories: 'Mogo Doesn't Socialize', which introduced everyone's favorite sentient planet.|archivedate=2015-12-09 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20151209092418/http://io9.com/5812496/a-beginners-guide-to-everything-green-lantern }}</ref>、この時期にムーアが同シリーズに導入したアイディアのいくつかが後の世代によって『[[シネストロ・コァ・ウォー]]』(2007年)や「{{仮リンク|ブラッケスト・ナイト|en|Blackest Night}}」(2009年)のような大型ストーリーに発展させられた{{sfn|Parkin|2009|loc=No.592–595/2302}}<ref>{{cite web|url=https://www.cbr.com/dc-ways-blackest-night-aged-well-poorly/|accessdate=2022-02-03|title=DC: 5 Ways Blackest Night Aged Well (& 5 Ways It Didn't)|publisher=CBR|date=2020-07-02|archivedate=2022-01-15 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220115013749/https://www.cbr.com/dc-ways-blackest-night-aged-well-poorly/}}</ref>。
後にムーアの二人目の妻となった[[メリンダ・ゲビー]]作画の『Lost Girls』は、『[[不思議の国のアリス]]』『[[ピーターパン]]』『[[オズの魔法使い]]』を性的に解釈し直したエロティックなシリーズで、2006年に単行本が発売された。同年、ムーアはポルノの歴史を辿る記事を発表し、社会の活力と成功は性的な問題に対する寛容さに関係していると主張した。


[[ファイル:Atomic_cloud_over_Hiroshima_-_NARA_542192_-_Edit.jpg|サムネイル|[[冷戦]]期に高まった[[核戦争]]の脅威は『[[ウォッチメン]]』の設定や雰囲気に影響を与えた。]]
2010年から2021年にかけてミニシリーズ『[[ネオノミコン]]』を発表。H.P.ラヴクラフトの世界を舞台としている。
1986年に刊行開始され、1987年に単行本化された全12号のオリジナルシリーズ『[[ウォッチメン]]』はムーアの名声を不動のものとした{{sfn|Parkin|2013|p=183}}。ムーアと作画の[[デイヴ・ギボンズ]]が生み出した同作は、優れたヒーローコミックであると同時に、[[核戦争]]の前兆に包まれた[[冷戦]]時代のSFミステリだった{{sfn|Carpenter|2016|p=67}}。核危機の絶頂において、ヒーローたちは各自の精神的な問題に衝き動かされてヒロイズムに傾倒し{{sfn|Parkin|2013|p=193}}、それぞれ異なった世界観に基づいて事件に対処する{{sfn|Carpenter|2016|p=68}}。本作は一般にスーパーヒーローという概念に対するポストモダンな脱構築を行ったと見られており{{sfn|Gravett (ed.)|2011|loc="Watchmen" by Melanie Gibson|p=490}}、[[漫画評論|コミック史家]]{{仮リンク|レス・ダニエルズ|en|Les Daniels}}は{{行内引用|このジャンルが基本的な前提としてきたものに疑問を投げかけた}}と書いている<ref>{{Cite book|last=Daniels|first=Les|title=DC Comics: Sixty Years of the World's Favorite Comic Book Heroes|publisher=Bulfinch Press|year=1995|page=196|isbn=0-8212-2076-4}}</ref>。DCコミックス重役の一人で原作者でもある{{仮リンク|ポール・レヴィッツ|en|Paul Levitz}}は2010年に{{行内引用|『ウォッチメン』はスーパーヒーローやヒロイズムの本質を見直す流行に火をつけ、それから10年以上にわたってジャンル全体を陰鬱な方向に向かわせた。『ウォッチメン』は称賛を集め … その後、コミック界が生み出した最も重要な文学作品の一つと見なされ続けることになる}}と書いている<ref>{{Cite book|last=Levitz|first=Paul|chapter=The Dark Age 1984–1998|title=75 Years of DC Comics The Art of Modern Mythmaking|publisher=Taschen|year=2010|location=Cologne, Germany|isbn=978-3-8365-1981-6|page=563}}</ref>。テーマ的な革新性に加えて構成や表現様式の洗練も際立っていた<ref name=avclubprimer>{{cite web|url=https://www.avclub.com/primer-alan-moore-1798214170|date=2008-03-06|title=Primer: Alan Moore|accessdate=2022-02-19|publisher=The A.V. Club|archivedate=2022-02-19 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220219134252/https://www.avclub.com/primer-alan-moore-1798214170}}</ref>。グレッグ・カーペンターは当時のムーアが持つ技法の粋が集められていると書いており、円環的なプロット構造や、文字と絵のコントラストを例に挙げた{{sfn|Carpenter|2016|p=65}}。また3×3の均等分割を基本とするコマ割りが全編で採用され、そのフォーマットが多様な語りを生み出している点も非常に特徴的だった{{sfn|Carpenter|2016|p=64}}。ティム・キャラハンは特異なコマ割りによる稠密さと緊迫感に注目し、ストーリーテリングの完成度は後世の類似作の及ぶところではないと述べている<ref name=rereadwatchmen1>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/02/27/the-great-alan-moore-reread-watchmen-part-1/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: ''Watchmen'', Part 1|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-02-27|archivedate=2022-02-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015044/https://www.tor.com/2012/02/27/the-great-alan-moore-reread-watchmen-part-1/}}</ref>。


『ウォッチメン』はコミックの域を超えて読書界やアカデミズムから大きな注目を浴びた{{sfn|Parkin|2013|pp=183, 205}}。SFの[[ヒューゴー賞]]を最初に受賞したコミック作品でもある(1988年のみ置かれた「その他の形式」部門)<ref>{{Cite web|url=http://www.thehugoawards.org/?page_id=11|title=The Hugo Awards: Ask a Question|date=2008-02-23|accessdate=2022-02-03|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090228150704/http://www.thehugoawards.org/?page_id=11|archivedate=2009-02-28}}</ref>。広くムーアの最高傑作とみられており、あらゆるコミックの中で最高の名作と呼ばれることもある<ref name=csm/>。時代の近い『[[バットマン: ダークナイト・リターンズ]]』([[フランク・ミラー]])、『[[マウス (オルタナティヴ・コミック)|マウス]]』([[アート・スピーゲルマン]])、『[[ラブ・アンド・ロケッツ]]』({{仮リンク|ギルバート・ヘルナンデス|en|Gilbert Hernandez|label=ヘルナンデス兄弟}})と並んで、1980年代後半のアメリカンコミックが大人向けの内容に移行する流れの一端でもあった{{Sfn|Dolan (ed.)|2010|p=220|loc="1980s" by Matthiew K. Manning, "The story itself was a masterful example of comic book storytelling at its finest&nbsp;... Filled with symbolism, foreshadowing, and ahead-of-its-time characterization thanks to adult themes and sophisticated plotting, ''Watchmen'' elevated the superhero comic book into the realms of true modern literature."}}。ムーアは一時マスコミでもてはやされ、1987年にはドキュメンタリー番組 ''Monsters, Maniacs and Moore'' の主役となった{{sfn|Parkin|2013|pp=207–208}}。やがて個人崇拝を嫌ったムーアは[[ファンダム]]と距離を置くようになり、[[コミコン|コンベンション]]への参加も止めた{{sfn|Groth|1990a|p=89}}{{refnest|{{仮リンク|英国コミックアートコンベンション|en|United Kingdom Comic Art Convention}}において、サインを求めるファンにトイレまでついてこられたという<ref>{{Cite book|title=Alec: How to be an Artist|year= 2001|author=Eddie Campbell|publisher=Top Shelf Productions|chapter=The last straw may well go down as apocryphal|isbn=978-0957789630}}</ref>。|group=†}}。
2015年、デジタルコミックのアプリ用にインタラクティブ・コミック『Big Nemo』を発表。ウィンザー・マッケイの『リトル・ニモ』のディストピア的な続編である。


[[ファイル:Siegfried_and_the_Twilight_of_the_Gods_p_180.jpg|サムネイル|ムーアが構想した ''Twilight of the Superheroes'' は[[リヒャルト・ワーグナー|ワーグナー]]のオペラ『[[神々の黄昏 (楽劇)|神々の黄昏]]』に触発されている。]]
2016年、ムーアは『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』の完結篇を最後に、漫画の執筆からは引退すると宣言した。
1987年、ムーアは ''[[:en:Twilight of the Superheroes|Twilight of the Superheroes]]''{{翻訳|スーパーヒーローの黄昏}}というミニシリーズ{{refnest|結末が決まっており号数限定で刊行される「リミテッド・シリーズ」のうち、およそ6号以下の長さのものを言う{{sfn|Ayres|2021|p=215}}。| group=†}}の企画書をDC社に提出した。それぞれスーパーヒーローを中心とするいくつかの氏族によって分割支配された未来のDCユニバースを舞台にした作品である。作中ではスーパーマンの一族と[[キャプテン・マーベル (DCコミックス)|キャプテン・マーベル]]・ファミリーという強力な二氏族が政略結婚で結ばれ、力の均衡が崩れたことで氏族間の終末戦争が近づく。登場人物の一人は助力を求めて現代に現れる{{sfn|Parkin|2009|loc=No.704–711/2302}}。この作品はムーアのDC離脱によって実現に至らなかった。しかし優れたアイディアが盛り込まれた企画書は関係者の間で広く読まれることになり、後には1996年のミニシリーズ『[[キングダム・カム (コミック)|キングダム・カム]]』など類似した作品も登場している{{sfn|Parkin|2009|loc=No.713–720/2302}}{{refnest|作者{{仮リンク|マーク・ウェイド|en|Mark Weid}}と[[アレックス・ロス]]は ''Twilight'' を下敷きにしたことを否定している<ref name="TBTMP"/>。|group=†}}。企画書は一般ファンの間にも出回っているが、DCは自社の知的財産と見なしており{{Sfn|Parkin|2002|pp=43–44}}、2020年の作品集 ''DC Through the 80s: The End of Eras'' に全文を収録した<ref>{{Cite web|author=Johnston|first=Rich|date=2020-08-14|title=DC Comics to Publish Alan Moore's Twilight of the Superheroes|url=https://bleedingcool.com/comics/dc-comics-to-publish-alan-moores-twilight-of-the-superheroes/|accessdate=2022-02-05|website=bleedingcool.com|archivedate=2022-01-11 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220111165537/https://bleedingcool.com/comics/dc-comics-to-publish-alan-moores-twilight-of-the-superheroes/}}</ref><ref>{{Cite web|author=Johnston|first=Rich|date=2020-08-14|title=DC Comics November 2020 Solicitations – A Little On The Thin Side?|url=https://bleedingcool.com/comics/dc-comics-november-2020-solicitations-a-little-on-the-thin-side/| accessdate=2022-02-05|website=bleedingcool.com|archivedate=2022-01-11 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220111165542/https://bleedingcool.com/comics/dc-comics-november-2020-solicitations-a-little-on-the-thin-side/ }}</ref>。


1987年に『バットマン・アニュアル』第11号(作画{{仮リンク|ジョージ・フリーマン (コミック)|en|George Freeman (comics)|label=ジョージ・フリーマン}})で[[バットマン (架空の人物)|バットマン]]を手掛けた翌年<ref>{{Cite book|last=Manning|first=Matthew K.|chapter=1980s|title=Batman: A Visual History|publisher=Dorling Kindersley|year=2014|location=London, United Kingdom|page=169|isbn=978-1465424563|quote=Alan Moore crafted yet another timeless tale in this annual. It featured the art of George Freeman and starred Clayface III.}}</ref>、{{仮リンク|ブライアン・ボランド|en|Brian Bolland}}の作画による『[[バットマン: キリングジョーク]]』が刊行された。{{行内引用|バットマン/ジョーカー作品の真骨頂{{sfn|Carpenter|2016|p=164}}}}を意図して作られた本作では、[[ジョーカー (バットマン)|ジョーカー]]が平凡なコメディアンから凶悪な殺人者となった経緯が語られる。ジョーカーは正気と狂気の違いが紙一重であることを証明しようとして凶行を繰り広げ、バットマンは宿敵と理解し合おうと試みる{{sfn|Ayres|2021|pp=64–65}}<ref>{{Cite web|url=https://www.theguardian.com/books/booksblog/2018/mar/14/the-killing-joke-at-30-what-is-the-legacy-of-alan-moore-shocking-batman-comic|title=The Killing Joke at 30: what is the legacy of Alan Moore's shocking Batman comic?|accessdate=2022-01-10|publisher=The Guardian|date=2018-05-14|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217073619/https://www.theguardian.com/books/booksblog/2018/mar/14/the-killing-joke-at-30-what-is-the-legacy-of-alan-moore-shocking-batman-comic }}</ref>。フランク・ミラーの『ダークナイト・リターンズ』や『[[バットマン: イヤーワン|イヤーワン]]』と並んでバットマンというキャラクターを再定義した重要作品であり<ref>{{Cite book|last=Greenberger|first=Robert|last2=Manning|first2=Matthew K.|title=The Batman Vault: A Museum-in-a-Book with Rare Collectibles from the Batcave|publisher=Running Press|year=2009|isbn=978-0-7624-3663-7|page=38|quote=Offering keen insight into both the minds of the Joker and Batman, this special is considered by most Batman fans to be the definitive Joker story of all time.}}</ref>{{Sfn|Dolan (ed.)|2010|p=233|loc="1980s" by Matthiew K. Manning, "Crafted with meticulous detail and brilliantly expressive art, ''Batman: The Killing Joke'' was one of the most powerful and disturbing stories in the history of Gotham City."}}、[[ティム・バートン]]や[[クリストファー・ノーラン]]による映画版にも影響を与えている<ref>{{Cite journal|author=Eric Doise|year=2015|title=Two Lunatics: Sanity and Insanity in The Killing Joke|url=https://imagetextjournal.com/two-lunatics-sanity-and-insanity-in-the-killing-joke/|journal=ImageTexT|volume=8|issue=1|accessdate=2022-01-10|archivedate=2022-01-11 |archiveurl= https://imagetextjournal.com/two-lunatics-sanity-and-insanity-in-the-killing-joke/}}</ref>。しかしランス・パーキンは{{行内引用|風刺や … 脱構築の強い衝動もなく、暴力と[[ペシミズム]]だけを{{sfn|Parkin|2013|p=240}}}}扱った{{行内引用|テーマが十分に練られていない{{Sfn|Parkin|2009|loc=No.632–639/2302}}}}作品だと書いている。ムーア自身も同作の評価は低く、{{行内引用|現実世界で起こりうるようなことは何も書かれていない。バットマンとジョーカーはどんな生きた人間とも似ていないのだから。人間性について重要なことは何も伝えていないのだ}}と述べている{{sfn|Carpenter|2016|p=164}}。
2020年、映画『The Show』を製作。ムーアは、脚本・音楽のほか俳優としても出演している。

==== グリム・アンド・グリッティ ====
ムーアが80年代に書いたシニカルな作品は、スーパーヒーロー・ジャンルに暗い現実を突きつける[[リヴィジョニズム]]として受け取られた{{sfn|Ayres|2021|p=195}}。その影響は大きく、メインストリーム・コミック界に「グリム・アンド・グリッティ{{翻訳|暗く、ざらっとした}}」と呼ばれる作品群が生まれることになる。しかし多くは「暴力、セックス、神経症」というムーアの表層的な部分だけを模倣したものだった{{sfn|Ayres|2021|pp=196–197}}。ムーアは『ウォッチメン』がきっかけとなってジャンルの可能性を広げる作品が出てくることを期待していたが、実際には同工の亜流作ばかりで失望させられたという{{sfn|Ayres|2021|pp=195–196}}。当時のインタビューでは自分が{{行内引用|コミックブックの新たな暗黒時代}}を招いてしまったと述べている{{sfn|Parkin|2013|p=256}}。

==== DCとの不和 ====
ムーアとDCコミックスとの関係はいくつかの問題を巡って徐々に悪化していった<ref name="vendettavendetta">{{Cite web|url=https://www.nytimes.com/2006/03/12/movies/12itzk.html?_r=2&oref=slogin&pagewanted=all&oref=slogin|title=The Vendetta Behind ''V for Vendetta''|last=Itzkoff|first=Dave|date= 2006-03-12|newspaper=The New York Times|archiveurl=https://web.archive.org/web/20140403235535/http://www.nytimes.com/2006/03/12/movies/12itzk.html?_r=3&oref=slogin&pagewanted=all&oref=slogin&|archivedate=2014-04-03|accessdate=2022-02-05}}</ref>。目新しい判型によってファンの注意を引こうとしたり、原著者とは別の作家に続編やスピンオフを書かせたりといった販売策はムーアの信条にそぐわなかった{{Sfn|Parkin|2013|pp=223, 229–230, 232}}。またこのころDC社が映画のような[[映画のレイティングシステム|年齢レイティング制]]とガイドラインを導入しようと計画したのに対し{{refnest| Jean-Paul Gabilliet は著書 ''Of Comics and Men'' の中で、コミック取次業者の間でレイティングを求める動きが生じたのはムーアが『ミラクルマン』第9号(1985年)で出産を克明に描写したのが原因だったと述べている{{sfn|Ayres|2021|p=199}}。グレッグ・カーペンターによるとDCの対応は「[[テレビ伝道師]][[ジェリー・ファルウェル]]の影響のもとで[[ロナルド・レーガン|レーガン政権]]が取った表現規制施策」を踏まえていた{{sfn|Carpenter|2016|loc=脚注[237]}}。DCは最終的に、読者の年齢に合わせて作品内容を自主規制するのではなく、特に暴力的・性的な号にだけ「For Mature Readers」のラベルを表示することにした{{sfn|Parkin|2013|p=232}}。|group=†}}、ムーアはフランク・ミラーらとともに反対の論陣を張った{{Sfn|Parkin|2002|pp=44–45}}{{sfn|Groth|1987|loc=Ed. Note}}。これがDC離脱の直接的な理由となった<ref name="vendettavendetta"/>{{sfn|Carpenter|2016|p=163}}。レイティングは「子供向け」作品を毒にも薬にもならないものにし、「成人向け」作品をセックスと暴力頼りの低質なものにするというのがムーアの考えだった{{Sfn|Parkin|2009|loc=No.742–744/2302}}。

ムーアは後に、『ウォッチメン』と『Vフォー・ヴェンデッタ』の契約書に書かれていた「作品が絶版になれば著作権は作者に復帰する」という条項に騙されたと語っている。ムーアはいつか自作の権利が返ってくると思っていたが、DCはいつまでも2作を絶版にしなかったのだという<ref name="vendettavendetta"/>{{sfn|Parkin|2013|p=214}}。2006年に[[ニューヨーク・タイムズ]]紙で受けたインタビューではDCとの会話を{{行内引用|ああそうかい、と言ってやった。まんまと騙してくれたな、お前らと仕事をする気はなくなった}}と回想している<ref name="vendettavendetta"/>。しかしムーアの主張には業界内のみならずファンからも批判がある{{sfn|Parkin|2013|p=218}}。問題の条項そのものは、当時のDCコミックスがクリエイターの権利を拡大するために取った措置の一つと見られる(それ以前には出版社が全面的に著作権を保有するのが慣行だった){{sfn|Parkin|2013|p=213}}。ランス・パーキンの所見によると、『ウォッチメン』が(当時珍しかった)単行本にまとめられ、絶版を迎えることなく版を重ね、2012年までに一般書店だけで200万部が売れることになるとは、契約が結ばれた時点では誰も予測していなかったのだという{{sfn|Parkin|2013|pp=216, 220–222}}。

いずれにせよムーアが抱いた「騙された」「脅された{{refnest|ムーア自身の回想によると、当時のDC社長[[ジェネット・カーン]]との会談で「ムーアがDCへの寄稿を続けるなら『ウォッチメン』スピンオフの出版計画は取りやめる」と言われたのを、自身への脅しと受け取ったものである{{sfn|Parkin|2013|pp=227–228}}。|group=†}}」という悪感情は解消されることはなかった。DCで刊行を再開していた『Vフォー・ヴェンデッタ』(1989年完結)を最後に寄稿は打ち切られた{{sfn|Parkin|2013|p=237}}。なおアメリカン・コミックのもう一方の雄[[マーベル・コミックス]]とは『マーベルマン』(デズ・スキンによって米国の{{仮リンク|エクリプス・コミックス|en|Eclipse Comics|label=エクリプス}}に版権が売られていた{{sfn|Carpenter|2016|p=58}})の名の使用を巡ってそれ以前に絶縁していた{{sfn|Parkin|2013|p=176}}。

=== インディペンデント期とマッドラブ: 1988–1993 ===
メジャー出版社に背を向けたムーアは{{sfn|Ayres|2021|p=211}}、自分の書きたいテーマはSF冒険ものやスーパーヒーローのジャンルには収まりきらないと公言し{{sfn|Groth|1990b|p=78}}、それらのジャンル作品で確立したポストモダンな作風を社会的な作品に適用し始める{{Sfn|Parkin|2009|loc=No. 795–797/2302}}。しかし大手出版社・取次から離れた執筆活動は障害の多いものだった{{sfn|Ayres|2021|p=87}}。

1988年、[[:en:AARGH (Artists Against Rampant Government Homophobia)|''AARGH'' (''Artists Against Rampant Government Homophobia'')]]{{翻訳|猖獗を極める政府の[[ホモフォビア|同性愛嫌悪]]に抗議する芸術家集団}}というチャリティ・コミックを出版するため、妻フィリス、夫妻共通の恋人だった女性デボラ・デラノの3人で個人出版社を設立してマッドラブと名付けた{{Sfn|Parkin|2009|loc=No.759/2302}}{{Sfn|Parkin|2013|p=247}}。[[マーガレット・サッチャー|サッチャー]]政権が提出した、地方議会や学校に「[[同性愛]]を奨励すること」を禁じる「{{仮リンク|第28条 (英国の1988年地方自治法)|en|Section 28|label=第28条}}」法案に抗議するための刊行物だった{{Sfn|Parkin|2009|loc=No.773–784/2302}}。ムーアは[[ニール・ゲイマン|ゲイマン]]、[[フランク・ミラー|ミラー]]、[[アート・スピーゲルマン|スピーゲルマン]]、[[ハービー・ピーカー]]、[[ロバート・クラム]]ら錚々たるコミック作家の原稿を集め<ref name=cbldfaargh>{{cite web|url=http://cbldf.org/2019/06/aargh-artists-against-rampant-government-homophobia-2/|accessdate=2022-02-20|title=AARGH!: Artists Against Rampant Government Homophobia|publisher=Comic Book Legal Defense Fund|date=2019-06-18|archivedate=2022-02-26 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220226032155/http://cbldf.org/2019/06/aargh-artists-against-rampant-government-homophobia-2/}}</ref>、自身は同性愛の歴史を綴った詩 [[:en:The Mirror of Love|''The Mirror of Love'']] を提供した(作画リック・ヴィーチ、スティーヴン・ビセット)<ref name=cbldfaargh/>{{sfn|Parkin|2013|p=244}}{{refnest|この詩は2004年に美術研究者{{仮リンク|ホセ・ヴィジャルビア|en|José Villarrubia}}によって写真集となり<ref>{{Cite web|title=Moore and Villarrubia on The Mirror of Love|publisher=Newsarama|url=http://newsarama.com/pages/Other_Publishers/Mirror_Love.htm|accessdate=2022-02-07|archiveurl=https://web.archive.org/web/20071012161400/http://newsarama.com/pages/Other_Publishers/Mirror_Love.htm|archivedate=2007-10-12}}</ref>、数か国で刊行されることになる<ref>{{cite web|url=https://www.libreriauniversitaria.it/specchio-amore-moore-alan-edizioni/libro/9788861231092|accessdate=2022-02-07|title=Lo specchio dell'amore - Moore Alan, Villarubia José, Edizioni BD, Trama libro, 9788861231092|publisher= Libreria Universitaria|archivedate= 2022-02-08|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220208152207/https://www.libreriauniversitaria.it/specchio-amore-moore-alan-edizioni/libro/9788861231092}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.actuabd.com/Le-Miroir-de-l-Amour-Alan-Moore-et-Jose-Villarrubia-Carabas|accessdate=2022-02-07|title=Le Miroir de l’Amour – Alan Moore et José Villarrubia|publisher= ActuaBD|date=2006-12-01|archivedate= 2022-02-08|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220208153502/https://www.actuabd.com/Le-Miroir-de-l-Amour-Alan-Moore-et-Jose-Villarrubia-Carabas }}</ref>。|group=†}}。収益1万7千ポンドはレズビアン・ゲイ団体に寄付された{{sfn|Parkin|2013|p=244}}<ref>{{Cite journal|last=Gravett|first=Paul|editor2-last=Stanbury|editor2-first=Peter|year=1988|title=Alan Moore: No More Sex|url=http://www.paulgravett.com/index.php/articles/article/alan_moore/|journal=Escape|issue=15|accessdate=2022-02-05}}</ref>。ムーアは ''AARGH'' の出版によって{{行内引用|法案成立を阻止することはできなかったが、一般大衆の抗議の声に加わることはできた。その声が、問題の法案に立案者が望んでいたような悪辣な効果を発揮できないようにさせたのだ}}と述べている{{Sfn|Khoury|2003|p=149}}。

続いて、米国[[中央情報局]] (CIA) を相手取った連邦訴訟に関わっていた公益法律事務所{{仮リンク|クリスティック・インスティチュート|en|Christic Institute}}の依頼を受けて、CIAの非合法活動を告発する ''Shadowplay: The Secret Team''(作画{{仮リンク|ビル・シンケビッチ|en|Bill Sienkiewicz}})を書いた。内容はクリスティックが提供した大量の調査資料に基づいていた。徹底した取材による創作を経験したことは後の作品にも影響が大きかった{{sfn|Parkin|2013|pp=244–245}}。''Shadowplay'' はクリスティックが訴訟に一般の支持を集めるため刊行したアンソロジー ''[[:en:Brought to Light|Brought to Light]]''{{翻訳|白日の下へ}}(1988年、{{仮リンク|エクリプス・コミックス|en|Eclipse Comics}}刊)で発表され{{sfn|Ayres|2021|pp=102–103}}{{Sfn|Parkin|2002|p=47}}、さらに1998年にムーアと作曲家{{仮リンク|ゲイリー・ロイド|en|Gary Lloyd}}の手で[[スポークン・ワード]]として翻案された{{Sfn|Parkin|2009|loc=No. 784–795/2302}}。

1990年、コミック自己出版の伝道者{{仮リンク|デイヴ・シム|en|Dave Sim}}に触発され、''AARGH'' 1号限りのはずだったマッドラブから ''[[:en:Big Numbers (comics)|Big Numbers]]'' を発刊した{{sfn|Groth|1990a|pp=69–70}}。生地ノーサンプトンをモデルにした英国の地方都市を舞台に、巨大ビジネスが一般人に与える影響と[[カオス理論]]の概念を組み合わせた社会的リアリズム作品だった{{sfn|Carpenter|2016|pp=179–180, 185}}{{Sfn|Parkin|2009|loc=No. 795–806/2302}}。ムーア自身は『ウォッチメン』からスーパーヒーローの要素を除いて「偶然性と無秩序が支配する」世界観をさらに掘り下げた作品だと語っている{{sfn|Groth|1990a|p=81}}。読者を選ぶ題材だが、全12号×大判40ページという大部の構想で、ビッグネームのビル・シンケビッチが作画を担当するとあってファンの期待も高かった<ref name=rereadbignumbers>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/05/21/the-great-alan-moore-reread-big-numbers/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: ''Big Numbers''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-05-21}}</ref>。しかし2号が出た時点でシンケビッチが[[スーパーリアリズム|フォトリアリスティック]]なペイントアートという方針を維持できなくなり、作画を降りた。続刊は出ずに終わった{{Sfn|Carpenter|2016|p=185}}{{Sfn|Parkin|2002|pp=48–49}}<ref>{{Cite journal|last=Gravett|first=Paul|date=Winter 2002|title=Al Columbia: Columbia's Voyage of Discovery|url=http://www.paulgravett.com/index.php/articles/article/al_columbia/|journal=The Comics Journal|issue=Special Edition|accessdate=2022-02-05|archivedate=2022-02-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015040/https://www.tor.com/2012/05/21/the-great-alan-moore-reread-big-numbers/}}</ref>。この失敗はファンの失望を招き<ref name=rereadbignumbers/>、ムーアにも大きな金銭的損失をもたらした{{sfn|Barlatsky|2011|loc=No. 97/5874}}。

1991年、書籍出版社{{仮リンク|ビクター・ゴランツ・リミテッド|en|Victor Gollancz Ltd|label=ビクター・ゴランツ}}から書き下ろし[[グラフィックノベル]] ''[[:en:A Small Killing|A Small Killing]]''{{翻訳|ア・スモール・キリング{{refnest|「小さな殺し」と「ちょっとした儲け」の二つの意味がある{{sfn|Ayres|2021|p=96}}。|group=†}}}}(作画{{仮リンク|オスカー・サラテ|en|Oscar Zárate}})が刊行された。同作は「もっとも過小評価されているムーア作品」とされることがある<ref name=avclubprimer/>{{Sfn|Parkin|2002|p=49}}。広告会社の重役が理想家だった少年時代の自分自身に取りつかれ、一線から退いて新しい目的を探すという物語である。この時期のほかの長編と比べると個人的な作品で{{sfn|Parkin|2013|pp=250–251}}{{sfn|Carpenter|2016|p=266, 273}}、ティム・キャラハンによるとムーアが直面していた苦闘を反映した{{行内引用|ムーアの殿堂の中でも鍵となるテクスト}}である<ref name=rereadsmallkilling>{{cite web|url= https://www.tor.com/2012/05/28/the-great-alan-moore-reread-a-small-killing/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: ''A Small Killing''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-05-28|archivedate=2022-02-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015041/https://www.tor.com/2012/05/28/the-great-alan-moore-reread-a-small-killing/}}</ref>。ジャクソン・エアーズは、商業主義にいったん膝を屈した芸術家が主人公であるのは、ムーアの中で過去作に対する見方が変わったためだと分析している{{sfn|Ayres|2021|p=98}}。
[[ファイル:William_Gull_3.jpg|サムネイル|イングランド人の外科医[[ウィリアム・ガル|サー・ウィリアム・ガル]]は『[[フロム・ヘル]]』で[[切り裂きジャック]]事件の犯人とされた。]]
過去の共作者スティーヴン・ビセットが自己出版するアンソロジーコミック誌 [[:en:Taboo (comic)|''Taboo'']] では、内容に制約を受けることなく性や暴力、政治や宗教といった題材を自由に追求することができた{{sfn|Carpenter|2016|p=172}}。ムーアが同誌で行った連載の一つ目は、1880年代に起きた[[切り裂きジャック]]事件をフィクション化した『[[フロム・ヘル]]』(1989年&ndash;)である。ムーアは[[ダグラス・アダムズ]]の小説『{{仮リンク|ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所|en|Dirk Gentry's Holistic Detective Agency}}』に触発され<ref>{{Cite web|author=Graydon|first=Danny|url=http://www.bbc.co.uk/films/2001/10/22/alan_moore_2001_interview.shtml|title=Interview – Alan Moore|publisher=BBC Films|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090311011452/http://www.bbc.co.uk/films/2001/10/22/alan_moore_2001_interview.shtml|archivedate=2009-03-11|accessdate=2022-02-05}}</ref>、犯罪を「[[ホーリズム|全体論]]的に解き明かす」には、社会や歴史の全体にわたって張り巡らされた些細な事実の連なりを完全に解き明かす必要があるというアイディアを持っていた{{sfn|Parkin|2013|p=270}}。そうして書かれた本作は、グレッグ・カーペンターによると{{行内引用|女王の玉座から売春婦の寝床に至るまで、すべての社会階層にわたる}}ヴィクトリア朝の歴史を描いており、{{行内引用|[[ミソジニー]]、[[反ユダヤ主義]]、[[ジンゴイズム]]、[[陰謀論]]、{{仮リンク|建築理論|en|Architecture theory}}、[[時間]]の理論、暴力の本質、イギリス史、[[モダニズム]]の起こり}}のような大テーマを数多く織り込んでいた{{sfn|Carpenter|2016|p=174}}。作画の{{仮リンク|エディ・キャンベル|en|Eddie Campbell}}は作品によく合った冷たく緊迫したペン画を提供した{{sfn|Carpenter|2016|p=173}}<ref name=rereadfromhell1>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/04/23/the-great-alan-moore-reread-from-hell-part-1/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: ''From Hell'', Part 1|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-04-23|archivedate=2022-02-14 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220214234904/https://www.tor.com/2012/04/23/the-great-alan-moore-reread-from-hell-part-1/}}</ref>。''Taboo'' は短命に終わったが『フロム・ヘル』はいくつかの小出版社から不定期に続刊が出され、1999年にキャンベルの個人出版社から単行本化された。初刊時は流通の問題でファンの目に触れにくかった作品だが、映画化と版元変更を経て名作としての評価が確立している{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1347/2302}}。ベン・ディクソンは{{行内引用|巨大な構想と野心に基づく、コミックメディアを定義する作品の一つ}}と評している{{sfn|Gravett (ed.)|2011|loc="From Hell" by Ben Dickson|p=530}}。

''Taboo'' で開始されたもう一つの作品 ''[[:en:Lost Girls (graphic novel)|Lost Girls]]''(1991年&ndash;)はムーアによると{{行内引用|知的な[[ポルノグラフィ]]}}だった{{sfn|Ayres|2021|p=201}}<ref name="SFW">{{Cite web|url=http://www.scifi.com/sfw/interviews/sfw13282.html|title=Alan Moore leaves behind his ''Extraordinary Gentlemen'' to dally with ''Lost Girls''|accessdate=2022-02-05|author=Schindler|first=Dorman T.|date=2006-08-07|website=Science Fiction Weekly|archiveurl=https://web.archive.org/web/20060811174459/http://www.scifi.com/sfw/interviews/sfw13282.html|archivedate=2006-08-11}}</ref>。作中では、セックスのアンチテーゼとしての[[第一次世界大戦|世界大戦]]の前夜、成長した[[児童文学]]の女主人公たちが互いに性の目覚めを物語る{{Sfn|Carpenter|2016|pp=262, 264–265}}。原典の内容は性体験のメタファーとして解釈される{{sfn|Parkin|2013|p=338}}。ムーアは[[ティファナ・バイブル]]や[[ロバート・クラム]]を例に挙げて非主流のコミックにポルノの伝統があると主張しており{{sfn|Carpenter|2016|p=263}}、芸術的価値のあるポルノ・コミックを作ることを一つの挑戦と考えていた{{sfn|Parkin|2013|p=345}}。
{{Quote|quote=たいていのポルノに付き物の問題を避けながら露骨に性的なコミックを書くにはどうすればいいか、アイディアはいくらでもあった。問題とは、ポルノがたいてい不快で退屈な代物であり、創意に欠けることだ。水準がないのだ。|source=アラン・ムーア(2003年){{Sfn|Khoury|2003|pp=154–155}}}}
''Lost Girls'' は ''Taboo'' 終刊後に発表の当てがないまま10年以上にわたって書き続けられ、2006年に完成するとトップシェルフから箱入りハードカバー3冊組の豪華本として刊行された{{sfn|Parkin|2013|p=343}}{{refnest|豪華な装丁にされたのは、わいせつ物ではなく芸術作品だという印象を与えようという版元の意図もあった{{sfn|Parkin|2013|p=344}}。|group=†}}(作画の[[メリンダ・ゲビー]]とムーアはその翌年に結婚した<ref name=guardianinterview/>)。[[児童ポルノ]]と受け取られうる内容を含むことから摩擦はあったが、おおむね芸術的価値が認められて各国で出版・販売が実現し、高い評価を得た{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 1321–1332/2302}}。コミック批評家や文学研究者からも注目を受け、ジェンダー学や[[クィア理論]]、子供の社会的構築、コミックのストーリーテリング形式など多くの観点から分析が行われた{{sfn|Parkin|2013|p=349}}。出版と同年にムーアはポルノグラフィの歴史をたどる論説を発表し、ある社会が活力を持つかどうか、うまく回るかどうかは性的な事柄をどれほど許容するかによると論じ、公の評価に耐え公益をもたらすような新たなポルノの必要性を訴えた<ref>{{Cite journal|date=November 2006|title=Bog Venus Versus Nazi Cock-Ring: Some Thoughts Concerning Pornography (Arthur Magazine #25 PDF file – Part 1)|url= https://arthurmag.com/2021/10/19/bog-venus-versus-nazi-cock-ring-some-thoughts-concerning-pornography-by-alan-moore-arthur-2006/|journal=Arthur Magazine|accessdate=2022-02-20|volume=1|issue=25}}</ref>。このテーマは2009年の評論本 ''25,000 years of Erotic Freedom''{{翻訳|性の自由の2万5千年史}}に発展した。同書は美術評論家ジョナサン・ジョーンズによって{{行内引用|とんでもなくウィットの利いた歴史講義}}と評された<ref>{{Cite web|author=Jones|first=Jonathan|url=https://www.theguardian.com/artanddesign/jonathanjonesblog/2010/jan/04/alan-moore-graphic-sex-art|title=From graphic novels to graphic sex: Alan Moore's history of erotic art|website=The Guardian|date=2010-01-04|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131024132540/http://www.theguardian.com/artanddesign/jonathanjonesblog/2010/jan/04/alan-moore-graphic-sex-art|archivedate= 2013-10-24|accessdate=2022-02-05}}</ref>。
{{Gallery
|title=
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|file: Alice par John Tenniel 22.png|''Lost Girls'' の主人公の一人、[[アリス (不思議の国のアリス)|アリス]]([[不思議の国のアリス]])は老齢の貴婦人として登場する{{sfn|Parkin|2013|p=338}}。[[ジョン・テニエル]]画(1865年)。
|file: Wendy Darling.PNG|中流階級出身の[[ウェンディ・モイラー・アンジェラ・ダーリング|ウェンディ]]([[ピーター・パン]])は家庭の主婦である{{sfn|Parkin|2013|p=338}}<ref name=telegraphsusanna/>。{{仮リンク|オリバー・ハーフォード|en|Oliver Herford}}画(1907年)。
|file: Dorothy and the wizard in Oz; a faithful record of their amazing adventures in an underground world, and how with the aid of their friends Zeb Hugson, Eureka the Kitten, and Jim the Cab-Horse, they (14750769814).jpg |エネルギーに満ちた田舎育ちの[[ドロシー・ゲイル|ドロシー]]([[オズの魔法使い]]){{sfn|Parkin|2013|p=338}}<ref name=telegraphsusanna>{{cite web|url=https://www.telegraph.co.uk/tv/0/watchmen-writer-alan-moore-talks-sex-superheroes-susanna-clarke/|accessdate=2022-02-17|title=The wonderful wizard of Northampton: Watchmen writer Alan Moore talks sex and superheroes with novelist Susanna Clarke|publisher=The Telegraph|date=2019-10-21|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217101727/https://www.telegraph.co.uk/tv/0/watchmen-writer-alan-moore-talks-sex-superheroes-susanna-clarke/}}</ref>。{{仮リンク|ジョン・R・ニール|en|John R. Neill}}画(1908年)。
}}

インディペンデント期に始めた長編小説の執筆は1996年に ''[[:en:Voice of the Fire|Voice of the Fire]]''(ビクター・ゴランツ刊)として結実する。[[青銅器時代]]から現代まで数千年の間の出来事を描いた短編連作であり、言語や文化の発展を再現した異例の語り口で書かれている<ref>{{Cite web|url=https://www.avclub.com/alan-moore-voice-of-the-fire-1798199276|title=Alan Moore: Voice Of The Fire|accessdate=2022-01-01|publisher=The A.V. Club|author=Tasha Robinson|date=2004-01-27|archivedate=2022-01-11 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220111165536/https://www.avclub.com/alan-moore-voice-of-the-fire-1798199276}}</ref>。時代は異なれどすべてムーアの生地ノーサンプトンが舞台となっており、全体として{{行内引用|想像力と「幻視」が私たち自身をどのように形作ってきたか}}についてのストーリーとなっている{{Sfn|Parkin|2009|loc=No.931–938/2302}}。

=== メインストリーム復帰とイメージ・コミックス: 1993–1998 ===
ムーアは1993年にメインストリーム・コミックに復帰して再びスーパーヒーロー作品を書き始めた(同年、[[魔術師]]になると宣言した)。直接的には過去の共作者から誘われたためだが<ref name=rereadspawn/>、衆目の見るところによると経済的な理由もあった{{sfn|Parkin|2013|pp=261–263}}。個人資産を投入した出版社マッドラブは ''Big Numbers'' の挫折と共に活動を停止していた{{sfn|Barlatsky|2011|loc=No. 97/5874}}。ムーア夫妻ら3人の関係も数年で破局していた{{sfn|Parkin|2013|p=248}}。フィリスとデボラは娘たちを連れて2人で新しい生活を始め、1980年代の作品で稼いだ財産のほとんどを持ち去っていった{{sfn|Ayres|2021|p=13}}{{Sfn|Parkin|2002|p=25}}。

寄稿先の[[イメージ・コミック|イメージ・コミックス]]は当時ブームの真最中だった。同社は暴力描写・女性の性的対象化といった作風{{Sfn|Parkin|2009|loc=No.941–947/2302}}、作画重視・商業主義の方針で知られており、ムーアのような「文学的」コミックを称揚する批評家からは評価が低かった{{sfn|Ayres|2021|pp=115–116}}。しかしクリエイター主導で設立された新会社ということもあり、作品の権利や創作上の自由についての方針はムーアにとって賛同できるものだった{{Sfn|Parkin|2009|loc=953–955/2302}}{{sfn|Ayres|2021|p=105}}。ムーアはまず10万ドル+印税という破格の報酬で『[[スポーン]]』第8号(1993年)のゲスト原作者を務め{{sfn|Parkin|2013|p=259}}{{refnest|作画に比べてストーリー面の評価が低かった『スポーン』誌のテコ入れとして、当時のスター原作者(アラン・ムーア、[[ニール・ゲイマン]]、[[フランク・ミラー]]、デイヴ・シムら)を1号ずつゲストに迎える企画だった{{sfn|Parkin|2013|p=259}}。|group=†}}、キャリア初期のSF短編を思わせるブラックユーモアを見せた<ref name=rereadspawn>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/06/04/the-great-alan-moore-reread-spawn/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: ''Spawn''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-06-04|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015043/https://www.tor.com/2012/06/04/the-great-alan-moore-reread-spawn/}}</ref>。同年にオリジナル作品『{{仮リンク|1963 (コミック)|en|1963 (comics)|label=1963}}』(作画リック・ヴィーチ、スティーヴン・ビセット)全6号が出た。{{行内引用|[[ジャック・カービー]]が60年代に[[マーベル・コミック|マーベル]]で描いていた大仰な画風、カラフルなキャラクター、宇宙的スケールの[[パスティーシュ]]}}だった{{Sfn|Parkin|2002|p=56}}。後に一般的になる[[スタン・リー]]パロディの先駆けだったが<ref name=reread1963/>、カーペンターは{{行内引用|風刺としては焦点を欠き{{refnest|『1963』はレトロな主人公たちが最新のイメージ・ヒーローと対決する特別号で完結するはずだったが、イメージ社内でクロスオーバーを調整するのが難しく未刊に終わっていた{{sfn|Ayres|2021|p=106}}。|group=†}}、懐古としては浅く見える}}と評している{{sfn|Carpenter|2016|p=277}}。ムーア自身が生み出したシリアスでダークなスーパーヒーロー像の全盛期でもあり、こうした路線はファンの支持を得られなかった{{sfn|Ayres|2021|p=105}}{{sfn|Parkin|2013|pp=260–261}}。ムーアは後にこう語っている。{{行内引用|あのバカげた『1963』を書いた後で、私がいなかった間にコミック読者がどれほど変わったか気づいた。突然、読者の大半が読みたがっているのはページ全体がピンナップ風の絵になったストーリー皆無のやつだと思えてきた。そこで、そういうマーケットに向けてまともな作品を書くことができるか純粋に試してみようと思った}}{{Sfn|Khoury|2003|p=173}}

ムーアは{{行内引用|13歳から15歳向けの、平均よりはましな作品}}の執筆を始めた。『スポーン』から派生した3つのミニシリーズ、『{{仮リンク|バイオレーター|en|Violator (comics)}}』(1994年)、『バイオレーターvs{{仮リンク|バドロック|en|Badrock}}』(1995年)、『スポーン: ブラッド・フュード』(1995年)はその例である{{Sfn|Parkin|2009|loc=No. 973/2302}}。これらの作品は評者によって{{行内引用|''D.R. & Quinch'' で鍛えた悪ガキ風のユーモア}}{{行内引用|バカバカしい[[エクスプロイテーション映画|エクスプロイテーション]]・コミックでもスタイルを保っている}}とされることもあれば<ref name=rereadviolator/>、{{行内引用|{{interp|当時の読者には}} ムーアがエッジをなくしたように見えたことだろう}}という評価もある{{sfn|Carpenter|2016|p=368}}。そうして収入を確保するかたわら、非商業的な『フロム・ヘル』と ''Lost Girls'' の執筆を続けた。本人の言によると{{行内引用|交響楽団に所属し続けながら、週末にだけ[[バブルガム・ポップ|バブルガム・バンド]]で演奏するようなもの}}だった{{sfn|Parkin|2013|pp=263–264}}{{sfn|Carpenter|2016|p=368}}。ムーアは長文で精緻な[[スクリプト (アメリカンコミック)|原作スクリプト]]を書くことで知られているが、この時期イメージに提供した原作は簡略な[[ネーム (漫画)|ネーム]]形式のものだった<ref name=rereadviolator/>。

1995年には[[ジム・リー]]の月刊シリーズ『{{仮リンク|ワイルドキャッツ (コミック)|en|Wildcats (comics)|label=WILDC.A.T.S}}』の原作を任され、第21号から14号にわたって書き続けた。それまでの主人公チームが宇宙でストーリーを続けるのと並行して地球で新チームが結成されるという展開で<ref name=rereadwildcats>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/06/25/the-great-alan-moore-reread-wildcats/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''WildC.A.T.s''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-06-25|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015047/https://www.tor.com/2012/06/25/the-great-alan-moore-reread-wildcats/}}</ref>、ランス・パーキンはまとまりのない凡作だと評している{{Sfn|Parkin|2009|loc=No.983–992/2302}}。ムーアはジム・リーに好感を持っていたため珍しくレギュラーシリーズ<ref group=†>あらかじめ結末や号数を定めず、終刊にならない限りいつまでも刊行される定期シリーズ。</ref>を引き受けたのだが、自身でもその出来には満足しておらず、ファンの好みを推し量りすぎて新しいものを書けなかったと言っている{{Sfn|Khoury|2003|p=174}}{{refnest|2000年前後にリーのスタジオから出版された人気作 [[:en:Stormwatch (comics)|''Stormwatch'']] や [[:en:The Authority (comics)|''The Authority'']]({{仮リンク|ウォーレン・エリス|en|Warren Ellis}}原作)の演出法や{{行内引用|アイロニーを前面に出した、自己パロディ的・自己言及的な}}作風にムーア期『WILDC.A.T.S』からの影響がみられるという指摘もある<ref name=rereadwildcats/>{{sfn|Ayres|2021|p=117}}。|group=†}}。

次に請け負った{{仮リンク|ロブ・ライフェルド|en|Rob Liefeld}}の『{{仮リンク|スプリーム (コミック)|en|Supreme (character)|label=スプリーム}}』(1996年、第41号&ndash;)は[[スーパーマン (架空の人物)|スーパーマン]]から力をふるう快感だけを抜き出したようなキャラクターだった{{sfn|Carpenter|2016|p=369}}<ref name=rereadsupreme1>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/07/16/the-great-alan-moore-reread-supreme-part-1/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''Supreme'' Part 1|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-07-16|archivedate=2022-02-14 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220214234706/https://www.tor.com/2012/07/16/the-great-alan-moore-reread-supreme-part-1/}}</ref>。ムーアはここで、キャリアの初期で手掛けたスーパーヒーロー作品のように徹底した再構築を行った。しかしリアリズムを強調する代わりに、『1963』で行ったことをさらに徹底して、1960年代のいわゆる「{{仮リンク|アメリカン・コミックスのシルバーエイジ|en|Silver Age of Comic Books}}」期の牧歌的なスーパーマンをそっくり真似た<ref name=reread1963>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/06/18/the-great-alan-moore-reread-1963/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''1963''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-06-18|archivedate=2022-02-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213081358/https://www.tor.com/2012/06/18/the-great-alan-moore-reread-1963/}}</ref><ref name=rereadsupreme1/>{{sfn|Carpenter|2016|pp=369–370}}{{refnest|本家DCコミックスの『スーパーマン』では「[[何がマン・オブ・トゥモローに起こったか?]]」の直後に{{仮リンク|ジョン・バーン (漫画家)|en|John Byrne (comics)|label=ジョン・バーン}}が行ったリローンチによってシルバーエイジの要素は一掃されていた{{sfn|Carpenter|2016|pp=370–371}}。|group=†}}。[[メタフィクション|メタ]]な視点を取り入れることで、アメリカのスーパーヒーロー神話への回帰と、当時のコミックシーンの批評を行ったのである<ref name=rereadsupreme1/>{{sfn|Parkin|2009|loc=No.86–88, 1007–1035/2302}}。ムーア執筆期の『スプリーム』は内容と売上の両面で成功をおさめた{{Sfn|Parkin|2002|pp=59–60}}。1997年には『スプリーム』と『フロム・ヘル』の両作によって[[アイズナー賞]]原作者部門を受賞した。エアーズはこれがムーアにとって商業性と作家性の両立を果たした象徴的な出来事だったと書いている{{sfn|Ayres|2021|p=14}}。

その後ロブ・ライフェルドはイメージと袂を分かって{{仮リンク|オーサム・コミックス|en|Awesome Comics|label=オーサム・エンターテインメント}}を起ち上げ、イメージ・ユニバースから引き揚げた自分のキャラクターを使って新しい世界設定を作るようムーアに依頼した。ムーアは素朴な{{仮リンク|アメリカン・コミックスのゴールデンエイジ|en|Golden Age of Comic Books|label=ゴールデンエイジ}}(1930&ndash;50年代)に始まって1990年代当時へと至る歴史を後付けで作り、メタなストーリーによってオーサムの作風が生まれた理由を批評的に描き出した<ref>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/08/06/the-great-alan-moore-reread-judgment-day/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''Judgment Day''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-08-06|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015038/https://www.tor.com/2012/08/06/the-great-alan-moore-reread-judgment-day/}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/08/13/the-great-alan-moore-reread-youngblood-and-glory/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''Youngblood'' and ''Glory''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-08-13|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015038/https://www.tor.com/2012/08/13/the-great-alan-moore-reread-youngblood-and-glory/}}</ref>。全3号のミニシリーズ『{{仮リンク|ジャッジメント・デイ (コミック)|en|Judgment Day (Awesome Comics)|label=ジャッジメント・デイ}}』(1997&ndash;1998年)で新しいオーサム・ユニバースの基礎が形作られ、『[[グローリー (漫画)|グローリー]]』(1999年)や『{{仮リンク|ヤングブラッド (コミック)|en|Youngblood (comics)|label=ヤングブラッド}}』(1998年)が続いた{{Sfn|Parkin|2002|p=60–61}}。しかしイメージの傘から抜け出たオーサムの業績は悪化し、刊行の遅れや中止が相次いだ{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1071–1078/2302}}。ムーアによるとライフェルドの言動は信頼がおけず、仕事相手として評価できなかった。イメージ・コミックス共同創立者の多くも(ジム・リーや{{仮リンク|ジム・ヴァレンティノ|en|Jim Valentino}}を除いて)同様だった{{Sfn|Khoury|2003|p=175}}。

=== アメリカズ・ベスト・コミックス: 1999–2008 ===
{{Main|:en:America's Best Comics}}
オーサムでの活動が行き詰ったところで<ref name=rereadtom1>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/08/27/the-great-alan-moore-reread-tom-strong-part-1/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''Tom Strong'', Part 1|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-08-27|archivedate=2022-02-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015039/https://www.tor.com/2012/08/27/the-great-alan-moore-reread-tom-strong-part-1/}}</ref>、イメージ共同経営者の一人ジム・リーが自身の{{仮リンク|ワイルドストーム|en|Wildstorm}}社にムーアの自由になる[[インプリント]](レーベル)を置こうと申し出てきた。ムーアは{{仮リンク|アメリカズ・ベスト・コミックス|en|America's Best Comics}}(ABC) と名付けたプロジェクトのために複数のシリーズを企画し、作画家や原作者を集めた。しかしその直後、リーはABCを含むワイルドストーム社をDCコミックスに身売りした。このときリーはムーアに事情を説明するために自らイングランドに赴いた{{sfn|Parkin|2013|p=297}}。この買収の目的は、ワイルドストームが保有する[[知的財産権|IP]]やデジタル彩色技術のみならず、ムーアを再び確保するところにあったと見る向きがある。少なくともムーア自身はそう信じていた{{sfn|Parkin|2013|p=297}}<ref>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/07/09/the-great-alan-moore-reread-mr-majestic-voodoo-and-deathblow/|accessdate=2022-02-08|title=The Great Alan Moore Reread: ''Mr. Majestic'', ''Voodoo'', and ''Deathblow''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-07-09|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015048/https://www.tor.com/2012/07/09/the-great-alan-moore-reread-mr-majestic-voodoo-and-deathblow/}}</ref>。間接的にであれDCと再び関わるのは本意ではなかったが、多くの同業者を巻き込んでいたため後戻りはできず、ABCは計画通り出版を開始することになった{{Sfn|Parkin|2002|p=62}}。
[[ファイル:CAPTAIN_NEMO_PLAYING_THE_ORGAN.jpg|左|サムネイル|[[ネモ船長]]は『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』に登場する多くの[[ヴィクトリア朝文学]]のキャラクターの一人である。]]

ムーアがABCでやろうとしたのは、スーパーマンがデビューした1930年代以前の作品からエッセンスを抽出してくることで{{行内引用|レトロであると同時にアヴァンギャルドな何か}}を作り出し、コミックの想像力の源泉と可能性を指し示すことだった<ref name=pappu>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/weblogarticle/0,,194417,00.html|accessdate=2022-01-30|title=We need another hero|publisher=The Guardian|date=2014-02-20|author=Sridhar Pappu|archivedate=2022-02-22 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220202003454/https://www.theguardian.com/weblogarticle/0,,194417,00.html }}</ref>。ABCから最初に刊行された『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』(1999&ndash;2000年、作画{{仮リンク|ケヴィン・オニール|en|Kevin O'Neill (comics)}}。以下「リーグ」)は[[ヴィクトリア朝]]時代の[[冒険小説]]の世界に「[[アベンジャーズ (マーベル・コミック)|アベンジャーズ]]」のようなヒーローチームのアイディアを適用した作品である{{sfn|Gravett (ed.)|2011|loc="The League of Extraordinary Gentlemen" by Ben Dickson|p=722}}。シリーズ第1作ではミナ・マリー([[吸血鬼ドラキュラ (小説)|吸血鬼ドラキュラ]])以下{{仮リンク|アラン・クォーターメイン|en|Allan Quatermain}}、[[透明人間 (小説)|透明人間]]、[[ネモ船長]]、[[ジキル博士とハイド氏|ジキル博士]]からなる「怪人連盟」が英国の危機に立ち向かう。第2作『{{仮リンク|続・リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン|en|The League of Extraordinary Gentlemen, Volume II}}』(2002&ndash;2003年)には『[[宇宙戦争 (H・G・ウェルズ)|宇宙戦争]]』『[[火星のプリンセス]]』『[[別世界物語|マラカンドラ]]』の火星人が登場する{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 1092–1097, 1113-1116/2302}}{{Sfn|Dolan (ed.)|2010|p=307|loc="2000s" by Alan Cowsill}}。''[[:en:The League of Extraordinary Gentlemen: Black Dossier|The League of Extraordinary Gentlemen: Black Dossier]]''{{翻訳|黒の名簿}}(2007年)と題されたスピンオフは書き下ろし単行本として刊行され、{{仮リンク|アナグリフ|en|Anagliph 3D|label=3D眼鏡}}のような趣味を凝らした付録がつけられていた{{sfn|Parkin|2013|p=318}}。シリーズは好評を博し、ムーアもアメリカ読者が{{行内引用|偏執の域までイギリス的な}}作品を受け入れてくれたこと、一部の読者が[[ヴィクトリア朝文学]]に関心を持ってくれたことを喜んだ{{Sfn|Khoury|2003|p=183}}。

[[:en:Tom Strong|''Tom Strong'']](1999&ndash;2006年)はメインの作画家{{仮リンク|クリス・スプラウス|en|Chris Sprouse}}を始めとして『スプリーム』とは共通点が多く<ref name=rereadtom1/>、主人公はスーパーマンの先祖である[[ドック・サヴェジ]]のような[[パルプ・マガジン|パルプ雑誌]]時代のキャラクターから着想を得ている{{sfn|Parkin|2013|p=296}}。特殊な薬物で長寿を得たという設定のトム・ストロングが回想する過去1世紀にわたる冒険はコミックの歴史へのオマージュでもある{{sfn|Parkin|2013|p=296}}。ランス・パーキンによると本作は『スプリーム』よりも洗練されており{{行内引用|ABCでもっとも読みやすい一作}}だという{{Sfn|Parkin|2002|pp=64–65}}。

『[[トップ10]]』(1999&ndash;2001年)は[[警察小説|刑事ドラマ]]として書かれているが、舞台となるネオポリスの住人は警官、犯罪者、市民を問わず全員がスーパーヒーロー風の超能力とコードネームを持っている{{sfn|Gravett (ed.)|2011|loc="Top 10" by Bart Beaty|p=716}}{{sfn|Parkin|2013|p=296}}。奇抜なアイディアやギャグの数々がストーリーと調和した熟練の一作だと評されている{{Sfn|Parkin|2002|pp=65–66, 71}}。作画は{{仮リンク|ジーン・ハー|en|Gene Ha}}と{{仮リンク|ザンダー・キャノン|en|Zander Cannon}}による。本作は12号で完結したが、スピンオフのミニシリーズが4作作られた。剣と魔法のファンタジー世界に舞台を移した ''[[:en:Smax|Smax]]''(2000年、画: キャノン)、本編の前日譚 ''[[:en:Top 10: The Forty-Niners|Top 10: The Forty-Niners]]''(2005年、画: ハー){{Sfn|Parkin|2002|p=68}}{{Sfn|Dolan (ed.)|2010|p=320|loc="2000s" by Alan Cowsill, "A graphic novel prequel to the award-winning ''Top 10'' series, ''The Forty-Niners'' proved to be one of the best books of the year."}}、そしてムーア以外の原作者による続編2編である。

[[ファイル:Tree_of_Life_Fludd.jpg|サムネイル|カバラの[[生命の樹 (旧約聖書)|生命の樹]]。『[[プロメテア]]』の一章で物語構造のひな型として用いられた。]]
『[[プロメテア]]』(1999&ndash;2005年)では女子大生の主人公が「想像力の具現化」である女神プロメテアの依代となる。一見するとスーパーヒロインの原型[[ワンダーウーマン]]への単純なオマージュのようだが{{sfn|Parkin|2013|p=296}}、ストーリーは意外な展開をたどり、主人公は[[タロット]]やカバラのような[[神秘学]]の象徴体系を通じて世界の成り立ちを学んでいく<ref name=telegraphsusanna/>{{sfn|Gravett (ed.)|2011|loc="Promethea" by Timothy R. Lehmann|p=710}}。画面構成も異例であり、作画の{{仮リンク|J・H・ウィリアムズIII|en|J. H. Williams III}}は観念的な内容に合わせて視覚表現の実験を数多く行っている<ref name=telegraphsusanna/><ref>{{cite web|url=https://www.avclub.com/the-best-comics-of-the-00s-1798220915|accessdate=2022-01-30|title=The best comics of the ’00s|publisher=The A.V. Club|date=2009-11-24|archivedate=2022-01-30 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220130152811/https://www.avclub.com/the-best-comics-of-the-00s-1798220915}}</ref>。この時期のほかの作品が総じて{{行内引用|知的遊戯<!--intellectual exercises-->{{sfn|Carpenter|2016|p=383}}}}{{行内引用|平均より知的な感性による、競争力十分のジャンル作品<ref name=reread49r>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/11/05/the-great-alan-moore-reread-top-10-the-forty-niners/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: ''Top 10: The Forty-Niners''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-11-05|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015104/https://www.tor.com/2012/11/05/the-great-alan-moore-reread-top-10-the-forty-niners/}}</ref>}}などと呼ばれるのに対し、本作は神秘学や芸術論のようなムーアの個人的テーマが色濃く出ている{{sfn|Booker (ed.)|2010|p=487|loc="Promethea" by Jackson Ayres}}点で特筆される。ランス・パーキンは本作が「想像力、ジェンダー表象、宇宙論、神秘学」のような大テーマを追求していると書いた{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 1188/2302}}。またムーアのもっともパーソナルな作品であり、自身の{{行内引用|個人的信条の開陳}}であり、{{行内引用|一つの信念体系、個人的宇宙論}}を打ち立てているとしている{{Sfn|Parkin|2002|p=68}}。ムーア自身はこう述べている。{{行内引用|神秘学を暗く恐ろしい場所として描かないオカルト・コミックを作りたいと思った。私の経験はそうではなかったからだ。… {{Interp|『プロメテア』は}} むしろサイケデリックで、… 洗練され、実験的で、恍惚的で、喜びにあふれた作品だ}}{{Sfn|Khoury|2003|p=188}}

ABCからは、[[パルプ・フィクション]]の俗悪さを強調した「{{仮リンク|コブウェブ|en|Cobweb (comics)}}」や『[[MAD (雑誌)|MAD]]』風の風刺作「ファースト・アメリカン」などのユーモア作品が数本ずつ掲載されるアンソロジー誌 ''[[:en:Tomorrow Stories|Tomorrow Stories]]''(1999&ndash;2002年)も刊行された{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 1168–1173/2302}}<ref>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/11/12/the-great-alan-moore-reread-tomorrow-stories-part-one/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: ''Tomorrow Stories'', Part One |publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-11-12|archivedate=2022-02-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015104/https://www.tor.com/2012/11/05/the-great-alan-moore-reread-top-10-the-forty-niners/}}</ref>。この形式のコミックブックは英国で一般的だが、米国では当時ほとんど絶滅していた{{Sfn|Parkin|2002|p=66}}。

DC社はムーアの執筆活動に干渉しないと約束していたが、それを反故にしてムーアを怒らせた{{sfn|Parkin|2013|pp=316–317}}。問題になった「リーグ」第5号(2000年)は、ヴィクトリア朝時代に実在した「マーベル」というブランドの[[膣洗浄器]]の広告を再現していた。DCの重役ポール・レヴィッツは競合会社[[マーベル・コミックス]]との摩擦をおそれ、印刷済みの分をすべて破棄すると、ブランドを「アメーズ」という名に差し替えて再印刷した{{sfn|Parkin|2013|pp=316–317}}。さらに同年同月にムーアが ''Tomorrow Stories'' 第8号(2000年)に書いたコブウェブの短編は、[[サイエントロジー]]の創始者[[L・ロン・ハバード]]と神秘主義者[[ジャック・パーソンズ]]による性魔術儀式「{{仮リンク|ババロン・ワーキング|en|Babalon Working}}」を扱っており、訴訟を危惧したDCによって差し止められた{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1273/2302}}。ムーアは返答として『[[ウォッチメン]]』刊行15周年への協力を取りやめるとともに、コブウェブ短編を{{仮リンク|トップシェルフ・プロダクションズ|en|Top Shelf Productions|label=トップシェルフ}}社のアンソロジーで発表した{{sfn|Parkin|2013|pp=316–318}}。

=== 再びインディペンデントへ: 2009– ===
[[ファイル:Alan_Moore_at_the_ICA_on_June_2nd_2009.jpg|サムネイル|2009年、{{仮リンク|現代美術協会|en|Institute of Contemporary Arts}}にて。]]
DCの作品内容への干渉や、自身の望まない形で作品を利用したことへの不満から、ムーアは再びメインストリーム・コミック界と絶縁することを決めた{{sfn|Barlatsky|2011|loc=No. 109/5874}}。2005年にはこう語っている。{{行内引用|コミックというメディアは愛している。コミック業界は大体において反吐が出る。あと15か月もすれば、たぶんメインストリームの商業的コミックとは縁が切れているだろう}}{{Sfn|Baker|2005|p=65}}。ムーアはワイルドストーム社でABCを設立するとき、多少の原稿料上乗せと引き換えに大半の作品の著作権を譲り渡す契約を結んでいた。共作者が手にする金額が多くなるように配慮したのと、ジム・リーを信頼していたことによる行動だったが、その後の買収劇により再び自作の多くをDCに取得される成り行きになった<ref name=rereadtom1/>{{sfn|Parkin|2013|p=298}}。

ABC作品でムーアが書き続けたのは「[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン|リーグ]]」だけだった{{refnest|同作はABC発足より前に映画化権が売られており、ほかの作品とは著作権の扱いが異なっていた{{sfn|Parkin|2013|p=297}}。|group=†}}。トップシェルフと{{仮リンク|ノックアバウト・コミックス|en|Knockabout Comics|label=ノックアバウト}}の共同出版で第3作 『{{仮リンク|リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン: センチュリー|en|The League of Extraordinary Gentlemen, Volume III: Century}}』(2009&ndash;2010年)とスピンオフ ''[[:en:The League of Extraordinary Gentlemen: Nemo Trilogy|The League of Extraordinary Gentlemen: Nemo Trilogy]]''{{翻訳|ネモ三部作}}(2013&ndash;2015年)が書かれた。第4作 ''[[:en:The League of Extraordinary Gentlemen, Volume IV: The Tempest| The League of Extraordinary Gentlemen, Volume IV: The Tempest]]''{{翻訳|テンペスト}}(2018&ndash;2019年)がシリーズ最終作となった<ref name="retire">{{Cite web|url=https://news.avclub.com/alan-moores-retirement-from-comics-is-now-apparently-of-1836493285|author=Barsanti|first=Sam|title=Alan Moore's Retirement from Comics Is Now Apparently Official|website=The A.V. Club|date= 2019-07-18|accessdate=2022-01-12|archivedate=2021-05-04 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20210504132146/https://news.avclub.com/alan-moores-retirement-from-comics-is-now-apparently-of-1836493285}}</ref>。当初はスーパーヒーロー・コミックの変種か[[スチームパンク]]活劇として始まった「リーグ」だが、巻が進むにつれて芸術と現実世界の関係を考察する私的な性格の作品になっていた{{sfn|Carpenter|2016|p=378}}{{sfn|Parkin|2013|pp=374–375}}。''Black Dossier'' 以降のシリーズ作品には企業化された浅薄な現代ポップカルチャーへの批判が読み取れる{{sfn|Ayres|2021|pp=126–127}}。

複数のシリーズを並行して書いていたABC期はムーアのキャリアの中でも多産な時期だったが、2000年代半ば以降はコミックの執筆量が目に見えて減少した{{sfn|Parkin|2013|p=299}}。ムーアの精力は小説執筆や神秘学関連の[[パフォーマンス・アート|パフォーマンス]]公演のほか、マッドラブを復活させて2010年に発刊した{{行内引用|21世紀最初のアングラ雑誌}}こと ''[[:en:Dodgem Logic|Dodgem Logic]]''{{翻訳|ドッジェム・ロジック{{refnest|{{仮リンク|バンパーカー|en|Bumper cars|label=ドッジェム}}はバンパーのついたカートに乗って互いにぶつかり合う遊園地の遊び<ref name=wireddodgem>{{cite web|url=https://www.wired.com/2009/12/alan-moore-dodgem-logic/|accessdate=2022-02-08|title=Alan Moore: Comics Won't Save You, but Dodgem Logic Might|publisher=WIRED|date=2009-12-31|archivedate=2021-10-01 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20211001022351/https://www.wired.com/2009/12/alan-moore-dodgem-logic/}}</ref>。|group=†}}}}に注がれていた{{sfn|Parkin|2013|pp=299, 366}}<ref name=leahdodgem/>。同誌はノーサンプトンを含む{{仮リンク|ミッドランド (イングランド)|en|Midlands|label=ミッドランド}}地域に在住する作家・アーティストが中心となる隔月刊誌である<ref name=leahdodgem>{{Cite web|url=http://www.moorereppion.com/announcing-alan-moores-dodgem-logic/02/10/2009/|title=Announcing: Alan Moore's ''Dodgem Logic''|author=Leah Moore|publisher=Leah Moore|date= 2009-10-02|archiveurl=https://web.archive.org/web/20091007143057/http://www.moorereppion.com/announcing-alan-moores-dodgem-logic/02/10/2009|archivedate= 2009-10-07|website=Moorereppion.com|accessdate=2022-1-11}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.mustardweb.org/dodgemlogic/|title=Alan Moore talks ''Dodgem Logic''|author=Musson|first=Alex|publisher=Mustard|archiveurl=https://web.archive.org/web/20091026171315/http://www.mustardweb.org/dodgemlogic/|archivedate= 2009-10-26|accessdate=2022-1-11}}</ref>。ムーアは同誌の編集思想について、「中央集権的な権威が力を失った今、個人主義的な文化をどう構築するか」「グローバル時代に地域をどう[[エンパワーメント|エンパワー]]するか」「来るべき企業主義文化の崩壊にどう対応するか」といった問題意識があると語っている<ref name=wireddodgem/>。誌面では地域のコンサート情報や節約レシピの紹介と並んで[[花ゲリラ|ゲリラ・ガーデニング]]や[[スコッター|スクワッティング]]のような政治的行為のハウトゥ記事が載せられていた。売り上げは地域貢献に充てられた<ref name=wireddodgem/>{{sfn|Parkin|2013|p=367}}。同誌は8号が発行された後、売れ行き不振により2011年4月に廃刊された{{sfn|Parkin|2013|p=367}}。

災害支援のためのチャリティ出版や、社会運動の資金調達のための出版物に政治的主張を込めた作品を寄稿することもあった{{sfn|Ayres|2021|p=204}}。2001年、[[アメリカ同時多発テロ事件]]の翌月に[[マーベル・コミックス]]から刊行されたチャリティ・コミックブック [[:en:List of comics about the September 11 attacks|''Heroes'']] には、歴史と人間性への認識を共有するよう訴える ''This is Information'' を書いた{{sfn|Ayres|2021|p=204}}<ref>{{cite web|url=https://www.nytimes.com/2001/12/29/arts/comics-turning-tragedy-into-tribute.html|accessdate=2022-02-18|title=Comics Turning Tragedy Into Tribute|publisher=The New York Times|date=2001-12-29|archivedate=2022-02-27 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220227102155/https://www.nytimes.com/2001/12/29/arts/comics-turning-tragedy-into-tribute.html }}</ref>。2013年には『Vフォー・ヴェンデッタ』の影響を受けた反グローバリズム運動である{{仮リンク|占拠運動|en|Occupy movement}}(オキュパイ・ムーブメント)に賛同し、[[Kickstarter]]を通じて発行された『{{仮リンク|オキュパイ・コミックス|en|Occupy Comics}}』にカウンターカルチャーとしてのコミック論を寄稿した<ref name=wiredbuster>{{cite web|url=https://www.wired.com/2012/12/alan-moore-exclusive/|title=Exclusive: Alan Moore's Essay for the Activist Occupy Comics Anthology|publisher= WIRED|date=2012-12-07|archivedate=2021-05-19 |archiveurl= https://www.wired.com/2012/12/alan-moore-exclusive/|accessdate=2022-02-19}}</ref><ref name=wiredoccupy>{{Cite web|author=Till|first=Scott|url=https://www.wired.com/underwire/2011/12/alan-moore-occupy-comics/|title=''V for Vendetta's'' Alan Moore, David Lloyd Join Occupy Comics|website=Wired|date=2011-12-05|archiveurl=https://web.archive.org/web/20140404010938/http://www.wired.com/2011/12/alan-moore-occupy-comics/|archivedate=2014-04-04|accessdate=2022-02-05}}</ref>。2018年には前年に起きた[[グレンフェル・タワー火災]]の被災者へのチャリティとして刊行されたコミック・アンソロジー ''24 Panels''(キーロン・ギレン編)に詩を書いた。ムーアの妻メリンダ・ゲビーがイラストレーションを提供した{{sfn|Ayres|2021|p=204}}<ref>{{Cite web|url=https://www.theguardian.com/books/2018/aug/20/disgrace-and-shame-alan-moore-points-to-boris-johnson-in-grenfell-fire-comic|title='Disgrace and shame': Alan Moore points to Boris Johnson in Grenfell fire comic|first=Alison|author=Floor|date=2018-08-20|website=The Guardian|archiveurl=https://web.archive.org/web/20180901194351/https://www.theguardian.com/books/2018/aug/20/disgrace-and-shame-alan-moore-points-to-boris-johnson-in-grenfell-fire-comic|archivedate=2018-09-01|accessdate=2022-02-05}}</ref>。

2000年代には初期作の再刊{{refnest|例として[[:en:The Extraordinary Works of Alan Moore|''The Extraordinary Works of Alan Moore'']]({{仮リンク|トゥーモロー・パブリッシング|en|TwoMorrows Publishing|label=トゥーモロー}}、2003年)や ''Alan Moore: Portrait of an Extraordinary Gentleman''(アビオジェネシス、2004年)がある{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 1222/2302}}。|group=†}}のほか、インタビュー集や評伝、作品研究などの出版が盛んになった{{sfn|Parkin|2013|p=349}}。2010年5月にはノーサンプトン大学によって学術会議 ''Magus: Transdisciplinary Approaches to the Work of Alan Moore''{{翻訳|魔術師: アラン・ムーアの業績への学際的アプローチ}}が開催された{{sfn|Parkin|2013|p=349}}。

この時期、スプラッター・ホラーで知られるニッチな出版社{{仮リンク|アヴァター・プレス|en|Avatar Press}}がムーアの未発表原稿や詩、小説のコミック化を行った<ref name=tcjcinema>{{cite web|url=https://www.tcj.com/their-other-last-hurrah-cinema-purgatorio/|accessdate=2022-02-20|title=Their Other Last Hurrah – Cinema Purgatorio|publisher=The Comics Journal|date=2020-09-15|archivedate= 2022-02-26|archiveurl= https://web.archive.org/web/20211119174642/https://www.tcj.com/their-other-last-hurrah-cinema-purgatorio/}}</ref>。[[世界幻想文学大賞]]にノミネートされた1980年代の小説作品 ''A Hypothetical Lizard''{{翻訳|仮想の蜥蜴}}の[[:en:Alan Moore's Hypothetical Lizard|コミック版]](2004年)はその一つである。コミックへの翻案はムーアではなく{{仮リンク|アントニー・ジョンストン|en|Antony Johnston}}が行った{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 1232/2302}}。2012年には全10号のコミック [[:en:Fashion Beast|''Fashion Beast'']] がアヴァターから刊行された(翻案ジョンストン、作画 Facundo Percio)。原作はムーアが1985年に書いた映画脚本で<ref name=bcfashionbeast>{{cite web|url=https://bleedingcool.com/comics/recent-updates/first-look-the-malcolm-mclaren-graphic-novel-by-alan-moore-antony-johnston-and-facundo-percio/|accessdate=2022-01-15|title=Fashion Beast: The Malcolm McLaren Graphic Novel by Alan Moore, Antony Johnston And Facundo Percio|publisher=Avatar Press|website=Bleeding Cool|date=2010-04-11|archivedate=2021-01-26 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20210126021153/https://bleedingcool.com/comics/recent-updates/first-look-the-malcolm-mclaren-graphic-novel-by-alan-moore-antony-johnston-and-facundo-percio/}}</ref>、音楽プロデューサーの[[マルコム・マクラーレン]]が取り組んでいた映画のために依頼されたものである<ref name=bcfashionbeast/>。[[クリスチャン・ディオール]]の生涯をモデルにして[[異性装]]と『[[美女と野獣]]』を組み合わせたディストピアSFだったが{{sfn|Parkin|2013|p=174}}<ref>{{cite web|url=https://www.queerty.com/comic-book-legend-alan-moores-gender-bending-fashion-beast-finally-published-20120908|accessdate=2022-01-15|title=Comic-Book Legend Alan Moore’s Gender-Bending “Fashion Beast” Finally Published |publisher=Queerty|date=2012-09-08|archivedate=2022-02-28 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220118182910/https://www.queerty.com/comic-book-legend-alan-moores-gender-bending-fashion-beast-finally-published-20120908}}</ref>、スポンサーの急逝によって映画製作は頓挫していた<ref name=bcfashionbeast/>。

コミック原作者としての活動末期にはもっぱらホラー作品に注力した{{sfn|Ayres|2021|p=147}}。アヴァターが出していた旧作のコミック化の中には、散文の[[クトゥルフ神話]]関連作を集めたアンソロジー ''[[:en:Alan Moore's Yuggoth Cultures and Other Growths|Alan Moore's Yuggoth Cultures and Other Growths]]'' と、クトゥルフテーマの短編小説を原作とする「{{仮リンク|中庭 (コミック)|en|Alan Moore's The Courtyard|label=中庭}}」全2号があった(いずれも2003年刊)。ムーアはこれらの作画を手掛けた{{仮リンク|ジェイセン・バロウズ|en|Jacen Burrows}}と組み、コミックオリジナルのクトゥルフ作品第1号として『[[ネオノミコン]]』(2010&ndash;2011年)を出した<ref>{{Cite web|url=http://www.bleedingcool.com/2011/03/23/wednesday-comics-review-neonomicon-4-and-hellraiser-prelude-and-1/|title=Wednesday Comics Review: ''Neonomicon'' 4 and ''Hellraiser'' Prelude And 1|first=Rich|author=Johnston|date= 2011-03-23|publisher=Bleeding Cool|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110324165312/http://www.bleedingcool.com/2011/03/23/wednesday-comics-review-neonomicon-4-and-hellraiser-prelude-and-1/|archivedate= 2011-03-24|accessdate=2022-1-11}}</ref>。次いでその前日譚/続編として、[[ハワード・フィリップス・ラヴクラフト|H・P・ラヴクラフト]]の時代にさかのぼって事件の源泉を描く全12号のコミックシリーズ『{{仮リンク|プロビデンス (コミック)|en|Providence (comics)|label=プロビデンス}}』(2015&ndash;2017年)がやはりバロウズの作画で刊行された<ref>{{Cite web|title=Alan Moore's Providence Revealed|url=http://www.avatarpress.com/2015/02/alan-moores-providence-revealed/|publisher=Avatar Press|date=2015-02-18|accessdate=2022-02-05|archivedate=2022-01-11 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220111165538/http://www.avatarpress.com/2015/02/alan-moores-providence-revealed/}}</ref>{{sfn|Ayres|2021|p=149}}。ジャクソン・エアーズはこれらのクトゥルフ作品を{{行内引用|… そこで描かれる暴力と荒廃感には、ムーアが考える現代文化の恐るべき実相が込められている}}と書き、ラヴクラフトの[[パルプ・フィクション]]からジャンル小説やコミックに受け継がれた[[人種差別]]性やセクシュアリティ観の系譜を批評的に描き出していると論じた{{sfn|Ayres|2021|pp=147–149}}。2016年4月からはアヴァターのホラー・アンソロジー誌 ''Cinema Purgatorio''{{翻訳|煉獄のシネマ}}のキュレーションを務めはじめ、自身でもケヴィン・オニールと組んで同題の巻頭連載を寄稿した{{sfn|Ayres|2021|p=155}}<ref>{{Cite web|url=https://www.bleedingcool.com/2016/04/30/opening-the-doors-to-cinema-purgatorio-1-alan-moore-kevin-oneill-max-brooks-garth-ennis-kieron-gillen-and-christos-gages-latest-thing/|title=Opening The Doors To ''Cinema Purgatorio'' #1 – Alan Moore, Kevin O'Neill, Max Brooks, Garth Ennis, Kieron Gillen And Christos Gage's Latest Thing|first=Rich|author=Johnston|date=2016-04-30|publisher=Bleeding Cool|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160707010549/https://www.bleedingcool.com/2016/04/30/opening-the-doors-to-cinema-purgatorio-1-alan-moore-kevin-oneill-max-brooks-garth-ennis-kieron-gillen-and-christos-gages-latest-thing/|archivedate= 2016-07-07|accessdate=2022-01-12}}</ref>。主人公が悪夢のような映画館に座り、どこかねじれた古い映画を続けざまに見せられるという体の作品で<ref>{{cite web|url=https://www.comicon.com/2021/05/15/review-alan-moore-and-kevin-oneills-cinema-purgatorio-this-is-sinerama/|accessdate=2022-02-20|title=Review: Alan Moore And Kevin O’Neill’s ‘Cinema Purgatorio: This is Sinerama’|publisher=COMICON|date=2021-05-15|archivedate=2022-02-26 |archiveurl= https://www.comicon.com/2021/05/15/review-alan-moore-and-kevin-oneills-cinema-purgatorio-this-is-sinerama/}}</ref>、軽いパロディ連作のようだが、やはり娯楽産業におけるクリエイターの苦悶や、創作の意味についての考察が読み取れる<ref name=tcjcinema/>。

==== コミック界引退へ ====
ムーアがメインストリーム・コミックに再復帰する見込みがなくなるにつれて、それまでムーアの意向を慮っていたDC社も『ウォッチメン』の著作権を行使することをためらわなくなっていった{{refnest|ムーアの立場に理解を示していた発行人ポール・レヴィッツが2009年にDCを退いたことも影響しているという見方がある<ref name=cbr2017p3>{{cite web|url=https://www.cbr.com/alan-moore-watchmen-feud-dc-comics-explained/3/|accessdate=2022-03-16|title=Watchmen's Success Made Alan Moore Refuse to Work With DC Comics (page 3)|date=2017-11-25}}</ref>。|group=†}}{{sfn|Ayres|2021|p=3}}。2009年の[[ウォッチメン (映画)|映画化]]や、2012年の前日譚シリーズ『{{仮リンク|ビフォア・ウォッチメン|en|Before Watchmen}}』の刊行はまったくムーアの意に反するもので、ファンや業界の間でも賛否は分かれた<ref name=cbr2017p3/><ref name=cbr2017p1>{{cite web|url=https://www.cbr.com/alan-moore-watchmen-feud-dc-comics-explained/|accessdate=2022-03-16|title=Watchmen's Success Made Alan Moore Refuse to Work With DC Comics|date=2017-11-25}}</ref>。2017年には『[[ドゥームズデイ・クロック (DCコミックス)|ドゥームズデイ・クロック]]』によって『ウォッチメン』が完全にDC社の作品世界に組み込まれた{{sfn|Ayres|2021|p=3}}<ref name=cbr2017p1/>。

ムーアのコミックに対する毒舌は拡大していった{{sfn|Ayres|2021|p=211}}。2010年には「出版社が過去作のスピンオフを出したがるのは創造性の欠如」「業界に優れた才能がいないのかもしれない」という趣旨の発言を行い{{sfn|Ayres|2021|p=211}}<ref>{{cite web|url=https://bleedingcool.com/comics/recent-updates/alan-moore-speaks-watchmen-2-to-adi-tantimedh/|accessdate=2022-02-19|title=Alan Moore Speaks Watchmen 2 To Adi Tantimedh|publisher=Bleeding Cool|date=2010-09-09|archivedate=2022-02-19 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220219134258/https://bleedingcool.com/comics/recent-updates/alan-moore-speaks-watchmen-2-to-adi-tantimedh/}}</ref>、DCやマーベルで原作者として活動する[[ジェイソン・アーロン]]から「現代の作品を読んでもいないムーアの言葉に耳を貸すのは止めよう」と批判されるなど、現役クリエイターから反発を招いた<ref>{{cite web|url=https://www.cbr.com/240180-2/|accessdate=2022-02-19|title=THE YEAR I STOPPED CARING ABOUT ALAN MOORE|publisher= CBR|author=Jason Aaron|date=2011-01-05|archivedate=2022-02-19 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220219154917/https://www.cbr.com/240180-2/}}</ref><ref>{{cite web|url=https://bleedingcool.com/comics/recent-updates/creators-react-to-jason-aarons-reaction-to-alan-moores-reaction-to-being-offered-the-watchmen-rights-back/|accessdate=2022-02-19|title=Creators React To Jason Aaron's Reaction To Alan Moore's Reaction To Being Offered The Watchmen Rights Back|publisher=Bleeding Cool|date=2011-01-06|archivedate=2022-02-19 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220219155018/https://bleedingcool.com/comics/recent-updates/creators-react-to-jason-aarons-reaction-to-alan-moores-reaction-to-being-offered-the-watchmen-rights-back/}}</ref>。2013年には{{行内引用|50年前に12歳の男の子を喜ばせるために作られた}}スーパーヒーロー・ジャンルが映画を通じて広い年齢層に受け入れられている文化状況を{{行内引用|複雑極まる現代からの逃避}}だと発言し、ファンコミュニティからの怒りを買った<ref name=guardianwhy/><ref name=lastinterview/>。
{{Quote|quote=どうも私には、一般社会の相当の割合が、自分が現に生きている現実を理解するのをあきらめ、その代わりに、DCやマーベル・コミックスが送り出す無秩序で無意味な、しかし大きさが有限ではある「ユニバース」に精通することなら可能かもしれないと思い至ったように見える。前世紀の徒花が文化の舞台を我が物顔に占有し続け、このどうにも前例のない新時代に固有の、今日的な意味を持った適切な文化が生まれるのを妨げているというのは、ことによると文化的悲劇であろうとも思われる。|source=アラン・ムーア(2013年)<ref name=lastinterview/>}}
同じく2013年にムーア作品のマイノリティ描写がオンラインでの議論を呼んだ。口火を切った[[カルチュラル・スタディーズ]]研究者{{仮リンク|ウィル・ブルッカー|en|Will Brooker}}は、「リーグ」シリーズでヴィクトリア朝時代の人種的ステレオタイプが肯定的に再現されたことや、短編映画で「ミソジニー的」な表現が見られることを問題にした{{sfn|Ayres|2021|p=176}}。ブロガーの一人が反論の場を設けると、ムーアは自身の立場を強く防衛し、コミック関係者への逆批判を行った。さらに、以後同様の問題が起きないようにインタビューや公の発言を制限する、特に{{行内引用|コミックに関わることについてや、コミックにまつわる状況では}}発言しない、と述べた{{sfn|Ayres|2021|p=176}}<ref name=lastinterview>{{cite web|url=https://slovobooks.wordpress.com/2014/01/09/last-alan-moore-interview/|accessdate=2022-02-24|title=Last Alan Moore Interview?|publisher= Pádraig Ó Méalóid|date=2014-01-09|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217034845/https://slovobooks.wordpress.com/2014/01/09/last-alan-moore-interview/}}</ref>。

2016年、執筆中だった「リーグ」最終作 ''Tempest'' の完成とともにコミック原作から引退すると宣言した<ref>{{Cite web|url=https://www.theguardian.com/books/2016/sep/08/alan-moore-confirms-he-is-retiring-from-creating-comic-books|title=Alan Moore confirms he is retiring from creating comic books|date= 2016-09-08|website=The Guardian|accessdate=2022-01-12|archivedate=2022-02-08 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220208061032/https://www.theguardian.com/books/2016/sep/08/alan-moore-confirms-he-is-retiring-from-creating-comic-books }}</ref>。同作は2019年に完結し、前後して ''Cinema Purgatorio'' 誌も18号で終刊した<ref>{{Cite web|url=https://bleedingcool.com/comics/final-issue-alan-moore-cinema-purgatorio/|title=The Final Issue of Alan Moore's Cinema Purgatorio|accessdate=2022-01-10|publisher=Bleeding Cool|date=2019-03-13|archivedate=2022-01-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220113093104/https://bleedingcool.com/comics/final-issue-alan-moore-cinema-purgatorio/}}</ref>。それ以降は予告通りコミック作品を発表していない{{sfn|Ayres|2021|p=2}}<ref name=guardian2021/>。

2016年9月、執筆に10年以上を費やした1000ページを超える長編小説 [[:en:Jerusalem (Moore novel)|''Jerusalem'']]{{翻訳|エルサレム}}を刊行した<ref name=vulturewhy>{{cite web|url=https://www.vulture.com/2016/09/alan-moore-jerusalem-comics-writer.html|accessdate=2022-02-13|publisher=vulture|title=Alan Moore on Why Superhero Fans Need to Grow Up, Brexit, and His Massive New Novel|date=2016-09-12|archivedate=2022-02-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015037/https://www.vulture.com/2016/09/alan-moore-jerusalem-comics-writer.html }}</ref><ref name=bbcroots/>。生地ノーサンプトンの歴史、創作と想像力、魔術と超越性といった近年のテーマの集大成だった{{sfn|Parkin|2013|p=376}}。2021年、5部作の長編ファンタジー小説 ''Long London'' などを{{仮リンク|ブルームズベリー・パブリッシング|en|Bloomsbury Publishing|label=ブルームズベリー}}から刊行予定であることが発表された<ref name=guardian2021>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/books/2021/may/03/im-bursting-with-fiction-alan-moore-announces-five-volume-fantasy-epic|accessdate=2022-02-02|title=‘I’m bursting with fiction’: Alan Moore announces five-volume fantasy epic |publisher=The Guardian|date=2021-05-03|archivedate=2022-02-15 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220215060957/https://www.theguardian.com/books/2021/may/03/im-bursting-with-fiction-alan-moore-announces-five-volume-fantasy-epic }}</ref>。

=== 執筆以外の活動 ===
[[ファイル: Alan Moore, I'll Be Your Mirror.jpg|左|サムネイル|イベント I'll Be Your Mirror にて、ステージ上で[[ポエトリーリーディング|詩を朗読]]するムーア(2011年)<ref>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/music/2011/jul/25/ill-be-your-mirror-review|accessdate=2022-01-30|title=I'll Be Your Mirror – review |publisher= The Guardian|date=2011-07-25|archivedate=2022-02-02 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220202203842/https://www.theguardian.com/music/2011/jul/25/ill-be-your-mirror-review }}</ref>。]]
1980年代には Translucia Baboon というステージ名で音楽活動を行った{{sfn|Parkin|2013|p=389}}。デイヴィッド・J([[ゴシック・ロック]]バンド、[[バウハウス (バンド)|バウハウス]]のメンバー)とアレックス・グリーンとともに結成した The Sinister Ducks というバンドからはシングル ''March of the Sinister Ducks''{{翻訳|禍々しきアヒルたちの行進}}(1983年)がリリースされた{{Sfn|Parkin|2013|p=132}}。翌年、デイヴィッド・Jとともに、劇中歌 "This Vicious Cabaret"{{翻訳|これぞ背徳のキャバレー}}などを収録した『Vフォー・ヴェンデッタ』の[[コンパクト盤|EPレコード]]を出した{{sfn|Parkin|2013|p=132}}。バウハウスのために作詞した "Leopardman at C&A" は使われずにお蔵入りになっていたが、後にコミックブックで発表され、それを見た{{仮リンク|ダートボムズ|en|The Dirtbombs}}の{{仮リンク|ミック・コリンズ|en|Mick Collins}}が曲をつけてアルバム [[:en:We Have You Surrounded|''We Have You Surrounded'']] に収録した<ref>{{Cite web|url=http://www.thestoolpigeon.co.uk/news/dirtbombs-shell-america.html|author=Graham|first=Ben|title=Dirtbombs drop shell on America, explode rep as one-trick pony|date=2008-05-08|website=The Stool Pigeon|archiveurl=https://web.archive.org/web/20121117042808/http://www.thestoolpigeon.co.uk/features/interview-dirtbombs.html|archivedate=2012-11-17|accessdate=2022-02-03}}</ref>。

1995年、母親の死や人間の意識活動を扱った自伝的[[パフォーマンス・アート]]公演 ''The Birth Caul''{{翻訳|バース・コール{{refnest|"caul" は羊膜の一部が出生時に頭に被さったもの。魔除けとされる。|group=†}}}}を行った{{sfn|Parkin|2013|p=4}}<ref name=avclubprimer/>。音楽はデイヴィッド・Jやティム・パーキンズらが担当した{{sfn|Parkin|2013|p=4}}。公演はCD化されたほか、1999年にエディ・キャンベルによってコミック化されてトップシェルフから刊行された<ref>{{cite web|url=https://www.topshelfcomix.com/catalog/the-birth-caul/228|accessdate=2022-02-08|publisher=Top Shelf Productions|title=The Birth Caul|archivedate=2022-02-08 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220208151821/https://www.topshelfcomix.com/catalog/the-birth-caul/228}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.topshelfcomix.com/catalog/snakes-ladders/227|accessdate=2022-02-08|publisher=Top Shelf Productions|title=Snakes & Ladders|archivedate=2022-02-08 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220208151819/https://www.topshelfcomix.com/catalog/snakes-ladders/227}}</ref>。2011年には[[オール・トゥモローズ・パーティーズ]]がロンドンで開いた音楽フェスティバル I'll Be Your Mirror に{{仮リンク|スティーヴン・オマリー|en|Stephen O'Malley}}とともに出演し、朗読パフォーマンスを行った<ref>{{cite web|url=http://www.atpfestival.com/events/ibymportishead/news/1104071300|accessdate=2022-02-08|title=Godspeed You! Black Emperor, Alan Moore/Stephen O'Malley, Cinema Programme for I'll Be Your Mirror London w/ Portishead|publisher=All Tomorrow's Parties|date=2011-04-07|archivedate=2022-02-08 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220208151822/http://www.atpfestival.com/events/ibymportishead/news/1104071300}}</ref>。

1994年、神秘学の先達スティーヴ・ムーアとともに [[:en:The Moon and Serpent Grand Egyptian Theatre of Marvels|The Moon and Serpent Grand Egyptian Theatre of Marvels]]{{翻訳|月と蛇の不可思議なる大エジプト劇団}}を結成した。ランス・パーキンによると「[[薔薇十字団]]や[[フリーメイソン]]のパロディのような架空の秘術結社」であり、「月と蛇」は二人それぞれが信仰する[[セレーネー]]と蛇神{{仮リンク|グリュコン|en|Glycon}}から取られている。ムーアは同年7月に団体名と同題で音楽や詩の朗読からなるパフォーマンス公演を行い、CD化を行った{{sfn|Parkin|2013|pp=279–281}}。同様の[[スポークン・ワード]]公演はその後も断続的に行われた(''The Highbury Working'' 1997年、''Snakes and Ladders'' 1999年、''Angel Passage'' 2001年)。これらの公演は一種の魔術儀式として構成されており、ムーアの朗読が呪文の詠唱のような効果を生んでいる{{sfn|Ayres|2021|p=165}}。2006年に発表された[[:en:Unearthing|''Unearthing'']]{{翻訳|発掘}}はスティーヴ・ムーアの人生と神秘体験をつづった散文の伝記的作品である。後に[[マイク・パットン]]、[[ジャスティン・ブロードリック]]らの音楽をバックにムーア自身が[[スポークン・ワード|朗読]]するCDが発売された<ref name=quietus/>{{sfn|Parkin|2013|p=373}}<ref>{{cite web|publisher=The New York Times|title=Alan Moore Wants to Tell You a Story|date=2010-06-09|url=https://artsbeat.blogs.nytimes.com/2010/06/09/alan-moore-wants-to-tell-you-a-story/ |accessdate=2022-02-18|archivedate=2022-02-26 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220226032149/https://artsbeat.blogs.nytimes.com/2010/06/09/alan-moore-wants-to-tell-you-a-story/}}</ref>。2007年にはスティーヴ・ムーアと共作で神秘学のハウトゥ本 ''[[:en:The Moon and Serpent Bumper Book of Magic|The Moon and Serpent Bumper Book of Magic]]''{{翻訳|月と蛇の魔術大図鑑}}を執筆している{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1507/2302}}<ref>{{Cite web|url=http://www.topshelfcomix.com/catalog.php?type=2&title=578|title=The Moon and Serpent Bumper Book of Magic |publisher=Top Shelf Productions|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131205041843/http://www.topshelfcomix.com/catalog/the-moon-and-serpent-bumper-book-of-magic/578|archivedate= 2013-12-05|accessdate=2022-01-12}}</ref>。

2003年、ムーアの語りを中心とするドキュメンタリー ''[[:en:The Mindscape of Alan Moore|The Mindscape of Alan Moore]]''{{翻訳|アラン・ムーアの心象風景}}が公開され{{sfn|Barlatsky|2011|loc=No. 434/5874}}、2008年に映像ソフトとしてシャドウスネーク・フィルムズから販売された{{sfn|Ayres|2021|p=215}}<ref>{{cite web|url=http://www.newsarama.com/920-dvd-review-the-mindscapes-of-alan-moore.html|publisher=Newsarama|accessdate=2022-03-16||archivedate=2016-03-06|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160306084821/http://www.newsarama.com/920-dvd-review-the-mindscapes-of-alan-moore.html|title=DVD Review: The Mindscapes of Alan Moore|date=2008-09-02}}</ref>。

2007年、ムーア自身もファンであるアニメ『[[ザ・シンプソンズ]]』に本人役で出演し、『ウォッチメン』の著作権をめぐるDCとの確執についてのジョークを演じた<ref>{{cite web|url=https://www.cbr.com/the-simpsons-comic-creator-cameos-explained/|accessdate=2022-01-16|title=The Simpsons Most Absurd Comic Creator Cameos, Explained|publisher=CBR|date=2021-04-10|archivedate=2022-01-16 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220116171417/https://www.cbr.com/the-simpsons-comic-creator-cameos-explained/}}</ref>{{refnest|第19シーズンのエピソード「{{仮リンク|ホーマーの美容整形|en|Husbands and Knives}}」<ref>{{Cite web|url=http://www.northantset.co.uk/ViewArticle.aspx?SectionID=317&ArticleID=1865011|title=Writer drawn into ''Simpsons'' show|first=Steve|author=Scoles|date= 2006-11-08|accessdate=2022-01-16|website=Northants Evening Telegraph|archiveurl=https://web.archive.org/web/20070615040340/http://www.northantset.co.uk/northampton-chronicle-and-echo/Writer-drawn-into-Simpsons39-show.1865011.jp|archivedate= 2007-06-15}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.rottentomatoes.com/tv/the_simpsons/s19/e07|accessdate=2022-01-16|title=The Simpsons: Season 19, Episode 7|publisher= Rotten Tomatoes|archivedate=2022-01-18 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220118192419/https://www.rottentomatoes.com/tv/the_simpsons/s19/e07}}</ref>。|group=†}}。2010年前後に{{仮リンク|BBCラジオ4|en|BBC Radio 4}}の[[通俗科学|ポピュラーサイエンス]]番組 [[:en:The Infinite Monkey Cage|''The Infinite Monkey Cage'']] でSF作家として何度かパネラーを務めた<ref>{{Cite web|url=http://www.bleedingcool.com/2010/06/28/alan-moore-and-jonathan-ross-talk-science/|title=Alan Moore And Jonathan Ross Talk Monkey Science|first=Rich|author=Johnston|date=2010-06-28|publisher=Bleeding Cool|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131203025202/http://www.bleedingcool.com/2010/06/28/alan-moore-and-jonathan-ross-talk-science/|accessdate=2022-01-11|archivedate=2013-12-03}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.bbc.co.uk/programmes/b011zm32|title=''The Infinite Monkey Cage'' Series 4 Episode 4 of 6: Is Cosmology Really a Science?|date= 2011-06-20|publisher=BBC Radio 4|archiveurl=https://web.archive.org/web/20121103180243/http://www.bbc.co.uk/programmes/b011zm32|archivedate= 2012-11-03|accessdate=2022-01-11}}</ref>。

2010年代には写真家ミッチ・ジェンキンズとともに低予算の[[短編映画]]を撮り始めた。短編が数編作られたところでそれらを再構成した [[:en:Show Pieces|''Show Pieces'']] が英国の映画祭で公開され<ref name=bcshowpieces>{{cite web|url=https://bleedingcool.com/comics/recent-updates/alan-moore-and-mitch-jenkins-show-pieces-proves-its-mettle-at-the-leeds-film-festival-plus-q-and-a-with-moore-jenkins-and-cast/|accessdate=2022-01-17|title=Alan Moore And Mitch Jenkins' Show Pieces Proves Its Mettle At The Leeds Film Festival - Plus Q And A With Moore, Jenkins, And Cast|publisher=Bleedign Cool|date=2014-11-14|archivedate=2022-01-18 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220118182529/https://bleedingcool.com/comics/recent-updates/alan-moore-and-mitch-jenkins-show-pieces-proves-its-mettle-at-the-leeds-film-festival-plus-q-and-a-with-moore-jenkins-and-cast/}}</ref>、さらに長編 [[:en:The Show (2020 film)|''The Show'']] へと発展した。[[トム・バーク]]が主演し、ムーアは脚本と音楽のほか自身でも出演した<ref>{{cite web|url=https://www.imdb.com/title/tt9165824/fullcredits/?ref_=tt_cl_sm|accessdate=2022-01-17|title=The Show (2020) - Full Cast & Crew |publisherIMDb|archivedate=2022-01-18 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220118192935/https://www.imdb.com/title/tt9165824/fullcredits/?ref_=tt_cl_sm}}</ref>。同作は2020年10月に[[シッチェス・カタロニア国際映画祭]]で上映され<ref name=ignshowreview>{{cite web|url=https://www.ign.com/articles/the-show-review-alan-moore|accessdate=2022-01-14|title=The Show Review |publisher=IGN|date=2020-10-08|archivedate=2021-10-27 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20211027024019/https://www.ign.com/articles/the-show-review-alan-moore}}</ref><ref>{{cite web|url=https://sitgesfilmfestival.com/eng/film?id=10006528|accessdate=2022-01-14|title=THE SHOW - Sitges Film Festival - Festival Internacional de Cinema Fantàstic de Catalunya|publisher= Sitges Film Festival|archivedate=2022-01-16 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220116171426/https://sitgesfilmfestival.com/eng/film?id=10006528 }}</ref>、翌年8月には英米の一部での劇場公開とデジタル配信が行われた<ref>{{cite web|url=https://bleedingcool.com/movies/alan-moores-movie-the-show-to-stream-widely-from-18th-of-october/|accessdate=2022-01-14|title=Alan Moore's Movie, The Show, To Stream Widely From 18th Of October|date=2021-08-26|archivedate=2022-01-18 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220118182503/https://bleedingcool.com/movies/alan-moores-movie-the-show-to-stream-widely-from-18th-of-october/}}</ref>。探偵らしき主人公がノーサンプトンを訪れる一種の[[フィルム・ノワール]]だが、奇矯な人物が横行する昼の街と、悪夢と死後の世界が入り混じった夜の街の間でシュルレアルなストーリーが展開される。ムーアはコメディアンの霊を演じている<ref name=polygonshowreview>{{cite web|url=https://www.polygon.com/2020/10/8/21508074/the-show-review-alan-moore-movie-sitges-2020|accessdate=2022-01-14|title=The Show review: Alan Moore’s weird fantasy movie is in theaters tonight only|publisher=Polygon|date=2021-08-26|archivedate= 2022-01-16|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220116171421/https://www.polygon.com/2020/10/8/21508074/the-show-review-alan-moore-movie-sitges-2020}}</ref>。[[IGN]]のレビューでは{{行内引用|クラクラするような謎で脳が溶けそうに感じるかもしれない。いい意味でかどうかは人による}}と書かれた<ref name=ignshowreview/>。{{行内引用|この映画の主役はノーサンプトンそのもの、そしてそこに住む素晴らしい才能を持ったクリエイターたちだ}}というムーアの言葉が語るように、生地への愛が込められた作品でもある<ref name=bbcshow>{{cite web|url=https://www.bbc.com/news/uk-england-northamptonshire-58911463|accessdate=2022-01-14|title=Alan Moore: First film is a 'love letter' to Northampton|publisher=BBC News|date=2021-10-21|archivedate=2022-01-19 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220119031746/https://www.bbc.com/news/uk-england-northamptonshire-58911463}}</ref>。

それらの映画の制作中、ムーアは作中に登場させる架空のラジオ番組やコンピューターゲーム、SNSの創作を楽しんだ<ref name=guardianinterview/>。その一つであったインタラクティブなコミックのアイディアは、{{仮リンク|アーツ・カウンシル・イングランド|en|Arts Council England}}の助成を受けたアプリ開発プロジェクトへと発展した<ref name=pipedream>{{cite web|url=https://pipedreamcomics.co.uk/interview-leah-moore-electricomics-alan-moore-digital-comics/|accessdate=2022-01-15|title=Leah Moore talks Electricomics, Alan Moore digital comics and iPad app|publisher=Pipedream Comics|date=2022-01-15|archivedate=2022-01-19 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220119052251/https://pipedreamcomics.co.uk/interview-leah-moore-electricomics-alan-moore-digital-comics/}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.comicbookresources.com/?page=article&id=53084|title=Alan Moore Launches Electricomics Digital Comics App|date=2014-05-28|website=[[Comic Book Resources]]|archiveurl=https://web.archive.org/web/20141006162736/http://www.comicbookresources.com/?page=article&id=53084|archivedate=2014-10-06|accessdate=2022-01-12}}</ref>。[[デジタルコミック]]制作の経験があった娘のリーア・ムーアがマネージメントを務め、ムーアもクリエイティヴ面から技術面まで関わった<ref name=pipedream/>。2015年にリリースされた ''Electricomics'' はインタラクティブ・コミック制作ツールキットと頒布プラットフォームが一体化したオープンソースアプリで、ムーアはそれを用いて[[ウィンザー・マッケイ]]作『[[リトル・ニモ]]』の続編という体裁の[[ディストピア]]物語 ''Big Nemo''{{翻訳|ビッグ・ニモ}}(作画{{仮リンク|コリーン・ドラン|en|Colleen Doran}})を発表した<ref>{{cite web|url=https://bleedingcool.com/comics/alan-moore-gives-us-a-tour-of-big-nemo-the-digital-world-of-electricomics/|date=2015-09-14|title=Alan Moore Gives Us A Tour Of 'Big Nemo' & The Digital World Of Electricomics|publisher=Bleeding Cool|accessdate=2022-02-16|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217101727/https://bleedingcool.com/comics/alan-moore-gives-us-a-tour-of-big-nemo-the-digital-world-of-electricomics/}}</ref><ref>{{cite web|url=https://bleedingcool.com/comics/alan-moore-and-colleen-dorans-big-nemo-to-be-a-print-comic-as-well-tb15/|accessdate=2022-02-17|title=Alan Moore And Colleen Doran's Big Nemo To Be A Print Comic As Well? #TB15|date=2015-11-15|publisher=Bleeding Cool|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217101729/https://bleedingcool.com/comics/alan-moore-and-colleen-dorans-big-nemo-to-be-a-print-comic-as-well-tb15/}}</ref>。[[ガーディアン]]紙は ''Electricomics'' を2015年のiPhone・iPadアプリの第19位に評価した<ref>{{Cite web|url=https://www.theguardian.com/technology/2015/dec/25/best-iphone-ipad-apps-2015|title=The Best iPhone and iPad apps of 2015|first=Stuart|author=Dredge|date= 2015-12-25|accessdate=2022-01-12|website=The Guardian|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160725151739/https://www.theguardian.com/technology/2015/dec/25/best-iphone-ipad-apps-2015|archivedate=2016-07-25}}</ref><ref group=†>[https://electricomics.net/news/ ''Electricomics'' 公式サイト]は2016年8月を最後に更新を停止している(2022年1月閲覧)。</ref>。

== 作風 ==
=== テーマ ===
==== 時間 ====
ムーアは自身の個人的な大テーマが{{行内引用|我々が時間として知覚するもの}}だと述べている{{sfn|Ayres|2021|pp=159–160}}。時間の感覚への関心はコミックメディアで時間を表現するための様々な実験に現れており{{sfn|Ayres|2021|pp=159–160}}、『ウォッチメン』では、時代の異なる様々なシーンのカットをコラージュする手法が使われている。読者はそれによって、登場人物が過去に行った選択と、その波紋が残る現在を同時に見て取り、一人の登場人物の全存在をいちどきに把握する<ref name=ImageTXT2004>{{Cite journal|last=Bernard|first=Mark|last2=Carter|first2=James Bucky|date=Fall 2004|title=Alan Moore and the Graphic Novel: Confronting the Fourth Dimension|url=https://imagetextjournal.com/alan-moore-and-the-graphic-novel-confronting-the-fourth-dimension/|journal=ImageTexT|volume=1|issue=2|accessdate=2021-03-21}}</ref>。そのように時空を一つの連続した構造としてとらえるのは特徴的な視点である。『ウォッチメン』のDr.マンハッタンはその時空観を体現したキャラクターで、常に過去・現在・未来を同時に知覚する能力を持っている。ムーアはコミックメディアの特性を生かした「継続的現在{{翻訳|continuous present}}」の語りによってマンハッタンの特異な感覚を表現している<ref name=ImageTXT2004/>。『フロム・ヘル』では作中人物の口を借りて数学者[[チャールズ・ハワード・ヒントン|チャールズ・ヒントン]]の時間理論『[[:en:wikisource:What is the Fourth Dimension?|第四の次元とは何か?]]』が紹介される<ref name=ImageTXT2004/>。
{{Quote|quote=時間は人間の幻想だというのだ。すべての時間は途方もなく巨大な永遠の中に同時に存在する。… 永遠のモノリスの内なる四次元的パターンは三次元的な存在にはつながりのない無関係な事物に見えるのだそうだ。|source=『フロム・ヘル』(2009年){{sfn|ムーア|2009|loc=chap. 2, pp. 14–15}}<ref name=ImageTXT2004/>}}
そして、同作の主人公は人間性を超越して歴史構造に偏在する四次元的な存在になろうとする<ref name=ImageTXT2004/>。

時空連続体と四次元性への関心はまた歴史のテーマとも結びついている{{sfn|Ayres|2021|p=159}}。
{{Quote|quote=私は物事をつとめて四次元的に見ようとしている。時間が四つ目の次元だとみなすなら、我々一人一人の存在意義、我々の生の意義をわずかにでも実感するには、それらの生がどこから来たのか、我々がどうやってここにたどり着いたのかを、個人のレベルであっても、あるいは文化や国家、旧石器時代にまで続く歴史のすべてであったとしても、必ず知らなければならない。私はそういうことに惹きつけられる。|source=アラン・ムーア(“The Dark Side of the Moore: An Interview”、2003年)<ref name=ImageTXT2004/>}}

==== リヴィジョニズムと間テクスト性 ====
ムーアの作風は「[[リヴィジョニズム]]」とされることが多い{{sfn|Ayres|2021|p=194}}。フィクションにおけるリヴィジョニズムとは、既存の作品やジャンルに大きな改作を行い、原典の持つ意味や隠れたイデオロギーを批評的に描いて新しい読み方を提示することをいう{{sfn|Ayres|2021|p=215}}。ムーアは80年代に『ウォッチメン』などのシニカルなストーリーによって「敬意の対象としてのヒーロー」という見方を過去のものにした{{sfn|Ayres|2021|p=195}}。それはスーパーヒーローの意味についての内向きの省察であると同時に、ジャンルの慣習を再編成してより広いテーマを取り込んでいく運動でもあった{{sfn|Ayres|2021|p=195}}。その結果、インモラルでニヒルなアンチヒーローや性・暴力描写の過激性を特徴とする「グリム・アンド・グリッティ」がメインストリーム界に流行することになったが、ムーアのリヴィジョニズムの本質ではない{{sfn|Ayres|2021|p=197}}。90年代以降のムーアはそのようなヒーロー像へのカウンターとしてコミックの原点に立ち返った{{行内引用|[[キッチュ]]とイノセンス}}を打ち出している{{sfn|Ayres|2021|p=196}}。

スーパーヒーロー・ジャンルの改作や[[パスティーシュ]]を除いても、古典文学からキャラクターを借用した「[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン|リーグ]]」や ''Lost Girls'' のように[[間テクスト性]]の強い作品が多い{{sfn|Ayres|2021|p=163}}。アンナリーザ・ディ・リッドはムーアの作品に{{行内引用|[[引用|引用句]]、[[引喩]]、[[パロディ]]、… 良く知られた作品やパターンの再検討}}という形で常に間テクスト性が見られると述べている{{sfn|Ayres|2021|pp=161–162}}。英文学者福原俊平はその例として、{{行内引用|『[[1984年 (小説)|1984年]]』を思わせるディストピア国家で、『[[フランケンシュタイン]]』の怪物のように人体実験によって力を得た人物が、[[ガイ・フォークス]]の仮面を身に着けて、『[[マクベス]]』を引用しながら登場する}}『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』を論じている<ref name=fukuhara/>。{{仮リンク|ダグラス・ウォーク|en|Douglas Wolk}}はムーアの作品のほとんどが既存のポップカルチャーを掘り下げる形で書かれていると論じ、{{行内引用|著作リストのうち完全にオリジナルなのは片手で数えられるくらい}}と言っている{{sfn|Ayres|2021|pp=163, 207–208}}{{refnest|ウォークが挙げるオリジナル作品は『Vフォー・ヴェンデッタ』、''A Small Killing''、''Ballad of Halo Jones''、''Big Numbers'' である{{sfn|Wolk|2007|p=230}}。|group=†}}。エアーズはムーアを{{行内引用|既存のテクストを取り上げて作り変え、新鮮で力強く、なおかつ原典と豊かに響き合う何かを生み出す}}才能を持つ{{行内引用|熟練の翻案家}}と呼び{{sfn|Ayres|2021|p=207}}、カーペンターは{{行内引用|本質は辛辣な風刺作家}}としている{{sfn|Carpenter|2016|p=360}}。

ランス・パーキンはムーアの間テクスト性の源流をコミック原体験に求め、スーパーヒーロー・コミックが過去の物語の絶えざる語り直しであり、それ自体の歴史や神話を題材とする自己完結的なメディアだと指摘した。ムーアはコミックの歴史を単に継承するのみならず転覆・改変させ、さらに小説やジャーナリズムのようなあらゆるナラティヴを包含していったのだという{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 60–74/2302}}。福原はその間テクスト的な運動が{{行内引用|物語が持つ可能性に値するムーアの信念の反映}}であり、コミックの形式を変革するため、また作品に{{行内引用|時代と地域を超えた普遍性}}を与えるために活用されていると論じた<ref name=fukuhara/>。

==== 社会性・政治性 ====
作品に社会的・政治的観点を導入する傾向が強く、大手出版社から出たスーパーヒーロー・ジャンル作品でもそれは変わらない{{sfn|Ayres|2021|p=203}}。大衆文化の研究者コーリー・クリークマーは、ムーアの同ジャンルへの関心が一つには{{行内引用|もしヒーローが実在したらどんな政治的機能を果たすか?}}という社会的な問いだったと述べている{{sfn|Ayres|2021|p=196}}。後進の原作者に向けて書かれた1985年のエッセイでは、コミックがファンのノスタルジーや現実逃避に奉仕するだけでは{{行内引用|グリーティング・カード業界}}と同じくらいの関心しか持たれないと説き、今日性のある作品を書くことを強く勧めている{{sfn|Parkin|2013|p=109}}{{sfn|Moore|2003|p=2}}。
{{Quote|quote=… 人種関係や環境汚染を扱った作品のことだけを言っているわけじゃない。それも確かに重要だが。私が言っているのは、我々を取り巻くこの世界にとって何かしら意味を持つ作品ということだ。20世紀が幕を閉じようとしている中に置かれた生の本質と手触りを映し出す作品、何かのために有用な作品だ。|source=アラン・ムーア(''On Writing for Comics''、1985年){{sfn|Moore|2003|p=2}}}}
そして、人生に必ず政治的な要素が関わるように、芸術が生と関わろうとする限りそこに必ず政治的な観点が生じるのだと言っている{{sfn|Parkin|2013|p=10}}。

2012年の論説 "Buster Brown at the Barricades"{{翻訳|バリケードの中のバスター・ブラウン{{refnest|『{{仮リンク|バスター・ブラウン|en|Buster Brown}}』は20世紀初頭のコミック・ストリップ作品。作者{{仮リンク|リチャード・F・アウトコールト|en|Richard F. Outcault}}と掲載紙の間で著作権の帰属が争われたことで知られる<ref>{{cite web|url=https://www.tcj.com/outcault-goddard-the-comics-and-the-yellow-kid/|accessdate=2022-03-18|title=Outcault, Goddard, the Comics, and the Yellow Kid|publisher=The Comics Journal|date=2016-06-09}}</ref>。|group=†}}}}において、コミックを民衆による政治表現の伝統に連なるものとして論じている{{sfn|Ayres|2021|p=202}}。そこでムーアは、コミックの歴史が風刺的[[カートゥーン]](1コマ漫画)に始まったと述べ、{{行内引用|支配者、神、制度への健全な懐疑主義に根差した偉大な伝統 … 真に大衆的な芸術形式であり、広くいきわたった事なかれ主義に縛られず、人々の抗議に声を与えることもでき、正しく使われれば社会変革の道具としてこの上ない力を発揮することできる<ref name=wiredbuster/>}}と書いた。その本来の姿が、1930年代に成立したコミック出版によって{{行内引用|エンターテインメント産業の一部品<ref name=wiredbuster/>}}に堕したというのがムーアの主張だった{{sfn|Parkin|2013|p=325}}{{sfn|Ayres|2021|p=202–204}}。ムーアの作品は大なり小なり作者の{{行内引用|[[アナキズム|アナキスト]]的、[[左派リバタリアニズム|左派リバタリアン]]的}}価値観を反映しており、自身の言うコミックの伝統を受け継いでいるといえる{{sfn|Ayres|2021|p=203}}。

==== 魔術 ====
1993年、40歳の誕生日に[[儀式魔術師]]になると宣言し、作家としてのキャリアの{{行内引用|必然的な最終ステップ}}だと述べた<ref name="Moore Documentary">{{Cite AV media|last=DeZ Vylenz (Director)|date=2008-09-30|title=The Mindscape of Alan Moore|url=https://www.imdb.com/title/tt0410321/|publisher=Shadowsnake Films}}</ref>。2001年のインタビューでは、1990年代の始めに[[フリーメイソン]]や[[神秘学]]の[[シンボリズム]]を大きく扱った『[[フロム・ヘル]]』の執筆中にその決断が訪れたと語っている。きっかけになったのは、主人公の神秘主義者ガルが口にする{{行内引用|議論の余地なく神々が存在する場所、それは我らの精神の中だ{{sfn|ムーア|2009|loc=chap. 4, p. 18}}}}というセリフだった。ムーアは自分が無意識に真実を言い当ててしまったと考え、{{行内引用|人生を根底から再構築}}して独学で魔術を学び始めた<ref name="Babcock"/><ref name="Moore's murderer"/>。後に振り返って、それまでの理知的な作風が形骸化するのを避けて新しい境地を開くために神秘学が必要だったのだと語っている<ref name="Babcock"/>。
{{Quote|quote={{interp|『[[ウォッチメン]]』と『[[フロム・ヘル]]』を書いた後で}} 理詰めの創作については理解の限界に達した気がした。その先に進むためには理性を超える一歩が必要に思えた。次の一歩の足場となってくれる唯一の領域が魔術だった。物事の新しい見方、進み続けるための新しい道具一式となってくれそうだった。『ウォッチメン』を何度も繰り返せないことは分かっていたし、それと同じくらい、『フロム・ヘル』をいくらでも繰り返せることも分かっていた。|source=アラン・ムーア(2003年)<ref name="Babcock"/>}}

ムーアは魔術を軸にして言語や芸術、集合的想像力についての考え方を再構成した{{sfn|Ayres|2021|p=13}}。ムーアによると魔術と芸術はいずれも象徴を用いて他者の意識を変化させる行為であり、いずれも個人の変化を通じて世界を変革することができる{{sfn|Ayres|2021|pp=166–167, 215}}。実際に人類の歴史の中で魔術は絵を描く・言葉を書くといった営みと同じ役割を果たしてきたのだという<ref name="Babcock"/>。
{{Quote|quote=魔術は芸術だ。そして芸術とは、それが音楽であれ、執筆や彫刻やほかのいかなる形式であれ、言葉通りの意味で魔術なのだ。芸術は魔術と同じく言葉や図像による象徴を操って意識を変化させる科学だ。… まさに呪文{{翻訳|spell}}をかけることは言葉をつづって{{翻訳|spell}}人々の意識を変えることであり、それゆえに現代世界で最も[[シャーマニズム|シャーマン]]に近いのは芸術家や作家なのだ。|source=アラン・ムーア(2005年、''The Mindscape of Alan Moore'')<ref name="Moore Documentary" />}}

ムーアの秘術学は[[変性意識状態|変性意識論]]と密接にかかわっている{{sfn|Ayres|2021|p=215}}。ムーアは20世紀前半の神秘家[[アレイスター・クロウリー]]が残したカバラ研究や著作に興味を抱き、クロウリーが提唱した宗教[[セレマ]]から「[[真の意志|真の意思]]」は[[汎神論]]的な宇宙の意思とつながっているという考えを学んだ<ref name="Moore Documentary"/>。魔術を実践し始めたころは儀式に向精神性の[[サイケデリック・ドラッグ]]を用いていた。{{行内引用|恐ろしい体験だった。意味をなさない奇妙な言語で罵り散らしながらグラスを覗き込むと、一人の小人が語り掛けてくる。すごく効いたよ}}<ref name="Moore's murderer"/>。『プロメテア』の構想を得たのは[[マジックマッシュルーム]]を食べて[[カバラ]]の[[生命の樹 (旧約聖書)|生命の樹]]について瞑想していた時だとも発言している<ref name= ricker>{{cite journal|last=Ricker|first=Aaron|title=Sex Magic, Kabbalah, and Feminist Imagination in Alan Moore's Promethea|volume=9|issue=1|issn=1549-6732|journal=ImageTexT|year= 2017|accessdate=2019-08-16|url=http://imagetext.english.ufl.edu/archives/v9_1/ricker/|archivedate=2022-02-26 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220226032151/http://imagetext.english.ufl.edu/archives/v9_1/ricker/}}</ref>。しかし後に、その種の体験は一般的な創作への没入と同じものだと考えるようになり、ドラッグは使わなくなった<ref name="Babcock"/>{{sfn|Parkin|2013|p=276}}。

ランス・パーキンはムーアの魔術的な思考体系は三つの要素にまとめられると述べている。{{仮リンク|心理地理学|en|psychogeography}}、蛇神信仰、「[[イデア]]空間 (Idea Space)」である{{sfn|Parkin|2013|p=282}}。ムーアはパフォーマンス・アート公演を通じてこれらを解説している{{sfn|Parkin|2013|pp=280–281}}。

ムーアの創作における心理地理学は、土地の歴史と景観を深く掘り下げることで{{行内引用|我々が暮らし、生涯を過ごす街の意味(そして住民である我々自身の意味)を感得する方法}}をいう{{sfn|Parkin|2013|p=272}}。主人公がロンドンの史跡を巡ることで男性性と女性性の神話的闘争を読み取っていく『フロム・ヘル』はその典型である{{sfn|Parkin|2013|p=272}}。ムーアはこの発想をイアン・シンクレアの著書 ''White Chappell, Scarlet Tracings''(1987年)から学んだ{{sfn|Parkin|2013|p=272}}。心理地理学はフランスの前衛的な[[シチュアシオニスト・インターナショナル|シチュアシオニスト]]からシンクレアら英国の[[ポストモダニズム|ポストモダン]]作家に受け継がれた文学的傾向で{{sfn|Ayres|2021|p=215}}{{sfn|Parkin|2013|p=273}}、消費者主義や商品化に基づく都市開発への抵抗という性格がある{{sfn|Parkin|2013|p=274}}。ムーアの小説 ''Voice of the Fire'' や ''Jerusalem'' 、雑誌 ''Dodgem Logic''、映画 ''The Show'' なども出身地ノーサンプトンの歴史、神話、文化を掘り下げた心理地理学的な作品である{{sfn|Ayres|2021|pp=169–170}}。

[[ファイル: Glycon (51644816839).jpg|サムネイル|左|160px|2世紀に作られた蛇神グリュコンの像。]]
「蛇神」はローマ時代の神[[グリュコン]]を指す。ムーアは1994年以来この神を崇めていると公言しており、[[マジックマッシュルーム]]を服用することで交信したとも語っている{{sfn|Parkin|2013|pp=274–275}}。グリュコンは{{仮リンク|アボヌテイコスのアレクサンドロス|en|Alexander of Abonoteichus}}として知られる預言者が創始した教団の信仰対象だが、同時代の[[ルキアノス]]によると人形の頭を被せた大蛇に過ぎなかった<ref>{{Cite journal|和書|author=前野弘志|year=2018|title=ある魔術師のサクセスストーリー : ルキアノス『偽預言者アレクサンドロス』|url=https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/list/HU_journals/AA11643449/78/--/item/46855|journal=広島大学大学院文学研究科論集|volume=78|pages=15&ndash;41|accessdate=2022-01-08}}</ref>。ムーアはグリュコンが{{行内引用|完全な作り事}}だということを認めているが、それでも{{行内引用|神とは神の概念のこと}}なのであって、アレクサンドロスの人形は正しく神の現れなのだという<ref name="Babcock"/><ref name="SLATEDW">{{cite magazine|url=http://www.slate.com/id/2092739/sidebar/2092745/ |title=Sidebar: How Alan Moore transformed American comics |last=Wolk |first=Douglas |date=2003-12-17 |magazine=Slate|accessdate=2022-01-12|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080928000657/http://www.slate.com/id/2092739/sidebar/2092745/ |archivedate=2008-09-28 |url-status = live}}</ref>。[[ペイガニズム|ペイガン]]研究者イーサン・ドイル=ホワイトはこう書いている。{{行内引用|ムーアが主張するように想像力は現実そのものと同じくらいリアルなのだから、グリュコンがおそらく巨大なペテンだったという事実そのものが、ムーアにとってはその恐るべき神への信仰に身を捧げるのに十分な理由だった}}<ref name="Doyle-White, Ethan 2009">{{Cite journal|last=Doyle-White|first=Ethan|date=Summer 2009|title=Occultic World of Alan Moore|journal=Pentacle|issue=29}}</ref>

魔術研究から発想された「イデア空間」は人間の[[意識]]活動を空間のメタファーで表したもので、意識研究でいう[[クオリア|クオリア空間]]と近い<ref name="Babcock"/>。ムーアはそのモデルを用いて個人的・集団的な想像力から文化が生成するダイナミックなプロセスを説明している{{sfn|Ayres|2021|p=117}}。
{{Quote|quote=イデア空間とは、{{仮リンク|心的出来事|en|Mental event}}が起きる場所と言える、おそらく普遍的な空間だ。われわれ一人一人の意識はこの広大な宇宙的空間とつながることができる。ちょうど、人はそれぞれ自分の家を持つが玄関の外の道路は全員に属するようなものだ。概念はこの空間にあらかじめ存在する[[形相]]であるかのように考えられる。… この精神空間にありうる広大な土地はイデア、すなわち概念からなっており、大陸や島々の代わりに大規模な信念体系や哲学がある。[[マルクス主義]]もそうだろう。ユダヤ教・キリスト教系宗教もだ。|source=アラン・ムーア(2005年、The Mindscape of Alan Moore)<ref name="Moore Documentary"/>}}
この、芸術家や作家がアイディアを引き出してくる共通の集合意識空間という考えは、ムーアの[[間テクスト性|間テクスト]]的な作風と深く結びついている{{sfn|Ayres|2021|pp=162, 215}}。''Lost Girls'' のように既存のテクストを基礎にしている作品はイデア空間のモデルで論じられる。後年の作品にはイデア空間が「フィクションの登場人物や概念が住む、現実と相互作用する異空間」という形で繰り返し扱われており(『[[プロメテア]]』の「想像界 (Immateria)」など){{sfn|Ayres|2021|pp=162–163}}、神秘学への転回以前の作品にも萌芽的な形で見られる(1986年の短編 ''In Pictopia'' など){{sfn|Parkin|2013|p=272}}。ジャクソン・エアーズはこれらを{{行内引用|理想化された[[パブリック・ドメイン]]}}と呼び、著作権の過剰適用<!--maximalist copyright regimes-->や企業によるオーサーシップから間テクスト的な芸術活動を守るための{{行内引用|寓話}}として論じた{{sfn|Ayres|2021|p=164}}。

==== 女性やマイノリティの描写 ====
[[ファイル:Golliwogg1.jpg|右|サムネイル|200px|[[フローレンス・ケイト・アプトン]]が描いた[[ゴリウォーグ]]とオランダ人形たち(1895年)。]]
マーク・シンガーは2019年に、ムーアの作品には{{行内引用|[[人種差別]]的、[[異性愛規範]]的、[[ミソジニー|女性嫌悪]]的な表現}}が見られるにもかかわらず、過去の論者はそれをある種の批評として解釈することで見過ごしてきたと主張した{{sfn|Ayres|2021|p=177}}。ただし、数多くの作品の中でマイノリティや性的暴力の描き方が一貫しているわけではなく、その裏にあるムーアの思想を単純に図式化するのは難しい<ref name=vulturewhy/>{{sfn|Ayres|2021|p=188}}。これらの表現を批判しているジャーナリストのローラ・スネッドンも、ムーアが{{行内引用|芸術、[[男女同権]]、[[フェミニズム]]などで明確に女性を支持しており、コミック業界が抱える女性嫌悪と多様性欠如の問題を糾弾してきた}}ことは認めている{{sfn|Ayres|2021|p=185}}。

ムーア作品で人種描写に関して批判されるのは ''The League of Extraordinary Gentlemen: The Black Dossier'' が代表である{{sfn|Ayres|2021|p=177}}。同作では、ヴィクトリア朝時代の絵本作家[[フローレンス・ケイト・アプトン]]が作りだした黒人風のキャラクター、[[ゴリウォーグ]]が(名前を変えて)登場する<ref name=tcjprovidence/>。これはある観点では{{行内引用|人種差別的な図像、ひいては人種差別思想に基づくメッセージ}}を再生したことになる{{sfn|Ayres|2021|p=177}}。ムーアと作画家ケヴィン・オニールは、ゴリウォーグに人種差別的ステレオタイプという意味付けがされる以前にアプトンがイメージしていたオリジナルを再現しただけだと主張している{{sfn|Ayres|2021|p=177}}。しかし ''The Black Dossier'' のゴリウォーグは「性的能力に優れている」という黒人のステレオタイプそのものの描写がなされており{{sfn|Ayres|2021|p=178}}、またアプトンのゴリウォーグがそもそも[[ブラックフェイス]]と同じような人種差別的文化の産物だという指摘もある{{sfn|Ayres|2021|p=177}}<ref name=tcjprovidence/>。コミック研究者クレイグ・フィッシャーはムーア自身の人種差別意識に加えて{{行内引用|西洋文化の中で人種差別的イメージが力を持ち続けていること}}の露悪的な告発、そして「ステレオタイプの誇張したパロディ」という多面的な意味があるのではないかと書いている<ref name=tcjprovidence/>。

ジャクソン・エアーズの考察によると、ムーアの作品は表向きリベラルな傾向が強く、明確に人種差別批判を意図して書かれている作品もある{{sfn|Ayres|2021|p=180}}。ナチズムを継承した人種主義的な独裁政権が敵役となる『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』や{{sfn|Ayres|2021|p=180}}、スーパーヒーロー神話と[[白人至上主義|白人優越主義]]の神話を結び付けて再考した『[[ウォッチメン]]』はその例である{{sfn|Ayres|2021|p=179}}。しかし『ヴェンデッタ』が完全に白人主人公たちのドラマとして描かれ、迫害される当の少数者が不在であるように、実際の描写が逆の効果を生む部分があるのだという{{sfn|Ayres|2021|p=180}}。[[性的指向]]の描写についても同様で、ムーア自身は[[クィア]]への[[ストレート・アライ|支援者]]を自認しており、同性愛擁護のチャリティ出版を行ったこともある{{sfn|Ayres|2021|p=181}}。『ウォッチメン』でも[[ホモフォビア|同性愛嫌悪]]の不当性が描かれている{{sfn|Ayres|2021|p=182}}。しかしエアーズによると、同作にはスーパーヒーロー・ジャンルが病的なクィアネスや暴力性の産物であるかのような描写が見られ、やはり異性愛規範を強化するような読み方ができる{{sfn|Ayres|2021|pp=182–185}}。

女性に対する性的暴力がムーア作品に頻出することは多くの批評家によって指摘されており<ref name=tcjprovidence>{{cite web|url=https://www.tcj.com/providence-lovecraft-sexual-violence-and-the-body-of-the-other/|accessdate=2022-02-27|title=Providence: Lovecraft, Sexual Violence, and the Body of the Other|publisher=The Comics Journal|date=2016-02-03|archivedate=2021-12-30 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20211230193555/https://www.tcj.com/providence-lovecraft-sexual-violence-and-the-body-of-the-other/}}</ref>、そこに何らかの固執や女性嫌悪を読み取ることもできる。ムーア自身の説明によると、生地ノーサンプトンの「バロウズ」地区は非常に治安が悪く、身近に多くのレイプ被害者がおり、レイプは現実の一部であって正面から取り扱う価値がある<ref name=vulturewhy/>。しかしレイプをエロティックなものとしては扱わない、物語を刺激的にするためだけにはレイプを用いない、被害者に見せられないようなものは書いていない、というのだった<ref name=vulturewhy/>。実際、全編で性器と性行為を描いているポルノ作品 ''Lost Girls'' でもレイプは1シーンでしか登場させず、それも画面外の描写にとどめたという<ref name=vulturewhy/>。一方で『[[バットマン: キリングジョーク]]』では歴史の長い女性キャラクターが性的に辱められ、暴力の後遺症で下半身不随になる{{sfn|Ayres|2021|pp=65–66}}。その衝撃とムーアの高名が相まって、同作はスーパーヒーロー・ジャンルにおいて女性への(性的な)暴力が「シリアスさ、深み」として受け取られる風潮の一因となった{{sfn|Ayres|2021|p=187}}。『キリングジョーク』は批評家やファンから批判を集めており、ムーア自身も後年には「暴力描写が作品に何の価値も与えていない」失敗作だと評価している{{sfn|Ayres|2021|pp=66, 186}}。『ウォッチメン』には暴力的なレイプが描かれ、その被害者と加害者が後になって合意の上で性的関係を結ぶ。ムーアの説明では、被害者のキャラクターがレイプを受け入れているわけではなく、{{行内引用|人は直観に反するような行動を取ることがあり、性や愛が絡むとなおさらそうだ}}といった考えがあるのだという{{sfn|Ayres|2021|p=185}}。しかしエアーズによると、そのようなあいまいさが[[強姦神話|レイプ神話]]への賛同を隠し持っていると受け取る余地がある{{sfn|Ayres|2021|p=185}}。

=== 技法 ===
==== 形式と構成 ====
ムーアの作品は結末まであらかじめ緻密に構成されているのが特徴で{{sfn|Wolk|2007|p=234}}、自身でもキャリア初期には{{行内引用|構成の[[フェティシズム|フェティシスト]]}}だったと語っている{{sfn|Parkin|2013|p=111}}。プロデビューから数年後に書かれたコミック原作の指南書 ''On Writing for Comics''(1985年)では、自身が読者を惹きつけるために用いた構成のパターンとして以下を紹介している{{sfn|Parkin|2013|p=111}}{{sfn|Moore|2003|pp=15–16}}。
*物語の途中から語り始め、過去と未来の出来事を同時に語り進めていく
*[[枠物語]]の構成
*複数の観点から同じ物語を語り、徐々に全貌を明らかにしていく
*結末と冒頭が何らかの要素でつながっている円環的な構成
未刊の大作 ''Big Numbers''(1990年)は特に入念に構成が練られており、40人に及ぶ登場人物がそれぞれ12号にわたって展開するプロットを巨大な表にまとめて管理していた{{sfn|Groth|1990a|p=81}}。''Lost Girls '' では1章8ページのフォーマット{{refnest|1930年代から40年代の米国で人気だったポルノ・コミック「[[ティファナ・バイブル]]」が8ページの冊子だった{{sfn|Parkin|2013|pp=340–341}}。|group=†}}が構成のモチーフになっている{{sfn|Ayres|2021|p=160}}。形式上のシンメトリーへのこだわりも強く{{sfn|Ayres|2021|p=29}}{{sfn|Wolk|2007|p=234}}、コマ割りのシンメトリーを前面に出して高評価を得た『ウォッチメン』第5号「恐怖の対称形」などは、冒頭からの1ページ目、2ページ目…が最後から1ページ目、2ページ目…の鏡像となっている{{sfn|Ayres|2021|p=80}}{{sfn|Carpenter|2016|p=66}}。ダグラス・ウォークによると、ムーアの遊びのない構成は読んでいて息が詰まるほどだが、ジャンルや物語構造の定型を覆して読者の予想を裏切っていく作風がそれを緩和させている{{sfn|Wolk|2007|p=234}}。

ムーアのコマ割りは技巧的で{{sfn|Ayres|2021|p=160}}、テーマやプロットではなく{{行内引用|純粋にテクニック的な仕掛けや、コマ進行の方法}}の思いつきから一つの作品が生まれることもあるという{{sfn|Parkin|2013|p=111}}。コマ間の移動ではコントラストや反復が強く意識されている{{sfn|Ayres|2021|p=160}}。次のシーンに移るタイミングでは、読者のストーリーへの没入が途切れないように、前のシーンのセリフの一部を次のシーンにオーバーラップさせたり、図像や色彩を引き継がせたりといったテクニックが使われている。特に『ウォッチメン』で顕著である{{sfn|Perkin|2013|p=113}}{{sfn|Moore|2003|pp=16–17}}。ただしムーアはこれらがすぐに[[クリシェ]]化したと考え、以降の作品では多用していない{{sfn|Moore|2003|p=44}}。

[[ファイル: WatchmenBloodySmiley.png|右|140px|サムネイル|『ウォッチメン』を象徴する[[スマイリーフェイス|スマイリーバッジ]]<ref>{{cite web|url=https://screenrant.com/watchmen-smiley-badge-logo-blood-meaning-explained/|accessdate=2022-03-22|title=Watchmen’s Smiley Badge Logo Explained: What The Blood Tear Means|date=2019-08-21}}</ref>。]]
コマの中には膨大なディテールが描きこまれている{{sfn|Ayres|2021|p=160}}。『ウォッチメン』の冒頭第1コマは「血に汚れた[[スマイリーフェイス|スマイリーバッジ]]が街路に落ちている」というだけの構図だが、原作スクリプトでその部分の説明は日本語にして1500字を超えていた<ref name=cinemore>{{cite web|url=https://cinemore.jp/jp/erudition/1590/article_1591_p4.html|accessdate=2022-03-04|title=『ウォッチメン』原作の持つ迷宮的魅力。その再現にこだわりぬいたザック・スナイダー :4ページ目|publisher=CINEMORE|author=稲垣哲也|date=2020-08-22}}</ref>。丸いバッジに血で描かれた時計の針は真夜中の5分前を指している。これは『ウォッチメン』全編に散りばめられた[[終末時計]]の[[メタファー]]の一つ目である{{sfn|Parkin|2013|p=190}}。時計やカウントダウンのイメージは作品の随所に偶然のように置かれており、バッジそのものも後のシーンで再登場する{{sfn|Parkin|2013|p=190}}。このような、危うく見過ごしてしまうようなディテールを完全にコントロールするのがムーアのやり方だった<ref name=cinemore/>。

多くのイメージが織りなすパターンや、偶然の絡み合いによる多重構造のストーリーはムーアが好んで用いたもので、[[カオス理論]]と数学的構造をモチーフにした ''Big Numbers'' はその代表といえる{{sfn|Parkin|2013|p=267}}。同作では偶然のパターンそれ自体がテーマの一つとなっており、ストーリーが進み作中でカオス理論が解説されるにつれて、物語の冒頭から何度も登場していた[[フラクタル]]パターンの図像が読者の中で大きな意味を持ち始めるように構成されていた{{sfn|Groth|1990b|pp=100&ndash;101}}。

絵と言葉で相反する内容、もしくは一見無関係な内容を伝え、それによって重層的な意味を生み出す{{行内引用|[[アイロニー|アイロニック]]な対位{{翻訳|counterpoint}}}}は特徴的な技法である{{sfn|Ayres|2021|p=160}}{{sfn|Parkin|2013|p=91}}。対位や並置{{翻訳|juxtaposition}}はテーマのレイヤーでも見られる{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 399/2302}}。''On Writing for Comics'' では、自作「他に何を望もう」の結末を例に取って「夢から現実に戻った主人公/白日夢に陥るヴィラン」の対位を置いたと書いている。また文章表現のテクニックとして、美しい夕暮れを「リストカットの血」のような陰鬱なイメージの言葉だけで描写した自作品を挙げて{{行内引用|その二つの感覚を並置させると刺激的で心地よく感じられた}}と述べている{{sfn|Moore|2003|pp=39–40}}。

==== 異なるメディアとの関係 ====
ムーア作品は文学の観点から分析されることが多い(そのため、コミックという形式に固有の要素が見落とされがちだという指摘もある){{sfn|Ayres|2021|pp=160–161}}。ダン・メイザーとアレクサンダー・ダナーはムーアの「文学的」な文章を{{行内引用|詩的なナレーションと鋭い社会批評}}の組み合わせだと呼んだ。一方でダグラス・ウォークは美文調の文章が装飾過剰に傾く場合があると述べている{{sfn|Ayres|2021|p=160}}。文学に限らず、コミックに異なるジャンル・形式・メディアを取り入れる傾向も見られる{{sfn|Ayres|2021|p=161}}。たとえば『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』第2巻冒頭はミュージカル風に進行し、劇中歌の楽譜が添えられている{{sfn|Ayres|2021|p=46}}。{{仮リンク|パラテクスト|en|Paratext}}{{refnest|書籍であれば[[エピグラフ]]や序文、コミックブックであれば[[アメリカン・コミックスの読者欄|読者ページ]]、編集後記、広告、ピンナップなど、本文に添えられて解釈に影響を与えるテクストをいう{{sfn|Ayres|2021|p=215}}。|group=†}}を効果的に利用した作品もあり、コミックに併載された文章や地図、ポストカードなどが本編ストーリーと交錯する ''The Black Dossier'' はその代表である{{sfn|Ayres|2021|p=161}}。

その一方で、コミックに文学や映画のような周辺メディアから独立した価値を与えようという意識も強い<ref>{{Cite web|url=http://www.au.timeout.com/sydney/film/features/4187/alan-moore|title=Alan Moore – Writer of ''Watchmen''|author=Dent|first=Nick|website=Time Out Sydney|date=2009-03|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120723003721/http://www.au.timeout.com/sydney/film/features/4187/alan-moore|archivedate=2012-07-23|accessdate=2022-02-18}}</ref>。ムーアは近代コミックが映画から取り入れた技法によって成立していることを認めており、自身でも「[[ロングショット]]」「[[パン (撮影技法)|パン]]」のような映画用語で原作を書いている。しかし映画的な技法はあくまで「知らないよりはいい」ものでしかない{{sfn|Moore|2003|p=3}}。{{行内引用|映画だけを基準に考えるなら、コミックはせいぜい動かない映画にしかなれない。私は80年代の半ばになってから、コミックにしか成しえないことを追求した方がいいと思うようになった}}のだという<ref name="Moore Documentary"/>。文学についても、それを目標にしても{{行内引用|視野の広さ、深み、意義に欠ける小説}}になってしまうと書いている{{sfn|Moore|2003|p=3}}。映画の流れるような視覚的ストーリーテリングと、思いを凝らしながら時間をかけて読む小説の読み方を両立させるのがムーアの一つの答だった{{sfn|Moore|2003|p=5}}{{sfn|Ayres|2021|p=6}}。

後の2001年に書かれた『[[プロメテア]]』第12号は、小説家[[スザンナ・クラーク]]によると{{行内引用|アラン・ムーアのコミックが小説や映画などには及びもつかないことをやってのけられると見事に証明している}}例である<ref name=telegraphsusanna/>。同作は[[韻文]]、[[アナグラム]]、[[言葉遊び]]を駆使し、重層的な語りとヴィジュアルなイメージの絡み合いによって[[タロット]]の象徴と宇宙の歴史を解説する内容で、ひとつながりの巻物のような特異なレイアウトがなされていた。ムーア自身もその出来には満足していると語っている<ref name=telegraphsusanna/><ref name= Fischer>{{cite journal|journal=Iowa Journal of Cultural Studies|volume=6|issue=1|year=2005|last=Fischer|first=Craig|title=Charmageddon! Or, the Day Aleister Crowley Wrote Wonder Woman|doi= 10.17077/2168-569X.1129}}</ref>。

==== ストーリー上の傾向 ====
『マーベルマン』、『スワンプシング』、『スプリーム』など、既存のコミック作品の原作を請け負ったときムーアが何度も取った手段は{{行内引用|過去の経緯を一掃し、主人公を記憶喪失にし、それまで書かれたあらゆることが嘘だったと明かす{{Sfn|Parkin|2002|p=58}}}}{{行内引用|ちゃぶ台返し<ref>{{cite journal|和書|journal=映画秘宝|author=石川裕人|title=このアラン・ムーアを読め! WILDC.A.T.S.|page=27|year=2009|volume=15|issue=5}}</ref>}}である{{Sfn|Parkin|2002|p=58}}。そうすることで過去の[[カノン (文芸)|カノン]]に縛られずにキャラクターをリブートするのである。この方法はコミック界でごく一般的に使われるようになっている{{sfn|Parkin|2013|p=149}}。作画家{{仮リンク|ジョセフ・ルービンシュタイン|en|Josef Rubinstein|label=ジョー・ルービンシュタイン}}は[[スパイダーマン]]のような歴史のあるキャラクターを書くと制約が多いという話に続けて{{行内引用|アラン・ムーアなら話は別だ。ムーアならたぶんスパイダーマンを殺して、本物の蜘蛛か何かとして復活させるだろう}}と述べたことがある<ref>{{Cite news|last=Henderson, Chris|date=July 1986|title=Joe Rubinstein|newspaper=Comics Interview|issue=36|page=49|publisher=Fictioneer Books}}</ref>。

=== 原作執筆のスタイル ===
アメリカン・コミックの[[スクリプト (アメリカンコミック)|スクリプト]](原作脚本)は出版社や書き手によって形式が異なるが、ムーアは長大細密な散文を書くことで知られている{{sfn|Parkin|2013|p=114}}。通常の5&ndash;6倍の長さがあり<ref name=rereadviolator>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/06/11/the-great-alan-moore-reread-violator/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: ''Violator''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-06-11|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015042/https://www.tor.com/2012/06/11/the-great-alan-moore-reread-violator/}}</ref>、コマ割りや各コマの構図、ディテールが事細かに指示されている{{sfn|Ayres|2021|p=7}}。さらに背景知識や演出意図、シーンの雰囲気までもが豊富に盛り込まれている{{sfn|Ayres|2021|p=7}}<ref name=tcj2020>{{cite web|url=https://www.tcj.com/providence-was-really-exhausting-finishing-it-felt-like-finishing-college-an-interview-with-jacen-burrows/|accessdate=2021-10-08|title="Providence Was Really Exhausting. Finishing It Felt Like Finishing College": An Interview With Jacen Burrows|publisher=The Comics Journal|date=2020-10-06|archivedate= 2021-10-08|archiveurl= https://web.archive.org/web/20211008115858/https://www.tcj.com/providence-was-really-exhausting-finishing-it-felt-like-finishing-college-an-interview-with-jacen-burrows/}}</ref>。『[[フロム・ヘル]]』を共作したエディ・キャンベルの言によると{{行内引用|ほかの原作者なら「雨が降っている」と書いて済ませるところでも、ムーアのスクリプトでは「雨音は気が滅入るようなロシアの長編小説のリズムで途切れ途切れのモールス信号を打電する」となる}}{{sfn|Parkin|2013|p=125}}。DCコミックスで『[[スワンプシング]]』を担当した編集者[[カレン・バーガー]]は次のように語っている。
{{Quote|quote=すべてのコマが隅から隅まで絵として描写されていた。アランは確か、挫折した作画家だったはずだ。… 作画家になろうとしてこの世界に入ったので、原作のアプローチもまるで絵を描いているかのようだった。… その上で、やはり優れた作家だったから、アートディレクションの文章なのに読んで面白かった。|source=カレン・バーガー(2012年){{sfn|Carpenter|2016|pp=50, 466}}}}
原作を書くとき、共作する作画家が誰かということは常に念頭にあるという{{sfn|Groth|1990b|p=105}}。批評家ダグラス・ウォークは、絵によるストーリーテリングの重要性を熟知していたムーアにとって、スクリプトは作画家に思いのたけを伝える{{行内引用|恋文}}だったと書いている{{sfn|Wolk|2007|p=234}}。ほとんどの共作者はムーアのスクリプトが読み物としても興味深く、いい経験だったと語っている。ただし[[ロブ・ライフェルド]]のようにスクリプトを解読できず原稿が仕上がらない経験をした作画家もいた{{sfn|Parkin|2013|p=124}}。

== 評価 ==
=== 社会的評価 ===
英語圏で最も優れたコミック原作者の一人と見なされており、一般紙誌でも称賛を寄せられている{{sfn|Ayres|2021|p=2}}。英[[インデペンデント|インディペンデント]]紙日曜版は2006年の ''Lost Girls'' 出版時に「英語圏における最初の偉大な現代コミック作家」と紹介し{{sfn|Parkin|2013|p=337}}、[[ガーディアン]]紙は2019年の引退に際して{{行内引用|もっとも重要な英語のフィクション作家のひとり}}とした<ref name=guardiangoodbye/>。日本では「アメリカン・コミック界の巨匠」という呼び方も見られる<ref name=bunshun>{{cite web|url=https://bunshun.jp/articles/-/45432|accessdate=2022-03-03|title=米国テレビ界の最高名誉エミー賞11冠!『ウォッチメン』の何がスゴい?|website=文春オンライン|author=佐々木健一|date=2021-05-16|archivedate= 2021-06-14|archiveurl= https://web.archive.org/web/20210614123656/https://bunshun.jp/articles/-/45432}}</ref><ref>{{cite web|url=https://dime.jp/genre/1307140/|accessdate=2022-03-03|title=【今月の一冊】米コミック界の巨匠アラン・ムーアの世界観にどっぷり浸る傑作「ネオノミコン」|website=@DIME|date=2022-02-21|author=豊﨑由美|archivedate=2022-02-21 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220221122059/https://dime.jp/genre/1307140/}}</ref>。[[小田切博]]は2007年の著書で{{行内引用|現代のコミックスライターとしてはもっとも重要な作家のひとり}}と書いた{{sfn|小田切|2007|p=168}}。

同業者や批評家の間でも広く尊敬を受けている。映画脚本家でコミック原作も書いている[[J・マイケル・ストラジンスキー]]はムーアを{{行内引用|我々の中で一番上手い}}と言っている{{sfn|Parkin|2013|p=331}}。DCコミックスでの担当編集者[[カレン・バーガー]]は{{行内引用|{{interp|作品に}} 私が手を入れる部分はなかった。… {{interp|クリエイターには}} アランとそれ以外しかいない。アランは一人だけ別の階級にいた}}と語った{{sfn|Carpenter|2016|p=53}}。ウェブメディア[[コミック・ブック・リソーシズ|CBR]]はコミック原作者の影響力を論評する2022年の記事でムーアを{{行内引用|コミックの歴史上もっとも才能ある原作者}}と書いた<ref>{{cite web|url=https://www.cbr.com/dc-comics-most-influential-modern-writers/|accessdate=2022-03-03|title=DC's 10 Most Influential Modern Writers|publisher=CBR|date=2022-02-10|archivedate= 2022-02-13|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213104437/https://www.cbr.com/dc-comics-most-influential-modern-writers/}}</ref>。コミック史家{{仮リンク|ジョージ・コーリー|en|George Khoury (author)}}は{{行内引用|この自由人をコミックブック史上最高の原作者と呼んでは過小評価だ}}と書き{{Sfn|Khoury|2003|p=10}}、インタビュアーのスティーヴ・ローズは{{行内引用|コミックの[[オーソン・ウェルズ]]}} {{行内引用|誰知らぬ者なきコミック界の教祖、発する言葉は一言余さず天上からのメッセージと受け取られる}}と書いた<ref name="Moore's murderer">{{Cite web|author=Rose|first=Steve|url=http://books.guardian.co.uk/departments/sciencefiction/story/0,6000,643500,00.html|title=Moore's murderer|website=The Guardian|date=2002-02-02|accessdate=2022-02-18|archiveurl=https://web.archive.org/web/20060219151930/http://books.guardian.co.uk/departments/sciencefiction/story/0%2C6000%2C643500%2C00.html|archivedate=2006-02-19}}</ref>。コミック批評家ダグラス・ウォークはこう書いている。
{{Quote|quote=ムーアは誰の異論も受けずにコミックの殿堂入りを果たした。英語圏のコミックを支える柱石の一つであり、同格の存在はジャック・カービー、ウィル・アイズナー、ハーヴェイ・カーツマンなどほとんどいない。殿堂の中でも突出して異質な存在だ。ほかの柱はいずれも作画家か、そうでなければたいてい原作兼任なのだから。ムーアはほぼ原作専門だが、その精妙巧緻なスクリプトは必ず作画家の長所が生きるように書かれている。… つまりムーアはコミック創作理論の百般に通じているのだ。漫画家が一人でぜんぶ描く方が原作と作画を分担するより優れたやり方だ、などという主張を誰も口にしないのは、ムーアの著作目録が立ちはだかっているためだ。普段は自分でストーリーも作るのに、ムーアとだけは共作する漫画家だって多い。{{仮リンク|ハイメ・ヘルナンデス|en|Jaime Hernandez}}、{{仮リンク|マーク・ベイヤー|en|Mark Beyer (comics)}}、誰より忘れられないのはエディ・キャンベルだ。|source=ダグラス・ウォーク(2007年){{sfn|Wolk|2007|p=229}}}}

コミック関係者からは批判もある。ムーアより先にDCとマーベルで人気作家となっていた漫画家{{仮リンク|ジョン・バーン (漫画家)|en|John Byrne (comics)|label=ジョン・バーン}}は、『ウォッチメン』におけるスーパーヒーローの描写が{{行内引用|否定的、虚無的すぎる}}と述べ、「野球のバットは人の頭を殴るためにも使えるが、だからといって殴っていいか?」と問いかけた。また歴史あるヒーローキャラクターが暴力によって障害を負う『キリングジョーク』を{{行内引用|自己満足のマスターベーション}}と呼んだ{{sfn|Parkin|2013|pp=234&ndash;235}}。ムーアと不仲なことで知られる原作者[[グラント・モリソン]]は{{sfn|Carpenter|2016|p=8}}、ムーア作品は技巧が過ぎて自己顕示欲さえ感じると述べている{{sfn|Ayres|2021|p=83}}。自著には以下のような人物評を書いている。
{{Quote|quote=独学で道を拓いた野心的な人物で、華々しい猛烈な才気があり、数々の巧みなトリックを使いこなすが、一番巧妙なのは自分を斬新に見せるトリックだった。まるでムーアの出現以前にはコミックに歴史などなかったかのようだ。その機知に富んだ、歯に衣着せぬ、謙遜の利いた発言(「自分がメシアだと言いたいわけじゃないが … 」)は、コミックシーンを一新した燦然たる自信と裏腹だった。|source=グラント・モリソン(2011年、''Supergods: Our World in the Age of the Superhero''){{sfn|Carpenter|2016|p=14}}}}

学問としての{{仮リンク|コミックス・スタディーズ|en|Comics studies}}ではもっとも頻繁に言及されるクリエイターのひとりであり{{sfn|Ayres|2021|p=2}}、そもそもコミックが学術研究に値するという考えが一般化したのは『[[バットマン: ダークナイト・リターンズ|ダークナイト・リターンズ]]』、『[[マウス (オルタナティヴ・コミック)|マウス]]』と並んで『[[ウォッチメン]]』の功績だとみなされている{{sfn|Ayres|2021|p=1}}。しかし分野の歴史が浅いこともあり、ムーアの正典としての位置づけが定まっているとは言えない{{sfn|Ayres|2021|p=1}}。2000年代以降の再評価では、ムーアが{{行内引用|独自のスタイルを持つ手練れの作家}}に過ぎず、それまでの偶像化が行き過ぎだったという指摘も現れた{{sfn|Ayres|2021|pp=3–4}}。バート・ビーティとベンジャミン・ウーはムーアが{{行内引用|生半可な知性<!--middlebrow-->}}の象徴だと述べ、良質のコミック作品に過ぎないものが{{行内引用|コミックの進歩の上限}}として扱われてきたと主張した{{sfn|Ayres|2021|p=4}}。また同時期にムーア作品における[[人種差別|レイシズム]]や[[ミソジニー]]の扱いに対する批判も目立ってきた{{sfn|Ayres|2021|p=3}}。

=== 受賞 ===
アメリカコミック界の主要な賞である[[アイズナー賞]]と[[ハーヴェイ賞|ハーベイ賞]]、それらの前身である{{仮リンク|カービー賞|en|Kirby Awards}}<ref>{{cite web|url=https://natalie.mu/comic/column/462017|accessdate=2022-02-02|title=海外のマンガ賞まるわかり|publisher=コミックナタリー|date=2022-02-02|archivedate= 2022-02-27|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220227194339/https://natalie.mu/comic/column/462017}}</ref>は数多く受賞している。以下のリストを参照のこと。
{| class="wikitable sortable mw-collapsible mw-collapsed"
|+ style="background-color:lightgray"|カービー賞受賞一覧
!年
!部門
!対象
!備考
|-
|1985
|原作者
|『スワンプシング』
|{{sfn|Parkin|2013|p=175}}
|-
|1985
|単一号
|『スワンプシング・アニュアル』第2号(ジョン・トートレーベン、スティーヴ・ビセットとともに)
|{{sfn|Parkin|2013|p=175}}
|-
|1985
|定期シリーズ
|『スワンプシング』(ジョン・トートレーベン、スティーヴ・ビセットとともに)
|{{sfn|Parkin|2013|p=175}}
|-
|1986
|原作者
|『スワンプシング』
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1986
|定期シリーズ
|『スワンプシング』(ジョン・トートレーベン、スティーヴ・ビセットとともに)
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1986
|新シリーズ
|『ミラクルマン』(複数の作画家とともに)
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1987
|原作者
|『ウォッチメン』
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1987
|定期シリーズ
|『スワンプシング』(ジョン・トートレーベン、スティーヴ・ビセットとともに)
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1987
|新シリーズ
|『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1987
|原作/作画チーム
|『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=eisner1980s/>
|}

{| class="wikitable sortable mw-collapsible mw-collapsed"
|+ style="background-color:lightgray"| [[アイズナー賞]]受賞一覧
!年
!部門
!対象
!備考
|-
|1988
|原作者
|『[[ウォッチメン]]』
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1988
|原作/作画チーム
|『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1988
|限定シリーズ
|『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1988
|単行本
|『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1989
|原作者
|『[[バットマン: キリングジョーク]]』
|<ref name=eisner1980s/>
|-
|1989
|単行本
|『バットマン: キリングジョーク』(ブライアン・ボランドとともに)
|<ref name=eisner1980s>{{cite web|url=https://www.comic-con.org/awards/1980s-recipients|accessdate=2022-02-17|title=1980s |publisher= Comic-Con International: San Diego|archivedate=2022-01-22 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220122212014/https://www.comic-con.org/awards/1980s-recipients }}</ref>
|-
|1993
|連載ストーリー
|「フロム・ヘル」(エディ・キャンベルとともに)
|''Taboo'' 連載版<ref name=eisner1990s/>
|-
|1994
|単行本(書き下ろし)
|''A Small Killing''(オスカー・サラテとともに)
|<ref name=eisner1990s/>
|-
|1995
|原作者
|『[[フロム・ヘル]]』
|<ref name=eisner1990s/>
|-
|1996
|原作者
|『フロム・ヘル』
|<ref name=eisner1990s/>
|-
|1997
|原作者
|『フロム・ヘル』、『スプリーム』
|<ref name=eisner1990s>{{cite web|url=https://www.comic-con.org/awards/1990s-recipients|accessdate=2022-02-17|title=1990s |publisher= Comic-Con International: San Diego |archivedate=2022-01-22 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220122212025/https://www.comic-con.org/awards/1990s-recipients }}</ref>
|-
|2000
|原作者
|『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』、『[[プロメテア]]』、''Tom Strong'' 、''Tomorrow Stories'' 、『[[トップ10]]』
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2000
|単一号/単一話
|''Tom Strong'' 第1号 "How Tom Strong Got Started"(クリス・スプラウス、アル・ゴードンとともに)
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2000
|連載ストーリー
|''Tom Strong'' 第4&ndash;7号(クリス・スプラウス、アル・ゴードンらとともに)
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2000
|新シリーズ
|『トップ10』(ジーン・ハー、ザンダー・キャノンとともに)
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2000
|単行本(再録)
|『フロム・ヘル』(エディ・キャンベルとともに)
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2000
|アンソロジー
|''Tomorrow Stories''(リック・ヴィーチ、ケヴィン・ノーラン、メリンダ・ゲビー、ジム・ベイキーとともに)
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2001
|原作者
|『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』、『プロメテア』、''Tom Strong''、''Tomorrow Stories'' 、『トップ10』
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2001
|単一号/単一話
|『プロメテア』第10号「セックス、スター、スネーク」(J・H・ウィリアムズIII、ミック・グレイとともに)
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2001
|定期シリーズ
|『トップ10』(ジーン・ハー、ザンダー・キャノンとともに)
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2003
|限定シリーズ
|『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(ケヴィン・オニールとともに)
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2004
|原作者
|『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』、『プロメテア』、''Smax'' 、''Tom Strong''、''Tom Strong's Terrific Tales''
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2006
|原作者
|『プロメテア』、''Top 10: The Forty-Niners''
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2006
|単行本(書き下ろし)
|''Top 10: The Forty-Niners''(ジーン・ハーとともに)
|<ref name=eisner2000s>{{cite web|url=https://www.comic-con.org/awards/2000s|accessdate=2022-02-17|title=2000s |publisher= Comic-Con International: San Diego|archivedate= 2022-02-28|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220228071111/https://www.comic-con.org/awards/2000s }}</ref>
|-
|2006
|アーカイバル・コレクション(コミックブック)
|''Absolute Watchmen''(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=eisner2000s/>
|-
|2014
|殿堂
|本人
|<ref>{{cite web|url=https://www.comic-con.org/awards/eisner-award-recipients-2010-present|accessdate=2022-02-17|title=2010-Present|publisher=Comic-Con International: San Diego|archivedate=2022-01-22 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220122212158/https://www.comic-con.org/awards/eisner-award-recipients-2010-present }}</ref>
|}

{| class="wikitable sortable mw-collapsible mw-collapsed"
|+ style="background-color:lightgray"| [[ハーベイ賞]]受賞一覧
!年
!部門
!対象
!備考
|-
|1988
|原作者
|『ウォッチメン』
|<ref name=harvey>{{cite web|url=https://www.harveyawards.com/en-us/winners/previous-winners.html|publisher=The Harvey Awards|accessdate=2022-02-17|title=Previous Winners|archivedate=2022-01-09 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220109213700/https://www.harveyawards.com/en-us/winners/previous-winners.html }}</ref>
|-
|1988
|定期/限定シリーズ
|『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|1988
|単一号
|『ウォッチメン』第9号(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|1988
|単行本
|『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|1988
|特別賞 Excellence in Presentation
|『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|1989
|単一号
|『バットマン:キリングジョーク』(ブライアン・ボランド、ジョン・ヒギンズとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|1989
|単行本
|『バットマン:キリングジョーク』(ブライアン・ボランド、ジョン・ヒギンズとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|1995
|原作者
|『フロム・ヘル』
|<ref name=harvey/>
|-
|1995
|定期/限定シリーズ
|『フロム・ヘル』(エディ・キャンベルとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|1996
|原作者
|『フロム・ヘル』
|<ref name=harvey/>
|-
|1999
|原作者
|『フロム・ヘル』、『スプリーム』ほか全著作
|<ref name=harvey/>
|-
|2000
|原作者
|『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』
|<ref name=harvey/>
|-
|2000
|単行本(再録)
|『フロム・ヘル』(エディ・キャンベルとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|2001
|原作者
|『プロメテア』
|<ref name=harvey/>
|-
|2003
|原作者
|『プロメテア』
|<ref name=harvey/>
|-
|2003
|定期/限定シリーズ
|『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(ケヴィン・オニールとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|2003
|単一号
|『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』第1号(ケヴィン・オニールとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|2004
|定期/限定シリーズ
|『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(ケヴィン・オニールとともに)
|<ref name=harvey/>
|-
|}
[[サンディエゴ・コミコン]]が選出する[[インクポット賞]]は1985年に受賞した<ref>{{Cite web|url=https://www.comic-con.org/awards/inkpot|title=Inkpot Award|date=2016|publisher=[[San Diego Comic-Con]]|archiveurl=https://web.archive.org/web/20170129155249/http://www.comic-con.org/awards/inkpot|archivedate= 2017-01-29|accessdate=2022-01-12}}</ref>。アメリカのコミック情報誌『{{仮リンク|コミックス・バイヤーズ・ガイド|en|Comics Buyer's Guide}}』の{{仮リンク|コミックス・バイヤーズ・ガイド・ファン・アワード|en|Comics Buyer's Guide Fan Awards|label=ファン・アワード}}には何度もノミネートしており、1985&ndash;1987年、1999年、2000年には原作者部門で、1987年には作品部門(ウォッチメン)で、1988年にはオリジナル・グラフィックノベル/グラフィックアルバム部門(バットマン: キリングジョーク)で受賞している<ref>{{Cite book|editor-last=Thompson|editor-first=Maggie)|title=Comics Buyer's Guide 1996 Annual|publisher=Krause Publications|year=1995|pages=30–31|isbn=978-0-87341-406-7}}</ref>。

<!--1982年と1983年には、英国のコミック関係者団体{{仮リンク|ストリップ・イラストレーション協会|en|Society of Strip Illustration}}から最優秀原作者に選出された<ref name=Hahn/>。-->英国のコミックファンによる{{仮リンク|イーグル賞|en|Eagle Awards}}を受けるのもたびたびで、特に1986年には『ウォッチメン』と『スワンプシング』により米国原作者と英国原作者のダブル受賞をはじめとして数多くの部門を同時に受賞した<ref name="Speak64">{{Cite journal|last=Ridout|first=Cefn|editor2-last=Hanson|editor2-first=Dick|editor3-last=Ashford|editor3-first=Richard|date=July 1986|title=Eagle Ayes|journal=Speakeasy|issue=64|page=3}}</ref>。英国{{仮リンク|ナショナル・コミックス・アワード|en|National Comics Awards}}は2002年時点で殿堂入りしており、オールタイムベスト原作者にも選ばれている<!--2001年、2003年のベスト原作者については出典不明--><ref name=NCA02>{{cite web|title=NATIONAL COMICS AWARDS 2002: THE 5TH NATIONAL COMICS AWARDS RESULTS|publisher=2000ADonline.org.|archiveurl=https://web.archive.org/web/20060216121640/http://www.2000adonline.com/index.php3?zone=news&page=newsimage&choice=awards02|archivedate=2006-02-16|accessdate=2022-02-17|url=http://www.2000adonline.com/index.php3?zone=news&page=newsimage&choice=awards02}}</ref>。英米以外では、ドイツの漫画賞である{{仮リンク|マックス・ウント・モーリッツ賞|de|Max-und-Moritz-Preis}}(2008年、全作品に対して)がある<ref>{{cite web|url=https://www.kulturkaufhaus.de/de/detail/ISBN-9780861661411/Moore-Alan/From-Hell|accessdate=2022-02-15|language=German, read via Google Translate|title=From Hell - Moore, Alan; Campbell, Eddie - Dussmann|publisher=Das Kulturkaufhaus|archivedate=2022-02-16 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220216112645/https://www.kulturkaufhaus.de/de/detail/ISBN-9780861661411/Moore-Alan/From-Hell }}</ref>。フランスでは[[アングレーム国際漫画祭]]の[[アングレーム国際漫画祭 最優秀作品賞|最優秀作品賞]]海外アルバム部門を『[[ウォッチメン]]』(1989年)と『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』(1990年)に対して<ref>{{cite journal|title=Angoulême and the ninth Art: from comics fandom to cultural policies|author=Sylvain Lesage|author2=Jean-Paul Gabilliet|journal= Journal of Comics and Culture|year=2020|volume= 5|pages=69-89|url=https://hal.univ-lille.fr/hal-03424490|accessdate=2022-02-17|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217101754/https://hal.univ-lille.fr/hal-03424490}}</ref>、{{仮リンク|批評家賞 (フランスの漫画賞)|fr|Grand prix de la critique|label=批評家賞}}を『[[フロム・ヘル]]』(2001年)に対して授与された<ref>{{cite web|url=https://www.acbd.fr/919/grand-prix-de-la-critique/2001/|accessdate=2022-02-17|publisher= Association des Critiques et journalistes de Bande Dessinée |title=Prix de la Critique 2001|language=French, read via Google Translate|date=2007-01-13|archivedate= 2021-04-16|archiveurl= https://web.archive.org/web/20210416231546/https://www.acbd.fr/919/grand-prix-de-la-critique/2001/}}</ref>。そのほかスウェーデンの[[:en:Urhunden Prizes|Urhunden賞]]を『ウォッチメン』で(1992年)<ref>{{cite web|url=https://serieframjandet.se/kvinnliga-serieskapare-far-arets-urhundenpriser/|accessdate=2022-02-17|title=Kvinnliga serieskapare får årets Urhundenpriser|publisher=Seriefrämjandet|date=2012-09-16|language=Swedish, read via Google Translate|archivedate=2022-01-09 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220109214635/https://serieframjandet.se/kvinnliga-serieskapare-far-arets-urhundenpriser/}}</ref>、スペインの[[:es:Premio Haxtur|Haxtur賞]]を『ウォッチメン』(1988年、長編作品部門)<ref>{{cite web|url=http://www.elwendigo.net/haxtur/hax88/haxt1988.htm|publisher=El Wendigo|accessdate=2022-02-17|title=Haxtur - PREMIOS HAXTUR 1988|date=2007-12-09|language=Spanish, read via Google Translate|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217101728/http://www.elwendigo.net/haxtur/hax88/haxt1988.htm }}</ref>と『スワンプシング』第5号(1989年、原作者部門)<ref>{{cite web|url=http://www.elwendigo.net/haxtur/hax89/haxt1989.htm|publisher=El Wendigo|accessdate=2022-02-17|title=Haxtur - PREMIOS HAXTUR 1989|date=2007-12-09|language=Spanish, read via Google Translate|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217101730/http://www.elwendigo.net/haxtur/hax89/haxt1989.htm }}</ref>で受賞している。

コミック賞以外にも、1988年には『ウォッチメン』がSFの[[ヒューゴー賞]]をコミックとして初めて受賞し{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 675/2302}}、同年に小説 ''A Hypothetical Lizard'' が[[世界幻想文学大賞]]中編小説部門にノミネートされた<ref>{{cite web|url=http://www.worldfantasy.org/1988-the-14th-world-fantasy-convention/|accessdate=2022-02-17|title=1988: The 14th World Fantasy Convention|publisher= World Fantasy Convention|archivedate= 2022-02-17|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217101729/http://www.worldfantasy.org/1988-the-14th-world-fantasy-convention/}}</ref>。{{仮リンク|国際ホラーギルド賞|en|International Horror Guild Awards}}はグラフィック・ストーリー/イラストレーテッド・ナラティヴ部門で受賞している(1995年『フロム・ヘル』)<ref>{{Cite web|url=http://www.horroraward.org/prevrec.html|title=IHG Award Recipients|publisher=International Horror Guild|accessdate=2022-02-17|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090422073428/http://horroraward.org/prevrec.html|archivedate=2009-04-22}}</ref>。[[ブラム・ストーカー賞]]はイラストレーテッド・ナラティヴ部門で2回受賞している(2000年「リーグ」<ref>{{cite web|url=https://www.thebramstokerawards.com/uncategorized/2000-bram-stoker-award-winners-nominees/|accessdate=2022-02-17|title=2000 Bram Stoker Award Winners & Nominees|publisher=The Bram Stoker Awards|date=2001|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217101747/https://www.thebramstokerawards.com/uncategorized/2000-bram-stoker-award-winners-nominees/}}</ref>、2011年『[[ネオノミコン]]』<ref>{{cite web|url=https://www.thebramstokerawards.com/uncategorized/2011-bram-stoker-award-winners-nominees/|accessdate=2022-02-17|title=2011 Bram Stoker Award Winners & Nominees|publisher= The Bram Stoker Awards|date=2012|archivedate=2022-02-17 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220217101737/https://www.thebramstokerawards.com/uncategorized/2011-bram-stoker-award-winners-nominees/}}</ref>)。2005年に『[[タイム (雑誌)|タイム]]』誌が選出した「1923年から現在までの小説作品ベスト100」には漫画作品として唯一『ウォッチメン』が挙げられた<ref name=fukuhara>{{cite journal|和書|title=儀礼としての物語 : 『Vフォー・ヴェンデッタ』のインターテクスト的構築|journal=福岡大學人文論叢|volume=52|issue=1|pages=139-158|year=2020|author=福原俊平|naid=120006869356}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.time.com/time/2005/100books/0,24459,watchmen,00.html|title=All-Time 100 Novels|last=Grossman|first=Lev|author2=Lacayo, Richard|date=2005-10-16|publisher=Time|accessdate=2022-02-18|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090524054904/http://www.time.com/time/2005/100books/0,24459,watchmen,00.html|archivedate=2009-05-24}}</ref>。

== 影響 ==
=== 他作品への影響 ===
ティム・キャラハンは2013年に、80年代に『[[マーベルマン/ミラクルマン|ミラクルマン]]』『[[スワンプシング]]』『[[ウォッチメン]]』を読んで育った世代がメインストリーム・コミックの作り手の主流になっていると書いた。キャラハンによるとこのジャンルにリアリズムを持ち込んで脱構築を行ったのはムーアが最初ではないが、その{{行内引用|スマートで洗練され、大真面目であると同時に痛烈に皮肉な}}スーパーヒーロー物語こそが後の世代にとってのひな型となった<ref name=rereadlegacy/>。

アンドリュー・ホベレクは『ウォッチメン』の研究書 ''Considering Watchmen: Poetics, Property, Politics''(2014年)の中で、同作がスーパーヒーロー・ジャンルで行った{{行内引用|リアリズムの強調と形式の洗練}}は、コミックブック出版への直接的な影響を超えて現代アメリカ文化全体に広く浸透したと論じている。ホベレクはムーアに続いてスーパーヒーロー・ジャンルでシリアスな作品を残した小説家として[[マイケル・シェイボン]]、[[ジュノ・ディアズ]]、[[エイミー・ベンダー]]を挙げている{{sfn|Ayres|2021|p=209}}。映画評論家{{仮リンク|マイケル・スラゴウ|en|Michael Sragow}}はディズニー映画『[[Mr.インクレディブル]]』(2004年)を取り上げて、子供向け作品ながらヒーローの社会的・政治的意味付けや心理の描き方に『ウォッチメン』の影響が見られると述べた。これはエアーズによれば、ムーアのアイロニックな脱構築がすでに革新的なアプローチからジャンルの規範へと変わったことを意味している{{sfn|Ayres|2021|p=194}}。

『[[フロム・ヘル]]』などの翻訳者でもある映画評論家[[柳下毅一郎]]は、『ウォッチメン』の革新性は内容よりも{{行内引用|ストーリーの語り方、非線形のストーリーテリングと多重的な意味の重ね合わせ}}だと述べた<ref name=allreviewsyanashita/>。コミック研究者メラニー・ギブソンも、対置や重層性を用いた複雑なストーリーテリングを可能にしたことが後世への影響として重要だと書いている{{sfn|Gravett (ed.)|2011|loc="Watchmen" by Melanie Gibson|p=490}}。ウェブメディア [[:en:The A.V. Club|''The A.V. Club'']] は『ウォッチメン』の重層的な構成が{{行内引用|[[ギーク]]文化の一世代全体に影響を与えた}}と書き、テレビドラマ『[[LOST]]』(2004&ndash;2010年)を例に挙げた<ref name=avclubprimer/>。『LOST』制作者[[デイモン・リンデロフ]]は『ウォッチメン』から特徴的な[[フラッシュバック (物語)|フラッシュバック]]・[[フラッシュフォワード (物語)|フラッシュフォワード]]を取り入れたと語っており{{sfn|Parkin|2009|loc=No. 683/2303}}、同作を{{行内引用|これまでに作られたポピュラー・フィクションの中の最高傑作}}と呼んでいる<ref name="EntertainmentWeekly">{{Cite news|url=http://www.ew.com/ew/article/0,,1120854,00.html|title=Watchmen: An Oral History|last=Jensen|first=Jeff|date=2005-10-21|newspaper=Entertainment Weekly|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131214220508/http://www.ew.com/ew/article/0%2C%2C1120854%2C00.html|archivedate=2013-12-14|accessdate=2022-02-03}}</ref>。

日本にも熱心なファンがおり<ref>{{cite news|和書|newspaper=読売新聞(東京夕刊)|date=2005-04-22|page=5|title=英国人劇画作家 アラン・ムーア 不気味な世界、映画化続々}}</ref><ref name=asahi20091008>{{cite news|和書|newspaper=[[朝日新聞]](夕刊)|date=2009-10-08|page=11|title=みすず書房がコミック刊行 切り裂きジャック題材『フロム・ヘル』}}</ref>、ライトノベル『[[魔法少女禁止法]]』([[伊藤ヒロ]]、2010年)やアニメ『[[コンクリート・レボルティオ~超人幻想~]]』(2015&ndash;2016年)のように、スーパーヒーローが実在する仮想歴史としての『ウォッチメン』から影響を受けた作品もある<ref>{{cite news|和書|newspaper=朝日新聞(夕刊)|date=2019-09-21|page=2|title=(エンタメ for around 20)ウェブ小説、黎明期の空気|author=[[大樹連司|前島賢]]}}</ref><ref>{{cite news|和書|newspaper=朝日新聞(夕刊)|date=2015-10-25|page=18|title=(エンタメ for around 20)戦後史にみる超人への憧れ|author=前島賢}}</ref><ref>{{cite web|url=https://animeanime.jp/article/2016/05/20/28601.html|accessdate=2022-03-18|title=虚淵玄×水島精二×會川昇「コンクリート・レボルティオ」超人鼎談 “虚淵玄にとって正義とは?” |publisher=アニメ!アニメ!|date=2016-05-20}}</ref>。漫画『[[アフロサムライ]]』([[岡崎能士]]、1998年)はコマの中に大量の情報を詰め込む作風に影響がある<ref>{{cite news|和書|newspaper=読売新聞(東京夕刊)|date=2009-11-11|page=6|title=「ALL ABOUT」岡崎能士 「変な侍」 全米熱狂}}</ref>。

1980年代に『ウォッチメン』でムーアの筆名が上がったころ、{{仮リンク|カメレオンズ|en|The Chameleons}}、[[ポップ・ウィル・イート・イットセルフ]]、{{仮リンク|トランスヴィジョン・ヴァンプ|en|Transvision Vamp}}などの英国バンドがムーアの作品にインスパイアされた楽曲を作っている{{sfn|Parkin|2013|p=207}}。

=== コミック界への影響 ===
ムーアのキャリアはコミック界におけるオーサーシップ(著者性)観の変遷と密接に関わっている{{sfn|Ayres|2021|p=189}}。米国コミックの伝統では作品のオーサーシップを担うのは出版社であり、クリエイターは制作のために雇われるだけだった。コミックブックが読み捨ての娯楽だという一般の見方もその状況を反映していた{{sfn|Ayres|2021|p=191}}。しかし1970年代に至るとコミックファンダムが成熟し、ノンクレジットのディズニー・コミックから[[カール・バークス]]が「発見」されたように{{sfn|Ayres|2021|p=191}}、ブランドやキャラクターではなく個々の作家に注目する読者も現れ始めた{{sfn|Ayres|2021|p=190}}。また業界内でも[[アメリカン・コミックスにおけるクリエイターの権利|制作者の権利拡大]]を訴える労働運動が起こった{{sfn|Ayres|2021|p=190}}。これらが相まって{{行内引用|個人のヴィジョンと感性}}をオーサーシップの中心におく[[作家主義]]が生まれた{{sfn|Ayres|2021|p=190}}。ファンの嗜好の変化を知ったメインストリーム・コミック出版社は[[ダイレクト・マーケット|専門店マーケット]]向けにスター作家を擁立するようになった。その最初の世代がムーアや[[フランク・ミラー]]らであり{{sfn|Ayres|2021|pp=192–194}}{{refnest|ムーアの場合、『スワンプシング』シリーズの執筆を始めて6号目から表紙に作者クレジットが表示され始めた{{sfn|Ayres|2021|p=193}}。|group=†}}、中でもムーアは作画家ではなく原作者に注目を集めさせたことで特筆される{{sfn|Barlatsky|2011|loc=No. 52/5874}}。

ムーアはキャリアを通して、コミックを芸術作品として認知させようと試みるとともに、出版社に対してクリエイターの権利を主張し続けた{{sfn|Ayres|2021|pp=193–194}}。ムーアは前の世代のクリエイターと異なり『ウォッチメン』を始めとするDC社のベストセラーから多額の印税を得ることができた{{sfn|Parkin|2013|p=256}}。また強硬な交渉により販促用グッズにも印税を適用させた{{sfn|Parkin|2021|p=213}}{{refnest|ムーアは『ウォッチメン』の販促としてコミックショップに配布された[[スマイリーフェイス]]バッジ2万5000個について約1000ドルの印税を受け取った{{sfn|Parkin|2013|pp=213–214}}。|group=†}}。しかし自作の著作権は取り戻せず、そのことに遺恨を抱いていた(同時期にミラーや[[ニール・ゲイマン]]などはDCと契約を結び直してオリジナル作品の著作権を獲得している)<ref name="vendettavendetta"/>{{sfn|Parkin|2013|p=234}}。このような闘争は作品にも反映されており、ジャクソン・エアーズによるとムーアは常に「企業化されたエンターテインメント/アーティストの個人的ヴィジョン」のダイナミクスをテーマとしている{{sfn|Ayres|2021|p=192}}。ダグラス・ウォークはムーアが{{行内引用|商業性と芸術性の合間を縫うコミックの道行きの先導者}}だと論じ、ポピュラーなコミックに文学性を持ち込んだこと、クリエイターを搾取する出版モデルと闘ったこと、身をもってコミック作品の価値を示したことを評価した{{sfn|Ayres|2021|p=193}}。

=== 社会への影響 ===
全12号のコミックブックとして世に出た『ウォッチメン』は当時としては珍しく単行本([[グラフィックノベル]]と呼ばれた)として再刊された。書籍版の人気はコミックブック専門店に足を踏み入れない読者層にも届き{{sfn|Parkin|2013|p=216, 220–221}}、「もうコミックは子供の読み物ではない」という見方を広めた{{sfn|Barlatsky|2011|loc=No. 52/5874}}。米国の図書館や一般書店にコミック(グラフィックノベル)が置かれるようになったのには同作の影響がある<ref name=cbldfcasewatchmen>{{cite web|url=http://cbldf.org/banned-challenged-comics/case-study-watchmen/|accessdate=2022-02-20|title=Case Study: Watchmen|publisher=Comic Book Legal Defense Fund|archivedate=2022-02-26 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220226032150/http://cbldf.org/banned-challenged-comics/case-study-watchmen/}}</ref>。DC社によると、一般書店を通じた『ウォッチメン』単行本の販売数は25年間で200万部を超えた{{sfn|Parkin|2013|p=216, 220–221}}。

『ウォッチメン』や『Vフォー・ヴェンデッタ』は大学教育でよく利用されている<ref name=carter2011/>。例として、[[教育学者]]ジェイムズ・カーターは、教育における[[グラフィックノベル]]利用や、メディア教育や、ヴィジュアルリテラシー教育に関する授業で『ウォッチメン』を題材にしているという<ref name=carter2011/>。コミック文化の振興を目的とする[[コミック弁護基金]]が2019年に行った調査によると、米国の幼稚園から高等教育までの学校のおよそ半数でコミックの教育利用が行われており<ref>{{cite web|url=http://cbldf.org/2019/10/cbldfs-comics-in-education-survey-reveals-top-comics-in-schools-a-broad-embrace-of-the-format/|accessdate=2022-02-20|title=CBLDF’s Comics In Education Survey Reveals Top Comics in Schools & A Broad Embrace of the Format|publisher= Comic Book Legal Defense Fund|date=2019-10-02|archivedate= 2022-02-26|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220226032153/http://cbldf.org/2019/10/cbldfs-comics-in-education-survey-reveals-top-comics-in-schools-a-broad-embrace-of-the-format/}}</ref>、取り上げられることが多い作品の10位に『ウォッチメン』が挙げられている<ref>{{cite web|url=http://cbldf.org/2019/12/11-most-popular-comics-in-classrooms-with-signed-copies-to-support-cbldf/|accessdate=2022-02-20|title=11 Most Popular Comics in Classrooms (with Signed Copies to Support CBLDF!)|publisher=Comic Book Legal Defense Fund|date=2022-02-20|archivedate=2022-02-26 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220226032152/http://cbldf.org/2019/12/11-most-popular-comics-in-classrooms-with-signed-copies-to-support-cbldf/}}</ref>。

日本では1990年代にアニメやゲーム、[[アクションフィギュア|フィギュア]]を入り口にしたアメリカン・コミックのブームが起き<ref name=nikkei/>、その流れで代表作『ウォッチメン』が刊行された<ref>{{cite news|和書|newspaper=[[読売新聞]](夕刊)|date=1999-02-09|page=7|title=長編で独自世界ひらく 近頃の米国マンガ事情|author=[[小野耕世]]}}</ref>。このときは大きなヒットにならなかったが<ref>{{cite news|和書|newspaper=[[北海道新聞]](夕刊全道)|date=2009-04-24|page=9|title=<カルチャープラス BOOK こだわり選書>SF史・技術文化史家 永瀬唯*SF*科学に夢抱いた時代体験|author=[[永瀬唯]]}}</ref>、間を置いて2000年代末に起こったスーパーヒーロー映画との相乗効果による「アメコミ第2次ブーム」では『ウォッチメン』新版が市場をけん引することになった<ref name=nikkei>{{cite news|和書|newspaper=[[日経MJ|日経流通新聞]]|date=2010-08-16|page=16|title=アメコミ 大人の深み 映画化でファン層拡大}}</ref><ref name=mainichi2011>{{cite news|和書|newspaper=[[毎日新聞]]|date=2011-02-17|page=24|title=バンド・デシネ:仏語圏の漫画、翻訳相次ぐ 日本の作家にも影響}}</ref>。同時期に人文学系の出版社[[みすず書房]]が初のコミック作品として出した『[[フロム・ヘル]]』もヒットし<ref name=asahi20091008/>、こちらは文学・美術ファンを対象に[[バンド・デシネ]]を翻訳出版する動きにつながった<ref name=mainichi2011/>。

== 人物 ==
=== 私生活 ===
[[ファイル:Alan_Moore.jpg|左|サムネイル|2006年、サイン中のムーア。指輪や指甲冑を着け始めたのは[[メリンダ・ゲビー]]からのプレゼントがきっかけだった<ref name="Babcock"/>。]]
190 [[センチメートル|cm]]近い長身で{{sfn|Parkin|2013|p=1}}、若いころから髪とひげを伸ばし放題にしている<ref name=guardianinterview>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/books/2012/dec/15/alan-moore-why-i-rejected-hollywood-interview|accessdate=2022-01-16|title=Alan Moore: why I turned my back on Hollywood|publisher=The Guardian|date=2012-12-15|archivedate= 2022-01-27|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220127035924/https://www.theguardian.com/books/2012/dec/15/alan-moore-why-i-rejected-hollywood-interview }}</ref>。蛇頭の杖を携帯し{{sfn|Parkin|2013|p=283}}、大きな指輪をいくつも着用するのが常で、{{行内引用|[[ホグワーツの教職員#職員|ハグリッド]]の厄介者の兄弟か、[[ガンダルフ]]の胡散臭い従兄弟}}のような<ref name=guardianwhy>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/books/2013/nov/22/alan-moore-comic-books-interview|accessdate=2022-02-25|title=Alan Moore: 'Why shouldn't you have a bit of fun while dealing with the deepest issues of the mind?' |publisher= The Guardian|date=2022-02-25|archivedate=2022-02-26 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220226032148/https://www.theguardian.com/books/2013/nov/22/alan-moore-comic-books-interview }}</ref>、一見すると{{行内引用|村の奇人変人}}だと書かれたことがある<ref name="Moore's murderer"/>。その風貌や政治的・闘争的な発言から気難しい世捨て人のようなイメージが広まっているが、実際に会うとサービス精神豊富で気さくな人物であることもよく報道されている{{sfn|Parkin|2013|p=354}}。

[[テラスハウス]](集合住宅)の一角にある居宅は2001年のインタビュアーによって{{行内引用|永遠に改装中のオカルト系書店のようで、分厚い魔術書が並ぶ棚や紙束の合間にレコードやビデオ、魔術の物品やコミックブックのフィギュアが散らばっていた。バスルームは青と金の装飾が施され、浴槽が床に埋め込まれた豪華なものだった。それ以外の部屋はおそらく掃除機を見たことがなさそうだ。その人物は間違いなく物質界で過ごすことがほとんどないようだった}}と描写されている<ref name="Moore's murderer" />。

自ら{{行内引用|ミクロコズム(小宇宙)}}と呼ぶ生地[[ノーサンプトン]]に住み続けており、旅行することもめったにない{{sfn|Parkin|2013|pp=274, 368, 370}}。バロウズ地区は英国でもっとも貧しい地区の一つである。同郷の作家{{仮リンク|ジェレミー・シーブルック|en|Jeremy Seabrook}}(初等学校でのムーアの教師でもある)は故郷について{{行内引用|人々はみな偏狭で迷信深く、吝嗇で狷介、かつ頑固だが、概して誇り高く言葉に嘘がない}}と書いている。伝記作家ランス・パーキンによるとこれらの言葉はムーアの一般的イメージにも当てはまる{{sfn|Parkin|2013|pp=23–24}}。ムーアはノーサンプトンの歴史や文化を ''Voice of the Fire'' や ''Jerusalem'' のような心理地理学的小説で描いており{{sfn|Parkin|2013|pp=274, 368, 370}}、自ら編集する ''Dodgem Logic'' 誌でも地元の芸術シーンを紹介している{{sfn|Ayres|2021|p=170}}。

英国の慈善団体{{仮リンク|アーツ・エマージェンシー|en|Arts Emergency}}に賛同している<ref>{{Cite web|url=http://www.arts-emergency.org/news/whats-the-point-of-arts-and-humanities/|title=What's the point of arts and humanities?|date=n.d.|publisher=Arts-emergency.org|archiveurl=https://web.archive.org/web/20140405035503/http://www.arts-emergency.org/news/whats-the-point-of-arts-and-humanities/|archivedate=5 April 2014|accessdate=5 April 2014}}</ref>。20歳前後の若者に芸術や人文科学分野のメンタリングやサポートを提供する団体である<ref>{{Cite web|url=https://www.arts-emergency.org/about-us/what-we-do|title=What we do|accessdate=2022-01-08|publisher=Arts Emergency|archivedate=2022-01-19 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220119063312/https://www.arts-emergency.org/about-us/what-we-do }}</ref>。

=== 家族 ===
1973年に結婚した最初の妻フィリスとの間に{{仮リンク|リーア・ムーア|en|Leah Moore|label=リーア}}とアンバーの2人の娘を儲けた{{sfn|Ayres|2021|p=13}}。リーアは長じてコミック原作者となり、''2000 AD'' などで活動している<ref>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/books/2016/feb/07/kapow-creators-shaking-up-comics-saga-bitch-planet-wicked-and-the-divine|accessdate=2022-03-10|title=Framed! Meet the creators shaking up modern comics|publisher=The Guardian|date=2016-02-07}}</ref>。その夫 [[:en:John Reppion|John Reppion]] も同業であり<ref>{{cite web|url=https://www.comicsbeat.com/crowdfunding-campaign-set-up-after-writer-leah-moore-suffers-a-brain-injury/|accessdate=2022-03-10|title=Crowdfunding campaign set up after writer Leah Moore suffers a brain injury|publisher=The Beat|date=2018-06-20}}</ref>、ムーアは娘夫婦とともにヒーローコミック [[:en:Albion (comics)|''Albion'']](2005&ndash;2006年)の原作を共作している<ref name=rereadalbion>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/12/31/the-great-alan-moore-reread-albion/|accessdate=2022-02-22|title= The Great Alan Moore Reread: ''Albion''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2013-01-14|archivedate=2022-02-26 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220226032150/https://www.tor.com/2012/12/31/the-great-alan-moore-reread-albion/}}</ref>。ムーアとフィリスは数年にわたってデボラという女性と同居して3人でオープンな関係を結んでいたが、1990年代初頭に破局した。このときフィリスとデボラは2人で娘たちを連れて出て行った{{Sfn|Khoury|2003|pp=158–159}}。

2007年、長年にわたって ''Lost Girls'' の共作を続けてきた[[カリフォルニア州|カリフォルニア]]出身の[[アンダーグラウンド・コミック]]作家[[メリンダ・ゲビー]]と再婚した{{sfn|Parkin|2013|p=249}}<ref>{{Cite web|url=http://www.villagevoice.com/2006-08-15/books/alan-moore-s-girls-gone-wilde/|title=Alan Moore's ''Girls'' Gone Wilde|author=Gehr|first=Richard|website=The Village Voice|date=2006-08-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130916232042/http://www.villagevoice.com/2006-08-15/books/alan-moore-s-girls-gone-wilde/|archivedate=2013-09-16|accessdate= 2022-02-18}}</ref>。

=== 関連人物 ===
信頼を裏切られたと感じると許さない一面があり、多くの出版社やコミック業界の友人と絶縁してきた{{sfn|Parkin|2013|p=354}}。『[[スワンプシング]]』の共作者スティーヴン・ビセットとは『1963』刊行中止のいきさつに関するインタビュー発言がもとで関係を絶った{{sfn|Parkin|2013|pp=354–356}}。『[[ウォッチメン]]』のデイヴ・ギボンズは同作の権利問題ではムーアと近い立場に立っていたが、同時にDCで作画業を続けていた{{sfn|Parkin|2013|p=356}}。2009年の映画版『[[ウォッチメン (映画)|ウォッチメン]]』の製作中、DCはムーアを懐柔してスピンオフコミックの企画への協力を取り付けようと試みた。しかしムーアはまったく歩み寄ろうとしないばかりか、間に立ったギボンズを絶交した{{sfn|Parkin|2013|p=357}}<ref>{{cite web|url=http://www.seraphemera.org/seraphemera_books/AlanMoore_Page1.html|accessdate=2022-02-27|title=Interview with Alan Moore|publisher=seraphemera books|date=2013-05-25|Generator=iWeb 3.0.4|archivedate=2022-02-27 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220227112506/http://www.seraphemera.org/seraphemera_books/AlanMoore_Page1.html}}</ref>。スティーヴ・ムーアや『[[フロム・ヘル]]』のエディ・キャンベルとは友人関係を保っている{{sfn|Parkin|2013|p=354}}。

小説家・コミック原作者[[ニール・ゲイマン]]は駆け出しジャーナリストだったころに『スワンプシング』の影響を受け、ムーアに直接教えを乞うてコミックの道に進んだ<ref>{{Cite book|last=Olson|first=Stephen P.|title=Neil Gaiman|url=https://archive.org/details/neilgaiman0000olso|quote=gaiman - moore - friendship.|year=2005|location=New York|publisher=Rosen Publishing Group|pages=16–18|isbn=978-1-4042-0285-6|accessdate=2022-02-03}}</ref>。二人はそれ以来の友人である{{sfn|Carpenter|2016|p=8}}。ムーアと後妻メリンダ・ゲビーを引き合わせたのもゲイマンだった{{sfn|Parkin|2013|p=249}}。

ムーアは執筆活動の他にはほとんど趣味を持たないが、小説家{{仮リンク|アリスター・フルーシュ|en|Alistair Fruish}}と共に散歩する習慣がある<ref name=parkin2014>{{Cite web|url=https://lanceparkin.wordpress.com/page/2/|title=Alan Moore Interview, Part V: Underland, Hancock, Jerusalem, Literary Difficulty|author=Parkin|first=Lance|date= 2014--11-06|accessdate=2022-01-10|website=Moore's biographer's official website|archivedate= 2022-01-11|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220111165538/https://lanceparkin.wordpress.com/page/2/ }}</ref>。フルーシュとは21世紀に再結成されたノーサンプトン・アーツ・ラボの成員同士でもある<ref>{{Cite web|url=https://thequietus.com/articles/20183-alistair-fruish-alan-moore-interview|title=Alistair Fruish On The Sentence & Alan Moore Art|accessdate=2022-01-08|publisher=The Quietus}}</ref>。

コミック原作者[[グラント・モリソン]]はムーアとキャリアや関心が似通っているが、不仲なことでも知られている{{sfn|Carpenter|2016|p=8}}{{sfn|Ayres|2021|p=197}}{{refnest|2010年にウェブメディア[[コミック・ブック・リソーシズ|CBR]]が行ったオールタイム最優秀原作者の一般投票ではムーアが首位、モリソンが第2位だった<ref>{{cite web|url=https://www.cbr.com/top-125-comic-book-writers-master-list/|accessdate=2022-02-09|title=Top 125 Comic Book Writers Master List |publisher=CBR|date=2010-12-07|archivedate=2022-02-13 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220213015037/https://www.cbr.com/top-125-comic-book-writers-master-list }}</ref>。|group=†}}。モリソンはキャリア初期にムーアとデズ・スキン([[:en:Warrior (magazine)|''Warrior'']] 発行者)の間の争いに巻き込まれ、ムーアから「この世界にいられないようにしてやる」と脅されたと証言している<ref name=lastinterview/>{{sfn|Parkin|2013|p=163}}。2012年には『[[ローリング・ストーン]]』誌のインタビューで「ムーアはレイプに執着しており、レイプが出てこない作品は一握りしかない」と発言した{{sfn|Parkin|2013|p=339}}。翌年、あるブロガーから「女性や人種的マイノリティの描写に関する批判」について反論を求められたムーアは、自らモリソンの名前を出し、作品や人格を激しく批判し、自身のストーカーだと呼び、モリソンの共作者・出版社・ファンと絶縁すると宣言した<ref name=lastinterview/>。

=== 影響を受けた人物 ===
[[ファイル: Michael Moorcock, Alan Moore, Iain Sinclair closeup (3682629866).jpg|左|サムネイル|マイケル・ムアコック、イアン・シンクレアと共に(2009年)。]]
影響を受けた作家は[[ウィリアム・S・バロウズ]]ら[[ビート・ジェネレーション|ビートニク作家]]<ref name=mousse/>、[[ウィリアム・ブレイク]]{{refnest|ムーアはブレイク協会の後援者のひとりであり<ref>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/culture/2015/sep/23/campaigners-buy-william-blakes-cottage-and-his-vegetable-patch|accessdate=2022-02-04|title=Campaigners buy William Blake's cottage – and his vegetable patch|publisher=The Guardian|date=2015-09-23|archivedate=2022-02-04 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220204154749/https://www.theguardian.com/culture/2015/sep/23/campaigners-buy-william-blakes-cottage-and-his-vegetable-patch }}</ref>、[[テート・ブリテン]]でブレイク展が開催されたときに[[ガーディアン]]紙に寄稿<ref>{{Cite web|date=2019-08-30|title=Heavenly visions of hell: Alan Moore on the sublime art of William Blake|url=http://www.theguardian.com/books/2019/aug/30/from-heaven-and-hell-alan-moore-on-the-sublime-visions-of-william-blake|accessdate=2022-02-05|website=The Guardian|language=en|archivedate= 2022-02-05|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220205221502/http://www.theguardian.com/books/2019/aug/30/from-heaven-and-hell-alan-moore-on-the-sublime-visions-of-william-blake }}</ref>を行っている。|group=†}}、[[トマス・ピンチョン]]<ref name=mousse>{{Cite web|url=http://moussemagazine.it/alan-moore-hans-ulrich-obrist-2013/|publisher=Mousse|title=A for Alan Moore|date=2013-12-01|accessdate=2022-02-05|archivedate=2022-05-23 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20210523170635/http://moussemagazine.it/alan-moore-hans-ulrich-obrist-2013/}}</ref>、{{仮リンク|イアン・シンクレア (作家)|en|Ian Sinclair|label=イアン・シンクレア}}<ref>{{cite interview | last=Moore | first=Alan | interviewer1=Dave Windett| interviewer2=Jenni Scott | interviewer3=Guy Lawley | title=Writer From Hell: The Alan Moore Experience | work=Comics Forum 4 | year=1993}} p. 46.</ref>、[[マイケル・ムアコック]]ら[[ニュー・ウェーブ (SF)|ニューウェーヴ]]SF作家、[[クライヴ・バーカー]]らホラー作家<ref>{{Cite journal|last=Whitaker|first=Steve|date=January 1989|title=Neil Gaiman interview|journal=Fantasy Advertiser|issue=109|pages=24–29}}</ref>がいる。

コミック作家からの影響については、ティム・キャラハンによるとコミックによるストーリーテリング技法を開拓した[[ウィル・アイズナー]]が別格として挙げられる。また『[[MAD (雑誌)|MAD]]』誌で多くのパロディ作品を書いていた[[ハーヴェイ・カーツマン]]と{{仮リンク|ウォーリー・ウッド|en|Wally Wood}}からは、スーパーヒーローの脱構築というアイディアだけでなく、特徴的な均等分割のコマ割りに影響が見られるという<ref name=rereadspirit>{{cite web|url=https://www.tor.com/2012/08/20/the-great-alan-moore-reread-the-spirit/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: ''The Spirit''|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2012-08-20|archivedate=2022-02-14 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220214234921/https://www.tor.com/2012/08/20/the-great-alan-moore-reread-the-spirit/}}</ref>。そのほかには[[ジャック・カービー]]や<ref name="TwoMorrows">{{Cite web|url=http://www.twomorrows.com/kirby/articles/30moore.html|title=The ''Supreme'' Writer: Alan Moore, Interviewed by George Khoury|date=November 2000|website=The Jack Kirby Collector|publisher=TwoMorrows Publishing|accessdate=2022-02-05|archiveurl=https://web.archive.org/web/20100112013036/http://twomorrows.com/kirby/articles/30moore.html|archivedate= 2010-01-12}}</ref>、{{仮リンク|ブライアン・タルボット|en|Brian Talbot}}の名が挙げられることがある<ref>{{Cite book|last=Moore|first=Alan|first2=Bryan|last2=Talbot|chapter=Introduction|year=1987|title=The Adventures of Luther Arkwright, Book 2: Transfiguration|edition=Proutt|publisher=Valkyrie Press|isbn=978-1-870923-00-2}}</ref><ref>{{Cite book|last=Sorensen|first=Lita|title=Bryan Talbot|date=November 2004|publisher=The Rosen Publishing Group|page=37|url=https://archive.org/details/bryantalbot0000sore/page/37|accessdate=2022-02-05|isbn=978-1-4042-0282-5}}</ref>。

アマチュア時代にノーサンプトン・アーツ・ラボで知り合ったリチャード・アシュビーからは創作への姿勢に関して大きな影響を受けたという。アシュビーは芸術全般に関心が広く、自身の才能の多寡を気にせず様々な分野に挑戦していた{{Sfn|Groth|1990a|p=62}}。{{行内引用|何かの分野で自分の才能が不足していたら、それを迂回する方法を考え出して克服する。それもたいていシンプルで独創的でエレガントな方法で。あの精神には敬服した。芸術へのアプローチとして本当に尊敬できるものだった}}{{sfn|Parkin|2013|p=45}}。ミュージシャンの[[ブライアン・イーノ]]からも芸術活動への方法論的なアプローチを学んだ。ムーアはイーノから、自身の創作プロセスを神聖視せずプラグマティックに再検討を繰り返すべきだという教えを取り入れ、{{行内引用|芸術は自動車修理と同じこと}}と言い切った{{sfn|Parkin|2013|p=270}}<ref>{{cite web|url=https://downthetubes.net/creating-comics-a-turn-of-the-millennium-interview-with-alan-moore-part-one/|accessdate=2022-03-02|title=Creating Comics: A Turn of the Millennium Interview with Alan Moore, Part One|publisher=downthetubes.net|date=2022-03-02}}</ref>{{refnest|ムーアはイーノが作った創作者のための助言カード [[:en:Oblique Strategies|''Oblique Strategies'']] を活用していた{{sfn|Barlatsky|2011|p=80}}。|group=†}}。{{行内引用|機械工なら、車が動かなくなったとき、フードの下に何があるか知りたくなるはずだ … わたしは書くことで生計をたててるんだから、創造のプロセスがどうなっているのか、理解しておくことは大いにアドバンテージになる}}。そうして方法論を突き詰めていった結果、行き着いたのが前述の[[#魔術|魔術と神秘思想]]である<ref name=allreviewsyanashita>{{cite web|url=https://allreviews.jp/review/3904|accessdate=2022-03-02|title=『フロム・ヘル <nowiki>[新装合本]</nowiki>』(みすず書房) - 著者:アラン・ムーア 翻訳:柳下 毅一郎 - 柳下 毅一郎による解説|publisher=ALL REVIEWS|date=2019-11-08|archivedate= 2021-05-10|archiveurl= https://web.archive.org/web/20210510222512/https://allreviews.jp/review/3904}}</ref><ref name="Moore's murderer"/>。

== 思想・信条 ==
=== 映画化 ===
コミックの映画化に否定的な意見を持っており、自作の映画版を公然と酷評している{{sfn|Ayres|2021|p=206}}。[[メディア・フランチャイズ]]化が当然の前提となっている21世紀のアメリカン・コミックにおいて、このような姿勢は珍しい{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1243–1251/2302}}{{refnest|2大出版社[[DCコミックス|DC]]と[[マーベル・コミックス|マーベル]]はそれぞれメディア複合企業[[AT&T]]と[[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー]]の傘下である<ref>{{cite web|url=https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/comics/article/85241-dc-comics-leaves-its-legacy-behind.html|accessdate=2022-01-20|title=DC Comics Leaves Its Legacy Behind|publisher=Publishers Weekly|date=2021-01-06|archivedate=2022-01-20 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220120131608/https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/comics/article/85241-dc-comics-leaves-its-legacy-behind.html }}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.cnbc.com/2021/12/21/disney-chairman-bob-iger-explains-why-hes-leaving-the-company.html|accessdate=2022-01-20|title=Disney Chairman Bob Iger explains why he's leaving the company|pubisher=CNBC|date=2021-12-21|archivedate=2022-01-25 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220125075346/https://www.cnbc.com/2021/12/21/disney-chairman-bob-iger-explains-why-hes-leaving-the-company.html }}</ref>。|group=†}}。

ムーアの映画化に対する考え方はハリウッドとの関わりが増すにつれてどんどん辛辣なものになっていった{{sfn|Ayres|2021|p=206}}。初期の『フロム・ヘル』(2001年)や『[[リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い|リーグ・オブ・レジェンド]]』(2003年)はいずれも原作から大きく改変された映画だったが{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1352–1355/2302}}、これらについては{{行内引用|映画を見ずにすんで関りを持たずにいられて、オプション料が入ってくる限り、誰も原作と映画を混同したりしないと思って気にしなかった}}と語っている<ref name="Lying in Gutters">{{Cite web|first=Rich|author=Johnston|url=http://www.comicbookresources.com/columns/index.cgi?column=litg&article=2153|title=Lying in the Gutters|website=Comic Book Resources|date=2005-05-23|archiveurl=https://web.archive.org/web/20140106220427/http://www.comicbookresources.com/?page=article&id=14937|archivedate=2014-01-06|accessdate=2022-02-03}}</ref>。ムーアの姿勢が硬化したのは、2003年に映画製作者{{仮リンク|マーティン・ポール|en|Martin Poll}}と脚本家[[ラリー・コーエン]]が脚本を『リーグ・オブ・レジェンド』に盗作されたとして[[20世紀スタジオ|20世紀フォックス]]とムーアを訴えたのがきっかけだったと考えられている{{sfn|Ayres|2021|p=207}}{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1281–1283/2302}}{{sfn|Parkin|2013|p=313}}。ムーアによると{{行内引用|彼らはこう信じているようだ。20世紀フォックスのトップが私を呼びつけて、つまらない盗作をカモフラージュしたいというだけの理由で、その脚本をパクった映画原作用のコミックブックを書かせたとね}}<ref name="Lying in Gutters"/>。係争は裁判外の和解で決着し、潔白を証し立てる機会を失ったムーアは映画業界全体に対して怒りを募らせた{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1288–1291/2302}}{{sfn|Parkin|2013|pp=315–316}}。

2005年、映画『[[Vフォー・ヴェンデッタ (映画)|Vフォー・ヴェンデッタ]]』がDCの親会社[[ワーナー・ブラザース|ワーナー]]の配給で公開された。製作者[[ジョエル・シルバー]]は記者会見において、ムーアが「{{interp|製作者の一人}} [[ウォシャウスキー姉妹|ラリー・ウォシャウスキー]]にとても期待しているようだった」という趣旨のことを述べた{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1296–1301/2302}}<ref>{{Cite news|url=http://newsarama.com/movies/VforPressConf.htm|title=''V for Vendetta's'' Press Conference|newspaper=Newsarama|accessdate=2022-02-18|archiveurl=https://web.archive.org/web/20071012161343/http://newsarama.com/movies/VforPressConf.htm|archivedate=2007-10-12}}</ref>。ムーアは{{行内引用|映画には関わりたくない}}としか言わなかったと主張し、シルバーに撤回させるようDCに要求した{{sfn|Parkin|2013|p=320}}{{refnest|[[ニューヨーク・タイムズ]]紙のインタビューによると、シルバーが実際にムーアから激励を受けたのは20年前に映画化権を取得したころのことだったという<ref name="vendettavendetta"/>。|group=†}}。また原作の政治的コンテキストが現代のアメリカ視聴者向けに変えられたことについて{{sfn|Parkin|2013|pp=322–323}}、{{行内引用|{{Interp|原作の}} 題材はファシズムや無政府主義だ。だが「ファシズム」「無政府主義」という言葉は映画のどこにも出てこない。自分の国を舞台にして政治風刺をやる度胸もないやつらの手で[[ジョージ・W・ブッシュ|ブッシュ]]政権の寓話にされてしまった}}とコメントしている<ref>{{Cite web|url=http://www.mtv.com/shared/movies/interviews/m/moore_alan_060315/|title=Alan Moore: The Last Angry Man|first=Jennifer|author=Vineyard|website=Movies on MTV.com|publisher=MTV|accessdate=2022-02-18|archiveurl=https://web.archive.org/web/20081222014726/http://www.mtv.com/shared/movies/interviews/m/moore_alan_060315/|archivedate=2008-12-22}}</ref>。

ムーアはその後、著作権を手放したコミック作品に自分の名前を載せない意向を示した。また将来の映画化においても自身の名前を出さず、原作料も受け取らないと発言した<ref>{{Cite web|url=http://www.comicsreporter.com/index.php/alan_moore_asks_for_an_alan_smithee/|title=Alan Moore Asks for an Alan Smithee|author=Spurgeon|first=Tom|date=2005-11-09|website=The Comics Reporter|accessdate=2022-02-18|archiveurl=https://web.archive.org/web/20051124004336/http://www.comicsreporter.com/index.php/alan_moore_asks_for_an_alan_smithee/|archivedate=2005-11-24}}</ref>。それ以降の映画『[[コンスタンティン (映画)|コンスタンティン]]』(2005年)、『[[ウォッチメン (映画)|ウォッチメン]]』(2009年、ワーナー)、[[HBO]]ドラマ『[[ウォッチメン (テレビドラマ)|ウォッチメン]]』(2019年)ではこの希望が守られ、ムーアへの原作料は替わりにコミックの作画家に支払われた<ref name=guardianinterview/>{{sfn|Ayres|2021|p=207}}{{sfn|Parkin|2009|loc=No.1310–1313/2302}}。2012年の ''[[:en:LeftLion|LeftLion]]'' 誌のインタビューで、映画化に協力しなかったことで手放した金額を尋ねられたムーアは「少なくとも数百万ドル」と答え、こう続けた。

{{Quote|quote=目の前で自分に値段をつけさせない、どれだけ金を積まれても一歩だって自己の原則を譲らない、たとえ実際上の意味がないとわかってもだ、そんな風に思える誇らしさは金では買えないからな。|source=アラン・ムーア(2012年)<ref>{{cite web |url= http://www.leftlion.co.uk/articles.cfm/title/alan-moore/id/4861/|title= Alan Moore: one of the finest exponents of the comic book art form to have ever lived|first= Jared|last= Wislon|accessdate=2022-01-12|date= 2012-08-07|publisher=LeftLion |archivedate=2012-12-10 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20121210104952/http://www.leftlion.co.uk/articles.cfm/title/alan-moore/id/4861/}}</ref>}}

これらの態度には批判もある{{sfn|Ayres|2021|p=208}}。『Vフォー・ヴェンデッタ』の作画家デイヴィッド・ロイドはムーアに同調しておらず、映画化権を売った時点で原作が改変されることは了解済みだったと語っている<ref name="vendettavendetta"/>。マーク・ヒューズは『[[フォーブス (雑誌)|フォーブス]]』誌への寄稿で、「リーグ」や ''Lost Girls'' で古典文学のキャラクターを借用しているムーアが自作の翻案については認めないのを{{行内引用|完全な偽善}}と批判した<ref>{{cite web|url=https://www.forbes.com/sites/markhughes/2012/02/01/alan-moore-is-wrong-about-before-watchmen/?sh=7483e4065def|accessdate=2022-02-18|title=Alan Moore Is Wrong About 'Before Watchmen'|publisher=Forbes|author=Mark Hughes|date=2012-02-01|archivedate=2022-02-19 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220219134251/https://www.forbes.com/sites/markhughes/2012/02/01/alan-moore-is-wrong-about-before-watchmen/?sh=7483e4065def }}</ref>。

=== 政治的傾向 ===
[[ファイル: London Southbank Centre graffiti 5.JPG|右|サムネイル|160px|{{行内引用|ムーアの宿敵{{sfn|Parkin|2013|p=246}}}}、[[マーガレット・サッチャー]](2011年の[[グラフィティ]])。]]
政治的には[[アナキズム|アナキスト]]を自認している<ref name="Heidi, pt1"/>。ムーアは英国[[労働党 (イギリス)|労働党]]による福祉国家政策が確立した1950年代に生まれ育ち{{sfn|Ayres|2021|p=16}}、若いころは自身の属する[[労働者階級]]に素朴な[[社会主義]]的理想を重ねていた{{sfn|Groth|1990b|p=82}}。社会主義の{{行内引用|センチメンタルな[[人道主義|ヒューマニタリアニズム]]}}は自然に受け入れられるものだった{{sfn|Groth|1990b|p=86}}。しかし1979年に[[保守党 (イギリス)|保守党]]の[[マーガレット・サッチャー]]が首相の座に就き、経済自由化を推し進めて平等主義を覆すと{{sfn|Ayres|2021|pp=15–16}}、庶民がそれを支持したことに幻滅してアナキズムに傾いた{{sfn|Groth|1990b|p=82}}。サッチャーに対しては非常に批判的であり、80年代の主要作品(『マーベルマン』、『Vフォー・ヴェンデッタ』、『ウォッチメン』)で描かれるディストピアにはいずれもサッチャー政権への風刺が読み取れる{{sfn|Ayres|2021|pp=15–16}}。90年代以降も[[サッチャリズム]]の遺産は[[新自由主義]]として残っているが、ムーアはそれにとどまらず、現代のマーケットで起きている芸術の商品化をサッチャー的なるものとして批判している{{sfn|Ayres|2021|p=16}}。

ムーアはアナキスト作家を扱った{{仮リンク|マーガレット・キルジョイ|en|Margaret Killjoy}}の著書 ''Mythmakers and Lawbreakers''{{翻訳|神話作りと法律破り}}(2009年)でアナキスト哲学を語っている。ムーアにとっては無政府状態こそが自然であり、体制秩序や指導者のような概念は不当なものだった{{sfn|Ayres|2021|p=50}}。
{{Quote|quote=あらゆる政体は無政府という基本状態の一種か、その派生だ。もちろんほとんどの人は、アナキズムを話題に出すと、最大のギャングが牛耳るようになるだけだからダメだ、と返してくるだろう。だが私に言わせればそれこそが現代社会そのものだ。我々が生きているのは発展の仕方を間違えた無政府状態であり、最大のギャングが政権を握って、これはアナキズムではなく資本主義だとか共産主義だとか言い張っているのだ。しかし私は、人間がその手で営む政治形態としては無政府状態がもっとも自然だと考えている。|source=アラン・ムーア(2009年、'' Mythmakers and Lawbreakers'')<ref>{{cite book | last=Killjoy | first=Margaret | others=Robinson, Kim Stanley (Introduction) | title=Mythmakers and Lawbreakers | publisher=AK Press| year=2009 | page=42 | isbn=978-1-84935-002-0 | oclc=318877243}}</ref> }}

ムーアはアナキズムの基礎に「完全な自己責任と、自主独立の尊重」を置いている{{sfn|Ayres|2021|p=50}}。80年代にメインストリーム・コミック出版社が年齢レイティング制と制作者へのガイドラインを導入しようとしたときには、あらゆる形式の表現規制に反対するラディカルな立場をとった{{sfn|Parkin|2013|p=225}}。評論誌『{{仮リンク|コミックス・ジャーナル|en|The Comics Journal}}』のインタビューでは、子供が[[ハードコア (ポルノ)|ハードコア・ポルノ]]に触れることにさえ、法的規制という対処法をとるべきではないと語った{{sfn|Groth|1987|loc=pp. 70&ndash;71 in the original publication}}{{sfn|Parkin|2013|p=225}}。ムーアは性差別表現や『[[G.I.ジョー]]』のような戦争賛美的な作品は自身の個人的なモラルに反すると言っている{{sfn|Groth|1987| loc=p. 64 in the original publication}}。しかしそれらを規制したり、ゾーニング・包装・レイティング表示などの手段で子供の手から遠ざけるのではなく、自身の信条を伝える優れた表現によってマーケットから淘汰するのが理想なのだという{{sfn|Groth|1987| loc=p. 64 in the original publication}}。

[[ファイル: Anonymous @ Million Mask March, Boise ID- Nov 5, 2013- Protest rally 99% anon Guy Fawkes sign occupy 2013-11-13 08-24.jpg|左|サムネイル|2013年の11月5日([[ガイ・フォークス・ナイト|ガイ・フォークス・デー]])に行われた{{仮リンク|ミリオン・マスク・マーチ|en|Million Mask March}}。ムーア原作の映画『[[Vフォー・ヴェンデッタ (映画)| Vフォー・ヴェンデッタ]]』で登場した[[ガイ・フォークス・マスク|ガイ・フォークスの仮面]]は、現実世界において政治的反抗の象徴として広く受け入れられた<ref name=rereadlegacy>{{cite web|url= https://www.tor.com/2013/01/14/the-great-alan-moore-reread-the-alan-moore-legacy/|accessdate=2022-02-08|title= The Great Alan Moore Reread: The Alan Moore Legacy|publisher=Tor.com|author=Tim Callahan|date=2013-01-14|archivedate=2021-04-14 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20210414145908/https://www.tor.com/2013/01/14/the-great-alan-moore-reread-the-alan-moore-legacy/}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.bbc.com/news/world-34744710|accessdate=2022-01-12
|title=Million Mask March: What are Anonymous' demands?|publisher=BBC News|date=2015-11-06|archivedate=2021-11-07 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20211107190708/https://www.bbc.com/news/world-34744710}}</ref>。]]
2011年12月、フランク・ミラーが{{仮リンク|占拠運動|en|Occupy movement}}を批判した件について質問されて運動側を擁護し、ミラーの近作が[[女性嫌悪]]・[[同性愛嫌悪]]に傾いており方向を誤っていると述べた<ref name=honest2>{{Cite web|url=http://www.honestpublishing.com/news/the-honest-alan-moore-interview-part-2-the-occupy-movement-frank-miller-and-politics/|title=The Honest Alan Moore Interview – Part 2: The Occupy Movement, Frank Miller, and Politics|date=2011-12-02|publisher=Honestpublishing.com|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131106150719/http://www.honestpublishing.com/news/the-honest-alan-moore-interview-part-2-the-occupy-movement-frank-miller-and-politics/|archivedate=2013-11-06|accessdate=2022-02-18}}</ref>。この運動の参加者は世界的に『Vフォー・ヴェンデッタ』の主人公にならった[[ガイ・フォークス・マスク|ガイ・フォークスのマスク]]を着用した<ref>{{Cite web|author=Caron|first=Christina|url=https://abcnews.go.com/blogs/business/2011/11/occupy-protesters-embrace-v-for-vendetta/|title=Occupy Protesters Embrace ''V for Vendetta''|website=ABC News|date=2011-12-04|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131109001524/https://abcnews.go.com/blogs/business/2011/11/occupy-protesters-embrace-v-for-vendetta/|archivedate=2013-12-09|accessdate=2022-03-04}}</ref><ref>{{Cite web|author=Olson|first=Geoff|url=http://commonground.ca/?p=3120|title=Demonstrators don ''V for Vendetta'' masks in Occupy Everywhere|website=Common Ground|date=2011-11|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131109001619/http://commonground.ca/2011/11/demonstrators-don-v-for-vendetta-masks-in-occupy-everywhere/|archivedate=2013-11-09|accessdate=2022-03-04}}</ref>。同じマスクは[[アノニマス (集団)|アノニマス]]、[[ウィキリークス]]、[[エジプト革命 (2011年)|エジプト革命]]<ref>{{Cite web|url=http://www.jadaliyya.com/pages/index/1723/v-for-vendetta_the-other-face-of-egypts-youth-move|title=''V for Vendetta'': The Other Face of Egypt's Youth Movement|first=Linda|author=Herrera|date= 2011-05-30|publisher=Jadaliyya.com|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131107022311/http://www.jadaliyya.com/pages/index/1723/v-for-vendetta_the-other-face-of-egypts-youth-move|archivedate= 2013-11-07|accessdate=2022-01-12}}</ref>、[[反グローバリゼーション]]デモでも使われた<ref>{{Cite web|author=Lamont|first=Tom|url=https://www.theguardian.com/books/2011/nov/27/alan-moore-v-vendetta-mask-protest|title=Alan Moore – meet the man behind the protest mask|website=The Observer|date=26 November 2011|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131205091521/http://www.theguardian.com/books/2011/nov/27/alan-moore-v-vendetta-mask-protest|archivedate=5 December 2013|accessdate=12 December 2011}}</ref>。占拠運動の支持者で『オキュパイ・コミックス』を発刊した映画監督{{仮リンク|マット・ピッツォーロ|en|Matt Pizzolo}}はムーアを運動の{{行内引用|非公式のゴッドファーザー}}と呼び、同世代の世界観形成に大きな影響があったと語っている<ref name=wiredoccupy/>。ムーアは占拠運動を{{行内引用|一瞬たりとも奪われるべきではなかった権利を取り戻そうとしている普通の人々}}と呼び<ref name="Flood">{{Cite web|author=Flood|first=Alison|url=https://www.theguardian.com/books/2011/dec/06/alan-moore-frank-miller-row|title=Alan Moore attacks Frank Miller in comic book war of words|website=The Guardian|date=2011-12-07|archiveurl=https://web.archive.org/web/20131108144744/http://www.theguardian.com/books/2011/dec/06/alan-moore-frank-miller-row|archivedate=2013-11-08|accessdate=2021-03-03}}</ref>、続けて{{行内引用|アナキストとして、権力はそれによって実際に人生を左右される人々の手に渡るべきだと信じている}}と語った<ref name=honest2/>。

1990年のインタビューでは、アナキストとしての理想は政党政治の中で実現できるものではないが、それに向けた第一歩として、基本的な生活を保障するとともに自由競争を認める[[緑の党]]に期待すると述べた{{sfn|Groth|1990b|p=84}}。2016年8月、{{仮リンク|2016年の労働党党首選 (英国)|en|2016 Labour Party leadership election (UK)|label=労働党党首選}}に出馬した[[ジェレミー・コービン]]を支援した<ref name="theguardian1">{{Cite news|last=Cain|first=Sian|url=https://www.theguardian.com/books/2016/sep/19/alan-moore-gives-heartfelt-backing-to-jeremy-corbyn-but-wont-vote-for-him|title=Alan Moore gives heartfelt backing to Jeremy Corbyn (but won't vote for him)|newspaper=The Guardian|date=2016-09-19|accessdate=2022-03-05|archivedate=2022-01-11 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220111165538/https://www.theguardian.com/books/2016/sep/19/alan-moore-gives-heartfelt-backing-to-jeremy-corbyn-but-wont-vote-for-him }}</ref>。[[2017年イギリス総選挙|2017年の総選挙]]では、左派[[社会主義者]]のコービンが党首を務めていることを理由に[[労働党 (イギリス)|労働党]]を支持する、ただしアナキストとしての政治的信条により自身では投票しないと表明した<ref>{{Cite news|url=https://momentumnorthants.org.uk/alan-moore-statement/|title=Alan Moore statement for Momentum in Northamptonshire|newspaper=Momentum Northants|archiveurl=https://web.archive.org/web/20161210200216/https://momentumnorthants.org.uk/alan-moore-statement/|archivedate=2016-12-10|accessdate=2022-03-04|publisher=[[:en: Momentum (organisation)|Momentum]]|author=Alan Moore}}</ref>。2019年11月になると再び労働党への消極的支持を表明し、40年ぶりに投票するつもりだとさえ発言した<ref name="theguardian2">{{Cite web|last=Flood|first=Alison|url=https://www.theguardian.com/books/2019/nov/21/alan-moore-drops-anarchism-to-champion-labour-against-tory-parasites|title=Alan Moore drops anarchism to champion Labour against Tory 'parasites'|publisher =The Guardian|date=2019-11-21|accessdate=2022-03-04|archivedate=2022-02-05 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220205221500/https://www.theguardian.com/books/2019/nov/21/alan-moore-drops-anarchism-to-champion-labour-against-tory-parasites }}</ref><ref name="independent">{{Cite web|last=Stolworthy|first=Jacob|url=https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/news/alan-moore-watchmen-vote-general-election-labour-manifesto-corbyn-a9211671.html|title=Alan Moore: Watchmen creator and self-proclaimed anarchist to vote in election for first time in 40 years|publisher=The Independent|date=2019--11-21|accessdate= 2022-03-04|archivedate=2022-01-11 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220111165537/https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/news/alan-moore-watchmen-vote-general-election-labour-manifesto-corbyn-a9211671.html }}</ref>。{{行内引用|この投票は労働党支持というより[[トーリー党]]不支持を旨とするものだが、労働党の目下の公約はこれまで英国の主要政党を見てきた中でもっとも有望に思われる。複雑極まるこの時代、我々はみなどの道を選ぶべきか確信を持てずにいるが、あからさまに突き出た氷山からできるだけ離れた航路を取ってくれる奴に張るのが一番というものだ}}<ref>{{Cite tweet|number=1197222203152052230|user=Amber_moore|title=The cruelty, callousness, and... |accessdate=2022-01-12|date=2019-11-20}}</ref>

=== 陰謀論について ===
ムーアは『ウォッチメン』『フロム・ヘル』など陰謀論を扱った作品を書いている{{sfn|Parkin|2013|p=324}}。[[:en:Brought to Light|''Brought to Light'']] への寄稿で[[陰謀論]]について調べるうちに、「世界規模の陰謀」という発想に対して以下のような意見を持つようになった。

{{Quote|quote=陰謀論について学んだもっとも大事なことは、陰謀論者が陰謀の存在を信じるのは安心したいからだということだ。世界の真相は混沌だ。本当のところ、世界を支配しているのは{{仮リンク|ユダヤ・フリーメイソン陰謀説|en|Judeo-Masonic conspiracy theory|label=ユダヤ人の銀行家}}でも[[グレイ (宇宙人)|グレイ・エイリアン]]でも異次元から来た身長12フィートの[[ヒト型爬虫類|爬虫類人間]]でもない。真実ははるかに恐ろしいものだ。世界は誰にも支配されていない。誰も舵を取っていないのだ。|source=アラン・ムーア(2005年、''The Mindscape of Alan Moore'')<ref name="Moore Documentary"/>}}


== 主要作品 ==
== 主要作品 ==
{{Main|:en:Alan Moore bibliography}}
* 『マーベルマン』([[:en:Marvelman|Marvelman]])
'''コミック'''
* 『[[Vフォー・ヴェンデッタ]]』(V for Vendetta)
* ''[[Vフォー・ヴェンデッタ|V for Vendetta]]'' (1982–1985, 1988–1989)
* 『[[スワンプシング]]』(Swamp Thing)
**『Vフォー・ヴェンデッタ』(2006、小学館プロダクション)
* 『[[ウォッチメン]]』(Watchmen)
* ''[[マーベルマン/ミラクルマン|Marvelman]]/Miracleman'' (1982–1984)
* 『シュプリーム』(Supreme)
**『ミラクルマン BOOK ONE:ドリーム・オブ・フライング』(2014、[[ヴィレッジブックス]]。オリジナル・ライター名義)
* 『[[フロム・ヘル]]』(From Hell)
* ''Skizz'' (1983–1985)
* 『[[トップ10]]』(Top 10)
* ''The Ballad of Halo Jones'' (1984–1986)
*『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』(The League of Extraordinary Gentlemen)
* ''[[スワンプシング|Swamp Thing]]'' (1984–1987)
*『[[プロメテア]]』(Promethea)
**『スワンプシング』(2010、[[小学館集英社プロダクション]])
* ''[[何がマン・オブ・トゥモローに起こったか?|Whatever Happened to the Man of Tomorrow?]]'' (1986)
**『スーパーマン:ザ・ラスト・エピソード』(2010、小学館集英社プロダクション)収録
* ''[[ウォッチメン|Watchmen]]'' (1986–1987)
**『WATCHMEN日本語版』(1998、[[メディアワークス]])
**『Watchmen』(2009、小学館集英社プロダクション)
* ''[[バットマン: キリングジョーク|Batman: The Killing Joke]]'' (1988)
**『バットマン:キリングジョーク―アラン・ムーアDCユニバース・ストーリーズ』(2004、[[ジャイブ]])収録
**『バットマン:キリングジョーク 完全版』(2010、小学館集英社プロダクション)収録
* ''[[フロム・ヘル|From Hell]]'' (1989–1996)
**『フロム・ヘル』(上・下巻2009、新装合本2019、[[みすず書房]])
* ''Big Numbers'' (1990)
* ''A Small Killing'' (1991)
* ''Lost Girls'' (1991–1992, 2006)
* ''[[スポーン|SPAWN]]'' (1993–)
**『SPAWN日本語版』#3(1996、メディアワークス)
* ''Violator'' (1994)
**『VIOLATOR日本語版 SPAWN SIDE STORY』(1997、メディアワークス)
* ''Spawn: Blood Feud'' (1995)
**『SPAWN BLOOD FEUD日本語版』(1997、メディアワークス)
* ''WildC.A.T.s'' (1995–1998)
**『WILDC.A.T.S日本語版』#9–12(1999、メディアワークス)
* ''[[トップ10|Top 10]]'' (1999–2001)
**『トップ10』#1–2(2009、ヴィレッジブックス)
* ''[[プロメテア|Promethea]]'' (1999–2005)
**『プロメテア』1–3(2014–2019、小学館集英社プロダクション)
* ''Tom Strong'' (1999–2006)
* ''[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン|The League of Extraordinary Gentlemen]]'' (1999–2019)
**『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(2014、ヴィレッジブックス)
**『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(2015、ヴィレッジブックス)
**『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン:センチュリー』(2019、ヴィレッジブックス)
* ''[[ネオノミコン|Neonomicon]]'' (2010)
**『ネオノミコン』(2021、国書刊行会)収録
* ''Fashion Beast'' (2012–2013)
* ''Providence'' (2015–2017)
**『プロビデンス』ACT1–3(刊行予定、国書刊行会)

'''小説'''
* ''Voice of the Fire'' (1996)
* ''Jerusalem'' (2016)

'''ノンフィクション'''
* ''Alan Moore's Writing for Comics'' (2003)

'''映画化作品'''
{| class="wikitable sortable mw-collapsible plainrowheaders"
|+ style="background-color:lightgray"|原作映画作品の一覧
! rowspan="2" scope="col" style="width: 2em;" |年
! rowspan="2" scope="col" style="width: 20em;" |題名
! rowspan="2" scope="col" style="width: 17em;" |監督
! rowspan="2" scope="col" style="width: 17em;" |製作
! rowspan="2" scope="col" style="width: 17em;" |原作
! scope="col" style="width: 6em;" |製作費
! scope="col" style="width: 6em;" |興行収入
! rowspan="2" class="unsortable" scope="col" style="width: 2em;" |[[Rotten Tomatoes]]評価
|- class="unsortable"
! colspan="2" class="unsortable" |万ドル
|-
|1989
! scope="row" |{{仮リンク|怪人スワンプシング|en|The Return of Swamp Thing}}
|[[ジム・ウィノースキー]]
|ライトイヤー・エンタティンメント<br />[[ギャガ]]
|『スワンプシング』
レン・ウィーン、バーニー・ライトソン{{refnest|DCコミックスが製作者と結んだ契約により、『スワンプシング』誌の個別の原作者はクレジットされなかった。しかし製作者によるとムーア執筆期の同誌がストーリーのベースになっている{{sfn|Parkin|2013|pp=305–306}}。|group=†}}
|
|19<ref>{{cite web|url=https://www.boxofficemojo.com/title/tt0098193/?ref_=bo_se_r_1|accessdate=2022-02-20|archivedate=2022-02-20 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220220031652/https://www.boxofficemojo.com/title/tt0098193/?ref_=bo_se_r_1|title=The Return of Swamp Thing|publisher=Box Office Mojo}}</ref>
|44%<ref>{{Cite web|title=The Return of Swamp Thing|url=https://www.rottentomatoes.com/m/return_of_swamp_thing | publisher=Rotten Tomatoes |accessdate=2022-02-18|archivedate= 2022-02-14|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220214233420/https://www.rottentomatoes.com/m/return_of_swamp_thing }}</ref>
|-
|2001
! scope="row" |フロム・ヘル
|[[ヒューズ兄弟|アルバート・ヒューズ]]、[[ヒューズ兄弟|アレン・ヒューズ]]
|[[20世紀スタジオ|20世紀フォックス]]
|『[[フロム・ヘル]]』
アラン・ムーア、エディ・キャンベル
|3500<ref name=mojofromhell/>
|7460<ref name=mojofromhell>{{cite web|url=https://www.boxofficemojo.com/title/tt0120681/?ref_=bo_se_r_1|accessdate=2022-02-20|title=From Hell|publisher=Box Office Mojo|archivedate=2022-02-20 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220220031655/https://www.boxofficemojo.com/title/tt0120681/?ref_=bo_se_r_1}}</ref>
|57%<ref>{{Cite web|title=From Hell|url=https://www.rottentomatoes.com/m/from_hell | publisher=Rotten Tomatoes |accessdate=2022-02-18|archivedate=2022-02-20 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220220031652/https://www.rottentomatoes.com/m/from_hell }}</ref>
|-
|2003
! scope="row" |[[リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い]]
|[[スティーヴン・ノリントン]]
|20世紀フォックス<br />アングリー・フィルムズ<br />インターナショナル・プロダクション・カンパニー
JDプロダクションズ
|『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』
アラン・ムーア、ケヴィン・オニール
|7800<ref name=mojoleague/>
|17930<ref name=mojoleague>{{cite web|url=https://www.boxofficemojo.com/title/tt0311429/?ref_=bo_se_r_1|accessdate=2022-02-20|title=The League of Extraordinary Gentlemen|publisher=Box Office Mojo|archivedate=2022-02-20 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220220031705/https://www.boxofficemojo.com/title/tt0311429/?ref_=bo_se_r_1}}</ref>
|17%<ref>{{Cite web|url=http://www.rottentomatoes.com/m/league_of_extraordinary_gentlemen/|title=''The League of Extraordinary Gentlemen''|publisher=Rotten Tomatoes|accessdate=2022-02-18|archivedate=2022-02-02 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220202113229/http://www.rottentomatoes.com/m/league_of_extraordinary_gentlemen/}}</ref>
|-
|2005
! scope="row" |[[コンスタンティン (映画)|コンスタンティン]]
|[[フランシス・ローレンス]]
|[[ワーナー・ブラザース]]<br />[[ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ]]<br />{{仮リンク|ヴァーティゴ・コミックス|en|Vertigo Comics|label=DCコミックス・ヴァーティゴ}}<br />ロンリー・フィルム・プロダクションズ<ref>{{cite web|url=https://www.imdb.com/title/tt0360486/companycredits?ref_=ttfc_ql_4|accessdate=2022-02-03|title=Constantine (2005) - Company credits|publisher=IMDb|archivedate=2022-02-04 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220204154750/https://www.imdb.com/title/tt0360486/companycredits?ref_=ttfc_ql_4}}</ref>
|『ヘルブレイザー』
ジェイミー・デラノ、{{仮リンク|ガース・エニス|en|Garth Ennis}}<ref>{{cite web|url=https://www.imdb.com/title/tt0360486/fullcredits?ref_=ttco_ql_1|accessdate=2022-02-03|title=Constantine (2005) - Full Cast & Crew|publisher=IMDb|archivedate= 2022-02-05|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220205092612/https://www.imdb.com/title/tt0360486/fullcredits?ref_=ttco_ql_1}}</ref>{{refnest|映画と『ヘルブレイザー』誌の主人公、[[ジョン・コンスタンティン]]はムーアが原案のキャラクターである{{sfn|Parkin|2013|p=212}}。|group=†}}
|10000<ref name=mojoconstantine/>
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|46%<ref>{{Cite web|title=Constantine|url=https://www.rottentomatoes.com/m/constantine| publisher=Rotten Tomatoes |accessdate=2022-02-18|archivedate= 2022-02-02|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220202061745/https://www.rottentomatoes.com/m/constantine }}</ref>
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|2005
! scope="row" |[[Vフォー・ヴェンデッタ (映画)|Vフォー・ヴェンデッタ]]
|[[ジェームズ・マクティーグ]]
|[[ワーナー・ブラザース]]<br />{{仮リンク|バーチャル・スタジオズ|en|Virtual Studios}}<br />[[シルバー・ピクチャーズ]]<br />[[ウォシャウスキー姉妹|アナーコス・プロダクションズ]]
|『Vフォー・ヴェンデッタ』
アラン・ムーア、デイヴィッド・ロイド
|5400<ref name=mojov>{{cite web|url=https://www.boxofficemojo.com/release/rl1601799681/|accessdate=2022-02-20|title=V for Vendetta|publisher=Box Office Mojo|archivedate=2022-02-20 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220220031700/https://www.boxofficemojo.com/release/rl1601799681/}}</ref>
|13250<ref name=mojov/>
|73%<ref>{{Cite web|website=rottentomatoes.com|title=V for Vendetta (2006)|url=http://www.rottentomatoes.com/m/v_for_vendetta/| publisher=Rotten Tomatoes |accessdate=2022-02-18|archivedate=2022-02-02 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220202160408/http://www.rottentomatoes.com/m/v_for_vendetta/}}</ref>
|-
|2009
! scope="row" |[[ウォッチメン (映画)|ウォッチメン]]
|[[ザック・スナイダー]]
|ワーナー・ブラザース<br />[[パラマウント・ピクチャーズ]]<br />[[レジェンダリー・エンターテインメント|レジェンダリー・ピクチャーズ]]<br />ローレンス・ゴードン・プロダクションズ
[[DCコミックス|DCエンターテインメント]]
|『[[ウォッチメン]]』
アラン・ムーア、デイヴ・ギボンズ
|13000{{sfn|Parkin|2013|p=330}}
|18530<ref>{{cite web|url=https://www.boxofficemojo.com/title/tt0409459/?ref_=bo_se_r_1|accessdate=2022-02-20|title=Watchmen|publisher=Box Office Mojo|archivedate= 2022-02-20|archiveurl= https://web.archive.org/web/20220220031657/https://www.boxofficemojo.com/title/tt0409459/?ref_=bo_se_r_1 }}</ref>
|65%<ref>{{Cite web|url=http://www.rottentomatoes.com/m/watchmen/|title=''Watchmen'' Movie Reviews| publisher=Rotten Tomatoes|accessdate=2022-02-18|archivedate=2022-02-15 |archiveurl= https://web.archive.org/web/20220215030240/http://www.rottentomatoes.com/m/watchmen/}}</ref>
|-
|2016
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|{{仮リンク|サム・リュー|en|Sam Liu}}
|ワーナー・ブラザース<br />DCエンターテインメント<br />[[ワーナー・ブラザース・アニメーション]]
|『[[バットマン: キリングジョーク]]』
アラン・ムーア、ブライアン・ボランド
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|}

== 脚注 ==
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
{{Reflist|3}}

=== 参考文献 ===
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* {{Facebook|OfficialAlanMoore}}
{{Commonscat|Alan Moore}}
* [http://www.dodgemlogic.com/ 公式ウェブサイト]
* {{IMDb name|0600872}}
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* {{dmoz|Arts/Comics/Creators/M/Moore,_Alan}}
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[[Category:ノーサンプトン出身の人物]]
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[[Category:存命人物]]

2022年3月26日 (土) 18:44時点における版

アラン・ムーア
Alan Moore
アラン・ムーア(2008年)
ペンネーム
  • Curt Vile
  • Jill de Ray
  • Translucia Baboon
  • Brilburn Logue
  • The Original Writer
誕生 (1953-11-18) 1953年11月18日(70歳)
イングランドの旗 イングランドノーサンプトン
職業 漫画原作者漫画家小説家
音楽家、魔術師、神秘家
活動期間 1970年代
ジャンル SF、一般フィクション、ノンフィクション、スーパーヒーロー、ホラー
代表作
配偶者
子供
ウィキポータル 文学
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アラン・ムーア(Alan Moore, 1953年11月18日-)は主にコミック原作で知られるイングランド人作家。代表作に『Vフォー・ヴェンデッタ』、『ウォッチメン』、『バットマン: キリングジョーク』、『フロム・ヘル』がある[1][2]。英語圏では同業者や批評家の間で広く認められており、コミック史上最高の原作者とされることがある[3][4]。ポップカルチャーで引用されることが多く[5][6]、文芸家や映像作家への影響が大きいことで知られている[7][8]

1970年代後半に英国で漫画家として活動を開始した。原作者に転向して 2000 ADWarrior などの雑誌に寄稿するようになると、テロリストの主人公がファシズム政権と戦う『Vフォー・ヴェンデッタ』(1982年)や、スーパーヒーロー・コミックを現代的に再定義する『マーベルマン』(1982年)で名を挙げた。その後米国の大手出版社DCコミックスに起用され、『スワンプシング』誌を皮切りにバットマンスーパーマンのようなメジャーなキャラクターを手掛け、在英コミック原作者として初めて米国で成功を収めた[9]。オリジナル作品『ウォッチメン』(1986年)は洗練された語りとポストモダンなジャンル脱構築によって高く評価され、「コミックの歴史を通した最高傑作」とも呼ばれている[10][11]。同作はメインストリーム・コミック[† 1]全体の作風を一変させただけでなく、一般読書界からも人気を集め、米国においてコミックの社会的地位が向上する一因となった[13]

1980年代末からは表現の自主規制の是非や著作権の帰属を巡ってDC社と絶縁し、自己出版と小出版社での活動が中心になった。歴史と社会の総体を描いた『フロム・ヘル』(1989年)や、児童文学の古典とポルノグラフィを組み合わせた Lost Girls(1991年)などの実験的作品を発表した後、新興のスーパーヒーロー系出版社イメージ・コミックスを経てアメリカズ・ベスト・コミックス英語版という出版レーベルを立ち上げ、ヴィクトリア朝文学から登場人物を借りた『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(1999年)や、神秘学による精神の解放を描いた『プロメテア』(1999年)など[14]、創作や集合的想像力をテーマとする作品を残した[15]。それらの完結とともにコミック原作を引退し、2016年には大部の小説 Jerusalem を発表した。

ムーアは奇人として有名である[16]神秘主義者[17]儀式魔術師英語版アナキスト[18]でもあり、作品の多くでこれらのテーマを扱っている。神秘学関連の前衛的スポークン・ワード公演を行うこともある。自作のハリウッド映画化には否定的だが、その意思に反して『フロム・ヘル』(2001年)、『リーグ・オブ・レジェンド』(2003年)、『Vフォー・ヴェンデッタ』(2005年)、『ウォッチメン』(2009年)などが公開されるに至っている。著作権の所在が争われている一部の過去作の再版では、ムーアが名を出すことを拒んだため The Original Writer(→原著者)とだけクレジットされている[19]

来歴

生い立ち: 1953-1978

ムーアが半生を過ごしたノーサンプトンの中心部。

1953年11月18日に生まれる[20]。共に暮らす家族は醸造所に勤める父アーネストと印刷労働者の母シルヴィア、弟、そして迷信深いが威厳あるヴィクトリア朝風の女家長[21]こと母方の祖母だった[22][23]。労働者階級の一家は、ムーアの信じるところによると代々ノーサンプトンに住んでいた[24]。放蕩者だった父方の曾祖父はカリカチュアを嗜んでおり、パブで描いて支払いの代わりにしていたという[25]。それを除けば芸術や文学とは無縁の家系だった[26]

市内でも特に公共サービスが少なく非識字率も高い地区「バロウズ[† 2]」で育つが、そこの住民とコミュニティには愛着を感じていた[27]。研究者ジャクソン・エアーズによると、ムーアは労働者階級の育ちを通じて共同体主義、個人の対等、自主自律の感覚をバランスよく身に着けた[28]

そこが私の教室だった。バロウズで自分に誇りを持つには、まっとうな人間であるしかない。横暴な奴に立ち向かうしかない。それは子供のころの私に深く刻み込まれた。人生の指針としては悪くない。
アラン・ムーア(2012年)[25]

5歳で読むことを覚えて雑食性の読書家となり、地元の図書館から本を仕入れた[29]。スプリング・レイン初等学校に入学するころ[30]コミックを読み始めた。初めは The TopperThe Beezer のような英国の週刊コミック誌 だったが、やがて貨物船の底荷として米国から流れてくる『フラッシュ』『ディテクティヴ・コミックス』『ファンタスティック・フォー』などを漁るようになった[31][32]。英国の片田舎での暮らしに比べれば、アメリカン・コミックに描かれる大都市は未来世界のようだった[33]。自身でもそれらを真似たコミック作品を描き始め、友人に回覧して小銭を集めては子供支援団体に募金したという[25][34]

初等教育の終わりにイレブンプラス英語版試験に合格し、ノーサンプトン・グラマースクールへの入学資格を得た[35]。そこで教育の高いミドルクラス層と初めて出会い、初等学校でトップの成績だったのが最底辺になったことを知って衝撃を受けた[36]。その後、学校を嫌うようになり、勉強にも興味を持てず、公教育には子供に規則順守、服従、退屈への順応を教え込むための隠されたカリキュラムがあると考えるようになった[37]

1960年代後半から黎明期のコミックファンジンで詩やエッセイ、イラストレーションを発表し始め、ファン活動を通じてスティーヴ・ムーア英語版(血縁なし)など後の共作者の多くと知り合った[20][38][39]。また自身でも学校で詩の同人誌 Embryo(→胚、萌芽)を発刊した[40][41]。ムーアの人格形成には1960年代のカウンターカルチャーが深く根差しており、この時期の作品にも英国のアンダーグラウンド雑誌『Oz英語版』の影響が強かった[42][43]

1971年、ヒッピー文化に交わる中で覚えたLSDを持ち込んだことが元でグラマースクールを放校された[44][45][46]。校長はムーアが在校生の風紀に悪影響を与えるから入学させないようにと近隣の学校に通達を出したという[47][48]

LSDは素晴らしい経験だった。人に勧めるつもりはないが、私にとっては、なんというか、現実が確定したものではないという考えを叩きこんでくれた。いつも見ている現実は一つの確かな現実だが、それがすべてではない。まったく違うものが同じくらい確かな意味を持つような、異なる視点が存在する。そう知ることで私は根底から変わった。
アラン・ムーア(2003年)[49]

それから数年間はトイレ清掃や皮なめし工などの仕事をしながら実家で暮らした[50]。このころは Embryo を通じて加入したノーサンプトン・アーツ・ラボ英語版の例会が数少ない他人との交流の機会だった[51]。アーツ・ラボはジャンルを問わず芸術家が交流する全国的なカウンターカルチャー運動で[52]、ノーサンプトンのグループはせいぜい2–30人程度の無名の集まりにすぎなかったが、ムーアはそこで作詞や劇作、演技に目を開かれた[53][54]。特に詩の朗読には自分で天分を感じたという。これらの経験は後の執筆や公演活動の基礎となった[55][53]

1970年代にはファンダムとは距離を置くようになっていたが、ヒーローコミックは読み続けていた。多くは凡作だと感じたが、ジャック・カービーの「フォースワールド英語版」やフランク・ミラー期の『デアデビル』には引きつけられた[56][57]。それ以上に熱中したのはユーモア誌『MAD』や[58]アート・スピーゲルマンビル・グリフィス英語版による Arcade: The Comics Revue 誌だった。後のエッセイでは同誌をアンダーグラウンド・コミックスというそもそもの思想のほとんど完璧な到達点と呼んでいる[59]

1973年の終わりに同じノーサンプトン生まれのフィリス・ディクソンと交際を始め、市内のアパートで同棲した[60]。その後すぐに結婚してより広いアパートに移り、ガス委員会英語版の下請け会社で事務仕事をした[60]。しかし仕事に満足できず、芸術的な活動で生計を立てようと考えた[61]。1977年の秋にフィリスが妊娠すると、赤ん坊の顔を見ると決心が鈍ると考えたムーアは勤めを辞めてコミックを描くことにした[62]

漫画家としての活動初期: 1978-1983

それまでにもアマチュアとしてオルタナティヴ系の媒体にコミックストリップを寄稿したことはあった。過去にローカル紙 Anon に描いた風刺4コマ Anon E. Mouse(→アノニーマウス)は掲載紙の穏健な政治志向に合わず5回で終わっていた(1974–5年)[63]。1978年2月、アーツ・ラボの人脈を通じてオックスフォードのアングラ隔週刊紙 Back Street BugleSt. Pancras Panda(→パンダのセント・パンクラス[† 3]を無償で寄稿し[65]、翌年3月まで描き続けた[66]。『MAD』誌に影響を受けた1回10–15コマのギャグ漫画だった[65]。初めて対価を得たのは『NME』誌に掲載されたエルヴィス・コステロマルコム・マクラーレンのイラストレーションだった[67]

1979年末から1980年の初めにかけて、コミック原作者の友人スティーヴ・ムーア[68]と組んで作画を担当し、コミック数編を音楽雑誌 Dark Star に寄稿した[69]。作曲家クルト・ヴァイルをもじった Curt Vile(→「不愛想で下品な」)という筆名を使っていた[46]。このとき作り出したキャラクターに粗暴なサイボーグ傭兵アクセル・プレスボタン英語版がいる[70]

それからすぐに発行数25万部の音楽週刊誌 Soundsチャンドラーを気取った口調の探偵が「ロックンロールの死」を調査するアンダーグラウンド・コミックス風の連載 Roscoe Moscow(1979年3月–1980年6月)が始まり[71][72]、週35ポンドの定期収入を確保することができた。しかしそれだけでは生まれたばかりの娘リーア英語版を養うことができず、失業給付英語版を申請して補った[73]。同誌では Curt Vile として音楽評やインタビュー記事の執筆も行った[74]Roscoe Moscow が終わると、アクセル・プレスボタンを主人公とするSFパロディ The Stars My Degradation(→わが落ち行くは星の群[† 4](1980年7月–1983年3月)が後を引き継いだ[75][76]。基本的にムーアが一人で描いていたが、連載終盤はライターとして多忙になったためスティーヴ・ムーアに原作を任せた[77]。これら2作にはすでに特徴的な自己言及性、過密な書き込み、凝ったコマ割りが見て取れる[78][79]

1979年からは地元の一般紙 Northants Postコミックストリップ Maxwell the Magic Cat(→魔法の猫マクスウェル)を描き始めた[80][81]。編集者の注文に応じた子供向け作品で、シンプルな絵で描かれた5コマ漫画だが、政治的テーマやシュルレアリスムが紛れ込むことがあった[82]。筆名 Jill de Ray は子供殺しで知られる歴史上のジル・ド・レにかけたものだった[46]。これによって週10ポンドの増収となり、失業給付を受けずに済むことになった[83]。同作は長期連載となったが[84]、1986年に掲載紙が地元コミュニティにおける同性愛者の立場を否定的に書いたのが理由でムーアによって打ち切られた[85]

これらの活動を通して、作画家としての才能に見切りをつけて原作に専念すべきだと考えるようになった[86]。コミック原作の基本(絵と内容が重複するナレーションは不要、一コマでは一つの出来事しか描かない、など)についてはスティーヴ・ムーアから教わった[87]。執筆先として英国の主要なコミック雑誌の一つ 2000 AD[† 5]に狙いを定め、人気連載「ジャッジ・ドレッド英語版」のスクリプトを書いて投稿した。同作はジョン・ワグナー英語版が書いていた時期で、新人の原作者は求められていなかったが、ワグナーの共作者アラン・グラント英語版はムーアの投稿作に将来性を見て取った[89]。グラントに投稿を続けるよう示唆されたムーアは没を出されながらアイディアを送りつけ続け、やがてSF読み切りシリーズ Future Shocks に定期的に作品が掲載されるようになった[90]Future Shocks は多くのコミック作家が修業時代に携わったことで名高く[91]、ムーアも後に本当に、本当に連載が欲しかった。短編は書きたくなかった。… 来る依頼は短い4–5ページの短編だけで、その中に何もかも詰め込まなければならなかった。でも今になってみれば、ストーリーの組み立て方を学ぶにはこの上ない教育だったと回想している[92]

マーベルUK、2000 ADWarrior : 1980–1986

ムーアは1980年から1986年まで英国コミックの原作を書き続けた。マーベルUK英語版2000 ADWarrior が競うように大量の仕事を依頼してきたという[93]。それらはギャグからシリアスまで幅広かったが一貫した作家性を感じさせ、同時代の原作者の中ですぐに頭角を現した[94]。英国でコミックブック文化が成熟していく時期であり[95]、伝記作家ランス・パーキン英語版英国のコミックシーンはかつてないほど盤石になり、読者が歳を重ねても卒業していかないのは明らかだった。コミックはもはや小さい男の子だけのものではなく、ティーンも(Aレベルや大学の学生もいた)読むようになっていたと書いている[96]

マーベルUKでは1980年から翌年にかけて『ドクター・フー・ウィークリー英語版』や『スターウォーズ・ウィークリー』に短編をいくつか書いた。それらのシリーズに関心がなかったため、内容は自己流だった[97]。やがて『マーベル・スーパーヒーローズ英語版』誌の連載「キャプテン・ブリテン」を任された(1982年–)。前任者デイヴ・ソープのストーリーラインは並行世界[† 6]を股にかけた散漫なものだったが[99]、それを引き継いだムーアは現代的なスーパーヒーロー作品として大団円に導いた[98]。残留した作画家アラン・デイヴィス英語版についてはコミックメディアへの愛とコミックで稼いでいることへの純粋な喜びが、描線、コスチュームデザイン、表情のニュアンス一つ一つからあふれ出していると称賛しており[100]、その後何度も共作している[101]

2000 AD 誌の人気キャラクター、ジャッジ・ドレッド(写真)はタフな法の番人である[102]。ムーアのヘイロー・ジョーンズはその対極のキャラクターだった。

2000 AD 誌はSFシリーズ Future ShocksTime Twisters でムーアの作品を50編以上掲載した[89][103]。それらは高く評価され、やがて連載の話が回ってきた。それと前後して音楽誌での活動を打ち切り、本格的に原作業に専念することになる[104]。最初の企画は当時話題だった映画『E.T.』を模倣しろというものだった。求めに応えて書かれた Skizz(1983年–、作画ジム・ベイキー英語版)は異星人スキズが地球に不時着して少女ロクシーに助けられる物語だが、ポスト工業化時代の失業問題と社会的混乱を基盤としており[104][『E.T.』のスピルバーグではなく、社会派脚本家の] アラン・ブリーズデール英語版から多くを借り過ぎた作品だという[105][106]。続いて D.R. & Quinch(→D.R.とクインチ)(1983年–、作画アラン・デイヴィス)が連載された。米国のユーモア誌『ナショナル・ランプーン英語版』の人気キャラクター「O.C.とスティッグス」[† 7]をSFにしたような、暴力的な宇宙人の不良少年コンビを主人公にしたギャグ作品だった[107]。ムーアはデニス・ザ・メニス英語版[† 8]の伝統にならった作品、ただし主人公は熱核融合を操る[108]といっている。イアン・ギブソン英語版と共作した The Ballad of Halo Jones(→ヘイロー・ジョーンズのバラッド)(1984年–)は一般に 2000 AD 誌で連載した作品のベストとみられており[109]、自身でももっとも上手くいった作品と述べている[110]。同誌で主流だったバイオレンスSFの形式を反転させて、遠い未来の世界に生きる特に勇敢でも賢くも強くもない[111]失業者の女性を主人公にしていた[112]。一人称の語りは「個人的なものは政治的である」と主張した第二波フェミニズムの流れを汲む自伝的アンダーグラウンド・コミックから影響を受けていた[113]。英国の社会状況を反映した物語は若者の共感を集めた[114]

ガイ・フォークスは『Vフォー・ヴェンデッタ』の主人公「V」の外見的・思想的モデルとなった。

三つ目の寄稿先は、2000 AD とマーベルUKの編集に関わっていたデズ・スキン英語版が1982年に創刊した月刊誌 Warrior である[115]。同誌は原稿料が低い代わりに執筆者に作品の著作権を渡す方針を取っており(当時の英語コミックでは異例のことだった)[116]、作家の書きたいものを書かせてくれた[117]。ランス・パーキンによるとムーアが原作者として本領を発揮するようになったのは Warrior 誌からである[118]。ムーアが創刊号で始めた二つの連載は、テーマと形式の両面で革新的なものだった[119]。『Vフォー・ヴェンデッタ』は近未来の英国に舞台を取ったディストピア・スリラーで、アナキストの主人公はガイ・フォークスの装束をまとい、テロによって政府を打倒しようとする。作画はデイヴィッド・ロイド英語版による。当時の英国首相マーガレット・サッチャーに対するムーアの失望を反映した作品で[18]、性的少数者を迫害するファシスト国家はサッチャー政権の未来の姿として想像されている[120]。この作品はムーアの代表作の一つとして長年にわたってカルト的な支持を保つことになる[121]

もう一つの連載『マーベルマン』は英国で1954年から1963年にかけて刊行されていた同題作品のリブートで、オリジナル版は米国の『キャプテン・マーベル』を焼き直したヒーロー物だった[122]。原作を依頼されたムーアは、子供のころ読んだパロディ作品「スーパーデューパーマン」の影響のもとで[123]キッチュな子供向けのキャラクターを1982年の現実世界に置くことを決め、科学と進歩への牧歌的な信頼から生まれた主人公を核テロと直面させた[124]。作画は主にギャリー・リーチ英語版とアラン・デイヴィスが担当した[125]。この作品に込められたリアリズム、ジャンル脱構築、詩的なナレーションといった手法は後世のスーパーヒーロー・ジャンルに巨大な影響を与えることになる[126]。遅れて始まった3つ目の連載 The Bojeffries Saga(→ボージェフリー家のサガ)はイングランドの労働者階級として暮らす吸血鬼狼男の一家を主人公にしたコメディで、ムーア自身の子供時代が反映されている[127][128]。作画はスティーヴ・パークハウス英語版による。Warrior 誌は26号で消滅し、これら3作は連載中途で終わったが[129][130][131]、『Vフォー・ヴェンデッタ』と『ミラクルマン』(法的な問題で『マーベルマン』から改題)は後に米国の出版社に版権が売られて書き継がれることになる。

ムーアは英国コミック界で成功を収めながら、クリエイターの権利が守られていないことに不満を募らせていた[132]。1985年にはファンジン Arkensword のインタビューに答えて英国出版社ではもう書かないと宣言した。ただしIPC社を例外とし、理由は単に、IPCがこれまでウソをついたり、ごまかしたり、そういうクソみたいな扱いをしなかったからだと語った[132]。しかしその後、同社の 2000 AD が作品の著作権を保有していたことにほかのクリエイターと共同で抗議し、1986年には寄稿を止めた。全9部の構想だった Halo Jones は第3部までで未完に終わった[133][134]。ムーアは主義主張をはっきり口にする人物で、特に著作権の帰属や創作上の制約については強硬であったため、その後もキャリアを通じて数多くの出版社と絶縁することになる[18][135][136]

アメリカのメインストリーム界とDCコミックス: 1983–1988

沼の怪物スワンプシング(2014年のコスプレ)。

1983年、米国の2大コミック出版社のひとつDCコミックスの編集者レン・ウィーン英語版2000 AD 誌のムーア作品に注目し[119][137]、古臭く不人気なモンスター物だった『ザ・サガ・オブ・スワンプシング』の原作を依頼した。ムーアは作画家スティーヴン・R・ビセット英語版リック・ヴィーチ英語版ジョン・トートレーベン英語版らとともにスワンプシングというキャラクターの再創造を行った[138]。表現様式の実験が行われたほか、性交・月経といったタブーを破る題材や環境問題のような社会的テーマが取り入れられ、シリーズの舞台であるルイジアナの文化にも取材されていた[129][130][139]。また同誌でスペクター英語版などDC社の忘れられていたオカルト関連キャラクターを数多く復活させ[140]、新キャラクターとしてジョン・コンスタンティンを登場させた[141][† 9]。ムーアは『スワンプシング』誌を第20号(1984年1月)から第64号(1987年9月)まで4年近く書き続け[144]、月間発行部数を1万7千部から10万部以上に伸ばした[145]。この成功を受けて、DC社は英国から原作者を起用して[† 10]、知名度の低いキャラクターに思い切った改作を行わせるようになった[129][130]。研究者グレッグ・カーペンターによると、当時の米国コミックはファン出身の書き手がマニアックなストーリーを再生産する停滞期であり、新しい感覚の流入(ブリティッシュ・インヴェイジョン(→英国の侵攻)と呼ばれた)は影響が大きかった[147]。これが米国で「文学的な」コミックを生み出した流れの一つとなった[148][12]

1985年の春からDC社のほかの二線級シリーズに携わり始め、『ヴィジランテ英語版』誌には家庭内暴力を扱った前後編を書いた(第17–18号、1985年)[149][150]。やがて編集部からの評価が高まり、DC最大のスーパーヒーローの一人であるスーパーマンを書く機会を与えられた。「他に何を望もう英語版」と題されたエピソードはデイヴ・ギボンズ英語版の作画で1985年に刊行された[151]。完璧な善性と無敵の能力を持つスーパーマンのキャラクターを掘り下げて、心の奥では失われた故郷への思いと普通人として生きる願いを抱いているという心理ドラマを描いていた[152]。続いて1986年に大ベテランの作画家カート・スワン英語版と共作した「何がマン・オブ・トゥモローに起こったか?」は、『クライシス・オン・インフィニット・アース』でDC世界が全面的にリニューアルされる直前に、旧バージョンのスーパーマンのフィナーレとして企画された記念碑的作品だった[153][154][155]。『グリーンランタン』シリーズでも、1985年に「生ける惑星」モゴ英語版を登場させたほか[149][156]、この時期にムーアが同シリーズに導入したアイディアのいくつかが後の世代によって『シネストロ・コァ・ウォー』(2007年)や「ブラッケスト・ナイト英語版」(2009年)のような大型ストーリーに発展させられた[157][158]

冷戦期に高まった核戦争の脅威は『ウォッチメン』の設定や雰囲気に影響を与えた。

1986年に刊行開始され、1987年に単行本化された全12号のオリジナルシリーズ『ウォッチメン』はムーアの名声を不動のものとした[159]。ムーアと作画のデイヴ・ギボンズが生み出した同作は、優れたヒーローコミックであると同時に、核戦争の前兆に包まれた冷戦時代のSFミステリだった[160]。核危機の絶頂において、ヒーローたちは各自の精神的な問題に衝き動かされてヒロイズムに傾倒し[161]、それぞれ異なった世界観に基づいて事件に対処する[162]。本作は一般にスーパーヒーローという概念に対するポストモダンな脱構築を行ったと見られており[163]コミック史家レス・ダニエルズ英語版このジャンルが基本的な前提としてきたものに疑問を投げかけたと書いている[164]。DCコミックス重役の一人で原作者でもあるポール・レヴィッツ英語版は2010年に『ウォッチメン』はスーパーヒーローやヒロイズムの本質を見直す流行に火をつけ、それから10年以上にわたってジャンル全体を陰鬱な方向に向かわせた。『ウォッチメン』は称賛を集め … その後、コミック界が生み出した最も重要な文学作品の一つと見なされ続けることになると書いている[165]。テーマ的な革新性に加えて構成や表現様式の洗練も際立っていた[166]。グレッグ・カーペンターは当時のムーアが持つ技法の粋が集められていると書いており、円環的なプロット構造や、文字と絵のコントラストを例に挙げた[167]。また3×3の均等分割を基本とするコマ割りが全編で採用され、そのフォーマットが多様な語りを生み出している点も非常に特徴的だった[168]。ティム・キャラハンは特異なコマ割りによる稠密さと緊迫感に注目し、ストーリーテリングの完成度は後世の類似作の及ぶところではないと述べている[169]

『ウォッチメン』はコミックの域を超えて読書界やアカデミズムから大きな注目を浴びた[170]。SFのヒューゴー賞を最初に受賞したコミック作品でもある(1988年のみ置かれた「その他の形式」部門)[171]。広くムーアの最高傑作とみられており、あらゆるコミックの中で最高の名作と呼ばれることもある[10]。時代の近い『バットマン: ダークナイト・リターンズ』(フランク・ミラー)、『マウス』(アート・スピーゲルマン)、『ラブ・アンド・ロケッツ』(ヘルナンデス兄弟英語版)と並んで、1980年代後半のアメリカンコミックが大人向けの内容に移行する流れの一端でもあった[172]。ムーアは一時マスコミでもてはやされ、1987年にはドキュメンタリー番組 Monsters, Maniacs and Moore の主役となった[173]。やがて個人崇拝を嫌ったムーアはファンダムと距離を置くようになり、コンベンションへの参加も止めた[174][† 11]

ムーアが構想した Twilight of the Superheroesワーグナーのオペラ『神々の黄昏』に触発されている。

1987年、ムーアは Twilight of the Superheroes(→スーパーヒーローの黄昏)というミニシリーズ[† 12]の企画書をDC社に提出した。それぞれスーパーヒーローを中心とするいくつかの氏族によって分割支配された未来のDCユニバースを舞台にした作品である。作中ではスーパーマンの一族とキャプテン・マーベル・ファミリーという強力な二氏族が政略結婚で結ばれ、力の均衡が崩れたことで氏族間の終末戦争が近づく。登場人物の一人は助力を求めて現代に現れる[176]。この作品はムーアのDC離脱によって実現に至らなかった。しかし優れたアイディアが盛り込まれた企画書は関係者の間で広く読まれることになり、後には1996年のミニシリーズ『キングダム・カム』など類似した作品も登場している[177][† 13]。企画書は一般ファンの間にも出回っているが、DCは自社の知的財産と見なしており[178]、2020年の作品集 DC Through the 80s: The End of Eras に全文を収録した[179][180]

1987年に『バットマン・アニュアル』第11号(作画ジョージ・フリーマン英語版)でバットマンを手掛けた翌年[181]ブライアン・ボランド英語版の作画による『バットマン: キリングジョーク』が刊行された。バットマン/ジョーカー作品の真骨頂[182]を意図して作られた本作では、ジョーカーが平凡なコメディアンから凶悪な殺人者となった経緯が語られる。ジョーカーは正気と狂気の違いが紙一重であることを証明しようとして凶行を繰り広げ、バットマンは宿敵と理解し合おうと試みる[183][184]。フランク・ミラーの『ダークナイト・リターンズ』や『イヤーワン』と並んでバットマンというキャラクターを再定義した重要作品であり[185][186]ティム・バートンクリストファー・ノーランによる映画版にも影響を与えている[187]。しかしランス・パーキンは風刺や … 脱構築の強い衝動もなく、暴力とペシミズムだけを[188]扱ったテーマが十分に練られていない[189]作品だと書いている。ムーア自身も同作の評価は低く、現実世界で起こりうるようなことは何も書かれていない。バットマンとジョーカーはどんな生きた人間とも似ていないのだから。人間性について重要なことは何も伝えていないのだと述べている[182]

グリム・アンド・グリッティ

ムーアが80年代に書いたシニカルな作品は、スーパーヒーロー・ジャンルに暗い現実を突きつけるリヴィジョニズムとして受け取られた[190]。その影響は大きく、メインストリーム・コミック界に「グリム・アンド・グリッティ(→暗く、ざらっとした)」と呼ばれる作品群が生まれることになる。しかし多くは「暴力、セックス、神経症」というムーアの表層的な部分だけを模倣したものだった[191]。ムーアは『ウォッチメン』がきっかけとなってジャンルの可能性を広げる作品が出てくることを期待していたが、実際には同工の亜流作ばかりで失望させられたという[192]。当時のインタビューでは自分がコミックブックの新たな暗黒時代を招いてしまったと述べている[193]

DCとの不和

ムーアとDCコミックスとの関係はいくつかの問題を巡って徐々に悪化していった[194]。目新しい判型によってファンの注意を引こうとしたり、原著者とは別の作家に続編やスピンオフを書かせたりといった販売策はムーアの信条にそぐわなかった[195]。またこのころDC社が映画のような年齢レイティング制とガイドラインを導入しようと計画したのに対し[† 14]、ムーアはフランク・ミラーらとともに反対の論陣を張った[199][200]。これがDC離脱の直接的な理由となった[194][201]。レイティングは「子供向け」作品を毒にも薬にもならないものにし、「成人向け」作品をセックスと暴力頼りの低質なものにするというのがムーアの考えだった[202]

ムーアは後に、『ウォッチメン』と『Vフォー・ヴェンデッタ』の契約書に書かれていた「作品が絶版になれば著作権は作者に復帰する」という条項に騙されたと語っている。ムーアはいつか自作の権利が返ってくると思っていたが、DCはいつまでも2作を絶版にしなかったのだという[194][203]。2006年にニューヨーク・タイムズ紙で受けたインタビューではDCとの会話をああそうかい、と言ってやった。まんまと騙してくれたな、お前らと仕事をする気はなくなったと回想している[194]。しかしムーアの主張には業界内のみならずファンからも批判がある[204]。問題の条項そのものは、当時のDCコミックスがクリエイターの権利を拡大するために取った措置の一つと見られる(それ以前には出版社が全面的に著作権を保有するのが慣行だった)[205]。ランス・パーキンの所見によると、『ウォッチメン』が(当時珍しかった)単行本にまとめられ、絶版を迎えることなく版を重ね、2012年までに一般書店だけで200万部が売れることになるとは、契約が結ばれた時点では誰も予測していなかったのだという[206]

いずれにせよムーアが抱いた「騙された」「脅された[† 15]」という悪感情は解消されることはなかった。DCで刊行を再開していた『Vフォー・ヴェンデッタ』(1989年完結)を最後に寄稿は打ち切られた[208]。なおアメリカン・コミックのもう一方の雄マーベル・コミックスとは『マーベルマン』(デズ・スキンによって米国のエクリプス英語版に版権が売られていた[209])の名の使用を巡ってそれ以前に絶縁していた[210]

インディペンデント期とマッドラブ: 1988–1993

メジャー出版社に背を向けたムーアは[211]、自分の書きたいテーマはSF冒険ものやスーパーヒーローのジャンルには収まりきらないと公言し[212]、それらのジャンル作品で確立したポストモダンな作風を社会的な作品に適用し始める[213]。しかし大手出版社・取次から離れた執筆活動は障害の多いものだった[214]

1988年、AARGH (Artists Against Rampant Government Homophobia)(→猖獗を極める政府の同性愛嫌悪に抗議する芸術家集団)というチャリティ・コミックを出版するため、妻フィリス、夫妻共通の恋人だった女性デボラ・デラノの3人で個人出版社を設立してマッドラブと名付けた[215][216]サッチャー政権が提出した、地方議会や学校に「同性愛を奨励すること」を禁じる「第28条英語版」法案に抗議するための刊行物だった[217]。ムーアはゲイマンミラースピーゲルマンハービー・ピーカーロバート・クラムら錚々たるコミック作家の原稿を集め[218]、自身は同性愛の歴史を綴った詩 The Mirror of Love を提供した(作画リック・ヴィーチ、スティーヴン・ビセット)[218][219][† 16]。収益1万7千ポンドはレズビアン・ゲイ団体に寄付された[219][223]。ムーアは AARGH の出版によって法案成立を阻止することはできなかったが、一般大衆の抗議の声に加わることはできた。その声が、問題の法案に立案者が望んでいたような悪辣な効果を発揮できないようにさせたのだと述べている[224]

続いて、米国中央情報局 (CIA) を相手取った連邦訴訟に関わっていた公益法律事務所クリスティック・インスティチュート英語版の依頼を受けて、CIAの非合法活動を告発する Shadowplay: The Secret Team(作画ビル・シンケビッチ英語版)を書いた。内容はクリスティックが提供した大量の調査資料に基づいていた。徹底した取材による創作を経験したことは後の作品にも影響が大きかった[225]Shadowplay はクリスティックが訴訟に一般の支持を集めるため刊行したアンソロジー Brought to Light(→白日の下へ)(1988年、エクリプス・コミックス英語版刊)で発表され[226][227]、さらに1998年にムーアと作曲家ゲイリー・ロイド英語版の手でスポークン・ワードとして翻案された[228]

1990年、コミック自己出版の伝道者デイヴ・シム英語版に触発され、AARGH 1号限りのはずだったマッドラブから Big Numbers を発刊した[229]。生地ノーサンプトンをモデルにした英国の地方都市を舞台に、巨大ビジネスが一般人に与える影響とカオス理論の概念を組み合わせた社会的リアリズム作品だった[230][231]。ムーア自身は『ウォッチメン』からスーパーヒーローの要素を除いて「偶然性と無秩序が支配する」世界観をさらに掘り下げた作品だと語っている[232]。読者を選ぶ題材だが、全12号×大判40ページという大部の構想で、ビッグネームのビル・シンケビッチが作画を担当するとあってファンの期待も高かった[233]。しかし2号が出た時点でシンケビッチがフォトリアリスティックなペイントアートという方針を維持できなくなり、作画を降りた。続刊は出ずに終わった[234][235][236]。この失敗はファンの失望を招き[233]、ムーアにも大きな金銭的損失をもたらした[237]

1991年、書籍出版社ビクター・ゴランツ英語版から書き下ろしグラフィックノベル A Small Killing(→ア・スモール・キリング[† 17](作画オスカー・サラテ英語版)が刊行された。同作は「もっとも過小評価されているムーア作品」とされることがある[166][239]。広告会社の重役が理想家だった少年時代の自分自身に取りつかれ、一線から退いて新しい目的を探すという物語である。この時期のほかの長編と比べると個人的な作品で[240][241]、ティム・キャラハンによるとムーアが直面していた苦闘を反映したムーアの殿堂の中でも鍵となるテクストである[242]。ジャクソン・エアーズは、商業主義にいったん膝を屈した芸術家が主人公であるのは、ムーアの中で過去作に対する見方が変わったためだと分析している[243]

イングランド人の外科医サー・ウィリアム・ガルは『フロム・ヘル』で切り裂きジャック事件の犯人とされた。

過去の共作者スティーヴン・ビセットが自己出版するアンソロジーコミック誌 Taboo では、内容に制約を受けることなく性や暴力、政治や宗教といった題材を自由に追求することができた[244]。ムーアが同誌で行った連載の一つ目は、1880年代に起きた切り裂きジャック事件をフィクション化した『フロム・ヘル』(1989年–)である。ムーアはダグラス・アダムズの小説『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所英語版』に触発され[245]、犯罪を「全体論的に解き明かす」には、社会や歴史の全体にわたって張り巡らされた些細な事実の連なりを完全に解き明かす必要があるというアイディアを持っていた[246]。そうして書かれた本作は、グレッグ・カーペンターによると女王の玉座から売春婦の寝床に至るまで、すべての社会階層にわたるヴィクトリア朝の歴史を描いており、ミソジニー反ユダヤ主義ジンゴイズム陰謀論建築理論英語版時間の理論、暴力の本質、イギリス史、モダニズムの起こりのような大テーマを数多く織り込んでいた[247]。作画のエディ・キャンベル英語版は作品によく合った冷たく緊迫したペン画を提供した[248][249]Taboo は短命に終わったが『フロム・ヘル』はいくつかの小出版社から不定期に続刊が出され、1999年にキャンベルの個人出版社から単行本化された。初刊時は流通の問題でファンの目に触れにくかった作品だが、映画化と版元変更を経て名作としての評価が確立している[250]。ベン・ディクソンは巨大な構想と野心に基づく、コミックメディアを定義する作品の一つと評している[251]

Taboo で開始されたもう一つの作品 Lost Girls(1991年–)はムーアによると知的なポルノグラフィだった[252][253]。作中では、セックスのアンチテーゼとしての世界大戦の前夜、成長した児童文学の女主人公たちが互いに性の目覚めを物語る[254]。原典の内容は性体験のメタファーとして解釈される[255]。ムーアはティファナ・バイブルロバート・クラムを例に挙げて非主流のコミックにポルノの伝統があると主張しており[256]、芸術的価値のあるポルノ・コミックを作ることを一つの挑戦と考えていた[257]

たいていのポルノに付き物の問題を避けながら露骨に性的なコミックを書くにはどうすればいいか、アイディアはいくらでもあった。問題とは、ポルノがたいてい不快で退屈な代物であり、創意に欠けることだ。水準がないのだ。
アラン・ムーア(2003年)[258]

Lost GirlsTaboo 終刊後に発表の当てがないまま10年以上にわたって書き続けられ、2006年に完成するとトップシェルフから箱入りハードカバー3冊組の豪華本として刊行された[259][† 18](作画のメリンダ・ゲビーとムーアはその翌年に結婚した[25])。児童ポルノと受け取られうる内容を含むことから摩擦はあったが、おおむね芸術的価値が認められて各国で出版・販売が実現し、高い評価を得た[261]。コミック批評家や文学研究者からも注目を受け、ジェンダー学やクィア理論、子供の社会的構築、コミックのストーリーテリング形式など多くの観点から分析が行われた[262]。出版と同年にムーアはポルノグラフィの歴史をたどる論説を発表し、ある社会が活力を持つかどうか、うまく回るかどうかは性的な事柄をどれほど許容するかによると論じ、公の評価に耐え公益をもたらすような新たなポルノの必要性を訴えた[263]。このテーマは2009年の評論本 25,000 years of Erotic Freedom(→性の自由の2万5千年史)に発展した。同書は美術評論家ジョナサン・ジョーンズによってとんでもなくウィットの利いた歴史講義と評された[264]

インディペンデント期に始めた長編小説の執筆は1996年に Voice of the Fire(ビクター・ゴランツ刊)として結実する。青銅器時代から現代まで数千年の間の出来事を描いた短編連作であり、言語や文化の発展を再現した異例の語り口で書かれている[266]。時代は異なれどすべてムーアの生地ノーサンプトンが舞台となっており、全体として想像力と「幻視」が私たち自身をどのように形作ってきたかについてのストーリーとなっている[267]

メインストリーム復帰とイメージ・コミックス: 1993–1998

ムーアは1993年にメインストリーム・コミックに復帰して再びスーパーヒーロー作品を書き始めた(同年、魔術師になると宣言した)。直接的には過去の共作者から誘われたためだが[268]、衆目の見るところによると経済的な理由もあった[269]。個人資産を投入した出版社マッドラブは Big Numbers の挫折と共に活動を停止していた[270]。ムーア夫妻ら3人の関係も数年で破局していた[271]。フィリスとデボラは娘たちを連れて2人で新しい生活を始め、1980年代の作品で稼いだ財産のほとんどを持ち去っていった[119][272]

寄稿先のイメージ・コミックスは当時ブームの真最中だった。同社は暴力描写・女性の性的対象化といった作風[273]、作画重視・商業主義の方針で知られており、ムーアのような「文学的」コミックを称揚する批評家からは評価が低かった[274]。しかしクリエイター主導で設立された新会社ということもあり、作品の権利や創作上の自由についての方針はムーアにとって賛同できるものだった[275][276]。ムーアはまず10万ドル+印税という破格の報酬で『スポーン』第8号(1993年)のゲスト原作者を務め[277][† 19]、キャリア初期のSF短編を思わせるブラックユーモアを見せた[268]。同年にオリジナル作品『1963英語版』(作画リック・ヴィーチ、スティーヴン・ビセット)全6号が出た。ジャック・カービーが60年代にマーベルで描いていた大仰な画風、カラフルなキャラクター、宇宙的スケールのパスティーシュだった[278]。後に一般的になるスタン・リーパロディの先駆けだったが[279]、カーペンターは風刺としては焦点を欠き[† 20]、懐古としては浅く見えると評している[281]。ムーア自身が生み出したシリアスでダークなスーパーヒーロー像の全盛期でもあり、こうした路線はファンの支持を得られなかった[276][282]。ムーアは後にこう語っている。あのバカげた『1963』を書いた後で、私がいなかった間にコミック読者がどれほど変わったか気づいた。突然、読者の大半が読みたがっているのはページ全体がピンナップ風の絵になったストーリー皆無のやつだと思えてきた。そこで、そういうマーケットに向けてまともな作品を書くことができるか純粋に試してみようと思った[283]

ムーアは13歳から15歳向けの、平均よりはましな作品の執筆を始めた。『スポーン』から派生した3つのミニシリーズ、『バイオレーター英語版』(1994年)、『バイオレーターvsバドロック英語版』(1995年)、『スポーン: ブラッド・フュード』(1995年)はその例である[284]。これらの作品は評者によってD.R. & Quinch で鍛えた悪ガキ風のユーモアバカバカしいエクスプロイテーション・コミックでもスタイルを保っているとされることもあれば[285][当時の読者には] ムーアがエッジをなくしたように見えたことだろうという評価もある[286]。そうして収入を確保するかたわら、非商業的な『フロム・ヘル』と Lost Girls の執筆を続けた。本人の言によると交響楽団に所属し続けながら、週末にだけバブルガム・バンドで演奏するようなものだった[287][286]。ムーアは長文で精緻な原作スクリプトを書くことで知られているが、この時期イメージに提供した原作は簡略なネーム形式のものだった[285]

1995年にはジム・リーの月刊シリーズ『WILDC.A.T.S英語版』の原作を任され、第21号から14号にわたって書き続けた。それまでの主人公チームが宇宙でストーリーを続けるのと並行して地球で新チームが結成されるという展開で[288]、ランス・パーキンはまとまりのない凡作だと評している[289]。ムーアはジム・リーに好感を持っていたため珍しくレギュラーシリーズ[† 21]を引き受けたのだが、自身でもその出来には満足しておらず、ファンの好みを推し量りすぎて新しいものを書けなかったと言っている[290][† 22]

次に請け負ったロブ・ライフェルド英語版の『スプリーム英語版』(1996年、第41号–)はスーパーマンから力をふるう快感だけを抜き出したようなキャラクターだった[292][293]。ムーアはここで、キャリアの初期で手掛けたスーパーヒーロー作品のように徹底した再構築を行った。しかしリアリズムを強調する代わりに、『1963』で行ったことをさらに徹底して、1960年代のいわゆる「アメリカン・コミックスのシルバーエイジ英語版」期の牧歌的なスーパーマンをそっくり真似た[279][293][294][† 23]メタな視点を取り入れることで、アメリカのスーパーヒーロー神話への回帰と、当時のコミックシーンの批評を行ったのである[293][296]。ムーア執筆期の『スプリーム』は内容と売上の両面で成功をおさめた[297]。1997年には『スプリーム』と『フロム・ヘル』の両作によってアイズナー賞原作者部門を受賞した。エアーズはこれがムーアにとって商業性と作家性の両立を果たした象徴的な出来事だったと書いている[298]

その後ロブ・ライフェルドはイメージと袂を分かってオーサム・エンターテインメント英語版を起ち上げ、イメージ・ユニバースから引き揚げた自分のキャラクターを使って新しい世界設定を作るようムーアに依頼した。ムーアは素朴なゴールデンエイジ英語版(1930–50年代)に始まって1990年代当時へと至る歴史を後付けで作り、メタなストーリーによってオーサムの作風が生まれた理由を批評的に描き出した[299][300]。全3号のミニシリーズ『ジャッジメント・デイ英語版』(1997–1998年)で新しいオーサム・ユニバースの基礎が形作られ、『グローリー』(1999年)や『ヤングブラッド英語版』(1998年)が続いた[301]。しかしイメージの傘から抜け出たオーサムの業績は悪化し、刊行の遅れや中止が相次いだ[302]。ムーアによるとライフェルドの言動は信頼がおけず、仕事相手として評価できなかった。イメージ・コミックス共同創立者の多くも(ジム・リーやジム・ヴァレンティノ英語版を除いて)同様だった[303]

アメリカズ・ベスト・コミックス: 1999–2008

オーサムでの活動が行き詰ったところで[304]、イメージ共同経営者の一人ジム・リーが自身のワイルドストーム英語版社にムーアの自由になるインプリント(レーベル)を置こうと申し出てきた。ムーアはアメリカズ・ベスト・コミックス英語版(ABC) と名付けたプロジェクトのために複数のシリーズを企画し、作画家や原作者を集めた。しかしその直後、リーはABCを含むワイルドストーム社をDCコミックスに身売りした。このときリーはムーアに事情を説明するために自らイングランドに赴いた[305]。この買収の目的は、ワイルドストームが保有するIPやデジタル彩色技術のみならず、ムーアを再び確保するところにあったと見る向きがある。少なくともムーア自身はそう信じていた[305][306]。間接的にであれDCと再び関わるのは本意ではなかったが、多くの同業者を巻き込んでいたため後戻りはできず、ABCは計画通り出版を開始することになった[307]

ネモ船長は『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』に登場する多くのヴィクトリア朝文学のキャラクターの一人である。

ムーアがABCでやろうとしたのは、スーパーマンがデビューした1930年代以前の作品からエッセンスを抽出してくることでレトロであると同時にアヴァンギャルドな何かを作り出し、コミックの想像力の源泉と可能性を指し示すことだった[308]。ABCから最初に刊行された『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(1999–2000年、作画ケヴィン・オニール英語版。以下「リーグ」)はヴィクトリア朝時代の冒険小説の世界に「アベンジャーズ」のようなヒーローチームのアイディアを適用した作品である[309]。シリーズ第1作ではミナ・マリー(吸血鬼ドラキュラ)以下アラン・クォーターメイン英語版透明人間ネモ船長ジキル博士からなる「怪人連盟」が英国の危機に立ち向かう。第2作『続・リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン英語版』(2002–2003年)には『宇宙戦争』『火星のプリンセス』『マラカンドラ』の火星人が登場する[310][311]The League of Extraordinary Gentlemen: Black Dossier(→黒の名簿)(2007年)と題されたスピンオフは書き下ろし単行本として刊行され、3D眼鏡のような趣味を凝らした付録がつけられていた[312]。シリーズは好評を博し、ムーアもアメリカ読者が偏執の域までイギリス的な作品を受け入れてくれたこと、一部の読者がヴィクトリア朝文学に関心を持ってくれたことを喜んだ[313]

Tom Strong(1999–2006年)はメインの作画家クリス・スプラウス英語版を始めとして『スプリーム』とは共通点が多く[304]、主人公はスーパーマンの先祖であるドック・サヴェジのようなパルプ雑誌時代のキャラクターから着想を得ている[314]。特殊な薬物で長寿を得たという設定のトム・ストロングが回想する過去1世紀にわたる冒険はコミックの歴史へのオマージュでもある[314]。ランス・パーキンによると本作は『スプリーム』よりも洗練されておりABCでもっとも読みやすい一作だという[315]

トップ10』(1999–2001年)は刑事ドラマとして書かれているが、舞台となるネオポリスの住人は警官、犯罪者、市民を問わず全員がスーパーヒーロー風の超能力とコードネームを持っている[316][314]。奇抜なアイディアやギャグの数々がストーリーと調和した熟練の一作だと評されている[317]。作画はジーン・ハー英語版ザンダー・キャノン英語版による。本作は12号で完結したが、スピンオフのミニシリーズが4作作られた。剣と魔法のファンタジー世界に舞台を移した Smax(2000年、画: キャノン)、本編の前日譚 Top 10: The Forty-Niners(2005年、画: ハー)[318][319]、そしてムーア以外の原作者による続編2編である。

カバラの生命の樹。『プロメテア』の一章で物語構造のひな型として用いられた。

プロメテア』(1999–2005年)では女子大生の主人公が「想像力の具現化」である女神プロメテアの依代となる。一見するとスーパーヒロインの原型ワンダーウーマンへの単純なオマージュのようだが[314]、ストーリーは意外な展開をたどり、主人公はタロットやカバラのような神秘学の象徴体系を通じて世界の成り立ちを学んでいく[265][320]。画面構成も異例であり、作画のJ・H・ウィリアムズIII英語版は観念的な内容に合わせて視覚表現の実験を数多く行っている[265][321]。この時期のほかの作品が総じて知的遊戯[322]平均より知的な感性による、競争力十分のジャンル作品[323]などと呼ばれるのに対し、本作は神秘学や芸術論のようなムーアの個人的テーマが色濃く出ている[324]点で特筆される。ランス・パーキンは本作が「想像力、ジェンダー表象、宇宙論、神秘学」のような大テーマを追求していると書いた[325]。またムーアのもっともパーソナルな作品であり、自身の個人的信条の開陳であり、一つの信念体系、個人的宇宙論を打ち立てているとしている[318]。ムーア自身はこう述べている。神秘学を暗く恐ろしい場所として描かないオカルト・コミックを作りたいと思った。私の経験はそうではなかったからだ。… [『プロメテア』は] むしろサイケデリックで、… 洗練され、実験的で、恍惚的で、喜びにあふれた作品だ[326]

ABCからは、パルプ・フィクションの俗悪さを強調した「コブウェブ英語版」や『MAD』風の風刺作「ファースト・アメリカン」などのユーモア作品が数本ずつ掲載されるアンソロジー誌 Tomorrow Stories(1999–2002年)も刊行された[327][328]。この形式のコミックブックは英国で一般的だが、米国では当時ほとんど絶滅していた[329]

DC社はムーアの執筆活動に干渉しないと約束していたが、それを反故にしてムーアを怒らせた[330]。問題になった「リーグ」第5号(2000年)は、ヴィクトリア朝時代に実在した「マーベル」というブランドの膣洗浄器の広告を再現していた。DCの重役ポール・レヴィッツは競合会社マーベル・コミックスとの摩擦をおそれ、印刷済みの分をすべて破棄すると、ブランドを「アメーズ」という名に差し替えて再印刷した[330]。さらに同年同月にムーアが Tomorrow Stories 第8号(2000年)に書いたコブウェブの短編は、サイエントロジーの創始者L・ロン・ハバードと神秘主義者ジャック・パーソンズによる性魔術儀式「ババロン・ワーキング英語版」を扱っており、訴訟を危惧したDCによって差し止められた[331]。ムーアは返答として『ウォッチメン』刊行15周年への協力を取りやめるとともに、コブウェブ短編をトップシェルフ英語版社のアンソロジーで発表した[332]

再びインディペンデントへ: 2009–

2009年、現代美術協会英語版にて。

DCの作品内容への干渉や、自身の望まない形で作品を利用したことへの不満から、ムーアは再びメインストリーム・コミック界と絶縁することを決めた[333]。2005年にはこう語っている。コミックというメディアは愛している。コミック業界は大体において反吐が出る。あと15か月もすれば、たぶんメインストリームの商業的コミックとは縁が切れているだろう[334]。ムーアはワイルドストーム社でABCを設立するとき、多少の原稿料上乗せと引き換えに大半の作品の著作権を譲り渡す契約を結んでいた。共作者が手にする金額が多くなるように配慮したのと、ジム・リーを信頼していたことによる行動だったが、その後の買収劇により再び自作の多くをDCに取得される成り行きになった[304][335]

ABC作品でムーアが書き続けたのは「リーグ」だけだった[† 24]。トップシェルフとノックアバウト英語版の共同出版で第3作 『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン: センチュリー英語版』(2009–2010年)とスピンオフ The League of Extraordinary Gentlemen: Nemo Trilogy(→ネモ三部作)(2013–2015年)が書かれた。第4作 The League of Extraordinary Gentlemen, Volume IV: The Tempest(→テンペスト)(2018–2019年)がシリーズ最終作となった[336]。当初はスーパーヒーロー・コミックの変種かスチームパンク活劇として始まった「リーグ」だが、巻が進むにつれて芸術と現実世界の関係を考察する私的な性格の作品になっていた[337][338]Black Dossier 以降のシリーズ作品には企業化された浅薄な現代ポップカルチャーへの批判が読み取れる[339]

複数のシリーズを並行して書いていたABC期はムーアのキャリアの中でも多産な時期だったが、2000年代半ば以降はコミックの執筆量が目に見えて減少した[340]。ムーアの精力は小説執筆や神秘学関連のパフォーマンス公演のほか、マッドラブを復活させて2010年に発刊した21世紀最初のアングラ雑誌こと Dodgem Logic(→ドッジェム・ロジック[† 25]に注がれていた[342][343]。同誌はノーサンプトンを含むミッドランド英語版地域に在住する作家・アーティストが中心となる隔月刊誌である[343][344]。ムーアは同誌の編集思想について、「中央集権的な権威が力を失った今、個人主義的な文化をどう構築するか」「グローバル時代に地域をどうエンパワーするか」「来るべき企業主義文化の崩壊にどう対応するか」といった問題意識があると語っている[341]。誌面では地域のコンサート情報や節約レシピの紹介と並んでゲリラ・ガーデニングスクワッティングのような政治的行為のハウトゥ記事が載せられていた。売り上げは地域貢献に充てられた[341][345]。同誌は8号が発行された後、売れ行き不振により2011年4月に廃刊された[345]

災害支援のためのチャリティ出版や、社会運動の資金調達のための出版物に政治的主張を込めた作品を寄稿することもあった[346]。2001年、アメリカ同時多発テロ事件の翌月にマーベル・コミックスから刊行されたチャリティ・コミックブック Heroes には、歴史と人間性への認識を共有するよう訴える This is Information を書いた[346][347]。2013年には『Vフォー・ヴェンデッタ』の影響を受けた反グローバリズム運動である占拠運動英語版(オキュパイ・ムーブメント)に賛同し、Kickstarterを通じて発行された『オキュパイ・コミックス英語版』にカウンターカルチャーとしてのコミック論を寄稿した[348][349]。2018年には前年に起きたグレンフェル・タワー火災の被災者へのチャリティとして刊行されたコミック・アンソロジー 24 Panels(キーロン・ギレン編)に詩を書いた。ムーアの妻メリンダ・ゲビーがイラストレーションを提供した[346][350]

2000年代には初期作の再刊[† 26]のほか、インタビュー集や評伝、作品研究などの出版が盛んになった[262]。2010年5月にはノーサンプトン大学によって学術会議 Magus: Transdisciplinary Approaches to the Work of Alan Moore(→魔術師: アラン・ムーアの業績への学際的アプローチ)が開催された[262]

この時期、スプラッター・ホラーで知られるニッチな出版社アヴァター・プレス英語版がムーアの未発表原稿や詩、小説のコミック化を行った[352]世界幻想文学大賞にノミネートされた1980年代の小説作品 A Hypothetical Lizard(→仮想の蜥蜴)コミック版(2004年)はその一つである。コミックへの翻案はムーアではなくアントニー・ジョンストン英語版が行った[353]。2012年には全10号のコミック Fashion Beast がアヴァターから刊行された(翻案ジョンストン、作画 Facundo Percio)。原作はムーアが1985年に書いた映画脚本で[354]、音楽プロデューサーのマルコム・マクラーレンが取り組んでいた映画のために依頼されたものである[354]クリスチャン・ディオールの生涯をモデルにして異性装と『美女と野獣』を組み合わせたディストピアSFだったが[355][356]、スポンサーの急逝によって映画製作は頓挫していた[354]

コミック原作者としての活動末期にはもっぱらホラー作品に注力した[357]。アヴァターが出していた旧作のコミック化の中には、散文のクトゥルフ神話関連作を集めたアンソロジー Alan Moore's Yuggoth Cultures and Other Growths と、クトゥルフテーマの短編小説を原作とする「中庭英語版」全2号があった(いずれも2003年刊)。ムーアはこれらの作画を手掛けたジェイセン・バロウズ英語版と組み、コミックオリジナルのクトゥルフ作品第1号として『ネオノミコン』(2010–2011年)を出した[358]。次いでその前日譚/続編として、H・P・ラヴクラフトの時代にさかのぼって事件の源泉を描く全12号のコミックシリーズ『プロビデンス英語版』(2015–2017年)がやはりバロウズの作画で刊行された[359][360]。ジャクソン・エアーズはこれらのクトゥルフ作品を… そこで描かれる暴力と荒廃感には、ムーアが考える現代文化の恐るべき実相が込められていると書き、ラヴクラフトのパルプ・フィクションからジャンル小説やコミックに受け継がれた人種差別性やセクシュアリティ観の系譜を批評的に描き出していると論じた[361]。2016年4月からはアヴァターのホラー・アンソロジー誌 Cinema Purgatorio(→煉獄のシネマ)のキュレーションを務めはじめ、自身でもケヴィン・オニールと組んで同題の巻頭連載を寄稿した[362][363]。主人公が悪夢のような映画館に座り、どこかねじれた古い映画を続けざまに見せられるという体の作品で[364]、軽いパロディ連作のようだが、やはり娯楽産業におけるクリエイターの苦悶や、創作の意味についての考察が読み取れる[352]

コミック界引退へ

ムーアがメインストリーム・コミックに再復帰する見込みがなくなるにつれて、それまでムーアの意向を慮っていたDC社も『ウォッチメン』の著作権を行使することをためらわなくなっていった[† 27][366]。2009年の映画化や、2012年の前日譚シリーズ『ビフォア・ウォッチメン英語版』の刊行はまったくムーアの意に反するもので、ファンや業界の間でも賛否は分かれた[365][367]。2017年には『ドゥームズデイ・クロック』によって『ウォッチメン』が完全にDC社の作品世界に組み込まれた[366][367]

ムーアのコミックに対する毒舌は拡大していった[211]。2010年には「出版社が過去作のスピンオフを出したがるのは創造性の欠如」「業界に優れた才能がいないのかもしれない」という趣旨の発言を行い[211][368]、DCやマーベルで原作者として活動するジェイソン・アーロンから「現代の作品を読んでもいないムーアの言葉に耳を貸すのは止めよう」と批判されるなど、現役クリエイターから反発を招いた[369][370]。2013年には50年前に12歳の男の子を喜ばせるために作られたスーパーヒーロー・ジャンルが映画を通じて広い年齢層に受け入れられている文化状況を複雑極まる現代からの逃避だと発言し、ファンコミュニティからの怒りを買った[7][371]

どうも私には、一般社会の相当の割合が、自分が現に生きている現実を理解するのをあきらめ、その代わりに、DCやマーベル・コミックスが送り出す無秩序で無意味な、しかし大きさが有限ではある「ユニバース」に精通することなら可能かもしれないと思い至ったように見える。前世紀の徒花が文化の舞台を我が物顔に占有し続け、このどうにも前例のない新時代に固有の、今日的な意味を持った適切な文化が生まれるのを妨げているというのは、ことによると文化的悲劇であろうとも思われる。
アラン・ムーア(2013年)[371]

同じく2013年にムーア作品のマイノリティ描写がオンラインでの議論を呼んだ。口火を切ったカルチュラル・スタディーズ研究者ウィル・ブルッカー英語版は、「リーグ」シリーズでヴィクトリア朝時代の人種的ステレオタイプが肯定的に再現されたことや、短編映画で「ミソジニー的」な表現が見られることを問題にした[372]。ブロガーの一人が反論の場を設けると、ムーアは自身の立場を強く防衛し、コミック関係者への逆批判を行った。さらに、以後同様の問題が起きないようにインタビューや公の発言を制限する、特にコミックに関わることについてや、コミックにまつわる状況では発言しない、と述べた[372][371]

2016年、執筆中だった「リーグ」最終作 Tempest の完成とともにコミック原作から引退すると宣言した[373]。同作は2019年に完結し、前後して Cinema Purgatorio 誌も18号で終刊した[374]。それ以降は予告通りコミック作品を発表していない[375][376]

2016年9月、執筆に10年以上を費やした1000ページを超える長編小説 Jerusalem(→エルサレム)を刊行した[377][48]。生地ノーサンプトンの歴史、創作と想像力、魔術と超越性といった近年のテーマの集大成だった[378]。2021年、5部作の長編ファンタジー小説 Long London などをブルームズベリー英語版から刊行予定であることが発表された[376]

執筆以外の活動

イベント I'll Be Your Mirror にて、ステージ上で詩を朗読するムーア(2011年)[379]

1980年代には Translucia Baboon というステージ名で音楽活動を行った[380]。デイヴィッド・J(ゴシック・ロックバンド、バウハウスのメンバー)とアレックス・グリーンとともに結成した The Sinister Ducks というバンドからはシングル March of the Sinister Ducks(→禍々しきアヒルたちの行進)(1983年)がリリースされた[77]。翌年、デイヴィッド・Jとともに、劇中歌 "This Vicious Cabaret"(→これぞ背徳のキャバレー)などを収録した『Vフォー・ヴェンデッタ』のEPレコードを出した[77]。バウハウスのために作詞した "Leopardman at C&A" は使われずにお蔵入りになっていたが、後にコミックブックで発表され、それを見たダートボムズ英語版ミック・コリンズ英語版が曲をつけてアルバム We Have You Surrounded に収録した[381]

1995年、母親の死や人間の意識活動を扱った自伝的パフォーマンス・アート公演 The Birth Caul(→バース・コール[† 28]を行った[382][166]。音楽はデイヴィッド・Jやティム・パーキンズらが担当した[382]。公演はCD化されたほか、1999年にエディ・キャンベルによってコミック化されてトップシェルフから刊行された[383][384]。2011年にはオール・トゥモローズ・パーティーズがロンドンで開いた音楽フェスティバル I'll Be Your Mirror にスティーヴン・オマリー英語版とともに出演し、朗読パフォーマンスを行った[385]

1994年、神秘学の先達スティーヴ・ムーアとともに The Moon and Serpent Grand Egyptian Theatre of Marvels(→月と蛇の不可思議なる大エジプト劇団)を結成した。ランス・パーキンによると「薔薇十字団フリーメイソンのパロディのような架空の秘術結社」であり、「月と蛇」は二人それぞれが信仰するセレーネーと蛇神グリュコン英語版から取られている。ムーアは同年7月に団体名と同題で音楽や詩の朗読からなるパフォーマンス公演を行い、CD化を行った[386]。同様のスポークン・ワード公演はその後も断続的に行われた(The Highbury Working 1997年、Snakes and Ladders 1999年、Angel Passage 2001年)。これらの公演は一種の魔術儀式として構成されており、ムーアの朗読が呪文の詠唱のような効果を生んでいる[387]。2006年に発表されたUnearthing(→発掘)はスティーヴ・ムーアの人生と神秘体験をつづった散文の伝記的作品である。後にマイク・パットンジャスティン・ブロードリックらの音楽をバックにムーア自身が朗読するCDが発売された[39][388][389]。2007年にはスティーヴ・ムーアと共作で神秘学のハウトゥ本 The Moon and Serpent Bumper Book of Magic(→月と蛇の魔術大図鑑)を執筆している[390][391]

2003年、ムーアの語りを中心とするドキュメンタリー The Mindscape of Alan Moore(→アラン・ムーアの心象風景)が公開され[392]、2008年に映像ソフトとしてシャドウスネーク・フィルムズから販売された[12][393]

2007年、ムーア自身もファンであるアニメ『ザ・シンプソンズ』に本人役で出演し、『ウォッチメン』の著作権をめぐるDCとの確執についてのジョークを演じた[394][† 29]。2010年前後にBBCラジオ4英語版ポピュラーサイエンス番組 The Infinite Monkey Cage でSF作家として何度かパネラーを務めた[397][398]

2010年代には写真家ミッチ・ジェンキンズとともに低予算の短編映画を撮り始めた。短編が数編作られたところでそれらを再構成した Show Pieces が英国の映画祭で公開され[399]、さらに長編 The Show へと発展した。トム・バークが主演し、ムーアは脚本と音楽のほか自身でも出演した[400]。同作は2020年10月にシッチェス・カタロニア国際映画祭で上映され[401][402]、翌年8月には英米の一部での劇場公開とデジタル配信が行われた[403]。探偵らしき主人公がノーサンプトンを訪れる一種のフィルム・ノワールだが、奇矯な人物が横行する昼の街と、悪夢と死後の世界が入り混じった夜の街の間でシュルレアルなストーリーが展開される。ムーアはコメディアンの霊を演じている[404]IGNのレビューではクラクラするような謎で脳が溶けそうに感じるかもしれない。いい意味でかどうかは人によると書かれた[401]この映画の主役はノーサンプトンそのもの、そしてそこに住む素晴らしい才能を持ったクリエイターたちだというムーアの言葉が語るように、生地への愛が込められた作品でもある[405]

それらの映画の制作中、ムーアは作中に登場させる架空のラジオ番組やコンピューターゲーム、SNSの創作を楽しんだ[25]。その一つであったインタラクティブなコミックのアイディアは、アーツ・カウンシル・イングランド英語版の助成を受けたアプリ開発プロジェクトへと発展した[406][407]デジタルコミック制作の経験があった娘のリーア・ムーアがマネージメントを務め、ムーアもクリエイティヴ面から技術面まで関わった[406]。2015年にリリースされた Electricomics はインタラクティブ・コミック制作ツールキットと頒布プラットフォームが一体化したオープンソースアプリで、ムーアはそれを用いてウィンザー・マッケイ作『リトル・ニモ』の続編という体裁のディストピア物語 Big Nemo(→ビッグ・ニモ)(作画コリーン・ドラン英語版)を発表した[408][409]ガーディアン紙は Electricomics を2015年のiPhone・iPadアプリの第19位に評価した[410][† 30]

作風

テーマ

時間

ムーアは自身の個人的な大テーマが我々が時間として知覚するものだと述べている[411]。時間の感覚への関心はコミックメディアで時間を表現するための様々な実験に現れており[411]、『ウォッチメン』では、時代の異なる様々なシーンのカットをコラージュする手法が使われている。読者はそれによって、登場人物が過去に行った選択と、その波紋が残る現在を同時に見て取り、一人の登場人物の全存在をいちどきに把握する[412]。そのように時空を一つの連続した構造としてとらえるのは特徴的な視点である。『ウォッチメン』のDr.マンハッタンはその時空観を体現したキャラクターで、常に過去・現在・未来を同時に知覚する能力を持っている。ムーアはコミックメディアの特性を生かした「継続的現在(→continuous present)」の語りによってマンハッタンの特異な感覚を表現している[412]。『フロム・ヘル』では作中人物の口を借りて数学者チャールズ・ヒントンの時間理論『第四の次元とは何か?』が紹介される[412]

時間は人間の幻想だというのだ。すべての時間は途方もなく巨大な永遠の中に同時に存在する。… 永遠のモノリスの内なる四次元的パターンは三次元的な存在にはつながりのない無関係な事物に見えるのだそうだ。
『フロム・ヘル』(2009年)[413][412]

そして、同作の主人公は人間性を超越して歴史構造に偏在する四次元的な存在になろうとする[412]

時空連続体と四次元性への関心はまた歴史のテーマとも結びついている[414]

私は物事をつとめて四次元的に見ようとしている。時間が四つ目の次元だとみなすなら、我々一人一人の存在意義、我々の生の意義をわずかにでも実感するには、それらの生がどこから来たのか、我々がどうやってここにたどり着いたのかを、個人のレベルであっても、あるいは文化や国家、旧石器時代にまで続く歴史のすべてであったとしても、必ず知らなければならない。私はそういうことに惹きつけられる。
アラン・ムーア(“The Dark Side of the Moore: An Interview”、2003年)[412]

リヴィジョニズムと間テクスト性

ムーアの作風は「リヴィジョニズム」とされることが多い[415]。フィクションにおけるリヴィジョニズムとは、既存の作品やジャンルに大きな改作を行い、原典の持つ意味や隠れたイデオロギーを批評的に描いて新しい読み方を提示することをいう[12]。ムーアは80年代に『ウォッチメン』などのシニカルなストーリーによって「敬意の対象としてのヒーロー」という見方を過去のものにした[190]。それはスーパーヒーローの意味についての内向きの省察であると同時に、ジャンルの慣習を再編成してより広いテーマを取り込んでいく運動でもあった[190]。その結果、インモラルでニヒルなアンチヒーローや性・暴力描写の過激性を特徴とする「グリム・アンド・グリッティ」がメインストリーム界に流行することになったが、ムーアのリヴィジョニズムの本質ではない[416]。90年代以降のムーアはそのようなヒーロー像へのカウンターとしてコミックの原点に立ち返ったキッチュとイノセンスを打ち出している[417]

スーパーヒーロー・ジャンルの改作やパスティーシュを除いても、古典文学からキャラクターを借用した「リーグ」や Lost Girls のように間テクスト性の強い作品が多い[418]。アンナリーザ・ディ・リッドはムーアの作品に引用句引喩パロディ、… 良く知られた作品やパターンの再検討という形で常に間テクスト性が見られると述べている[419]。英文学者福原俊平はその例として、1984年』を思わせるディストピア国家で、『フランケンシュタイン』の怪物のように人体実験によって力を得た人物が、ガイ・フォークスの仮面を身に着けて、『マクベス』を引用しながら登場するVフォー・ヴェンデッタ』を論じている[420]ダグラス・ウォーク英語版はムーアの作品のほとんどが既存のポップカルチャーを掘り下げる形で書かれていると論じ、著作リストのうち完全にオリジナルなのは片手で数えられるくらいと言っている[421][† 31]。エアーズはムーアを既存のテクストを取り上げて作り変え、新鮮で力強く、なおかつ原典と豊かに響き合う何かを生み出す才能を持つ熟練の翻案家と呼び[423]、カーペンターは本質は辛辣な風刺作家としている[424]

ランス・パーキンはムーアの間テクスト性の源流をコミック原体験に求め、スーパーヒーロー・コミックが過去の物語の絶えざる語り直しであり、それ自体の歴史や神話を題材とする自己完結的なメディアだと指摘した。ムーアはコミックの歴史を単に継承するのみならず転覆・改変させ、さらに小説やジャーナリズムのようなあらゆるナラティヴを包含していったのだという[425]。福原はその間テクスト的な運動が物語が持つ可能性に値するムーアの信念の反映であり、コミックの形式を変革するため、また作品に時代と地域を超えた普遍性を与えるために活用されていると論じた[420]

社会性・政治性

作品に社会的・政治的観点を導入する傾向が強く、大手出版社から出たスーパーヒーロー・ジャンル作品でもそれは変わらない[426]。大衆文化の研究者コーリー・クリークマーは、ムーアの同ジャンルへの関心が一つにはもしヒーローが実在したらどんな政治的機能を果たすか?という社会的な問いだったと述べている[417]。後進の原作者に向けて書かれた1985年のエッセイでは、コミックがファンのノスタルジーや現実逃避に奉仕するだけではグリーティング・カード業界と同じくらいの関心しか持たれないと説き、今日性のある作品を書くことを強く勧めている[427][428]

… 人種関係や環境汚染を扱った作品のことだけを言っているわけじゃない。それも確かに重要だが。私が言っているのは、我々を取り巻くこの世界にとって何かしら意味を持つ作品ということだ。20世紀が幕を閉じようとしている中に置かれた生の本質と手触りを映し出す作品、何かのために有用な作品だ。
アラン・ムーア(On Writing for Comics、1985年)[428]

そして、人生に必ず政治的な要素が関わるように、芸術が生と関わろうとする限りそこに必ず政治的な観点が生じるのだと言っている[429]

2012年の論説 "Buster Brown at the Barricades"(→バリケードの中のバスター・ブラウン[† 32]において、コミックを民衆による政治表現の伝統に連なるものとして論じている[431]。そこでムーアは、コミックの歴史が風刺的カートゥーン(1コマ漫画)に始まったと述べ、支配者、神、制度への健全な懐疑主義に根差した偉大な伝統 … 真に大衆的な芸術形式であり、広くいきわたった事なかれ主義に縛られず、人々の抗議に声を与えることもでき、正しく使われれば社会変革の道具としてこの上ない力を発揮することできる[348]と書いた。その本来の姿が、1930年代に成立したコミック出版によってエンターテインメント産業の一部品[348]に堕したというのがムーアの主張だった[432][433]。ムーアの作品は大なり小なり作者のアナキスト的、左派リバタリアン価値観を反映しており、自身の言うコミックの伝統を受け継いでいるといえる[426]

魔術

1993年、40歳の誕生日に儀式魔術師になると宣言し、作家としてのキャリアの必然的な最終ステップだと述べた[434]。2001年のインタビューでは、1990年代の始めにフリーメイソン神秘学シンボリズムを大きく扱った『フロム・ヘル』の執筆中にその決断が訪れたと語っている。きっかけになったのは、主人公の神秘主義者ガルが口にする議論の余地なく神々が存在する場所、それは我らの精神の中だ[435]というセリフだった。ムーアは自分が無意識に真実を言い当ててしまったと考え、人生を根底から再構築して独学で魔術を学び始めた[17][436]。後に振り返って、それまでの理知的な作風が形骸化するのを避けて新しい境地を開くために神秘学が必要だったのだと語っている[17]

[ウォッチメン』と『フロム・ヘル』を書いた後で] 理詰めの創作については理解の限界に達した気がした。その先に進むためには理性を超える一歩が必要に思えた。次の一歩の足場となってくれる唯一の領域が魔術だった。物事の新しい見方、進み続けるための新しい道具一式となってくれそうだった。『ウォッチメン』を何度も繰り返せないことは分かっていたし、それと同じくらい、『フロム・ヘル』をいくらでも繰り返せることも分かっていた。
アラン・ムーア(2003年)[17]

ムーアは魔術を軸にして言語や芸術、集合的想像力についての考え方を再構成した[119]。ムーアによると魔術と芸術はいずれも象徴を用いて他者の意識を変化させる行為であり、いずれも個人の変化を通じて世界を変革することができる[437]。実際に人類の歴史の中で魔術は絵を描く・言葉を書くといった営みと同じ役割を果たしてきたのだという[17]

魔術は芸術だ。そして芸術とは、それが音楽であれ、執筆や彫刻やほかのいかなる形式であれ、言葉通りの意味で魔術なのだ。芸術は魔術と同じく言葉や図像による象徴を操って意識を変化させる科学だ。… まさに呪文(→spell)をかけることは言葉をつづって(→spell)人々の意識を変えることであり、それゆえに現代世界で最もシャーマンに近いのは芸術家や作家なのだ。
アラン・ムーア(2005年、The Mindscape of Alan Moore[434]

ムーアの秘術学は変性意識論と密接にかかわっている[12]。ムーアは20世紀前半の神秘家アレイスター・クロウリーが残したカバラ研究や著作に興味を抱き、クロウリーが提唱した宗教セレマから「真の意思」は汎神論的な宇宙の意思とつながっているという考えを学んだ[434]。魔術を実践し始めたころは儀式に向精神性のサイケデリック・ドラッグを用いていた。恐ろしい体験だった。意味をなさない奇妙な言語で罵り散らしながらグラスを覗き込むと、一人の小人が語り掛けてくる。すごく効いたよ[436]。『プロメテア』の構想を得たのはマジックマッシュルームを食べてカバラ生命の樹について瞑想していた時だとも発言している[438]。しかし後に、その種の体験は一般的な創作への没入と同じものだと考えるようになり、ドラッグは使わなくなった[17][439]

ランス・パーキンはムーアの魔術的な思考体系は三つの要素にまとめられると述べている。心理地理学英語版、蛇神信仰、「イデア空間 (Idea Space)」である[440]。ムーアはパフォーマンス・アート公演を通じてこれらを解説している[441]

ムーアの創作における心理地理学は、土地の歴史と景観を深く掘り下げることで我々が暮らし、生涯を過ごす街の意味(そして住民である我々自身の意味)を感得する方法をいう[442]。主人公がロンドンの史跡を巡ることで男性性と女性性の神話的闘争を読み取っていく『フロム・ヘル』はその典型である[442]。ムーアはこの発想をイアン・シンクレアの著書 White Chappell, Scarlet Tracings(1987年)から学んだ[442]。心理地理学はフランスの前衛的なシチュアシオニストからシンクレアら英国のポストモダン作家に受け継がれた文学的傾向で[12][443]、消費者主義や商品化に基づく都市開発への抵抗という性格がある[444]。ムーアの小説 Voice of the FireJerusalem 、雑誌 Dodgem Logic、映画 The Show なども出身地ノーサンプトンの歴史、神話、文化を掘り下げた心理地理学的な作品である[445]

2世紀に作られた蛇神グリュコンの像。

「蛇神」はローマ時代の神グリュコンを指す。ムーアは1994年以来この神を崇めていると公言しており、マジックマッシュルームを服用することで交信したとも語っている[446]。グリュコンはアボヌテイコスのアレクサンドロス英語版として知られる預言者が創始した教団の信仰対象だが、同時代のルキアノスによると人形の頭を被せた大蛇に過ぎなかった[447]。ムーアはグリュコンが完全な作り事だということを認めているが、それでも神とは神の概念のことなのであって、アレクサンドロスの人形は正しく神の現れなのだという[17][448]ペイガン研究者イーサン・ドイル=ホワイトはこう書いている。ムーアが主張するように想像力は現実そのものと同じくらいリアルなのだから、グリュコンがおそらく巨大なペテンだったという事実そのものが、ムーアにとってはその恐るべき神への信仰に身を捧げるのに十分な理由だった[449]

魔術研究から発想された「イデア空間」は人間の意識活動を空間のメタファーで表したもので、意識研究でいうクオリア空間と近い[17]。ムーアはそのモデルを用いて個人的・集団的な想像力から文化が生成するダイナミックなプロセスを説明している[291]

イデア空間とは、心的出来事英語版が起きる場所と言える、おそらく普遍的な空間だ。われわれ一人一人の意識はこの広大な宇宙的空間とつながることができる。ちょうど、人はそれぞれ自分の家を持つが玄関の外の道路は全員に属するようなものだ。概念はこの空間にあらかじめ存在する形相であるかのように考えられる。… この精神空間にありうる広大な土地はイデア、すなわち概念からなっており、大陸や島々の代わりに大規模な信念体系や哲学がある。マルクス主義もそうだろう。ユダヤ教・キリスト教系宗教もだ。
アラン・ムーア(2005年、The Mindscape of Alan Moore)[434]

この、芸術家や作家がアイディアを引き出してくる共通の集合意識空間という考えは、ムーアの間テクスト的な作風と深く結びついている[450]Lost Girls のように既存のテクストを基礎にしている作品はイデア空間のモデルで論じられる。後年の作品にはイデア空間が「フィクションの登場人物や概念が住む、現実と相互作用する異空間」という形で繰り返し扱われており(『プロメテア』の「想像界 (Immateria)」など)[451]、神秘学への転回以前の作品にも萌芽的な形で見られる(1986年の短編 In Pictopia など)[442]。ジャクソン・エアーズはこれらを理想化されたパブリック・ドメインと呼び、著作権の過剰適用や企業によるオーサーシップから間テクスト的な芸術活動を守るための寓話として論じた[452]

女性やマイノリティの描写

フローレンス・ケイト・アプトンが描いたゴリウォーグとオランダ人形たち(1895年)。

マーク・シンガーは2019年に、ムーアの作品には人種差別的、異性愛規範的、女性嫌悪的な表現が見られるにもかかわらず、過去の論者はそれをある種の批評として解釈することで見過ごしてきたと主張した[453]。ただし、数多くの作品の中でマイノリティや性的暴力の描き方が一貫しているわけではなく、その裏にあるムーアの思想を単純に図式化するのは難しい[377][454]。これらの表現を批判しているジャーナリストのローラ・スネッドンも、ムーアが芸術、男女同権フェミニズムなどで明確に女性を支持しており、コミック業界が抱える女性嫌悪と多様性欠如の問題を糾弾してきたことは認めている[455]

ムーア作品で人種描写に関して批判されるのは The League of Extraordinary Gentlemen: The Black Dossier が代表である[453]。同作では、ヴィクトリア朝時代の絵本作家フローレンス・ケイト・アプトンが作りだした黒人風のキャラクター、ゴリウォーグが(名前を変えて)登場する[456]。これはある観点では人種差別的な図像、ひいては人種差別思想に基づくメッセージを再生したことになる[453]。ムーアと作画家ケヴィン・オニールは、ゴリウォーグに人種差別的ステレオタイプという意味付けがされる以前にアプトンがイメージしていたオリジナルを再現しただけだと主張している[453]。しかし The Black Dossier のゴリウォーグは「性的能力に優れている」という黒人のステレオタイプそのものの描写がなされており[457]、またアプトンのゴリウォーグがそもそもブラックフェイスと同じような人種差別的文化の産物だという指摘もある[453][456]。コミック研究者クレイグ・フィッシャーはムーア自身の人種差別意識に加えて西洋文化の中で人種差別的イメージが力を持ち続けていることの露悪的な告発、そして「ステレオタイプの誇張したパロディ」という多面的な意味があるのではないかと書いている[456]

ジャクソン・エアーズの考察によると、ムーアの作品は表向きリベラルな傾向が強く、明確に人種差別批判を意図して書かれている作品もある[458]。ナチズムを継承した人種主義的な独裁政権が敵役となる『Vフォー・ヴェンデッタ』や[458]、スーパーヒーロー神話と白人優越主義の神話を結び付けて再考した『ウォッチメン』はその例である[459]。しかし『ヴェンデッタ』が完全に白人主人公たちのドラマとして描かれ、迫害される当の少数者が不在であるように、実際の描写が逆の効果を生む部分があるのだという[458]性的指向の描写についても同様で、ムーア自身はクィアへの支援者を自認しており、同性愛擁護のチャリティ出版を行ったこともある[460]。『ウォッチメン』でも同性愛嫌悪の不当性が描かれている[461]。しかしエアーズによると、同作にはスーパーヒーロー・ジャンルが病的なクィアネスや暴力性の産物であるかのような描写が見られ、やはり異性愛規範を強化するような読み方ができる[462]

女性に対する性的暴力がムーア作品に頻出することは多くの批評家によって指摘されており[456]、そこに何らかの固執や女性嫌悪を読み取ることもできる。ムーア自身の説明によると、生地ノーサンプトンの「バロウズ」地区は非常に治安が悪く、身近に多くのレイプ被害者がおり、レイプは現実の一部であって正面から取り扱う価値がある[377]。しかしレイプをエロティックなものとしては扱わない、物語を刺激的にするためだけにはレイプを用いない、被害者に見せられないようなものは書いていない、というのだった[377]。実際、全編で性器と性行為を描いているポルノ作品 Lost Girls でもレイプは1シーンでしか登場させず、それも画面外の描写にとどめたという[377]。一方で『バットマン: キリングジョーク』では歴史の長い女性キャラクターが性的に辱められ、暴力の後遺症で下半身不随になる[463]。その衝撃とムーアの高名が相まって、同作はスーパーヒーロー・ジャンルにおいて女性への(性的な)暴力が「シリアスさ、深み」として受け取られる風潮の一因となった[464]。『キリングジョーク』は批評家やファンから批判を集めており、ムーア自身も後年には「暴力描写が作品に何の価値も与えていない」失敗作だと評価している[465]。『ウォッチメン』には暴力的なレイプが描かれ、その被害者と加害者が後になって合意の上で性的関係を結ぶ。ムーアの説明では、被害者のキャラクターがレイプを受け入れているわけではなく、人は直観に反するような行動を取ることがあり、性や愛が絡むとなおさらそうだといった考えがあるのだという[455]。しかしエアーズによると、そのようなあいまいさがレイプ神話への賛同を隠し持っていると受け取る余地がある[455]

技法

形式と構成

ムーアの作品は結末まであらかじめ緻密に構成されているのが特徴で[466]、自身でもキャリア初期には構成のフェティシストだったと語っている[467]。プロデビューから数年後に書かれたコミック原作の指南書 On Writing for Comics(1985年)では、自身が読者を惹きつけるために用いた構成のパターンとして以下を紹介している[467][468]

  • 物語の途中から語り始め、過去と未来の出来事を同時に語り進めていく
  • 枠物語の構成
  • 複数の観点から同じ物語を語り、徐々に全貌を明らかにしていく
  • 結末と冒頭が何らかの要素でつながっている円環的な構成

未刊の大作 Big Numbers(1990年)は特に入念に構成が練られており、40人に及ぶ登場人物がそれぞれ12号にわたって展開するプロットを巨大な表にまとめて管理していた[232]Lost Girls では1章8ページのフォーマット[† 33]が構成のモチーフになっている[470]。形式上のシンメトリーへのこだわりも強く[104][466]、コマ割りのシンメトリーを前面に出して高評価を得た『ウォッチメン』第5号「恐怖の対称形」などは、冒頭からの1ページ目、2ページ目…が最後から1ページ目、2ページ目…の鏡像となっている[471][472]。ダグラス・ウォークによると、ムーアの遊びのない構成は読んでいて息が詰まるほどだが、ジャンルや物語構造の定型を覆して読者の予想を裏切っていく作風がそれを緩和させている[466]

ムーアのコマ割りは技巧的で[470]、テーマやプロットではなく純粋にテクニック的な仕掛けや、コマ進行の方法の思いつきから一つの作品が生まれることもあるという[467]。コマ間の移動ではコントラストや反復が強く意識されている[470]。次のシーンに移るタイミングでは、読者のストーリーへの没入が途切れないように、前のシーンのセリフの一部を次のシーンにオーバーラップさせたり、図像や色彩を引き継がせたりといったテクニックが使われている。特に『ウォッチメン』で顕著である[473][474]。ただしムーアはこれらがすぐにクリシェ化したと考え、以降の作品では多用していない[475]

ファイル:WatchmenBloodySmiley.png
『ウォッチメン』を象徴するスマイリーバッジ[476]

コマの中には膨大なディテールが描きこまれている[470]。『ウォッチメン』の冒頭第1コマは「血に汚れたスマイリーバッジが街路に落ちている」というだけの構図だが、原作スクリプトでその部分の説明は日本語にして1500字を超えていた[477]。丸いバッジに血で描かれた時計の針は真夜中の5分前を指している。これは『ウォッチメン』全編に散りばめられた終末時計メタファーの一つ目である[478]。時計やカウントダウンのイメージは作品の随所に偶然のように置かれており、バッジそのものも後のシーンで再登場する[478]。このような、危うく見過ごしてしまうようなディテールを完全にコントロールするのがムーアのやり方だった[477]

多くのイメージが織りなすパターンや、偶然の絡み合いによる多重構造のストーリーはムーアが好んで用いたもので、カオス理論と数学的構造をモチーフにした Big Numbers はその代表といえる[479]。同作では偶然のパターンそれ自体がテーマの一つとなっており、ストーリーが進み作中でカオス理論が解説されるにつれて、物語の冒頭から何度も登場していたフラクタルパターンの図像が読者の中で大きな意味を持ち始めるように構成されていた[480]

絵と言葉で相反する内容、もしくは一見無関係な内容を伝え、それによって重層的な意味を生み出すアイロニックな対位(→counterpoint)は特徴的な技法である[470][481]。対位や並置(→juxtaposition)はテーマのレイヤーでも見られる[482]On Writing for Comics では、自作「他に何を望もう」の結末を例に取って「夢から現実に戻った主人公/白日夢に陥るヴィラン」の対位を置いたと書いている。また文章表現のテクニックとして、美しい夕暮れを「リストカットの血」のような陰鬱なイメージの言葉だけで描写した自作品を挙げてその二つの感覚を並置させると刺激的で心地よく感じられたと述べている[483]

異なるメディアとの関係

ムーア作品は文学の観点から分析されることが多い(そのため、コミックという形式に固有の要素が見落とされがちだという指摘もある)[484]。ダン・メイザーとアレクサンダー・ダナーはムーアの「文学的」な文章を詩的なナレーションと鋭い社会批評の組み合わせだと呼んだ。一方でダグラス・ウォークは美文調の文章が装飾過剰に傾く場合があると述べている[470]。文学に限らず、コミックに異なるジャンル・形式・メディアを取り入れる傾向も見られる[485]。たとえば『Vフォー・ヴェンデッタ』第2巻冒頭はミュージカル風に進行し、劇中歌の楽譜が添えられている[486]パラテクスト英語版[† 34]を効果的に利用した作品もあり、コミックに併載された文章や地図、ポストカードなどが本編ストーリーと交錯する The Black Dossier はその代表である[485]

その一方で、コミックに文学や映画のような周辺メディアから独立した価値を与えようという意識も強い[487]。ムーアは近代コミックが映画から取り入れた技法によって成立していることを認めており、自身でも「ロングショット」「パン」のような映画用語で原作を書いている。しかし映画的な技法はあくまで「知らないよりはいい」ものでしかない[488]映画だけを基準に考えるなら、コミックはせいぜい動かない映画にしかなれない。私は80年代の半ばになってから、コミックにしか成しえないことを追求した方がいいと思うようになったのだという[434]。文学についても、それを目標にしても視野の広さ、深み、意義に欠ける小説になってしまうと書いている[488]。映画の流れるような視覚的ストーリーテリングと、思いを凝らしながら時間をかけて読む小説の読み方を両立させるのがムーアの一つの答だった[489][490]

後の2001年に書かれた『プロメテア』第12号は、小説家スザンナ・クラークによるとアラン・ムーアのコミックが小説や映画などには及びもつかないことをやってのけられると見事に証明している例である[265]。同作は韻文アナグラム言葉遊びを駆使し、重層的な語りとヴィジュアルなイメージの絡み合いによってタロットの象徴と宇宙の歴史を解説する内容で、ひとつながりの巻物のような特異なレイアウトがなされていた。ムーア自身もその出来には満足していると語っている[265][491]

ストーリー上の傾向

『マーベルマン』、『スワンプシング』、『スプリーム』など、既存のコミック作品の原作を請け負ったときムーアが何度も取った手段は過去の経緯を一掃し、主人公を記憶喪失にし、それまで書かれたあらゆることが嘘だったと明かす[492]ちゃぶ台返し[493]である[492]。そうすることで過去のカノンに縛られずにキャラクターをリブートするのである。この方法はコミック界でごく一般的に使われるようになっている[140]。作画家ジョー・ルービンシュタイン英語版スパイダーマンのような歴史のあるキャラクターを書くと制約が多いという話に続けてアラン・ムーアなら話は別だ。ムーアならたぶんスパイダーマンを殺して、本物の蜘蛛か何かとして復活させるだろうと述べたことがある[494]

原作執筆のスタイル

アメリカン・コミックのスクリプト(原作脚本)は出版社や書き手によって形式が異なるが、ムーアは長大細密な散文を書くことで知られている[495]。通常の5–6倍の長さがあり[285]、コマ割りや各コマの構図、ディテールが事細かに指示されている[496]。さらに背景知識や演出意図、シーンの雰囲気までもが豊富に盛り込まれている[496][497]。『フロム・ヘル』を共作したエディ・キャンベルの言によるとほかの原作者なら「雨が降っている」と書いて済ませるところでも、ムーアのスクリプトでは「雨音は気が滅入るようなロシアの長編小説のリズムで途切れ途切れのモールス信号を打電する」となる[498]。DCコミックスで『スワンプシング』を担当した編集者カレン・バーガーは次のように語っている。

すべてのコマが隅から隅まで絵として描写されていた。アランは確か、挫折した作画家だったはずだ。… 作画家になろうとしてこの世界に入ったので、原作のアプローチもまるで絵を描いているかのようだった。… その上で、やはり優れた作家だったから、アートディレクションの文章なのに読んで面白かった。
カレン・バーガー(2012年)[499]

原作を書くとき、共作する作画家が誰かということは常に念頭にあるという[500]。批評家ダグラス・ウォークは、絵によるストーリーテリングの重要性を熟知していたムーアにとって、スクリプトは作画家に思いのたけを伝える恋文だったと書いている[466]。ほとんどの共作者はムーアのスクリプトが読み物としても興味深く、いい経験だったと語っている。ただしロブ・ライフェルドのようにスクリプトを解読できず原稿が仕上がらない経験をした作画家もいた[501]

評価

社会的評価

英語圏で最も優れたコミック原作者の一人と見なされており、一般紙誌でも称賛を寄せられている[375]。英インディペンデント紙日曜版は2006年の Lost Girls 出版時に「英語圏における最初の偉大な現代コミック作家」と紹介し[502]ガーディアン紙は2019年の引退に際してもっとも重要な英語のフィクション作家のひとりとした[8]。日本では「アメリカン・コミック界の巨匠」という呼び方も見られる[11][503]小田切博は2007年の著書で現代のコミックスライターとしてはもっとも重要な作家のひとりと書いた[504]

同業者や批評家の間でも広く尊敬を受けている。映画脚本家でコミック原作も書いているJ・マイケル・ストラジンスキーはムーアを我々の中で一番上手いと言っている[505]。DCコミックスでの担当編集者カレン・バーガー[作品に] 私が手を入れる部分はなかった。… [クリエイターには] アランとそれ以外しかいない。アランは一人だけ別の階級にいたと語った[506]。ウェブメディアCBRはコミック原作者の影響力を論評する2022年の記事でムーアをコミックの歴史上もっとも才能ある原作者と書いた[507]。コミック史家ジョージ・コーリー英語版この自由人をコミックブック史上最高の原作者と呼んでは過小評価だと書き[508]、インタビュアーのスティーヴ・ローズはコミックのオーソン・ウェルズ 誰知らぬ者なきコミック界の教祖、発する言葉は一言余さず天上からのメッセージと受け取られると書いた[436]。コミック批評家ダグラス・ウォークはこう書いている。

ムーアは誰の異論も受けずにコミックの殿堂入りを果たした。英語圏のコミックを支える柱石の一つであり、同格の存在はジャック・カービー、ウィル・アイズナー、ハーヴェイ・カーツマンなどほとんどいない。殿堂の中でも突出して異質な存在だ。ほかの柱はいずれも作画家か、そうでなければたいてい原作兼任なのだから。ムーアはほぼ原作専門だが、その精妙巧緻なスクリプトは必ず作画家の長所が生きるように書かれている。… つまりムーアはコミック創作理論の百般に通じているのだ。漫画家が一人でぜんぶ描く方が原作と作画を分担するより優れたやり方だ、などという主張を誰も口にしないのは、ムーアの著作目録が立ちはだかっているためだ。普段は自分でストーリーも作るのに、ムーアとだけは共作する漫画家だって多い。ハイメ・ヘルナンデス英語版マーク・ベイヤー英語版、誰より忘れられないのはエディ・キャンベルだ。
ダグラス・ウォーク(2007年)[509]

コミック関係者からは批判もある。ムーアより先にDCとマーベルで人気作家となっていた漫画家ジョン・バーン英語版は、『ウォッチメン』におけるスーパーヒーローの描写が否定的、虚無的すぎると述べ、「野球のバットは人の頭を殴るためにも使えるが、だからといって殴っていいか?」と問いかけた。また歴史あるヒーローキャラクターが暴力によって障害を負う『キリングジョーク』を自己満足のマスターベーションと呼んだ[510]。ムーアと不仲なことで知られる原作者グラント・モリソン[511]、ムーア作品は技巧が過ぎて自己顕示欲さえ感じると述べている[512]。自著には以下のような人物評を書いている。

独学で道を拓いた野心的な人物で、華々しい猛烈な才気があり、数々の巧みなトリックを使いこなすが、一番巧妙なのは自分を斬新に見せるトリックだった。まるでムーアの出現以前にはコミックに歴史などなかったかのようだ。その機知に富んだ、歯に衣着せぬ、謙遜の利いた発言(「自分がメシアだと言いたいわけじゃないが … 」)は、コミックシーンを一新した燦然たる自信と裏腹だった。
グラント・モリソン(2011年、Supergods: Our World in the Age of the Superhero[513]

学問としてのコミックス・スタディーズではもっとも頻繁に言及されるクリエイターのひとりであり[375]、そもそもコミックが学術研究に値するという考えが一般化したのは『ダークナイト・リターンズ』、『マウス』と並んで『ウォッチメン』の功績だとみなされている[514]。しかし分野の歴史が浅いこともあり、ムーアの正典としての位置づけが定まっているとは言えない[514]。2000年代以降の再評価では、ムーアが独自のスタイルを持つ手練れの作家に過ぎず、それまでの偶像化が行き過ぎだったという指摘も現れた[515]。バート・ビーティとベンジャミン・ウーはムーアが生半可な知性の象徴だと述べ、良質のコミック作品に過ぎないものがコミックの進歩の上限として扱われてきたと主張した[516]。また同時期にムーア作品におけるレイシズムミソジニーの扱いに対する批判も目立ってきた[366]

受賞

アメリカコミック界の主要な賞であるアイズナー賞ハーベイ賞、それらの前身であるカービー賞英語版[517]は数多く受賞している。以下のリストを参照のこと。

カービー賞受賞一覧
部門 対象 備考
1985 原作者 『スワンプシング』 [518]
1985 単一号 『スワンプシング・アニュアル』第2号(ジョン・トートレーベン、スティーヴ・ビセットとともに) [518]
1985 定期シリーズ 『スワンプシング』(ジョン・トートレーベン、スティーヴ・ビセットとともに) [518]
1986 原作者 『スワンプシング』 [519]
1986 定期シリーズ 『スワンプシング』(ジョン・トートレーベン、スティーヴ・ビセットとともに) [519]
1986 新シリーズ 『ミラクルマン』(複数の作画家とともに) [519]
1987 原作者 『ウォッチメン』 [519]
1987 定期シリーズ 『スワンプシング』(ジョン・トートレーベン、スティーヴ・ビセットとともに) [519]
1987 新シリーズ 『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに) [519]
1987 原作/作画チーム 『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに) [519]
アイズナー賞受賞一覧
部門 対象 備考
1988 原作者 ウォッチメン [519]
1988 原作/作画チーム 『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに) [519]
1988 限定シリーズ 『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに) [519]
1988 単行本 『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに) [519]
1989 原作者 バットマン: キリングジョーク [519]
1989 単行本 『バットマン: キリングジョーク』(ブライアン・ボランドとともに) [519]
1993 連載ストーリー 「フロム・ヘル」(エディ・キャンベルとともに) Taboo 連載版[520]
1994 単行本(書き下ろし) A Small Killing(オスカー・サラテとともに) [520]
1995 原作者 フロム・ヘル [520]
1996 原作者 『フロム・ヘル』 [520]
1997 原作者 『フロム・ヘル』、『スプリーム』 [520]
2000 原作者 リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』、『プロメテア』、Tom StrongTomorrow Stories 、『トップ10 [521]
2000 単一号/単一話 Tom Strong 第1号 "How Tom Strong Got Started"(クリス・スプラウス、アル・ゴードンとともに) [521]
2000 連載ストーリー Tom Strong 第4–7号(クリス・スプラウス、アル・ゴードンらとともに) [521]
2000 新シリーズ 『トップ10』(ジーン・ハー、ザンダー・キャノンとともに) [521]
2000 単行本(再録) 『フロム・ヘル』(エディ・キャンベルとともに) [521]
2000 アンソロジー Tomorrow Stories(リック・ヴィーチ、ケヴィン・ノーラン、メリンダ・ゲビー、ジム・ベイキーとともに) [521]
2001 原作者 『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』、『プロメテア』、Tom StrongTomorrow Stories 、『トップ10』 [521]
2001 単一号/単一話 『プロメテア』第10号「セックス、スター、スネーク」(J・H・ウィリアムズIII、ミック・グレイとともに) [521]
2001 定期シリーズ 『トップ10』(ジーン・ハー、ザンダー・キャノンとともに) [521]
2003 限定シリーズ 『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(ケヴィン・オニールとともに) [521]
2004 原作者 『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』、『プロメテア』、SmaxTom StrongTom Strong's Terrific Tales [521]
2006 原作者 『プロメテア』、Top 10: The Forty-Niners [521]
2006 単行本(書き下ろし) Top 10: The Forty-Niners(ジーン・ハーとともに) [521]
2006 アーカイバル・コレクション(コミックブック) Absolute Watchmen(デイヴ・ギボンズとともに) [521]
2014 殿堂 本人 [522]
ハーベイ賞受賞一覧
部門 対象 備考
1988 原作者 『ウォッチメン』 [523]
1988 定期/限定シリーズ 『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに) [523]
1988 単一号 『ウォッチメン』第9号(デイヴ・ギボンズとともに) [523]
1988 単行本 『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに) [523]
1988 特別賞 Excellence in Presentation 『ウォッチメン』(デイヴ・ギボンズとともに) [523]
1989 単一号 『バットマン:キリングジョーク』(ブライアン・ボランド、ジョン・ヒギンズとともに) [523]
1989 単行本 『バットマン:キリングジョーク』(ブライアン・ボランド、ジョン・ヒギンズとともに) [523]
1995 原作者 『フロム・ヘル』 [523]
1995 定期/限定シリーズ 『フロム・ヘル』(エディ・キャンベルとともに) [523]
1996 原作者 『フロム・ヘル』 [523]
1999 原作者 『フロム・ヘル』、『スプリーム』ほか全著作 [523]
2000 原作者 『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』 [523]
2000 単行本(再録) 『フロム・ヘル』(エディ・キャンベルとともに) [523]
2001 原作者 『プロメテア』 [523]
2003 原作者 『プロメテア』 [523]
2003 定期/限定シリーズ 『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(ケヴィン・オニールとともに) [523]
2003 単一号 『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』第1号(ケヴィン・オニールとともに) [523]
2004 定期/限定シリーズ 『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(ケヴィン・オニールとともに) [523]

サンディエゴ・コミコンが選出するインクポット賞は1985年に受賞した[524]。アメリカのコミック情報誌『コミックス・バイヤーズ・ガイド英語版』のファン・アワード英語版には何度もノミネートしており、1985–1987年、1999年、2000年には原作者部門で、1987年には作品部門(ウォッチメン)で、1988年にはオリジナル・グラフィックノベル/グラフィックアルバム部門(バットマン: キリングジョーク)で受賞している[525]

英国のコミックファンによるイーグル賞英語版を受けるのもたびたびで、特に1986年には『ウォッチメン』と『スワンプシング』により米国原作者と英国原作者のダブル受賞をはじめとして数多くの部門を同時に受賞した[526]。英国ナショナル・コミックス・アワード英語版は2002年時点で殿堂入りしており、オールタイムベスト原作者にも選ばれている[527]。英米以外では、ドイツの漫画賞であるマックス・ウント・モーリッツ賞ドイツ語版(2008年、全作品に対して)がある[528]。フランスではアングレーム国際漫画祭最優秀作品賞海外アルバム部門を『ウォッチメン』(1989年)と『Vフォー・ヴェンデッタ』(1990年)に対して[529]批評家賞フランス語版を『フロム・ヘル』(2001年)に対して授与された[530]。そのほかスウェーデンのUrhunden賞を『ウォッチメン』で(1992年)[531]、スペインのHaxtur賞を『ウォッチメン』(1988年、長編作品部門)[532]と『スワンプシング』第5号(1989年、原作者部門)[533]で受賞している。

コミック賞以外にも、1988年には『ウォッチメン』がSFのヒューゴー賞をコミックとして初めて受賞し[534]、同年に小説 A Hypothetical Lizard世界幻想文学大賞中編小説部門にノミネートされた[535]国際ホラーギルド賞英語版はグラフィック・ストーリー/イラストレーテッド・ナラティヴ部門で受賞している(1995年『フロム・ヘル』)[536]ブラム・ストーカー賞はイラストレーテッド・ナラティヴ部門で2回受賞している(2000年「リーグ」[537]、2011年『ネオノミコン[538])。2005年に『タイム』誌が選出した「1923年から現在までの小説作品ベスト100」には漫画作品として唯一『ウォッチメン』が挙げられた[420][539]

影響

他作品への影響

ティム・キャラハンは2013年に、80年代に『ミラクルマン』『スワンプシング』『ウォッチメン』を読んで育った世代がメインストリーム・コミックの作り手の主流になっていると書いた。キャラハンによるとこのジャンルにリアリズムを持ち込んで脱構築を行ったのはムーアが最初ではないが、そのスマートで洗練され、大真面目であると同時に痛烈に皮肉なスーパーヒーロー物語こそが後の世代にとってのひな型となった[540]

アンドリュー・ホベレクは『ウォッチメン』の研究書 Considering Watchmen: Poetics, Property, Politics(2014年)の中で、同作がスーパーヒーロー・ジャンルで行ったリアリズムの強調と形式の洗練は、コミックブック出版への直接的な影響を超えて現代アメリカ文化全体に広く浸透したと論じている。ホベレクはムーアに続いてスーパーヒーロー・ジャンルでシリアスな作品を残した小説家としてマイケル・シェイボンジュノ・ディアズエイミー・ベンダーを挙げている[541]。映画評論家マイケル・スラゴウ英語版はディズニー映画『Mr.インクレディブル』(2004年)を取り上げて、子供向け作品ながらヒーローの社会的・政治的意味付けや心理の描き方に『ウォッチメン』の影響が見られると述べた。これはエアーズによれば、ムーアのアイロニックな脱構築がすでに革新的なアプローチからジャンルの規範へと変わったことを意味している[415]

フロム・ヘル』などの翻訳者でもある映画評論家柳下毅一郎は、『ウォッチメン』の革新性は内容よりもストーリーの語り方、非線形のストーリーテリングと多重的な意味の重ね合わせだと述べた[33]。コミック研究者メラニー・ギブソンも、対置や重層性を用いた複雑なストーリーテリングを可能にしたことが後世への影響として重要だと書いている[163]。ウェブメディア The A.V. Club は『ウォッチメン』の重層的な構成がギーク文化の一世代全体に影響を与えたと書き、テレビドラマ『LOST』(2004–2010年)を例に挙げた[166]。『LOST』制作者デイモン・リンデロフは『ウォッチメン』から特徴的なフラッシュバックフラッシュフォワードを取り入れたと語っており[542]、同作をこれまでに作られたポピュラー・フィクションの中の最高傑作と呼んでいる[543]

日本にも熱心なファンがおり[544][545]、ライトノベル『魔法少女禁止法』(伊藤ヒロ、2010年)やアニメ『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(2015–2016年)のように、スーパーヒーローが実在する仮想歴史としての『ウォッチメン』から影響を受けた作品もある[546][547][548]。漫画『アフロサムライ』(岡崎能士、1998年)はコマの中に大量の情報を詰め込む作風に影響がある[549]

1980年代に『ウォッチメン』でムーアの筆名が上がったころ、カメレオンズ英語版ポップ・ウィル・イート・イットセルフトランスヴィジョン・ヴァンプ英語版などの英国バンドがムーアの作品にインスパイアされた楽曲を作っている[550]

コミック界への影響

ムーアのキャリアはコミック界におけるオーサーシップ(著者性)観の変遷と密接に関わっている[551]。米国コミックの伝統では作品のオーサーシップを担うのは出版社であり、クリエイターは制作のために雇われるだけだった。コミックブックが読み捨ての娯楽だという一般の見方もその状況を反映していた[552]。しかし1970年代に至るとコミックファンダムが成熟し、ノンクレジットのディズニー・コミックからカール・バークスが「発見」されたように[552]、ブランドやキャラクターではなく個々の作家に注目する読者も現れ始めた[553]。また業界内でも制作者の権利拡大を訴える労働運動が起こった[553]。これらが相まって個人のヴィジョンと感性をオーサーシップの中心におく作家主義が生まれた[553]。ファンの嗜好の変化を知ったメインストリーム・コミック出版社は専門店マーケット向けにスター作家を擁立するようになった。その最初の世代がムーアやフランク・ミラーらであり[554][† 35]、中でもムーアは作画家ではなく原作者に注目を集めさせたことで特筆される[556]

ムーアはキャリアを通して、コミックを芸術作品として認知させようと試みるとともに、出版社に対してクリエイターの権利を主張し続けた[557]。ムーアは前の世代のクリエイターと異なり『ウォッチメン』を始めとするDC社のベストセラーから多額の印税を得ることができた[193]。また強硬な交渉により販促用グッズにも印税を適用させた[558][† 36]。しかし自作の著作権は取り戻せず、そのことに遺恨を抱いていた(同時期にミラーやニール・ゲイマンなどはDCと契約を結び直してオリジナル作品の著作権を獲得している)[194][560]。このような闘争は作品にも反映されており、ジャクソン・エアーズによるとムーアは常に「企業化されたエンターテインメント/アーティストの個人的ヴィジョン」のダイナミクスをテーマとしている[561]。ダグラス・ウォークはムーアが商業性と芸術性の合間を縫うコミックの道行きの先導者だと論じ、ポピュラーなコミックに文学性を持ち込んだこと、クリエイターを搾取する出版モデルと闘ったこと、身をもってコミック作品の価値を示したことを評価した[555]

社会への影響

全12号のコミックブックとして世に出た『ウォッチメン』は当時としては珍しく単行本(グラフィックノベルと呼ばれた)として再刊された。書籍版の人気はコミックブック専門店に足を踏み入れない読者層にも届き[562]、「もうコミックは子供の読み物ではない」という見方を広めた[556]。米国の図書館や一般書店にコミック(グラフィックノベル)が置かれるようになったのには同作の影響がある[563]。DC社によると、一般書店を通じた『ウォッチメン』単行本の販売数は25年間で200万部を超えた[562]

『ウォッチメン』や『Vフォー・ヴェンデッタ』は大学教育でよく利用されている[6]。例として、教育学者ジェイムズ・カーターは、教育におけるグラフィックノベル利用や、メディア教育や、ヴィジュアルリテラシー教育に関する授業で『ウォッチメン』を題材にしているという[6]。コミック文化の振興を目的とするコミック弁護基金が2019年に行った調査によると、米国の幼稚園から高等教育までの学校のおよそ半数でコミックの教育利用が行われており[564]、取り上げられることが多い作品の10位に『ウォッチメン』が挙げられている[565]

日本では1990年代にアニメやゲーム、フィギュアを入り口にしたアメリカン・コミックのブームが起き[566]、その流れで代表作『ウォッチメン』が刊行された[567]。このときは大きなヒットにならなかったが[568]、間を置いて2000年代末に起こったスーパーヒーロー映画との相乗効果による「アメコミ第2次ブーム」では『ウォッチメン』新版が市場をけん引することになった[566][569]。同時期に人文学系の出版社みすず書房が初のコミック作品として出した『フロム・ヘル』もヒットし[545]、こちらは文学・美術ファンを対象にバンド・デシネを翻訳出版する動きにつながった[569]

人物

私生活

2006年、サイン中のムーア。指輪や指甲冑を着け始めたのはメリンダ・ゲビーからのプレゼントがきっかけだった[17]

190 cm近い長身で[570]、若いころから髪とひげを伸ばし放題にしている[25]。蛇頭の杖を携帯し[571]、大きな指輪をいくつも着用するのが常で、ハグリッドの厄介者の兄弟か、ガンダルフの胡散臭い従兄弟のような[7]、一見すると村の奇人変人だと書かれたことがある[436]。その風貌や政治的・闘争的な発言から気難しい世捨て人のようなイメージが広まっているが、実際に会うとサービス精神豊富で気さくな人物であることもよく報道されている[572]

テラスハウス(集合住宅)の一角にある居宅は2001年のインタビュアーによって永遠に改装中のオカルト系書店のようで、分厚い魔術書が並ぶ棚や紙束の合間にレコードやビデオ、魔術の物品やコミックブックのフィギュアが散らばっていた。バスルームは青と金の装飾が施され、浴槽が床に埋め込まれた豪華なものだった。それ以外の部屋はおそらく掃除機を見たことがなさそうだ。その人物は間違いなく物質界で過ごすことがほとんどないようだったと描写されている[436]

自らミクロコズム(小宇宙)と呼ぶ生地ノーサンプトンに住み続けており、旅行することもめったにない[573]。バロウズ地区は英国でもっとも貧しい地区の一つである。同郷の作家ジェレミー・シーブルック英語版(初等学校でのムーアの教師でもある)は故郷について人々はみな偏狭で迷信深く、吝嗇で狷介、かつ頑固だが、概して誇り高く言葉に嘘がないと書いている。伝記作家ランス・パーキンによるとこれらの言葉はムーアの一般的イメージにも当てはまる[574]。ムーアはノーサンプトンの歴史や文化を Voice of the FireJerusalem のような心理地理学的小説で描いており[573]、自ら編集する Dodgem Logic 誌でも地元の芸術シーンを紹介している[575]

英国の慈善団体アーツ・エマージェンシー英語版に賛同している[576]。20歳前後の若者に芸術や人文科学分野のメンタリングやサポートを提供する団体である[577]

家族

1973年に結婚した最初の妻フィリスとの間にリーア英語版とアンバーの2人の娘を儲けた[119]。リーアは長じてコミック原作者となり、2000 AD などで活動している[578]。その夫 John Reppion も同業であり[579]、ムーアは娘夫婦とともにヒーローコミック Albion(2005–2006年)の原作を共作している[580]。ムーアとフィリスは数年にわたってデボラという女性と同居して3人でオープンな関係を結んでいたが、1990年代初頭に破局した。このときフィリスとデボラは2人で娘たちを連れて出て行った[581]

2007年、長年にわたって Lost Girls の共作を続けてきたカリフォルニア出身のアンダーグラウンド・コミック作家メリンダ・ゲビーと再婚した[582][583]

関連人物

信頼を裏切られたと感じると許さない一面があり、多くの出版社やコミック業界の友人と絶縁してきた[572]。『スワンプシング』の共作者スティーヴン・ビセットとは『1963』刊行中止のいきさつに関するインタビュー発言がもとで関係を絶った[584]。『ウォッチメン』のデイヴ・ギボンズは同作の権利問題ではムーアと近い立場に立っていたが、同時にDCで作画業を続けていた[585]。2009年の映画版『ウォッチメン』の製作中、DCはムーアを懐柔してスピンオフコミックの企画への協力を取り付けようと試みた。しかしムーアはまったく歩み寄ろうとしないばかりか、間に立ったギボンズを絶交した[586][587]。スティーヴ・ムーアや『フロム・ヘル』のエディ・キャンベルとは友人関係を保っている[572]

小説家・コミック原作者ニール・ゲイマンは駆け出しジャーナリストだったころに『スワンプシング』の影響を受け、ムーアに直接教えを乞うてコミックの道に進んだ[588]。二人はそれ以来の友人である[511]。ムーアと後妻メリンダ・ゲビーを引き合わせたのもゲイマンだった[582]

ムーアは執筆活動の他にはほとんど趣味を持たないが、小説家アリスター・フルーシュ英語版と共に散歩する習慣がある[55]。フルーシュとは21世紀に再結成されたノーサンプトン・アーツ・ラボの成員同士でもある[589]

コミック原作者グラント・モリソンはムーアとキャリアや関心が似通っているが、不仲なことでも知られている[511][416][† 37]。モリソンはキャリア初期にムーアとデズ・スキン(Warrior 発行者)の間の争いに巻き込まれ、ムーアから「この世界にいられないようにしてやる」と脅されたと証言している[371][591]。2012年には『ローリング・ストーン』誌のインタビューで「ムーアはレイプに執着しており、レイプが出てこない作品は一握りしかない」と発言した[592]。翌年、あるブロガーから「女性や人種的マイノリティの描写に関する批判」について反論を求められたムーアは、自らモリソンの名前を出し、作品や人格を激しく批判し、自身のストーカーだと呼び、モリソンの共作者・出版社・ファンと絶縁すると宣言した[371]

影響を受けた人物

マイケル・ムアコック、イアン・シンクレアと共に(2009年)。

影響を受けた作家はウィリアム・S・バロウズビートニク作家[593]ウィリアム・ブレイク[† 38]トマス・ピンチョン[593]イアン・シンクレア英語版[596]マイケル・ムアコックニューウェーヴSF作家、クライヴ・バーカーらホラー作家[597]がいる。

コミック作家からの影響については、ティム・キャラハンによるとコミックによるストーリーテリング技法を開拓したウィル・アイズナーが別格として挙げられる。また『MAD』誌で多くのパロディ作品を書いていたハーヴェイ・カーツマンウォーリー・ウッド英語版からは、スーパーヒーローの脱構築というアイディアだけでなく、特徴的な均等分割のコマ割りに影響が見られるという[598]。そのほかにはジャック・カービー[599]ブライアン・タルボット英語版の名が挙げられることがある[600][601]

アマチュア時代にノーサンプトン・アーツ・ラボで知り合ったリチャード・アシュビーからは創作への姿勢に関して大きな影響を受けたという。アシュビーは芸術全般に関心が広く、自身の才能の多寡を気にせず様々な分野に挑戦していた[54]何かの分野で自分の才能が不足していたら、それを迂回する方法を考え出して克服する。それもたいていシンプルで独創的でエレガントな方法で。あの精神には敬服した。芸術へのアプローチとして本当に尊敬できるものだった[602]。ミュージシャンのブライアン・イーノからも芸術活動への方法論的なアプローチを学んだ。ムーアはイーノから、自身の創作プロセスを神聖視せずプラグマティックに再検討を繰り返すべきだという教えを取り入れ、芸術は自動車修理と同じことと言い切った[246][603][† 39]機械工なら、車が動かなくなったとき、フードの下に何があるか知りたくなるはずだ … わたしは書くことで生計をたててるんだから、創造のプロセスがどうなっているのか、理解しておくことは大いにアドバンテージになる。そうして方法論を突き詰めていった結果、行き着いたのが前述の魔術と神秘思想である[33][436]

思想・信条

映画化

コミックの映画化に否定的な意見を持っており、自作の映画版を公然と酷評している[605]メディア・フランチャイズ化が当然の前提となっている21世紀のアメリカン・コミックにおいて、このような姿勢は珍しい[606][† 40]

ムーアの映画化に対する考え方はハリウッドとの関わりが増すにつれてどんどん辛辣なものになっていった[605]。初期の『フロム・ヘル』(2001年)や『リーグ・オブ・レジェンド』(2003年)はいずれも原作から大きく改変された映画だったが[609]、これらについては映画を見ずにすんで関りを持たずにいられて、オプション料が入ってくる限り、誰も原作と映画を混同したりしないと思って気にしなかったと語っている[610]。ムーアの姿勢が硬化したのは、2003年に映画製作者マーティン・ポール英語版と脚本家ラリー・コーエンが脚本を『リーグ・オブ・レジェンド』に盗作されたとして20世紀フォックスとムーアを訴えたのがきっかけだったと考えられている[423][611][612]。ムーアによると彼らはこう信じているようだ。20世紀フォックスのトップが私を呼びつけて、つまらない盗作をカモフラージュしたいというだけの理由で、その脚本をパクった映画原作用のコミックブックを書かせたとね[610]。係争は裁判外の和解で決着し、潔白を証し立てる機会を失ったムーアは映画業界全体に対して怒りを募らせた[613][614]

2005年、映画『Vフォー・ヴェンデッタ』がDCの親会社ワーナーの配給で公開された。製作者ジョエル・シルバーは記者会見において、ムーアが「[製作者の一人] ラリー・ウォシャウスキーにとても期待しているようだった」という趣旨のことを述べた[615][616]。ムーアは映画には関わりたくないとしか言わなかったと主張し、シルバーに撤回させるようDCに要求した[617][† 41]。また原作の政治的コンテキストが現代のアメリカ視聴者向けに変えられたことについて[618][原作の] 題材はファシズムや無政府主義だ。だが「ファシズム」「無政府主義」という言葉は映画のどこにも出てこない。自分の国を舞台にして政治風刺をやる度胸もないやつらの手でブッシュ政権の寓話にされてしまったとコメントしている[619]

ムーアはその後、著作権を手放したコミック作品に自分の名前を載せない意向を示した。また将来の映画化においても自身の名前を出さず、原作料も受け取らないと発言した[620]。それ以降の映画『コンスタンティン』(2005年)、『ウォッチメン』(2009年、ワーナー)、HBOドラマ『ウォッチメン』(2019年)ではこの希望が守られ、ムーアへの原作料は替わりにコミックの作画家に支払われた[25][423][621]。2012年の LeftLion 誌のインタビューで、映画化に協力しなかったことで手放した金額を尋ねられたムーアは「少なくとも数百万ドル」と答え、こう続けた。

目の前で自分に値段をつけさせない、どれだけ金を積まれても一歩だって自己の原則を譲らない、たとえ実際上の意味がないとわかってもだ、そんな風に思える誇らしさは金では買えないからな。
アラン・ムーア(2012年)[622]

これらの態度には批判もある[623]。『Vフォー・ヴェンデッタ』の作画家デイヴィッド・ロイドはムーアに同調しておらず、映画化権を売った時点で原作が改変されることは了解済みだったと語っている[194]。マーク・ヒューズは『フォーブス』誌への寄稿で、「リーグ」や Lost Girls で古典文学のキャラクターを借用しているムーアが自作の翻案については認めないのを完全な偽善と批判した[624]

政治的傾向

ムーアの宿敵[625]マーガレット・サッチャー(2011年のグラフィティ)。

政治的にはアナキストを自認している[18]。ムーアは英国労働党による福祉国家政策が確立した1950年代に生まれ育ち[626]、若いころは自身の属する労働者階級に素朴な社会主義的理想を重ねていた[627]。社会主義のセンチメンタルなヒューマニタリアニズムは自然に受け入れられるものだった[628]。しかし1979年に保守党マーガレット・サッチャーが首相の座に就き、経済自由化を推し進めて平等主義を覆すと[629]、庶民がそれを支持したことに幻滅してアナキズムに傾いた[627]。サッチャーに対しては非常に批判的であり、80年代の主要作品(『マーベルマン』、『Vフォー・ヴェンデッタ』、『ウォッチメン』)で描かれるディストピアにはいずれもサッチャー政権への風刺が読み取れる[629]。90年代以降もサッチャリズムの遺産は新自由主義として残っているが、ムーアはそれにとどまらず、現代のマーケットで起きている芸術の商品化をサッチャー的なるものとして批判している[626]

ムーアはアナキスト作家を扱ったマーガレット・キルジョイ英語版の著書 Mythmakers and Lawbreakers(→神話作りと法律破り)(2009年)でアナキスト哲学を語っている。ムーアにとっては無政府状態こそが自然であり、体制秩序や指導者のような概念は不当なものだった[630]

あらゆる政体は無政府という基本状態の一種か、その派生だ。もちろんほとんどの人は、アナキズムを話題に出すと、最大のギャングが牛耳るようになるだけだからダメだ、と返してくるだろう。だが私に言わせればそれこそが現代社会そのものだ。我々が生きているのは発展の仕方を間違えた無政府状態であり、最大のギャングが政権を握って、これはアナキズムではなく資本主義だとか共産主義だとか言い張っているのだ。しかし私は、人間がその手で営む政治形態としては無政府状態がもっとも自然だと考えている。
アラン・ムーア(2009年、 Mythmakers and Lawbreakers[631]

ムーアはアナキズムの基礎に「完全な自己責任と、自主独立の尊重」を置いている[630]。80年代にメインストリーム・コミック出版社が年齢レイティング制と制作者へのガイドラインを導入しようとしたときには、あらゆる形式の表現規制に反対するラディカルな立場をとった[632]。評論誌『コミックス・ジャーナル英語版』のインタビューでは、子供がハードコア・ポルノに触れることにさえ、法的規制という対処法をとるべきではないと語った[633][632]。ムーアは性差別表現や『G.I.ジョー』のような戦争賛美的な作品は自身の個人的なモラルに反すると言っている[634]。しかしそれらを規制したり、ゾーニング・包装・レイティング表示などの手段で子供の手から遠ざけるのではなく、自身の信条を伝える優れた表現によってマーケットから淘汰するのが理想なのだという[634]

2013年の11月5日(ガイ・フォークス・デー)に行われたミリオン・マスク・マーチ英語版。ムーア原作の映画『 Vフォー・ヴェンデッタ』で登場したガイ・フォークスの仮面は、現実世界において政治的反抗の象徴として広く受け入れられた[540][635]

2011年12月、フランク・ミラーが占拠運動英語版を批判した件について質問されて運動側を擁護し、ミラーの近作が女性嫌悪同性愛嫌悪に傾いており方向を誤っていると述べた[636]。この運動の参加者は世界的に『Vフォー・ヴェンデッタ』の主人公にならったガイ・フォークスのマスクを着用した[637][638]。同じマスクはアノニマスウィキリークスエジプト革命[639]反グローバリゼーションデモでも使われた[640]。占拠運動の支持者で『オキュパイ・コミックス』を発刊した映画監督マット・ピッツォーロ英語版はムーアを運動の非公式のゴッドファーザーと呼び、同世代の世界観形成に大きな影響があったと語っている[349]。ムーアは占拠運動を一瞬たりとも奪われるべきではなかった権利を取り戻そうとしている普通の人々と呼び[641]、続けてアナキストとして、権力はそれによって実際に人生を左右される人々の手に渡るべきだと信じていると語った[636]

1990年のインタビューでは、アナキストとしての理想は政党政治の中で実現できるものではないが、それに向けた第一歩として、基本的な生活を保障するとともに自由競争を認める緑の党に期待すると述べた[642]。2016年8月、労働党党首選英語版に出馬したジェレミー・コービンを支援した[643]2017年の総選挙では、左派社会主義者のコービンが党首を務めていることを理由に労働党を支持する、ただしアナキストとしての政治的信条により自身では投票しないと表明した[644]。2019年11月になると再び労働党への消極的支持を表明し、40年ぶりに投票するつもりだとさえ発言した[645][646]この投票は労働党支持というよりトーリー党不支持を旨とするものだが、労働党の目下の公約はこれまで英国の主要政党を見てきた中でもっとも有望に思われる。複雑極まるこの時代、我々はみなどの道を選ぶべきか確信を持てずにいるが、あからさまに突き出た氷山からできるだけ離れた航路を取ってくれる奴に張るのが一番というものだ[647]

陰謀論について

ムーアは『ウォッチメン』『フロム・ヘル』など陰謀論を扱った作品を書いている[648]Brought to Light への寄稿で陰謀論について調べるうちに、「世界規模の陰謀」という発想に対して以下のような意見を持つようになった。

陰謀論について学んだもっとも大事なことは、陰謀論者が陰謀の存在を信じるのは安心したいからだということだ。世界の真相は混沌だ。本当のところ、世界を支配しているのはユダヤ人の銀行家英語版でもグレイ・エイリアンでも異次元から来た身長12フィートの爬虫類人間でもない。真実ははるかに恐ろしいものだ。世界は誰にも支配されていない。誰も舵を取っていないのだ。
アラン・ムーア(2005年、The Mindscape of Alan Moore[434]

主要作品

コミック

  • V for Vendetta (1982–1985, 1988–1989)
    • 『Vフォー・ヴェンデッタ』(2006、小学館プロダクション)
  • Marvelman/Miracleman (1982–1984)
    • 『ミラクルマン BOOK ONE:ドリーム・オブ・フライング』(2014、ヴィレッジブックス。オリジナル・ライター名義)
  • Skizz (1983–1985)
  • The Ballad of Halo Jones (1984–1986)
  • Swamp Thing (1984–1987)
  • Whatever Happened to the Man of Tomorrow? (1986)
    • 『スーパーマン:ザ・ラスト・エピソード』(2010、小学館集英社プロダクション)収録
  • Watchmen (1986–1987)
    • 『WATCHMEN日本語版』(1998、メディアワークス
    • 『Watchmen』(2009、小学館集英社プロダクション)
  • Batman: The Killing Joke (1988)
    • 『バットマン:キリングジョーク―アラン・ムーアDCユニバース・ストーリーズ』(2004、ジャイブ)収録
    • 『バットマン:キリングジョーク 完全版』(2010、小学館集英社プロダクション)収録
  • From Hell (1989–1996)
    • 『フロム・ヘル』(上・下巻2009、新装合本2019、みすず書房
  • Big Numbers (1990)
  • A Small Killing (1991)
  • Lost Girls (1991–1992, 2006)
  • SPAWN (1993–)
    • 『SPAWN日本語版』#3(1996、メディアワークス)
  • Violator (1994)
    • 『VIOLATOR日本語版 SPAWN SIDE STORY』(1997、メディアワークス)
  • Spawn: Blood Feud (1995)
    • 『SPAWN BLOOD FEUD日本語版』(1997、メディアワークス)
  • WildC.A.T.s (1995–1998)
    • 『WILDC.A.T.S日本語版』#9–12(1999、メディアワークス)
  • Top 10 (1999–2001)
    • 『トップ10』#1–2(2009、ヴィレッジブックス)
  • Promethea (1999–2005)
    • 『プロメテア』1–3(2014–2019、小学館集英社プロダクション)
  • Tom Strong (1999–2006)
  • The League of Extraordinary Gentlemen (1999–2019)
    • 『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(2014、ヴィレッジブックス)
    • 『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(2015、ヴィレッジブックス)
    • 『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン:センチュリー』(2019、ヴィレッジブックス)
  • Neonomicon (2010)
    • 『ネオノミコン』(2021、国書刊行会)収録
  • Fashion Beast (2012–2013)
  • Providence (2015–2017)
    • 『プロビデンス』ACT1–3(刊行予定、国書刊行会)

小説

  • Voice of the Fire (1996)
  • Jerusalem (2016)

ノンフィクション

  • Alan Moore's Writing for Comics (2003)

映画化作品

原作映画作品の一覧
題名 監督 製作 原作 製作費 興行収入 Rotten Tomatoes評価
万ドル
1989 怪人スワンプシング英語版 ジム・ウィノースキー ライトイヤー・エンタティンメント
ギャガ
『スワンプシング』

レン・ウィーン、バーニー・ライトソン[† 42]

19[650] 44%[651]
2001 フロム・ヘル アルバート・ヒューズアレン・ヒューズ 20世紀フォックス フロム・ヘル

アラン・ムーア、エディ・キャンベル

3500[652] 7460[652] 57%[653]
2003 リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い スティーヴン・ノリントン 20世紀フォックス
アングリー・フィルムズ
インターナショナル・プロダクション・カンパニー

JDプロダクションズ

リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン

アラン・ムーア、ケヴィン・オニール

7800[654] 17930[654] 17%[655]
2005 コンスタンティン フランシス・ローレンス ワーナー・ブラザース
ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ
DCコミックス・ヴァーティゴ英語版
ロンリー・フィルム・プロダクションズ[656]
『ヘルブレイザー』

ジェイミー・デラノ、ガース・エニス英語版[657][† 43]

10000[659] 23090[659] 46%[660]
2005 Vフォー・ヴェンデッタ ジェームズ・マクティーグ ワーナー・ブラザース
バーチャル・スタジオズ英語版
シルバー・ピクチャーズ
アナーコス・プロダクションズ
『Vフォー・ヴェンデッタ』

アラン・ムーア、デイヴィッド・ロイド

5400[661] 13250[661] 73%[662]
2009 ウォッチメン ザック・スナイダー ワーナー・ブラザース
パラマウント・ピクチャーズ
レジェンダリー・ピクチャーズ
ローレンス・ゴードン・プロダクションズ

DCエンターテインメント

ウォッチメン

アラン・ムーア、デイヴ・ギボンズ

13000[663] 18530[664] 65%[665]
2016 バットマン: キリングジョーク英語版 サム・リュー英語版 ワーナー・ブラザース
DCエンターテインメント
ワーナー・ブラザース・アニメーション
バットマン: キリングジョーク

アラン・ムーア、ブライアン・ボランド

350 446[666] 38%[667]

脚注

注釈

  1. ^ 「メインストリーム」とは、歴史的にコミックブック出版の主流を占めてきたスーパーヒーロー・ジャンルとその周辺のファンタジーや冒険ものを意味する[12]
  2. ^ The Boroughs、歴史上の borough(バラ)は自治都市を意味する。
  3. ^ くまのパディントン」のパロディ[64]
  4. ^ タイトルはSF小説 The Stars My Destination(邦題: わが赴くは星の群の引用[46]
  5. ^ 当時の週間販売部数は12万部だった[88]
  6. ^ ソープとムーアがこの作品で導入した並行宇宙の一つ、「アース616英語版」は後にマーベル・ユニバース公式の作品世界となった[98]
  7. ^ 日本でも映画『突撃!O・Cとスティッグス/お笑い黙示録英語版』(1987年、監督ロバート・アルトマン)が公開されている。
  8. ^ 米国に同題の別作品『デニス・ザ・メニス(邦題: わんぱくデニス』がある。
  9. ^ コンスタンティンはイングランドの労働者階級を出自とする魔術師で、後にジェイミー・デラノ英語版の原作で発刊された個人誌『ヘルブレイザー英語版』は300号を発行する長寿シリーズになり、2005年に映画化された[142][143]
  10. ^ グラント・モリソン英語版ニール・ゲイマンなど[146]
  11. ^ 英国コミックアートコンベンション英語版において、サインを求めるファンにトイレまでついてこられたという[175]
  12. ^ 結末が決まっており号数限定で刊行される「リミテッド・シリーズ」のうち、およそ6号以下の長さのものを言う[12]
  13. ^ 作者マーク・ウェイド英語版アレックス・ロスTwilight を下敷きにしたことを否定している[131]
  14. ^ Jean-Paul Gabilliet は著書 Of Comics and Men の中で、コミック取次業者の間でレイティングを求める動きが生じたのはムーアが『ミラクルマン』第9号(1985年)で出産を克明に描写したのが原因だったと述べている[196]。グレッグ・カーペンターによるとDCの対応は「テレビ伝道師ジェリー・ファルウェルの影響のもとでレーガン政権が取った表現規制施策」を踏まえていた[197]。DCは最終的に、読者の年齢に合わせて作品内容を自主規制するのではなく、特に暴力的・性的な号にだけ「For Mature Readers」のラベルを表示することにした[198]
  15. ^ ムーア自身の回想によると、当時のDC社長ジェネット・カーンとの会談で「ムーアがDCへの寄稿を続けるなら『ウォッチメン』スピンオフの出版計画は取りやめる」と言われたのを、自身への脅しと受け取ったものである[207]
  16. ^ この詩は2004年に美術研究者ホセ・ヴィジャルビア英語版によって写真集となり[220]、数か国で刊行されることになる[221][222]
  17. ^ 「小さな殺し」と「ちょっとした儲け」の二つの意味がある[238]
  18. ^ 豪華な装丁にされたのは、わいせつ物ではなく芸術作品だという印象を与えようという版元の意図もあった[260]
  19. ^ 作画に比べてストーリー面の評価が低かった『スポーン』誌のテコ入れとして、当時のスター原作者(アラン・ムーア、ニール・ゲイマンフランク・ミラー、デイヴ・シムら)を1号ずつゲストに迎える企画だった[277]
  20. ^ 『1963』はレトロな主人公たちが最新のイメージ・ヒーローと対決する特別号で完結するはずだったが、イメージ社内でクロスオーバーを調整するのが難しく未刊に終わっていた[280]
  21. ^ あらかじめ結末や号数を定めず、終刊にならない限りいつまでも刊行される定期シリーズ。
  22. ^ 2000年前後にリーのスタジオから出版された人気作 StormwatchThe Authorityウォーレン・エリス英語版原作)の演出法やアイロニーを前面に出した、自己パロディ的・自己言及的な作風にムーア期『WILDC.A.T.S』からの影響がみられるという指摘もある[288][291]
  23. ^ 本家DCコミックスの『スーパーマン』では「何がマン・オブ・トゥモローに起こったか?」の直後にジョン・バーン英語版が行ったリローンチによってシルバーエイジの要素は一掃されていた[295]
  24. ^ 同作はABC発足より前に映画化権が売られており、ほかの作品とは著作権の扱いが異なっていた[305]
  25. ^ ドッジェム英語版はバンパーのついたカートに乗って互いにぶつかり合う遊園地の遊び[341]
  26. ^ 例としてThe Extraordinary Works of Alan Mooreトゥーモロー英語版、2003年)や Alan Moore: Portrait of an Extraordinary Gentleman(アビオジェネシス、2004年)がある[351]
  27. ^ ムーアの立場に理解を示していた発行人ポール・レヴィッツが2009年にDCを退いたことも影響しているという見方がある[365]
  28. ^ "caul" は羊膜の一部が出生時に頭に被さったもの。魔除けとされる。
  29. ^ 第19シーズンのエピソード「ホーマーの美容整形英語版[395][396]
  30. ^ Electricomics 公式サイトは2016年8月を最後に更新を停止している(2022年1月閲覧)。
  31. ^ ウォークが挙げるオリジナル作品は『Vフォー・ヴェンデッタ』、A Small KillingBallad of Halo JonesBig Numbers である[422]
  32. ^ バスター・ブラウン英語版』は20世紀初頭のコミック・ストリップ作品。作者リチャード・F・アウトコールト英語版と掲載紙の間で著作権の帰属が争われたことで知られる[430]
  33. ^ 1930年代から40年代の米国で人気だったポルノ・コミック「ティファナ・バイブル」が8ページの冊子だった[469]
  34. ^ 書籍であればエピグラフや序文、コミックブックであれば読者ページ、編集後記、広告、ピンナップなど、本文に添えられて解釈に影響を与えるテクストをいう[12]
  35. ^ ムーアの場合、『スワンプシング』シリーズの執筆を始めて6号目から表紙に作者クレジットが表示され始めた[555]
  36. ^ ムーアは『ウォッチメン』の販促としてコミックショップに配布されたスマイリーフェイスバッジ2万5000個について約1000ドルの印税を受け取った[559]
  37. ^ 2010年にウェブメディアCBRが行ったオールタイム最優秀原作者の一般投票ではムーアが首位、モリソンが第2位だった[590]
  38. ^ ムーアはブレイク協会の後援者のひとりであり[594]テート・ブリテンでブレイク展が開催されたときにガーディアン紙に寄稿[595]を行っている。
  39. ^ ムーアはイーノが作った創作者のための助言カード Oblique Strategies を活用していた[604]
  40. ^ 2大出版社DCマーベルはそれぞれメディア複合企業AT&Tディズニーの傘下である[607][608]
  41. ^ ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューによると、シルバーが実際にムーアから激励を受けたのは20年前に映画化権を取得したころのことだったという[194]
  42. ^ DCコミックスが製作者と結んだ契約により、『スワンプシング』誌の個別の原作者はクレジットされなかった。しかし製作者によるとムーア執筆期の同誌がストーリーのベースになっている[649]
  43. ^ 映画と『ヘルブレイザー』誌の主人公、ジョン・コンスタンティンはムーアが原案のキャラクターである[658]

出典

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参考文献

外部リンク