コンテンツにスキップ

「15式軽戦車」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
m すみません。少し編集が遅れます。
編集の要約なし
(4人の利用者による、間の5版が非表示)
1行目: 1行目:
{{Infobox weapon
{{工事中|12月2日午前6時頃 (JST) まで|time=2019年11月26日 (火) 03:40 (UTC)}}
|name = 15式軽戦車
{{出典の明記|date=2019年11月21日 (木) 00:59 (UTC)}}
|image =
'''15式軽戦車'''は[[中華人民共和国]]が開発運用する戦車である。
|caption =
2019年10月1日の中華人民共和国成立70周年祝賀大会の閲兵式で公開された。中国南部の水郷地帯や[[チベット]]などの高原・山岳地帯に対応した仕様となっている。高原地帯の運用に対応するため[[ツインターボ]]を備える。主砲は105mm砲、重量は33tから36t。閲兵式に参加した車両は[[中国人民解放軍西部戦区|チベット軍区]]に配置されている車両である。
|is_vehicle = yes
|type = [[軽戦車]]
|origin = {{PRC}}
|manufacturer = 中国兵器工業集団
|designer = [[中国兵器工業集団]]
|used_by = {{PRC}}
|service = 2015-現役
|weight = 33トン (通常状態) から36 トン (全備重量)<ref name="armyrecon" />
|length = {{convert|9.2|m|ft}}
|width = {{convert|3.3|m|ft}}
|height = {{convert|2.5|m|ft}}<ref name="armyrecon" />
|crew = 3<ref name="armyrecon" />
|armour = 圧延鋼板と[[装甲#複合装甲|複合装甲]]<!-- RHAであるかどうかは不明 --><br />[[装甲#増加装甲|増加装甲]]として複合装甲、[[爆発反応装甲]]のうち片方または両方を装着可能<ref name="armyrecon" /><ref name="mgPANZER'2001"/>
|primary_armament = 105mmライフル砲
|secondary_armament = 12.7mm機関銃 ×1、35/40mm[[擲弾発射器#自動式|自動擲弾発射器]] ×1([[RWS]])<br/>7.62mm[[同軸機銃]] ×1<ref name="armyrecon" /><ref name="mgPANZER'2001"/>
|engine = [[自動変速機]]付きの電気制御[[ディーゼルエンジン]]<!-- engineの部分は訳語に不安があります -->
|engine_power = 1,000 hp (746 kW)<ref name="armyrecon" />
|pw_ratio = 30.30 hp/tonne
|suspension = [[ハイドロニューマチック・サスペンション]]<ref name="armyrecon" />
|vehicle_range = {{convert|450|km|mi}}–{{convert|800|km|mi}}<ref name="armyrecon" />
|speed = {{convert|70|kph|mph}}
}}
'''15式軽戦車'''、もしくは'''ZTQ-15'''は、[[中華人民共和国]]が新規に開発した重量33トンから36トンの[[軽戦車]]{{efn|[[戦車]]のカテゴリーの一つ。軽くて機動力に優れるが、火力も防御力も弱いような車輌である事を表す。[[第二次世界大戦]]終結後しばらくしてから軽戦車の担っていた役割は[[主力戦車]]やその他の[[装甲車]]に受け継がれ、次第に用いられなくなっていた。2019年時点では軽戦車が新規開発される事自体珍しい事であった<ref name="why-cn-made-LT">{{cite web|url = https://trafficnews.jp/post/91266 |title = 中国が新型「軽」戦車を作ったワケ 対戦車戦は無理! 特異なスペックに見る意図、背景 |accessdate = 2019-11-24}}</ref>。}}である。 2018年12月に[[中華人民共和国国防部]]から正式に存在が発表された<ref name="armyrecon">{{cite web|url=https://www.armyrecognition.com/china_chinese_heavy_armoured_vehicle_tank_uk/vt5_light_weight_main_battle_tank_technical_data_sheet_specifications_pictures_video_11711164.html|title=Type 15 VT5 ZTQ-15 light weight main battle tank|accessdate = 2019-11-25}}</ref>。2018年当時の[[主力戦車]]である[[99式戦車]]や[[96式戦車]]よりも軽量で、中国南部の水郷地帯や[[チベット]]などの高原・山岳地帯に対応した仕様となっている。


== 外部リンク ==
== 設計思想と開発 ==
[[中華人民共和国|中国]]では、1990年代末期に開発した[[戦車#第2世代主力戦車|第2世代主力戦車]]の96式戦車を経て当時最新鋭の[[戦車#第3世代主力戦車|第3世代主力戦車]]である[[99式戦車]]を開発・配備している。しかし、50トンクラスの[[主力戦車]]を運用できる環境は中国国内では限られている。特に水郷地帯が広がる亜熱帯の中国南部や、[[チベット高原]]などの[[高山帯]]を控える南西部ではこれら主力戦車の運用は難しかった。特に特に山間部での運用に深刻な不足があったとされる。それらの地域には長らく'''[[62式軽戦車]]'''が運用されていた。62式軽戦車は重量21トンで道路条件の悪い地域での運用に評価がある。しかし、62式戦車は1959年に制式採用した[[戦車#第1世代主力戦車|第1世代主力戦車]]である[[59式戦車]]をスケールダウンしたもので、性能の限界が早くから指摘されていた。また、あまりにも旧式であるということで現場の部隊からも新型の戦車を求める強い要求が出ていた<ref name="mgPANZER'2001">{{Cite journal|和書 |author = 宮永忠将 |date = 2019-11 |title = 15式軽戦車を観察する |journal = 月刊パンツァー |issue = 690号(2020年1月号) |pages = 78-79 |publisher = アルゴノート }}</ref><ref name="new-lighttank-replase62">{{cite web|url = http://news.searchina.net/id/1557326?page=1 |title = 新型軽戦車「高原の猛虎」 第二次世界大戦期の「延長モデル」と入れ替えか |accessdate = 2019-11-24}}</ref>。
{{Commons|Type 15}}

* [https://news.yahoo.co.jp/pickup/6343091 中国 新型の軽戦車作った訳]
そのような状況の中、中国南部の水郷地帯や高原・山岳地帯などでの作戦に対応できる軽戦車として新規に設計されたのが15式軽戦車である<ref>{{cite web|url = http://www.xinhuanet.com/politics/70zn/2019-10/01/c_1125063100.htm |title = 轻型装甲方队:15式轻型坦克首次亮相国庆阅兵 |publisher = 新華通訊社 |accessdate = 2019-11-24}}</ref>。15式軽戦車は重装甲を誇る敵の最新の[[主力戦車]]と対抗するよりも、その他の機動戦力や固定施設、さらに歩兵を主な目標とする事を想定して開発したとされている。また、車体も30トンクラスまで軽量化するとされ、後述するように軽量化のため火力や装甲についてはその規模を抑えることで妥協され、また、最新の主力戦車と相対するのでなければそれで十分だとされた<ref name="mgPANZER'2001"/><ref name="new-lighttank-replase62"/><ref name = "mgPANZER'1912"/>。

2010年頃から中国が新型の軽戦車を開発中であるとの見方が出ていて、'''高原猛虎'''の名称で知られるようになっていた<ref name = "new-lighttank-replase62" /><ref name = "mgPANZER'1912">{{Cite journal|和書 |author = 能勢伸之 |authorlink = 能勢伸之 |date = 2019-10 |title = 能勢伸之のツキイチ安全保障 -10 |journal = 月刊パンツァー | issue = 688号(2019年12月号) |pages = 62-63 |publisher = アルゴノート }}</ref>。開発においては冷却水管の破裂、エンジン火災、油気圧パワーアシスト破損、射撃不良などあらゆる面で難航し完成には8年掛かったという<ref name="why-cn-made-LT"/>。

2016年には[[中国国際航空宇宙博覧会]]において15式軽戦車の輸出型戦車である'''VT5'''という名称の軽戦車が初披露された<ref name="armyrecon"/><ref name="mil-today-ztq-15">{{cite web|url = http://www.military-today.com/tanks/ztq_15.htm |title = ZTQ-15 light tank |publisher = military-today.com |accessdate = 2019-11-25}}</ref>。2018年12月、[[中華人民共和国国防部]]は新型の軽戦車として15式軽戦車の存在を初めて公式に明らかにし、同時に[[中国人民解放軍]]への制式車両の引き渡しが始まっているとも発表した。後継車両の開発が難航し適切な後継のないまま2011年に全車退役した62式軽戦車の後継車両として、15式軽戦車はようやく完成したことになる<ref name="mgPANZER'2001"/><ref name="mil-today-ztq-15"/>。

2019年9月の中国建国70周年軍事パレードで初めて公衆の前に姿を現している<ref name="armyrecon"/>。

== 構造 ==
[[File:VT-5 Light Tank.webm|thumb|right|2018年に撮影されたVT5の映像]]
15式軽戦車は配備開始当時の最新鋭の[[戦車#ポスト第3世代主力戦車|第3.5世代主力戦車]]と比べて決して火力・防護力に秀でている車両であるわけではない。

しかし軽量化され、優れた高地性能を持つことにより他の戦車が侵入できない山岳地帯や高地、田園地帯のような地形の戦場でも活躍できる能力を持っている。そのような[[歩兵]]主体の戦場で15式軽戦車がネットワーク化された機動火力を提供することができれば、圧倒的に優位で戦況を進めることができると見られている<ref name="why-cn-made-LT"/>。

=== 兵装 ===
主砲として105mm[[ライフル砲]]を装備している。この砲は[[ロイヤル・オードナンス]][[ロイヤル・オードナンス L7|105mm戦車砲L7]]を[[ライセンス生産]]した[[59式戦車|59-Ⅱ式戦車]]用105mm81式ライフル砲を新規に改良したもので、[[北大西洋条約機構|NATO]]標準規格の弾薬を使用できる<ref name = "mgPANZER'1912"/><ref name="mil-today-ztq-15"/>。

弾種としては[[APFSDS]] (装弾筒付翼安定徹甲弾)、[[成形炸薬弾|HEAT]] (対戦車榴弾)、[[榴弾|HE]] (榴弾)、それに[[対戦車ミサイル]]が使用可能。対戦車ミサイル弾も含めて、主砲弾は38発搭載できる。軍事情報を扱うウェブサイトのmilitary-today.comでは、105mmAPFSDS弾は現代の主力戦車には威力不足、としながらも、対戦車ミサイルはそのような戦車にも脅威を与えうるとしている<ref name="mil-today-ztq-15"/>。戦車専門誌の『[[パンツァー (雑誌)|パンツァー]]』では、この主砲は[[ロシア]]の戦車戦力{{efn|15式軽戦車採用当時のロシアの保有する主力戦車は全て125mm滑腔砲を装備している。}}に対抗できるものではないとしながらも、中国南部で国境を接する[[インド]]・[[ベトナム]]等の国の全ての装甲車を撃破出来ると評価している<ref name = "mgPANZER'2001"/><ref name = "mgPANZER'1912"/>。

副兵装として砲塔上面に遠隔操作が可能な無人銃架([[RWS]])を装備している。12.7mm重機関銃が装備されていて、35/40mm[[擲弾発射器#自動式|自動擲弾発射器]]も装着可能である{{efn|グレネードランチャーの口径については情報が錯綜している。雑誌『パンツァー』<ref name = "mgPANZER'2001"/>では35mm、『ARMY RECOGNITION』<ref name="armyrecon" />や『military-today.com』<ref name="mil-today-ztq-15"/>といったウェブサイトでは40mmと紹介されている。}}。また、[[戦車#装備と構造|同軸機銃]]として7.62mm機関銃を備えている<ref name="armyrecon" />。

=== 装甲 ===
装甲は、軽量化の為従来の99式戦車等に比べ大幅にカットされていているが、砲塔正面装甲のみ第3世代主力戦車に匹敵する防御力があるとされる<ref name = "mgPANZER'2001"/>車体・砲塔装甲には圧延鋼板が使われているとされるとされ<ref name="armyrecon" />、複合装甲も使用されているとの情報もある<ref name = "mgPANZER'2001"/>。

また、複合装甲と[[爆発反応装甲]]を増加装甲として装着することも可能である。さらに、15式軽戦車の輸出用バージョンであるVT5では、2016年に展示された際には[[装甲#ケージ装甲|ケージ装甲]]も装着されていた<ref name="armyrecon" />。

=== 機動力 ===
車体後部に1,000馬力の[[ディーゼルエンジン]]を装備していて、最高速度70km/hを出すことができる。このエンジンには空気の薄い環境に対応するために[[ツインターボ]]が搭載されている。2つの[[過給機]]を作動させることにより、酸素が薄く[[インド軍]]の[[T-72]]や[[T-90]]と言った戦車が侵入できない酸素濃度の低い高地{{efn|標高0mで気圧1013[[ヘクトパスカル|hPa]] (1 [[標準気圧|気圧]])で温度摂氏25度であっても標高4,800mでは596hPa、マイナス4度、酸素濃度は56%となり、戦車のエンジンを動かすことも大変である<ref name="why-cn-made-LT"/>。}}でも15式軽戦車は活動することができる。また、作動させている状態では1,200馬力を発揮することができるが、低地でこれを使うとエンジンの寿命を早めてしまうため、高地ではツインターボを作動させて低地では使用しないと言った特殊な運用がなされる<ref name="armyrecon" /><ref name = "mgPANZER'2001"/><ref name="why-cn-made-LT"/>。

[[トランスミッション]]には[[無段変速機#油圧機械式無段変速機|油圧機械式無段階自動変速操向機]](HMT, Hydro-Mechanical Transmission)を採用し、車体を傾けることのできる[[ハイドロニューマチック・サスペンション|油気圧式]]懸架装置も備えている<ref name="mil-today-ztq-15"/>。

車内燃料のみを使った場合の巡航距離は450kmであるが、車体後部に外装式の大型[[増槽]]を2つ付けることが可能でこの時どれだけ航続距離が伸びるのかは2019年現在不明である<ref name = "mgPANZER'2001"/>。

=== 電子装備 ===
[[中国共産党中央政法委員会]]では、15式軽戦車を「高度に情報化された」戦車であるとしている<ref>{{cite web|url = http://www.chinapeace.gov.cn/chinapeace/c54219/2019-10/02/content_12292321.shtml |title = 阅兵式上超“硬核”的大牌,哪儿来的? |publisher = 中共中央政法委员会 |accessdate = 2019-12-01}}</ref>。実際に、15式軽戦車には2019年現在には用途不明のセンサーやアンテナ類、さらにはレーザー検出装置と思わしいものが確認できるので、[[99式戦車]]と同等かそれ以上のネットワーク能力の付与とデジタル化がなされていると見られている<ref name = "mgPANZER'2001"/><ref name="why-cn-made-LT"/>。

== 派生型 ==
;VT5
: 15式軽戦車/ZTQ-15の輸出用車。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist}}


{{中華人民共和国の装甲戦闘車両}}
{{中華人民共和国の装甲戦闘車両}}

2019年12月24日 (火) 11:30時点における版

15式軽戦車
種類 軽戦車
原開発国 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
運用史
配備期間 2015-現役
配備先 中華人民共和国の旗 中華人民共和国
開発史
開発者 中国兵器工業集団
製造業者 中国兵器工業集団
諸元
重量 33トン (通常状態) から36 トン (全備重量)[1]
全長 9.2メートル (30 ft)
全幅 3.3メートル (11 ft)
全高 2.5メートル (8.2 ft)[1]
要員数 3[1]

装甲 圧延鋼板と複合装甲
増加装甲として複合装甲、爆発反応装甲のうち片方または両方を装着可能[1][2]
主兵装 105mmライフル砲
副兵装 12.7mm機関銃 ×1、35/40mm自動擲弾発射器 ×1(RWS)
7.62mm同軸機銃 ×1[1][2]
エンジン 自動変速機付きの電気制御ディーゼルエンジン
出力重量比 30.30 hp/tonne
懸架・駆動 ハイドロニューマチック・サスペンション[1]
行動距離 450キロメートル (280 mi)–800キロメートル (500 mi)[1]
速度 70キロメートル毎時 (43 mph)
テンプレートを表示

15式軽戦車、もしくはZTQ-15は、中華人民共和国が新規に開発した重量33トンから36トンの軽戦車[注釈 1]である。 2018年12月に中華人民共和国国防部から正式に存在が発表された[1]。2018年当時の主力戦車である99式戦車96式戦車よりも軽量で、中国南部の水郷地帯やチベットなどの高原・山岳地帯に対応した仕様となっている。

設計思想と開発

中国では、1990年代末期に開発した第2世代主力戦車の96式戦車を経て当時最新鋭の第3世代主力戦車である99式戦車を開発・配備している。しかし、50トンクラスの主力戦車を運用できる環境は中国国内では限られている。特に水郷地帯が広がる亜熱帯の中国南部や、チベット高原などの高山帯を控える南西部ではこれら主力戦車の運用は難しかった。特に特に山間部での運用に深刻な不足があったとされる。それらの地域には長らく62式軽戦車が運用されていた。62式軽戦車は重量21トンで道路条件の悪い地域での運用に評価がある。しかし、62式戦車は1959年に制式採用した第1世代主力戦車である59式戦車をスケールダウンしたもので、性能の限界が早くから指摘されていた。また、あまりにも旧式であるということで現場の部隊からも新型の戦車を求める強い要求が出ていた[2][4]

そのような状況の中、中国南部の水郷地帯や高原・山岳地帯などでの作戦に対応できる軽戦車として新規に設計されたのが15式軽戦車である[5]。15式軽戦車は重装甲を誇る敵の最新の主力戦車と対抗するよりも、その他の機動戦力や固定施設、さらに歩兵を主な目標とする事を想定して開発したとされている。また、車体も30トンクラスまで軽量化するとされ、後述するように軽量化のため火力や装甲についてはその規模を抑えることで妥協され、また、最新の主力戦車と相対するのでなければそれで十分だとされた[2][4][6]

2010年頃から中国が新型の軽戦車を開発中であるとの見方が出ていて、高原猛虎の名称で知られるようになっていた[4][6]。開発においては冷却水管の破裂、エンジン火災、油気圧パワーアシスト破損、射撃不良などあらゆる面で難航し完成には8年掛かったという[3]

2016年には中国国際航空宇宙博覧会において15式軽戦車の輸出型戦車であるVT5という名称の軽戦車が初披露された[1][7]。2018年12月、中華人民共和国国防部は新型の軽戦車として15式軽戦車の存在を初めて公式に明らかにし、同時に中国人民解放軍への制式車両の引き渡しが始まっているとも発表した。後継車両の開発が難航し適切な後継のないまま2011年に全車退役した62式軽戦車の後継車両として、15式軽戦車はようやく完成したことになる[2][7]

2019年9月の中国建国70周年軍事パレードで初めて公衆の前に姿を現している[1]

構造

2018年に撮影されたVT5の映像

15式軽戦車は配備開始当時の最新鋭の第3.5世代主力戦車と比べて決して火力・防護力に秀でている車両であるわけではない。

しかし軽量化され、優れた高地性能を持つことにより他の戦車が侵入できない山岳地帯や高地、田園地帯のような地形の戦場でも活躍できる能力を持っている。そのような歩兵主体の戦場で15式軽戦車がネットワーク化された機動火力を提供することができれば、圧倒的に優位で戦況を進めることができると見られている[3]

兵装

主砲として105mmライフル砲を装備している。この砲はロイヤル・オードナンス105mm戦車砲L7ライセンス生産した59-Ⅱ式戦車用105mm81式ライフル砲を新規に改良したもので、NATO標準規格の弾薬を使用できる[6][7]

弾種としてはAPFSDS (装弾筒付翼安定徹甲弾)、HEAT (対戦車榴弾)、HE (榴弾)、それに対戦車ミサイルが使用可能。対戦車ミサイル弾も含めて、主砲弾は38発搭載できる。軍事情報を扱うウェブサイトのmilitary-today.comでは、105mmAPFSDS弾は現代の主力戦車には威力不足、としながらも、対戦車ミサイルはそのような戦車にも脅威を与えうるとしている[7]。戦車専門誌の『パンツァー』では、この主砲はロシアの戦車戦力[注釈 2]に対抗できるものではないとしながらも、中国南部で国境を接するインドベトナム等の国の全ての装甲車を撃破出来ると評価している[2][6]

副兵装として砲塔上面に遠隔操作が可能な無人銃架(RWS)を装備している。12.7mm重機関銃が装備されていて、35/40mm自動擲弾発射器も装着可能である[注釈 3]。また、同軸機銃として7.62mm機関銃を備えている[1]

装甲

装甲は、軽量化の為従来の99式戦車等に比べ大幅にカットされていているが、砲塔正面装甲のみ第3世代主力戦車に匹敵する防御力があるとされる[2]車体・砲塔装甲には圧延鋼板が使われているとされるとされ[1]、複合装甲も使用されているとの情報もある[2]

また、複合装甲と爆発反応装甲を増加装甲として装着することも可能である。さらに、15式軽戦車の輸出用バージョンであるVT5では、2016年に展示された際にはケージ装甲も装着されていた[1]

機動力

車体後部に1,000馬力のディーゼルエンジンを装備していて、最高速度70km/hを出すことができる。このエンジンには空気の薄い環境に対応するためにツインターボが搭載されている。2つの過給機を作動させることにより、酸素が薄くインド軍T-72T-90と言った戦車が侵入できない酸素濃度の低い高地[注釈 4]でも15式軽戦車は活動することができる。また、作動させている状態では1,200馬力を発揮することができるが、低地でこれを使うとエンジンの寿命を早めてしまうため、高地ではツインターボを作動させて低地では使用しないと言った特殊な運用がなされる[1][2][3]

トランスミッションには油圧機械式無段階自動変速操向機(HMT, Hydro-Mechanical Transmission)を採用し、車体を傾けることのできる油気圧式懸架装置も備えている[7]

車内燃料のみを使った場合の巡航距離は450kmであるが、車体後部に外装式の大型増槽を2つ付けることが可能でこの時どれだけ航続距離が伸びるのかは2019年現在不明である[2]

電子装備

中国共産党中央政法委員会では、15式軽戦車を「高度に情報化された」戦車であるとしている[8]。実際に、15式軽戦車には2019年現在には用途不明のセンサーやアンテナ類、さらにはレーザー検出装置と思わしいものが確認できるので、99式戦車と同等かそれ以上のネットワーク能力の付与とデジタル化がなされていると見られている[2][3]

派生型

VT5
15式軽戦車/ZTQ-15の輸出用車。

脚注

注釈

  1. ^ 戦車のカテゴリーの一つ。軽くて機動力に優れるが、火力も防御力も弱いような車輌である事を表す。第二次世界大戦終結後しばらくしてから軽戦車の担っていた役割は主力戦車やその他の装甲車に受け継がれ、次第に用いられなくなっていた。2019年時点では軽戦車が新規開発される事自体珍しい事であった[3]
  2. ^ 15式軽戦車採用当時のロシアの保有する主力戦車は全て125mm滑腔砲を装備している。
  3. ^ グレネードランチャーの口径については情報が錯綜している。雑誌『パンツァー』[2]では35mm、『ARMY RECOGNITION』[1]や『military-today.com』[7]といったウェブサイトでは40mmと紹介されている。
  4. ^ 標高0mで気圧1013hPa (1 気圧)で温度摂氏25度であっても標高4,800mでは596hPa、マイナス4度、酸素濃度は56%となり、戦車のエンジンを動かすことも大変である[3]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Type 15 VT5 ZTQ-15 light weight main battle tank”. 2019年11月25日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 宮永忠将「15式軽戦車を観察する」『月刊パンツァー』690号(2020年1月号)、アルゴノート、2019年11月、78-79頁。 
  3. ^ a b c d e f 中国が新型「軽」戦車を作ったワケ 対戦車戦は無理! 特異なスペックに見る意図、背景”. 2019年11月24日閲覧。
  4. ^ a b c 新型軽戦車「高原の猛虎」 第二次世界大戦期の「延長モデル」と入れ替えか”. 2019年11月24日閲覧。
  5. ^ 轻型装甲方队:15式轻型坦克首次亮相国庆阅兵”. 新華通訊社. 2019年11月24日閲覧。
  6. ^ a b c d 能勢伸之「能勢伸之のツキイチ安全保障 -10」『月刊パンツァー』688号(2019年12月号)、アルゴノート、2019年10月、62-63頁。 
  7. ^ a b c d e f ZTQ-15 light tank”. military-today.com. 2019年11月25日閲覧。
  8. ^ 阅兵式上超“硬核”的大牌,哪儿来的?”. 中共中央政法委员会. 2019年12月1日閲覧。