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| 近点・遠点対象 = 木
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| 相対対象 = 木星
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'''アマルテア'''(Jupiter V Amalthea)は、[[木星]]の第5[[衛星]]。2007年までに発見された衛星の中で内側から3番目の軌道を回っている。同様に[[ガリレオ衛星]]より内側を回っている[[木星内部衛星群]]をアマルテア群と呼ぶことがある。
'''アマルテア'''(Jupiter V Amalthea)は、[[木星]]の第5[[衛星]]。2018年までに発見された衛星の中で内側から3番目の軌道を回っている。同様に[[ガリレオ衛星]]より内側を回っている[[木星内部衛星群]]をアマルテア群と呼ぶことがある。


[[1892年]][[9月9日]]に[[エドワード・エマーソン・バーナード]]によって、91cm屈折望遠鏡の肉視観測で発見された。名前は[[ゼウス]]を育てた[[ニュンペー|ニンフ]]、[[アマルテイア]]に由来し、発見後まもなく[[カミーユ・フラマリオン]]によって提唱された。しかし正式に命名されたのは[[1975年]]で、それ以前は単に'''Jupiter V'''という名で知られていた。俗に[[バーナード星]]とも(ただしこの呼称はへびつかい座の恒星の方を指すことが多い)。なお、同名の小惑星 (113) [[アマルテア (小惑星)|アマルテア]]も存在する。
名前は[[ゼウス]]を育てた[[ニュンペー|ニンフ]]、[[アマルテイア]]に由来し、発見後まもなく[[カミーユ・フラマリオン]]によって提唱された。しかし正式に命名されたのは[[1975年]]で、それ以前は単に'''Jupiter V'''という名で知られていた。俗に[[バーナード星]]とも(ただしこの呼称はへびつかい座の恒星の方を指すことが多い)。なお、同名の小惑星 (113) [[アマルテア (小惑星)|アマルテア]]も存在する。


== 発見と観測 ==
直接の目視によって発見された最後の衛星で、ガリレオ衛星以来最初に発見された木星の衛星である。平均直径 189 kmで、いびつな形をしている。[[エウロパ (衛星)|エウロパ]]の1/15の大きさであり、木星の衛星の中ではガリレオ衛星に次ぐ5番目の大きさである。しかし、ガリレオ衛星が木星に近い内側ほど密度が大きい傾向があるのに対し、アマルテアはそれより内側にあるにもかかわらず密度は液体の水程度と測定されている。赤みがかった色をしているが、[[イオ (衛星)|イオ]]から噴出した硫黄のためである。また、イオと同じく熱の吸収より放出の方が大きい、これは木星の潮汐力により内部が熱せられるからである。
アマルテアは、[[1892年]][[9月9日]]に[[エドワード・エマーソン・バーナード]]によって[[リック天文台]]の91 cm屈折望遠鏡を用いて発見された。撮影された写真中からではなく目視による直接観測で発見されたものとしては最後の衛星であり、また1610年に[[ガリレオ・ガリレイ]]が[[ガリレオ衛星]]を発見して以降では最初に発見された木星の衛星である。


1979年には[[ボイジャー1号]]と[[ボイジャー2号]]によって観測された。そののち、1990年代には木星探査機[[ガリレオ_(探査機)|ガリレオ]]によってより詳細に観測されている<ref name=Thomas+1998/>。[[2002年]]11月、ガリレオ探査機が最後の探査活動として接近、観測した。
アマルテアの内部構造は、密度が低いことから氷が主体か、もしくは[[ラブルパイル天体|ラブルパイル]]構造になっていると考えられている。木星の重力に捕らえられた[[小惑星]]かもしれない。実際、[[国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡|すばる望遠鏡]]の観測によって得られたアマルテアの赤外線スペクトルは、炭素質小惑星が起源と考えられている隕石の幾つかに類似している<ref>[http://subarutelescope.org/Pressrelease/2004/12/23/j_index.html (観測成果) すばる、木星の近傍を回る衛星の起源に迫る] 2015年12月15日閲覧
</ref>。


== 物理的特徴 ==
[[2002年]]11月、[[ガリレオ (探査機)|ガリレオ]]探査機が最後の探査活動として接近、観測した。
アマルテアの表面は非常に赤い色を示す。これはイオに起源を持つ硫黄か、その他の氷ではない物質によるものだと考えられる<ref name=Thomas+1998/>。アマルテアの斜面部分には明るい領域が存在するが、この部分の色の性質は今のところ分かっていない<ref name=Thomas+1998/>。アマルテアの表面は、その他の[[木星内部衛星群]]よりもわずかに明るい<ref name=Simonelli+2000/>。また公転方向に先行した半球と後行する半球で明確な非対称性があり、先行半球は後行半球よりも1.3倍明るい。この非対称性は[[メティス_(衛星)|メティス]]に見られる特徴と同様に、アマルテアの速い公転速度と先行半球への頻繁な衝突により、天体内部の明るい物質(おそらくは氷)が表面に露出していることが原因だと考えられている<ref name=Simonelli+2000/>。


アマルテアはいびつな形状をしており、三軸径は250 × 146 × 128 kmである。木星に近いその他の衛星と同様に、[[自転と公転の同期|潮汐固定]]された状態にあり、長軸方向を常に木星の方向に向けながら公転している<ref name=Burns+2004/>。
アマルテアの表面には、衛星本体にくらべ非常に大きな2つの[[クレーター]]と、2つのファキュラ(明るい部分、[[山脈]]と推定される)が確認されている。クレーターはパーンとガイア、ファキュラは[[クレタ島]]のゼウスにゆかりのある場所に因んでリュクトスとイダと名付けられた。

表面には多数のクレーターが見られ、いくつかは衛星と比較して非常に大きなサイズを持つ。最も大きなクレーターであるパンは差し渡し100 kmにおよび、深さは少なくとも8 kmある<ref name=Thomas+1998/>。その他にも[[ガエア_(クレーター)|ガエア]]の直径は80 kmあり、深さはパンの2倍程度あると推定されている<ref name=Thomas+1998/>。またアマルテア表面には白斑と呼ばれるいくつかの明るいスポットが存在し、これらのうち2つには[[リークトス_(アマルテア)|リークトス]]と[[イダ_(アマルテア)|イダ]]と名前が付けられている。これらの幅は25 km程度である。

アマルテアの形状が不規則でありサイズも大きいことから、かつてはかなり強く硬い物質で出来ていると考えられていた<ref name=Burns+2004/>。これはもし氷や柔らかい物質でこの天体が出来ていた場合、自己重力によってより球形に近い形状に変化してしまうはずだからである。しかし2002年11月5日にガリレオ探査機によるフライバイが行われた際にこの衛星の質量が測定され、この天体が低密度であることが判明した。このフライバイではガリレオはアマルテアの160 km以内の距離を通過し、その際の探査機の軌道の変化から質量が測定された。測定された平均密度は 0.86 g/cm<sup>3</sup><ref name=Anderson+2005>{{cite journal| doi = 10.1126/science.1110422| last1 = Anderson | first1 = J. D.| last2 = Johnson | first2 = T. V.| last3 = Schubert | first3 = G.| last4 = Asmar | first4 = S.| last5 = Jacobson | first5 = R. A.| last6 = Johnston | first6 = D.| last7 = Lau | first7 = E. L.| last8 = Lewis | first8 = G.| last9 = Moore | first9 = W. B.| date = 2005-05-27| last10 = Taylor | first10 = A.| last11 = Thomas | first11 = P. C.| last12 = Weinwurm | first12 = G.| title = Amalthea's Density is Less Than That of Water| journal = Science| volume = 308| issue = 5726| pages = 1291–1293| pmid = 15919987| bibcode = 2005Sci...308.1291A}}</ref>であり、比較的氷が多い組成か、非常に多孔質の[[ラブルパイル天体|ラブルパイル]]構造であるか、あるいはその中間である必要があることが分かっている。

[[国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡|すばる望遠鏡]]の観測によって得られたアマルテアの赤外線スペクトルは、この衛星が含水鉱物もしくは有機物を含んでいることを示唆している。形成直後の高温な木星からの放射の影響のため、現在の位置でアマルテアが形成されたとすると含水鉱物の存在を説明することが出来ない<ref name=Takato+2004>{{cite journal| doi = 10.1126/science.1105427| last1 = Takato| first1 = Naruhisa| last2 = Bus| first2 = Schelte J.| last3 = Terada| first3 = H.| last4 = Pyo| first4 = Tae-Soo| last5 = Kobayashi| first5 = Naoto| date = 2004-12-24| title = Detection of a Deep 3-μm Absorption Feature in the Spectrum of Amalthea (JV)| journal = Science| volume = 306| issue = 5705| pages = 2224–2227| pmid = 15618511| bibcode = 2004Sci...306.2224T}}</ref>。そのため、現在よりも木星から遠い位置で形成された後に移動してきたか、あるいは木星の重力に捕らえられた[[小惑星]]である可能性がある<ref name=Anderson+2005/>。実際、すばる望遠鏡の観測によって得られた赤外線スペクトルは、炭素質小惑星が起源と考えられている隕石の幾つかに類似している<ref>[http://subarutelescope.org/Pressrelease/2004/12/23/j_index.html (観測成果) すばる、木星の近傍を回る衛星の起源に迫る] 2015年12月15日閲覧</ref>。

アマルテアは、太陽から受け取るよりもわずかに多く熱を放射している。この余分な熱源は、木星自身の熱放射、木星表面での反射光、荷電粒子の衝突による加熱によるものだと考えられており、それぞれ最大で9 K、5 K、2 K分の温度上昇に寄与すると推定されている<ref name=Simonelli1983>{{cite journal| doi = 10.1016/0019-1035(83)90244-0| last = Simonelli | first = D. P.| date= 1983-06 | title = Amalthea: Implications of the temperature observed by Voyager| journal = Icarus| issn = 0019-1035| volume = 54| issue = 3| pages = 524–538| bibcode = 1983Icar...54..524S| ref = harv}}</ref>。

== 軌道 ==
アマルテアの軌道長半径は181,000 km(木星半径の2.54倍)である。軌道離心率は0.003、軌道傾斜角は木星の赤道に対して0.37&deg;である<ref name=Cooper+2006/>。これらの離心率と傾斜角の値自体は小さいものの、惑星に近い軌道を公転する衛星としては目立って大きい。これはガリレオ衛星のうち最も内側を公転する[[イオ_(衛星)|イオ]]の影響によって説明することが可能である。過去にアマルテアはイオとの複数の[[軌道共鳴|平均運動共鳴]]を通過し、この時に離心率と傾斜角が上昇したと考えられる<ref name=Burns+2004>{{cite encyclopedia | last1 = Burns | first1 = Joseph A. | last2 = Simonelli | first2 = Damon P. | last3 = Showalter | first3 = Mark R. | last4 = Hamilton | first4 = Douglas P. | last5 = Porco | first5 = Carolyn C. | last6 = Throop | first6 = Henry | last7 = Esposito | first7 = Larry W. | date = 2004 | pages = 241–262 | title = Jupiter's Ring-Moon System | publisher = Cambridge University Press | editor1-last = Bagenal | editor1-first = Fran | editor2-last = Dowling | editor2-first = Timothy E. | editor3-last = McKinnon | editor3-first = William B. | url = http://www.astro.umd.edu/~hamilton/research/preprints/BurSimSho03.pdf | bibcode = 2004jpsm.book..241B | isbn = 978-0-521-81808-7 | journal = Jupiter: the Planet, Satellites and Magnetosphere}}</ref>。

アマルテアの軌道は[[木星の環#ゴサマー環|アマルテア・ゴサマー環]]の外縁付近に位置している。この環は、衛星から放出された物質から構成されている<ref name=Burns+1999>{{cite journal| doi = 10.1126/science.284.5417.1146| last1 = Burns| first1 = Joseph A.| last2 = Showalter| first2 = Mark R.| last3 = Hamilton| first3 = Douglas P.| last4 = Nicholson| first4 = Philip D.| last5 = de Pater| first5 = Imke| last6 = Ockert-Bell| first6 = Maureen E.| last7 = Thomas| first7 = Peter C.| date = 1999-05-14| title = The Formation of Jupiter's Faint Rings| journal = Science| volume = 284| issue = 5417| pages = 1146–1150| pmid = 10325220| bibcode = 1999Sci...284.1146B}}</ref>。

== 木星の環との関係 ==
アマルテアの密度が低く不規則な形状をしていることと木星からの[[潮汐力]]の影響で、アマルテアからの脱出速度は極めて低速である。アマルテア表面における脱出速度は1 m/sに満たず、微小隕石の衝突などによって生成された塵は容易にアマルテアを脱出できる。このダストがアマルテア・ゴサマー環を形成している<ref name=Burns+2004/>。

ガリレオ探査機がアマルテアをフライバイする最中、探査機に搭載されたスタースキャナーによって9つの閃光が検出されている。これはアマルテアの軌道付近にある[[ムーンレット]]だと考えられる。これらは1つの位置からしか見えなかったため、実際の距離の測定は出来なかった。これらのムーンレットの推定サイズは、砂利程度のものからスタジアム程度のサイズのいずれもがあり得る。これらの起源は不明だが、現在の軌道に重力的に捕獲されたものか、あるいはアマルテアへの隕石衝突に伴う放出物である可能性がある。ガリレオによるその後の、そしてミッション終了前最後の観測では、このようなムーンレットがさらに1つ検出された。この時はアマルテアは木星の反対側にいたため、これらの小天体はアマルテアの軌道の付近に環を形成している可能性が高い<ref name=Fieseler+2004>{{cite journal |author =Fieseler P. D. |author2 =Adams O. W. |author3 =Vandermey N. |author4 =Theilig E. E. |author5 =Schimmels K. A. |author6 =Lewis G. D. |author7 =Ardalan S. M. |author8 =Alexander C. J. |title =The Galileo star scanner observations at Amalthea |date =2004 |journal =Icarus |volume =169 |issue =2 |pages =390–401 |doi =10.1016/j.icarus.2004.01.012 |bibcode =2004Icar..169..390F}}</ref><ref name=JPL_2003>{{Cite journal |publisher = Jet Propulsion Laboratory |date = 2003-04-09 |title = Another Find for Galileo |url = http://solarsystem.nasa.gov/galileo/news/display.cfm?News_ID=4939
|accessdate = 2012-03-27 |archiveurl = https://web.archive.org/web/20041104163021/http://www.solarsystem.nasa.gov/galileo/news/display.cfm?News_ID=4939 |archivedate = 2004-11-04}}</ref><ref name=IAU_2003>{{cite web |url = http://www.cbat.eps.harvard.edu/iauc/08100/08107.html#Item2 |title = Objects near Jupiter V (Amalthea) |author = Fieseler P. D. |author2 = Ardalan S. M. |work = IAU Circular |volume=8107 |publisher = Central Bureau for Astronomical Telegrams |accessdate = 2014-10-12 |date = 2003-04-04 |archiveurl = https://web.archive.org/web/20140302034543/http://www.cbat.eps.harvard.edu/iauc/08100/08107.html |archivedate = 2014-03-02}} ({{bibcode|2003IAUC.8107....2F}})</ref><ref name=Lakdawalla+2013>{{cite web |url =http://www.planetary.org/blogs/emily-lakdawalla/2013/05170800-serendipitous-observation-amalthea-rocks.html |title =A serendipitous observation of tiny rocks in Jupiter's orbit by Galileo |author =Emily Lakdawalla |publisher =The Planetary Society |date =2013-05-17 |accessdate =2014-10-14 |archiveurl =https://web.archive.org/web/20140814150855/http://www.planetary.org/blogs/emily-lakdawalla/2013/05170800-serendipitous-observation-amalthea-rocks.html |archivedate=2014-08-14}}</ref>。


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==地形一覧==
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== 関連事項 ==
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2018年12月5日 (水) 15:55時点における版

アマルテア
Amalthea
アマルテア (ガリレオ撮影)
アマルテア
ガリレオ撮影)
仮符号・別名 Jupiter V, J 5,
Barnard's star
軌道の種類 内部衛星群
発見
発見日 1892年9月9日
発見者 E. E. バーナード
軌道要素と性質
平均公転半径 181,365.84 ± 0.02 km[1]
近木点距離 (q) 181,150 km
遠木点距離 (Q) 182,840 km
離心率 (e) 0.00319[1]
公転周期 (P) 11 時間 57.4 分
(0.4981 日)[1]
軌道傾斜角 (i) 0.374°[1]
木星の衛星
物理的性質
三軸径 250 × 146
× 128 km[2]
平均半径 183.5 ± 2.0 km[2]
表面積 3.976 ×105 km2
質量 7.43 ×1018 kg
木星との相対質量 3.913 ×10−9
平均密度 0.857 ± 0.099 g/cm3[2]
表面重力 0.066 m/s2
(0.00673 G)
脱出速度 ~0.061 km/s
自転周期 11 時間 57.4 分
(公転と同期)[2]
絶対等級 (H) 14.1
アルベド(反射能) 0.090 ± 0.005[3]
表面温度 ~122 K
Template (ノート 解説) ■Project

アマルテア(Jupiter V Amalthea)は、木星の第5衛星。2018年までに発見された衛星の中で内側から3番目の軌道を回っている。同様にガリレオ衛星より内側を回っている木星内部衛星群をアマルテア群と呼ぶことがある。

名前はゼウスを育てたニンフアマルテイアに由来し、発見後まもなくカミーユ・フラマリオンによって提唱された。しかし正式に命名されたのは1975年で、それ以前は単にJupiter Vという名で知られていた。俗にバーナード星とも(ただしこの呼称はへびつかい座の恒星の方を指すことが多い)。なお、同名の小惑星 (113) アマルテアも存在する。

発見と観測

アマルテアは、1892年9月9日エドワード・エマーソン・バーナードによってリック天文台の91 cm屈折望遠鏡を用いて発見された。撮影された写真中からではなく目視による直接観測で発見されたものとしては最後の衛星であり、また1610年にガリレオ・ガリレイガリレオ衛星を発見して以降では最初に発見された木星の衛星である。

1979年にはボイジャー1号ボイジャー2号によって観測された。そののち、1990年代には木星探査機ガリレオによってより詳細に観測されている[2]2002年11月、ガリレオ探査機が最後の探査活動として接近、観測した。

物理的特徴

アマルテアの表面は非常に赤い色を示す。これはイオに起源を持つ硫黄か、その他の氷ではない物質によるものだと考えられる[2]。アマルテアの斜面部分には明るい領域が存在するが、この部分の色の性質は今のところ分かっていない[2]。アマルテアの表面は、その他の木星内部衛星群よりもわずかに明るい[3]。また公転方向に先行した半球と後行する半球で明確な非対称性があり、先行半球は後行半球よりも1.3倍明るい。この非対称性はメティスに見られる特徴と同様に、アマルテアの速い公転速度と先行半球への頻繁な衝突により、天体内部の明るい物質(おそらくは氷)が表面に露出していることが原因だと考えられている[3]

アマルテアはいびつな形状をしており、三軸径は250 × 146 × 128 kmである。木星に近いその他の衛星と同様に、潮汐固定された状態にあり、長軸方向を常に木星の方向に向けながら公転している[4]

表面には多数のクレーターが見られ、いくつかは衛星と比較して非常に大きなサイズを持つ。最も大きなクレーターであるパンは差し渡し100 kmにおよび、深さは少なくとも8 kmある[2]。その他にもガエアの直径は80 kmあり、深さはパンの2倍程度あると推定されている[2]。またアマルテア表面には白斑と呼ばれるいくつかの明るいスポットが存在し、これらのうち2つにはリークトスイダと名前が付けられている。これらの幅は25 km程度である。

アマルテアの形状が不規則でありサイズも大きいことから、かつてはかなり強く硬い物質で出来ていると考えられていた[4]。これはもし氷や柔らかい物質でこの天体が出来ていた場合、自己重力によってより球形に近い形状に変化してしまうはずだからである。しかし2002年11月5日にガリレオ探査機によるフライバイが行われた際にこの衛星の質量が測定され、この天体が低密度であることが判明した。このフライバイではガリレオはアマルテアの160 km以内の距離を通過し、その際の探査機の軌道の変化から質量が測定された。測定された平均密度は 0.86 g/cm3[5]であり、比較的氷が多い組成か、非常に多孔質のラブルパイル構造であるか、あるいはその中間である必要があることが分かっている。

すばる望遠鏡の観測によって得られたアマルテアの赤外線スペクトルは、この衛星が含水鉱物もしくは有機物を含んでいることを示唆している。形成直後の高温な木星からの放射の影響のため、現在の位置でアマルテアが形成されたとすると含水鉱物の存在を説明することが出来ない[6]。そのため、現在よりも木星から遠い位置で形成された後に移動してきたか、あるいは木星の重力に捕らえられた小惑星である可能性がある[5]。実際、すばる望遠鏡の観測によって得られた赤外線スペクトルは、炭素質小惑星が起源と考えられている隕石の幾つかに類似している[7]

アマルテアは、太陽から受け取るよりもわずかに多く熱を放射している。この余分な熱源は、木星自身の熱放射、木星表面での反射光、荷電粒子の衝突による加熱によるものだと考えられており、それぞれ最大で9 K、5 K、2 K分の温度上昇に寄与すると推定されている[8]

軌道

アマルテアの軌道長半径は181,000 km(木星半径の2.54倍)である。軌道離心率は0.003、軌道傾斜角は木星の赤道に対して0.37°である[1]。これらの離心率と傾斜角の値自体は小さいものの、惑星に近い軌道を公転する衛星としては目立って大きい。これはガリレオ衛星のうち最も内側を公転するイオの影響によって説明することが可能である。過去にアマルテアはイオとの複数の平均運動共鳴を通過し、この時に離心率と傾斜角が上昇したと考えられる[4]

アマルテアの軌道はアマルテア・ゴサマー環の外縁付近に位置している。この環は、衛星から放出された物質から構成されている[9]

木星の環との関係

アマルテアの密度が低く不規則な形状をしていることと木星からの潮汐力の影響で、アマルテアからの脱出速度は極めて低速である。アマルテア表面における脱出速度は1 m/sに満たず、微小隕石の衝突などによって生成された塵は容易にアマルテアを脱出できる。このダストがアマルテア・ゴサマー環を形成している[4]

ガリレオ探査機がアマルテアをフライバイする最中、探査機に搭載されたスタースキャナーによって9つの閃光が検出されている。これはアマルテアの軌道付近にあるムーンレットだと考えられる。これらは1つの位置からしか見えなかったため、実際の距離の測定は出来なかった。これらのムーンレットの推定サイズは、砂利程度のものからスタジアム程度のサイズのいずれもがあり得る。これらの起源は不明だが、現在の軌道に重力的に捕獲されたものか、あるいはアマルテアへの隕石衝突に伴う放出物である可能性がある。ガリレオによるその後の、そしてミッション終了前最後の観測では、このようなムーンレットがさらに1つ検出された。この時はアマルテアは木星の反対側にいたため、これらの小天体はアマルテアの軌道の付近に環を形成している可能性が高い[10][11][12][13]

地形一覧

クレーター

アマルテアのクレーターの名は、ギリシア神話の神々に由来する。

地名 由来
パン (Pan) パーン
ガエア (Gaea) ガイア

白斑

アマルテアの白斑の名は、ゼウスと関係のある場所に由来する。

地名 由来
イダ (Ida Facula) イディ山
リークトス (Lyctos Facula) クレタ島の地域

画像

出典

  1. ^ a b c d e Cooper, N. J.; Murray, C. D.; Porco, C. C.; Spitale, J. N. (2006-03). “Cassini ISS astrometric observations of the inner jovian satellites, Amalthea and Thebe”. Icarus 181 (1): 223–234. Bibcode2006Icar..181..223C. doi:10.1016/j.icarus.2005.11.007. 
  2. ^ a b c d e f g h i Thomas, P. C.; Burns, J. A.; Rossier, L.; Simonelli, D.; Veverka, J.; Chapman, C. R.; Klaasen, K.; Johnson, T. V. et al. (1998-09). “The Small Inner Satellites of Jupiter”. Icarus 135 (1): 360–371. Bibcode1998Icar..135..360T. doi:10.1006/icar.1998.5976. 
  3. ^ a b c Simonelli, D. P.; Rossier, L.; Thomas, P. C.; Veverka, J.; Burns, J. A.; Belton, M. J. S. (2000-10). “Leading/Trailing Albedo Asymmetries of Thebe, Amalthea, and Metis”. Icarus 147 (2): 353–365. Bibcode2000Icar..147..353S. doi:10.1006/icar.2000.6474. 
  4. ^ a b c d Burns, Joseph A.; Simonelli, Damon P.; Showalter, Mark R.; Hamilton, Douglas P.; Porco, Carolyn C.; Throop, Henry; Esposito, Larry W. (2004). Bagenal, Fran; Dowling, Timothy E.; McKinnon, William B. (eds.). Jupiter's Ring-Moon System (PDF). pp. 241–262. Bibcode:2004jpsm.book..241B. ISBN 978-0-521-81808-7 {{cite encyclopedia}}: |journal=は無視されます。 (説明)
  5. ^ a b Anderson, J. D.; Johnson, T. V.; Schubert, G.; Asmar, S.; Jacobson, R. A.; Johnston, D.; Lau, E. L.; Lewis, G. et al. (2005-05-27). “Amalthea's Density is Less Than That of Water”. Science 308 (5726): 1291–1293. Bibcode2005Sci...308.1291A. doi:10.1126/science.1110422. PMID 15919987. 
  6. ^ Takato, Naruhisa; Bus, Schelte J.; Terada, H.; Pyo, Tae-Soo; Kobayashi, Naoto (2004-12-24). “Detection of a Deep 3-μm Absorption Feature in the Spectrum of Amalthea (JV)”. Science 306 (5705): 2224–2227. Bibcode2004Sci...306.2224T. doi:10.1126/science.1105427. PMID 15618511. 
  7. ^ (観測成果) すばる、木星の近傍を回る衛星の起源に迫る 2015年12月15日閲覧
  8. ^ Simonelli, D. P. (1983-06). “Amalthea: Implications of the temperature observed by Voyager”. Icarus 54 (3): 524–538. Bibcode1983Icar...54..524S. doi:10.1016/0019-1035(83)90244-0. ISSN 0019-1035. 
  9. ^ Burns, Joseph A.; Showalter, Mark R.; Hamilton, Douglas P.; Nicholson, Philip D.; de Pater, Imke; Ockert-Bell, Maureen E.; Thomas, Peter C. (1999-05-14). “The Formation of Jupiter's Faint Rings”. Science 284 (5417): 1146–1150. Bibcode1999Sci...284.1146B. doi:10.1126/science.284.5417.1146. PMID 10325220. 
  10. ^ Fieseler P. D.; Adams O. W.; Vandermey N.; Theilig E. E.; Schimmels K. A.; Lewis G. D.; Ardalan S. M.; Alexander C. J. (2004). “The Galileo star scanner observations at Amalthea”. Icarus 169 (2): 390–401. Bibcode2004Icar..169..390F. doi:10.1016/j.icarus.2004.01.012. 
  11. ^ Another Find for Galileo. Jet Propulsion Laboratory. (2003-04-09). オリジナルの2004-11-04時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20041104163021/http://www.solarsystem.nasa.gov/galileo/news/display.cfm?News_ID=4939 2012年3月27日閲覧。. 
  12. ^ Fieseler P. D. (2003年4月4日). “Objects near Jupiter V (Amalthea)”. IAU Circular. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 2014年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月12日閲覧。 (Bibcode2003IAUC.8107....2F )
  13. ^ Emily Lakdawalla (2013年5月17日). “A serendipitous observation of tiny rocks in Jupiter's orbit by Galileo”. The Planetary Society. 2014年8月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月14日閲覧。

関連事項