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「距離 (競馬)」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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[[競馬]]における'''距離'''(きょり)では、競馬の距離の算出方法について明をする。
本項では、競馬の競走を行う距離について説する。


==概要==
== 競馬の距離 ==
本来、競馬は到達順位を競うものであり、走破時間を争うものではない<ref name="dc_p25">『競馬 サラブレッドの生産および英国競馬小史』p25-26</ref>。したがって重要なのは「どちらが先にゴールしたかを正確に判定すること」にあり、正確に走った距離を計測する必要性は高くはなかった。自然の地形や野山を駆けてゴールを目指すような[[クロスカントリー]]の競走では、走るルートはある程度自由であり、一定の距離というものは存在しない。
{{See also|平地競走}}
競馬の[[競馬の競走|競走]]ごとに分かれており、大まかに短距離、[[マイル]]、中距離、中長距離、長距離と5つに分離されることが多い。[[競走馬]]によって距離の得意、不得意があり、不得意な距離の競走に出走すると凡走するパターンが非常に多い。


やがて競馬が競技として確立し、規則や記録の整備が進むなかで、走破距離の記録も行なわれるようになった。また、野外の野山を駆けるのではなく、常設の競馬場を走るようになると、競走距離を正確に距離を測ったり、一定の距離を確保することが可能となった。
距離の単位には[[メートル法]]あるいは[[ヤード・ポンド法]]を用いるところがある。前者はおもに[[フランス]]、[[イタリア]]、[[ドイツ]]、[[香港]]、[[日本]]など、後者はおもに[[イギリス]]、[[アメリカ合衆国]]、[[アイルランド]]、[[オーストラリア]]などで表記される。


貴族同士が自ら騎乗して勝負を行い、1対1で賭けを行なうというのが競馬の最初期の姿だったが、やがて、賭けの仲立ちをする[[ブックメーカー]]の出現によって、第三者が賭けに参加することが可能になった。また、馬の優劣に応じて[[ハンデキャップ競走|ハンデキャップ]]を与え、どの馬も勝つ可能性が同じぐらいになるように調整する手法が確立すると、第三者による賭けは盛んになった<ref>『アーバンダート百科』p96</ref><ref name="hyaka_ayumi1">『競馬百科』p395-406“競馬のあゆみ”</ref>。
[[負担重量]]の単位も違い、メートル法を用いるところは[[キログラム]]、ヤード・ポンド法を用いるところは[[ポンド (質量)|ポンド]]で表記している。


この結果、興行的な観点から、より早く決着し、より何度も賭けを行うことができるように、競走の距離は次第に短くなってきた。競走馬に対する投資を早期に回収したいという馬主の思惑もこれに拍車をかけた。競馬の誕生・草創の時期から現代をみると、競走距離は常に短縮化の一途をたどっている<ref name="dc_p25"/>。このため、ある時代には「短距離」とみなされたものが、次の時代には「長距離」とみなされる。距離の長短は相対的な概念であり、どのぐらいの距離を「長い・短い」と区分するかは、時代や文化、国や競馬施行団体によって大きく異なる。
== 超短距離 ==
220[[ヤード]]から880ヤードあたりの距離を指す。[[クォーターホース|アメリカンクォーターホース]]かあるいは特別にこの距離に特化したサラブレッドが走る距離である。下の短距離から長距離とは別の競走体系を持ち、基本的に交流はない。'''クォーターマイル'''と呼ばれるように[[競馬の競走格付け|G1]]は1マイルの4分の1、440ヤード(約402[[メートル]])付近に集中している。アメリカ、オーストラリアに相当数存在する。<!--地方競馬の800mや900mといった競走は?-->


たとえば、近代競馬の興りとされる17世紀のイギリスでは、1戦6[[マイル]](約10[[キロメートル]])や7マイル(約11キロメートル)の競走を[[ヒートレース|何回戦か行って勝負]]を決していた。17世紀半ばに創設されたイギリス国内最大の競走であるニューマーケットタウンプレートは、当時の標準的な距離である4マイルの[[ヒートレース|ヒート戦]]だった。18世紀でも5マイルを越えるような競走が当たり前で、中には14マイルの競走の記録も遺されている。イギリスダービーはこの頃に創設されたが、1マイルの競走として創設された[[ダービーステークス|ダービー]]は、当時の基準では『驚くべき短距離』だった。現代のイギリスでは2マイルを越えるような[[平地競走]]自体が稀である<ref name="hyaka_ayumi1"/><ref>『競馬の世界史』p69-88</ref>。
== 短距離 ==
* Sprint(短距離)1000 - 1400 m未満
「'''スプリント(戦)'''」とも呼ばれ、短距離を得意とする競走馬は「'''[[競走馬#スプリンター|スプリンター]]'''」と呼ばれる。おもに1400メートル(7ハロン)までの競走を短距離戦と呼ぶ。短距離GIレースのほとんどは、基本的に1000メートルから1400メートルで行われることが多い。


一方、近年には、世界各地の競走馬を一元的な指標で序列づけようとする試みが様々に行なわれている。その一つが[[ワールド・サラブレッド・ランキング|クラシフィケーション]]である。クラシフィケーションでは、競走馬の評価をするにあたって、距離を5つの区分に分けた。この区分は「1000m~1300m」というように絶対的な距離を指定するので、相対的な距離区分ではない。この方式(※[[#SMILE区分]]節参照)は国際競走の格付にも援用されており、現代では普及した距離区分である。
=== 短距離のG1級競走 ===
*[[ジュライカップ]]
*[[アベイ・ド・ロンシャン賞]]
*[[モーリス・ド・ゲスト賞]]
*[[ブリーダーズカップ・スプリント]]
*[[ゴールデンスリッパーステークス]]
*[[ブラックキャビアライトニング]]
*[[ウィリアム・レイドステークス]]
*[[ドバイゴールデンシャヒーン]]
*[[香港スプリント]]
*[[高松宮記念 (競馬)|高松宮記念]]
*[[スプリンターズステークス]] など


=== 短距離で活躍した競走馬 ===
==競走馬の呼称==
長距離を走破することをstay、stayingなどと言い、長距離戦を耐えぬく能力をもった競走馬を「'''stayer'''('''ステイヤー''')」と表現した。どのぐらいの距離を「長距離」とみなすかは、時代や文化によって様々に異なる。4800メートルの競走を勝っても「ステイヤーではない」と言われる時代もあれば、現代のように2400メートルぐらいの競走でも「ステイヤーだ」と言われることもある。
*[[アグネスワールド]]
*[[ガルチ]]
*[[サイレントウィットネス]]
*[[サクラバクシンオー]]
*[[セイクリッドキングダム]]
*[[トロットスター]]
*[[ヒシアケボノ]]
*[[ブラックキャビア]]
*[[フラワーパーク]]
*[[ロードカナロア]]
*[[ダビルシム]]


一方、短い距離で能力を発揮するものをsprint、'''sprinter'''('''スプリンター'''<ref group="注釈">フランス語やドイツ語ではスプリンターに相当するものをフライヤー(flyer、fliger)と言う。</ref>)と表現した。より長い距離を克服することが是とされる競馬文化圏では、スプリンターは「スタミナの足りない馬」とみなされてきた<ref>『競馬 サラブレッドの生産および英国競馬小史』p45-46“短距離競走”</ref>。この場合も、どのぐらいの距離を「短距離」とするかは時代や文化によって異なる。
== マイル ==
* Mile(マイル)1400 - 1900 m未満
単位のマイル(1マイル=約1609メートル)から由来しており、マイルを得意とする競走馬は「'''[[競走馬#マイラー|マイラー]]'''」と呼ばれる。おもに1400メートル(7ハロン)から1800メートル(9ハロン)までの競走をマイル戦と呼ぶ。なお日本の競馬では1600メートルのみをマイル戦と定義する傾向があり、1400メートルはスプリント、1800メートルは中距離走に分類されている。


例えば日本では1955年から[[JRA賞最優秀短距離馬|最良スプリンター]]という賞を選定してきたが、受賞馬の中には2000メートル前後の距離で最も活躍したようなものも多くいる。これは、当時の価値基準としては2400メートルや3200メートルの競走が根幹的な距離であり、これと比較して2000メートルや1800メートルの競走は短距離であるという考え方に拠っている。
=== マイルのG1級競走 ===
*[[2000ギニー]]
*[[アイリッシュ2000ギニー]]
*[[プール・デッセ・デ・プーラン]]
*[[1000ギニー]]
*[[アイリッシュ1000ギニー]]
*[[プール・デッセ・デ・プーリッシュ]]
*[[セントジェームズパレスステークス]]
*[[クイーンアンステークス]]
*[[サセックスステークス]]
*[[クイーンエリザベス2世ステークス]]
*[[ジャック・ル・マロワ賞]]
*[[ムーラン・ド・ロンシャン賞]]
*[[メトロポリタンハンデキャップ (アメリカ合衆国)|メトロポリタンハンデキャップ ]]
*[[ウッドバインマイルステークス]]
*[[ブリーダーズカップ・マイル]]
*[[香港マイル]]
*[[フェブラリーステークス]]
*[[桜花賞]]
*[[NHKマイルカップ]]
*[[ヴィクトリアマイル]]
*[[安田記念]]
*[[マイルチャンピオンシップ]]
*[[ジャパンカップダート]]
*[[阪神ジュベナイルフィリーズ]]
*[[朝日杯フューチュリティステークス]] など


長距離戦を耐える(staying)能力と、短距離戦を勝つ能力(sprint、スプリント能力)は相反するものではなく、異なる距離でそれぞれの能力を併せ持つとされるものも少なくなかった。
=== マイルで活躍した競走馬 ===
*[[ニホンピロウイナー]]
*[[ニッポーテイオー]]
*[[サッカーボーイ]]
*[[オグリキャップ]]
*[[ダイタクヘリオス]]
*[[ニシノフラワー]]
*[[ヤマニンゼファー]]
*[[ノースフライト]]
*[[トロットサンダー]]
*[[タイキシャトル]]
*[[アドマイヤコジーン]]
*[[エアジハード]]
*[[アグネスデジタル]]
*[[テイエムオーシャン]]
*[[アドマイヤドン]]
*[[デュランダル (競走馬)|デュランダル]]
*[[ダンスインザムード]]
*[[ラインクラフト]]
*[[ダイワメジャー]]
*[[ウオッカ]]
*[[ブエナビスタ (競走馬)|ブエナビスタ]]
*[[アパパネ]]
*[[グランプリボス]]
*[[トランセンド (競走馬)|トランセンド]]
*[[バンブーメモリー]]
*[[ハットトリック (競走馬)|ハットトリック]]
*[[ミエスク]]
*[[ソヴィエトスター]]
*[[リッジウッドパール]]
*[[ゴルディコヴァ]]
*[[ワイズダン]]


これに対して、近年確立した距離区分である「SMILE」では、スプリント距離を1300メートル以下と規定しているので、これに基づけば「スプリンター」は1300メートル以下の距離を得意とする競走馬ということになる。
== 中距離 ==
*Intermediate(中距離)1900 - 2200 m未満
おもに1800メートル(9ハロン)から2200メートル(11ハロン)未満までの競走を中距離戦と呼ぶ。現在世界でもっともスタンダードとされる距離で、ほとんどのタイプの馬が出走しやすいのが特徴。基本的には2000メートル前後のことを中距離といい、2200メートルも世界的に見れば中距離にしてはやや長い部類に入る。


近年では、「ステイヤー」は専ら長距離だけを得意とするもの、「スプリンター」は専ら短距離だけを得意とするもの、とそれぞれ特化したものとして扱われる場合が多い。これらとは別にm1マイルの距離を得意とする「'''マイラー'''」という表現もある。「マイラー」は、その得意とする距離を「1マイル」に限定しているという意味で、長距離・短距離のように相対的な概念ではない。
=== 中距離のG1級競走 ===
*[[プリンスオブウェールズステークス (イギリス)|プリンスオブウェールズステークス]]
*[[エクリプスステークス]]
*[[インターナショナルステークス]]
*[[アイリッシュチャンピオンステークス]]
*[[チャンピオンステークス]]
*[[ガネー賞]]
*[[ジョッケクルブ賞]]
*[[イスパーン賞]]
*[[ケンタッキーダービー]]
*[[プリークネスステークス]]
*[[アーリントンミリオンステークス]]
*[[ブリーダーズカップ・クラシック]]
*[[ドバイワールドカップ]]
*[[コックスプレート]]
*[[香港カップ]]
*[[皐月賞]]
*[[秋華賞]]
*[[天皇賞#天皇賞(秋)|天皇賞(秋)]]


=== 中距離で活躍した競走馬 ===
==距離の表記法==
競馬は、最も初期の形態としては、はっきりとした距離を定めた競走ではなかったと考えられている。つまり、「この丘から向こうの教会の前で」というような形で勝負が行なわれており、綿密に距離を計測して行なうようなものではなかった。
*[[エアグルーヴ]]
*[[ヴィクトワールピサ]]
*[[サイレンススズカ]]
*[[サクラチトセオー]]
*[[シンボリクリスエス]]
*[[ダイワメジャー]]
*[[テイエムオペラオー]]
*[[ネーハイシーザー]]
*[[バブルガムフェロー]]
*[[メイショウサムソン]]
*[[ヤエノムテキ]]


競馬がスポーツとして様々な規則が整備されていく過程で、勝負の形態が一定の距離を争うものに変化した。
== 中長距離 ==
====ヤード・ポンド法採用国====
* Long(長距離)2200 - 2800 m未満
競馬の発祥の地であるイギリスは[[ヤード・ポンド法]]を採用しており、イギリスでは現在もヤード・ポンド法で行なわれている。競馬の競走の距離としては、1[[マイル]]を基準とした様々な距離がある。
おもに2200メートル(11ハロン)から2700メートル(13ハロン)くらいまでの競走を中長距離戦と呼ぶ。中長距離で最もスタンダードとされるのは2400メートル(12ハロン)であり、この距離を'''クラシックディスタンス'''と呼ぶ。フランスの[[凱旋門賞]]やイギリスの[[キングジョージ6世&amp;クイーンエリザベスステークス]]など各国の最高峰の競走が中長距離を採用している。しかし、現在は若干、有力馬の多くが中距離レースに出走することが多くなってきている。


競馬の距離を表記するやりかたとしては、これに[[ハロン (単位)|ハロン]]を併用することで、様々な距離を表現する。同じ距離でも、マイルを主体とするか、ハロンを主体とするかで異なった表記が可能である。
=== 中長距離のG1級競走 ===
*[[ダービーステークス]]
*[[アイリッシュダービー]]
*[[ドイチェスダービー]]
*[[オークス]]
*[[アイリッシュオークス]]
*[[ヨークシャーオークス]]
*[[パリ大賞典]]
*[[ヴェルメイユ賞]]
*[[キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス]]
*[[凱旋門賞]]
*[[ミラノ大賞典]]
*[[ジョッキークラブ大賞]]
*[[バーデン大賞]]
*[[ベルモントステークス]]
*[[カナディアンインターナショナルステークス]]
*[[ブリーダーズカップ・ターフ]]
*[[ドバイシーマクラシック]]
*[[香港ヴァーズ]]
*[[優駿牝馬]]
*[[東京優駿]]
*[[宝塚記念]]
*[[エリザベス女王杯]]
*[[ジャパンカップ]]
*[[有馬記念]] など


*1マイルは1760ヤード
=== 中長距離で活躍した競走馬 ===
*1ハロンは220ヤード 8ハロン=1760ヤード=1マイル
*[[カツラギエース]]
*1ヤードは30フィート
*[[タマモクロス]]
*[[イナリワン]]
*[[メジロパーマー]]
*[[メジロマックイーン]]
*[[ビワハヤヒデ]]
*[[マヤノトップガン]]
*[[ダンスパートナー]]
*[[メジロドーベル]]
*[[グラスワンダー]]
*[[テイエムオペラオー]]
*[[ヒシミラクル]]
*[[アドマイヤグルーヴ]]
*[[タップダンスシチー]]
*[[スイープトウショウ]]
*[[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]]
*[[アドマイヤムーン]]
*[[ダイワスカーレット]]
*[[ドリームジャーニー]]
*[[オルフェーヴル]]
*[[シンボリルドルフ]]
*[[ダイナガリバー]]
*[[トウカイテイオー]]
*[[ナリタブライアン]]
*[[スペシャルウィーク]]
*[[ジャングルポケット]]
*[[ゼンノロブロイ]]
*[[メイショウサムソン]]
*[[ウオッカ]]
*[[ブエナビスタ (競走馬)|ブエナビスタ]]
*[[ジェンティルドンナ]]
*[[メジロデュレン]]
*[[オグリキャップ]]
*[[サクラローレル]]
*[[マンハッタンカフェ]]
*[[シンボリクリスエス]]
*[[ゴールドシップ]]
*[[ミホシンザン]]
*[[スーパークリーク]]
*[[モンジュー]]
*[[コタシャーン]]


====メートル法採用国====
== 長距離 ==
一方、フランス、ドイツや日本などメートル法採用の国ではレースの距離はメートル法で規定する。
*Extended(超長距離)2800 m以上
長距離を得意とする馬は「'''[[競走馬#ステイヤー|ステイヤー]]'''」と呼ばれる。おもに2800メートル(14ハロン)以上の競走を長距離戦と呼び、G1ではステイヤーよりもオールラウンダーの活躍が目立っていたが、現代では競走馬のスペシャリスト化によってステイヤーが活躍している。世界的に主流距離から外れていくなか、オーストラリアの[[メルボルンカップ]]のようにまだ権威や賞金が高い競走もある。


それぞれ、メートル法を採用するまではヤード・ポンド法で競走を行っていた時代もある。
=== 長距離のG1級競走 ===
*[[セントレジャー]]
*[[アイリッシュセントレジャー]]
*[[ロワイヤルオーク賞]]
*[[カドラン賞]]
*[[ゴールドカップ|アスコットゴールドカップ]]
*[[グッドウッドカップ]]
*[[ドンカスターカップ]]
*[[メルボルンカップ]]
*[[天皇賞#天皇賞(春)|天皇賞(春)]]
*[[菊花賞]]


====ヤード・ポンドとメートルの換算====
=== 長距離で活躍した競走馬 ===
1マイルを正確にメートル換算すると1609.344メートルであるが、メートル法採用国の多くでは、1600メートルの競走を「1マイル」と称している。また、メートル法採用国の競走をヤードポンド法採用国で紹介する際にも、しばしば1600メートル=1マイルと概算で換算して紹介される場合が多い。
*[[イェーツ]]
*[[カイフタラ]]
*[[グリーングラス]]
*[[シンボリルドルフ]]
*[[スーパークリーク]]
*[[テイエムオペラオー]]
*[[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]]
*[[デルタブルース]]
*[[ヒシミラクル]]
*[[ビワハヤヒデ]]
*[[ホリスキー]]
*[[マカイビーディーヴァ]]
*[[マヤノトップガン]]
*[[マンハッタンカフェ]]
*[[ミホシンザン]]
*[[メジロブライト]]
*[[メジロマックイーン]]
*[[ライスシャワー]]
*[[Marsyas]]
*[[Westerner]]


この場合、厳密には、1マイルは1760ヤード、1600メートルは1750ヤードに相当するので、10ヤード(=30フィート=約9.1メートル)の誤差がある。1600メートルは約0.9942マイルである。
== その他 ==
ごくまれに距離を選ばず活躍する競走馬が存在する。これらの競走馬は「'''オールラウンダー'''」と呼ばれ、数々の大レースを制する名馬が多い。以下に挙げる馬は距離を選ばず活躍した馬である。なお、今日のように距離適性の概念ができる以前は、マイルから4000mくらいまでをこなす馬が多数存在した。例:[[グラディアトゥール]](マイルから6400mまで)。
*[[シンボリルドルフ]] - 2000m~3200mまで
*[[テイエムオペラオー]] - 2000m~3200mまで
*[[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]] - 2000m~3200mまで
*[[メジロマックイーン]] - 2200m~3200mまで
*[[イナリワン]] - 2200m~3200mまで
*[[ナリタブライアン]] - 1600m~3000mまで
*[[スペシャルウィーク]] - 2000m~3200mまで
*[[マヤノトップガン]] - 2200m~3200mまで
*[[メイショウサムソン]] - 2000m~3200mまで
*[[オルフェーヴル]] - 2000m~3000mまで
*[[タマモクロス]] - 2000m~3200mまで
*[[スーパークリーク]] - 2000m~3200mまで
*[[ビワハヤヒデ]] - 2200m~3200mまで
*[[ヒシミラクル]] - 2200m~3200mまで
*[[ゴールドシップ]] - 2000m~3000mまで
*[[ミホシンザン]] - 2000m~3200mまで
*[[エアシャカール]] - 2000m~3000mまで
*[[サクラスターオー]] - 2000m~3000mまで
*[[セイウンスカイ]] - 2000m~3000mまで


== 障害競走 ==
====表記例====
{| class="wikitable"
{{節stub}}
!マイル!!英語表記の例!!ハロン!!メートル<br>(概算)!!メートル<br>(少数第2位)!!備考
|-
||6マイル||6 miles||48ハロン||9600m||9656.06m||
|-
||5マイル||5 miles||40ハロン||8000m||8046.72m||
|-
||4マイル||4 miles||32ハロン||6400m||6437.38m||
|-
||3マイル||3 miles||24ハロン||4800m||4828.03m||
|-
||2マイル1/2||2 miles and a half、<br>2-1/2 milesなど||20ハロン||4000m||4023.36m||
|-
||2マイル1/4||2 miles and a quater、<br>2-1/4 milesなど||18ハロン||3600m||3621.02m||
|-
||2マイル1/8||2 miles and a furlong、<br>2-1/8 milesなど||17ハロン||3400m||3419.86m||かつて日本では「二哩一分」と言った。
|-
||2マイル||2 miles||16ハロン||3200m||3218.69m||
|-
||1マイル3/4||a mile and 3 quaters<br>1 mile and 6 furlongs など||14ハロン||2800m||2816.35m||
|-
||1マイル1/2||a mile and a half<br>1.5miles など||12ハロン||2400m||2414.02m||
|-
||1マイル1/4||a mile and a quater||10ハロン||2000m||2011.68m||
|-
||1マイル1/8||9 furlongs||9ハロン||1800m||1810.51m||かつて日本では「一哩一分」と言った。
|-
||1マイル||a mile||8ハロン||1600m||1609.34m||
|-
||3/4マイル||6 furlongs||6ハロン||1200m||1207.01m||
|-
||5/8マイル||5 furlongs||5ハロン||1000m||1005.84m||
|-
|}


このほか日本では明治時代などには[[尺貫法]]に基づき[[町 (単位)|町]]や、[[間]]が用いられていた時期もある。
== ばんえい競走 ==

[[ばんえい競走]]は日本独自の競走であるが、公式競技([[帯広競馬場]]1か所のみ)では一律200[[メートル]]である。
==平地競走==
さまざまな競走を分類して、長距離や短距離に区分する方法は、時代や文化によって異なる。国内の競走が全体的に短い距離に傾倒している国もあれば、長い距離に傾倒している国もある。数の上では短い距離が多くても、上級戦・大レースは長距離で行うような場合もある。

===平地競走の距離の区分===
====ドサージュ理論のBICSP====
血統理論の一つであるドサージュ理論では、競走馬を短距離から長距離まで5区分に類型化する。詳しくは、[[競走馬の血統#スティーヴ・ローマンの改良型ドサージュ理論]]を参照。

====日本におけるかつての区分====
日本での近代競馬は、軍馬育成の名目で創設された。このため、競走馬には長距離かつ高負荷を与えて選抜することが求められてきた。戦後まもない時期には馬不足から一時的にこうした制約が廃されたが、後に'''競走距離設定基準'''が設けられ、競走馬の適正に応じつつ、競走馬の生産育成を誘導する施策が取られた。これは、馬の成長とともに徐々に距離を伸ばしていくことを目的に設定されている。

2013年現在の競馬法施行令(1948年に制定されたもの)では、平地競走は600メートル以上で行うこととされ、最低距離だけが定められている。中央競馬([[JRA]])の競馬施行規程では、2歳馬は800メートル以上、3歳以上の馬は1000メートル以上とされている。

1971年当時の設定基準では、
*短距離 - 1200メートル以上、1600メートル以下
*中距離 - 1600メートル超、2200メートル以下
*長距離 - 2200メートル超
とされている。これらの分類に基づき、全体の平均が1800メートルになるように競馬番組が構成された。

一方、出走馬の距離割増手当は、2000メートル以上の競走で交付され、2000メートル、2000メートル超2200メートル以下、2200メートル超の3区分となっている。

====SMILE区分====
近年、[[ワールド・サラブレッド・ランキング|クラシフィケーション]]という手法で、直接対戦していないものも含めて、各国の幅広い競走馬の能力を一元的に評価しようという試みが行われた。クラシフィケーションでは、競走馬の能力を距離別に大別して数値化しようとする。クラシフィケーションは様々な変遷の末に、現在は次のように距離を5つに区分している。
*S Sprint(スプリント) - 1000メートル~1300メートル
*M Mile(マイル) - 1301メートル~1899メートル
*I Intermediate(インターミディエイト) - 1900メートル~2100メートル
*L Long(ロング) - 2101メートル~2700メートル
*E Extended(エクステンデッド) - 2701メートル以上
これらの頭文字をとって'''SMILE'''と称される。

SMILE区分では、日本の競走距離設定基準では「中距離」に区分される1600~1899メートルは「マイル」であり、一方で中距離の2101~2200メートルは「ロング」に相当する。これは、距離区分が時代や文化によって異なる典型例といえる。

SMILE区分は国際クラシフィケーションで採用されており、[[競馬の競走格付け|競走の格付け]]にも利用されることから、現代では公式化されて普及した距離区分といえる<ref>日本でもJRAをはじめ、国際グレードを取得した競走ではSMILE区分に基づくプレレーティングやレーティングが行われている。[http://www.jra.go.jp/datafile/ranking/g1/2013/akiten.html 2013年天皇賞(秋)のプレレーティング]2013年11月25日閲覧。</ref>。

====「超短距離」====
日本の地方競馬では、2011年から「超短距離」と称して1000メートル以下の競走を組み合わせた「スーパースプリントシリーズ」を開催している<ref>[http://www.keiba.go.jp/topics/2011/0425.html 2011年4月25日付]“超短距離[1ターン]、白熱の新シリーズ 誕生 地方競馬 スーパースプリントシリーズを実施”2013年11月25日閲覧。</ref>。

ここで言う「超短距離」の定義は、それぞれの競馬場で、コーナー(カーブ)を1度だけ通過して施行できる最短距離の競走とされている。この「超短距離」という概念は興行上の宣伝文句であり、広く普及した距離区分とは言いがたい。

この定義に従うと、「超短距離」は、名古屋競馬場では800メートル、川崎競馬場では900メートル、荒尾競馬場では950メートル、門別競馬場や船橋競馬場では1000メートルに相当する。しかし、この定義は競馬場の施設に依存する相対的な距離区分である。たとえばイギリスのニューマーケット競馬場にこの定義を当てはめると、2000メートル級の「超短距離」競走が可能になる。

===そのほかの用語===
*クラシック距離(クラシック・ディスタンス) - イギリスダービーに代表されるクラシック競走で採用されている1マイル半=12ハロン(約2400メートル)のこと。アメリカではクラシック戦が主に9ハロンから10ハロンで行われるので、アメリカでは9~10ハロンの距離を表す。

*チャンピオン距離(チャンピオン・ディスタンス) - [[チャンピオンステークス]]に代表される、1マイル1/4=10ハロン(約2000メートル)のこと。「チャンピオンを決める基本的な距離」の意味で6ハロン、1マイル、10ハロン、12ハロンなどの根幹的な距離の総称として用いられることもある。

===距離と走破タイム===
同じ距離で行われたからといって、同距離の競走を2つ取り出してその優劣を比較することは困難である。

たとえば、走破距離が等しくとも、その競走を行う競馬場ごとにコースの形態は大きく異なって千差万別である。通過するコーナー(カーブ)の緩急や回数、コースの高低差は、競走馬に与える負荷を大きく変動させる。たとえば、イギリスダービーを行うエプソム競馬場の12ハロン(イギリスダービーの距離)コースでは、道中に40メートルを越す高低差がある。一方、フランスダービーを行うシャンティイ競馬場の道中の高低差は10メートルほどである。日本ダービーを行う東京競馬場の高低差は2メートルである。したがって、単に同じ2400メートルであるというだけでこれらの競馬場の走破タイムを同列に比較することは難しい。

競走馬の走らせ方も異なっている。特に競馬発祥地のイギリスで顕著だが、長い距離を走る場合には、序盤から終盤まではキャンター([[歩法 (馬術)#駆歩|駆歩]])という、ほどほどの速力で走り、終盤だけギャロップ([[歩法 (馬術)#襲歩|襲歩]])で走るのがふつうであった。このやり方は「走破タイム」は全く顧みておらず、あくまでも「到達順位」を争うためのものであった。したがって、19世紀までは、タイムの計測自体がほとんど行われていなかったし、その後も正確なタイムの測定に対するニーズは低かった。優勝馬にしか賞金が出ないような競走の場合、勝負付けが済んでしまった後は全速力を出す意味が無いので、勝ち馬も2着以下のものも、ゴール前ではキャンターで済ますような例は、現代でもよくみられる<ref name="ud_p170">『アーバンダート百科』p170</ref><ref group="注釈">一方、日本では、騎手は最後まで競走馬を全速力で走らせることが規則で定められており、こうした騎乗法は咎を受ける可能性がある。(「競馬施行規約」第65条 次の各号のいずれかに該当する調教師又は騎手に対して、期間を定めて、調教又は騎乗を停止する。(1)正当の理由がないのに、競走において馬の全能力を発揮させなかった騎手)</ref>。

競馬は第一義には到達順位を競うものであり、その過程では様々な不確定要素が影響を与え合う。最も上級の競走馬を集めた競走と、低劣な競走馬を集めた競走で、後者のほうが走破タイムが早いということは往々に起こりうる。そのため、競馬では一般的に、走破所要タイムよりも、どんな相手と争ったかが重視される傾向にある<ref group="注釈">例外的に、「時間」を相手に争うような競走が行われた例もある。18世紀頃のイギリスでは、1000マイルを1000時間以内に走破できるかを賭けたり、毎日100マイル走るのを1ヶ月継続できるかを賭けるような競走も行われた。19世紀のアメリカでは[[レキシントン (競走馬)|レキシントン]]がライバルのルコントが樹立した世界レコードを更新できるかという単走の競走が行われたこともある。</ref>。

====助走距離====
実際の競馬の競走では、公式発表されている距離よりも、実際にはわずかに長い距離を走ることが多い。この距離は助走距離と呼ばれており、競走馬が静止状態からスタートして加速するまでの数メートルに設定されている<ref group="注釈">競馬場や距離など諸条件によって変動すると考えられているが、助走距離についてはいちいち公表されないので正確にはわからない。</ref><ref name="ud_p170"/>。

助走距離を設定せず、スターティングゲートから即座に距離計測が開始されるような競馬場もある。たとえば同じ2400メートルでも、助走距離を設定せず速度ゼロからの計時と、5メートルの助走距離を走って加速した状態から始まる2400メートル(つまりこの場合実際には2405メートルを走り、後半の2400メートルの走破時計を計測している)とでは、走破時計に差が出るのは自明である<ref name="ud_p170"/>。

==障害競走==
*日本では、競馬施行規程により[[障害競走]]の最低距離は2000メートルと定められている。

*障害競走が盛んなイギリスやアイルランドでは、2マイル(約3218メートル)以上で行われるのが基本である。特に知られている競走である[[グランドナショナル]]は4マイル4ハロン(約7242メートル)である。

*フランスでは障害競走は最低距離が3500メートルとなっており、4000メートル級の競走も珍しくない。クロスカントリータイプの競走の場合には4000メートルを超える。特に著名な競走としては、賞金1億円を超える[[パリ大障害]]が5800メートルなどとなっている。

==ばんえい競馬==
[[ばんえい競走]]は日本独自の競走である。2013年現在は、公式競技([[帯広競馬場]]1か所のみ)では一律200[[メートル]]である。

==繋駕競走・速歩競走==
[[繋駕速歩競走|繋駕競走]]・[[騎乗速歩競走|速歩競走]]では、距離とともに「単位距離の速度」も重視される。
*フランス国内で最大の競馬の競走は繋駕速歩の[[アメリカ賞]]とされている。アメリカ賞は2700メートルで行われる。
*日本国内でかつて行われていた時代には、4000メートル程度の競走が主流だった。
*繋駕競走が盛んな国の一つであるニュージーランドでは、3200メートル(約2マイル)の[[:en:New Zealand Trotting Cup|ニュージーランド・トロッティングカップ]]や2700メートルの[[:en:Great Northern Derby|グレートノーザンダービー]]のように、1マイル半から2マイルの高額賞金の大レースがたくさん行われている。競走全体としては1マイル以上の距離で開催される。詳しくは[[:en:Harness racing in New Zealand]]参照。

詳細は[[:en:Harness racing]]参照。

==脚注・出典==
===脚注===
<references group="注釈"/>
===参考文献===
*『競馬百科』日本中央競馬会・編、みんと・刊、1976
*『サラブレッドの誕生』,山野浩一,朝日選書,1990
*『アーバンダート百科』山野浩一・著,国書刊行会・刊,2003
*『馬の世界史』,木村凌ニ,講談社現代新書,2001
*『競馬の世界史』ロジャー・ロングリグ・著、原田俊治・訳、日本中央競馬会弘済会・刊、1976
*『競馬 サラブレッドの生産および英国競馬小史』デニス・クレイグ著、マイルズ・ネーピア改訂、佐藤正人訳、中央競馬ピーアールセンター刊、1986
===出典===
<references />

==関連項目==
*[[競馬番組]]


== 繋駕速歩競走 ==
フランスを中心に長距離の競走も行われるが、大半はマイルで行われる。


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2013年11月26日 (火) 00:20時点における版

本項では、競馬の競走を行う距離について概説する。

概要

本来、競馬は到達順位を競うものであり、走破時間を争うものではない[1]。したがって重要なのは「どちらが先にゴールしたかを正確に判定すること」にあり、正確に走った距離を計測する必要性は高くはなかった。自然の地形や野山を駆けてゴールを目指すようなクロスカントリーの競走では、走るルートはある程度自由であり、一定の距離というものは存在しない。

やがて競馬が競技として確立し、規則や記録の整備が進むなかで、走破距離の記録も行なわれるようになった。また、野外の野山を駆けるのではなく、常設の競馬場を走るようになると、競走距離を正確に距離を測ったり、一定の距離を確保することが可能となった。

貴族同士が自ら騎乗して勝負を行い、1対1で賭けを行なうというのが競馬の最初期の姿だったが、やがて、賭けの仲立ちをするブックメーカーの出現によって、第三者が賭けに参加することが可能になった。また、馬の優劣に応じてハンデキャップを与え、どの馬も勝つ可能性が同じぐらいになるように調整する手法が確立すると、第三者による賭けは盛んになった[2][3]

この結果、興行的な観点から、より早く決着し、より何度も賭けを行うことができるように、競走の距離は次第に短くなってきた。競走馬に対する投資を早期に回収したいという馬主の思惑もこれに拍車をかけた。競馬の誕生・草創の時期から現代をみると、競走距離は常に短縮化の一途をたどっている[1]。このため、ある時代には「短距離」とみなされたものが、次の時代には「長距離」とみなされる。距離の長短は相対的な概念であり、どのぐらいの距離を「長い・短い」と区分するかは、時代や文化、国や競馬施行団体によって大きく異なる。

たとえば、近代競馬の興りとされる17世紀のイギリスでは、1戦6マイル(約10キロメートル)や7マイル(約11キロメートル)の競走を何回戦か行って勝負を決していた。17世紀半ばに創設されたイギリス国内最大の競走であるニューマーケットタウンプレートは、当時の標準的な距離である4マイルのヒート戦だった。18世紀でも5マイルを越えるような競走が当たり前で、中には14マイルの競走の記録も遺されている。イギリスダービーはこの頃に創設されたが、1マイルの競走として創設されたダービーは、当時の基準では『驚くべき短距離』だった。現代のイギリスでは2マイルを越えるような平地競走自体が稀である[3][4]

一方、近年には、世界各地の競走馬を一元的な指標で序列づけようとする試みが様々に行なわれている。その一つがクラシフィケーションである。クラシフィケーションでは、競走馬の評価をするにあたって、距離を5つの区分に分けた。この区分は「1000m~1300m」というように絶対的な距離を指定するので、相対的な距離区分ではない。この方式(※#SMILE区分節参照)は国際競走の格付にも援用されており、現代では普及した距離区分である。

競走馬の呼称

長距離を走破することをstay、stayingなどと言い、長距離戦を耐えぬく能力をもった競走馬を「stayerステイヤー)」と表現した。どのぐらいの距離を「長距離」とみなすかは、時代や文化によって様々に異なる。4800メートルの競走を勝っても「ステイヤーではない」と言われる時代もあれば、現代のように2400メートルぐらいの競走でも「ステイヤーだ」と言われることもある。

一方、短い距離で能力を発揮するものをsprint、sprinterスプリンター[注釈 1])と表現した。より長い距離を克服することが是とされる競馬文化圏では、スプリンターは「スタミナの足りない馬」とみなされてきた[5]。この場合も、どのぐらいの距離を「短距離」とするかは時代や文化によって異なる。

例えば日本では1955年から最良スプリンターという賞を選定してきたが、受賞馬の中には2000メートル前後の距離で最も活躍したようなものも多くいる。これは、当時の価値基準としては2400メートルや3200メートルの競走が根幹的な距離であり、これと比較して2000メートルや1800メートルの競走は短距離であるという考え方に拠っている。

長距離戦を耐える(staying)能力と、短距離戦を勝つ能力(sprint、スプリント能力)は相反するものではなく、異なる距離でそれぞれの能力を併せ持つとされるものも少なくなかった。

これに対して、近年確立した距離区分である「SMILE」では、スプリント距離を1300メートル以下と規定しているので、これに基づけば「スプリンター」は1300メートル以下の距離を得意とする競走馬ということになる。

近年では、「ステイヤー」は専ら長距離だけを得意とするもの、「スプリンター」は専ら短距離だけを得意とするもの、とそれぞれ特化したものとして扱われる場合が多い。これらとは別にm1マイルの距離を得意とする「マイラー」という表現もある。「マイラー」は、その得意とする距離を「1マイル」に限定しているという意味で、長距離・短距離のように相対的な概念ではない。

距離の表記法

競馬は、最も初期の形態としては、はっきりとした距離を定めた競走ではなかったと考えられている。つまり、「この丘から向こうの教会の前で」というような形で勝負が行なわれており、綿密に距離を計測して行なうようなものではなかった。

競馬がスポーツとして様々な規則が整備されていく過程で、勝負の形態が一定の距離を争うものに変化した。

ヤード・ポンド法採用国

競馬の発祥の地であるイギリスはヤード・ポンド法を採用しており、イギリスでは現在もヤード・ポンド法で行なわれている。競馬の競走の距離としては、1マイルを基準とした様々な距離がある。

競馬の距離を表記するやりかたとしては、これにハロンを併用することで、様々な距離を表現する。同じ距離でも、マイルを主体とするか、ハロンを主体とするかで異なった表記が可能である。

  • 1マイルは1760ヤード
  • 1ハロンは220ヤード 8ハロン=1760ヤード=1マイル
  • 1ヤードは30フィート

メートル法採用国

一方、フランス、ドイツや日本などメートル法採用の国ではレースの距離はメートル法で規定する。

それぞれ、メートル法を採用するまではヤード・ポンド法で競走を行っていた時代もある。

ヤード・ポンドとメートルの換算

1マイルを正確にメートル換算すると1609.344メートルであるが、メートル法採用国の多くでは、1600メートルの競走を「1マイル」と称している。また、メートル法採用国の競走をヤードポンド法採用国で紹介する際にも、しばしば1600メートル=1マイルと概算で換算して紹介される場合が多い。

この場合、厳密には、1マイルは1760ヤード、1600メートルは1750ヤードに相当するので、10ヤード(=30フィート=約9.1メートル)の誤差がある。1600メートルは約0.9942マイルである。

表記例

マイル 英語表記の例 ハロン メートル
(概算)
メートル
(少数第2位)
備考
6マイル 6 miles 48ハロン 9600m 9656.06m
5マイル 5 miles 40ハロン 8000m 8046.72m
4マイル 4 miles 32ハロン 6400m 6437.38m
3マイル 3 miles 24ハロン 4800m 4828.03m
2マイル1/2 2 miles and a half、
2-1/2 milesなど
20ハロン 4000m 4023.36m
2マイル1/4 2 miles and a quater、
2-1/4 milesなど
18ハロン 3600m 3621.02m
2マイル1/8 2 miles and a furlong、
2-1/8 milesなど
17ハロン 3400m 3419.86m かつて日本では「二哩一分」と言った。
2マイル 2 miles 16ハロン 3200m 3218.69m
1マイル3/4 a mile and 3 quaters
1 mile and 6 furlongs など
14ハロン 2800m 2816.35m
1マイル1/2 a mile and a half
1.5miles など
12ハロン 2400m 2414.02m
1マイル1/4 a mile and a quater 10ハロン 2000m 2011.68m
1マイル1/8 9 furlongs 9ハロン 1800m 1810.51m かつて日本では「一哩一分」と言った。
1マイル a mile 8ハロン 1600m 1609.34m
3/4マイル 6 furlongs 6ハロン 1200m 1207.01m
5/8マイル 5 furlongs 5ハロン 1000m 1005.84m

このほか日本では明治時代などには尺貫法に基づきや、が用いられていた時期もある。

平地競走

さまざまな競走を分類して、長距離や短距離に区分する方法は、時代や文化によって異なる。国内の競走が全体的に短い距離に傾倒している国もあれば、長い距離に傾倒している国もある。数の上では短い距離が多くても、上級戦・大レースは長距離で行うような場合もある。

平地競走の距離の区分

ドサージュ理論のBICSP

血統理論の一つであるドサージュ理論では、競走馬を短距離から長距離まで5区分に類型化する。詳しくは、競走馬の血統#スティーヴ・ローマンの改良型ドサージュ理論を参照。

日本におけるかつての区分

日本での近代競馬は、軍馬育成の名目で創設された。このため、競走馬には長距離かつ高負荷を与えて選抜することが求められてきた。戦後まもない時期には馬不足から一時的にこうした制約が廃されたが、後に競走距離設定基準が設けられ、競走馬の適正に応じつつ、競走馬の生産育成を誘導する施策が取られた。これは、馬の成長とともに徐々に距離を伸ばしていくことを目的に設定されている。

2013年現在の競馬法施行令(1948年に制定されたもの)では、平地競走は600メートル以上で行うこととされ、最低距離だけが定められている。中央競馬(JRA)の競馬施行規程では、2歳馬は800メートル以上、3歳以上の馬は1000メートル以上とされている。

1971年当時の設定基準では、

  • 短距離 - 1200メートル以上、1600メートル以下
  • 中距離 - 1600メートル超、2200メートル以下
  • 長距離 - 2200メートル超

とされている。これらの分類に基づき、全体の平均が1800メートルになるように競馬番組が構成された。

一方、出走馬の距離割増手当は、2000メートル以上の競走で交付され、2000メートル、2000メートル超2200メートル以下、2200メートル超の3区分となっている。

SMILE区分

近年、クラシフィケーションという手法で、直接対戦していないものも含めて、各国の幅広い競走馬の能力を一元的に評価しようという試みが行われた。クラシフィケーションでは、競走馬の能力を距離別に大別して数値化しようとする。クラシフィケーションは様々な変遷の末に、現在は次のように距離を5つに区分している。

  • S Sprint(スプリント) - 1000メートル~1300メートル
  • M Mile(マイル) - 1301メートル~1899メートル
  • I Intermediate(インターミディエイト) - 1900メートル~2100メートル
  • L Long(ロング) - 2101メートル~2700メートル
  • E Extended(エクステンデッド) - 2701メートル以上

これらの頭文字をとってSMILEと称される。

SMILE区分では、日本の競走距離設定基準では「中距離」に区分される1600~1899メートルは「マイル」であり、一方で中距離の2101~2200メートルは「ロング」に相当する。これは、距離区分が時代や文化によって異なる典型例といえる。

SMILE区分は国際クラシフィケーションで採用されており、競走の格付けにも利用されることから、現代では公式化されて普及した距離区分といえる[6]

「超短距離」

日本の地方競馬では、2011年から「超短距離」と称して1000メートル以下の競走を組み合わせた「スーパースプリントシリーズ」を開催している[7]

ここで言う「超短距離」の定義は、それぞれの競馬場で、コーナー(カーブ)を1度だけ通過して施行できる最短距離の競走とされている。この「超短距離」という概念は興行上の宣伝文句であり、広く普及した距離区分とは言いがたい。

この定義に従うと、「超短距離」は、名古屋競馬場では800メートル、川崎競馬場では900メートル、荒尾競馬場では950メートル、門別競馬場や船橋競馬場では1000メートルに相当する。しかし、この定義は競馬場の施設に依存する相対的な距離区分である。たとえばイギリスのニューマーケット競馬場にこの定義を当てはめると、2000メートル級の「超短距離」競走が可能になる。

そのほかの用語

  • クラシック距離(クラシック・ディスタンス) - イギリスダービーに代表されるクラシック競走で採用されている1マイル半=12ハロン(約2400メートル)のこと。アメリカではクラシック戦が主に9ハロンから10ハロンで行われるので、アメリカでは9~10ハロンの距離を表す。
  • チャンピオン距離(チャンピオン・ディスタンス) - チャンピオンステークスに代表される、1マイル1/4=10ハロン(約2000メートル)のこと。「チャンピオンを決める基本的な距離」の意味で6ハロン、1マイル、10ハロン、12ハロンなどの根幹的な距離の総称として用いられることもある。

距離と走破タイム

同じ距離で行われたからといって、同距離の競走を2つ取り出してその優劣を比較することは困難である。

たとえば、走破距離が等しくとも、その競走を行う競馬場ごとにコースの形態は大きく異なって千差万別である。通過するコーナー(カーブ)の緩急や回数、コースの高低差は、競走馬に与える負荷を大きく変動させる。たとえば、イギリスダービーを行うエプソム競馬場の12ハロン(イギリスダービーの距離)コースでは、道中に40メートルを越す高低差がある。一方、フランスダービーを行うシャンティイ競馬場の道中の高低差は10メートルほどである。日本ダービーを行う東京競馬場の高低差は2メートルである。したがって、単に同じ2400メートルであるというだけでこれらの競馬場の走破タイムを同列に比較することは難しい。

競走馬の走らせ方も異なっている。特に競馬発祥地のイギリスで顕著だが、長い距離を走る場合には、序盤から終盤まではキャンター(駆歩)という、ほどほどの速力で走り、終盤だけギャロップ(襲歩)で走るのがふつうであった。このやり方は「走破タイム」は全く顧みておらず、あくまでも「到達順位」を争うためのものであった。したがって、19世紀までは、タイムの計測自体がほとんど行われていなかったし、その後も正確なタイムの測定に対するニーズは低かった。優勝馬にしか賞金が出ないような競走の場合、勝負付けが済んでしまった後は全速力を出す意味が無いので、勝ち馬も2着以下のものも、ゴール前ではキャンターで済ますような例は、現代でもよくみられる[8][注釈 2]

競馬は第一義には到達順位を競うものであり、その過程では様々な不確定要素が影響を与え合う。最も上級の競走馬を集めた競走と、低劣な競走馬を集めた競走で、後者のほうが走破タイムが早いということは往々に起こりうる。そのため、競馬では一般的に、走破所要タイムよりも、どんな相手と争ったかが重視される傾向にある[注釈 3]

助走距離

実際の競馬の競走では、公式発表されている距離よりも、実際にはわずかに長い距離を走ることが多い。この距離は助走距離と呼ばれており、競走馬が静止状態からスタートして加速するまでの数メートルに設定されている[注釈 4][8]

助走距離を設定せず、スターティングゲートから即座に距離計測が開始されるような競馬場もある。たとえば同じ2400メートルでも、助走距離を設定せず速度ゼロからの計時と、5メートルの助走距離を走って加速した状態から始まる2400メートル(つまりこの場合実際には2405メートルを走り、後半の2400メートルの走破時計を計測している)とでは、走破時計に差が出るのは自明である[8]

障害競走

  • 日本では、競馬施行規程により障害競走の最低距離は2000メートルと定められている。
  • 障害競走が盛んなイギリスやアイルランドでは、2マイル(約3218メートル)以上で行われるのが基本である。特に知られている競走であるグランドナショナルは4マイル4ハロン(約7242メートル)である。
  • フランスでは障害競走は最低距離が3500メートルとなっており、4000メートル級の競走も珍しくない。クロスカントリータイプの競走の場合には4000メートルを超える。特に著名な競走としては、賞金1億円を超えるパリ大障害が5800メートルなどとなっている。

ばんえい競馬

ばんえい競走は日本独自の競走である。2013年現在は、公式競技(帯広競馬場1か所のみ)では一律200メートルである。

繋駕競走・速歩競走

繋駕競走速歩競走では、距離とともに「単位距離の速度」も重視される。

  • フランス国内で最大の競馬の競走は繋駕速歩のアメリカ賞とされている。アメリカ賞は2700メートルで行われる。
  • 日本国内でかつて行われていた時代には、4000メートル程度の競走が主流だった。
  • 繋駕競走が盛んな国の一つであるニュージーランドでは、3200メートル(約2マイル)のニュージーランド・トロッティングカップや2700メートルのグレートノーザンダービーのように、1マイル半から2マイルの高額賞金の大レースがたくさん行われている。競走全体としては1マイル以上の距離で開催される。詳しくはen:Harness racing in New Zealand参照。

詳細はen:Harness racing参照。

脚注・出典

脚注

  1. ^ フランス語やドイツ語ではスプリンターに相当するものをフライヤー(flyer、fliger)と言う。
  2. ^ 一方、日本では、騎手は最後まで競走馬を全速力で走らせることが規則で定められており、こうした騎乗法は咎を受ける可能性がある。(「競馬施行規約」第65条 次の各号のいずれかに該当する調教師又は騎手に対して、期間を定めて、調教又は騎乗を停止する。(1)正当の理由がないのに、競走において馬の全能力を発揮させなかった騎手)
  3. ^ 例外的に、「時間」を相手に争うような競走が行われた例もある。18世紀頃のイギリスでは、1000マイルを1000時間以内に走破できるかを賭けたり、毎日100マイル走るのを1ヶ月継続できるかを賭けるような競走も行われた。19世紀のアメリカではレキシントンがライバルのルコントが樹立した世界レコードを更新できるかという単走の競走が行われたこともある。
  4. ^ 競馬場や距離など諸条件によって変動すると考えられているが、助走距離についてはいちいち公表されないので正確にはわからない。

参考文献

  • 『競馬百科』日本中央競馬会・編、みんと・刊、1976
  • 『サラブレッドの誕生』,山野浩一,朝日選書,1990
  • 『アーバンダート百科』山野浩一・著,国書刊行会・刊,2003
  • 『馬の世界史』,木村凌ニ,講談社現代新書,2001
  • 『競馬の世界史』ロジャー・ロングリグ・著、原田俊治・訳、日本中央競馬会弘済会・刊、1976
  • 『競馬 サラブレッドの生産および英国競馬小史』デニス・クレイグ著、マイルズ・ネーピア改訂、佐藤正人訳、中央競馬ピーアールセンター刊、1986

出典

  1. ^ a b 『競馬 サラブレッドの生産および英国競馬小史』p25-26
  2. ^ 『アーバンダート百科』p96
  3. ^ a b 『競馬百科』p395-406“競馬のあゆみ”
  4. ^ 『競馬の世界史』p69-88
  5. ^ 『競馬 サラブレッドの生産および英国競馬小史』p45-46“短距離競走”
  6. ^ 日本でもJRAをはじめ、国際グレードを取得した競走ではSMILE区分に基づくプレレーティングやレーティングが行われている。2013年天皇賞(秋)のプレレーティング2013年11月25日閲覧。
  7. ^ 2011年4月25日付“超短距離[1ターン]、白熱の新シリーズ 誕生 地方競馬 スーパースプリントシリーズを実施”2013年11月25日閲覧。
  8. ^ a b c 『アーバンダート百科』p170

関連項目