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「芸予地震」の版間の差分

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{{Location map+|Japan|float=right|width=300|places=
'''芸予地震'''（げいよじしん）は、[[広島県]]西部（旧[[安芸国]]）と[[愛媛県]]（旧[[伊予国]]）に跨がって起こる[[地震]]。安芸の「'''芸'''」と伊予の「'''予'''」を組み合わせた名称である。
{{Location map~|Japan|label=|label_size=70|lat=34.1|long=132.5}}
{{Location map~|Japan|label=|label_size=70|lat=34.12|long=132.70}}
|caption=1905年および2001年芸予地震の震央。
}}
'''芸予地震'''（げいよじしん）は、[[広島県]]・[[山口県]]東部と[[愛媛県]]に跨がって起きた[[地震]]。


[[気象庁]]により「芸予地震」と名付けられた地震は[[1905年]]（[[明治]]38年）と[[2001年]]（[[平成]]13年）の2回があり、区別する為に発生年を冠して「N年芸予地震」あるいは年号を冠した名前で呼ばれる<ref name="jishingojp">文部科学省地震調査研究推進本部</ref>。以下その2つを含めたこの地域で起きた、[[フィリピン海プレート]]の動きによる「[[深発地震|スラブ内地震]]」<ref name="jishingojp" />と考えられているものについて記述する。
==概説==
[[瀬戸内海]]岸西部（広島県南西部や愛媛県中部）を震源とする[[地震]]。[[フィリピン海プレート]]の動きが原因と考えられている。芸予地震と名がついた地震は[[1905年]]と[[2001年]]の2回があり、区別する為に発生年を冠して「'''N年芸予地震'''」と呼ばれる。


== 概要 ==
2001年の地震が発生するまでは暫くこの地域を震源とする地震が発生しておらず、大きな地震も100年近く発生していなかったため、[[地震空白域]]とされていた。この震源付近では、[[1649年]]、[[1686年]]、[[1857年]]にも[[マグニチュード]]7級と推定される地震が発生している。2001年の地震は人的被害を出した1905年の地震からほぼ100年後であり、発生時期が予測可能であると主張する研究者もいる。
芸予とは、厳密には[[安芸国|安'''芸'''国]]（広島県西部）と[[伊予国|伊'''予'''国]]（愛媛県全域）を指す。"[[芸予諸島]]"の名でも使われるように、現在では広島県全域と愛媛県の2県の意味合いが強い。つまり芸予地震と名のつく地震はその2県の中間である[[瀬戸内海]]で発生しその2県に被害をもたらした地震のことである。

後述メカニズムの項にあるように震源が深部であるため、[[本州]]全土から[[四国]]・[[九州]]と広範囲で揺れるがその規模に対して比較的被害が小さい特徴がある<ref name="gshiroshima-u" />。過去の地震では[[津波]]による被害は記録されていない。一方で瀬戸内海沿岸部では[[液状化現象]]が発生{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=8}}、この地方特有の地層である風化した[[花崗岩]]が堆積した"[[真砂土|マサ土]]"による[[がけ崩れ]]<ref name="gshiroshima-u" />など、[[地盤]]災害（[[土砂災害]]）やそれに伴う二次災害が発生している。

なおこの地域の北側にあたる[[山陽地方]]において、マグニチュード3以上の地震は頻繁に起こる[[東北地方]]などと比べても極めて少なく<ref name="gshiroshima-u">{{Cite web
| author = 広島大学地球惑星システム学
| title = 広島での地震活動について
| publisher = 広島大学
| date = 1991
| url = http://www.geol.sci.hiroshima-u.ac.jp/~envi/link/Hiroshima.html
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>、周辺の[[活断層]]は他の地域と比べると少なく日本列島の中でも[[地殻変動]]が少ない特徴がある{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=1}}。2001年の地震が発生するまでは暫くこの地域を震源とする大きな地震が発生していなかった<ref name="jsce19910050">{{Cite journal|和書
| author1 = 古川智
| author2 = 原弘明
| author3 = 谷口仁士
| author4 = 三浦房紀
| title = 1905年芸予地震による広島地域の地震動の推定（その1）　工学的基盤での特性
| journal = 土木学会中国四国支部研究発表会講演概要集
| pages = 50-51
| publisher = 文部科学省地震調査研究推進本部課
| date = 1991
| url = http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00067/1991/1991-0050.pdf
| format = PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>ため、[[地震空白域]]とされていた。逆に南側である四国愛媛県は、[[南海地震]]・[[豊予海峡地震]]や[[日向灘地震]]で被害に合う想定域であり、更に日本最大級の断層である[[中央構造線|中央構造線断層帯]]が東西を横断しており、多大な地震の被害に遭う可能性が高い地域である<ref name="p38ehime">{{Cite web
| title = 愛媛県の地震活動の特徴
| publisher = 文部科学省地震調査研究推進本部
| url = http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/chugoku-shikoku/p38_ehime.htm
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。2度の芸予地震では広島での被害が多かったが、過去での地震では愛媛での被害が多かった事例もある。

== メカニズム ==
{{Vertical_images_list
|寄せ=右
|幅= 300px
| 1=Seto Inland Sea02.png
| 2=瀬戸内海。広島・山口・愛媛の3県の県境付近が[[斎灘]]と[[安芸灘]]の境界付近。そこから南側へ[[伊予灘]]、[[豊予海峡]]と続く。
| 3=RuptureAreasNankaiMegathrust 2013.png
| 4=南海地震の想定震源域。芸予地震の震源域はそれより北に位置する。
}}
震源域は[[瀬戸内海]]西部にあたり、北は[[本州]]広島県・山口県東部、南は[[四国]]愛媛県、東は[[高縄半島]]、西は[[周防大島]]や[[熊毛半島]]に囲まれた、[[斎灘]]・[[安芸灘]]・[[伊予灘]]にある。

この地は[[南海トラフ]]から続く、[[フィリピン海プレート]]が[[ユーラシアプレート]]と衝突しその下にもぐりこむ[[沈み込み帯]]の北端付近にあたる<ref name="zisinjp26">{{Cite web
| author = 石川有三
| title = 「平成13 年（2001 年）芸予地震」の概要
| publisher = 日本地震学会広報誌
| date = 2001-07
| url = http://www.zisin.jp/pdf/nf-vol26.pdf
| format=PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref><ref name="gshiroshima-u">{{Cite web
| author = 広島大学地球惑星システム学
| title = 広島での地震活動について
| publisher = 広島大学
| date = 1991
| url = http://www.geol.sci.hiroshima-u.ac.jp/~envi/link/Hiroshima.html
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。沈み込み帯での地震、つまり[[南海地震]]では震源は10kmから40kmの深さ<ref>{{Cite web
| author = 中央防災会議
| title = 南海トラフ巨大地震対策について
| publisher = 内閣府政策統括官（防災担当）
| date = 2004-02-27
| url = http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130528_houkoku_s1.pdf
| format=PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>にあるのに対し、芸予地震の震源は50kmから60kmと更に深い位置で発生する<ref name="gshiroshima-u" />。このことから、フィリピン海プレートはこの付近で急激に下方（地球内部方向）に折れ曲がり、その際に東西方向の[[張力]]が発生しプレート内部を破壊することにより地震が発生すると考えられている<ref name="zisinjp26" /><ref name="gshiroshima-u" />。

ちなみに沈み込み帯の北端付近にあたることから、一部の資料では[[地震#プレート間地震|プレート境界型地震]]と表記されているものもある<ref name="shinkokeirin" />。また、プレートの具体的な折れ曲がり形状など、まだ不明な点も多い<ref name="zisinjp26" />。

また、この地震は一定の間隔で起こる"[[固有地震]]"である。例えば[[檀原毅]]が1970年発表した論文では発生間隔52年±11年<ref>{{Cite journal|和書
| author1 = 檀原毅
| title = 地域別地震の周期性と潜在エネルギー（国）
| journal = 地震予知連絡会
| volume = 3
| pages = 79-87
| publisher = 国土地理院
| date = 1970-07
| url = http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou03/06_01.pdf
| format = PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>、[[文部科学省]][[地震調査研究推進本部]]が2013年現在で公開しているものでは発生間隔約67年としている<ref name="jishingojp" />。ただ一部では、2001年芸予地震では発生したエネルギーが想定よりも小さかったことから、次の地震はこれより短い間隔で発生する可能性があると指摘されている<ref name="mlit" />。以下、文部科学省が公表するこの地域での、フィリピン海プレートによるスラブ内地震とされている代表的な地震を列挙する<ref name="jishingojp" />{{sfn |震災予防調査会|1905| p=3}}<ref name="hsoh">{{Cite web
| title = 過去の被害地震
| publisher = 東京大学地震研究所 広島地震観測所
| url = http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/HSO/geiyo2001/history.html
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。
{| class="wikitable" style="text-align: left;font-size: smaller;"
!発生日!!名称!!震央!!規模!!特記
|-
|align="right"|1649年（[[慶安]]2年）<br />3月17日||align="center"|伊予安芸大震||北緯33.7度<br />東経132.5度||M7.0||
* 推定震度:松山・宇和島で5～6、広島で5
* [[松山城 (伊予国)|松山城]]・[[宇和島城]]の石垣崩壊
* [[広島城]]下の侍屋敷・町屋破損
|-
|align="right"|1686年（[[貞享]]2年）<br />1月4日||align="center"|-||北緯34.0度<br />東経132.6度||M7.2||
* 推定震度:広島・松山・[[大洲市|大洲]]・[[萩市|萩]]で5強
* 広島で死者、[[宮島]]・萩・[[岩国]]・松山で建物崩壊
* 道後温泉で泥湯噴出
|-
|align="right"|1854年（[[安政]]元年）<br />12月26日||align="center"|[[豊予海峡地震]]||北緯33.2度<br />東経132.2度||M7.4||当該リンク先参照
|-
|align="right"|1857年（安政4年）<br />10月12日||align="center"|伊予大震||北緯34.0度<br />東経132.5度||M7.3||
* 推定震度:広島県南部・愛媛県[[中予地方|中予]]～[[南予地方|南予]]・山口県東部で5
* 特に愛媛沿岸部に被害大、[[今治城]]内破損
|-
|align="right"|1905年（[[明治]]38年）<br />6月2日||align="center"|芸予地震<br />（1905年芸予地震）||北緯34.1度<br />東経132.5度||M7.2||下記
|-
|align="right"|2001年（[[平成]]13年）<br />3月24日||align="center"|芸予地震<br />（2001年芸予地震）||北緯34.1度<br />東経132.7度||M6.7||下記
|}
なお上記以外にも大きな被害を出した地震はある。例えば1949年には[[安居島]]付近の深さ40kmで発生したM6.2「安芸灘地震」では呉市で2人死者を出している<ref name="hsoh" />。あるいは1979年山口県[[熊毛半島]]付近でM6.0の地震が発生している<ref>{{Cite web
| title = 山口県の地震活動の特徴
| publisher = 文部科学省地震調査研究推進本部
| url = http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/chugoku-shikoku/p35_yamaguchi.htm
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。


== 1905年芸予地震 ==
== 1905年芸予地震 ==
{{地震
* 発生:1905年（明治38年）[[6月2日]]14時39分
|name=芸予地震
* [[震源]]：[[安芸灘]]（[[北緯]]34.1度、[[東経]]132.5度）
|image=
* 地震の規模：[[マグニチュード|M]]7.2
|image name=
* 最大[[震度]]：5～6（広島県[[呉市]]、[[広島市]]、愛媛県[[松山市]]）
|map=
* 別名：明治芸予地震
|imageby=
|map2={{Location map|Japan
| location
|lat=34.1
|long=132.5
| label =
| position = right
| background =
| mark = Bullseye1.svg
| marksize = 25
| width = 250
| float = center
| border =
| caption =
| alt =
| AlternativeMap =}}
|caption=地震の震央の位置を示した地図
|date=1905年（明治38年）[[6月2日]]<ref name="jsce19910050" /><ref name="hsoh" />
|time=14時39分（[[日本標準時|JST]]）<ref name="jsce19910050" /><ref name="hsoh" />
|center={{JPN}} [[安芸灘]]<br />北緯34.1度<br />東経132.5度<ref name="jsce19910050" /><ref name="hsoh" />
|depth=
|scaletype=マグニチュード (M)
|scale=7.2<ref name="jishingojp" /><ref name="jsce19910050" /><ref name="hsoh" />
|shindo=5～6
|shindoarea=<br />広島県[[呉市]]<br />同県[[広島市]]<br />愛媛県[[松山市]]<ref name="jishingojp" /><ref name="jsce19910050" />
|tsunami=
|type=[[深発地震|スラブ内地震]]
|after=
|mostafter=
|deaths=
|money=
|area=広島県、愛媛県を中心とする[[中国・四国地方]]
|data=
|plus=
}}
=== 概略 ===
震源は[[倉橋島]]の南<ref name="jsce19910050" />。東は東京・西は長崎と広範囲で揺れたが、大きな被害は[[広島湾]]岸と伊予灘に面した地域と局所的なものに留まった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=29}}。

そもそもこの本震の前々年から前震が多発しており、1903年（明治36年）に9回、1904年（明治37年）に3回、そして1905年1月から5月の間に3回と続き、6月の本震となった<ref name="hsoh" />。その後も余震が続いたが中でも、同年同日19時55分（緯度34.0度・経度132.5度・M6.0）、同年12月8日12時08分（緯度34.1度・経度132.6度・M6.1）、同年12月8日13時25分（緯度34.0度・経度132.4度・M6.2）が代表的なものとなった<ref name="hsoh" />。

顕著な被害は広島県[[呉市]]・[[広島市]]と愛媛県[[三津浜]]（現[[松山市]]）・[[郡中村|郡中]]（現[[伊予市]]）の沿岸部に集中した<ref name="hsoh" />。これは江戸時代以降、[[干拓]]や[[埋立地|埋立]]によりできた軟弱地盤の上に建てられた建造物の倒壊より被害を出したためであり、特に広島市中心部は[[太田川]]下流[[三角州]]の[[沖積平野]]に形成された街であるため、その弱い地盤が被害を拡大させた{{sfn |震災予防調査会|1905| p=2}}{{sfn |震災予防調査会|1905| p=39}}。一方で震源地付近は海であり、周辺の島々である倉橋・[[能美島]]などはほとんどが[[花崗岩]]の固い地盤であったため、地震の規模に対して被害は軽かった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=2}}。また工場、煉瓦家屋、木造住居の順に被害が大きくなる傾向が見られた{{sfn |震災予防調査会|1905| p=21-22}}。

調査および研究資料は比較的少ない<ref name="jsce19910050" />。理由の一つとして、当時広島県西部には旧日本軍の拠点（呉：[[大日本帝国海軍]][[呉鎮守府]]（呉鎮）、広島：[[大日本帝国陸軍]][[第5師団 (日本軍)|第5師団]]）があり、地震の日はちょうど[[日露戦争]]での[[日本海海戦]]勝利に湧いていた時期であり、軍政が敷かれていたため情報が規制されていたことが挙げられる<ref name="shinkokeirin">{{Cite web
| author = 越智秀二
| title = 芸予地震はなぜ起きた？
| publisher = 新興出版社啓林館
| url = http://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/tea/chu/jissen/rika/201112/
| accessdate = 2013-10-31}}</ref><ref name="chugoku20120812">{{Cite web|date=2012-08-12|url=http://web.archive.org/web/20120825014149/http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201208210022.html|title=芸予地震の呉被害を論文に|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。事実、1905年[[震災予防調査会]]がまとめた報告書では、震源地付近に存在しかなりの被害を受けたはずである呉鎮において被害状況はいくつか記載されているものの、トータルでの被害数は記載されていない{{sfn |震災予防調査会|1905| p=10}}{{sfn |震災予防調査会|1905| p=53}}。報道機関が、日本海海戦勝利をポジティブに捉え積極的に報道し、逆に芸予地震をネガティブに捉え消極的に報道した側面もある<ref name="chugoku20120812" />。

また当時震央付近で機械的なデータが取れる地点として、[[文部省]]の[[広島地方気象台|広島測候所]]・[[高松地方気象台|松山測候所]]と呉鎮測器庫の3箇所あったが、松山はデータがとれたが震源から遠かった、広島は計器を購入中だったためデータなし、呉にいたっては普通[[地震計]]を倉庫にしまっていた、と良質なデータが取れなかった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=2}}。つまり強震計も置いていなかった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=2}}。ただ呉については観測者の目視により正確な発震時刻が記録されており、これが震央特定の重要なデータとなった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=8}}。

1905年当時はまだ[[プレートテクトニクス]]理論が提唱されていない状況下で、震災予防調査会のメンバーは地震の原因についていくつか考察している。[[今村明恒]]は震源地付近の海の状況から海底下の断層による地震（[[断層地震説]]）ではない別の原因の可能性を{{sfn |震災予防調査会|1905| p=21}}、[[小藤文次郎]]は[[中央構造線|中央構造線断層帯]]の影響によるものとして原因を模索している{{sfn |震災予防調査会|1905| p=35}}。

=== 各地の震度 ===
以下、弱震（現在の震度2-3）以下を除いた当時の震度{{sfn |震災予防調査会|1905| p=6}}。
{| class="wikitable"
|-
! style="width:6em" | 震度!! 市町村
|-
! style="background-color:#ff2000" | 烈
| [[呉市|呉]]、[[広島市|広島]]
|-
! style="background-color:#ffc800" | 強
| [[松山市|松山]]、[[境港市|境港]]、[[高知市|高知]]、[[下関市|下関]]、[[室戸岬]]、[[徳島市|徳島]]、[[浜田市|浜田]]、[[味野]]、[[福岡市|福岡]]、[[多度津町|多度津]]、[[新居浜市|新居浜]]、[[熊本市|熊本]]
|-
! style="background-color:#ffff00" | 稍強
| [[岡山市|岡山]]、[[別子山村|別子]]
|}


=== 被害 ===
=== 被害 ===
以下、被害状況を示す<ref name="jishingojp" />{{sfn |震災予防調査会|1905| p=10}}。煙突破損とは、文字通り[[煙突]]の被害。なお全体は1905年震災予防調査会による報告書の数字で呉鎮の被害数はこれに含まれていない<ref name="hsoh" />{{sfn |震災予防調査会|1905| p=10}}。カッコ内は中央気象台（現気象庁）年報での数字であり、呉鎮の被害数が含まれているものと考えられている<ref name="hsoh" />。
* 死者11名
{|| class="wikitable" style="text-align: right;"
* 負傷者177名
!rowspan="2" colspan="2" |市町村||colspan="2"|人的被害(人数)||colspan="3"|住宅被害(戸)!!rowspan="2"|煙突破損<br />(戸)
* 全壊64棟
|-
* 半壊125棟
!死者!!負傷者!!全壊!!半壊!!一部破損
|-
!rowspan="7"|広島県
!広島市
||4||70||36||20||125||25
|-
!呉市
||6||86||5<br />(51)||25<br />(57)||-<br />(5,957)||-
|-
![[安芸郡 (広島県)|安芸郡]]
||1||1||1||1||-||-
|-
![[賀茂郡 (広島県)|賀茂郡]]
||-||2||5||-||14||1
|-
![[佐伯郡]]
||-||-||2||1||-||-
|-
![[安佐郡]]
||-||1||7||-||1||-
|-
!計
||11||160||56||47||140||26
|-
!rowspan="7"|愛媛県
!松山市
||-||3||1||17||2||3
|-
![[温泉郡]]
||-||7||5||33||74||2
|-
![[越智郡]]
||-||3||1||-||14||11
|-
![[伊予郡]]
||-||4||-||8||141||-
|-
![[北宇和郡]]
||-||-||1||-||2||-
|-
![[西宇和郡]]
||-||-||-||-||2||-
|-
!計
||0||17||8||58||235||16
|-
!colspan="2"|合計
||11||177||64||105||375||42
|}
'''震源地付近（安芸郡、呉市）'''
{{ external media
| align =
| width =
| image1 = [http://research.kahaku.go.jp/rikou/namazu/05sonota/geiyo/geiyo.html 呉鎮守府の被害写真] - 国立科学博物館地震資料室
}}
{{Vertical_images_list
|寄せ=右
|幅= 250px
| 1=Kyu-Kurechinjufu-shireichokan-chosha-20010902.jpg
| 2=1905年芸予地震の際に倒壊した旧部材を用いて再建され現存する[[入船山記念館|呉鎮守府司令長官官舎]]<ref>{{Cite web
| author = 広島県教育委員会
| title = 広島県の文化財 - 旧呉鎮守府司令長官官舎（呉市入船山記念館）
| publisher = 広島県
| url = http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/bunkazai/bunkazai-data-102010500.html
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。後の2001年芸予地震でも建物が傾斜した。
}}
* 震災予防調査会報告ではいくつか被災例が記載されているものの、上記の通り過小に記載されている。例えば住宅被害は広島市より少なく{{sfn |震災予防調査会|1905| p=83}}、道路・水道（当時は軍用の呉鎮水道のみ）など[[インフラストラクチャー]]の被害は極めて少なかった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=77}}、と記載されている。
* 呉鎮関連施設にいくつか現地調査が入っている。呉鎮内の施設は木造・煉瓦造・鉄骨造・鉄骨煉瓦造と当時の日本建築の様々な様式の建物が存在し、地盤も山中の花崗岩による堅牢なものから埋立地による軟弱なものまで様々な状況のものが存在した{{sfn |震災予防調査会|1905| p=53}}。その異なるケースでの地震被害は貴重な比較データとなり、その後の耐震建築に役立つことになった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=53}}。
* 呉鎮が混乱を極めた資料はいくつか残っている。例えば地震直後に呉鎮司令長官が[[海軍省]]に打電した電報では混乱している状況が伺え、[[国立病院機構呉医療センター|呉海軍病院]]では先の日本海海戦での負傷兵に加え地震での負傷者が来院したことから病院は大混乱となりスタッフは奮闘した様子が書かれたものがある<ref name="chugoku20120812" />。
'''広島県広島市'''
* [[広島刑務所|広島監獄]]では、木造平屋建瓦葺の第14工場が全壊、死者2人（看守1・囚人1）、重傷者4人軽傷者20人（全員囚人）を出した{{sfn |震災予防調査会|1905| p=12}}。この地は元々水田だったところを1885年（明治18年）から盛土造成した土地であり、形成されてから20年しか経っていない土地の上に監獄（刑務所）という堅牢な建物が作られていた状況であったが、全壊したのが一棟だけで後は傾いたり部分倒壊に留まったため、囚人脱走を防ぐことが出来た{{sfn |震災予防調査会|1905| p=45}}。
* [[本願寺広島別院]]の茶室（[[嘉永]]年間ごろ建立）が全壊{{sfn |震災予防調査会|1905| p=40}}。
* 鉄道においては、[[宇品線]][[丹那駅]]付近の線路が1尺（約30センチメートル）ほど沈下し、その他宇品線の複数の駅施設が若干傾いたものの大きな被害はなかった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=75}}。[[山陽本線]]太田川鉄橋と宇品線[[平和橋 (広島市)|大洲口鉄橋]]の[[橋脚]]に[[クラック]]が発生したものの通行に支障はなかった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=75-76}}。
* 道路橋は[[己斐橋]]の基礎杭が5尺（約1.5メートル）ほど沈下したのが最大で他は特別被害に合わなかった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=76}}。
'''愛媛県松山市/道後'''
* 広島と比べると被害が小さく、顕著な建物被害は木造のものであった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=65}}。その中でも被害が大きかったのが高浜/[[三津浜 (松山市)|三津浜]]地区および[[伊予郡]]である。この地区は古くからの漁港であり[[松山港|三津浜港]]開港以降近代発展した港町で、砂丘の上に雑多な木造建築がある状況が被害を大きくした{{sfn |震災予防調査会|1905| p=68}}。
'''その他'''
* 震源に近い山口県岩国で大きな揺れがあったが、その他の地域では大規模な被害はなかった{{sfn |震災予防調査会|1905| p=80-86}}。


== 2001年芸予地震 ==
== 2001年芸予地震 ==
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|caption=地震の震央の位置を示した地図
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|date=2001年（平成13年）[[3月24日]]
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|center={{JPN}} [[安芸灘]]<br />北緯34度7.7分<br />東経132度41.7分（{{ウィキ座標|34|7.7||N|132|41.7||E||地図}}）
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}}
}}
=== 概略 ===
* 発生：2001年（平成13年）[[3月24日]]（土）15時27分55秒 (JST)
震源は[[上蒲刈島]]の南。地震の規模（[[マグニチュード]]）は、気象庁マグニチュード:Mj 6.7<ref name="jishingojp" />{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=1}}<ref name="fdma20010924" />、モーメントマグニチュード:Mw 6.7<ref name="gshiroshima-u" />。震源深さは公式発表で51km<ref name="bousaigo20010406">内閣府、第13報</ref>。最大震度は6弱<ref name="bousaigo20010406" />。被害総額約193億円<ref name="fdma20010924">消防庁（確定報）、2001年9月24日</ref>。
* 震源：[[安芸灘]]（北緯34度7.7分 東経132度41.7分） 深さ51km <!-- 資料編纂者によっては 46kmを採用しているが本資料に於いては気象庁の値を採用する -->
* 地震の規模：[[マグニチュード]] Mj 6.7、モーメントマグニチュード Mw 6.7<ref>[http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/EIC/EIC_News/010324.html ＥＩＣ地震学ノート No.102 Mar.24,'01 (rev. Mar.25) ] 東大震研情報センター</ref>
* 破壊継続時間 約8秒
* 津波：発生なし
* 発振機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型で、[[フィリピン海プレート]]内部が震源
* 最大震度：6弱（広島県[[賀茂郡 (広島県)|賀茂郡]][[河内町 (広島県)|河内町]]中河内（現：[[東広島市]]河内町中河内）、広島県[[豊田郡]][[大崎町 (広島県)|大崎町]]中野、（現：豊田郡[[大崎上島町]]中野）、広島県[[安芸郡 (広島県)|安芸郡]][[熊野町]]）
* [[大韓民国|韓国]]にも揺れが伝わり、[[メルカリ震度階級]]で[[蔚山]]では[[震度]]4、[[釜山広域市|釜山]]では[[震度]]3の揺れを[[観測]]した。
* 揺れは全国に広がり、東は[[東京都]][[神津島]]まで西は[[鹿児島県]][[指宿市]]まで届いた。


大型地震の遭遇は、中国地方においては2000年10月に起きた[[鳥取県西部地震]]（Mj7.3/Mw6.6）<ref name="dprikyotou">{{Cite web
=== 余震 ===
| title = 2000年鳥取県西部地震が投げかけた問題
余震域は南北に約20km、深さ40～50kmの範囲に分布。
| publisher = 京都大学防災研究所
* 翌々日の[[3月26日]]5時40分53秒 (JST) には安芸灘で M 5.2 深さ50km。最大震度が5強が発生。
| url = http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/web_j/dprinews/news19/n19-1.html
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>から5ヶ月後、瀬戸内海に面した地域としては1995年1月[[兵庫県南部地震]]（Mj7.2/Mw6.9）<ref name="dprikyotou" />から6年後のことだった。芸予地震はその2つの地震と規模としては同等であったが、その2つが震源深さ20km前後の[[地震#内陸地殻内地震|直下型地震]]だったのに対し芸予地震は更に深部でのスラブ内地震であった<ref name="gshiroshima-u" />。一部の地震学者が唱える"[[西日本地震活動期説]]"の根拠となった地震の一つ<ref name="mlit">{{Cite web
| title = ［検証］2001年の自然災害
| publisher = 国土交通省河川局
| date = 2001
| url = http://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/bousai/saigai/2001/frame008_009.html
| format = PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。


なお鳥取県西部地震後、気象庁マグニチュード検討委員会によりマグニチュード計算式の見直しが図られ、芸予地震後である2001年4月23日から先行導入される形で新しい計算式によるマグニチュードが修正された<ref>{{Cite web|date=2001-04-24|url=http://web.archive.org/web/20060720132632/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody105.html|title=芸予地震　Ｍ６・７に、気象庁が修正|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref><ref name="jmanet200309">{{Cite web
=== 各地の震度（震度4以上） ===
| title = ～～お知らせ～～ 気象庁マグニチュードの改訂について
| publisher = 神戸海洋気象台
| date = 2003-09
| url = http://www.jma-net.go.jp/kobe/annai/kankobutsu/jishin/pdf/2003_09.pdf
| format = PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。芸予地震のマグニチュードを6.4としている資料は修正前の旧計算式でのものである<ref name="bousaigo20010406" /><ref name="jmanet200309" />。ちなみにこの新計算式は2003年9月25日に正式採用され現在に至っている<ref name="jmanet200309" />。


死者が出た地震としては、愛媛では1946年[[昭和南海地震]]以来<ref name="p38ehime" />、広島では1949年安芸灘地震以来<ref name="hsoh" />のことであった。
{| class="wikitable"

余震発生域は本震を北端として南に約20km・深さ40から50kmの範囲に分布し{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=1}}、中でも最大のものが翌々日の26日5時40分(JST) 安芸灘で発生したMj 5.2・深さ50km・最大震度5強である<ref name="bousaigo20010406" />。

[[表面最大加速度]]は、震源地付近が海であることから観測点が少なかった一方で、広島県湯来町での830[[メートル毎秒毎秒|m/s<sup>2</sup>]]を筆頭に広島市三原市・愛媛県東予市と震源地から少し離れた3つでピーク域が観測された<ref name="jsce260089">{{Cite journal|和書
| author1 = 田地陽一
| author2 = 浅香美治
| author3 = 社本康広
| title = 2001年芸予地震における液状化被害
| journal = 地震工学研究発表会講演論文集
|volume = 26
| publisher = 土木学会
| date = 2001-08
| url = http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00578/2001/26-0089.pdf
| format = PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。これは地層に起因するものであり<ref>{{Cite web|date=2001-04-13|url=http://web.archive.org/web/20070819165416/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/frame.html|title=三原の地震被害、地層に要因／福山大が分析|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>、この3地域では特異な被害を受けている。

震央から最も近い広島県呉市は県内3番目の人口を誇る[[特例市]]であり、戦前から呉鎮とともに発達した"古い町"で、土地はすり鉢状で平野が狭く急傾斜地ギリギリまで土地開発している"坂の町"であったことから、石積・ブロック[[擁壁]]の崩落やそれに伴う木造建築の崩壊が深刻なレベルで発生した{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=11-13}}<ref name="oitau">{{Cite journal|和書
| author1 = 菊池健児
| author2 = 黒木正幸
| author3 = 田中圭
| author4 = 田中昭洋
| author5 = 江藤啓二
| author6 = 工藤聡
| author7 = 万力敬之
| title = ２００１年芸予地震による建築構造物の被害
| journal = 大分大学工学部研究報告
|volume = 44
| publisher = 大分大学
| date = 2001-03
| url = http://ir.lib.oita-u.ac.jp/jspui/bitstream/10559/4320/1/44-8.pdf
| format = PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。その土地の特性上、重機搬入も難しく復旧までに時間を擁した<ref>{{Cite web|date=2001-03-28|url=http://web.archive.org/web/20060622204939/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody027.html|title=弱点つかれた坂の町　呉市|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。また、先の芸予地震では呉鎮の被害が顕著だったが、今回の地震では[[海上自衛隊]][[呉基地]]関連施設の被災状況はどの資料にも記載されていない。[[防衛省]]の資料では兵庫県南部地震での海自[[阪神基地]]の被災状況は公開されている<ref>{{Cite web|url=http://www.mod.go.jp/j/profile/choushi/choushi_pdf/01_07_02.pdf|format=PDF|title=阪神･淡路大震災による阪神基地隊等の復旧への取組|publisher=防衛省|accessdate=2013-10-31}}</ref>ことから、単に被害がなかったためと思われる。なお地震直後の[[ライフライン]]復旧にはその呉基地から応援が出ている<ref name="bousaigo20010406" />{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=14}}。

[[山陽地方]]側は事実上[[地震空白域]]だったため住民の危機感が薄く<ref name="mlit" />、地震直後も普段と変わらない生活をおくったものがかなり存在した<ref>{{Cite web|date=2001-04-10|url=http://web.archive.org/web/20060720132517/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody098.html|title=広島県民対象にアンケート|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。これは被害が大きかった呉市を除き、自治体による[[避難勧告]]がほぼ出されなかったためでもある<ref name="nagasakiu">{{Cite journal|和書
| author1 = 高橋和雄
| author2 = 中村聖三
| author3 = 松木理一
| title = 鳥取県西部地震および芸予地震に関する市町村アンケート
| journal = 長崎大学工学部研究報告
|volume = 33 |issue = 60
| publisher = 長崎大学
| date = 2003-01
| url = http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/5251/1/KJ00000702770.pdf
| format = PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。自治体・企業が、兵庫県南部地震規模の地震を想定し地震対策を行っていたため、被害が小さかった部分もある<ref name="mlit" /><ref name="nagasakiu" />。住民が災害情報を得たメディアは9割近くがテレビ・ラジオだったことに加え<ref name="mlit" />、この地震や先の鳥取地震が起きた2000年代初頭は行政側が公式ホームページ上で情報を公開しそれをインターネットを通じて住民が得る状況になった{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=21}}。

=== 各地の震度 ===
以下気象庁が発表した震度4以上の各地の震度を、当時の自治体名で表記する<ref name="fdma20010924" /><ref>{{Cite web
| title = 平成１３年芸予地震の各地の震度
| publisher = 東京大学地震研究所 広島地震観測所
| url = http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/HSO/geiyo2001/geiyoshindo.html
| accessdate = 2013-10-31}}</ref><ref>{{Cite web
| title = 平成１３年芸予地震（2001/03/24 15:28）
| publisher = 地震予知総合研究振興会
| url = http://www.adep.or.jp/shindo/index.akinada1.html
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。
{| class="wikitable" style="text-align: left;font-size: smaller;"
|-
|-
! style="width:2em" | 震度
! style="width:2em" | 震度
! style="width:4em" | 都道府県
! style="width:4em" | 県
! 市区町村
! 市区町村
|-
|-
! style="background-color:#ff6400" | 6弱
! style="background-color:#ff6400" | 6弱
| [[広島県]]
| [[広島県]]
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| [[河内町 (広島県)|河内町]]、[[大崎町 (広島県)|大崎町]]、[[熊野町]]
|-
|-
! style="background-color:#ff9600" rowspan="3" | 5強
! style="background-color:#ff9600" rowspan="3" | 5強
| 広島県
| 広島県
| [[千代田町 (広島県)|広島千代田町]]、[[三原市]]、[[豊栄町]]、[[本郷町 (広島県)|本郷町]]、[[安芸津町]]、[[川尻町 (広島県)|川尻町]]、[[豊浜町 (広島県)|豊浜町]]、[[豊町]]、[[向島町]]、[[西区 (広島市)|広島西区]]、[[安佐南区|広島安佐南区]]、[[呉市]]、[[府中町]]、[[海田町]]、[[音戸町]]、[[倉橋町]]、[[下蒲刈町]]、[[能美町]]、[[大柿町]]、[[黒瀬町]]
| [[千代田町 (広島県)|千代田町]]、[[三原市]]、[[豊栄町]]、[[本郷町 (広島県)|本郷町]]、[[安芸津町]]、[[安浦町]]、[[川尻町 (広島県)|川尻町]]、[[豊浜町 (広島県)|豊浜町]]、[[豊町]]、[[久井町]]、[[向島町]]、広島市[[西区 (広島市)|西区]]、広島市[[安佐南区|安佐南区]]、広島市[[安佐北区]]、[[呉市]]、[[廿日市市]]、[[府中町]]、[[海田町]]、[[音戸町]]、[[倉橋町]]、[[下蒲刈町]]、[[能美町]]、[[沖美町]]、[[大柿町]]、[[黒瀬町]]
|-
|-
| [[山口県]]
| [[山口県]]
104行目: 425行目:
|-
|-
! style="background-color:#ffc800" rowspan="6" | 5弱
! style="background-color:#ffc800" rowspan="6" | 5弱
| 広島県
| [[豊平町 (広島県)|豊平町]]、[[吉田町 (広島県)|吉田町]]、[[八千代町 (広島県)|八千代町]]、[[甲山町]]、[[世羅西町]]、[[吉舎町]]、[[三良坂町]]、[[尾道市]]、[[福山市]]、[[福富町 (広島県)|広島福富町]]、[[東野町]]、[[木江町]]、[[瀬戸田町]]、[[御調町]]、[[内海町 (広島県)|内海町]]、[[新市町]]、[[中区 (広島市)|広島中区]]、[[南区 (広島市)|広島南区]]、[[坂町]]、[[江田島町]]
|-
| [[島根県]]
| [[島根県]]
| [[羽須美村]]、[[桜江町]]、[[三隅町 (島根県)|三隅町]]
| [[羽須美村]]、[[桜江町]]、[[三隅町 (島根県)|三隅町]]
|-
| 広島県
| [[豊平町 (広島県)|豊平町]]、[[吉田町 (広島県)|吉田町]]、[[八千代町 (広島県)|八千代町]]、[[甲山町]]、[[世羅西町]]、[[吉舎町]]、[[三良坂町]]、[[尾道市]]、[[福山市]]、[[福富町 (広島県)|福富町]]、[[東野町]]、[[瀬戸田町]]、[[御調町]]、[[内海町 (広島県)|内海町]]、[[新市町]]、広島市[[中区 (広島市)|中区]]、広島市[[南区 (広島市)|南区]]、広島市[[安芸区]]、[[坂町]]、[[蒲刈町]]、[[大和町 (広島県)|大和町]]、[[宮島町]]、[[佐伯町 (広島県)|佐伯町]]、[[木江町]]、[[江田島町]]
|-
|-
| 山口県
| 山口県
123行目: 444行目:
|-
|-
! style="background-color:#ffff00" rowspan="13" | 4
! style="background-color:#ffff00" rowspan="13" | 4
| 広島県
| [[三次市]]、[[庄原市]]、[[加計町]]、[[筒賀村]]、[[戸河内町]]、[[大朝町]]、[[神石町]]、[[三和町 (広島県神石郡)|神石郡三和町]]、[[上下町]]、[[総領町]]、[[甲奴町]]、[[布野村]]、[[作木村]]、[[三和町 (広島県双三郡)|双三郡三和町]]、[[口和町]]、[[高野町 (広島県)|高野町]]、[[神辺町]]、[[東区 (広島市)|広島東区]]、[[東広島市]]
|-
| [[鳥取県]]
| [[鳥取県]]
| [[境港市]]、[[羽合町]]、[[東郷町 (鳥取県)|鳥取東郷町]]、[[北条町 (鳥取県)|北条町]]、[[岸本町]]、[[日吉津村]]、[[淀江町]]
| [[境港市]]、[[羽合町]]、[[東郷町 (鳥取県)|東郷町]]、[[北条町 (鳥取県)|北条町]]、[[岸本町]]、[[日吉津村]]、[[淀江町]]
|-
|-
| 島根県
| 島根県
133行目: 451行目:
|-
|-
| [[岡山県]]
| [[岡山県]]
| [[倉敷市]]、[[笠岡市]]、[[井原市]]、[[高梁市]]、[[御津|御津町]]、[[山陽町 (岡山県)|山陽町]]、[[熊山町]]、[[佐伯町 (岡山県)|佐伯町]]、[[邑久町]]、[[長船町]]、[[灘崎町]]、[[早島町]]、[[山手村]]、[[清音村]]、[[船穂町]]、[[金光町]]、[[鴨方町]]、[[寄島町]]、[[里庄町]]、[[矢掛町]]、[[真備町]]、[[賀陽町]]、[[落合町 (岡山県)|落合町]]、[[久世町]]、[[美甘村]]
| [[倉敷市]]、[[玉野市]]、[[笠岡市]]、[[井原市]]、[[高梁市]]、[[御津|御津町]]、[[山陽町 (岡山県)|山陽町]]、[[熊山町]]、[[佐伯町 (岡山県)|佐伯町]]、[[邑久町]]、[[長船町]]、[[灘崎町]]、[[早島町]]、[[山手村]]、[[清音村]]、[[船穂町]]、[[金光町]]、[[鴨方町]]、[[寄島町]]、[[里庄町]]、[[矢掛町]]、[[真備町]]、[[賀陽町]]、[[落合町 (岡山県)|落合町]]、[[久世町]]、[[美甘村]]
|-
| 広島県
| [[三次市]]、[[庄原市]]、[[加計町]]、[[筒賀村]]、[[戸河内町]]、[[大朝町]]、[[神石町]]、[[三和町 (広島県神石郡)|神石郡三和町]]、[[上下町]]、[[総領町]]、[[甲奴町]]、[[布野村]]、[[作木村]]、[[三和町 (広島県双三郡)|双三郡三和町]]、[[口和町]]、[[高野町 (広島県)|高野町]]、[[神辺町]]、広島市[[東区 (広島市)|東区]]、[[東広島市]]、[[君田村]]、[[美土里町]]
|-
|-
| 山口県
| 山口県
149行目: 470行目:
| 高知県
| 高知県
| [[安芸市]]、[[須崎市]]、[[土佐山田町]]、[[宿毛市]]、[[窪川町]]、[[大方町]]
| [[安芸市]]、[[須崎市]]、[[土佐山田町]]、[[宿毛市]]、[[窪川町]]、[[大方町]]
|-
| 大分県
| [[宇佐市]]、[[真玉町]]、[[香々地町]]、[[国見町 (大分県)|国見町]]、[[姫島村]]、[[国東町]]、[[山香町]]、[[大分市]]、[[臼杵市]]、[[日出町]]、[[佐伯市]]、[[津久見市]]、[[鶴見町 (大分県)|鶴見町]]、[[蒲江町]]、[[千歳村 (大分県)|千歳村]]、[[荻町]]
|-
|-
| [[佐賀県]]
| [[佐賀県]]
158行目: 476行目:
| [[熊本県]]
| [[熊本県]]
| [[波野村 (熊本県)|波野村]]、[[菊水町]]
| [[波野村 (熊本県)|波野村]]、[[菊水町]]
|-
| 大分県
| [[宇佐市]]、[[真玉町]]、[[香々地町]]、[[国見町 (大分県)|国見町]]、[[姫島村]]、[[国東町]]、[[山香町]]、[[大分市]]、[[臼杵市]]、[[日出町]]、[[佐伯市]]、[[津久見市]]、[[鶴見町 (大分県)|鶴見町]]、[[蒲江町]]、[[千歳村 (大分県)|千歳村]]、[[荻町]]
|-
|-
| [[宮崎県]]
| [[宮崎県]]
| [[高千穂町]]
| [[高千穂町]]
|}
|}
また大韓民国でも揺れが伝わり、[[釜山]]では[[メルカリ震度階級]]で3から4の震度を記録している<ref>{{Cite web
| title = ２００１年（平成１３年）芸予地震：現地調査
| publisher = 防災システム研究所
| url = http://www.bo-sai.co.jp/geiyojisin.html
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。


=== 被害 ===
=== 被害 ===
以下、消防庁確定報における被害数を記載する<ref name="fdma20010924" />。上から[[全国地方公共団体コード]]順。
広島・愛媛両県を中心とした[[中国・四国地方]]で以下の被害が発生した。
{|| class="wikitable"
{|| class="wikitable" style="text-align: right;"
|+人的被害及び住宅被害（消防庁調べ：6月4日現在）
!rowspan="2" |県||colspan="2"|人的被害(人数)||colspan="3"|住宅被害(戸)
!rowspan="2" |都道府県||colspan="2"|人的被害(人数)||colspan="3"|住宅被害(戸)
|-
|-
!死者||負傷者||全壊||半壊||一部破損
!死者||負傷者||全壊||半壊||一部破損
|-
|-
!島根県
|広島県||1||194||60||497||34735
||0||3||0||0||10
|-
!岡山県
||0||1||0||0||17
|-
|-
!広島県
|愛媛県||1||74||2||35||5299
||1||193||65||688||36,545
|-
|-
|山口県||0||12||7||26||1312
!山口県
||0||12||3||46||1,437
|-
|-
!香川県
|島根県||0||3||0||0||10
||0||0||0||0||6
|-
|-
!愛媛県
|高知県||0||4||0||0||12
||1||75||2||40||11,196
|-
|-
!高知県
|福岡県||0||1||0||0||0
||0||4||0||0||12
|-
|-
|香川県||0||0||0||0||6
!福岡県
||0||0||0||0||0
|-
|-
!大分県
|岡山県||0||1||0||0||18
||0||0||0||0||0
|-
|-
!計
|計||2||289||69||558||41392
||2||288||70||774||49,223
|}
|}
{{Vertical_images_list
|寄せ=右
|幅= 300px
| 1=Port of Kure seen from Yasumi-yama.jpg
| 2=[[休山]]から見た呉中心部の[[呉港]]。沿岸が港湾および工業施設が発達している一方で平野が狭くすぐ丘陵が迫っているのがわかる。この丘陵に造られた住宅地で宅地擁壁の崩壊とそれに伴う木造建築倒壊が発生した。
| 3=芸予諸島.png
| 4=[[芸予諸島]]全体。安芸灘とびしま海道の"芸"の字のあたりが震央。
}}
'''災害関連法適用市町村'''
:以下は[[災害救助法]]適用市町村<ref name="bousaigo20010406" />。このうち呉市にのみ更に[[被災者生活再建支援法]]が適用されている<ref>{{Cite web
| author = 内閣府政策統括官（防災担当）付参事官（災害復旧・復興担当）
| title = 平成13年（2001年）芸予地震における被災者生活再建支援法の適用について
| publisher = 内閣府
| date = 2001-04-02
| url = http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/pdf/130402tekiyou.pdf
| format = PDF
| accessdate = 2013-10-31}}</ref>。
* 広島県
** 広島市
** （現呉市域） - 呉市、下蒲刈町、蒲刈町、川尻町、豊浜町、豊町
** 三原市
** 宮島町（現廿日市市）
** 河内町（現東広島市）
** （現大崎上島町域） - 大崎町、東野町、木江町
* 愛媛県
** 今治市


'''人的被害'''
*広島県[[呉市]]で崩れた民家の壁の下敷きになって1人が死亡。愛媛県[[北条市]]（現[[松山市]]）では落下してきた自宅のベランダの下敷きになって1人が死亡した。
* 死者は2人。一人は広島県呉市で隣家の崩れたブロック塀壁の下敷きとなったもの、もう一人は愛媛県北条市（現松山市）で落下してきた自宅ベランダの下敷きになった<ref>{{Cite web|date=2001-03-25|url=http://web.archive.org/web/20070819165416/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/frame.html|title=広島で震度６弱　「阪神」級、震源は安芸灘|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。
*この地震で被害を受けた公共施設のうち校舎が半壊した[[広島県立西条農業高等学校]]では国の補助が適用されたため、耐震性の高い校舎に立て替えた。また同様に被害を受けた他の公共施設は補強工事を施し使用されている。
* 負傷者の特徴として、家屋内での落下物によるものと、店舗・工場内での火傷によるものが多かった{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=16}}。また高齢者を中心に避難途中での瓦礫による負傷者が続出した{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=16}}。
*鉄道も点検のため運転を見合わせた。芸備線では大幅な遅延が出たほか、三江線では落石が起きた。
*火災は、広島県　4件（広島市2件、呉市1件、東広島市1件）
*[[本州四国連絡橋]]の[[来島海峡第一大橋]]のセンターステイロッドが破断した<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssc1994/10/39/10_39_131/_article/-char/ja/ 芸予地震における動態観測と来島海峡第一大橋センターステイロッド破断に対する検証] 鋼構造論文集 Vol. 10 (2003) No. 39 P 131-141</ref>。


=== ライフラインの主な被害 ===
'''ライフライン'''
* 顕著な被害となったのが水道である。断水戸数は全体で48,436戸、そのうち呉市およびその周辺島嶼部では最大で32,910戸が断水している<ref name="bousaigo20010406" />{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=14}}。特に島嶼部では、1系統しかない幹線水道管が止まったことにより被害が拡大し、断水の間[[自衛隊]]の給水応援でしのぎ、3日後である同月27日には断水解消された<ref name="bousaigo20010406" />{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=14}}。
; 中国電力
* 電気は、[[中国電力]]管轄内で48,000戸が停電したが同日19時08分に復旧、[[四国電力]]管轄内では8,029戸が停電したが同日17時16分に復旧している{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=14}}<ref name="bousaigo20010406" />。
*広島県（広島市、三原市、呉市、賀茂郡）、愛媛県（越智郡）、岡山県（岡山市、倉敷市）、山口県（熊毛郡及び大島郡）で、約48000戸が停電。（広島県及び愛媛県で計35108戸、岡山県10898戸、山口県内で1994戸が停電）。3月24日19時08分に復旧
* ガス・電話は特に顕著な被害なし<ref name="bousaigo20010406" />。道路自体は早期復旧可能なレベルのひび割れが発生した程度{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=5}}。これらは阪神淡路大震災後に耐震性に優れたものに強化したためと見られている<ref>{{Cite web|date=2001-03-25|url=http://web.archive.org/web/20060720132316/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody095.html|title=阪神大震災に匹敵　被害は少なかった|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。
; 四国電力
* 鉄道も点検のため運転を見合わせた<ref name="bousaigo20010406" />。
*高知県、愛媛県で、8029戸が停電（うち、今治地区で6,585戸停電）3月24日17時16分に復旧
* [[三原駅]]の西側・宮浦町付近のJR[[山陽新幹線]]高架が連続的に損傷した{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=5-6}}。なお広島県内での新幹線高架の被害は剥落などはあったものの、応急処置が必要なレベルで損壊したのはこの地区のみ{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=5-6}}<ref>{{Cite web|date=2001-03-26|url=http://web.archive.org/web/20060622204707/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody020.html|title=新幹線「もろさ」露呈|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。
;上水道
*断水戸数48436戸
**広島県 47767戸 広島市、呉市、三原市、竹原市、因島市、廿日市市、河内町、川尻町、三和町、大崎町、蒲刈町、下蒲刈町、豊町、瀬戸田町、東野町、木江町、本江町、向島町、大野町、豊浜町、熊野町、江田島町、大柿町、熊美町、沖美町
**山口県 106戸 柳井市、小郡町、むつみ村
**島根県　130戸 益田市
**愛媛県 379戸 土居町、丹原町、玉川町、中島町、河内町、波方町
=== 法的措置 ===
* [[被災者生活再建支援法]]適用 - 呉市


'''地盤災害'''（がけ崩れ・液状化現象）
== 広島県の地震 ==
* 上記の通り呉市は特に、その他広島・愛媛県内のいくつかで宅地での斜面崩壊が起こり住民は一時避難を余儀なくされた{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=8}}。
広島県で起きる地震のその殆どは瀬戸内海に集中している。特に安芸灘、伊予灘で多くM（マグニチュード）4以上の地震は毎年数回発生し揺れを感じている。ただし、震源の深さが50キロ以上と深い場所で発生するため揺れの規模はそれほど大きくない。広域で揺れを感じるのも深部地震の特徴である。
* がけ崩れによる道路規制は、全面通行止が33箇所、片側規制が20箇所{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=7}}。広島県河内町内での[[国道432号]]において、トラックに落石が直撃し大破した{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=7}}。
* JR[[三江線]]では落石によりレールが歪んだが、徐行運転で対応し同日夕方には復旧している<ref>{{Cite web|date=2001-03-26|url=http://web.archive.org/web/20060717034255/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody050.html|title=島の配水池底つく　この不便いつまで…|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。
* 河川堤防天端に亀裂が発生、そのうち愛媛県[[石手川]]のみ応急処置を施している<ref name="bousaigo20010406" />。
* この地域は[[瀬戸内海式気候]]に属し降雨が少ないため各地に農業用[[ため池]]が存在する。その堤体のひび割れ被害は広島県東広島市で33箇所、山口県美和町・玖珂町で4箇所発生し、うち1つの池で漏水もしている{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=8}}。
* 液状化現象は、噴砂については広島湾に面した地域・呉阿賀地区から竹原にかけて・愛媛県松山市など広い範囲で発生したが、どれも早期復旧可能なレベルで構造物破壊にまでは至らなかった<ref name="jsce260089" />{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=8-11}}。変わった場所としては、[[広島東洋カープ]]の選手寮兼練習場である"大野屋内総合練習所"で噴砂が発生した<ref>{{Cite web|date=2001-03-26|url=http://web.archive.org/web/20060622204747/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody019.html|title=カープの大野練習場で液状化現象|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。


'''その他特記'''
一方で、広島県内陸部では中国山地沿いを中心にまとまった地震が多く島根県の県境では活動が活発である。記録は江戸時代にさかのぼるが1919年と1930年、1974年にM5～6の地震が発生しており、群発地震を伴うことも多々ある。
{{Vertical_images_list

|寄せ=右
== 広島県の活断層 ==
|幅= 250px
広島県には重要文化財に指定されている「断層」も多い。
| 1=Kurusimakaikyo-1.JPG
* 広島市安芸高田市高宮町志府部府・広島県三次市畠敷 - 「'''船佐・山内衝上断層'''」
| 2=来島海峡第一大橋。"ステイロープ"とは写真手前左側の道路標識の後ろに見える垂直ではなくハの字に伸びる2本のロープ。その"ロッド"とはロープ下端の写真に映る白い筒状のものの更に下にある。破断したのは"センター"つまり中央支間のもの<ref name="jbhonshi">{{Cite web|url=http://www.jb-honshi.co.jp/center/job/eqres.html|title=耐震検証|publisher=本州四国連絡高速道路|accessdate=2013-10-31}}</ref>。
* 広島県三次市和知 -「和知衝上断層」
}}
* 広島県庄原市 -「山内逆断層」
* 学校の体育館天井の内装・仕上材などの二次部材が落下する被害が目立ったが、春休み期間中であったため人的被害は少なかった<ref name="oitau" />。
* 広島県安芸太田町 -「押ヶ峠断層」
* 鉄筋コンクリート造の建築物のうち、[[松山市立湯築小学校]]・[[広島県立西条農業高等学校]]などといった校舎が中破した<ref name="oitau" />。ただ西条農の中破した校舎のみコンクリート強度が設計基準を大幅に下回っていたことがわかり<ref>{{Cite web|date=2001-04-20|url=http://web.archive.org/web/20060720132607/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody102.html|title=校舎のコンクリ強度、基準下回る／西条農業高|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>、施工不良つまり手抜き工事だったと判明した。
* 広島県佐伯区五日市 -「五日市断層」
* 震源地付近で整備された港湾施設のうち、[[須波港]]では江戸時代[[楢崎正員]]によって造られ広島県の史跡である[[防波堤]]"須波波止"が崩壊した{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=3}}。液状化現象以外で崩壊した港湾施設はこれのみ{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=3}}。

* 震源地付近には、[[世界遺産]]に選ばれた[[厳島神社]]や[[原爆ドーム]]、その他にも[[松山城 (伊予国)|松山城]]・[[今治城]]・[[広島城]]など歴史的な建築物が多々あったが、それらの被害は軽いものだった<ref name="oitau" />。重要度の高い文化財のうち地震後立入禁止となったのは、[[入船山記念館]]（国重文）と[[三段峡]]（国特別名勝）の2つのみ<ref>{{Cite web|date=2001-03-31|url=http://web.archive.org/web/20041027203507/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody040.html|title=文化財被害６３件　総額４億円／広島県|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。
以上が広島県の重要文化財に指定されている。看板自体は腐食が激しいなど歩行が困難な場所もあるので注意が必要。
* 瀬戸内海沿岸の[[コンビナート|石油化学コンビナート]]において、山口県周南市の"周南コンビナート"は、創設以来初めての大型地震に遭遇ししばらく業務停止に陥った<ref>{{Cite web|date=2001-03-31|url=http://web.archive.org/web/20060622204918/http://www.chugoku-np.co.jp/geiyo/ody026.html|title=後遺症、いまだ深刻　周南コンビナート|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。同県岩国市"岩国コンビナート"では軽油10リットルが海上に流出した<ref name="bousaigo20010406" />。

* 瀬戸内海には[[本州四国連絡橋]]や[[安芸灘諸島連絡架橋]]などの長大橋があるが、具体的な被害があったのは[[来島海峡第一大橋]]のみ{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=6}}。うち唯一、センターステイのロッドが4つすべて破断したものの、これは大規模な地震が発生した場合に橋全体が一体として動かないよう意図的に壊れるように設計の段階から考えられていたもので、想定の範囲内でのことだった<ref name="jbhonshi" />{{sfn |土木学会芸予地震被害調査団|2001| p=6}}。
== 出典 ==
* [[宮島競艇場]]でもかなりの被害を受けた。その中で西スタンドは2階・3階部分を閉鎖した状況で運用してきたが、財政難により改修が進まず10年近く閉鎖したままであった<ref>{{Cite web|date=2011|url=http://www.boatrace-miyajima.com/managementplan/pdf/plan1.pdf|format=PDF|title=ボートレース宮島中期経営計画|publisher=宮島競艇施行協会|accessdate=2013-10-31}}</ref>。2013年にスタンド改修が決まり、今後整備される予定となった<ref>{{Cite web|date=2013-01-30|url=http://www.47news.jp/CI/201301/CI-20130130-00607.html|title=宮島競艇場整備に13億円|publisher=中国新聞|accessdate=2013-10-31}}</ref>。
* 地震予知連絡会 会報 第66巻
** {{PDFlink|[http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou66/08-01.pdf 平成13年（2001年）芸予地震および安芸灘周辺の地震活動状況（防災科研）]}}
** {{PDFlink|[http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou66/08-02.pdf 「平成13年（2001年）芸予地震」（2001年3月24日M6.7）（気象庁）]}}
* [http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/h13/akinada1.html 平成13年芸予地震（3月24日15時28分頃）について（第13報）] [[内閣府]]
* {{PDFlink|[http://www.jsce.or.jp/report/13/01/report.pdf 2001/03/24 芸予地震調査報告]}} 土木学会芸予地震被害調査団


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
{{Reflist|2}}

== 参考資料 ==
'''全般'''
* {{Cite web|publisher=文部科学省地震調査研究推進本部|url=http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/kaiko/k26_aki_iyo_bungo.htm|title=安芸灘～伊予灘～豊後水道のプレート内地震|accessdate=2013-10-31}}
* {{Cite web|publisher=東京大学地震研究所 広島地震観測所|url=http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/HSO/geiyo2001/geiyo.html|title=平成１３年芸予地震|accessdate=2013-10-31}}
'''1905年芸予地震'''
* {{Cite journal|和書
|author=震災予防調査会|authorlink=震災予防調査会
|year=1905|publisher=文部省
|url=http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/831472
|title=震災予防調査会報告 第53号
|accessdate=2013-10-31
|ref=harv}}
'''2001年芸予地震'''
* {{Cite web
|publisher=内閣府
|url=http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/h13/akinada1.html
|title=平成13年芸予地震（3月24日15時28分頃）について（第13報）
|accessdate=2013-10-31}}
* {{Cite web
| title = 平成13年(2001年)芸予地震
| publisher = 消防庁
| date = 2001-09-24
| url = http://www.fdma.go.jp/html/infor/130324geiyo.pdf
| format = PDF
| accessdate = 2013-10-31}}
* {{Cite journal|和書
| author = 土木学会芸予地震被害調査団
| title = 2001年3月24日芸予地震被害調査報告
| publisher = 土木学会
| year = 2001
| url = http://www.jsce.or.jp/report/13/01/report.pdf
| format=PDF
| accessdate = 2013-10-31
|ref=harv}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[気象庁が命名した自然現象の一覧]]
* [[フィリピン海プレート]]
* [[松山市の防災]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
;1905年
* [http://research.kahaku.go.jp/rikou/namazu/index.html 明治芸予地震] 国立科学博物館地震資料室
;2001年
* [http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h14/BOUSAI_2002/html/honmon/hm260107.htm 芸予地震に対してとった措置] 内閣府
* [http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/topics/200103240627/index-j.html 2001/03/24 芸予地震 (Mj 6.4)] - [[東京大学地震研究所]]
* [http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/topics/200103240627/index-j.html 2001/03/24 芸予地震 (Mj 6.4)] - [[東京大学地震研究所]]
* 地震予知連絡会 会報 第66巻
* [https://www.jstage.jst.go.jp/article/zisin/60/3/60_193/_article/-char/ja/ 17世紀以降に芸予地域に発生した被害地震の地震規模] 地震 第2輯 Vol.60 (2007-2008) No.3 p.193-217
** {{PDFlink|[http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou66/08-01.pdf 平成13年（2001年）芸予地震および安芸灘周辺の地震活動状況（防災科研）]}}
* 気象庁
** {{PDFlink|[http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou66/08-02.pdf 「平成13年（2001年）芸予地震」（2001年3月24日M6.7）]}}
** [http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/kyoshin/jishin/010324_geiyo/index.html 強震波形（平成13年(2001年)芸予地震）]


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2013年10月31日 (木) 13:13時点における版

芸予地震の位置（日本内）
芸予地震
芸予地震
1905年および2001年芸予地震の震央。

芸予地震（げいよじしん）は、広島県・山口県東部と愛媛県に跨がって起きた地震。

気象庁により「芸予地震」と名付けられた地震は1905年（明治38年）と2001年（平成13年）の2回があり、区別する為に発生年を冠して「N年芸予地震」あるいは年号を冠した名前で呼ばれる[1]。以下その2つを含めたこの地域で起きた、フィリピン海プレートの動きによる「スラブ内地震」[1]と考えられているものについて記述する。

概要

芸予とは、厳密には安芸国（広島県西部）と伊予国（愛媛県全域）を指す。"芸予諸島"の名でも使われるように、現在では広島県全域と愛媛県の2県の意味合いが強い。つまり芸予地震と名のつく地震はその2県の中間である瀬戸内海で発生しその2県に被害をもたらした地震のことである。

後述メカニズムの項にあるように震源が深部であるため、本州全土から四国・九州と広範囲で揺れるがその規模に対して比較的被害が小さい特徴がある[2]。過去の地震では津波による被害は記録されていない。一方で瀬戸内海沿岸部では液状化現象が発生[3]、この地方特有の地層である風化した花崗岩が堆積した"マサ土"によるがけ崩れ[2]など、地盤災害（土砂災害）やそれに伴う二次災害が発生している。

なおこの地域の北側にあたる山陽地方において、マグニチュード3以上の地震は頻繁に起こる東北地方などと比べても極めて少なく[2]、周辺の活断層は他の地域と比べると少なく日本列島の中でも地殻変動が少ない特徴がある[4]。2001年の地震が発生するまでは暫くこの地域を震源とする大きな地震が発生していなかった[5]ため、地震空白域とされていた。逆に南側である四国愛媛県は、南海地震・豊予海峡地震や日向灘地震で被害に合う想定域であり、更に日本最大級の断層である中央構造線断層帯が東西を横断しており、多大な地震の被害に遭う可能性が高い地域である[6]。2度の芸予地震では広島での被害が多かったが、過去での地震では愛媛での被害が多かった事例もある。

メカニズム

瀬戸内海。広島・山口・愛媛の3県の県境付近が斎灘と安芸灘の境界付近。そこから南側へ伊予灘、豊予海峡と続く。
瀬戸内海。広島・山口・愛媛の3県の県境付近が斎灘と安芸灘の境界付近。そこから南側へ伊予灘、豊予海峡と続く。
南海地震の想定震源域。芸予地震の震源域はそれより北に位置する。
南海地震の想定震源域。芸予地震の震源域はそれより北に位置する。

震源域は瀬戸内海西部にあたり、北は本州広島県・山口県東部、南は四国愛媛県、東は高縄半島、西は周防大島や熊毛半島に囲まれた、斎灘・安芸灘・伊予灘にある。

この地は南海トラフから続く、フィリピン海プレートがユーラシアプレートと衝突しその下にもぐりこむ沈み込み帯の北端付近にあたる[7][2]。沈み込み帯での地震、つまり南海地震では震源は10kmから40kmの深さ[8]にあるのに対し、芸予地震の震源は50kmから60kmと更に深い位置で発生する[2]。このことから、フィリピン海プレートはこの付近で急激に下方（地球内部方向）に折れ曲がり、その際に東西方向の張力が発生しプレート内部を破壊することにより地震が発生すると考えられている[7][2]。

ちなみに沈み込み帯の北端付近にあたることから、一部の資料ではプレート境界型地震と表記されているものもある[9]。また、プレートの具体的な折れ曲がり形状など、まだ不明な点も多い[7]。

また、この地震は一定の間隔で起こる"固有地震"である。例えば檀原毅が1970年発表した論文では発生間隔52年±11年[10]、文部科学省地震調査研究推進本部が2013年現在で公開しているものでは発生間隔約67年としている[1]。ただ一部では、2001年芸予地震では発生したエネルギーが想定よりも小さかったことから、次の地震はこれより短い間隔で発生する可能性があると指摘されている[11]。以下、文部科学省が公表するこの地域での、フィリピン海プレートによるスラブ内地震とされている代表的な地震を列挙する[1][12][13]。

発生日 名称 震央 規模 特記
1649年（慶安2年）
3月17日		 伊予安芸大震 北緯33.7度
東経132.5度		 M7.0
1686年（貞享2年）
1月4日		 - 北緯34.0度
東経132.6度		 M7.2
  • 推定震度:広島・松山・大洲・萩で5強
  • 広島で死者、宮島・萩・岩国・松山で建物崩壊
  • 道後温泉で泥湯噴出
1854年（安政元年）
12月26日		 豊予海峡地震 北緯33.2度
東経132.2度		 M7.4 当該リンク先参照
1857年（安政4年）
10月12日		 伊予大震 北緯34.0度
東経132.5度		 M7.3
  • 推定震度:広島県南部・愛媛県中予～南予・山口県東部で5
  • 特に愛媛沿岸部に被害大、今治城内破損
1905年（明治38年）
6月2日		 芸予地震
（1905年芸予地震）		 北緯34.1度
東経132.5度		 M7.2 下記
2001年（平成13年）
3月24日		 芸予地震
（2001年芸予地震）		 北緯34.1度
東経132.7度		 M6.7 下記

なお上記以外にも大きな被害を出した地震はある。例えば1949年には安居島付近の深さ40kmで発生したM6.2「安芸灘地震」では呉市で2人死者を出している[13]。あるいは1979年山口県熊毛半島付近でM6.0の地震が発生している[14]。

1905年芸予地震

芸予地震
芸予地震の位置（日本内）
芸予地震
地震の震央の位置を示した地図
本震
発生日 1905年（明治38年）6月2日[5][13]
発生時刻 14時39分（JST）[5][13]
震央 日本の旗 日本 安芸灘
北緯34.1度
東経132.5度[5][13]
規模    マグニチュード (M)7.2[1][5][13]
最大震度    震度5～6：
広島県呉市
同県広島市
愛媛県松山市[1][5]
地震の種類 スラブ内地震
被害
被害地域 広島県、愛媛県を中心とする中国・四国地方
プロジェクト:地球科学
プロジェクト:災害
テンプレートを表示

概略

震源は倉橋島の南[5]。東は東京・西は長崎と広範囲で揺れたが、大きな被害は広島湾岸と伊予灘に面した地域と局所的なものに留まった[15]。

そもそもこの本震の前々年から前震が多発しており、1903年（明治36年）に9回、1904年（明治37年）に3回、そして1905年1月から5月の間に3回と続き、6月の本震となった[13]。その後も余震が続いたが中でも、同年同日19時55分（緯度34.0度・経度132.5度・M6.0）、同年12月8日12時08分（緯度34.1度・経度132.6度・M6.1）、同年12月8日13時25分（緯度34.0度・経度132.4度・M6.2）が代表的なものとなった[13]。

顕著な被害は広島県呉市・広島市と愛媛県三津浜（現松山市）・郡中（現伊予市）の沿岸部に集中した[13]。これは江戸時代以降、干拓や埋立によりできた軟弱地盤の上に建てられた建造物の倒壊より被害を出したためであり、特に広島市中心部は太田川下流三角州の沖積平野に形成された街であるため、その弱い地盤が被害を拡大させた[16][17]。一方で震源地付近は海であり、周辺の島々である倉橋・能美島などはほとんどが花崗岩の固い地盤であったため、地震の規模に対して被害は軽かった[16]。また工場、煉瓦家屋、木造住居の順に被害が大きくなる傾向が見られた[18]。

調査および研究資料は比較的少ない[5]。理由の一つとして、当時広島県西部には旧日本軍の拠点（呉：大日本帝国海軍呉鎮守府（呉鎮）、広島：大日本帝国陸軍第5師団）があり、地震の日はちょうど日露戦争での日本海海戦勝利に湧いていた時期であり、軍政が敷かれていたため情報が規制されていたことが挙げられる[9][19]。事実、1905年震災予防調査会がまとめた報告書では、震源地付近に存在しかなりの被害を受けたはずである呉鎮において被害状況はいくつか記載されているものの、トータルでの被害数は記載されていない[20][21]。報道機関が、日本海海戦勝利をポジティブに捉え積極的に報道し、逆に芸予地震をネガティブに捉え消極的に報道した側面もある[19]。

また当時震央付近で機械的なデータが取れる地点として、文部省の広島測候所・松山測候所と呉鎮測器庫の3箇所あったが、松山はデータがとれたが震源から遠かった、広島は計器を購入中だったためデータなし、呉にいたっては普通地震計を倉庫にしまっていた、と良質なデータが取れなかった[16]。つまり強震計も置いていなかった[16]。ただ呉については観測者の目視により正確な発震時刻が記録されており、これが震央特定の重要なデータとなった[22]。

1905年当時はまだプレートテクトニクス理論が提唱されていない状況下で、震災予防調査会のメンバーは地震の原因についていくつか考察している。今村明恒は震源地付近の海の状況から海底下の断層による地震（断層地震説）ではない別の原因の可能性を[23]、小藤文次郎は中央構造線断層帯の影響によるものとして原因を模索している[24]。

各地の震度

以下、弱震（現在の震度2-3）以下を除いた当時の震度[25]。

震度 市町村
烈 呉、広島
強 松山、境港、高知、下関、室戸岬、徳島、浜田、味野、福岡、多度津、新居浜、熊本
稍強 岡山、別子

被害

以下、被害状況を示す[1][20]。煙突破損とは、文字通り煙突の被害。なお全体は1905年震災予防調査会による報告書の数字で呉鎮の被害数はこれに含まれていない[13][20]。カッコ内は中央気象台（現気象庁）年報での数字であり、呉鎮の被害数が含まれているものと考えられている[13]。

市町村 人的被害(人数) 住宅被害(戸) 煙突破損
(戸)
死者 負傷者 全壊 半壊 一部破損
広島県 広島市 4 70 36 20 125 25
呉市 6 86 5
(51)		 25
(57)		 -
(5,957)		 -
安芸郡 1 1 1 1 - -
賀茂郡 - 2 5 - 14 1
佐伯郡 - - 2 1 - -
安佐郡 - 1 7 - 1 -
計 11 160 56 47 140 26
愛媛県 松山市 - 3 1 17 2 3
温泉郡 - 7 5 33 74 2
越智郡 - 3 1 - 14 11
伊予郡 - 4 - 8 141 -
北宇和郡 - - 1 - 2 -
西宇和郡 - - - - 2 -
計 0 17 8 58 235 16
合計 11 177 64 105 375 42

震源地付近（安芸郡、呉市）

画像外部リンク
呉鎮守府の被害写真 - 国立科学博物館地震資料室
1905年芸予地震の際に倒壊した旧部材を用いて再建され現存する呉鎮守府司令長官官舎[26]。後の2001年芸予地震でも建物が傾斜した。
1905年芸予地震の際に倒壊した旧部材を用いて再建され現存する呉鎮守府司令長官官舎[26]。後の2001年芸予地震でも建物が傾斜した。
  • 震災予防調査会報告ではいくつか被災例が記載されているものの、上記の通り過小に記載されている。例えば住宅被害は広島市より少なく[27]、道路・水道（当時は軍用の呉鎮水道のみ）などインフラストラクチャーの被害は極めて少なかった[28]、と記載されている。
  • 呉鎮関連施設にいくつか現地調査が入っている。呉鎮内の施設は木造・煉瓦造・鉄骨造・鉄骨煉瓦造と当時の日本建築の様々な様式の建物が存在し、地盤も山中の花崗岩による堅牢なものから埋立地による軟弱なものまで様々な状況のものが存在した[21]。その異なるケースでの地震被害は貴重な比較データとなり、その後の耐震建築に役立つことになった[21]。
  • 呉鎮が混乱を極めた資料はいくつか残っている。例えば地震直後に呉鎮司令長官が海軍省に打電した電報では混乱している状況が伺え、呉海軍病院では先の日本海海戦での負傷兵に加え地震での負傷者が来院したことから病院は大混乱となりスタッフは奮闘した様子が書かれたものがある[19]。

広島県広島市

  • 広島監獄では、木造平屋建瓦葺の第14工場が全壊、死者2人（看守1・囚人1）、重傷者4人軽傷者20人（全員囚人）を出した[29]。この地は元々水田だったところを1885年（明治18年）から盛土造成した土地であり、形成されてから20年しか経っていない土地の上に監獄（刑務所）という堅牢な建物が作られていた状況であったが、全壊したのが一棟だけで後は傾いたり部分倒壊に留まったため、囚人脱走を防ぐことが出来た[30]。
  • 本願寺広島別院の茶室（嘉永年間ごろ建立）が全壊[31]。
  • 鉄道においては、宇品線丹那駅付近の線路が1尺（約30センチメートル）ほど沈下し、その他宇品線の複数の駅施設が若干傾いたものの大きな被害はなかった[32]。山陽本線太田川鉄橋と宇品線大洲口鉄橋の橋脚にクラックが発生したものの通行に支障はなかった[33]。
  • 道路橋は己斐橋の基礎杭が5尺（約1.5メートル）ほど沈下したのが最大で他は特別被害に合わなかった[34]。

愛媛県松山市/道後

  • 広島と比べると被害が小さく、顕著な建物被害は木造のものであった[35]。その中でも被害が大きかったのが高浜/三津浜地区および伊予郡である。この地区は古くからの漁港であり三津浜港開港以降近代発展した港町で、砂丘の上に雑多な木造建築がある状況が被害を大きくした[36]。

その他

  • 震源に近い山口県岩国で大きな揺れがあったが、その他の地域では大規模な被害はなかった[37]。

2001年芸予地震

芸予地震
芸予地震の位置（日本内）
芸予地震
地震の震央の位置を示した地図
本震
発生日 2001年（平成13年）3月24日
発生時刻 15時27分（JST）
持続時間 約8秒
震央 日本の旗 日本 安芸灘
北緯34度7.7分
東経132度41.7分（北緯34度7.7分秒 東経132度41.7分秒）
震源の深さ 51 km
規模    マグニチュード (M)6.7
最大震度    震度6弱：
広島県河内町（現東広島市）
同県大崎町（現大崎上島町）
同県熊野町
津波 なし
地震の種類 スラブ内地震
余震
最大余震 26日 5時40分
M5.2 震度5強
被害
死傷者数 死者:2人 重軽傷者:288人
被害総額 約193億円
被害地域 広島県、愛媛県を中心とする中国・四国地方
出典：特に注記がない場合は#参考資料による。
プロジェクト:地球科学
プロジェクト:災害
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概略

震源は上蒲刈島の南。地震の規模（マグニチュード）は、気象庁マグニチュード:Mj 6.7[1][4][38]、モーメントマグニチュード:Mw 6.7[2]。震源深さは公式発表で51km[39]。最大震度は6弱[39]。被害総額約193億円[38]。

大型地震の遭遇は、中国地方においては2000年10月に起きた鳥取県西部地震（Mj7.3/Mw6.6）[40]から5ヶ月後、瀬戸内海に面した地域としては1995年1月兵庫県南部地震（Mj7.2/Mw6.9）[40]から6年後のことだった。芸予地震はその2つの地震と規模としては同等であったが、その2つが震源深さ20km前後の直下型地震だったのに対し芸予地震は更に深部でのスラブ内地震であった[2]。一部の地震学者が唱える"西日本地震活動期説"の根拠となった地震の一つ[11]。

なお鳥取県西部地震後、気象庁マグニチュード検討委員会によりマグニチュード計算式の見直しが図られ、芸予地震後である2001年4月23日から先行導入される形で新しい計算式によるマグニチュードが修正された[41][42]。芸予地震のマグニチュードを6.4としている資料は修正前の旧計算式でのものである[39][42]。ちなみにこの新計算式は2003年9月25日に正式採用され現在に至っている[42]。

死者が出た地震としては、愛媛では1946年昭和南海地震以来[6]、広島では1949年安芸灘地震以来[13]のことであった。

余震発生域は本震を北端として南に約20km・深さ40から50kmの範囲に分布し[4]、中でも最大のものが翌々日の26日5時40分(JST) 安芸灘で発生したMj 5.2・深さ50km・最大震度5強である[39]。

表面最大加速度は、震源地付近が海であることから観測点が少なかった一方で、広島県湯来町での830m/s2を筆頭に広島市三原市・愛媛県東予市と震源地から少し離れた3つでピーク域が観測された[43]。これは地層に起因するものであり[44]、この3地域では特異な被害を受けている。

震央から最も近い広島県呉市は県内3番目の人口を誇る特例市であり、戦前から呉鎮とともに発達した"古い町"で、土地はすり鉢状で平野が狭く急傾斜地ギリギリまで土地開発している"坂の町"であったことから、石積・ブロック擁壁の崩落やそれに伴う木造建築の崩壊が深刻なレベルで発生した[45][46]。その土地の特性上、重機搬入も難しく復旧までに時間を擁した[47]。また、先の芸予地震では呉鎮の被害が顕著だったが、今回の地震では海上自衛隊呉基地関連施設の被災状況はどの資料にも記載されていない。防衛省の資料では兵庫県南部地震での海自阪神基地の被災状況は公開されている[48]ことから、単に被害がなかったためと思われる。なお地震直後のライフライン復旧にはその呉基地から応援が出ている[39][49]。

山陽地方側は事実上地震空白域だったため住民の危機感が薄く[11]、地震直後も普段と変わらない生活をおくったものがかなり存在した[50]。これは被害が大きかった呉市を除き、自治体による避難勧告がほぼ出されなかったためでもある[51]。自治体・企業が、兵庫県南部地震規模の地震を想定し地震対策を行っていたため、被害が小さかった部分もある[11][51]。住民が災害情報を得たメディアは9割近くがテレビ・ラジオだったことに加え[11]、この地震や先の鳥取地震が起きた2000年代初頭は行政側が公式ホームページ上で情報を公開しそれをインターネットを通じて住民が得る状況になった[52]。

各地の震度

以下気象庁が発表した震度4以上の各地の震度を、当時の自治体名で表記する[38][53][54]。

震度 県 市区町村
6弱 広島県 河内町、大崎町、熊野町
5強 広島県 千代田町、三原市、豊栄町、本郷町、安芸津町、安浦町、川尻町、豊浜町、豊町、久井町、向島町、広島市西区、広島市安佐南区、広島市安佐北区、呉市、廿日市市、府中町、海田町、音戸町、倉橋町、下蒲刈町、能美町、沖美町、大柿町、黒瀬町
山口県 阿東町、岩国市、柳井市、久賀町、大島町、東和町、橘町、和木町、大畠町、田布施町、平生町
愛媛県 今治市、丹原町、波方町、大西町、菊間町、吉海町、弓削町、生名村、岩城村、上浦町、大三島町、松山市、久万町、松前町、砥部町、三瓶町、宇和町、吉田町
5弱 島根県 羽須美村、桜江町、三隅町
広島県 豊平町、吉田町、八千代町、甲山町、世羅西町、吉舎町、三良坂町、尾道市、福山市、福富町、東野町、瀬戸田町、御調町、内海町、新市町、広島市中区、広島市南区、広島市安芸区、坂町、蒲刈町、大和町、宮島町、佐伯町、木江町、江田島町
山口県 周南市、下松市、光市、由宇町、玖珂町、周東町、美和町、上関町、大和町、小郡町
愛媛県 新居浜市、西条市、小松町、朝倉村、玉川町、宮窪町、関前村、重信町、中島町、中山町、宇和島市、大洲市、五十崎町、保内町、伊方町、明浜町、野村町、三間町
高知県 高知市
大分県 上浦町
4 鳥取県 境港市、羽合町、東郷町、北条町、岸本町、日吉津村、淀江町
島根県 出雲市、安来市、平田市、玉湯町、伯太町、仁多町、大東町、斐川町、湖陵町、大社町、仁摩町、川本町、大和村、弥栄村、美都町、匹見町、日原町、柿木村
岡山県 倉敷市、玉野市、笠岡市、井原市、高梁市、御津町、山陽町、熊山町、佐伯町、邑久町、長船町、灘崎町、早島町、山手村、清音村、船穂町、金光町、鴨方町、寄島町、里庄町、矢掛町、真備町、賀陽町、落合町、久世町、美甘村
広島県 三次市、庄原市、加計町、筒賀村、戸河内町、大朝町、神石町、神石郡三和町、上下町、総領町、甲奴町、布野村、作木村、双三郡三和町、口和町、高野町、神辺町、広島市東区、東広島市、君田村、美土里町
山口県 萩市、川上村、阿武町、田万川町、むつみ村、須佐町、山口市、防府市、新南陽市、本郷村、錦町、熊毛町、徳地町、秋穂町、阿知須町、宇部市、豊北町
徳島県 徳島市、小松島市、石井町、藍住町、半田町、穴吹町、三加茂町、西祖谷山村、海南町、宍喰町
香川県 高松市、津田町、志度町、寒川町、土庄町、池田町、牟礼町、塩江町、香川町、香南町、直島町、坂出市、善通寺市、観音寺市、綾上町、綾南町、国分寺町、綾歌町、飯山町、宇多津町、満濃町、琴平町、多度津町、仲南町、高瀬町、山本町、三野町、大野原町、豊中町、詫間町、仁尾町、豊浜町、財田町
愛媛県 川之江市、新宮村、土居町、別子山村、伯方町、魚島村、面河村、柳谷村、小田町、双海町、八幡浜市、長浜町、内子町、河辺村、瀬戸町、城川町、広見町、松野町、日吉村、津島町、内海村、城辺町、一本松町
高知県 安芸市、須崎市、土佐山田町、宿毛市、窪川町、大方町
佐賀県 北茂安町、有明町
熊本県 波野村、菊水町
大分県 宇佐市、真玉町、香々地町、国見町、姫島村、国東町、山香町、大分市、臼杵市、日出町、佐伯市、津久見市、鶴見町、蒲江町、千歳村、荻町
宮崎県 高千穂町

また大韓民国でも揺れが伝わり、釜山ではメルカリ震度階級で3から4の震度を記録している[55]。

被害

以下、消防庁確定報における被害数を記載する[38]。上から全国地方公共団体コード順。

県 人的被害(人数) 住宅被害(戸)
死者 負傷者 全壊 半壊 一部破損
島根県 0 3 0 0 10
岡山県 0 1 0 0 17
広島県 1 193 65 688 36,545
山口県 0 12 3 46 1,437
香川県 0 0 0 0 6
愛媛県 1 75 2 40 11,196
高知県 0 4 0 0 12
福岡県 0 0 0 0 0
大分県 0 0 0 0 0
計 2 288 70 774 49,223
休山から見た呉中心部の呉港。沿岸が港湾および工業施設が発達している一方で平野が狭くすぐ丘陵が迫っているのがわかる。この丘陵に造られた住宅地で宅地擁壁の崩壊とそれに伴う木造建築倒壊が発生した。
休山から見た呉中心部の呉港。沿岸が港湾および工業施設が発達している一方で平野が狭くすぐ丘陵が迫っているのがわかる。この丘陵に造られた住宅地で宅地擁壁の崩壊とそれに伴う木造建築倒壊が発生した。
芸予諸島全体。安芸灘とびしま海道の"芸"の字のあたりが震央。
芸予諸島全体。安芸灘とびしま海道の"芸"の字のあたりが震央。

災害関連法適用市町村

以下は災害救助法適用市町村[39]。このうち呉市にのみ更に被災者生活再建支援法が適用されている[56]。
  • 広島県
    • 広島市
    • （現呉市域） - 呉市、下蒲刈町、蒲刈町、川尻町、豊浜町、豊町
    • 三原市
    • 宮島町（現廿日市市）
    • 河内町（現東広島市）
    • （現大崎上島町域） - 大崎町、東野町、木江町
  • 愛媛県
    • 今治市

人的被害

  • 死者は2人。一人は広島県呉市で隣家の崩れたブロック塀壁の下敷きとなったもの、もう一人は愛媛県北条市（現松山市）で落下してきた自宅ベランダの下敷きになった[57]。
  • 負傷者の特徴として、家屋内での落下物によるものと、店舗・工場内での火傷によるものが多かった[58]。また高齢者を中心に避難途中での瓦礫による負傷者が続出した[58]。

ライフライン

  • 顕著な被害となったのが水道である。断水戸数は全体で48,436戸、そのうち呉市およびその周辺島嶼部では最大で32,910戸が断水している[39][49]。特に島嶼部では、1系統しかない幹線水道管が止まったことにより被害が拡大し、断水の間自衛隊の給水応援でしのぎ、3日後である同月27日には断水解消された[39][49]。
  • 電気は、中国電力管轄内で48,000戸が停電したが同日19時08分に復旧、四国電力管轄内では8,029戸が停電したが同日17時16分に復旧している[49][39]。
  • ガス・電話は特に顕著な被害なし[39]。道路自体は早期復旧可能なレベルのひび割れが発生した程度[59]。これらは阪神淡路大震災後に耐震性に優れたものに強化したためと見られている[60]。
  • 鉄道も点検のため運転を見合わせた[39]。
  • 三原駅の西側・宮浦町付近のJR山陽新幹線高架が連続的に損傷した[61]。なお広島県内での新幹線高架の被害は剥落などはあったものの、応急処置が必要なレベルで損壊したのはこの地区のみ[61][62]。

地盤災害（がけ崩れ・液状化現象）

  • 上記の通り呉市は特に、その他広島・愛媛県内のいくつかで宅地での斜面崩壊が起こり住民は一時避難を余儀なくされた[3]。
  • がけ崩れによる道路規制は、全面通行止が33箇所、片側規制が20箇所[63]。広島県河内町内での国道432号において、トラックに落石が直撃し大破した[63]。
  • JR三江線では落石によりレールが歪んだが、徐行運転で対応し同日夕方には復旧している[64]。
  • 河川堤防天端に亀裂が発生、そのうち愛媛県石手川のみ応急処置を施している[39]。
  • この地域は瀬戸内海式気候に属し降雨が少ないため各地に農業用ため池が存在する。その堤体のひび割れ被害は広島県東広島市で33箇所、山口県美和町・玖珂町で4箇所発生し、うち1つの池で漏水もしている[3]。
  • 液状化現象は、噴砂については広島湾に面した地域・呉阿賀地区から竹原にかけて・愛媛県松山市など広い範囲で発生したが、どれも早期復旧可能なレベルで構造物破壊にまでは至らなかった[43][65]。変わった場所としては、広島東洋カープの選手寮兼練習場である"大野屋内総合練習所"で噴砂が発生した[66]。

その他特記

来島海峡第一大橋。"ステイロープ"とは写真手前左側の道路標識の後ろに見える垂直ではなくハの字に伸びる2本のロープ。その"ロッド"とはロープ下端の写真に映る白い筒状のものの更に下にある。破断したのは"センター"つまり中央支間のもの[67]。
来島海峡第一大橋。"ステイロープ"とは写真手前左側の道路標識の後ろに見える垂直ではなくハの字に伸びる2本のロープ。その"ロッド"とはロープ下端の写真に映る白い筒状のものの更に下にある。破断したのは"センター"つまり中央支間のもの[67]。
  • 学校の体育館天井の内装・仕上材などの二次部材が落下する被害が目立ったが、春休み期間中であったため人的被害は少なかった[46]。
  • 鉄筋コンクリート造の建築物のうち、松山市立湯築小学校・広島県立西条農業高等学校などといった校舎が中破した[46]。ただ西条農の中破した校舎のみコンクリート強度が設計基準を大幅に下回っていたことがわかり[68]、施工不良つまり手抜き工事だったと判明した。
  • 震源地付近で整備された港湾施設のうち、須波港では江戸時代楢崎正員によって造られ広島県の史跡である防波堤"須波波止"が崩壊した[69]。液状化現象以外で崩壊した港湾施設はこれのみ[69]。
  • 震源地付近には、世界遺産に選ばれた厳島神社や原爆ドーム、その他にも松山城・今治城・広島城など歴史的な建築物が多々あったが、それらの被害は軽いものだった[46]。重要度の高い文化財のうち地震後立入禁止となったのは、入船山記念館（国重文）と三段峡（国特別名勝）の2つのみ[70]。
  • 瀬戸内海沿岸の石油化学コンビナートにおいて、山口県周南市の"周南コンビナート"は、創設以来初めての大型地震に遭遇ししばらく業務停止に陥った[71]。同県岩国市"岩国コンビナート"では軽油10リットルが海上に流出した[39]。
  • 瀬戸内海には本州四国連絡橋や安芸灘諸島連絡架橋などの長大橋があるが、具体的な被害があったのは来島海峡第一大橋のみ[72]。うち唯一、センターステイのロッドが4つすべて破断したものの、これは大規模な地震が発生した場合に橋全体が一体として動かないよう意図的に壊れるように設計の段階から考えられていたもので、想定の範囲内でのことだった[67][72]。
  • 宮島競艇場でもかなりの被害を受けた。その中で西スタンドは2階・3階部分を閉鎖した状況で運用してきたが、財政難により改修が進まず10年近く閉鎖したままであった[73]。2013年にスタンド改修が決まり、今後整備される予定となった[74]。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h 文部科学省地震調査研究推進本部
  2. ^ a b c d e f g h 広島大学地球惑星システム学 (1991年). “広島での地震活動について”. 広島大学. 2013年10月31日閲覧。
  3. ^ a b c 土木学会芸予地震被害調査団 2001, p. 8.
  4. ^ a b c 土木学会芸予地震被害調査団 2001, p. 1.
  5. ^ a b c d e f g h 古川智、原弘明、谷口仁士、三浦房紀「1905年芸予地震による広島地域の地震動の推定（その1）　工学的基盤での特性」（PDF）『土木学会中国四国支部研究発表会講演概要集』、文部科学省地震調査研究推進本部課、1991年、50-51頁、2013年10月31日閲覧。 
  6. ^ a b “愛媛県の地震活動の特徴”. 文部科学省地震調査研究推進本部. 2013年10月31日閲覧。
  7. ^ a b c 石川有三 (2001年7月). “「平成13 年（2001 年）芸予地震」の概要” (PDF). 日本地震学会広報誌. 2013年10月31日閲覧。
  8. ^ 中央防災会議 (2004年2月27日). “南海トラフ巨大地震対策について” (PDF). 内閣府政策統括官（防災担当）. 2013年10月31日閲覧。
  9. ^ a b 越智秀二. “芸予地震はなぜ起きた？”. 新興出版社啓林館. 2013年10月31日閲覧。
  10. ^ 檀原毅「地域別地震の周期性と潜在エネルギー（国）」（PDF）『地震予知連絡会』第3巻、国土地理院、1970年7月、79-87頁、2013年10月31日閲覧。 
  11. ^ a b c d e “［検証］2001年の自然災害” (PDF). 国土交通省河川局 (2001年). 2013年10月31日閲覧。
  12. ^ 震災予防調査会 1905, p. 3.
  13. ^ a b c d e f g h i j k l “過去の被害地震”. 東京大学地震研究所 広島地震観測所. 2013年10月31日閲覧。
  14. ^ “山口県の地震活動の特徴”. 文部科学省地震調査研究推進本部. 2013年10月31日閲覧。
  15. ^ 震災予防調査会 1905, p. 29.
  16. ^ a b c d 震災予防調査会 1905, p. 2.
  17. ^ 震災予防調査会 1905, p. 39.
  18. ^ 震災予防調査会 1905, p. 21-22.
  19. ^ a b c “芸予地震の呉被害を論文に”. 中国新聞 (2012年8月12日). 2013年10月31日閲覧。
  20. ^ a b c 震災予防調査会 1905, p. 10.
  21. ^ a b c 震災予防調査会 1905, p. 53.
  22. ^ 震災予防調査会 1905, p. 8.
  23. ^ 震災予防調査会 1905, p. 21.
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参考資料

全般

1905年芸予地震

2001年芸予地震

関連項目

外部リンク

1885年以降に日本で発生した主な地震
 
1885年 - 1899年
1885年 - 1889年
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