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「フィッシュ・アンド・チップス」の版間の差分

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{{Otheruses|料理|1990年代後半に活動した日本の音楽グループ|Fish and Chips}}
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[[ファイル:Fish_and_chips.jpg|thumb|right|300px|典型的なフィッシュ・アンド・チップス]]
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[[ファイル:Fried Fish and French Fries.jpg|thumb|right|300px|フィッシュ・アンド・チップス([[サンディエゴ]]で撮影)]]
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[[ファイル:Fish and chips with peas.jpg|thumb|right|300px|フィッシュ・アンド・チップス([[ロンドン]][[パブ]]で撮影)]]
'''フィッシュ・アンド・チップス''' {{lang-en|fish-and-chips}} または {{lang-en|Fish 'n' chips}})は、[[イギリス]]を代表する[[料理]]のひとつ。
歴史ある[[ファーストフード]]の一つである手軽な食事。[[:Category:白身魚|白身魚]]の切り身(あるいは{{仮リンク|シュリンプ|en|Shrimp}})のフライと[[ジャガイモ]]を細い棒状に切って油で揚げたチップスをあわせた料理である。
<!--[[ファイル:Fried Fish and French Fries.jpg|thumb|魚のフライとフレンチフライ]]-->
'''フィッシュ・アンド・チップス''' ({{lang-en|fish-and-chips}} または {{lang-en|Fish 'n' chips}})は、[[イギリス]]を代表する[[料理]]のひとつ。歴史ある[[ファーストフード]]の一つである手軽な食事。


'''バタード・フィッシュ'''(Battered fish)と表記される場合もあり<ref name="ishii">石井『英国フード記 AtoZ』、p.45</ref>、日本語では「魚のフライとじゃがいものから揚げ」と表記されることもある<ref name="be122">ベイリー『イギリス料理』、p.122</ref>。
== 概略 ==
[[タラ]]や[[カレイ]]、[[オヒョウ]]などの[[:Category:白身魚|白身魚]]の切り身に、[[小麦粉]]を卵や水または[[ビール]]で溶いた衣をつけて油で揚げたものと、[[ジャガイモ]]を細い棒状に切って油で揚げたチップスと合わせて供する。この場合のチップスは、薄くパリッとした[[ポテトチップス]]のことではなく、日本で言うところの[[フライドポテト]]([[アメリカ合衆国|アメリカ]]で言うフレンチフライ)の[[イギリス英語|イギリスでの呼び名]]である。
一概には言えないが、大体のカロリーは一人前(魚の切り身小一切れにジャガイモ中一個分)で450キロカロリー程。


== 歴史 ==
== 食材 ==
[[Image:Frying range.JPG|thumb|right|200px|調理用のフライヤー]]
[[:Category:白身魚|白身魚]]の切り身を揚げた料理は、少なくとも[[中世]][[ヨーロッパ]]に存在していた。[[新大陸]]から[[ジャガイモ]]がもたらされると、[[17世紀]]にはヨーロッパ各地でジャガイモを揚げた料理も作られるようになった。両者はしばらく別々のもので、これがいつどこで組み合わされるようになったかは諸説入り乱れている。記録に残る限りでは、[[1860年]]に[[ロンドン]]の[[ジョセフ・マリン]]が開いたフィッシュ・アンド・チップスの店が最古のものである。[[19世紀]]後半に[[底引き網]]漁の[[技術革新]]が起こり、[[北海]]の魚が安価に手に入るようになると、フィッシュ・アンド・チップスは[[労働者階級]]の日常食になった。[[第二次世界大戦]]下のイギリスで[[配給制]]がとられたとき、数少ない配給食糧のひとつがフィッシュ・アンド・チップスであった。戦後もフィッシュ・アンド・チップスは安価な[[ファーストフード]]として、一定の人気を維持している。
=== 魚 ===
フライにされる魚は基本的に白身魚であり、[[コダラ|ハドック]]や{{仮リンク|コッド|en|Cod}}などの[[タラ]]、[[プレイス]]などの[[カレイ]]、[[オヒョウ]]が使われる<ref name="ishii"/><ref name="be122"/><ref name="co106">クック『英国おいしい物語』、p.106</ref><ref name="yamauchi">山内「料理と酒」『イギリス』、p.285</ref>。また、シュリンプや[[ロブスター]]が食材に使われる場合もあり<ref name="ishii"/>、低湿地である{{仮リンク|フェンランド|en|Fenland}}ではウナギがフライの材料に使われる<ref>林『イギリスはおいしい』、pp.74-75</ref>。魚のサイズは通常ミディアム(もしくはスモール)とラージの2種があり、ミディアムを注文するとおよそ長さ20cm・幅10cm・厚さ3cmのサイズの魚の切り身が調理される。<ref>林『イギリスはおいしい』、p.74</ref>。

=== 衣 ===
魚に付ける衣は[[小麦粉]]を卵や水で溶いたものであるが、レシピは店によって異なる。小麦粉を水で溶いた生地に色合いを付けるために少量の[[炭酸水素ナトリウム|重曹]]と酢を入れるのが伝統的であり、重曹と酢が加えられた生地には泡が立っている。苦みと食感を加えるために[[ビール]](エール)を入れたり<ref name="ishii"/>、[[パンケーキ]]や[[ヨークシャー・プディング]]の生地のレシピを若干変えたものを衣にしている店も存在する<ref name="co106"/>。

ビールに含まれる二酸化炭素の働きによって、生地は明るい橙褐色に変化する。ビールの種類によって生地の風味も変化し、[[ラガー (ビール)|ラガー]]を使用する店もあれば<ref>{{cite web|url=http://www.bbc.co.uk/food/recipes/database/deepfriedfishinbeerb_67776.shtml|title=Deep fried fish in beer|date=|accessdate=2009-03-23}}</ref><ref>{{cite news|url=http://www.independent.co.uk/life-style/food-and-drink/recipes/gurnard-in-beer-batter-772989.html|title=Gurnard in beer batter|date=2008-01-26|accessdate=2009-03-23 | work=The Independent | location=London | first=Mark | last=Hix}}</ref>[[スタウト]]や{{仮リンク|ビター (ビール)|en|Bitter (beer)|label=ビター}}を使用する店も存在する。生地に含まれるアルコール分は調理中に飛ばされ、出来上がったフィッシュ・アンド・チップスにアルコール分はほとんど含まれていない。

=== ジャガイモ ===
フィッシュ・アンド・チップスに付く「チップス」は、薄くパリッとした[[ポテトチップス]]のことではない<ref group="注">イギリス英語では、ポテトチップスは「クリスプス」という単語で呼ばれる。</ref>。[[フライドポテト]]([[アメリカ合衆国|アメリカ]]で言うフレンチフライ)の[[イギリス英語|イギリスでの呼び名]]であり、アメリカ資本のファーストフードチェーンで出されるフライドポテトに比べてイギリスのチップスは太い<ref name="ishii"/>。食用油が浸透するのはフライドポテトの比較的浅い部位に留まり、フライドポテトに含まれる脂肪分は表面積に比例する。チップスの表面積はフレンチフライに比べて小さく、含まれる脂肪分も少なくなる。また、チップスはフレンチフライよりも長い調理時間を要する。

=== 油 ===
伝統的には[[ヘット]]や[[ラード]]が使用されていたが、現在では{{仮リンク|ピーナッツ・オイル|en|Peanut oil}}などの[[植物性脂肪|植物油]]が主流である。しかし、イングランド北部と[[スコットランド]]の少数の店と北アイルランドの多くの店では、未だにラードが使用されている。ラードは料理に独特の風味を与えるが、反面[[ベジタリアニズム|ベジタリアン]]と肉食や牛肉を忌避する宗教の信者からは敬遠される。また、イギリスではフィッシュ・アンド・チップスを揚げた後に出る廃油が、[[バイオディーゼル]]燃料の原料として再利用されている<ref>{{cite web|url=http://www.planetark.com/dailynewsstory.cfm/newsid/47581/story.htm |title=German Biodiesel Firm To Use Chip Fat |publisher=Planetark.com |date=2008-03-19 |accessdate=2009-06-22}}</ref>。


== 食べ方 ==
== 食べ方 ==
[[モルトビネガー]]([[麦芽]]を原料とする[[酢|穀物酢]])と[[食塩]]をかけて[[マッシイピー]](潰した緑色の豆)と共に熱いうちに食べるのが、伝統的かつ一般的だが、[[マヨネーズ]]や[[タルタルソース]]などをかけて食べることもある。[[カレーソース]]、[[ケチャップ]]や[[ウスターソース]]、[[醤油]]や[[マヨネーズ]]など好みにより、多様な味付けを行なってよい。飲食店内では皿に載せて供される。[[テイクアウト]]の場合、かつては日本の[[石焼き芋]]のように、紙袋に入れるか[[円錐]]型に丸めた[[新聞紙]]に包まれて渡されることが多く、現在は[[発泡スチロール]]の容器に入れて提供する店もある。[[ファストフード]]店では、フィッシュを[[バンズ]]に挟み、チップス([[フライドポテト]])とともに供するのも一般的である
[[モルトビネガー]]([[麦芽]]を原料とする[[酢|穀物酢]])と[[食塩|塩]]をかけて[[マッシイピー]](潰した緑色の豆)と共に熱いうちに食べるのが、伝統的かつ一般的だが、[[マヨネーズ]]や[[タルタルソース]]などをかけて食べることもある。[[カレーソース]]、[[ケチャップ]]や[[ウスターソース]]、[[醤油]]や[[マヨネーズ]]など好みにより、多様な味付けを行なってよい。

[[パブ]]やイスとテーブルが置かれたフィッシュ・アンド・チップス<ref group="注">イスとテーブルを設置され、皿とともにナイフとフォークが準備される形態の店舗はソフィスティケイテッド・フィッシュ・アンド・チップス(Sophisticated fish and chips)と呼ばれる。(林『イギリスはおいしい』、p.80)</ref>の店では、皿に載せて供される。

== 包装 ==
フィッシュ・アンド・チップスを持ち帰る場合、フライは白紙で包まれ、白紙の外側に油分を吸収する[[新聞紙]]が巻かれた状態で提供される<ref name="yamauchi"/>。あるいは、円錐状に丸められた新聞紙か[[わら半紙]]に入れられて渡されることも多かった<ref>林『イギリスはおいしい』、p.78</ref>。

かつては新聞紙に包んで客に出すのが半ば常識になっていたが<ref>ベイリー『イギリス料理』、p.112</ref>、衛生面の問題で新聞紙を包装に使用することは禁止されている<ref name="co106"/>。新聞紙の印刷に使用されるインクに含まれる[[鉛]]の中毒性が指摘されたためであるが、印刷業者は現在新聞の印刷に使用されるインクに健康上の害は無いと述べている<ref>{{cite web|url=http://www.mhm.de/ti/ZD49102E.pdf|format=PDF|title=Newspaper inks and the environment|accessdate=2007-10-27|month=September|year=2003|author=Huber Group}}</ref>。現在は禁止された新聞紙の代用として、新聞紙の柄を印刷した包装用の用紙が使われることも多い。また、『[[タイムズ]]』よりも『[[ザ・サン]]』で包んだほうがフライが美味になるという俗説も存在する<ref>小林章夫『イギリス紳士のユーモア』(講談社現代新書, 講談社, 1990年10月)、p.65</ref>。

== 歴史 ==
=== 魚とジャガイモ ===
[[19世紀]]中ごろのイギリスでは、既に魚のフライとポテト・チップスが店舗で販売されていた<ref name="kawakita177">川北『イギリス』、p.177</ref>。魚のフライの販売業は[[ロンドン]]を発祥としており、1840年代の[[ソーホー (ロンドン)|ソーホー]]では魚のフライをごく普通に購入することができた<ref name="kawakita177"/>。ポテト・チップスの販売業は[[ランカシャー]]を中心とする工業地帯で始まったが、これはイギリスにおいてジャガイモを食用にする習慣は北部から広まったことに由来する<ref name="kawakita179">川北『イギリス』、p.179</ref>2つのフライが「フィッシュ・アンド・チップス」として一緒に販売される形態が普及するのは1860年代以降である<ref name="kawakita174">川北『イギリス』、p.174</ref>。

フィッシュ・アンド・チップスの正確な起源は不明であるが、[[ヴィクトリア朝]]期に多数存在したホット・パイ・ショップが発祥だと推測されている
<ref name="kawakita177"/>。ホット・パイ・ショップではパイ以外に魚のフライとチップスも売られていたが、次第にパイではなく魚のフライとチップスが中心になったと考えられている<ref name="kawakita177"/>。魚のフライとチップスを提供する店は「'''フィッシュ・アンド・チップス'''」と呼ばれ、そこで出される料理そのものも店と同じ名前で呼ばれた<ref>川北『イギリス』、pp.173-174</ref>。記録に残る限りでは、[[1860年]]にロンドンのジョセフ・マリンが開いたフィッシュ・アンド・チップスが最古のものである<ref>{{cite news|url=http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2003/jan/19/foodanddrink.restaurants|title=Enduring Love |publisher= |accessdate=2003-01-19 | work=The Guardian | location=London | first=Jay | last=Rayner | date=2005-11-03}}</ref>。

=== 産業革命との関係 ===
フィッシュ・アンド・チップスが普及した背景には、[[産業革命]]による技術革新が存在していた<ref name="kawakita181">川北『イギリス』、p.181</ref>。

産業革命前は新鮮な生魚を遠方に輸送する手段は存在していなかったが、[[鉄道]]網の整備と[[蒸気船]]の登場により、ロンドンなどの大都市に迅速に制御を輸送することが可能となった<ref>川北『イギリス』、pp.181-182</ref>。また、生魚の保存に役立つ冷凍技術が発達し、1880年代に導入された[[トロール漁業]]によって多量の魚を獲ることが可能となった<ref>川北『イギリス』、p.175,182</ref>。

産業革命期の労働者は安価で、すぐに食べられ、さらに腹持ちの良い食事を求めており<ref>ベイリー『イギリス料理』、p.111</ref>、イギリスの工業化の進行とともに魚のフライとチップスの組み合わせは、労働者の食事の主体として普及する<ref name="kawakita181">川北『イギリス』、pp.173-174</ref>。

=== 20世紀以降 ===
20世紀の初頭、ロンドンには約1200軒のフィッシュ・アンド・チップスが存在していた<ref name="kawakita180">川北『イギリス』、p.180</ref>。フィッシュ・アンド・チップスは庶民にとっての最初の外食産業であり<ref name="kawakita182">川北『イギリス』、p.182</ref>、1930年代になると中流階級もフィッシュ・アンド・チップスを利用するようになる<ref name="kawakita182">川北『イギリス』、p.175</ref>。井戸端会議の集会場、若者のたまり場としてフィッシュ・アンド・チップスは都会の労働者階級の社交場としての地位を確立する<ref name="kawakita181">川北『イギリス』、pp.175-176</ref>。パブの衰退と同時期に、パブよりも健全なたまり場であるフィッシュ・アンド・チップスの台頭が始まる<ref name="kawakita176">川北『イギリス』、p.176</ref>。

1913年には英国国立フィッシュ・アンド・チップス協会("The British National Federation of Fish Friers")が設立され、フィッシュ・アンド・チップスの売り込みと調理法の教育が提供された。

[[第二次世界大戦]]下のイギリスで[[配給制]]がとられたとき、数少ない配給食糧のひとつがフィッシュ・アンド・チップスであった<ref>{{cite web|url=http://www.rls.org.uk/database/record.php?usi=000-000-001-467-L |title=Resources for Learning, Scotland: Rationing |publisher=Rls.org.uk |date=1998-01-05 |accessdate=2009-06-22}}</ref>。戦後もフィッシュ・アンド・チップスは安価な[[ファーストフード]]として、一定の人気を維持している。

1970年代のロンドンにはフィッシュ・アンド・チップスの店が多く現れ、町中に屋台が建ち並んでいた<ref name="kawakita254">川北『イギリス』、p.254</ref>。70年代の初頭には夕方になると新聞紙に包まれたフィッシュ・アンド・チップスを手に労働者たちが帰宅する光景が見られた<ref name="kawakita174"/>。また、70年代から80年代のロンドンでは、地下鉄やバスの乗務員として多く雇用されたカリブ系黒人女性が夕食にフィッシュ・アンド・チップスを持ち帰る姿がしばしば見られた<ref name="kawakita176"/>。現在、外資系のファーストフードチェーンに押され、屋台の数は減少している<ref>出口保夫、小林章夫、齊藤貴子編『21世紀イギリス文化を知る事典』(東京書籍, 2009年4月)、pp.432-433</ref>。

== 販売形態 ==
[[Image:Fishandchips z01.jpg|thumb|right|200px|ロンドンのフィッシュ・アンド・チップスの店]]
フィッシュ・アンド・チップスを販売している店は「チッピー(chippy)」と呼ばれ<ref name="co106"/>、イギリス各地に多数の店舗が存在する<ref>林『イギリスはおいしい』、p.73</ref>。また、発祥地のイギリスでは洒落を効かせて"The Batter Plaice"、""A Salt and Battery"、"The Codfather"、"The Fish Plaice"などの名前で呼ばれることもある。

イギリス、[[アイルランド]]、[[オーストラリア]]、[[ニュージーランド]]、北アメリカでは、フィッシュ・アンド・チップスは通常独立した店舗において[[テイクアウト|テイク・アウェイ]]方式で販売されている。店舗の営業規模はごく小規模の自営業者から[[チェーンストア]]に至るまで幅広く、地方の市場の多くで経営される地元資本のシーフードレストランでもポピュラーな料理となっている。また、臨時的な店舗として、[[移動販売]]の形態をとるチップ・バンズが存在する<ref>http://www.mobilecateringuk.co.uk/how-to-start-up-mobile-catering-business.htm</ref>。

最も優れたフィッシュ・アンド・チップスの店を選出するコンクールが多く存在し<ref name="seafish1">{{cite web|url=http://www.seafish.org/plate/fishandchips.asp?p=gf182|title=The Fish & Chip Shop of the Year Competition|accessdate=2007-01-04|publisher=Seafish}}</ref><ref name="seafish2">{{cite web|url=http://www.seafish.org/plate/fishandchips.asp?p=gf502|title=Frier's Quality Award|accessdate=2007-01-04|publisher=Seafish}}</ref>、コンクールで入賞することは[[大衆文化]]における一種のステータスとなっている<ref name="bbc1">{{cite news|url=http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/4670504.stm|title=Couple scoop best chip shop award|accessdate=2007-01-04|publisher=BBC News| date=2006-02-01}}</ref>。

== オセアニアにおけるフィッシュ・アンド・チップス ==
オーストラリアやニュージーランドでもフィッシュ・アンド・チップスの販売は一般的な事業であり、[[華僑]]を初めとするアジア系移民の主要な働き口となっている<ref>{{cite book|author=Swillingham, Guy|title=Shop Horror|publisher=Fourth Estate|location=London|year=2005|isbn=0-00-719813-2}}</ref>。オーストラリアやニュージーランドでは「外で夕食をすませる」という言葉はフィッシュ・アンド・チップスの店に行くか、あるいはパイ・カート<ref group="注">トレーラーで営業するカフェ。[[ミートパイ]]に様々なトッピングを付けて提供する。</ref>を利用することを意味する<ref name="ken">『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典』1、p.420</ref>1960年代からフィッシュ・アンド・チップスの店はアメリカ式のファーストフード店との競合にさらされ、持ち帰り用のメニューに中華料理などの別の料理を加える努力が行われている<ref name="ken"/>。

== 脚注 ==
=== 注釈 ===
<references group="注"/>
=== 引用元 ===
<references/>

== 参考文献 ==
* 石井理恵子『英国フード記 AtoZ』、pp.44-47(三修社, 2006年1月)
* 川北稔『イギリス』(世界の食文化17, 農山漁村文化協会, 2006年7月)
* 林望『イギリスはおいしい』(平凡社, 1991年3月)
* 山内玲子「料理と酒」『イギリス』収録(小池滋監修, 読んで旅する世界の歴史と文化, 新潮社, 1992年5月)
* エイドリアン・ベイリー『イギリス料理』(江上トミ日本語版監修, タイムライフインターナショナル, 1972年)
* ジェイン・ベスト・クック『英国おいしい物語』(原口優子訳, 東京書籍, 1994年9月)
* 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典』1(石毛直道他監訳, 朝倉書店, 2004年9月)

== 翻訳元記事参考文献 ==
* {{cite book | title = Frying tonight: the saga of fish & chips | author = Gerald Priestland |publisher = Gentry Books |url =http://books.google.com/books?id=VsDfAAAAMAAJ | year = 1972 | pages = | isbn = 0-85614-014-7 | accessdate = 11 April 2012 }}
* Walton, John K (2000) [http://books.google.co.nz/books?id=r6d7nY7SyC0C&printsec=frontcover&dq=%22Fish+%26+Chips+%26+the+British+Working+Class,+1870-1940%27&hl=en&sa=X&ei=2Om2T_SwI-itiAeJ5pThCA&ved=0CDgQ6AEwAA#v=onepage&q=%22Fish%20%26%20Chips%20%26%20the%20British%20Working%20Class%2C%201870-1940%27&f=false ''Fish & Chips & the British Working Class, 1870-1940] Continuum International Publishing Group. ISBN 9780718521202.


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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[[Category:ファーストフード]]
[[Category:ファーストフード]]
[[Category:イギリスの食文化]]
[[Category:イギリスの食文化]]
[[Category:アイルランドの食文化]]
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2012年6月8日 (金) 13:34時点における版

典型的なフィッシュ・アンド・チップス
白紙と新聞紙に包まれたフィッシュ・アンド・チップス(オークニー諸島で撮影)

フィッシュ・アンド・チップス英語: fish-and-chips または 英語: Fish 'n' chips)は、イギリスを代表する料理のひとつ。 歴史あるファーストフードの一つである手軽な食事。白身魚の切り身(あるいはシュリンプ)のフライとジャガイモを細い棒状に切って油で揚げたチップスをあわせた料理である。

バタード・フィッシュ(Battered fish)と表記される場合もあり[1]、日本語では「魚のフライとじゃがいものから揚げ」と表記されることもある[2]

食材

調理用のフライヤー

フライにされる魚は基本的に白身魚であり、ハドックコッド英語版などのタラプレイスなどのカレイオヒョウが使われる[1][2][3][4]。また、シュリンプやロブスターが食材に使われる場合もあり[1]、低湿地であるフェンランドではウナギがフライの材料に使われる[5]。魚のサイズは通常ミディアム(もしくはスモール)とラージの2種があり、ミディアムを注文するとおよそ長さ20cm・幅10cm・厚さ3cmのサイズの魚の切り身が調理される。[6]

魚に付ける衣は小麦粉を卵や水で溶いたものであるが、レシピは店によって異なる。小麦粉を水で溶いた生地に色合いを付けるために少量の重曹と酢を入れるのが伝統的であり、重曹と酢が加えられた生地には泡が立っている。苦みと食感を加えるためにビール(エール)を入れたり[1]パンケーキヨークシャー・プディングの生地のレシピを若干変えたものを衣にしている店も存在する[3]

ビールに含まれる二酸化炭素の働きによって、生地は明るい橙褐色に変化する。ビールの種類によって生地の風味も変化し、ラガーを使用する店もあれば[7][8]スタウトビターを使用する店も存在する。生地に含まれるアルコール分は調理中に飛ばされ、出来上がったフィッシュ・アンド・チップスにアルコール分はほとんど含まれていない。

ジャガイモ

フィッシュ・アンド・チップスに付く「チップス」は、薄くパリッとしたポテトチップスのことではない[注 1]フライドポテトアメリカで言うフレンチフライ)のイギリスでの呼び名であり、アメリカ資本のファーストフードチェーンで出されるフライドポテトに比べてイギリスのチップスは太い[1]。食用油が浸透するのはフライドポテトの比較的浅い部位に留まり、フライドポテトに含まれる脂肪分は表面積に比例する。チップスの表面積はフレンチフライに比べて小さく、含まれる脂肪分も少なくなる。また、チップスはフレンチフライよりも長い調理時間を要する。

伝統的にはヘットラードが使用されていたが、現在ではピーナッツ・オイル英語版などの植物油が主流である。しかし、イングランド北部とスコットランドの少数の店と北アイルランドの多くの店では、未だにラードが使用されている。ラードは料理に独特の風味を与えるが、反面ベジタリアンと肉食や牛肉を忌避する宗教の信者からは敬遠される。また、イギリスではフィッシュ・アンド・チップスを揚げた後に出る廃油が、バイオディーゼル燃料の原料として再利用されている[9]

食べ方

モルトビネガー麦芽を原料とする穀物酢)とをかけてマッシイピー(潰した緑色の豆)と共に熱いうちに食べるのが、伝統的かつ一般的だが、マヨネーズタルタルソースなどをかけて食べることもある。カレーソースケチャップウスターソース醤油マヨネーズなど好みにより、多様な味付けを行なってよい。

パブやイスとテーブルが置かれたフィッシュ・アンド・チップス[注 2]の店では、皿に載せて供される。

包装

フィッシュ・アンド・チップスを持ち帰る場合、フライは白紙で包まれ、白紙の外側に油分を吸収する新聞紙が巻かれた状態で提供される[4]。あるいは、円錐状に丸められた新聞紙かわら半紙に入れられて渡されることも多かった[10]

かつては新聞紙に包んで客に出すのが半ば常識になっていたが[11]、衛生面の問題で新聞紙を包装に使用することは禁止されている[3]。新聞紙の印刷に使用されるインクに含まれるの中毒性が指摘されたためであるが、印刷業者は現在新聞の印刷に使用されるインクに健康上の害は無いと述べている[12]。現在は禁止された新聞紙の代用として、新聞紙の柄を印刷した包装用の用紙が使われることも多い。また、『タイムズ』よりも『ザ・サン』で包んだほうがフライが美味になるという俗説も存在する[13]

歴史

魚とジャガイモ

19世紀中ごろのイギリスでは、既に魚のフライとポテト・チップスが店舗で販売されていた[14]。魚のフライの販売業はロンドンを発祥としており、1840年代のソーホーでは魚のフライをごく普通に購入することができた[14]。ポテト・チップスの販売業はランカシャーを中心とする工業地帯で始まったが、これはイギリスにおいてジャガイモを食用にする習慣は北部から広まったことに由来する[15]2つのフライが「フィッシュ・アンド・チップス」として一緒に販売される形態が普及するのは1860年代以降である[16]

フィッシュ・アンド・チップスの正確な起源は不明であるが、ヴィクトリア朝期に多数存在したホット・パイ・ショップが発祥だと推測されている [14]。ホット・パイ・ショップではパイ以外に魚のフライとチップスも売られていたが、次第にパイではなく魚のフライとチップスが中心になったと考えられている[14]。魚のフライとチップスを提供する店は「フィッシュ・アンド・チップス」と呼ばれ、そこで出される料理そのものも店と同じ名前で呼ばれた[17]。記録に残る限りでは、1860年にロンドンのジョセフ・マリンが開いたフィッシュ・アンド・チップスが最古のものである[18]

産業革命との関係

フィッシュ・アンド・チップスが普及した背景には、産業革命による技術革新が存在していた[19]

産業革命前は新鮮な生魚を遠方に輸送する手段は存在していなかったが、鉄道網の整備と蒸気船の登場により、ロンドンなどの大都市に迅速に制御を輸送することが可能となった[20]。また、生魚の保存に役立つ冷凍技術が発達し、1880年代に導入されたトロール漁業によって多量の魚を獲ることが可能となった[21]

産業革命期の労働者は安価で、すぐに食べられ、さらに腹持ちの良い食事を求めており[22]、イギリスの工業化の進行とともに魚のフライとチップスの組み合わせは、労働者の食事の主体として普及する[19]

20世紀以降

20世紀の初頭、ロンドンには約1200軒のフィッシュ・アンド・チップスが存在していた[23]。フィッシュ・アンド・チップスは庶民にとっての最初の外食産業であり[24]、1930年代になると中流階級もフィッシュ・アンド・チップスを利用するようになる[24]。井戸端会議の集会場、若者のたまり場としてフィッシュ・アンド・チップスは都会の労働者階級の社交場としての地位を確立する[19]。パブの衰退と同時期に、パブよりも健全なたまり場であるフィッシュ・アンド・チップスの台頭が始まる[25]

1913年には英国国立フィッシュ・アンド・チップス協会("The British National Federation of Fish Friers")が設立され、フィッシュ・アンド・チップスの売り込みと調理法の教育が提供された。

第二次世界大戦下のイギリスで配給制がとられたとき、数少ない配給食糧のひとつがフィッシュ・アンド・チップスであった[26]。戦後もフィッシュ・アンド・チップスは安価なファーストフードとして、一定の人気を維持している。

1970年代のロンドンにはフィッシュ・アンド・チップスの店が多く現れ、町中に屋台が建ち並んでいた[27]。70年代の初頭には夕方になると新聞紙に包まれたフィッシュ・アンド・チップスを手に労働者たちが帰宅する光景が見られた[16]。また、70年代から80年代のロンドンでは、地下鉄やバスの乗務員として多く雇用されたカリブ系黒人女性が夕食にフィッシュ・アンド・チップスを持ち帰る姿がしばしば見られた[25]。現在、外資系のファーストフードチェーンに押され、屋台の数は減少している[28]

販売形態

ロンドンのフィッシュ・アンド・チップスの店

フィッシュ・アンド・チップスを販売している店は「チッピー(chippy)」と呼ばれ[3]、イギリス各地に多数の店舗が存在する[29]。また、発祥地のイギリスでは洒落を効かせて"The Batter Plaice"、""A Salt and Battery"、"The Codfather"、"The Fish Plaice"などの名前で呼ばれることもある。

イギリス、アイルランドオーストラリアニュージーランド、北アメリカでは、フィッシュ・アンド・チップスは通常独立した店舗においてテイク・アウェイ方式で販売されている。店舗の営業規模はごく小規模の自営業者からチェーンストアに至るまで幅広く、地方の市場の多くで経営される地元資本のシーフードレストランでもポピュラーな料理となっている。また、臨時的な店舗として、移動販売の形態をとるチップ・バンズが存在する[30]

最も優れたフィッシュ・アンド・チップスの店を選出するコンクールが多く存在し[31][32]、コンクールで入賞することは大衆文化における一種のステータスとなっている[33]

オセアニアにおけるフィッシュ・アンド・チップス

オーストラリアやニュージーランドでもフィッシュ・アンド・チップスの販売は一般的な事業であり、華僑を初めとするアジア系移民の主要な働き口となっている[34]。オーストラリアやニュージーランドでは「外で夕食をすませる」という言葉はフィッシュ・アンド・チップスの店に行くか、あるいはパイ・カート[注 3]を利用することを意味する[35]1960年代からフィッシュ・アンド・チップスの店はアメリカ式のファーストフード店との競合にさらされ、持ち帰り用のメニューに中華料理などの別の料理を加える努力が行われている[35]

脚注

注釈

  1. ^ イギリス英語では、ポテトチップスは「クリスプス」という単語で呼ばれる。
  2. ^ イスとテーブルを設置され、皿とともにナイフとフォークが準備される形態の店舗はソフィスティケイテッド・フィッシュ・アンド・チップス(Sophisticated fish and chips)と呼ばれる。(林『イギリスはおいしい』、p.80)
  3. ^ トレーラーで営業するカフェ。ミートパイに様々なトッピングを付けて提供する。

引用元

  1. ^ a b c d e 石井『英国フード記 AtoZ』、p.45
  2. ^ a b ベイリー『イギリス料理』、p.122
  3. ^ a b c d クック『英国おいしい物語』、p.106
  4. ^ a b 山内「料理と酒」『イギリス』、p.285
  5. ^ 林『イギリスはおいしい』、pp.74-75
  6. ^ 林『イギリスはおいしい』、p.74
  7. ^ Deep fried fish in beer”. 2009年3月23日閲覧。
  8. ^ Hix, Mark (2008年1月26日). “Gurnard in beer batter”. The Independent (London). http://www.independent.co.uk/life-style/food-and-drink/recipes/gurnard-in-beer-batter-772989.html 2009年3月23日閲覧。 
  9. ^ German Biodiesel Firm To Use Chip Fat”. Planetark.com (2008年3月19日). 2009年6月22日閲覧。
  10. ^ 林『イギリスはおいしい』、p.78
  11. ^ ベイリー『イギリス料理』、p.112
  12. ^ Huber Group (2003年9月). “Newspaper inks and the environment” (PDF). 2007年10月27日閲覧。
  13. ^ 小林章夫『イギリス紳士のユーモア』(講談社現代新書, 講談社, 1990年10月)、p.65
  14. ^ a b c d 川北『イギリス』、p.177
  15. ^ 川北『イギリス』、p.179
  16. ^ a b 川北『イギリス』、p.174
  17. ^ 川北『イギリス』、pp.173-174
  18. ^ Rayner, Jay (2005年11月3日). “Enduring Love”. The Guardian (London). http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2003/jan/19/foodanddrink.restaurants 2003年1月19日閲覧。 
  19. ^ a b c 川北『イギリス』、p.181 引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "kawakita181"が異なる内容で複数回定義されています
  20. ^ 川北『イギリス』、pp.181-182
  21. ^ 川北『イギリス』、p.175,182
  22. ^ ベイリー『イギリス料理』、p.111
  23. ^ 川北『イギリス』、p.180
  24. ^ a b 川北『イギリス』、p.182 引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "kawakita182"が異なる内容で複数回定義されています
  25. ^ a b 川北『イギリス』、p.176
  26. ^ Resources for Learning, Scotland: Rationing”. Rls.org.uk (1998年1月5日). 2009年6月22日閲覧。
  27. ^ 川北『イギリス』、p.254
  28. ^ 出口保夫、小林章夫、齊藤貴子編『21世紀イギリス文化を知る事典』(東京書籍, 2009年4月)、pp.432-433
  29. ^ 林『イギリスはおいしい』、p.73
  30. ^ http://www.mobilecateringuk.co.uk/how-to-start-up-mobile-catering-business.htm
  31. ^ The Fish & Chip Shop of the Year Competition”. Seafish. 2007年1月4日閲覧。
  32. ^ Frier's Quality Award”. Seafish. 2007年1月4日閲覧。
  33. ^ “Couple scoop best chip shop award”. BBC News. (2006年2月1日). http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/4670504.stm 2007年1月4日閲覧。 
  34. ^ Swillingham, Guy (2005). Shop Horror. London: Fourth Estate. ISBN 0-00-719813-2 
  35. ^ a b 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典』1、p.420

参考文献

  • 石井理恵子『英国フード記 AtoZ』、pp.44-47(三修社, 2006年1月)
  • 川北稔『イギリス』(世界の食文化17, 農山漁村文化協会, 2006年7月)
  • 林望『イギリスはおいしい』(平凡社, 1991年3月)
  • 山内玲子「料理と酒」『イギリス』収録(小池滋監修, 読んで旅する世界の歴史と文化, 新潮社, 1992年5月)
  • エイドリアン・ベイリー『イギリス料理』(江上トミ日本語版監修, タイムライフインターナショナル, 1972年)
  • ジェイン・ベスト・クック『英国おいしい物語』(原口優子訳, 東京書籍, 1994年9月)
  • 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典』1(石毛直道他監訳, 朝倉書店, 2004年9月)

翻訳元記事参考文献

関連項目

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