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'''アクシスジカ'''(学名:''Axis axis''<ref> Grubb, Peter (16 November 2005). Wilson, Don E., and Reeder, DeeAnn M., eds. ed. Mammal Species of the World (3rd ed.). Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2 vols. (2142 pp.). ISBN 978-0-8018-8221-0. OCLC 62265494.</ref>)は、[[シカ|シカ科]]アクシスジカ属に分類されるシカの一種。


== 分布 ==
'''アクシスジカ'''(学名:''Axis axis'')は、[[哺乳類|哺乳綱]]・[[ウシ目|偶蹄目]]・[[シカ|シカ科]]・[[アクシスジカ属]]に分類されるシカの一種。別名「チタール」。
[[南アジア]]地域、[[インド]](ただし北部を除く)を中心に[[スリランカ]]、[[バングラデシュ]]、[[ネパール]]、[[ブータン]]、数は少ないものの[[パキスタン]]にもを原産地とする。


いくつかの国に外来種として定着しており、[[オーストラリア]]の[[クイーンズランド]]、[[チリ]]、[[アルゼンチン]]、[[ウルグアイ]]、[[アメリカ合衆国]]の[[テキサス州]]、[[フロリダ州]]、[[カリフォルニア州]]の一部地域、それに[[クロアチア]]の[[ブリユニ]]と呼ばれる地域で[[アドリア海]]に浮かぶ無人島Velki Brijun Islandにも分布している。
==分布==
[[インド]]、[[スリランカ]]を原産地とする<ref name="Bkng">{{cite book | 和書 | author = 多紀保彦(監修) 財団法人[[自然環境研究センター]](編著) | title = 決定版 日本の外来生物 | publisher = [[平凡社]] | date = 2008-04-21 | isbn = 978-4-582-54241-7 }}</ref>。


本種は落葉性もしくは半常緑性の森林や開けた草原で頻繁に見かけることが出来、数も多い<ref name = "Scahller 1967">The Deer and the Tiger: A Study of Wildlife in India. George Schaller. University Of Chicago Press. 1967. Pg. 37-92. (Midway Reprint)</ref>最も生息数が多いのはインドの森でそこでは背の高い草や低木を食べて暮らしている<ref name = "Valerius 1998">Deer of the world: their evolution, behaviour, and ecology. Valerius Geist. Stackpole Books. 1998. Pg. 58-73.</ref> ブータンの[[国立公園]]である「Phibsoo Wildlife Sanctuary」の森でも見つかっている。この公園は天然の[[サラソウジュ]] ''Shorea robusta'' が残る唯一の場所である。標高の高い地域では[[サンバー]] ''Cervus unicolor''の様な種と競合するのであまり見られない。直射日光には弱いために林冠が良く茂って林床は日陰になるような森林も好む<ref name = "Valerius 1998"/><ref name = "Scahller 1967"/>。
==特徴==
[[File: Flickr - Rainbirder - Cheetal.jpg|thumb|left|220px|水を飲むアクシスジカ]]
頭胴長は雄で119-185cm、雌で114-147cm、体重は雄で33-113kg、雌で25-64kg<ref name="Bkng"/>。体にある白斑模様は通年みられ、喉が白い。雄にのみ角が生えている。


== 名前と分類 ==
草食性で、草や果実などを食べる。草原や森林に生息する。数頭から数百頭の群れをつくり、昼夜関係なく行動する<ref name="Bkng"/>。180-890haほどの一定の[[行動圏]]をもち、大きく移動することはない<ref name="Bkng"/>。妊娠期間は7-8ヶ月。
インドの森では最も普通に見られるシカの仲間であり、多くの地方名を持つ。本種は'''チタール '''(chital) と呼ばれることもあるが、これベンガル地方の言葉で「斑点のある」という意味である。本種はいわゆる[[単型 (分類学)|単型]]であり、本種だけでアクシスジカ属(''Axis'')を構成する。かつてはこの属には本種の他に''Hyelaphus''亜属の3種が含まれていたが、''Hyelaphus''亜属については遺伝子による分類に基づいて属への格上げが行われたため、本種とは属単位で異なることになった<ref name=genus>Pitraa, Fickela, Meijaard, Groves (2004). ''Evolution and phylogeny of old world deer.'' Molecular Phylogenetics and Evolution 33: 880?895.</ref><ref name=EastDeer>Groves (2006). ''The genus Cervus in eastern Eurasia.'' European Journal of Wildlife Research 52: 14-22.</ref>。


分布域のうち、スリランカのものは[[亜種]]扱いとなるために本種は以下の2つの亜種で構成される。
; ''Axis axis axis''
: ユーラシア大陸に住む種。基亜種。
; ''Axis axis ceylonensis''
: セイロン島に住む種。


== 形態 ==
背中の毛皮黄褐色で。腹の部分は白いという一般的なシカのイメージである。背中に多数あらわれる白い斑点が特徴的で。角は三つに分かれることが多く、長さは70mc-80cmで1年ごとに生え変わる。かつて同属とされた近縁種の ''Hyelaphus porcinus'' (英名:Hog deer) と比較してみると本種はより走るのに適した体を持っている。加えて角の柄は短いことは形態学的な進化と考えられ、auditory bullaeも小さい。肩高90cmで体重は約90kgでありオスはメスよりも大きくなる傾向がある。寿命は8年-14年ほど。


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==人間との関係==
file:6. antlers axis.png|''Axis axis'' の角の形状
日本には定着していないものの、[[ニホンジカ]]と交雑する恐れがあるため、[[外来生物法]]によって[[特定外来生物]]に指定されている<ref name="Bkng"/>。
file:Axis axis Kanha 4kl.jpg|背中の白い模様が美しく特徴的である。角はオスだけにある。
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== 生態 ==
[[ニュージーランド]]では駆除が行われている<ref name="Bkng"/>。
食植性で主な食べ物は[[イネ科]]の草の新芽である<ref name = "Scahller 1967"/<ref name = "Valerius 1998"/>>。他にも広葉性の草の新芽や樹木の果実や枝も食べることがあり、特に樹上のサルが落とした時にはよく食べている<ref name = "Scahller 1967"/>。特にオスは後ろ脚で立ちあがり、樹上の葉もよく食べることも多い<ref name = "Scahller 1967"/><ref name = "Valerius 1998"/>。毎年生え変わる古くなった角も食べてしまう。これはミネラルの接種だろうと言われている<ref name = "Scahller 1967"/><ref name = "Valerius 1998"/>。水辺を好み暑い季節には朝夕水を飲む。捕食者としては[[トラ]]、[[インドライオン]] (ライオンはごく限られた地域のみ)、[[ヒョウ]]、[[ドール]]、[[ヌマワニ]]など。他にも子供は[[アカギツネ]]に襲われることもある。一般にメスの成獣と子供はオスの成獣よりも捕食されることが多い<ref name = "Valerius 1998"/>。ドールは集団で狩りをし本種のオスの成獣であってもよく捕え、狩りの成功率はトラやヒョウよりも高い<ref name = "Valerius 1998"/>。捕食者から逃げるときには最高時速70kmで走ることが出来る。


本種と南アジアい一帯に広く分布するサルの仲間 ''Presbytis entellus'' の群れには興味深い関係が観察されている。サルの群れは樹上で葉や木の実を食べ、シカは地上で草を食んでいる。サルは樹上からあたりを見回し、捕食者の接近を見つけると警告する<ref name = "Scahller 1967"/>。シカはこれを聞いて早く逃避体制に入れるので明らかに利益がある。サルの立場で見るとシカの優れた嗅覚によって敵の接近が分かると考えられている<ref name = "Scahller 1967"/>。シカにとっては他にも利益があり、樹上のサルが木の実を落とすことによってそれを食べることが出来る<ref>Prasad, S.; R. Chellam; J. Krishaswamy & S. P. Goyal (2004) Frugivory of Phyllanthus emblica at Rajaji National Park, northwest India. Current Science 87(9):1188-1190</ref>

10頭から50頭の群れを作って生活する。一番大きく支配的なオスたちを中心に周りをメスや子供が取り巻く形となる。オスの子供は大きくなると群れを出なければならず、その目安は角のビロードがとれるときである。同じくらいの大きさのオスが群れに入ろうとしたら、群れのボスであるオスは慎重に角を突き合わせて新参者を観察する<ref name = "Valerius 1998"/>。角の突き合いは若い個体で盛んにおこなわれる。体の大きな個体はマーキングすることをより好む<ref name = "Valerius 1998"/>。後ろ足で立ちあがって頭上の枝にマーキングを行うことも知られている<ref name = "Scahller 1967"/><ref name = "Valerius 1998"/>。

繁殖期はtropical climateの期間中だらだらと続き、出産は年中行われることもある。発情期の最中オスは大きな声で鳴く。メスの発情周期は約3週間である。オスは発情しているメスを引き連れて守り続け、その間は食事もしない。交尾の前には追いかける期間と互いになめ合う期間がある<ref name = "Scahller 1967"/>。メスは1回の出産で1等、まれに2頭を生む<ref name = "Valerius 1998"/>。

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file:Spotted deer.JPG|群れで草をはむ
file:Flickr - Rainbirder - Cheetal.jpg|水を飲む個体
file:Chital Mother.jpg|子育てするメス
file:Bristol.zoo.lion.yawns.arp.jpg|[[インドライオン]]。本種の天敵ではあるが絶滅の危機にあり分布は非常に限られる
file:Tigerdholes.jpg|[[ドール]]は集団で狩りをし、時にトラをも倒すという
file:Marsh Crocodiles basking in the sun.JPG|[[ヌマワニ]]は水辺における天敵である
file:SlothBearTree.jpg|[[ナマケグマ]]も本種を襲う
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== 保全状況 ==
本種はIUCN (International Union for Conservation of Nature and Natural Resources, [[国際自然保護連合]]) の[[保全状況]]評価では[[軽度懸念]] (Least Concern) に位置付けられている。これは本種が広い範囲に分布し、個体数も多いためである<ref name="iucn"/>。近年では生息が脅かされることも全体的に少なくなり、多くの保護地域で暮らしているが、多くの生息場所では生息密度は[[環境収容力]] (ecological carring capacity) を下回っている。この原因は[[狩猟]]や[[家畜]]との競合のためである。狩猟によって個体数の減少と地域的な絶滅が発生している<ref name="iucn"/>。このために本種はインドでは1972年の「Indian Wildlife Protection Act(意訳:インド野生動物保護法)」の第三段階(Schedule Ⅲ)において、バングラデシュでは 1974年のWildlife Act(意訳:野生動物法)によって保護されている<ref name="iucn"/>。この2つの主要な法律が法的な保護の要になっている<ref name="iucn"/>。

原産地で保護される一方で本種はいくつかの国に移入されており、[[オーストラリア]]の[[クイーンズランド]]、[[チリ]]、[[アルゼンチン]]、[[ウルグアイ]]、[[アメリカ合衆国]]の[[テキサス州]]、[[フロリダ州]]、[[カリフォルニア州]]の一部地域、[[クロアチア]]の[[ブリユニ]]と呼ばれる地域で[[アドリア海]]に浮かぶ無人島Velki Brijun Islandに分布している。

日本には定着していないものの、[[ニホカ]] ''Cervus nippon''交雑する恐れがあるため、[[外来生物法]]によって[[特定外来生物]]に指定されており<ref name="Bkng">{{cite book | 和書 | author = 多紀保彦(監修) 財団法人[[自然環境研究センター]](編著) | title = 決定版 日本の外来生物 | publisher = [[平凡社]] | date = 2008-04-21 | isbn = 978-4-582-54241-7 }}</ref>[[愛知県]]の[[東山動物園]]では生体を見ることが出来る

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file:Barcelona.Zoologico.Axis.axis.jpg|スペイン・バルセロナの動物園の群れ
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==関連項目==
==関連項目==
*[[シカ]]
*[[シカ]]


==参考文献==
== 参考文献 ==
* 決定版 日本の外来生物 多紀保彦監修 平凡社 2008
* Wikipedia 英語版 [[:en:Chital]]

=== 脚注 ===
<references/>
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{{Commons|Axis axis|Chital}}
{{Commons|Axis axis|Chital}}

2012年1月17日 (火) 19:53時点における版

アクシスジカ
アクシスジカ
アクシスジカ Axis axis
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
: 偶蹄目 Artiodactyla
亜目 : 反芻亜目 Ruminantia
: シカ科 Cervidae
亜科 : シカ亜科 Cervinae
: アクシスジカ属 Axis
: アクシスジカ A. axis
学名
Axis axis
(Erxleben, 1777)
和名
アクシスジカ
英名
Chital

アクシスジカ(学名:Axis axis[2])は、シカ科アクシスジカ属に分類されるシカの一種。

分布

南アジア地域、インド(ただし北部を除く)を中心にスリランカバングラデシュネパールブータン、数は少ないもののパキスタンにもを原産地とする。

いくつかの国に外来種として定着しており、オーストラリアクイーンズランドチリアルゼンチンウルグアイアメリカ合衆国テキサス州フロリダ州カリフォルニア州の一部地域、それにクロアチアブリユニと呼ばれる地域でアドリア海に浮かぶ無人島Velki Brijun Islandにも分布している。

本種は落葉性もしくは半常緑性の森林や開けた草原で頻繁に見かけることが出来、数も多い[3]最も生息数が多いのはインドの森でそこでは背の高い草や低木を食べて暮らしている[4] ブータンの国立公園である「Phibsoo Wildlife Sanctuary」の森でも見つかっている。この公園は天然のサラソウジュ Shorea robusta が残る唯一の場所である。標高の高い地域ではサンバー Cervus unicolorの様な種と競合するのであまり見られない。直射日光には弱いために林冠が良く茂って林床は日陰になるような森林も好む[4][3]

名前と分類

インドの森では最も普通に見られるシカの仲間であり、多くの地方名を持つ。本種はチタール (chital) と呼ばれることもあるが、これベンガル地方の言葉で「斑点のある」という意味である。本種はいわゆる単型であり、本種だけでアクシスジカ属(Axis)を構成する。かつてはこの属には本種の他にHyelaphus亜属の3種が含まれていたが、Hyelaphus亜属については遺伝子による分類に基づいて属への格上げが行われたため、本種とは属単位で異なることになった[5][6]

分布域のうち、スリランカのものは亜種扱いとなるために本種は以下の2つの亜種で構成される。

Axis axis axis
ユーラシア大陸に住む種。基亜種。
Axis axis ceylonensis
セイロン島に住む種。

形態

背中の毛皮黄褐色で。腹の部分は白いという一般的なシカのイメージである。背中に多数あらわれる白い斑点が特徴的で。角は三つに分かれることが多く、長さは70mc-80cmで1年ごとに生え変わる。かつて同属とされた近縁種の Hyelaphus porcinus (英名:Hog deer) と比較してみると本種はより走るのに適した体を持っている。加えて角の柄は短いことは形態学的な進化と考えられ、auditory bullaeも小さい。肩高90cmで体重は約90kgでありオスはメスよりも大きくなる傾向がある。寿命は8年-14年ほど。

生態

食植性で主な食べ物はイネ科の草の新芽である[4]>。他にも広葉性の草の新芽や樹木の果実や枝も食べることがあり、特に樹上のサルが落とした時にはよく食べている[3]。特にオスは後ろ脚で立ちあがり、樹上の葉もよく食べることも多い[3][4]。毎年生え変わる古くなった角も食べてしまう。これはミネラルの接種だろうと言われている[3][4]。水辺を好み暑い季節には朝夕水を飲む。捕食者としてはトラインドライオン (ライオンはごく限られた地域のみ)、ヒョウドールヌマワニなど。他にも子供はアカギツネに襲われることもある。一般にメスの成獣と子供はオスの成獣よりも捕食されることが多い[4]。ドールは集団で狩りをし本種のオスの成獣であってもよく捕え、狩りの成功率はトラやヒョウよりも高い[4]。捕食者から逃げるときには最高時速70kmで走ることが出来る。

本種と南アジアい一帯に広く分布するサルの仲間 Presbytis entellus の群れには興味深い関係が観察されている。サルの群れは樹上で葉や木の実を食べ、シカは地上で草を食んでいる。サルは樹上からあたりを見回し、捕食者の接近を見つけると警告する[3]。シカはこれを聞いて早く逃避体制に入れるので明らかに利益がある。サルの立場で見るとシカの優れた嗅覚によって敵の接近が分かると考えられている[3]。シカにとっては他にも利益があり、樹上のサルが木の実を落とすことによってそれを食べることが出来る[7]

10頭から50頭の群れを作って生活する。一番大きく支配的なオスたちを中心に周りをメスや子供が取り巻く形となる。オスの子供は大きくなると群れを出なければならず、その目安は角のビロードがとれるときである。同じくらいの大きさのオスが群れに入ろうとしたら、群れのボスであるオスは慎重に角を突き合わせて新参者を観察する[4]。角の突き合いは若い個体で盛んにおこなわれる。体の大きな個体はマーキングすることをより好む[4]。後ろ足で立ちあがって頭上の枝にマーキングを行うことも知られている[3][4]

繁殖期はtropical climateの期間中だらだらと続き、出産は年中行われることもある。発情期の最中オスは大きな声で鳴く。メスの発情周期は約3週間である。オスは発情しているメスを引き連れて守り続け、その間は食事もしない。交尾の前には追いかける期間と互いになめ合う期間がある[3]。メスは1回の出産で1等、まれに2頭を生む[4]

保全状況

本種はIUCN (International Union for Conservation of Nature and Natural Resources, 国際自然保護連合) の保全状況評価では軽度懸念 (Least Concern) に位置付けられている。これは本種が広い範囲に分布し、個体数も多いためである[1]。近年では生息が脅かされることも全体的に少なくなり、多くの保護地域で暮らしているが、多くの生息場所では生息密度は環境収容力 (ecological carring capacity) を下回っている。この原因は狩猟家畜との競合のためである。狩猟によって個体数の減少と地域的な絶滅が発生している[1]。このために本種はインドでは1972年の「Indian Wildlife Protection Act(意訳:インド野生動物保護法)」の第三段階(Schedule Ⅲ)において、バングラデシュでは 1974年のWildlife Act(意訳:野生動物法)によって保護されている[1]。この2つの主要な法律が法的な保護の要になっている[1]

原産地で保護される一方で本種はいくつかの国に移入されており、オーストラリアクイーンズランドチリアルゼンチンウルグアイアメリカ合衆国テキサス州フロリダ州カリフォルニア州の一部地域、クロアチアブリユニと呼ばれる地域でアドリア海に浮かぶ無人島Velki Brijun Islandに分布している。

日本には定着していないものの、ニホンジカ Cervus nipponと交雑する恐れがあるため、外来生物法によって特定外来生物に指定されており[8]、。愛知県東山動物園では生体を見ることが出来る

関連項目

参考文献

  • 決定版 日本の外来生物 多紀保彦監修 平凡社 2008
  • Wikipedia 英語版 en:Chital

脚注

  1. ^ a b c d e Duckworth, J.W., Kumar, N.S., Anwarul Islam, Md., Hem Sagar Baral & Timmins, R.J. (2008). Axis axis. In: IUCN 2008. IUCN Red List of Threatened Species. Downloaded on 8 April 2009. Database entry includes a brief justification of why this species is of least concern.
  2. ^ Grubb, Peter (16 November 2005). Wilson, Don E., and Reeder, DeeAnn M., eds. ed. Mammal Species of the World (3rd ed.). Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2 vols. (2142 pp.). ISBN 978-0-8018-8221-0. OCLC 62265494.
  3. ^ a b c d e f g h i The Deer and the Tiger: A Study of Wildlife in India. George Schaller. University Of Chicago Press. 1967. Pg. 37-92. (Midway Reprint)
  4. ^ a b c d e f g h i j k Deer of the world: their evolution, behaviour, and ecology. Valerius Geist. Stackpole Books. 1998. Pg. 58-73.
  5. ^ Pitraa, Fickela, Meijaard, Groves (2004). Evolution and phylogeny of old world deer. Molecular Phylogenetics and Evolution 33: 880?895.
  6. ^ Groves (2006). The genus Cervus in eastern Eurasia. European Journal of Wildlife Research 52: 14-22.
  7. ^ Prasad, S.; R. Chellam; J. Krishaswamy & S. P. Goyal (2004) Frugivory of Phyllanthus emblica at Rajaji National Park, northwest India. Current Science 87(9):1188-1190
  8. ^ 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日。ISBN 978-4-582-54241-7