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抽象型

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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抽象型(ちゅうしょうがた、: abstract type)とは、コンピュータプログラミング型システムで扱われる型の一種であり、型理論では存在型英語版の解釈で説明されるものである。オブジェクト指向プログラミングで特に用いられており、オブジェクト指向言語では、抽象クラス (abstract class)、インターフェース (interface)、トレイト (trait)、プロトコル (protocol)英語版、ロール(roles)などの形態で実装されている。例えばJavaでの抽象型は、抽象メソッドを含んでいる抽象クラスと、抽象メソッド限定構成のインターフェースである[1]。抽象クラスとインターフェースは記名的型付け英語版に準拠しており、トレイトとプロトコルは構造的型付け英語版に準拠している。

抽象型の表示

抽象クラスは、以下のようないくつかの方法で生成され、示され、シミュレートされる。

  • JavaC#では、クラス定義の際に明示的にキーワード abstract を付与することで抽象クラスであることを示す。
  • クラス定義の中で、クラスがそのプロトコルの一部として受容することを宣言されているが、実装は提供されないメソッド(抽象メソッド、C++では純粋仮想関数と呼ぶ)を含む場合、そのクラスは抽象クラスである。
  • 抽象型を継承するが、実装が必要な機能(抽象メソッド)をすべてオーバーライドしないクラスもまた抽象クラスである。
  • Smalltalkなどの動的型付き言語では、自分自身 (this) へ送信するメソッドが実装されていない場合、そのクラスは抽象クラスと見なせる。(ただし、このような実装は単なるバグの可能性もあり、実行してみるまでエラーであることが検出できない。)

抽象型の使用

抽象型は、静的型付けのオブジェクト指向言語では重要な機能である。派生型が作成できない言語には存在しない。動的型付け言語の場合は等価な機能は存在しない(ダック・タイピングがあるので抽象型は不要である)。ただし Trait は最近の動的型付き言語に見られる。

派生型のないクラスを「リーフクラス」とし、それ以外を抽象クラスに分類している書籍もある[2]

抽象型は、派生型が実装すべきメソッド群をプロトコルとして規定することができる。多くの言語では抽象型のインスタンスは生成できず、派生型は全ての必要な機能を実装しなければならない。このことはプログラムの正当性を保証する役割を担っている。

抽象型の種類

抽象型を生成する機構はいくつかある。

  • 完全な抽象基底クラスとは、abstract を明示的に宣言されたクラスか、抽象メソッド(実装されていないメソッド)を含むクラスである。インスタンスが生成できないこと以外は、具象クラスと同じ能力をもつ。完全抽象型は初期のC++に存在したが、抽象基底クラスはC++における抽象型を生成するための言語要素 (language construct) として残っているだけである[要出典]。純粋仮想メソッドだけのクラスは純粋仮想クラスと呼ばれ、必然的に抽象クラスである。
    • 注: C++などの言語での多重継承の技術的問題により、多くのオブジェクト指向言語では直接には単一の基底クラスしか継承できない。複数の派生型定義 (subtyping) をサポートするため、完全抽象基底クラスとは異なる抽象型生成機構を備えた言語もある。
  • Common Lisp(CLOS) では Mixin が作法として定着している。CLOSのMixinで扱われる抽象型とは、クラス名だけの定義で実体のないマーカークラスを指しており、これは振る舞い文脈(behavioral context)とも呼ばれる。これは Flavors を由来としたプログラミング作法である。なお、Common Lisp ではクラス内で定義されたメソッドの代わりに、クラスとは別の場所で定義された総称関数を使う。
  • Javaにはインターフェースがある。インタフェースはメソッドのシグネチャや定数をもつことができるが、メソッドの実装や変数(フィールド)をもつことはできない。Javaのクラスは複数のインタフェースを実装できる。Javaにおける抽象クラスは、インタフェースを実装し、いくつかのメソッドのシグネチャを定義していることもあるが、一方でキーワード abstract により抽象化されたままのメソッドを持っている。
  • トレイト(Trait)はより新しい手法で、ScalaRaku(この言語では Roles と呼ばれている)にある。また、Smalltalkの拡張として提案されている(元々、Smalltalk で実装が発展してきた経緯がある)。トレイトはその定義内に何を含んでいてもよく、複数のトレイトを組み合わせて一つのクラス定義を作ることもできる。この合成規則は標準的な継承とは異なり、多重継承につきものの意味論的な困難さを防ぐようになっている。
  • Swiftはプロトコル(Protocol)を導入している。これはインターフェースとトレイトを融合して関数型の型システムを加えた抽象型である。

脚注・出典

  1. ^ Abstract Methods and Classes The Java Tutorials
  2. ^ Riel, Arthur (1996). Object-Oriented Design Heuristics. Addison-Wesley Professional. p. 89. ISBN 020163385X 

参考文献

  • Types and Programming Languages by Benjamin Pierce (MIT Press 2002) [1]
  • More Effective C++: 35 New Ways to Improve Your Programs and Designs by Scott Meyers (1995) ISBN 0-201-63371-X

外部リンク

関連項目