鵬
鵬(鳳 ほう おおとり Peng)は、中国に伝わる伝説の鳥。その体の大きさから、大鵬(たいほう、Dapeng)、大鳳とも呼ばれる。
『荘子』逍遥遊篇では、鵬が次のように描かれている。北の果てにある海に棲む「鯤(こん)」と呼ばれる体が数千里にも及ぶ巨大な魚が、これもまた背が数千里にも及ぶ巨大な鳥「鵬」と化す。鵬は天を覆う雲のような翼を広げ、荒れ狂う嵐に乗って、南の果ての海すなわち天の池へと向かう。そのときには、九万里(約36万キロ)上空まで飛び上がって舞う。
清代の小説『続子不語』によれば、鵬の羽根は10戸以上の家の上を覆いつくすほどで、この巨大な羽や糞が家を壊し、人命を奪うことすらあるという。日食は鵬が上空を通過するために起こるという説もある。こうした鵬の姿は、熱帯のモンスーンを象徴化、神話化したものとも見られている[1]。
鵬は、『西遊記』や『封神演義』など、数々の中国小説にも登場している。西遊記に登場する雲程万里鵬は、「一飛び」で九万里を飛ぶという。
1879年には日本の愛知県安城市三河安城で、全長8尺(約2.4メートル)、片翼のみで9尺5寸(約2.9メートル)もある巨大な鳥が撃ち落とされ、当時の『安都満新聞』で鵬の捕獲例として報道されたことがあるが、この正体はアホウドリとする説もある[2]。
また、その壮大なイメージから、大鵬は力士の四股名としても用いられる。
脚注
- ^ 京極夏彦 著、多田克己編 編『妖怪画本 狂歌百物語』国書刊行会、2008年、308頁頁。ISBN 978-4-3360-5055-7。
- ^ 安部晃司他 著、人文社編集部編 編『日本の謎と不思議大全 東日本編』人文社〈ものしりミニシリーズ〉、2006年、151頁頁。ISBN 978-4-7959-1986-0。
関連項目
- 伝説の生物一覧
- 青森県立弘前高等学校 - 校章に鵬の意匠