高等学校

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高等学校(こうとうがっこう)は、後期中等教育を行うための学校であり、省略して高校(こうこう)と呼ばれている。その名称から誤解されることもあるが、高等教育ISCEDレベル5)を行なう学校ではなく、後期中等教育段階(ISCEDレベル3)に相当する学校である。

日本の高等学校は中学校教育を基礎とし、中学校の課程を修了した生徒に高度な普通教育および専門教育を施すことを目的とする。なお、日本において学制改革後の1950年まで存在した高等学校については、旧制高等学校を参照。日本国内で日本の高校を英語で表す語として米国式の「high schoolハイ・スクール[1]が用いられることが多い。しかし、日本の文部科学省は専門用語として「upper secondary schoolアッパー・セカンダリー・スクール」 (後期中等学校)という表現を用いている。

なお、ヨーロッパ各国には、例えばドイツ語の「Hochschuleホフシューレ」など、高等学校と直訳できる学校があるが、それらは大抵日本でいう高校ではなく、大学に相当する高等教育機関を指す。中国における高等学校も、大学を含む高等教育機関全般を意味している。

イギリスの州立高校Medina High School
台湾の臺南市私立港明高級中學

各国の高等学校

ポルトガル

ポルトガルにおける中等教育(: ensino secundárioエンスィノ・セコンダーリオ)は3年課程(グレード10-12)であり、15歳で入学し義務教育である[5]。授業内容は高等教育進学コースと、職業教育コースに分かれ、修了時には国家資格フレームワーク(NQF)レベル3に認定される[6]

共通の科目

  • ポルトガル語(グレード10-12)
  • 物理(グレード10-12)
  • 哲学(グレード10-11)
  • 外国語(グレード10-11)
  • カトリック(グレード10-12)

高等教育進学コース

  • 科学技術コース
    • 主科目(グレード10-12) - 数学A
    • 副科目(グレード10-11) - 生物、地学、幾何学、物理、化学(2つを選択)
    • 選択科目(グレード12) - 生物、地学、物理、化学、その他(2つを選択)
  • 社会科学コース
    • 主科目(グレード10-12) - 歴史A
    • 副科目(グレード10-11)- 地理、外国語IIまたはIII、ポルトガル語文法、数学の社会科学への応用(2つを選択)
    • 選択科目(グレード12) - 法学、社会学、ラテン語、地理、心理学、哲学、経済学、その他(2つを選択)
  • 社会経済科学コース
    • 主科目(グレード10-12)- 数学A
    • 副科目(グレード10-11)- 経済学、歴史B、地理(2つを選択)
    • 選択科目(グレード12) - 経済学、地理、社会学、心理学、法学、その他(2つを選択)
  • 芸術コース
    • 主科目(グレード10-12)- 描写A
    • 副科目(グレード10-11)- 幾何学、数学B、文化芸術史(2つを選択)
    • 選択科目(グレード12) - 芸術アトリエ、マルチメディアアトリエ、数学と技術、心理学、哲学、その他(2つを選択)

職業教育コース

芸術教育コース

中華圏

中華圏では「高等学校コートンシェシャォ」というと日本でいう大学などに相当し、後期中等段階教育を行う学校は高級中学コーチーチュンシェ(略して高中カオチュン)と呼ばれる。

  • 香港では三三四学制が施行されており、高級中学は3年間の課程である。
  • 台湾では、15-17歳の3年間の課程であり、一般大学進学を目指す高級中学と、職業キャリアを目指す高級職業学校コーチーチュイェシェシャォが存在する。

日本の高等学校

東京都立日比谷高等学校

日本の高等学校は中学校における教育の基礎のに、発達に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする[7]

義務教育の対象から外れるため、進学するかどうかの選択は自由であるが、中学卒業からの就職は就労可能な職種が極めて限定的であり[注釈 2]労働基準法により15歳から18歳の労働者は年少者として扱われるため労働に際して制約が多く[注釈 3]、資格や免許の取得にも制約が多いなど[注釈 4]1970年代後半からは中卒者の新卒採用が消極的になったことから今日では中卒での就職はあまり一般的ではないこともあり[注釈 5]、低学力・不登校・非行・経済的理由・障害などの特殊な事情で進学が困難な場合を除いてほとんどの中学生が高校へ進学している。

1998年平成10年)の学校教育法(昭和22年法律第26号)の改正により、中高一貫教育(中学校における教育〔義務教育として行われる普通教育〕と高等学校における教育〔高度な普通教育及び専門教育〕を一貫して施すこと)を行う6年制の学校である「中等教育学校」が新たに創設された。中高一貫教育を行う中学校・高等学校の一部は中等教育学校の前期課程・後期課程への改組がされ始めており、国立学校公立学校私立学校の全部で、中等教育学校が増えつつある。

修業年限卒業までに教育を受ける期間)が3年又は3年以上の高等学校の一般的な課程本科といい、この項目では主に本科について扱う。これ以外にも別科専攻科があるが、専攻科については専攻科の項目で詳述している。

日本の高等学校分類[8]
prog.no. ISCED
レベル
日本語 英語
prog.03.01 3A 全日制-本科普通課程 upper secondary school, full day general course
prog.03.02 3A 定時制-本科普通課程 upper Secondary school, day/evening general course
prog.03.03 3A 通信制-普通課程 upper secondary school, correspondence general course
prog.03.04 3A 全日制-本科総合課程 upper secondary school, full day integrated course (general)
prog.03.05 3A 定時制-本科総合課程 upper secondary school, day/evening integrated course (general)
prog.03.06 3C 全日制-本科専門課程 upper secondary school, full day specialized course
prog.03.07 3C 定時制-本科課程 upper secondary school, day/evening specialized course
prog.03.08 3C 通信制-専門課程 upper secondary school, correspondence specialised course
prog.03.09 3C 全日制-定時制別科(普通/総合/専門) upper secondary school, (full day/evening school), short-term course (general, integrated, specialized)
prog.04.01 4 全日制/定時制-専攻科(普通/総合/専門) upper secondary school, (full day, day/evening), advanced course (general, integrated, specialized)

学校数・生徒数

2005年5月1日現在で学校教育法に基づく高等学校は全日制定時制合わせて全国に5,418校あり、その内、国立15校、公立4,082校、私立1,321校。在校生は男子1,827,534人、女子1,777,708人である[9]

2000年国勢調査統計表の通り、日本の高等学校の在学者には15歳から18歳の生徒が多く、19歳以上の生徒ははっきりと少ない。高等学校に入学できる最低年齢は、学校教育法の規定およびその法解釈によって15歳となっているが、上限は日本国の法令では規定されておらず、法令上、最低年齢を超えていれば年齢は何歳でも構わない。また、高校無償化法の対象にはならないものの、「高等学校」「中等教育学校」「特別支援学校の高等部」「高等学校に相当すると認定された日本国外の課程」を卒業した人が、再び高等学校に入学・学習することも法令上、制限されていない。

このため、地方公共団体条例等で特殊な規制がされていない限りは、設置者地方公共団体学校法人学校設置会社学校設置非営利法人)および高等学校(最高責任者は校長である)の入学許可が得られれば、「全日制の課程」「定時制の課程」「通信制の課程」のすべての課程から、いずれかを選択して入学・学習を行うことが可能である[注釈 6]

ただし、極端に高年齢の生徒は、現状として「定時制の課程」や「通信制の課程」で学んでいることが多い。

歴史

戦前は男子については中等学校(中学校、現在は旧制中学と呼ばれる)がその役割を担っていた。また女子は高等女学校がその役割を担っていた。新制高校発足当初は高校三原則によって、公立高校は希望者全入、普通教育と職業教育を併せた総合制、男女共学にすることが目指されていた。その後の諸事情で、希望者全入、総合制は実現できなかった。男女共学も、私立はほとんどが旧制中学は男子のみの高等学校として、旧制高等女学校は女子高等学校として存続し、また東日本では公立でも男子校・女子校が残った。しかし全国的に見れば、概ね男女共学に移行し、戦後新設された高等学校の多くも男女共学であったので、男女共学だけは概ね確立したといえる。

教育の目標

学校教育法の第51条に高等学校における教育の目標が規定されている。

  1. 義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養わせ、国家及び社会の形成者として必要な資質を養わせること。
  2. 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること。
  3. 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養わせ、社会の発展に寄与する態度を養わせること。

平成19年法律第98号(2008年〔平成20年〕4月1日施行)による学校教育法の改正前の規定と若干字句が異なる。

学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)に基づき、高等学校の教育課程は、各教科に属する科目特別活動総合的な学習の時間によって編成されている。教科には、普通教育に関する各教科と専門教育に関する各教科があるが、専門教育に関する各教科は、学校によって開設されないこともある。

※各項目の最初に挙げられているのが教科である。授業は教科の下位区分である科目によって行われるが、実際の科目はたとえば世界史ならば「世界史A」「世界史B」のようにより細かく分けられている。

  • そのほか、各教科に属する学校設定科目を設置することができる。

入学、進級、卒業、単位

一般的には4月に入学するが、それ以外の時期の場合もある。入学資格は高校受験#入学資格を参照。

一般的な「学年制と単位制の併用による教育」では進級して卒業するという方式を取り、進級するためには各学年ごとに定められた単位を取得しなければならない。その学年で単位が取得できずに「留年」となると、ほとんどの場合その学年すべての科目を再履修しなければならない。学年による教育課程の区分を設けない「単位制による教育」では、学年という概念が全く存在しないように思われることもあるが、選択科目を履修する前に必修科目の単位修得を求めるなど、結果的に「学年制と単位制の併用による教育」とやや似た状況となっているところもある。ただし、「単位制による教育」においては卒業時までに選択可能な科目が「学年制と単位制の併用による教育」よりもはるかに多いのが通例である。一般的な「学年制と単位制の併用による教育」と同様にホームルームやクラス単位での特別活動などを行う学校が多い。

単位は、各科目ごとに試験の点数や実技、レポート、作品、参加度、その他の評価項目によって、一定の基準を満たした場合に認められる。特に試験で規定の点数に達しない点数は赤点又は欠点という。修業年限(在学しなければならない期間)は、全日制の課程は3年であり、定時制の課程と通信制の課程は3年以上である。

教育課程による分類

授業を行う時間帯、季節、方法などの違いにより、「全日制の課程」、「定時制の課程」、「通信制の課程」の3種類の課程がある[8]

全日制の課程

朝8時過ぎから午後4時半程度までの日中に学習する課程。いわゆる全日制の課程(全日制課程)とは、通常の課程とされているものである。一般的に高等学校といえばこの課程を指すことが多い。1日に5時間から8時間程度の授業をする。学校教育法により、修業年限は3年と定められている。学年制が多いが、近年単位制に変更された学校も多く、2003年度は全4626校のうち単位制が301校 (7%) ある。在学中に高等学校卒業程度認定試験を受験することも可能である。卒業率は92%前後。2002年度の公・私立高等学校の中退者数は89,461人。中退理由は「学校生活・学業不適応」が38.6%で最も多く、次いで「進路変更」34.9%、「学業不振」6.2%の順となっている。中退者全体のうち、1年生が53.0%を占め、2年生30.5%、3年生は8.8%。一般的な傾向としては、、現役入学者が多く過年度生が少ない(要するに殆どの生徒が15歳~18歳である)などの特徴がある。

定時制の課程

定時制の課程(定時制課程)とは、夜間その他特別の時間帯又は季節において授業を行う課程のことである。

主に、昼間仕事に就き、終業後に夜間に学校に来て学習する生徒のために作られた課程である。そのため、基本的には夜間に授業をするもの(夜間部)が多く、他に、農閑期に通学する形の農業関係の学科(農業科など)を設置する季節定時制と呼ばれるものや交代勤務の工場労働者(主に女子)等を対象に、昼間に授業を行うもの(昼間隔週二部制)も設置された。昼間隔週二部制については、対応する企業が少なくなってきたこと、志願者が少ないことから廃止されている。また、山間部の農業科・家庭科を設置している高校において昼間定時制を設置している。春と秋の農繁期に休業があるものである。現在は農業に携わるもの以外は、その期間に補習・職業体験などを行っている。4年次は登校する曜日を少なくして各自の進路に対応する学習を行う。
近年になって、全日制の課程に通いきれない、いわゆる不登校に近い生徒などが増えてきて、それらの生徒への対応の一環として定時制の課程が利用されてきているという現象もある。そのため、より多様な教育の機会を提供するために、三部制(後述)や昼夜間定時制などの新しい形態のものも設立されるようになってきている。朝(8:00 - 12:00)や昼(12:00 - 16:00)に授業をする昼夜間定時制の学校が増え始めている。また朝、昼、夜に授業を行う学校は三部制と呼ばれる。
また東京都立新宿山吹高等学校定時制課程では、1部 (8:40 - 12:20)、2部 (10:40 - 14:50)、3部 (13:10 - 16:50)、4部 (17:20 - 21:10) の四部制の授業を行なっている。これらの制度は、朝から夕方前までの授業に出席できない生徒に対して対応するように考えられたものである。
例外として、科学技術学園高等学校は全日制と変わらず、45分6時間授業(進学コースは7時限)を行っている。定時制の中で部活動に一番力を入れている高校として有名である。
現在では不登校だけでなく通院、就業、高等専修学校とのダブルスクールに配慮した形の開講形態になっており、多部制を中心に大学との単位互換など、全日制では対応できない、より個性を尊重するような取り組みがなされている。

授業形態

1日に4時間程度の授業を行なう学校が多いが、中央大学高等学校科学技術学園高等学校のように6時間の授業を行なう例もある。学校教育法により、修業年限は各学校が定める3年以上の期間とされている。
1988年の法改正以前は修業年限が4年に統一されていたため、2003年度は4年制の課程が756校と比較的多く見られるが、3年制(三修制ともいう)の課程も135校ある。
3年制の場合、1日の授業時数を5校時程度(ゼロ時限授業や5時限授業の実施による)にまで増やしたり、通信制課程を併習したり、高等学校卒業程度認定試験の合格科目を卒業単位の一部として認定する場合も少なくない。
多くが学年制による教育であるが、2003年度は3年制のうち52校、4年制のうち150校が単位制である。

現状

21世紀に入った現在、夜間の課程では志願倍率が0.1を切るところも少なくない。一方、二部制や三部制をとる学校の志願倍率は1.0倍前後で安定しているほか、一部では3倍以上の倍率がつくこともあるなど常に一定以上の志願者が存在する。卒業率は半数前後であり、全日制の課程に比べてかなり低い。
昼間定時制課程は交代勤務の工場労働者の減少に伴い、二部制や三部制などに転換する学校が増加した。一方、夜間定時制課程については、中学校卒業時に就職する人が大幅に減少したため生徒数も同様に減少しており、学校の統廃合が進んでいる。しかし、統廃合は志願者にとって近隣校が減少してしまうという側面もあり、遠距離通学や勤労者の通学困難などの問題も多く生じるほか、東京都立立川高等学校東京都立町田高等学校東京都立農業高等学校のように近隣の夜間定時制の閉課や統合になどによって多数の生徒が集中し、生徒数300人から400人程度の比較的大規模となってしまった学校も存在する。

通信制の課程

通信制の課程(通信制課程)とは、通信による教育を行う課程のことである。学校教育法により、修業年限は3年以上と定められており、2003年度は3年制は110課程、4年制は54課程である。

基本的に自主学習により、一般的にレポートと呼ばれる課題の添削(添削指導)を受けることで学習を進めていくが、同時に一般的にスクーリングと呼ばれる面接指導が、一般的には月に数回程度(全日制の課程の約8単位時間分の授業に相当するといわれる)行われ、添削指導、面接指導、試験などを通じて単位が得られる。面接指導は、多くの学校が日曜日と月曜日に1つの科目に対して同じ内容で行われ、生徒はどちらかの日に出席すればよい形になっているところが多いが、複数の都道府県の生徒が在学する広域通信制をとる学校などでは、夏季などにまとめて合宿形式などで面接指導を行う学校もある。また、面接指導の一部時間を学校以外の公認の学習会によってまかなうこともできる制度を持っている学校もある。さらに、各教科・各科目または特別活動について、計画的かつ継続的に行われるラジオ放送、テレビ放送その他の多様なメディアを利用して行う学習を取り入れ、生徒がこれらの方法により学習し、その成果が満足できると認められるときにその生徒について、その各教科・科目の面接指導の時間数又は特別活動の時間数のうち、各メディアごとにそれぞれ10分の6以内、最大10分の8以内の時間数を免除する制度を持つ学校もある。ラジオ放送テレビ放送については、NHK高校講座の利用が多い。また、インターネットを利用した通信制の課程もある。

入学に際して、学力検査による入学者選抜が行われることは少ない。ほかの高等学校や中等教育学校の中途退学者の場合などには、編入学試験を実施しているところもあるが、学ぶ意思があれば不合格にしない場合がほとんどで、中学校を卒業していれば、原則として入学に際して学力などを求められることはない。

単位制による課程も多く、2003年度は、修業年限を3年とする学校のうち83校、修業年限を4年とする学校のうち28校が単位制による教育を行っている。単位制による教育の場合は、ほとんど学年という概念は薄く、原級留置(留年)という概念は無く、最短3年で卒業する人から(修業年限が3年の場合)、在籍期間を最大限利用し、学校によっては20年以上の長い時間をかけて卒業する人もいるなど、自分なりの進度で学習することも可能である。また高等学校や中等教育学校の中途退学者の場合、以前の高等学校や中等教育学校の単位が認められる制度をもっている学校が多い。

自分なりの進度で学習できるということから、創立された当初の「職業人のための高等学校の課程」という機能とともに、不登校の人や、全日制の課程になじめなかった人たちが占める割合も増加してきている。したがって、生徒の年齢も幅が広く、15歳の中学校を卒業したばかりの人から80歳代を越える高齢の人が見られる。また、生徒の多様化によって1990年代からは、私立学校において広域通信制(複数の都道府県を学区とする通信制の課程)が増えている。個性的な課程も出てきており、スポーツ教育などを行っている通信制の課程などもある。

自学自習を基本とする学習のため、どうしても時間がとれず管理が難しい、学習が進まない、時間が決まっているわけではないのでほかに優先順位があるとどうしても後回しにしてしまう、さらには常に教員に質問などができないので難しいという声もある。学習面などを支援するために、通信制の課程の多くは、学校で独自の教材を作成して配布したり、副教材で「学習書」と呼ばれる、放送出版協会が発行する副教材を利用しているところが多い。特に学習書は広く使われているものであるが、国語科目ではその学習書の中に教科書の内容をそのまま含んでいるなどという場合もあり、教科書に比べて高価であるが、教科書と同義のものとしてあつかわれ、一部で一定条件を満たせば補助が出るところもある。

通信制の課程に在学する生徒を対象として学習支援を行なう教育施設として、サポート校があり、通信制の課程をおく高等学校と正式に提携を行っている教育施設もある。

一部の広域通信制高校においては、学習環境など基準に満たない劣悪な学校が存在した。そのため、文部科学省はそのような広域通信制高校の調査・監査・改善命令を行った。

学年による教育課程の区分の有無による分類

高等学校には、「学年制と単位制の併用による教育」と「単位制による教育」との2種類がある。以前の高等学校には、学年制と単位制の併用による教育しか存在しなかったが、1988年度(昭和63年度)に、単位制のみによる教育が、「定時制の課程」と「通信制の課程」で認められ、さらに1994年度(平成6年度)には「全日制の課程」にも認められた。

学年制と単位制の併用による教育

必ず各学年ごとに課程修了の認定がなされてから次学年の課程に進む方式である。年度末に各学校が個々の生徒に対して進級を認定し、認定されないと原級留置留年)になる。最終学年の課程を修了し、各学校で全課程を修了したと認められれば卒業することができる。私立に関しては厳しく、留年は認められない場合もあり、退学・転学を求められることもある。単に「学年制」と呼ばれる場合もあるが、単位制も併用しているため、各学校の運営方法によっては高学年次での必履修科目の単位修得が可能となるなど単位制による教育と似た状況となることもある。

単位制による教育

学年による教育課程の区分を設けない方式である。したがって、最終学年に達するまで原級留置(留年)という概念はない。一定期間(転学編入学でない場合、全日制の課程では3年、定時制の課程・通信制の課程では各学校が定める3年以上の期間)を在学し、必要な単位の修得などをして、各学校で全課程を修了したと認められれば卒業することができる。すべての高等学校の課程においては単位制が実施されているが、単に「単位制」と呼ぶ場合は、通例「学年制を実施せず、単位制による教育を行なっている場合」を指し、法的には学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第103条第1項、および単位制高等学校教育規程(昭和63年文部省令第6号)が適用される。

学科による分類

小学科数(本科)[10]
学科 全日制 定時制
普通科 4,056 3,614 442
専門教育 農業に関する学科 800 778 22
工業に関する学科 1,938 1,752 186
商業に関する学科 982 910 72
水産に関する学科 90 90
家庭に関する学科 326 314 12
看護に関する学科 94 91 3
情報に関する学科 24 23 1
福祉に関する学科 99 99
その他の学科 644 641 3
総合学科 371 333 38
9,424 8,645 779

日本の高等学校には、学科がおかれる。高等学校設置基準第5条により、学科の種類は次の通り定められている[8]

  1. 普通教育を主とする学科(公式名称: 普通科)
  2. 専門教育を主とする学科 (通俗名称: 専門学科)
  3. 普通教育及び専門教育を選択履修を旨として総合的に施す学科 (公式名称: 総合学科)

学科が細分化されているのは日本の高校の特徴である。アメリカ、イギリス、カナダなどの高校は総合学科が多い[11]

普通科

普通科[12]とは、一般的学習である普通教育を主とする学科である[8]。国語、地理歴史、公民、数学、理科、保健体育、芸術、外国語、家庭、情報などの普通教育に関する教科・科目を中心として学習する。どの進路にも対応でき、どの分野にも依存しない普遍的教育を理念とするが、一方で大学などの高等教育機関進学のための準備教育にならざるを得ないという意見もある。従来は公立においては画一的な教育課程が組まれていたが、現在では学校毎に特色のあるものへと改革が進んでいる(例:兵庫県立など)。教育課程に商業や農業など専門科目が置かれることがあり、就職する生徒にも対応している。

専門教育を主とする学科

専門教育を主とする学科は、専門学科[13]とも呼ばれる[8]。専門学科は農業、工業、理数、体育などに関する各学科が設置されている。かつて職業学科と呼ばれた、農業・工業・商業・水産・看護など職業に関する専門教育を行う学科と、理数・英語・国際・文理・探求・体育・芸術など普通教科のうちいくつかを専門的に教育を行う学科とに分かれる。職業学科は、その性質上、各省庁の養成施設としての認可を受け、卒業時に各種の免許を取得したり、あるいは試験科目の一部が免除になる教育課程を編成している学科も少なくない。現在では分類が変わり、主な専門学科とその他の専門学科に分類されている[要出典]

総合学科

総合学科[14]とは、一般的学習である普通教育と専門的学習である専門教育を総合的に施す学科のことである[8]。各教科・科目は選択履修とされ、原則として単位制である。普通教科に関する科目と専門教科に関する科目(商業系・工業系など)の両方を選択できる。多くは2年次への進級時に進学コースか就職コースかを決定するが、カリキュラムは比較的緩やかである。が、専門教科の学習はコースを決定するのが2年次と他学科よりも1年遅い。また、早期の進路決定が求められる。専門教科の科目を25単位以上設置しなければならない。系列と呼ばれるまとまった科目の集まりが複数設置される。しかし系列にとらわれず自由に科目を選択できる。そのほか、必修科目、系列に所属しない自由選択科目が設置される。

専攻科

高等学校専攻科[15]
普通科 職業学科(専門高校)
農業 工業 商業 水産 家庭 看護 福祉 併置 その他
設置校数 5 7 18 1 25 2 75 5 138
生徒数(人) 1,037 229 440 20 534 117 6,551 1,147 10,075
学科数 8 9 24 2 51 2 78 5 6 185

高等学校専攻科(Upper secondary school, advanced course)はISCED-4レベルに位置づけられ、ISCED-3レベルの修了者に対して1年以上の教育を施す[8]。修了時にはサーティフィケートが発行される[8]

設置者の違いによる分類

学校を設置する公的セクターは、義務教育である中学校中学部を設置している特別支援学校を除く)は市区町村(区は東京都の23区に限る)で、大学または高等専門学校が国が主となっているのに対し、高等学校(中等教育学校と、中学部ならびに高等部を設置している特別支援学校を含む)においては都道府県が主となっている。これは、同一都道府県内において高等学校における教育を受ける機会の格差が生じることがないようにするためである。そのほか、政令指定都市など一部の市区町村(区は東京都の23区に限る)が設置している学校がある。また、山間部の分校は市町村立の場合もある。一般に、学校数全体で大都市圏では私立の割合が高いが、全国の大半の地域では、都道府県・市町村立の割合が私立を上回っている。

国立学校

公立学校

  • 都道府県立 - 通例・校名は「○○県(府・都)立○○高等学校」であるが、北海道・宮城・長野の各道県は変則的であり、「立」が入らない。
  • 市立、区立(都の特別区立)、町立、村立 - 通例・校名は「○○市(区・町・村)立○○高等学校」であるが、北海道の場合は一部を除き道立高校同様「北海道○○高等学校」で全道的に統一されている。
  • 組合立 - 地方公共団体の一部事務組合による設置。
  • 公立大学法人立 - ただし学校教育法第101条の2の規定により、「当分の間、大学以外の学校を設置することができない」とされている。

私立学校

新しい取り組み

新しいタイプの高校

新しい動きなど

注釈

  1. ^ 大工、鍛冶、電工、保健、農業、園芸、林業 - Carpenter, blacksmith, electrian upper secondary, health service assistent, agriculture, horticulture, foresty, vocational education
  2. ^ ブルーカラー(特に製造業や建設業など)や一部のサービス業(特に飲食業)での単純労働者、若年者の起用が優遇される職人伝統工芸鳶職など)や一部のプロスポーツ選手(力士や競馬騎手)などに限られる。平成初期までは美容師・理容師も中学卒業後になることはできたが、2015年現在では中卒で美容師・理容師になることはできなくなり、高卒以上で美容学校に入学する方法に変更されている。
  3. ^ 年少者を証明する書類を事業所に備え付けることが義務付けられており、他にも時間外労働や18歳未満の女子と16歳未満の男子の深夜労働が出来なかったり危険有害作業が制限されたりすることなどが挙げられる。
  4. ^ 例として運転免許は学歴による制限はないが、年齢の下限が定められており、原付(一種・二種)および自動二輪(中型)の運転免許は16歳以上、普通自動車運転免許は18歳以上でないと取得できない。特に地方では自家用車以外に交通手段がないため、通勤ですら運転免許の取得を必須とする企業もある。他にも国家資格業務独占資格の中には年齢を問わず中卒者は取得できないものもある。
  5. ^ 1970年代半ばまでは中卒後に就職する人も少なくはなかった(詳細は「集団就職」を参照)。
  6. ^ 2010年に成立した「平成二十二年度等における子ども手当の支給に関する法律」の条文を参照すると、「12歳に達する日以後の最初の3月31日を経過した18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者」を「小学校修了後高等学校修了前の児童」と法律内の文章で呼称しているが、この呼称によって、高等学校の修了年齢が定められることはない。ただし、学校教育法による制度および実際の運用として、12歳で小学校を修了する保証もなければ18歳で高等学校を修了する保証・義務もないため、法律の文章表現として必ずしも適切とは言い難い実情がある。

出典

  1. ^ 中学校が「junior high schoolジュニア・ハイ・スクール」と呼ばれるのに対して「senior high schoolシニア・ハイ・スクール」と呼ばれる場合もある。
  2. ^ 文部科学省 2013, p. 68.
  3. ^ 文部科学省 2013, pp. 68–69.
  4. ^ ISCED mapping - Denmark”. UNESCO. 2015年11月13日閲覧。
  5. ^ ISCED 2011 mapping - Portugal”. UNESCO. 2015年11月13日閲覧。
  6. ^ Portugal - European inventory on NQF 2014 (Report). CEDEFOP. 2014.
  7. ^ 学校教育法第50条。なお2007年改正前の法第41条では、「高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。」となっていた。
  8. ^ a b c d e f g h UNESCO (2008年). “Japan ISCED mapping”. 2015年10月31日閲覧。
  9. ^ 総務省『青少年白書』平成18年版
  10. ^ 学校基本調査(平成27年度) (Report). 文部科学省. 25 December 2015.
  11. ^ 佐藤学『教育改革をデザインする』(第5版)岩波書店〈教育の挑戦〉(原著2000年10月25日)、pp. 20-22,74頁。ISBN 4000264419 
  12. ^ : general course
  13. ^ : specialised course
  14. ^ : integrated course
  15. ^ 高等学校専攻科に関する 実態調査 平成24年度

参考文献

関連項目

学校文化