馬息嶺スキー場

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馬息嶺スキー場
所在地 朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮江原道
座標 北緯39度3分44秒 東経127度15分4秒 / 北緯39.06222度 東経127.25111度 / 39.06222; 127.25111座標: 北緯39度3分44秒 東経127度15分4秒 / 北緯39.06222度 東経127.25111度 / 39.06222; 127.25111
標高 1,360 m - - m
コース面積 1,400 ha
地図
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馬息嶺スキー場
各種表記
チョソングル 마식령 스키장
漢字 馬息嶺스키場
発音 マシンニョンスキジャン
MR式
英語
Masingnyŏng sŭk'ijang
Masikryong Ski Resort
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馬息嶺スキー場(マシンニョン[1]スキーじょう、朝鮮語마식령 스키장)は、朝鮮民主主義人民共和国江原道元山市法洞郡の境にある馬息嶺に建設された大規模なスキー場である。全距離は110kmにも達する。

概説[編集]

このスキー場の建設に伴い、北朝鮮当局は馬息嶺速度(마식령속도)という語句を盛んにスローガンに取り入れるようになった。当局は、これまでに驚異的な速さで進められた事業にちなんでその速さを「千里馬速度」「平壌速度」「熙川速度」などと表現してきたが、今回の「馬息嶺速度」の場合もその建設の速さをアピールする狙いがあるとされる[2]朝鮮労働党機関紙労働新聞2013年6月5日に、「馬息嶺速度」で造成を加速し2013年中に完成させるよう求めた金正恩第1書記の「アピール文」を1面に掲載するなど、国家建設の象徴と位置づけられている[3]在日本朝鮮人総聯合会機関紙朝鮮新報2013年6月28日に、「最近朝鮮のメディアに「馬息嶺速度」という言葉が使われない日がない」と報じた[2]

2013年7月、梅雨前線の活発化によってスキー場の建設現場が集中豪雨に見舞われた。その際、工事現場の一部が破壊され数百人もの死傷者が出たとの情報が北朝鮮国内の消息筋から寄せられた[4]

報道によると、総延長110kmで、最高地点は海抜1360m。スケート場やホテルなどの関連施設も整備されている[5]。2013年8月の段階では、斜面を切り開き滑走コースを造成する映像が配信されていたが、同年12月には大型リゾートホテルの外観が報道されるなど、施設が急速に建設、整備されつつあることが示されている[6]

北朝鮮による海外からのリフトスキー用品の調達を阻止すべく、日本非政府組織によるロビー活動が行われた[7][8]。スイスなど欧州各国は、スキー場の整備に必要な機器の輸出制限を検討した。

2013年8月、スイス政府が制裁内容に含まれるぜいたく品の輸出にあたるとして、スイス企業と北朝鮮側はリフト等の売買を約760万ドルでほぼ合意していたものの、これを禁止した[9][10]。また、フランスやオーストリアの企業も契約を拒んだとしている。北朝鮮スキー協会は、国連制裁を理由にリフトを輸出しなかったとして、スイスに対し不満を表明し、リフトは平和利用であり国連憲章には違反していないと反論した[10]

2013年12月31日、スキー場がオープン。開場式には金正恩第1書記のほか崔龍海金己男らが出席し、金正恩は自らリフトに乗ってスキー場を視察した。リフトなど多くの設備は慈江道内の機械工業部門が製造したという。国連の制裁により、設備の輸入が困難になったため自国で製造したとみられている[11]。スキー場の様子はすぐさま世界で報道された。その映像には、スウェーデン・アレコ社製の人工降雪機やカナダ・ボンバルディア社製のスノーモービルなどが写っているが、各社は輸出を否定。中古を市場から調達したものと考えられている[12][13]。さらに翌年1月9日には元NBA選手のデニス・ロッドマン[14]、同月14日には参議院議員のアントニオ猪木が相次いでスキー場を訪問した[15]

2018年1月31日、馬息嶺スキー場にて平昌オリンピックに出場する北朝鮮、韓国選手団による南北合同スキー練習が行われた[16]

2024年ロシア国内向けにスキー場と平壌市内観光を合わせた観光ツアーが企画された。行程は3泊4日で、料金は日本円で約11万円[17]

脚注[編集]

  1. ^ ハングル文字における連音の法則では、パッチム“ㄱ”の後ろに“ㄹ”が来ると、“ㄱ”は“ㅇ”に、“ㄹ”は“ㄴ”となる。そのため“마식령”の読み方は、“마싱녕(マシンニョン)”となる。
  2. ^ a b 朝鮮新報
  3. ^ 共同通信2013年6月5日記事
  4. ^ 豪雨で人命被害拡大か 北朝鮮、金第1書記肝いりの工事現場も - MSN産経ニュース 2014年1月19日閲覧。
  5. ^ 北が大スキー場建設…スイス留学の正恩氏発案? 読売新聞 2013年10月22日08時48分
  6. ^ “金第1書記、建設中のスキーリゾートを視察”. フランス通信社. (2013年12月15日). https://www.afpbb.com/articles/-/3005118 2013年12月15日閲覧。 
  7. ^ アジア調査機構・加藤健代表による呼びかけ
  8. ^ How one determined activist is spoiling Kim Jong-un's plans for a top-notch ski resort サウスチャイナ・モーニング・ポスト 2013年8月21日記事
  9. ^ 北朝鮮 高級スキー場で見えてくるもの - SWI swissinfo.ch”. 2024年1月26日閲覧。
  10. ^ a b 北朝鮮、スキー場リフトを輸入できずに不満「平和利用なのに」―中国メディア”. 2024年1月26日閲覧。
  11. ^ 北朝鮮北部に新スキー場 自前でリフト製造 - 日本経済新聞”. 2024年1月26日閲覧。
  12. ^ 北朝鮮、馬息嶺スキー場に欧州製の高価品”. 2024年1月26日閲覧。
  13. ^ “北朝鮮のスキー場に欧米製機器 リフトは中古か”. 産経新聞. (2014年1月3日). https://web.archive.org/web/20140103210908/http://sankei.jp.msn.com/world/news/140103/kor14010315520003-n1.htm 2014年1月14日閲覧。 
  14. ^ "로드먼, 김정은에 호화선물"…유엔 제재 규정 위반 검토 2014年1月19日閲覧。
  15. ^ 「アントニオ猪木議員、北朝鮮のスキー場を“絶賛”」TBS News i 2014年1月19日閲覧。
  16. ^ 韓国特別機往来に「米国の憂慮」 南北合同でスキー練習 西日本新聞(2018年1月31日)2018年1月31日閲覧
  17. ^ 北朝鮮「高級リゾート」にロシア人を誘致 女性ブロガーの「宣伝」も”. 朝日新聞DIGITAL (2024年1月17日). 2024年1月20日閲覧。