風神

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竹原春泉画『絵本百物語』(1841年)より「風の神」
風神の図像の変遷
左: ギリシャの風神 (ガンダーラ美術), ハッダ, 2世紀
中: キジル石窟の風神, タリム盆地, 7世紀
右: 日本の風神, 17世紀
大猷院霊廟

風神(ふうじん)、風の神(かぜのかみ)、風伯(ふうはく)は、を司る。風の精霊、或いは妖怪をそう呼ぶこともある。また対になる存在として、雷神がある。

神話

古事記』や『日本書紀』に記された神話の中では、シナツヒコが風神とされている。『古事記』では、神産みにおいてイザナギイザナミの間に生まれた神であり、風の神であるとしている。『日本書紀』では神産みの第六の一書で、イザナミが朝霧を吹き払った息から級長戸辺命(しなとべのみこと)またの名を級長津彦命という神が生まれ、これは風の神であると記述している。

妖怪として

妖怪としては、空気の流動が農作物や漁業への被害をあたえる、人間の体内に入って病気の原因となるという、中世の信仰から生まれたもの。「カゼをひく」の「カゼ」を「風邪」と書くのはこのことが由来と言われており、江戸時代には風邪の流行時に風の神を象った藁人形を「送れ送れ」と囃しながら町送りにし、野外に捨てたり川へ流したりしたという[1]

高山

絵画ではの姿を模し、大きな袋(これをふいごのようにして風を起こす)を持った姿で描かれる。俵屋宗達の『風神雷神図』(屏風)はその代表的なものである。

俵屋宗達の『風神雷神図』(17世紀前半、国宝)より風神図

文学

江戸時代の奇談集『絵本百物語』では、風の神は邪気のことであり、風に乗ってあちこちをさまよい、物の隙間、暖かさと寒さの隙間を狙って入り込み、人を見れば口から黄色い息を吹きかけ、その息を浴びたものは病気になってしまうとされる[2]。また「黄なる気をふくは黄は土にして湿気なり」と述べられており、これは中国黄土地帯から飛来する黄砂のことで、雨天の前兆、風による疫病発生を暗示しているものといわれる[1]西日本各地では、屋外で急な病気や発熱に遭うことを「風にあう」といい、風を自然現象ではなく霊的なものとする民間信仰がみられる[3]

平安時代の歌学書『袋草子』、鎌倉時代の説話集『十訓抄』には、災害や病気をもたらす悪神としての風神を鎮めるための祭事があったことが述べられている[1]奈良県龍田大社では7月4日に風神祭りが行われている。

脚注

  1. ^ a b c 多田克己編 『竹原春泉 絵本百物語 -桃山人夜話-』 国書刊行会、1997年、166-167頁。ISBN 978-4-3360-3948-4
  2. ^ 『竹原春泉 絵本百物語 -桃山人夜話-』 107頁。
  3. ^ 村上健司編著 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、105-106頁。ISBN 978-4-620-31428-0

関連項目