青銅器時代
青銅器時代(せいどうきじだい)は、考古学ないし歴史学において、先史時代のうち石を利用した石器の代わりに青銅を利用した青銅器が主要な道具として使われた時代を指す術語である。
定義と概要
青銅器時代とは、デンマークのクリスチャン・トムセンが提唱した先史時代の歴史区分法の一つである三時期法に依拠する概念である。この三時期法は、先史時代の社会の歴史的な時間の流れを、主に利用されていた道具の材料によって石器時代、青銅器時代、鉄器時代と3つに区分する考え方であり、青銅器時代はその中の真ん中の時代に相当する。また、この時代区分は先ヨーロッパ史を中心に考えて提唱されたものであるが、中東、インド、中国にも適用することが可能である。
青銅器時代の定義は本記事の冒頭で述べているように、ある特定の社会の歴史的時間のうち、歴史時代に至る前の歴史段階であり且つ石器に代えて青銅器が主要な道具として使用されていた時代、である。そのため、青銅器が存在していても既に鉄器が主に使われる様になっていた時代は鉄器時代に区分される他、青銅器が盛んに利用されていても既に歴史時代に入っている時代は青銅器時代には区分されない。
青銅器時代の特徴
青銅は銅と錫の合金であるため、当然ながら、ある社会が青銅器時代へと移行するためには、交易によって他の文明圏から青銅器自体を大量かつ恒常的に入手できる例外的な場合を除いては、鉱物資源の入手が可能な状況が存在しなければならなかった。また同時に、火の制御と利用に関する高度な技術や冶金術の発達も必要とされた。
青銅がもてはやされた理由は、展延性に富み加工性に優れていたことと、青銅器が示した熱伝導性や耐久性や光沢という金属の一般的な性質が当時の人々にとって希少価値を有していたことにあると言われている。青銅は錫の添加量が多いほど白銀色の光沢が強くなり硬度も上がり、銅が多くなるにつれ黄金色を経て赤銅色へと変化し硬度も低下するが、この白銀色や黄金色といった華美な色彩は当時の人々の創造性を非常に刺激し、祭礼において用いられた神聖な神具や高貴な者が使用する装飾品として錫を多く含む青銅器が製作された。一方で、錫の含有量に相関して脆性が高まることから、青銅製の刀剣は黄金色程度の色彩の青銅が多く使われたことが分かっている。
青銅器の獲得により、石器時代に比べ、農業生産効率の向上、軍事的優位性を確保する事が出来、それによって社会の大幅な発展と職業の分化、文化レベルの向上が起こったと考えられている。
世界の各地域における青銅器時代
メソポタミア・エジプトでは紀元前3500年ごろから、ヒッタイトの現れる紀元前1500年前後までが青銅器時代と考えられる。
ヨーロッパでは紀元前2300年〜紀元前1900年ごろのビーカー文化後期、紀元前1800年〜紀元前1600年ごろから始まったウーニェチツェ文化などを経て、紀元前800年頃から青銅器時代から鉄器時代への移行期に入る。
中国では、紀元前3000年頃から春秋時代(紀元前770年〜紀元前400年ごろ)までが青銅器時代に相当し、さまざまな特異な青銅器が生まれた。中国で青銅や銅の生産が始まった時代は紀元前2000年より以降と考えられている。
青銅器時代が存在しない地域
石器時代、青銅器時代、鉄器時代という時代区分が当てはまらないケースもある。
石器を使っていた地域に、すでに鉄器の利用が普及している隣接地域から青銅器・鉄器の技術の両方が伝われば、その石器を使っていた地域には定義上青銅器時代は存在しないことになる。日本は、その典型例である。日本では弥生時代に鉄器と青銅器がほぼ同時に伝わったと言われており、青銅器は祭器としてのみ利用され、青銅器時代を経ずにそのまま鉄器時代に移行したと考えられている。
また中・南アメリカにおいては、鉄を発見する事なく文明・文化を発展させ、歴史時代に入った事から、青銅器時代という区分は存在しない。鉱業・冶金技術の発展とともに青銅のみならず金や銀、あるいは金・銀・銅の合金が使われるようになる一方、石器も実用品として長く使われた。