電子ボルト
電子ボルト (エレクトロンボルト) | |
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記号 | eV |
系 | SI併用単位(SI単位で表される数値が実験的に得られるもの) |
量 | エネルギー |
SI | 1.6021766208(98)×10−19 J[1] |
定義 | 電子1個を1Vの電位差で加速したときのエネルギー |
原子核物理学における電子ボルト(エレクトロンボルト、英: electron volt、記号:eV[2])[3]とは、エネルギーの単位を言う。
素電荷をもつ荷電粒子が、1 V の電位差を抵抗なしに通過すると 1 eV のエネルギーを得る。
概要
自由空間内で電子一つが 1 V の電圧で加速されるときのエネルギーを 1 eV と書き 1 電子ボルト(エレクトロンボルト、electron volt)と呼ぶ[4]。原子核物理学に限らず物性物理学から高エネルギー物理学、あるいは化学、半導体工学などの幅広い分野でも使用されるエネルギーの単位である[5]。
他のエネルギー単位への換算した場合については、以下の表のとおり。
ジュール (J = kg·m2/s2) |
キロワット時 (kW·h) |
電子ボルト (eV) |
重量キログラムメートル (kgf·m) |
国際蒸気表カロリー (calIT) | |
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1 J | = 1 | ≈ 2.778×10−7 | ≈ 6.242×1018 | ≈ 1.020×10−1 | ≈ 2.388×10−1 |
1 kW·h | = 3.6×106 | = 1 | ≈ 2.247×1025 | ≈ 3.671×105 | ≈ 8.598×105 |
1 eV | = 1.602176634×10−19 | ≈ 4.450×10−26 | = 1 | ≈ 1.634×10−20 | ≈ 3.827×10−20 |
1 kgf·m | = 9.80665 | ≈ 2.724×10−6 | ≈ 6.121×1019 | = 1 | ≈ 2.342 |
1 calIT | = 4.1868 | ≈ 1.163×10−6 | ≈ 2.613×1019 | ≈ 4.269×10−1 | = 1 |
なお、質量を電子ボルトに換算する場合[6]、原子質量単位 1 u はおよそ 931 MeV に相当する[7][8]。また、1 eV をボルツマン定数で割り、温度に換算すれば、約 1.16×104 K (= 1 eV/(kB))となる[9]。
主な利用場面
電子ボルトは日常生活ではあまり用いられない単位ではあるが、巨視的な物質や現象を素粒子1個単位から記述するのに便利である。このため学問や産業の現場において、光子や電子、原子などの持つエネルギーを表す際に広く利用される。以下、代表的な例を幾つか挙げる。
- 物質中の電子の持つエネルギーを表現する際に用いられる。例えば外部から与えた電界によって全体の電位が 1 V 変化すると、中の電子のポテンシャルエネルギーが 1 eV 変化することになるため、計算上都合が良い。
- 可視光域での光子1個のエネルギーは数eV単位となり、物質との相互作用の取り扱いに便利である。
脚注
- ^ CODATA(electron volt)
- ^ ユニコード記号
記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称 ㋎ U+32CE
-
㋎
㋎
電子ボルト - ^ 高エネルギー領域においては、MeV、GeV、TeV という表記が用いられるが、それぞれ“メブ”、“ジェブ”、“テブ”と呼ぶこともある。
- ^ 近角(2013) p.453
- ^ 分野によって使用される桁数が大きく異なる。物性分野では数 meV - 数 eV(もっと大きい場合もある)の範囲(1 meVが約10 Kに相当)であり、高エネルギー物理学の分野では数 MeV - 数 GeV(あるいはそれ以上)の範囲での議論がなされる。電子質量は約0.5MeV、陽子質量は約1GeVに相当する。
- ^ 質量とエネルギーの等価性(E=mc2)によると、エネルギーと質量の単位は、互いに変換することができる。
- ^ CODATA (uev)
- ^ なお、1 eV/(c2) は約 1.78×10−36 kg である。| CODATA(evkg)
- ^ CODATA(evk3)
したがって、3/2 eV の平均運動エネルギーをもつ三次元単原子分子理想気体の温度は 11604 K となる。
関連項目
参考文献
- 近角 聰信, 三浦 登(編) 編『理解しやすい物理 物理基礎収録版』文英堂、2013年。
- S.グラストン, M. C. エドランド 著、伏見康治, 大塚 益比古(共訳) 編『原子炉の理論』1955年。