鈴木銀一郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鈴木 銀一郎
誕生 (1934-11-24) 1934年11月24日
日本の旗 日本
死没 (2021-01-06) 2021年1月6日(86歳没)
職業 ゲームデザイナー翔企画取締役
活動期間 1981年 - 2010年代
ジャンル ウォー・シミュレーションゲームボードゲームカードゲーム
代表作 モンスターメーカー
ウィキポータル 文学
テンプレートを表示

鈴木 銀一郎(すずき ぎんいちろう、1934年11月24日 - 2021年1月6日[1])は、日本の作家ゲームデザイナー。有限会社翔企画取締役。愛称は「G大佐」「(ヒゲの)大佐」「銀爺」など。妻を将軍と称していたために、「大佐」を名のったという。

日本におけるカードゲーム・ブームの火付け役となった『モンスターメーカー』シリーズのデザイナーとして知られるほか、ボードゲームウォー・シミュレーションゲーム)、テーブルトークRPG(モンスターメーカー関連など)のデザインも手がけている。 同じゲームデザイナーである鈴木一也は実子である。

略歴[編集]

1934年(昭和9年)11月24日、東京生まれ。早稲田大学高等学院卒、早稲田大学政治経済学部中退[2]

実家は3代続いた履物商。中学時代には声優もしていたという。大学中退後、実家の仕事を手伝いながら商売を憶える。代替わりの際に実家をバーに商売替え。店は繁盛するもツケを断り切れない性格から金策に追われ、商売を畳む。その後大手出版社の子会社で百科事典の編集者となる。自伝によれば優秀な中間管理職であったというが、上司である雇われ社長に疎まれて49歳の時に退職に追い込まれる。その後、編集プロダクション「翔企画」を設立。小学館百科事典ニッポニカ』やキリンビール社内報の編集を手がける。同時に『シミュレイター』誌刊行、安価なシミュレーションゲームの「SSシリーズ」製作販売、カードゲーム『モンスターメーカー』シリーズ製作販売なども。しかしシミュレーションゲーム・ブームの終焉とトレーディング・カード・ブームの勃興を読み切れず、1990年代半ばに会社経営は行き詰まり、以後はフリーの著述家として活動を続けている。その後最近までゲーム開発の専門学校 デジタルエンタテインメントアカデミー にコンピュータAIの講座を持ち、後進の育成にも努めてきた(2009年3月閉校)。 (有)銀河企画・顧問(2002年4月~2005年3月)。 翔エンタープライズ・顧問(2012年7月~)。

2021年1月6日、老衰のため死去[1][3]。86歳没。

ゲーム界との関わり[編集]

幼少時から将棋などの盤ゲームを愛好し、自作の野球ゲームなどをつくって遊んでいたこともあるという。中学時代に麻雀も覚える。40歳の時に海外から輸入されたウォー・シミュレーションゲームに触れ、衝撃を受ける(最初に購入したのは『タクテクスII』)。同時に翻訳ルールの出来の悪さや輸入品ゆえの価格の高さに着目し、「日本人好みのテーマで、質のよい低価格の国産製品を作れば、商品になる」と企画を思い立つ。

ゲームショップでたまたま出会った黒田幸弘と知り合って意気投合し、共同でゲームデザイン組織「レック・カンパニー」を1981年に設立[2]エポック社に企画を持ち込み、『ワールド・ウォーゲーム』のブランドを築く。鈴木曰く、ゲームを制作する専門職の認知のために、「ゲームデザイナー」を名乗り、(おそらく日本で初めて)その肩書きの名刺をつくったという。黒田と共にレック・カンパニーの主幹として、またメインデザイナーとして、シミュレーション・ゲームの制作に関わり、いくつかの作品を残した。翔企画創業時(1984年)の多忙により「レック・カンパニー」から一時離れる。

その後は、経営が安定した翔企画で、ゲーム関連の制作・出版を自ら行うことになり、従来の業務の傍ら、ゲームの企画・制作や自社出版を開始する。レック・カンパニーが発行していた、シミュレイターを新生創刊して、自ら編集・出版し、これを活動の中心とした。この時期、鈴木銀一郎が編集長を務めるシミュレイター誌の元、多くのライター、ゲームデザイナーが集うことになった。佐藤大輔の小説『レッドサン・ブラッククロス』に登場する「鹿内靖」「山田道夫」「高梨俊一」なるキャラは、いずれも『シミュレイター』誌で活動していたライターである(鹿内靖は後に編集長になる。高梨は現在日本大学理工学部教授)。また「赤城毅」としてデビューする以前の赤城毅が本名で執筆活動を行っていたこともある。

その後シミュレーションゲームの市場が冷え込むと共に、制作と出版の規模は縮小してしまうが、1988年、『モンスターメーカー』の大ヒットにより、さらに広い層に認知されることになる。モンスターメーカーの関連商品として、自ら執筆した小説も、単なるキャラクター小説に留まらない重厚なエピック・ファンタジーとして評価を受け、小説家としての力量も示した。

晩年は、フリーランスのゲームデザイナーとして、シミュレーションゲーム、ボードゲーム、カードゲーム、TRPGなどを広くデザインしていた。

人物[編集]

パンツァーグルッペ・グデーリアン英語版』(1976年発売)を特に好み、プレイ回数と作戦研究はアメリカのゲーマー以上だろうと自負する。

戦略性の高い対人ゲームにおける実力の高さも非常に有名で、ボードゲームはもちろん、麻雀では「一時は麻雀で食っていた」と噂されるほど高い実力を持つ。自らの著書「ゲーム的人生ろん」でも、会社勤めで家族を抱えて薄給の時代に、麻雀の勝ちで糊口をしのいでいたことが述懐されている。

一部のウォー・シミュレーションゲーム愛好者から「神様」と称される。

伝説の雀鬼こと桜井章一の著書にしばしば登場する「鈴銀」は、鈴木銀一郎だという風説があるが、本人は否定している。

編集長を務めた雑誌『シミュレイター』は創刊当初、発売が常に遅延した。ついに鈴木は「次号の発売日が遅れたら坊主頭になる」と誌面で公約したものの、やはり発売日を守ることはできなかった。後日、頭を丸めた鈴木の写真が同誌に掲載された。

自らデザインしたゲームのテストプレイにおいては、練達のプレイヤーとの対戦においては強敵であったものの、初心者に負けることも多々あり、「サドンデス鈴木」と揶揄されたこともある。

鈴木銀一郎杯[編集]

2001年12月に創刊された『ゲームジャーナル』(Game Journal)誌では、目玉として創刊号の付録ゲーム『真・バルバロッサ作戦』をデザインしたが、これは鈴木にとって約10年ぶりのゲームデザインであった。ゲームジャーナル誌では、鈴木を審査委員長として『鈴木銀一郎杯ゲームデザイン賞』という投稿ゲームの賞を設けており[4]、いくつもの作品が出版されている。

2013年には、自らの小説・ゲームを題材とした音楽(作詞・作曲)を公募している。『鈴木銀一郎ゲーム音楽コンテスト』[5]

作品リスト[編集]

  • 朝鮮戦争(エポック社
  • 砂漠の狐(エポック社)
  • バルジ大作戦(エポック社)
  • 史上最大の作戦(エポック社)
  • 日本機動部隊(エポック社)
  • マレー電撃戦(エポック社) - シンガポール攻略戦のみ黒田幸弘
  • 神々の戦い(エポック社)
  • ロンメルアフリカ軍団(翔企画
  • ザ・黒幕 日本支配(翔企画)
  • モスクワ冬将軍(翔企画)
  • ナイトメアハンター(翔企画)
  • LEVEL UP!(翔企画)
  • 湾岸戦争(翔企画)
  • Get the Hills(『Simulator』1号付録、翔企画)
  • 新・戦国大名(『ウォーゲーム日本史』2号付録、国際通信社
  • 志士の時代(『ウォーゲーム日本史』8号付録、国際通信社)
  • 銀爺のわらしべ長者(銀河企画)
  • 真・バルバロッサ作戦(『ゲームジャーナル』1号付録)
  • 無碍光(オクタゴン・エンタテインメント)
  • Hundred Days Campaign(アークライト
  • 謙信vs信玄(アークライト)
  • 企業買収ゲーム(アークライト)
  • くにとりっ! 天下は萌えているか(アークライト)
    • くにとりっ! 外伝 決戦萌ヶ原(アークライト)
  • ビンゴダイス(『Game Link』11号付録、アークライト)
  • スキップライン(『Game Link』11号付録、アークライト)
  • 狼少年(『Role&Roll』52号付録、新紀元社
  • 競馬マフィア(グランペール
  • シカゴ(翔エンタープライズ
  • セブンミッションズ(翔エンタープライズ)
    • LONG SHOT(翔エンタープライズ)
    • ユー・クライ・ウルフ(翔エンタープライズ)
  • モンスターメーカー関連
    • モンスターメーカー(翔企画)
    • マジックマスター(翔企画)
    • 日本妖怪(翔企画)
    • ソフィア聖騎士団(翔企画)
    • ダンジョンウォーズ(翔企画)
    • ダンジョンウォーズ2(翔企画)
    • 学園祭(翔企画)
    • 七人の魔術師(翔企画)
    • 大予言(翔企画)
    • 宇宙商人(翔企画)
    • 双頭の獅子(『RPGamer』6号付録、国際通信社)
    • ウルフレンド・サーガ(『Game Link』3号付録、アークライト)
    • モンスターメーカーRPGレジェンド(国際通信社)
    • ウルフレンド・クエスト(翔エンタープライズ)
    • いづみ事件ファイルII~慟哭編~(ジー・モード

著書[編集]

小説[編集]

  • 二と三の違い(『別冊宝石』1958年74号 新人二十五人集 所収)
  • ドラゴンライダー : モンスターメーカー 上(1991年12月、富士見ファンタジア文庫ISBN 4-8291-2422-9
  • ドラゴンライダー : モンスターメーカー 下(1992年1月、富士見ファンタジア文庫、ISBN 4-8291-2425-3
  • ナルド予言書 : モンスターメーカー 上(1992年10月、富士見ファンタジア文庫、ISBN 4-8291-2467-9
  • ナルド予言書 : モンスターメーカー 下(1993年3月、富士見ファンタジア文庫、ISBN 4-8291-2494-6
  • 嘲笑う石像 : モンスターメーカー(1994年12月、富士見ファンタジア文庫、ISBN 4-8291-2590-X
  • カードの国の大冒険 : モンスターメーカー(1995年4月、富士見ファンタジア文庫、ISBN 4-8291-2620-5
  • 赤い髪の魔女 : マジック・マスター(1995年4月、ログアウト冒険文庫ISBN 4-89366-346-1
  • 闇の騎士団 : マジック・マスター(1996年2月、ログアウト冒険文庫、ISBN 4-89366-467-0
  • ファイアーエムブレム 聖戦の系譜(1996年8月、ファミ通ゲーム文庫ISBN 4-89366-565-0
  • ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 : シグルド編 上(1996年12月、ファミ通ゲーム文庫ISBN 4-89366-630-4
  • ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 : シグルド編 下(1997年1月、ファミ通ゲーム文庫、ISBN 4-89366-656-8
  • ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 : 最後の地竜族(1997年12月、ファミ通ゲーム文庫、ISBN 4-89366-889-7
  • ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 : 森と湖の国(1998年1月、ファミ通ゲーム文庫、ISBN 4-89366-922-2
  • 最後の竜戦士 : モンスターメーカークロニクル(2001年7月、電撃文庫ISBN 4-8402-1868-4

TRPG関連書籍[編集]

エッセイ[編集]

電子書籍[編集]

訳書[編集]

  • ロールプレイングゲーム・ハンドブック(ロバート・プラモンドン著)

テレビ[編集]

  • Theゲームナイト(BS日テレ、2008年4月放送開始:土23:00〜)2008年7月5日(7月12日放送)にゲスト出演してドイツゲーム(ボードゲーム)の新版『アベ・カエサル』(ホビージャパン)をプレイした。

脚注[編集]

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]