野口竜

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野口 竜(のぐち りゅう、1944年昭和19年〉1月1日[1][2][3] - 2012年平成24年〉1月2日[3]、本名:野口 勝[1])は日本の漫画家、デザイナー、イラストレーター。別名:野口まさる[1]久留米東[1]野口太陽[1]福岡県久留米市東町出身[1][2]

来歴[編集]

学生時代から絵を描いており、県展に入賞するなどしていた[2]。美術大学を志望していた時期もあったが金銭面から断念し、高校卒業後に上京[2]

石森章太郎の漫画『世界まんがる記』を読んで漫画家を志す[1][2]。石森を訪ね弟子入りを志願し断られるが、代わりに紹介されたスタジオ・ゼロに入社し、漫画『オバケのQ太郎』の背景を担当した[1][2]。その後、多忙となった石森の専属アシスタントとなり、『おかしなおかしなおかしなあの子』や『サイボーグ009』に参加[1][2]

1970年、漫画家として独立[1]。『週刊ぼくらマガジン』の編集者・富井道宏から「野口竜」のペンネームを命名され[4][1]、「女王陛下のユリシーズ号」(『週刊少年サンデー』)でデビュー[5][3][注釈 1]

独立後は主にコミカライズ分野で活動していた。『スーパーロボット レッドバロン』では企画段階からキャラクターデザイン、マットアートを手がけ[3]、同作が特撮デザイナーとしてのデビュー作となった。その後、『ザ・カゲスター』『恐竜大戦争アイゼンボーグ』『電子戦隊デンジマン』『太陽戦隊サンバルカン』「宇宙刑事シリーズ」などに参加[3]

1990年代後期にはゲーム会社カプコンのプロデューサー(当時)・岡本吉起の呼びかけにより脚本家の杉村升曽田博久らとともにゲーム製作会社・フラグシップに参加、『バイオハザード』『鬼武者』など、同社制作作品のビジュアルワークス(クリーチャーデザイン、美術デザインなど)も手がけた。

晩年は第一線を退き、主にイラストを担当していたが、68歳の誕生日を迎えた翌日の2012年1月2日に他界した[6][7]。2012年1月公開の『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』の魔空監獄デザインが遺作となった。訃報に当たってはホビー雑誌ハイパーホビー2012年3月号にて追悼特集が掲載され、永井豪髙寺成紀早瀬マサト山田ゴロが寄稿し、ツイッターやブログでは髙寺、日笠淳小林義明雨宮慶太田﨑竜太篠原保さとうけいいちがその死を悼んだ[要文献特定詳細情報]

作風[編集]

  • コミカライズではオリジナルと絵柄を変えたくないという姿勢であり、『仮面ライダー』では怪人をスチール写真に忠実に描いている[1]
  • キャラクターデザインについては、赤塚不二夫藤子不二雄のような子供が真似して描くことができるようなキャラクターとすることを心がけていた[2]。怪獣・怪人のデザインについては、タツノコプロ九里一平が掲げていた「(番組放送翌日に)学校で話題になるような」キャラクターづくりを意識しており、晩年はアニメや特撮の敵キャラクターがデザインはかっこいいものの何がモチーフかわかりにくい子供たちに親しまれないものとなっていったことを危惧していた[2]
  • 『ザ・カゲスター』のドクターサタンを始めとして、南洋の仮面文化やアフリカン・アートを参考にすることが多い[8]
  • 自身では格好いいメカは描けないと述べており、『宇宙刑事シャイダー』の鬼瓦もモチーフにしたフーマ戦艦など、クラシカルなSFに登場するようなユニークなものが多い[8]
  • 漫画ではすべて自分の世界として作り上げることができるが、映像は集団作業であるため自分だけではままならず、デザインを上げた後は現場に委ねるため職人に徹しなければできないと述べている[8]

エピソード[編集]

  • 初期はペンネームにはこだわりがなく、複数のペンネームを用いていた[1]。冨井から名付けられた「野口竜」は、野口本人は雑誌が出てから知ったという[1]永井豪との共作などで用いた「野口太陽」の名は、永井の兄永井泰宇に名付けられた[1]
  • オバケのQ太郎』の登場人物である小池さんは、背景を担当していた野口がキャラクターのモデルになった鈴木伸一の下宿先の大家の名を表札に書いたことで名前が決まった[1]
  • スーパー戦隊シリーズメタルヒーローシリーズで携わっていた企画者104の横田誠は、野口はクオリティを上げるためいつまでも手をかけており、イラストの完成が遅かったと証言している[9]。作業に没頭して連絡が取れなくなることも多く、電話や電報では捕まらず自宅を訪れるとそこにいたという[10]
  • 石ノ森章太郎の作品の中では、忍者漫画の『黒い風』を一番好きな作品として挙げている[2]

主な作品[編集]

テレビ番組[編集]

劇場映画[編集]

ゲーム[編集]

画集[編集]

漫画[編集]

コミカライズ[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 『KODANSHA Official File Magazine 仮面ライダー』では、『風神島のちかい』(『ぼくら』)をデビュー作と記述している[1]
  2. ^ 雨宮慶太との連名。
  3. ^ 篠原保との連名。
  4. ^ 「野口太陽」名義
  5. ^ a b c d 「のぐち竜」名義
  6. ^ 「久留米東」名義

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x OFM仮面ライダー2 2004, p. 33, 五十嵐浩司「石ノ森章太郎を継ぐ者 仮面ライダーマンガ家列伝 第7回 野口竜」
  2. ^ a b c d e f g h i j レッドバロンフォトニクル 2014, p. 1, 「デザイン 野口竜」
  3. ^ a b c d e 戦変万化 2023, p. 286, 「デザイナー紹介」
  4. ^ 『テレビマガジン 70's ヒーロー創世期メモリアル』(講談社・1998年) p.125
  5. ^ 『野口竜の世界 東映特撮TV映画・悪の系譜』 p.88
  6. ^ 早瀬マサトtwitterより
  7. ^ 小林義明twitterより
  8. ^ a b c 奇怪千蛮 2017, pp. 94–95, 「再録検証 稀代の怪人絵師・野口竜の世界」(初出『東映ヒーローMAX Vol.13』辰巳出版)
  9. ^ 「スーパー戦隊制作の裏舞台 横田誠」『スーパー戦隊 Official Mook 20世紀』《1990 地球戦隊ファイブマン講談社〈講談社シリーズMOOK〉、2019年4月25日、33頁。ISBN 978-4-06-513711-6 
  10. ^ 「特別対談 横田誠(企画者104×松井大(企画者104)×野中剛)」『宇宙船』vol.151(WINTER 2016.冬)、ホビージャパン、2015年12月29日、112-113頁、ISBN 978-4-7986-1147-1 

参考文献[編集]

関連項目[編集]