酸素欠乏症

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酸素欠乏症
概要
分類および外部参照情報
ICD-10 R09.0, T71
ICD-9-CM 799.0

酸素欠乏症(さんそけつぼうしょう、Anoxia)は、人体が酸素の濃度18%未満である環境におかれた場合に生ずる症状。一般の空気中の酸素濃度は約21%であり、発症は個人差がある。

労働災害などを防ぐため、酸素欠乏症等防止規則昭和46年、労働省令第26号)が定められており、作業主任者の選任が必要である。

酸素の不足に対して、最も敏感に反応を示すのは、大脳皮質であり、機能低下からはじまり、機能喪失、脳の細胞の破壊につながり、非常に危険である。ちなみに脳の酸素消費量は、全身の約25%に及ぶ。

発症のメカニズム

人間は主に肺胞ガス交換をしている。肺胞毛細血管から肺胞腔に出てくるガスの酸素濃度は個人差もあるがおよそ16%であり、これが空気中の21%の酸素と濃度勾配に従って交換される。一回でも酸素16%以下の空気を吸うと肺胞毛細血管中の酸素が逆に肺胞腔へ濃度勾配に従って引っ張り出されてしまう(即ち、極論例として酸素10%の空気は、呼吸にとっては「10%酸素がある」のではなく「酸素を6%奪われる」空気ということ)。更には血中酸素が低下すると延髄呼吸中枢呼吸反射を起こして反射的に呼吸が起こり、呼吸をするとさらに血中酸素が空気中に引っ張られると言う悪循環が起こる。従って酸素濃度の低い空気は一呼吸するだけでも死に至る事があり大変危険である。また死亡前に救出されても、脳に障害が残る危険性がある。

低酸素の空気で即死に至らなかった場合でも、短時間で意識低下に至りやすいため気付いてからでは遅く、更には運動機能も低下することもあり自力での脱出は困難である。加えて酸素が欠乏しているかどうかは臭いや色などでは全く判別できず、また初期症状も眠気や軽い目眩として感じるなど特徴的でもない上に、息苦しいと感じない(息苦しさは血中の二酸化炭素濃度による)ため、酸素の濃度が低いことに全く気づけずに奥まで入ったり、人が倒れているのを見てあわてて救助しようと進入した救助者も昏倒したりする。また低所やタンクなどで出入りにハシゴを使用するような場合は転落する危険があり、それそのものでの怪我は大したものでなくても、より低濃度酸素の空気に晒されると共に自力脱出はより困難になる。

これらもあり死亡の危険はかなり高く、労働災害などで酸欠による死亡者数が多い要因になっている。

多発場所

タンク、井戸、洞窟、窪地
CO2など空気より重いガスは下に溜まるため、井戸・地下室・窪地などの周辺に比べ低地になっている箇所は危険性が高い。
乾性油アマニ油等)の塗装後、酸素と乾性油の化合により、酸素が欠乏する場合がある。
沼や沢等の腐泥層からメタンガスが湧出することがあり、空気を押し出し、あるいは希釈させ、酸素を欠乏させる場合も多い。
地下室や井戸洞窟内では、天然マンガンのほか土壌中や地下水に含まれる鉄分の酸化作用などにより、内部の空気の酸素が奪われている場合もある。
マンホール内
好気性微生物が酸素を消費するため。
野菜、穀物、牧草、木材の貯蔵庫(むろ)
暗室では植物でも光合成による酸素生成より呼吸による酸素消費が上回るため。
特に「植物は常に酸素を作るもの」という思い込みが危険である。
おがくず、酒類や調味料のしぼりカスなどの倉庫
水気があれば腐敗発酵しやすく、その際に酸素を消費する。
屑鉄・屑アルミ等の金属倉庫
金属酸化する際に酸素を消費するため。特に錆びやすい上に表面積が大きくなっている屑鉄置場は発生しやすい。

ガスの直接及び直接的な吸引

窒素アルゴンヘリウムなどのそれ自体は無害なガスでも、直接吸引または袋など狭い空間に充満した場合は、酸素が無いため吸引すれば酸欠となる危険性が高い。特にパーティグッズのヘリウムガス(酸素を20%程度混合してある)を風船用などのヘリウムガス(純度が高い=酸素0%)と混同し、風船用ヘリウムガスを直接的に吸引して死亡に至るケースがある。[1]

症状

脚注

参考文献

著者名、書名(英語)、刊行地:発行所名、刊行年、引用ページ。

関連項目