都市

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都市とは、

  1. 商業流通などの発達の結果、限られた地域に人口が集中している領域を称する言葉。本項で詳述する。
  2. 栄えている場所を示す俗称、学術用語。村落と対比される。

都市(とし、: city)とは、商業流通などの発達の結果、限られた地域に人口が集中している領域を称する言葉である。

概要

都市についての国際的に統一された定義はない。都市は、機能的には居住地域、工業地域、商業地域からなる。中心部には官衙や事務所、商業施設が集中する地域、たとえば都心中央業務地区 (CBD: central business district) があり、その周辺に都心住宅地インナーシティ)や工業地域が、更に外縁に郊外が形成される。

ドーナツ型に同心円を描いたり、都市から放射状に広がる鉄道路線自動車道の上に衛星都市として点在したり、その周縁の広がり方は、地形的な制約や交通の整備状況などにも依存する。また、その都市に流れ込んでいる人口、経済的な商品、人の移動などその用件によって、同心円の形はアメーバの運動のように多様に変化し、一定した周縁という物は無い。

都市の形成は人類の有史とともにあり、宗教施設や行政施設などを中心に構成された。 また、港湾宿場町といった流通拠点もまた、流通業やその関連業の集中により都市を形成していく。

現在の日本では、役所(役場)が所在する市街地の人口が多く、第一次産業労働者の比率が低い自治体となることが出来、都市と形容される。複数の市街地の連担(コナーベーション)が起き、自治体の枠を超えてそれが広がるにつれ、全体として都市や都市圏と呼ばれる。

類義語

都市の類義語として都会などがある。

「都市」と呼んだ場合には、規模の大小を問わないのに対して「都会」「都(みやこ)」というと、「田舎」「(ひな)」の対義語で、規模が比較的大きな都市を指す場合が多い。

  • 都市 ⇔ 村落(学術的用語)
  • 市 ⇔ (略語)
  • 都会 ⇔ 田舎(俗語)
  • 都 ⇔ 鄙(俗語の訓読み)
  • 都心 ⇔ 辺鄙(広がりの視点を伴う俗語)

都市共通の機能

都市にはライフライン食料の供給と電力通信などの手段が、都市における住民生活を維持し、その他の都市とのつながりを確保する手段として必要とされる。都市には、電力供給の手段と上下水道の設備、道路鉄道駅や港、空港などのインフラストラクチャーも、その人口に応じて必要とされる。また、汚水やゴミの処理などの静脈物流も必須である。更に、大量消費の時代に入ってからは、ゴミ・廃棄物の問題が顕在化して大都市においても深刻な問題となっている。

19世紀以降、都市の限られた空間を効率よく使うために、高層ビル地下(近年では大深度地下)が利用されるようになった[1]

都市の発展により、都市の周辺の農村部においても、農地の宅地化や工場・商業施設などの進出など、都市としての性格を持つようになる。この現象を都市化という。この内、無計画な都市化をスプロール現象という。

機能の種類

政治・行政機能
市役所市議会消防署
市役所、都道府県庁、州政府、国家機関といった行政機関裁判所が含まれ、警察署や消防署などが立地する。警察や消防の管轄範囲は、エリア(複数の都市)に跨がる物もある。水道局、下水道局、ゴミ処理施設などライフラインを支える物。日本においては、1990年代以降、郊外に大規模な庁舎を建設して移転する事例が見られる。
商業機能
百貨店商店街ホテルファストフード店・レストラン
日本においては、都心にあった百貨店や商店街は、郊外のロードサイドショップや大型ショッピングセンターに押され気味であり、消費者の動向は郊外に移動している。都心の映画館も、徐々に姿を消しつつある。
交通・通信機能
鉄道バス地下鉄・空港・港)
都心への車の乗入れを制えるニューアーバニズムなどの動きが、ヨーロッパの都市において始まっていて、BRT(高速バスシステム)や路面電車(次世代型路面電車)がその低公害性やバリアフリーの面から再評価されている。
教育・文化・娯楽機能
学校大学図書館博物館公園スポーツ施設ホールライブハウス
都市の継続的な発展のために、その後進を育て育成していく教育機関が都市には必要とされる。早くから郊外への移転が進んでいるが、その反省から近年では都心回帰も進んでいる。
医療・福祉機能
病院母子保健センター老人ホーム
住民の高齢化に伴い、医療機関や社会福祉施設の充実が、都市の生き残りのために重要な問題になってきている。高齢者専用のアパートやグループホームも、郊外を中心に最近は増えつつある。高齢者に供する分譲地から造られた高齢者のための都市をシニアタウンと言う。アメリカ合衆国で代表的なシニアタウンには、サンシティ (アリゾナ州)がある。

規模

世界の都市人口の順位 (2010年)
順位
都市
人口
1 東京 36,669,000
2 デリー 22,157,000
3 サンパウロ 20,262,000
4 ムンバイ 20,041,000
5 メキシコシティ 19,460,000
6 ニューヨーク 19,425,000
7 上海 16,575,000
8 コルカタ 15,552,000
9 ダッカ 14,648,000
10 カラチ 13,125,000
出典:国際連合統計局 電子版

人口で都市の規模を計ろうにも、先進国の大都市では、職住分離が進んでいる場合が多く、中心自治体の範囲と都市機能に主に携わる人々の居住地の範囲が必ずしも一致していないことが多い(例:千代田区夜間人口は約4万4000人なのに対し、昼間人口は約85万人)。そのため、都市の規模を表すために、自治体の人口、人口集中地区(DID)の人口、都市圏の人口など、各種の人口指標が存在する。

また、経済に関する統計値や、経済力が端的に現れると見られる中心業務地区(CBD)や都心の大きさを以って都市の規模と見る向きもある。

大都市

「大都市」といった場合には、名目(人口と面積)ではなく、実質(中心市街地の機能や密度)が過度に集中している都市であり、一般に「過密都市」と呼ばれる都市を指す。一個の媒体(城・港など)から端を発して、それが巨大化したのが特徴的である。また、商業・交通・娯楽など、全面において充実度が高い。日本の総務省は、政令指定都市を指して大都市と称することがある[2]が、これに特別区である東京の23区を加える場合もある。

都市圏人口で1000万人を超える巨大都市をメガシティという。国際連合の統計によると、2009年現在、世界中に21の人口1000万人を超えるメガシティが存在しているとしている。世界最大のメガシティは人口3500万人を超える東京圏である。

世界都市

世界都市は、主に経済的、政治的、文化的な活動において、グローバルな観点による重要性や影響力の高い都市のことである。グローバル都市とも言う。

都市人口の歴史

推定人口について

歴史地理学者は、文献や遺跡の面積、それぞれの時代の生産性から都市人口を推定している。古代中世の人口統計は残っている方がまれであり、その信頼性も低い。

以下1850年頃までに100万人以上の都市域人口を有していたと推定されている都市に関し、二人の学者のピーク時推定人口を列挙する。史料が乏しい場合の推定人口の誤差は大きく、しばしば桁すら変わってしまう。より詳しい推定値については歴史上の推定都市人口を参照。

都市名 Chandler(1987) Modelski(2003) 備考
年代 推定人口 年代 推定人口
パータリプトラ
パトナ
紀元前361年 150,000 紀元前300年 400,000 マウリヤ朝チャンドラグプタの時代に、パータリプトラを訪れたギリシア人メガステネスの記録によれば、東西約14.4km、南北約2.7km、周囲約35kmの平行四辺形都市。城壁で囲み、城壁の周囲には幅180mのが巡らせてあった。
アレクサンドリア
(アル=イスカンダリーヤ)
紀元前60年 325,000 紀元前100年 1,000,000 30万人(紀元前60年, 自由民人口,『歴史叢書』); 最大推定 110万人
ローマ 紀元100年 450,000 紀元100年 1,000,000 17.83 km2アウグストゥスが定めたローマ市の領域)
171-180年 600,000 200年 1,200,000 最大推定 200万人
271-280年 500,000 300年 1,000,000 13.05 km2(270-273年, アウレリアヌス城壁内)
コンスタンティノポリス
イスタンブル
500-565年 600,000 600年 600,000 12 km2(447年, 城壁内)
944年 330,000 1000年 600,000 16 km2(11世紀, 城壁内); 最大推定 100万人
1600-1650年 700,000     11万戸(1552年); 最大推定 130万人
1675-1690年 750,000     88,185 戸(1794年); 最大推定 110万人
1850年 785,000     873,565(1885年, 城壁内)
京兆府長安西安 700-750年 800,000 700年 1,000,000 30 km2(隋唐城壁内); 362,921 戸(742年, 京兆府); 最大推定 200万人
マディーナト・アル=サラーム
バグダード
932年 1,100,000 900年 900,000 73.42 km2(932年, 推定都市域); 最大推定 300万人
1000年 125,000 1000年 1,200,000 公衆浴場 1,500(993年); 最大推定 150万人
1100年 150,000 1100年 1,200,000 65 km2(1070年頃, 推定都市域)
1150-1258年 100,000 1200年 1,000,000 公衆浴場 2,000(1185年, イブン・ジュバイル)
アル=クルトゥバ(コルドバ 1000年 450,000 1000年 450,000 モスク 471, 11.7 km2(1009年, 城壁内); 最大推定 100万人
ヤショダラプラ(アンコール 1000年 200,000 1000年 400,000 9 km2(950年頃, 城壁内); 105 km2(アンコール遺跡全域)
1200年 150,000     11 km2(1200年頃, 城壁内); 最大推定 150万人
松都(開城 927-1100年 60,000     8,457(1000年頃, 職人人口); 最大推定 100万人
東京開封府(汴京) 1100-1102年 442,000 1100年 1,000,000 60 km2(1127年, 城壁内); 最大推定 200万人
1232年 210,000 1200年 1,000,000 90万人虐殺(1232年, 金史
メルヴ(マリ) 1150年 200,000     38 km2(1150年頃, 推定都市域); 最大推定 150万人
臨安府銭塘(杭州 1200年 255,000 1200年 1,000,000 302,800 戸 (1250年頃, 臨安府)
1273-1350年 432,000 1300年 1,500,000 23 km2(1360年, 城壁内); 最大推定 250万人
北京
大都路大興, 順天府大興)
1270-1300年 401,000 1,100,000 36 km2(1264-8年, 城壁内); 401,350(1270年, 大都路)
1575-1600年 706,000 1500-1600年 1,000,000 706,861(1579年, 順天府)
1800年 1,100,000 1800年 1,100,000 30 km2(1750年頃, 城壁内); 最大推定値 150万人
1845-1850年 1,648,000      
アル=カーヒラ(カイロ 1348-1349年 494,000     モスク 494, ペストで20万人死去(1348-9年, アブ・ルゴド)
1500年 400,000      
応天府江寧(金陵, 南京 1400年 487,000 1400年 1,000,000 75 km2(1373年, 城壁内); 1,193,620(1394年, 応天府); 最大推定 140万人
ヴィジャヤナガル 1500年 500,000     30 km2(16世紀, 7層の城壁内); 最大推定 130万人
平安京京都 1624-1632年 410,000     410,098(1632年); 最大推定 130万人
エスファハーン 1673-1675年 360,000     29,469 戸(1673年, 城壁内); 38,249 戸,
90 km2(1673年, 全都市域); 最大推定 110万人
アユタヤ 1767年 180,000 1700年 1,000,000 16 km2(1720年, 推定都市域)
江戸(東京) 1721年 700,000     509,708(1721年, 町方支配場町人人口); 最大推定 100万人
1798-1804年 685,000 1800年 1,000,000 492,449(1798年, 町方支配場町人人口); 最大推定 130万人
1854年 788,000     573,619(1854年, 町方支配場町人人口); 最大推定 120万人
ロンドン 1800年 861,000 1800年 1,000,000 128,129(1801年, City of London); 959,310(1801年, Inner London)
1850年 2,320,000     127,869(1851年, City of London); 2,363,341(1851年, Inner London)
広州 1800年 800,000 1800年 1,000,000  
1825-1835年 900,000     499,298(1895年, 広州城壁内); 最大推定 150万人(仏山を含む)
パリ 1775年 600,000      
1850年 1,314,000     1,053,262(1851年, 城壁内)

アジア

アジアは、伝統的に大都市が多い。これは、ベースとしての地域人口が多いからであり、一帯が主食とするコメは、小麦文化圏と比較して農地あたりの生産性に優れているため、人口が増加しても、一定の食糧を賄えるためである。

すなわち、単位面積当たりの収量が多い稲作が、大人口を支えてきた。漢書によると紀元2年の人口調査で長安には80,800戸246,200人の人口がいたとされており、戸籍に残らなかった人口を含めて40万人程度の人口を抱えていたと推定される。以降、中国では代の長安、北宋代の開封、南宋代の杭州(銭塘)、代の南京、代以降の北京などが、人口100万人を超える大都市であったと推定されている。日本においても、平城京や平安京、平泉鎌倉などが10万人以上の人口を有していたと推定されている。

中世末期(日本においては近世とも呼ばれる)頃には、江戸が人口100万人を超え、当時の世界においては北京やイスタンブル(当時はコンスタンティノープル)と並ぶ最大規模の都市であった。

近代以降、アジアにおける人口爆発は大都市の急成長を促す事になる。

明治維新以後、東京市は成長を続けて20世紀初頭には数百万人規模の都市になっていた。なお、当時は大阪も東京に匹敵する規模を持っており、関東大震災後には一時的に大阪は東京を上回る規模になった。

第二次世界大戦の戦災で人口が減った東京は、戦後復興の中で再び成長した。現在では、東京は、「都市」として見た場合には約800万人の規模であるが、「都市」として見た場合には神奈川千葉埼玉茨城に住宅地が広がり、3,400万人とも言われる人口を抱える規模になっている。また、大阪市も京都市、神戸市と複数の核を合わせると都市圏人口1700万人の規模であり、続いて名古屋福岡札幌が都市圏人口200万人以上の大都市圏となっている。

20世紀後半には、工業化の進んだ国だけではなく、途上国でも都市人口が急増した。より良い雇用や教育の機会を求めて、地方から過密都市に多量の人口が流入したためである。中華人民共和国、インド、パキスタンなどの大人口国家においては、名目で1千万人を超える巨大都市を初めとして、大都市が首都以外に幾つも生まれている。

都市部への一極集中などによって大都市が過密化してくると、地方、国内の拠点だけでなく海外との交流拠点も担うグローバル化が進行するため、地価は高騰し、中心部はより高次な開発が求められるようになる。その結果、中心部に北米の大都市を思わせるような超高層ビルが建ち並ぶ大都市が幾つも見られるようになってきた。経済成長が顕著な中華人民共和国や東南アジア、インド、中東(後述)については、このタイプの都市が多く、近年は内陸部の拠点都市でもそのような都市形成が行われている。住宅開発も市街地拡大に沿って行われていき、主に自動車道に沿って、中層階級のための団地が延々と建設されていくが、一方で肥大化する都市形成にインフラや交通基盤の整備などが追いつかず、道路渋滞通勤ラッシュが慢性化しているほか、その外れには、都心や団地に住めない貧困層が、不法にスラムを形成している例が多い。

ヨーロッパ

古代ヨーロッパにおいて、ローマが200万人とも推定される巨大都市へと成長した後は、商業の衰退や荘園化、相次ぐ異民族の進入や内乱による都市の破壊が進み、ヨーロッパの都市は軒並み衰退した。[3]

中世の都市人口は、最大でも40万から60万人規模(後ウマイヤ朝の首都コルドバや、東ローマ帝国の首都コンスタンティノポリスなど。いずれもイスラム圏東方正教会の影響圏)であった。特に、西ヨーロッパでは10万人規模を超えた例はまれであった(百年戦争休戦期のパリが推定28万人, 最盛期のヴェネツィアが推定11万人)。大航海時代到来後、ヨーロッパ各所に10万人規模を超える都市が出現する。

産業革命後、工業の集積でロンドンが巨大化。数百万人規模の都市となり、19世紀中葉において世界最大の都市となった。その後、各地で工業化が進むにつれ、人口100万人を越える大都市が複数生まれた。

現代では、ヨーロッパの人口停滞を背景に、都市の急成長は見られなくなった。主に、各国の首都が大都市となっている他には、大都市は少ない。首都以外での大都市の例としては、バルセロナバーミンガムミラノ、ハンブルク、ミュンヘンなど、国民国家誕生以前の地方国家の首都だった都市や、産業革命で鉱工業都市となった都市がある。

また、中心市街地が歴史的価値を持っている都市が多いため、都市開発に制限が設けられている(市街地自体が世界遺産に登録されている都市も多い)。そのため、アジアや北アメリカのように、摩天楼が林立する大都市は成立し難い。第二次世界大戦の空襲で完全に破壊されたドイツの金融都市・フランクフルトや、中心市街地付近の廃墟をビル街として再開発したロンドン(ドックランズ)や、ベルリンポツダム広場)、ヨーロッパの玄関口に位置するロッテルダムなどは例外である。

アフリカ

アフリカでは、紀元前からエジプトにおいて都市が発達している。特に、ヘリオポリス近隣は都市が少しずつ場所を変えて成長し、フスタート、カイロへと発展する。学者によってはプトレマイオス朝時代のアレキサンドリアは100万人を超える人口を抱えていたと推定している。 また、フェニキア人が植民都市としたカルタゴも全盛期には50万人規模の人口があったと推定されており、ローマ時代も北アフリカの重要な都市として栄えていた。

7世紀以降、イスラム教の伝播により、各地に祭礼と交易の拠点が築かれ、アフリカ北部で都市が発達した。サハラ砂漠を越えるキャラバンなど交易の網は広がり、次第にサハラ以南においても都市が発達した。

大航海時代以降、ヨーロッパ諸国による奴隷貿易商品貿易の拠点として、西アフリカのギニア湾沿岸に港湾都市が建設された。以降、植民地の統括中心地として各地に都市が作られた。

第二次世界大戦後、アフリカの年を経て独立した国々が、自らの都市として整備を開始したが、間もなく各地で内戦が勃発。長引く戦乱により、経済活動が停滞して発展を阻害されている。一方、各国の首都などには、地方から飢饉や内戦を逃れたり、教育や雇用の機会を求めて人口が流入し、無秩序な拡大の一途をたどっている。収容し切れない人口は、都市周辺にスラムを形成している。

中東

中東は、人類が初めて都市を作った場所の一つであり、初めて戦争を行った場所の一つである(ハモウカルを参照)。以来、多くの王国帝国が生まれ、東西交易の拠点として商業都市が繁栄していた。ウルウルクバビロンスーサニネヴェダマスカスエルサレムペルセポリスセレウキアと対岸のクテシフォンなどがその典型である。その多くは、川の流れの変化や政治的拠点の喪失などにより衰退した。

イスラム教の拡大により11世紀頃には、世界でも最先端の技術と文化が生み出される繁栄の拠点となった。百万都市バグダード、イスラム教の聖地メッカバスラアデンイスファハン、または、ヨーロッパ側のイスタンブル、アフリカ側のカイロなども、イスラム文化の中心地として繁栄した。

大航海時代以降、陸上貿易が衰えて、商業拠点としての優位性を失った都市は、次第に発展が頭打ちとなり、19世紀にはヨーロッパの都市発展を前に、相対的な没落を経験する。その一方で、ベイルートが欧米との玄関口となる港湾都市として発達。1975年のレバノン内戦勃発まで中東で重要な経済・貿易拠点となった。

第二次世界大戦以降、特に、石油危機の後はオイルマネーの流入により経済的に躍進を遂げ、アラビア湾岸には莫大な資金で維持される豊かな都市が現れた。これらの都市の富裕ぶりに人口が集中して、砂漠の中に大都市が存在している。

アングロアメリカ

アングロアメリカでは、ミシシッピ文化の時代に各地で大規模な祭祀センターが築かれ、カホキアは最盛期に人口が1万人に達したと考えられている。しかし、ヨーロッパ人と接触したころにはすでに人々の分散が進んでいた。

17世紀ごろから西欧諸国による植民地化が始まると、大西洋岸に新たな都市が誕生していった。当初、大西洋岸に限られていた都市は、19世紀後半には中西部から太平洋岸にまで存在するようになり、その中の幾つかは、20世紀初頭に大都市となった。

アングロアメリカの都市は、世界に先駆けてモータリゼーションを経験した事から、自動車保有を前提にした都市計画が実施されると共に、連邦制国家であるために、各地で生み出された富や技術がさほど中央に伝播せずに蓄積し、商業、工業などの産業を成熟させたため拠点都市が幾つも形成されることになった。このため、中心となる都市の人口だけを見て、他国の都市と比較する事はあまり意味を成さず、都市地理学などでは都市圏のレベルで都市規模を分析することが多い。分析の指標としては都市圏で分析したMSA(Metropolitan statistic area),広域都市圏で分析したCSA(Combined statistic area)などがある。以下の数値はCSA(設定されていない場合はMSA、2010年)での例示である[4][5]

例えば、サンフランシスコは人口が80万人程度であるが、近郊の都市も含めたサンフランシスコ都市圏のCSAは800万人を超える巨大なものである。他に、ボストン(市域62万人、都市圏789万人)、アトランタ(市域42万人、都市圏591万人)、シアトル(市域61万人、都市圏427万人)、マイアミ(人口40万人、都市圏616万人)、他にはミネアポリス及びセントポールの双子都市(都市圏368万人)、デンバー(都市圏309万人)、カナダのトロント(都市圏550万人)などが代表であり、高層ビルが林立する大規模なダウンタウンが見られ、グローバル都市として顕著な拠点性を持つ。

デトロイト(市域71万人、都市圏532万人)、ボルティモア(市域62万人、都市圏はワシントンD.C.を含め905万人)クリーブランド(市域40万人、都市圏351万人)、セントルイス(市域32万人、都市圏289万人)、ピッツバーグ(市域31万人、都市圏266万人)、シンシナティ(市域30万人、都市圏217万人)、リッチモンド(市域20万人、都市圏120万人)などのような歴史の古い拠点、産業都市は、中心市街地の空洞化、インナーシティのスラム化、再開発に伴う建物の高次化・地価高騰などによって住民が郊外に移住したことにより、都市圏が拡大された例もある。他にハートフォードソルトレイクシティデイトングランドラピッズなどは、市域人口は20万人未満だが、都市圏人口は100万人を超えている。極端な例では、オールバニ(市域9.8万人、都市圏117万人)、グリーンビル(市域5.8万人、都市圏人口136万人)、ハリスバーグ(市域5.0万人、都市圏人口122万人)なども存在する。

反面、1990年以降になって急速に発展した西海岸サンベルトなどの都市は人口増加のため広域合併などによって市域を拡大したため、人口に反してダウンタウンが比較的小規模であるケースも見られる。例を挙げれば、フロリダ州のジャクソンビル市は都市人口は約82万人で、州内で一番多いが、都市圏人口で測ると147万人に過ぎず、市域人口24万人のオーランドの都市圏人口(約282万人)より小規模である。他の例ではエルパソオースティンサンアントニオサンディエゴサンノゼシャーロットフェニックスポートランドなどの例が挙げられる。また、西海岸・サンベルト諸都市以外では、インディアナポリスコロンバスなどの例があるが、これらの都市は社会増による人口増加が顕著であり、古くからの大都市圏を席捲するようになってきている。

一方で、MSAやCSAだけで、確実に都市規模を算出できるわけではない。カリフォルニアテキサスフロリダなどの流入人口増加が顕著な地域では、CBDも形成されないような衛星都市、回廊都市に対し、人口の値が大都市並みに算出されることがある。このような例としては、カリフォルニア州リバーサイド(ロサンゼルス東部に位置する内陸都市。MSA換算では周辺の都市を含め、440万人の規模に上るが中心地が殆ど形成されていない。CSAではロサンゼルス広域大都市圏に含む)、テキサス州マックアレンメキシコ湾岸の都市。メキシコ国境にあり、主要道が通っているため、人口流入が著しくMSA換算では80万人強に上るが、ロードサイドしか発展していない)、フロリダ州タンパ近郊のケープコーラル(MSA66万人強)などが挙げられる。これらの都市は、ブーンバーブと呼ばれているものが多い。

ラテンアメリカ

ラテンアメリカでは、古来より祭礼の中心地として、メキシコ及びグアテマラアンデスとしてテオティワカンテノチティトランクスコなどの都市が盛えた。

大航海時代にスペインポルトガルが侵略したため、これらの都市は破壊され、跡地はメキシコシティなどキリスト教を中心とする植民都市となった。また、大西洋沿岸部に、ヨーロッパとのエメラルドの交易窓口としてカリブ海沿岸やブラジル、アルゼンチンなどに港湾都市(カルタヘナ、ブエノスアイレス、リオデジャネイロレシフェなど)が建設され、19世紀後半から20世紀前半にかけて、農作物の集散地と欧州への輸出拠点として、これらの都市は繁栄した。太平洋沿岸に築かれたリマなどの都市からはパナマ地峡を経てヨーロッパへ金や銀が運ばれた。

20世紀後半も、工業化により都市の成長は続き、サンパウロメキシコシティブエノスアイレスなどの千万人規模の都市が複数ある。また、2億人近くの人口を抱えるブラジルではクリチバやレシフェなど各州の中心都市も近代化が進んでいる。その一方で、アジアやアフリカと同様に、これらの都市も人口流入とスラムの形成が深刻である。

また、ラテンアメリカの大都市は、植民地時代の名残の残る歴史的な旧市街と、富裕層が集まる近代的な新市街に分かれている場合が多く、階級社会を象徴している。

オセアニア

オセアニアでは、19世紀あたりからアングロ・サクソン人の支配が始まり、それに従って各地に拠点となる都市が開発された。だが、大陸の大半を占める内陸部は居住に適さない砂漠であるため、人口はわずか2000万人に過ぎず、そのうちの多くがシドニー、メルボルンなどの拠点都市に居住している。また、一般に知られるシドニーやメルボルンの人口規模はいわば都市圏での換算であり、シドニー市の市域人口はわずか5万人に過ぎない(ブリスベンは市域を合併したために唯一都市圏人口と合致する)。一方、オーストラリアを除けば、後大規模な都市を形成しているのはニュージーランドオークランドぐらいで、太平洋上の島嶼国は観光業主体や産業が不毛である上、平地が少なく都市形成には不適であるために、大都市の形成は行われていない。

都市の成立要件

地形的要件

平野の中心部
広い平野は開発に制約が少なく、土地を有効活用できる。そのため、大規模な都市が発展し易い。
例:大阪東京名古屋仙台札幌新潟福岡熊本宮崎久留米佐賀鹿屋モスクワロサンゼルスパリブエノスアイレスシカゴ
盆地
盆地は山に囲まれているが、土地が比較的広いので、土地を有効活用できる。
例:京都奈良平泉山口旭川盛岡山形福島会津若松甲府長野松本高山秩父沼田津山飯塚田川阿蘇人吉えびの小林都城フェニックスカトマンズソフィア
谷口
間で、山地と平野の接点。山間に住む人たちが、商売などの目的のために集積する。
例:青梅飯能寄居桐生大間々日立棚倉新城中津川五条朝倉日田西都
湾の窪み
は海と陸との交易上の拠点となり、港町が発達し易い。
例:東京、宮古気仙沼沼津清水敦賀福岡別府佐世保長崎志布志フィラデルフィアサンクトペテルブルクジェノヴァリガオスロ
海峡の両端
海上交通において、重要な拠点となる。海峡の双方に都市が形成される事が多い。
例:下関北九州関門海峡)、青森函館津軽海峡)、コペンハーゲンマルメエーレスンド海峡)、イスタンブールジブラルタルデトロイトウィンザーバンクーバービクトリア
運河の両端
運河における海上交通の重要な拠点となる。
例:スエズポートサイドコロンパナマ、スーセントマリー(アメリカ合衆国側カナダ側
河口・可航河川沿岸
水陸交通の接点として重要な地位を占める。河口や、の合流点、潮汐限界点などに立地する。日本では殆ど見られなくなったが、川が大規模な海外においては舟運が多いため、依然として多い。
例:酒田新庄新潟水戸銚子鰍沢新宮宿毛柳川延岡宮崎ロンドンブレーメンケルンロッテルダムニューオーリンズリスボンベレン、ブエノスアイレス、モンテビデオル・アーヴル上海天津済南
湖岸
との接点に発達する。湖は大抵、運河を経て海に至る。
例:大津土浦諏訪下諏訪松江境港米子、シカゴ、ジュネーヴストックホルムバクートロント
滝線(瀑布線ともいう)
の近くや、河川交通の終着点に当たる。急流の落差を利用した水力発電が行われ、工業都市が発展する。特に、アメリカ合衆国東部から南東部のアパラチア山脈東麓に広がるピードモント台地東縁には、滝線都市が多く見られる。
例:フィラデルフィア、ボルチモアワシントンD.C.リッチモンドローリーオーガスタモンゴメリーヘルシンキ
峠の麓
は人や物資が滞留する交通拠点となる。
例:遠野小田原塩尻三島安中佐伯延岡ミラノトリノデンバーペシャーワル
渡津(としん)
道路が川を横切る地点。人や物資が滞留する事で、都市が発達し易い。
例:江別滝川島田桑名、パリ、ベルリンセントルイスミネアポリスセントポールメンフィスマナウス
陸繋島(トンボロ)
天然の良港を生み出しやすく、風光明媚なため観光化されやすい。
例:函館、藤沢串本、福岡、ダカールカディスラス・パルマス・デ・グラン・カナリア
地下資源
鉄鉱石石炭などの埋蔵により、鉱工業都市が発展する。
例:夕張、日立、新居浜大牟田飯塚田川撫順キンバリーポトシ
国境
国際的な関係が深いために発展する場合と、移民などの行き来が多いために発展する場合がある。
例:サンディエゴティフアナエルパソシウダー・フアレスラレドヌエボラレド(以上アメリカ合衆国・メキシコ)、デトロイトとウィンザー(アメリカ合衆国・カナダ)、バーゼル(スイス・フランス・ドイツ)

形態的要件

城下町
主に中世に築かれた、士族や領主の城を媒体として発達した都市。日本ドイツ等に多く見られる。
日本の例:弘前盛岡奥州一関、仙台、会津若松、佐倉川越(通称小江戸と呼ばれる)、江戸、小田原、松本、静岡、名古屋、犬山岐阜金沢福井彦根姫路和歌山岡山広島高知、福岡、北九州朝倉中津大分佐伯熊本八代、延岡、都城、小林日南肝付鹿児島
日本国外の例:ミュンヘンカールスルーエフライブルクハイデルベルクエディンバラトレド北京
門前町・寺内町
門前町または寺内町と呼ばれ、神社や寺院などの宗教施設を媒体として発達した都市。宗教都市とも呼ばれ、特定の宗教聖地となっている所もある。都市の経済が、訪問客の滞在費で成り立つ場合も少なくない。
日本の例:鹿嶋成田富士宮身延、長野、伊勢永平寺、大阪、京都天理高野山琴平金光出雲太宰府宗像英彦山宇佐高千穂都農、宮崎、鵜戸霧島普天間
日本国外の例:メッカバチカンルルドエルサレムソルトレイクシティ、ケルン、サンティアゴ・デ・コンポステーラ
宿場町
旅人を泊めるために、街道沿いに作られた宿場として発展した都市
日本の例:水沢(奥州市)、三島、塩尻、亀山市)、中津川、大曲大仙市)、行橋
港町
港を媒体にして発達した都市。水産都市として漁港が発展するケースも多い。
日本の例:苫小牧小樽、函館、秋田、新潟、横浜、清水、敦賀、舞鶴神戸高松尾道、福岡、北九州、佐世保、長崎別府日向、宮崎、日南、志布志、鹿児島
水産都市の例:釧路八戸石巻塩竈小名浜いわき市)、境港浜田松浦壱岐細島(日向市)、油津(日南市)、など
日本国外の例:マルセイユリオデジャネイロバルセロナ、ジェノヴァ、ヴェネツィアムンバイシアトルベルゲン仁川高雄
古代政庁の町
古代の官衙・政庁から発達した都市。観光都市となっている所が多い。なかでも、首都が置かれた事のある都市は古都とも呼ばれる。
日本の例:奈良、京都、長岡京、平泉、首里
日本国外の例:アテネ(ただし、ギリシャの首都である)、ローマ(ただし、こちらも現在イタリアの首都である)、慶州西安、トレド、コルドバイスタンブルコンスタンティノポリス)、アレクサンドリアクスコ

機能別分類

複数の機能を集積することは都市の本質的な特徴であり、一つの都市は複数の分類に属することが多い。例えば、京都市は、国際都市であり、観光都市であり、学術都市でもある。

行政都市・政治都市

国家中央政府国会最高裁判所中央省庁)や地方政府(政府・政府・県庁などの広域自治体)が置かれている都市。特に、国家の中央政府が置かれている都市を首都といい、州政府の置かれている都市を州都、道政府の置かれている都市を道都ともいう。

中央政府や地方政府から政策などに関する発表(日本国政府においては内閣官房が発表する)が行われるので、自然と放送局新聞社などの報道機関が立地し情報の発信地ともなる。更に、官衙(行政庁)への届出などのために企業が立ち並び、いつしか「経済の中枢」となる都市も少なくない。(東京特別区やソウルなど)

こうなった後の首都を持つ国の一部は、政治の中枢と経済の中枢を分離するため、遷都首都機能移転)によって新たな都市が誕生する例もある(ブラジリアキャンベラなど)。しかし、遷都には多くの問題(経済的問題や世論の反発など)を妊むため、計画が破綻する例もある。日本では、首都機能移転計画が宙に浮いたままであり、大韓民国においても首都移転計画を憲法裁判所が却下した、など。

地方中枢都市

その地方における中枢機関(特に、道政府。日本の場合にはその地方を総轄する国の出先機関。)が置かれている都市。人口の多少に拘らず、その地方の中央部に置かれる場合が多い。州都に見られるタイプである。括弧内は、その都市が中心になっている地方。

港湾(商業)都市

古くから交易が活発な都市。古くから大口の物資の運搬方法がである事から、大河の辺や潮流の穏やかな、海に面した場所が多い。商業都市の近くに観光地ができやすい。

工業都市

特定の工業が集積した都市。都市の経済が第二次産業で成り立つ。古くからある工業都市は、原料や完成品の運搬のために港湾設備を備えた所が多い。最近は、工業生産品がPCパーツのように小型である場合には、空港があれば、臨空都市としても産業振興が図れるという新たなケースもある。

なお、産業の裾野が広い企業(自動車産業など)の本社や主力工場が立地する都市は、その企業に関連する下請けのための工場も林立するため、俗に企業城下町と呼ばれる。

農業・水産業・林業都市

経済が第一次産業(農業水産業林業)で成り立つ都市。自然環境に恵まれた場所に位置する。天候不順の時には経済的打撃を激しく受ける。

軍事都市

基地兵站などの軍事機関が立地している都市。陸軍空軍主体の場合は広大な平地に、海軍主体の場合は軍艦の停泊に適した港湾に面して位置する事が多い。

学術都市・研究都市

研究都市学術都市学術研究都市学研都市は、大学を初めとした高等教育機関や研究所が集まる都市。ハイテクパークなど。大学の新設や移転と共に付属する研究所が林立し、更に発展して、先端産業の工場が立地する事もある。海外では、名門大学が本拠を置く大学都市 (College town大学町または大学街)が存在する。このほかに学園都市研究学園都市文教都市といった都市がある。

資源都市

地下資源を産出するか、産出地に生産要素(労働力資材機械技術など)を供給する都市。資源を運搬する鉄道船舶や労働者、資源を利用する重工業が集まる。産出量が落ちて衰えるなどの問題を抱える事が多い。

観光都市

観光地を持つ都市。都市の経済が観光業で成り立つため、特に、自然が関わるレジャー(夏の海水浴や冬のスキーなど)では、天候不順などによる経済的打撃が大きい。

  1. 歴史文化的な資源を主とする(寺社・教会や歴史的建造物や街並など)。
  2. 海や山などの自然資源を主とする(リゾート都市も含む)。
  3. レジャー産業が発展している(大規模テーマパーク・カジノ・ショッピングモールなど)。大都市近辺に立地する。
  4. 伝統工芸、文化、芸術を主とする。
  5. や大規模イベント、スポーツ大会を売りとする。

などのタイプがある。必然的に、一時期に客が集中する現象が起こる。

保養都市

保養地のある都市。温泉高原の保養施設が多く立地する都市や、避暑地・避寒地がここに属する。観光都市に含まれることもある。

宗教都市

田園都市

その他の都市

自由都市帝国自由都市(神聖ローマ帝国内)、双子都市中核都市衛星都市自治都市内陸都市など。

都市問題

都市問題としての課題に次のようなものがある。

都市の生物的自然

それぞれの地域は、それぞれに固有の在来の生物群集を持っているが、ヒトは自分の周辺にそれらとやや異なった生物群を引き連れることが多い。例えば積極的に育成するものに家畜作物があり、それらを育成するために作る環境にはまた多数の生物が付随して出現する。そのためそこには外来種が多く出現する。さらに、そこから家のみが集中する都市においては、作物や家畜に関わる部分が少なくなった分だけ、さらに自然な生物群集の成立する環境とかけ離れた条件となっている。従ってそこに生活する生物は多くない。しかしながら全く存在しないわけではなく、それなりに独自の生物群集が存在する。このような観点から、都市を一つの自然環境と見なした場合、都市生態系ということもある。

これは一つにはそのような環境にも耐えられる生物が残ることで成立する。踏まれても枯れないオオバコや、アスファルトのひび割れからでも花を咲かせるスミレなどは都市の道ばたにも出現する。また、公園などの形で残された緑地にはそれなりに様々な生物が住んでいる。

逆に、人間の作り出した環境条件が好適であるために増えるものもある。例えばヒトの住居は往々にして乾燥した垂直の壁や庇的構造を提供し、ツバメは現在ではほとんど人間の作った構造で巣を作る。青木純一が都市でササラダニを採集したところ、コンクリートの上に生えるコケから珍種が発見された。これは後に海岸近くの岩の上などに生息するものであることがわかったという。他に、保温性が高いためにより暖地の生物が都市で繁殖する例もある。ゴキブリなどもこの例であろう。

都市を形容する俗称

特定の都市を指し、接尾語として「○都」「○○の都」「○京」の様に命名している事がある(歴史上の「都」と同意義ではない)。古くは、国府や守護大名の所在都市に、「府」「陽洛陽つまりその国の都)[要出典]」を付けた名称もあった。甲府や防府など、現在の都市名に引き継がれているものや町おこし・地域ブランドづくりのために地域の歴史や産業にちなんで名付けられたものもある。

「○京」

  • 西京:山口。応仁の乱以降、大内氏が戦乱を逃れた貴族や文人を迎え、文化的に繁栄したため、「西の京」と呼ばれた事に由来する。山口市を指すより、歴史・観光上の美称の色が濃い。
  • 中京:名古屋の別名として使われる事がある。

「○都」

  • みやこ(都):普通名詞としては「首都」と同義。限定詞をつけない固有名詞としては、京都を指す。
  • 古都:日本の都であった都市、または往時の地方の中心都市として一般に認識されている京都市、奈良市、大阪市など。また古都保存法からの見地もある[6]
  • 方角関連
    • 東都:東京の別称。
    • 南都:京都の南方にある都として奈良を指す。「南都北嶺」。
    • 北都:札幌、秋田、平泉、新潟、(奈良に対して)京都などの企業名に用いられているが、いずれも都市自体の呼称としては一般的ではない。
    • 西都:西都
  • 都市機能
    • 帝都天皇皇帝の住まう都。終戦までは東京を指す言葉として使われたが、今は殆ど見られない。日本国外では長安ウィーンなどにも使われる。
    • 商都:これも本来一般名詞である。交易が盛んな都市として使われることが多く、横浜や大阪などに使われる。大阪は天下の台所とも呼ばれることもある。
    • 軍都:相模原、呉、佐世保、旭川、三沢、習志野
    • 港都:函館、小樽、横浜、新潟、神戸、高松、門司、博多、長崎 開港された時の港が多い。
    • 神都:伊勢神宮があることから、伊勢市の別称。
    • 仏都:善光寺があることから、長野市の別称。
    • 学都:仙台、金沢、松本
    • 県都:県庁所在地一般について用いられる。
  • 工業関連
    • 工都:日立、尼崎、新居浜、北九州、大分、延岡 各企業の企業城下町として機能していることが多い。
    • 陶都:瀬戸、常滑、唐津伊万里多治見土岐瑞浪
    • 鉱都:佐世保(かつての炭鉱都市)、足尾
    • 炭都:田川筑豊最大の炭鉱都市であった)、夕張
    • 織都/機(はた)の都:桐生
    • 蚕都:上田
    • 刀都:
    • 鋼都:安来
  • 自然関連
  • 文化関連
    • 聖都:京都
    • 俳都:松山
    • 球都:桐生、木更津、敦賀、松山
  • その他
    • 桑都/桑の都:八王子
    • 柳都:新潟。地元での呼称ではあるが、地域外にも広報中。
    • 雷都宇都宮
    • 江都:江戸

「○府」

  • 甲府:甲府
  • 信府:松本
  • 防府:防府
  • 駿府:静岡
  • 江府:かつての江戸
  • 別府:別府
  • 水府:水戸
  • 長府:長府(現下関市)
  • 豊府:大分

「○陽」

  • 宇陽:宇都宮
  • 武陽:東京(以前の江戸
  • 華陽:岐阜[7]
  • 尾陽:名古屋
  • 洛陽:京都[8]
  • 崎陽:長崎

「○の都」

音訳

また、海外の都市を漢字で音訳する場合、都市名の音の頭文字を漢字に置き換えて、それに「都」「府」「港」を付ける事がある。ただし、これは、古風な表現で現在においては殆ど用いられない。なお、現在での漢字表記を、括弧内に記す。

  • 紐育:ニューヨーク
  • 巴里:パリ
  • 倫敦:ロンドン
  • 羅馬:ローマ
  • 伯林:ベルリン
  • 雅典:アテネ
  • 維納:ウィーン(維也納)
  • 寿府:ジュネーヴ(日内瓦)
  • 桑港:サンフランシスコ(三藩、旧金山)
  • 羅府:ロサンゼルス(洛杉磯)
  • 沙都、沙港:シアトル
  • 波府:ボストン(波斯頓)
  • 華府:ワシントンD.C.(華盛頓)
  • 費府:フィラデルフィア
  • 星港:シンガポール(新嘉坡)
  • 曼谷:バンコク

「○○の大阪」

「○○のパリ」

「○○のヴェネツィア」

  • 北のヴェネツィア:サンクトペテルブルク
  • 北欧のヴェネツィア:ストックホルム
  • 東洋のヴェネツィア:蘇州
  • アメリカのヴェニス:サンアントニオ

「○○のフィレンツェ」

「○○のアテネ」

「○○のナポリ」

「○○の真珠」

行政

日本の行政制度

日本の政令指定都市の位置。
  • 政令指定都市 - 20市
    • 北海道:札幌
    • 東北:仙台
    • 関東:さいたま、千葉、横浜、川崎、相模原
    • 中部:新潟、静岡、浜松、名古屋
    • 近畿:京都、大阪、堺、神戸
    • 中国:岡山、広島
    • 九州:北九州、福岡、熊本
  • 中核市 - 41市 ※は政令指定都市の人口要件(法定人口50万人以上[9])については満たすものの指定されていない市
    • 北海道:旭川、函館
    • 東北:青森、盛岡、秋田、郡山、いわき
    • 関東:前橋、高崎、宇都宮※、川越船橋※、、横須賀
    • 中部:富山、金沢、長野、岐阜、豊橋、岡崎、豊田
    • 近畿:大津、高槻東大阪※、豊中、姫路※、西宮、尼崎、奈良、和歌山
    • 中国:倉敷、福山、下関
    • 四国:高松、松山※、高知
    • 九州:久留米、長崎、大分、宮崎、鹿児島※

日本国外の都市行政制度

大都市や小都市や村落など、規模を問わず、基礎自治体を同じ名称で呼ぶ国はヨーロッパに多く見られる。

この代表的な国家には、フランスイタリアなどがある。これらの国家では、パリやミラノのような大都市でも、カンヌのような小都市でも、カマンベールのような村落でも、全て「commune(仏:コミューン)」や「comune(伊:コムーネ)」と呼ばれる。イタリアでは、市役所(・村役場)のウェブサイトURIにおいて“comune”の後に都市名(・村落名)が付く自治体が多い。

首都以外の特別市

一般に、首都は「特別市」として、一市単独でを構成する所も多い。しかし、首都以外でも、過密になり大都市となっている市もある。その中にも、「特別市」として、一市単独で州・道を形成する所もある。以下に、その例を挙げる。

脚注

  1. ^ 超高層建築物
  2. ^ 総務省発行の「地方財政白書」では、平成20年度版まで政令指定都市の意味で「大都市」を用いている(用語の説明 平成20年度版地方財政白書)が、21年度版以降は「政令指定都市」に変更している(用語の説明 平成21年度版地方財政白書)。
  3. ^ 林玲子『世界歴史人口推計の評価と都市人口を用いた推計方法に関する研究 第五章 考察 4.ヨーロッパ人口について』(原著2007年6月27日)。書誌ID 000009362321http://www.linz.jp/worldpop/jp07/540.html2014年11月14日閲覧 
  4. ^ American FactFinder. U.S. Census Bureau. 2011年2月4日.
  5. ^ OMB BULLETIN NO. 13-01: Revised Delineations of Metropolitan Statistical Areas, Micropolitan Statistical Areas, and Combined Statistical Areas, and Guidance on Uses of the Delineations of These Areas. Office of Management and Budget. 2013年2月28日. (PDFファイル)
  6. ^ 古都保存法における古都の定義
  7. ^ 金華山に由来する。「」は北半球において日当たりがよい山の南側、あるいは川の北側を意味する。岐阜のもともとの市街地は金華山の南西を中心に広がっている。
  8. ^ 洛陽にそのままちなむ。平安京左京(東側)の称であり、右京(西側)を長安と称したのと対比したが、右京が衰退して京都の市街地の中心が左京となったことにともない京都全体を「洛陽」と呼ぶようになった、ともされる。
  9. ^ 本来は将来自治体人口が100万人以上となる都市が指定されており、市町村合併支援プランの運用上では特例中に市町村合併を行った70万人以上(都市圏人口100万人以上)の都市が指定されている。
  10. ^ ブレーメンブレーメン州)と並んで、ハンザ同盟以来の自由都市としての地位を現在まで保持している。

参考文献

  • 羽仁五郎『都市の論理 歴史的条件─現代の闘争』
  • 増田四郎『都市』
  • Tertius Chandler, "Four Thousand Years of Urban Growth: An Historical Census", Lewiston, NY: The Edwin Mellen Press, 1987. ISBN 0889462070
  • George Modelski, World Cities: –3000 to 2000, Washington DC: FAROS 2000, 2003. ISBN 0967623014

関連項目

外部リンク