英国放送協会

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英国放送協会
British Broadcasting Corporation
種類 公共放送、テレビ、ラジオ
略称 BBC
本社所在地 イギリスの旗 イギリス
ロンドン
設立 1922年(ラジオ)
1927年(設立)
1932年(テレビ)
業種 放送業
外部リンク www.bbc.co.uk
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英国放送協会
運営 英国放送協会
設立 1927年
在籍国 イギリスの旗 イギリス
所在地 ロンドン
外部リンク www.bbc.co.uk
BBC One
放送媒体 地上テレビ放送
放送チャンネル番号 1
番号 1
開局 1936年11月2日
放送対象国 イギリスの旗 イギリス
放送対象地域 イギリス全土
BBC Two
放送媒体 地上テレビ放送
放送チャンネル番号 2
番号 2
放送対象国 イギリスの旗 イギリス
放送対象地域 イギリス全土
ロンドンのホワイトシティにある社屋メディア・ヴィレッジ

英国放送協会(えいこくほうそうきょうかい、: British Broadcasting Corporation, BBC)は、イギリス公共放送局。

沿革

設立の背景

もともとはイギリス政府の提案が第一のきっかけであった。その提案とは、無線機メーカーが共同でラジオ放送会社を設立して受信機の販売促進をはかり、そのかわり政府は外国との販売競争から業者を保護するというものであった。無線機メーカーがこの提案を飲み、1922年、イギリス放送会社BBCが設立され、政府はBBCに受信機販売と放送の事実上の独占権を与えた。この提案の目的は、アメリカ合衆国のように多くのラジオ局が限られた周波数にむらがり、海賊放送に走ること、競争をおこすことを避けるためであった。1926年、放送調査委員会が放送は公共企業体が実施すべきだと政府に勧告。翌年イギリス放送会社にかわり、国王の特許状(en)にもとづく公共事業体イギリス放送協会BBCを設立し、現在に至っている。

受信料と中立性

テレビ所有者から徴収する受信料。もっとも、イギリスでは「TVライセンス制度」を設け、テレビやビデオデッキなどを所有するために許可証を購入するというシステムをとっている。「受信許可料」と呼ぶこともある。視聴者郵便局で1年間有効の受信許可証を買うという仕組みで、月単位での購入も可能。収納率は約98%[2]であり、75歳以上は免除される。無許可受信者には最高1,000ポンドの罰金が課される。受信料は物価の変動などを考慮して政府が決定する。なお、国際放送の財源は全額が国庫からの交付金。テレビ放送などBBCワールドワイド運営に関しては受信料と広告料で運営。

この制度により、政府や企業の力に屈しない公正な放送を行えるとされ(BBC自身もニュースの合間にそのようなCMを流している)、第二次世界大戦中もイギリス軍を「我が軍」とは呼ばず、アメリカ同時多発テロ事件を「テロ」でなく「攻撃」と報道した。ただし、米英連合軍によって開始されたイラク戦争を(イギリスの存在を消した)American invasion of Iraq(アメリカのイラク侵攻)と言い換えて報道したり、インドのムンバイ同時多発テロ事件では「テロ」と報道したりした点から、その立場は一定ではないと見なされている。

また 視聴率などの市場経済の流れに影響を受けず教育放送福祉放送などが行えるということで、この考えは世界中に広まり、イギリスにならって受信料制度を採用している国も多い。

中立性をうたう一方で国際放送については「イギリスの利益を代表し、自国の侵略行為・犯罪を正当化するためのプロパガンダをおこない[3]、イギリス政府の代弁機関と化している」とも批判されている[4]マレーシアマハティール・ビン・モハマド元首相は「BBCは生まれつきの嘘吐きである」と批判している[5]

災害報道については、政府発表前に一切報道しないという原則を持っている[6]

国名・地名に関する呼称

ミャンマーを現在の正式名称ではなく「ビルマ」と呼び続け、インドネシアの旧イリアンジャヤ州全体を独立派の自称である「ウエスト・パプワ」に置き換えて報道していた[7]。これは両国政府に対するBBCの長年の敵視が反映されているものと理解され、隣国であるタイオーストラリアの右派に準ずる姿勢でもある。

また、2003年からのイラク戦争報道では、報道ガイドラインを設け、イギリス軍を「我が国の軍(Our troop)」と呼ばない事を明記。アメリカ国内のメディアとは方針を異にした。

不祥事

ここでは、話題となった出来事で、その詳細が記された日本語ページがないものを中心に記載する。

イラク大量破壊兵器疑惑報道問題

2003年5月29日、BBC Radio 4のニュース番組「TODAY」の中で、アンドリュー・ギリガン記者は前年9月に政府が発表した「イラクは45分以内に大量破壊兵器の展開が可能」とする報告書につき、政府の圧力によりイラクにとって都合の悪い形に【「よりセクシー(扇情的)な内容」にするように】-脚色・誇張させられたと報じた。これに対して、イギリス政府は全面的に否定し、謝罪と撤回を求め、BBCと政府の対立が深まった。政府側は、このニュースの情報源が国防省顧問のデビッド・ケリーであると発表。ケリーは7月15日に下院の外交委員会に召還されて厳しい尋問を受け、その3日後に遺体で発見されるという事態が起きる。

これを受けて、BBCは情報源がケリーであったことを認めた。真相を解明する独立司法調査委員会が結成され、その委員会に召還されたギリガン記者は、報道は「口を滑らせた」発言であったと証言した。翌2004年1月28日に委員会は報告書(ハットン報告)を発表した。その内容は、

  1. ケリーの死因は自殺である
  2. BBCの報道内容には問題があった
  3. ブレア首相には報告書やケリーの死についての責任はない

というものであった。

この報告書の発表により、当時のBBC会長、グレッグ・ダイク(Greg Dyke)は辞任を表明し、報道機関としての信頼性を問われたが、辞任直後に行われたイブニングスタンダード紙の調査では、49%のイギリス国民が「ハットン報告を信用しない」と答え、56%がBBCが非難を受けるのは「不公正だ」と答えた。

二重被爆者を題材にした番組

毎週金曜日に放映されている、お笑いクイズ番組QI」の2010年12月17日の放映で、広島市長崎市に投下された原子爆弾で、二重に被爆した被爆者である山口彊(2010年1月に死去)を「世界一運が悪い男」と紹介した。スタジオ内には、山口の大きな顔写真が原子爆弾投下時に発生した、きのこ雲の二つの写真に挟まれた状態で掲示され、司会者が二重被爆の経緯について語った後に、ゲストのタレントが「93歳まで長生きしたなら、それほど不運じゃない」「原爆が落ちたその日に列車が走っているなんて、イギリスじゃ考えられない」(イギリスの鉄道事情に触れた後に)「(放射線に被爆しても)サンドイッチは大丈夫でした」などと、笑いながら発言をした。

この放送内容について、在英日本国大使館2011年1月7日に「原爆投下の問題を、コメディー番組で取り上げるのは極めて不適切で、日本人の国民感情を無視している」との内容の抗議書簡を、番組制作会社とBBCに送付した[8]。番組制作会社からは17日になって「配慮に欠けていた」などとする返答があり、1月21日にロンドン日本大使館に、番組プロデューサーから謝罪文が届けられている。謝罪文は17日付で、「我々が(日本人視聴者を)不快にさせてしまい、大変残念だ」「日本人の潜在的な敏感さを軽視したのは明らか。お気楽な番組で扱うには、不適切と日本人が見なすのは想像に難くない」としている[9]。また、BBCの広報担当者も、この件について釈明をした声明文を発表した[10]

山口の長女は、この件について不快感を示し「家族内で『運が悪かった』と話した事はある。しかし核保有国の英国で、このように取り上げるのは話が別。核削減への真摯さが足りない風潮から、こういう発言が出てくるのではないか」「世界中が核廃絶で努力している中、父の体験を軽視することは遺憾で許せない」と話した[11]。駐英大使から報告を受けた前原誠司外務大臣も、1月25日に行われた記者会見で番組を非難し、「おわびをするなら、テレビで笑いながら話していたコメンテーターは原爆被害の悲惨さをもう一度認識し、二度と起こさないための努力をしていただきたい」と述べた[12]

問題となった同番組のシーンは、YouTubeにもアップロードされ、この件について日本で報じられると同時に、コメント欄が「炎上」する事態となったが、週明けの1月24日になって削除されている。

英国在住のジャーナリスト小林恭子によると、このジョークは、様々な理由を付けて運休しようとする英国の鉄道事業者への皮肉であるという[13]

サッチャー元首相の娘が人種差別発言で降板

2009年、マーガレット・サッチャーの娘でBBCのリポーターであるキャロル・サッチャーが、ゴールデンタイムの番組「The One Show」の取材中、黒人テニスプレーヤーのジョー=ウィルフリード・ツォンガに対して「カエルのように黒くグロテスクな男」という人種差別表現を用いたとして番組降板処分を受けた[14]

BBC内部関係者によるウィキペディア編集

2007年8月、WikiScannerで調査したところ、英語版ウィキペディアで、BBCの内部に割り当てられたIPアドレスから、ジョージ・W・ブッシュアメリカ合衆国大統領のミドルネーム Walker“Wanker”wank自慰行為をする)と書き換える「下品なイタズラ」が行われていたことが明らかになった[15][16]

ラッセル・ブランド降板事件

BBCレディオ2のラッセル・ブランドが担当する番組内で、ブランドとジョナサン・ロスが、アンドリュー・サックスとその孫娘を卑猥な内容で侮辱する発言があったとし、ブランドは打ち切りに、ロスは3ヶ月間全ての関連番組からの出演停止処分となった。この件においてBBCの内部チェック体制が問題視され、BBCが事件当初謝罪や説明を十分に行わなかったことから非難の声が殺到する結果となった。[17]

ジョナサン・ロスはBBCとの契約を延長せずに降板したが、2011年にはBBCの自動車番組トップ・ギアにゲストとして出演した際、若干だが話題にしている。

トップ・ギア

番組では辛辣なコメントや悪ふざけを「売り」としており、英国の王室や著名人、政府関係者といえどもジョークの対象となるが、度を過ぎてしまい不祥事へと発展してしまう事態も度々起こっている。 2011年1月放送分で、メキシコのマストレッタ社が製造した「MXT」を紹介した際、番組司会者らがメキシコの国民や料理などを嘲弄する発言をしたことで、駐英メキシコ大使から抗議される騒ぎとなった[18]が、2011年3月までに謝罪などは放送されず、逆にゲストまでがジョークのネタにしている[19]。2013年に放送されたシリーズの中では罰ゲームとして「メキシコに一人で行く」というものが設定された。一方で世界的な人気番組が話題にしたため、ウェブサイトへの訪問数や車の購入予約が一気に増えたという[20]。 他にもエキストラが「やらせ」を暴露した際に、局側は「この程度の演出は視聴者もわかっている」と居直ったケースもある。[21]また、テスラモーターズの電気自動車を特集した際の扱いについて提訴されたり[22]、逆に出演者のザ・スティグを演じていたベン・コリンズの暴露本出版をやめさせるために告訴するなど、裁判に発展したケースもある。 2015年、ジェレミーによる同番組プロデューサーへの暴力事件が表面化した事をきっかけに、ついにはジェレミーら司会者陣の降板にまで至ってしまった。

児童虐待に関する誤報

2012年11月2日、BBCのニュース番組で、1970年代から80年代にかけて、ウェールズ地方の児童福祉施設で性的虐待を受けたとする男性の主張を放映。本人の証言に基づき、犯人はサッチャー政権の保守党幹部だったと伝えた。番組では犯人の実名は伏せたが、インターネット上ではマカルパインという名の上院議員が犯人との憶測が飛び交い、マカルパイン側はこの事態に、疑惑を否定、法的措置も辞さないことを表明した。

結局、BBC側は謝罪の上、ジョージ・エントウィスル会長は、就任から2ヶ月で辞任する事態となった[23]

元人気司会者による性的暴行事件

BBCで長く音楽番組などを担当していたジミー・サヴィル2011年に亡くなった直後、生前長きにわたって多数の少女に性的暴行をしていたことが発覚。犯行を追及しようとしたドキュメンタリー番組が上層部の判断により中止になり、代わりに追悼番組が流されたこと、被害者が200人以上になる可能性があること、BBC局内でも犯行が行なわれていたことなどが明らかにされ、BBC会長が議会下院の委員会に召喚され証言するなど、BBCへの不信と批判が高まった。その後、検証番組が放送され、現在も調査が続けられている。[24][25]

日本での展開

テレビ放送

1994年、日商岩井(現双日。IT部門は2000年4月アイ・ティー・エックス(ITX)として分離)の子会社「株式会社サテライトニュース」(現在はBBCワールドの子会社・BBCワールド ジャパン株式会社)により、ニュース・ドキュメンタリーを中心とした「BBC WORLD」をケーブルテレビやアナログCS放送CS BAANで放送開始。1996年よりスカイパーフェクTV!(現・スカパー!プレミアムサービス)、2002年よりスカイパーフェクTV!2(現・スカパー!)でも放送されている。地上波では、かつてはフジテレビテレビ神奈川(TVK)、KBS京都でBBC WORLDを放送していたが、現在はチバテレビで30分間のニュースを放送している(いずれも二ヶ国語放送)。

また、2004年12月から、スカイパーフェクTV!110(現・スカパー!e2)、ケーブルテレビ局にてエンターテイメント番組を中心とする「BBC Japan」の放送を開始したが、2006年4月30日24時(=5月1日零時)限りで放送終了している。テレビ放送において、同時通訳の質が悪いと批判されることがある。[誰?]

NHK BS1でも随時「ワールドWave」で放送が行われている。

ラジオ放送

第二次世界大戦中の1943年7月から1990年3月30日まで、BBCは「ワールド・サービス」の一部として、短波による日本語ラジオ放送を実施していた。同番組は日本の放送局からの出向者(日本放送協会(NHK)職員、アナウンサーも含めて)によって製作されていたが、BBCの財政上の問題などから廃止された。現在、英語版放送を短波、インターネットラジオ、有線放送で聞く事ができる。また、近畿地区ではFM CO・CO・LOを通じて、一部の番組を聴くことができる。(モバHO!での放送は、2007年3月31日をもって終了した。)

インターネット

2012年8月24日ニコニコ動画に有料視聴用のチャンネルを開設した[6]

2015年10月に日本語版のBBCニュースサイトを開設した。[7]

放送系統

テレビ放送

アナログ・デジタル両方

デジタルのみ

ラジオ放送

アナログ・デジタル両方

スコットランドウェールズ北アイルランドではそれぞれ地元言語と英語による放送を実施。イングランドでは県あるいは都市ごとに地域放送を実施

デジタルのみ

インターネット/オンデマンド放送

BBC iPlayer経由で英国内ではテレビ、ラジオ共にライブストリーミングおよび過去7日間の見逃し視聴が可能となっている。

脚注

  1. ^ 世界初の文字放送、英Ceefaxが38年の歴史に幕 AFPBB 2012年10月25日
  2. ^ 日経BP社・日経トレンディネット「人気海外ドラマの配信もスタート!NHKオンデマンドの今後と課金モデルの謎に迫る!」2008年12月29日 2010年2月9日閲覧
  3. ^ [1] http://archive.is/20130424213455/www.americanchronicle.com/articles/68067
  4. ^ [2] http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article2240427.ece
  5. ^ [3] http://jp.youtube.com/watch?v=SmL22CRmsLA 動画
  6. ^ “<韓国旅客船沈没>「他局が訂正報道出しても、KBSは全員救助の誤報続けた」”. 中央日報. (2014年7月8日). http://japanese.joins.com/article/456/187456.html 2014年7月19日閲覧。 
  7. ^ [4] http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/2230489.stm 西パプア州分離以前の記事
  8. ^ 二重被爆者「世界一運が悪い」BBCお笑い番組 読売新聞YOMIURI ONLINE2011年1月21日
  9. ^ 「BBC側、日本大使館にも謝罪 二重被爆者の不適切放送で」47NEWS(2011年1月21日)
  10. ^ 日本人を激怒させた英国のクイズ番組ウォールストリート・ジャーナル日本版
  11. ^ 「笑い話じゃない 二重被爆者山口さんの長女憤り『真摯さが足りない』」スポニチアネックス(2011年1月21日)
  12. ^ BBC番組「怒り心頭」=前原外相 時事ドットコム(2011/01/25)
  13. ^ BBC「QI」と米ゴールデン・グローブ授賞式に見る、英国の「危ない」ジョーク 抜粋された訳がある]
  14. ^ http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2569221/3766136
  15. ^ [5]
  16. ^ http://business.timesonline.co.uk/tol/business/industry_sectors/media/article2264150.ece
  17. ^ 著名司会者らの降板発表 英BBC、信頼性に傷
  18. ^ BBC番組でメキシコ人を「無能」呼ばわり、大使が抗議
  19. ^ 後に発言の発端となった司会者のジェレミー・クラークソンが文面で謝罪をしているが、その内容はメキシコはもっとジョークのセンスを持つべきだということとさまざまなエスニックジョークを書き連ねた厭味ったらしいものだった。メキシコを侮辱したとBBC放送が謝罪…でもイギリスらしく皮肉めいた文面だと話題に
  20. ^ 【レポート】一体なぜ? 『トップ・ギア』で酷評された車の売り上げが急上昇!
  21. ^ 【ビデオ】この場面が"やらせ"!? 『トップギア』に出演した俳優のブログが問題に
  22. ^ 米テスラ、英BBC『Top Gear』を提訴
  23. ^ “英BBC会長が辞任、児童虐待巡る誤報で引責 就任から2カ月”. CNN. (2012年11月11日). http://www.cnn.co.jp/showbiz/35024293.html 
  24. ^ 「昨年死去した名司会者に性的暴行疑惑 揺れるBBC」CNN
  25. ^ 「元BBC人気司会者が少女暴行常習犯疑惑追及番組の放送中止でBBCに厳しい批判」NHK放送文化研究所

関連項目

外部リンク