航空路火山灰情報センター

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航空路火山灰情報センター (こうくうろかざんばいじょうほうセンター、英語: Volcanic Ash Advisory Center; VAAC) は、大気中を浮遊して航空を危険に晒すおそれのある火山灰 (火山灰雲) に関する情報を取りまとめ、配信する業務を専門に行う気象センターである。

概要

2011年現在、VAACは世界各地9ヶ所に設置されており、各センターは各自の管轄区域内で発生する火山現象を集中的に扱う。VAACによる分析結果は航空路火山灰情報 (Volcanic Ash Advisory; VAA[1]) の形で一般に発表されるほか、しばしば (Volcanic Ash Forecast Transport and Dispersion; VAFTAD) と呼ばれるコンピュータ・シミュレーション・モデルの結果も合わせて公表される。[2][3]

VAACの国際的なネットワークは国際航空路火山灰監視計画 (International Airways Volcano Watch ;IAVW) の一環として、国連専門機関の一つである国際民間航空機関 (ICAO) を中心として構築された。[4]個々のセンターは、米国NOAA英国気象庁日本気象庁のように、それぞれの本部が所在する国の国立気象機関により運用されている。

火山灰雲中を飛行して航空機がエンジン故障等のトラブルに遭遇するのを回避するため、火山噴火によって発生する火山灰雲の分布予測の精度を高めることを目的として、1990年代に航空路火山灰情報センターが設置された。1980年代にガルングン山の噴火後にインドネシア上空を飛行して4機のエンジン全てが停止したブリティッシュ・エアウェイズ9便 (B747型機)や、同じくリダウト山の噴火後にアラスカ上空を飛行して全エンジンの推力を失ったKLMオランダ航空867便 (B747型機)などの航空事故が相次いだことを受けて、商用航空業界は火山灰が危険で存在であると同時に、同様の事故を防止する唯一の確実な策は適時パイロットに警報を通知して火山灰雲を回避するように迂回したり、ダイバートするなどの措置を取ることだと認識するようになっていた。

航空における火山灰の危険性

パタゴニアを横断し太平洋から大西洋までを覆った、2008年のチャイテン火山噴火に伴う火山灰雲

火山灰とは、火山の噴火により生成される細粒化した岩石やガラス片等の小さなテフラから構成される[5]直径2mm未満の火山砕屑物を指す。噴火の力と空気が熱せられて発生する対流によって火山灰は大気中に放出され、風に流されて火山から離れた地域まで運ばれる。粒径のごく小さな火山灰ともなると、相当な長期間大気中に残留することがあり、噴火口からかなり離れた場所まで運ばれ、もしもそれが航空機の航行高度にまで達して航空路に侵入した場合、火山灰雲は航空機にとって危険な存在になり得る。

1982年のブリティッシュ・エアウェイズ9便事故には問題があったとの認識の上で、ICAOは同年、火山灰警報調査グループVolcanic Ash Warning Study Groupを立ち上げた。12時間先以降の正確な火山灰の情報を予報することが困難であったため、IAVWの一環としてICAOによりVAACが設置された。[6][7]

目的

VAACの目的は、火山観測所や衛星画像、飛行中の航空機操縦士の報告等により、火山から放出される火山灰雲に関する情報を収集して分析し、将来の動向を予測することである。こうして作成された警告および予測は、気象観測機関や航空管制機関および火山灰雲が流れ込む可能性のある近隣のVAACを含む、航空産業の関係諸機関に向けて発表される。[8]

これらの機能を十分に発揮できるように、各VAACは火山灰の分散モデルを研究・開発している。気象衛星や火山観測点および操縦士の報告等から入手した情報を利用することにより、火山灰の位置を特定し、さらにモデルを活用して航空機の安全に支障を来す可能性があると考えられる空域の火山灰の分布を予測する。[9]

所在地

世界に9ヶ所あるVAACのカバー範囲

9ヶ所に設置されているVAACは各々に定められた監視区域を管轄している。各センターの本部はVAACおよび航空交通管制部に隣接しており、その監視区域は付近を管轄する複数の気象官署および航空交通管制部とも境界を共にする。

VAACによってカバーされる区域はそれぞれIAVWに基づいてICAOが定めた飛行情報区 (Flight Information Region; FIR) とも共通するように設定されている。[7]

本部所在地 管轄区域 担当機関
アンカレッジ FIR: アンカレッジ洋上、アンカレッジ陸上、アンカレッジ北極域および

西方に東経150度まで、および北緯60度以北

アメリカ海洋大気庁
ブエノスアイレス 西経10度から90度までの南緯10度以南 アルゼンチン国立気象局
ダーウィン 北緯10度かつ東経100度から160度以南および東経100度から75度のパースFIR、コロンボFIR、およびクアラルンプール、バンコク、チェンナイ、ヤンゴン、コルカタの各FIR オーストラリア気象局
ロンドン FIR: ボードー洋上、レイキャビーク、シャンウィック洋上、ロンドン、スコティッシュ、シャノン 英国気象庁
モントリオール FIR: ガンダー洋上カナダ陸上 (北極海を含む) レイキャビーク、ソンドルストロームフィヨルド カナダ気象局
東京 北緯60度から北緯10度および東経90度以東

FIR: オークランド洋上、アンカレッジ洋上および陸上境界まで

気象庁
トゥールーズ サンタマリア洋上、AFI地域から南緯60度まで、EUR地域の東経90度以西 (ロンドン、スコッティッシュ、シャノンの各FIRは除く) およびMID地域北緯71度以南、東経90度以西 フランス気象局
ワシントン FIR: ニューヨーク洋上、オークランド洋上、合衆国陸上および

南緯10度以北、西経140度以東

アメリカ海洋大気庁
ウェリントン 東経160度から西経140度までの赤道以南 ニュージーランド気象局

ロシア北部および北極地域、南太平洋および南極地域の一部を除き、VAACはほぼ世界全域をカバーしている。

探知

警報

関連項目

出典・脚注

外部リンク