航空特殊無線技士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
航空特殊無線技士
英名 Aeronautical Service Special Radio Operator
略称 航空特
実施国 日本の旗 日本
資格種類 国家資格
分野 電気・通信
試験形式 マークシート・実技
認定団体 総務省
認定開始年月日 1990年(平成2年)[1]
根拠法令 電波法
公式サイト 日本無線協会
特記事項 実施は日本無線協会が担当
ウィキプロジェクト ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル ウィキポータル 資格
テンプレートを表示
無線従事者免許証
平成22年4月以降発給

航空特殊無線技士(こうくうとくしゅむせんぎし)は、無線従事者の一種で電波法第40条第1項第3号ロに政令で定めるものと規定している。 英語表記は"Aeronautical Service Special Radio Operator"。

概要[編集]

政令電波法施行令第2条第2項に一種類のみ規定され、航空特と略称される。従前の特殊無線技士(無線電話丙)は航空特とみなされる。航空無線通信士の下位資格である。

国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則に規定する制限無線電話通信士にみなされるが免許証に記載はない。

操作範囲[編集]

電波法施行令第3条による。

1990年(平成2年)5月1日[2]現在

航空機(航空運送事業の用に供する航空機を除く。)に施設する無線設備及び航空局(航空交通管制の用に供するものを除く。)の無線設備で次に掲げるものの国内通信のための通信操作(モールス符号による通信操作を除く。)並びにこれらの無線設備(多重無線設備を除く。)の外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作
  1. 空中線電力50W以下の無線設備で25010kHz以上の周波数の電波を使用するもの
  2. 航空交通管制用トランスポンダで前号に掲げるもの以外のもの
  3. レーダーで第1号に掲げるもの以外のもの

備考[編集]

アマチュア無線技士の操作範囲の操作は行えない。これは、無線設備の操作が「外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作」に限定されており、これをうけた試験の無線工学の内容も「無線設備の取扱方法」に過ぎず「理論・構造・機能」に及ばないので、アマチュア局の無線設備を運用するために必要な知識が証明されないからである。

上述より航空関係の無線局でかつ25.01MHz以上のVHFと呼ばれる超短波以上の無線設備しか操作できない。

免許証関係事項証明[編集]

上記の通り、航空特は制限無線電話通信士にみなされるが、これについて免許証に付記や英訳文はない。 免許に関する事項について証明が必要な場合は、邦文または英文の「証明書」の発行を請求できる。

取得[編集]

次の何れかによる。

国家試験[編集]

日本無線協会が6・10・2月の年3回実施する。 また、学校等からの依頼により実施することもある。

試験の方法及び試験科目

総務省令無線従事者規則第3条に電気通信術は実地、その他は筆記によること、第5条に試験科目が規定されている。

無線工学

  • 無線設備の取扱方法(空中線系及び無線機器の機能の概念を含む。)

法規

電気通信術

一部免除
  • 科目合格は規定されておらず、一度の試験で全科目に合格しなければならない。
  • 陸上無線技術士は無線工学が免除。
定期試験の試験地および日程
  • 日本無線協会の本支部所在地。但し所在地以外に試験場を設定することがあり、この場合は申請時に選択が可能。
  • 平日が主であるが、試験期によっては土曜に実施することがある。
合格基準等

試験の合格基準等[3]から抜粋

科目 問題数 問題形式 満点 合格点 時間
無線工学 12 多肢選択式 60 40 60分
法規 12 60 40
電気通信術 実地 100 80
注 無線工学の免除者は30分
受験料

2020年(令和2年)4月1日[4]現在:6,400円

  • 2022年1月試験から受験票がオンライン発行になったが、それまでは原則として郵送によるので、受験票送付用郵送料(第二種郵便物料金)を合算して納付していた。

実施結果[編集]

年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度
申請者数(人) 1,296 1,301 1,498 1,541 1,549 1,609 1,487 1,682
受験者数(人) 1,191 1,187 1,373 1,429 1,464 1,486 1,353 1,542
合格者数(人) 860 927 1,039 1,138 1,089 1,138 1,003 1,113
合格率(%) 72.2 78.1 75.7 79.6 74.4 76.6 74.1 72.2
年度 平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度  
申請者数(人) 1,667 1,700 1,705 1,619 1,363 1,646 1,526  
受験者数(人) 1,546 1,552 1,563 1,433 1,210 1,462 1,410
合格者数(人) 1,144 1,171 1,256 1,093 974 1,172 1,098
合格率(%) 74.0 75.5 80.4 76.3 80.5 80.2 77.9

養成課程[編集]

養成課程は、総合通信局長(沖縄総合通信事務所長を含む。以下同じ。)の認定を受けた団体が実施する。この団体は認定施設者という。授業はeラーニングによることができる。

  • 日本無線協会は一般公募または団体から受託し実施している。
    • 受託では保有資格により授業時間を軽減することができる。
  • 直近の認定状況(実施状況ではない。)については養成課程一覧[5]を参照。
無線従事者規則に規定する授業時間数
無線工学 法規 電気通信術
5時間以上 11時間以上 2時間以上

総合通信局長が認めた方法による場合は変更できる。

  • 日本無線協会の受託での保有資格による授業時間の軽減は、この規定による。
修了試験の形式及び時間

無線従事者規則に基づく総務省告示[6]による。

  • 筆記試験は多肢選択式を原則としているが、マークシートによることは義務付けられておらず、CBTによることもできる。筆記試験の一部を記述式とすることを妨げてはいない。
科目 問題数 満点 合格点 時間
無線工学 10 100 60 45分
法規 10 100 60 45分
電気通信術は国家試験と同等

受講料は認定施設者ごとに異なる。

長期型養成課程[編集]

1年以上の教育課程で無線通信に関する科目を開設している学校等が認定施設者となり行う。授業はeラーニングにより実施することができる。

  • 学校、学科については長期型養成課程一覧[7]を参照。
無線従事者規則に規定する授業時間数
無線機器 空中線系及び電波伝搬 無線測定 電波法令 電気通信術
11時間以上 3時間以上 1時間以上 24時間以上 4時間以上
総合通信局長が認めた方法による場合は変更できる。
実施状況
年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成28年度
実施件数 26 26 27 26 21 28 17 18
受講者数(人) 940 1,009 1,008 875 770 969 726 854
修了者数(人) 920 981 990 848 757 932 708 843
修了率(%) 97.9 97.2 98.2 96.9 98.3 96.2 97.5 98.7
年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度    
実施件数 20 24 21 32 34 27    
受講者数(人) 871 972 856 937 711 615
修了者数(人) 858 961 849 932 707 612
修了率(%) 98.5 98.9 99.2 99.5 99.4 99.5
注 平成27年度の発表なし

取得者数[編集]

取得者数の推移
年度 取得者数(人)
平成2年度末 24,832
平成3年度末 27,909
平成4年度末 30,679
平成5年度末 33,592
平成6年度末 36,289
平成7年度末 38,523
平成8年度末 41,203
平成9年度末 43,427
平成10年度末 45,610
平成11年度末 47,710
平成12年度末 49,939
平成13年度末 51,984
平成14年度末 53,948
平成15年度末 56,145
平成16年度末 58,419
平成17年度末 60,470
平成18年度末 62,746
平成19年度末 64,937
平成20年度末 67,085
平成21年度末 69,134
平成22年度末 71,075
平成23年度末 72,924
平成24年度末 74,851
平成25年度末 76,892
平成26年度末 78,800
平成27年度末 80,714
平成28年度末 82,819
平成29年度末 84,666
平成30年度末 86,995
令和元年度末 89,082
令和2年度末 90,728
令和3年度末 92,711
令和4年度末 94,527
   

この節の統計は、資格・試験[8]による。

制度の変遷[編集]

1990年(平成2年)- 制定当初は、和文の電気通信術があり能力は1分間50字の速度の和文(無線局運用規則別表第5号の和文通話表による)による約2分間の送話及び受話であった[1]

1996年(平成8年)

  • 長期型養成課程で取得できることとなった[9]
  • 和文の電気通信術が廃止された[10]

2009年(平成21年)- 営利団体が養成課程を実施できることとなった[11]

2013年(平成25年)- 養成課程(長期型養成課程を含む。)でeラーニングによる授業とCBTによる修了試験ができることとなった[12]

その他[編集]

受験科目の免除
  • 無線従事者規則第8条第1項に規定する航空無線通信士国家試験における電気通信術
受験・受講資格
実態
  • 航空運送事業用以外の航空機に開設された航空機局やこの航空機と通信を行う航空局でVHF以上の無線設備が操作できる。自家用操縦士、自家用航空機と通信する空港や航空事業者などの地上職員は、最低でも航空特を保有していなければならない。取得するのは操縦訓練を始める者が中心で、残りは小型機が利用する小規模な飛行場の職員、無線資格の取得を趣味としている者などである。
  • 航空機に乗り組んで 無線設備の操作(受信も含む)を行うためには、航空法によるいわゆる運航従事者[注 1]の技能証明および航空身体検査証明も有していなければならない[14]。操縦訓練のため「航空機操縦練習許可」の取得者が無資格で操作することがあるが、この場合は同乗の操縦教官が航空無線通信士以上でなければならない[15]
  • 外国には、自家用操縦士の筆記試験に無線の質問を含め、国内での非商用飛行に限り資格不要とする国(アメリカなど)、無線の資格を同時取得できる国もあるが、この自家用操縦士の資格を日本の無線従事者として認める制度はない。
  • スカイスポーツで使用される無線で、滑空機専用のグライダー無線とパラグライダー等のスカイスポーツ専用無線は携帯局として免許され、必要となるのは陸上特殊無線技士である。スカイスポーツ用のデジタル簡易無線登録局に無線従事者は不要。

脚注[編集]

注釈 [編集]

  1. ^ 定期運送用操縦士、事業用操縦士、自家用操縦士、准定期運送用操縦士、一等航空士、二等航空士、航空通信士もしくは航空機関士。 航空通信士でなくともよいが、整備士は含まれず、運航管理者も不可。

出典 [編集]

  1. ^ a b 平成2年郵政省令第18号による無線従事者規則改正の施行
  2. ^ 無線従事者の操作の範囲等を定める政令制定
  3. ^ 試験の合格基準等 (PDF) (日本無線協会)
  4. ^ 令和元年政令第162号による電波法関係手数料令改正の施行
  5. ^ 養成課程一覧 (PDF) (総務省電波利用ホームページ - 無線従事者関係の認定学校等一覧)
  6. ^ 平成2年郵政省告示第250号 無線従事者規則第21条第1項第11号の規定に基づく無線従事者の養成課程の終了の際に行う試験の実施第3項(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  7. ^ 長期型養成課程一覧 (PDF) (総務省電波利用ホームページ - 無線従事者関係の認定学校等一覧)
  8. ^ 資格・試験(総務省情報通信統計データベース - 分野別データ)
  9. ^ 平成7年郵政省令第14号による無線従事者規則改正の平成8年4月1日施行
  10. ^ 平成7年郵政省令第75号による無線従事者規則改正の平成8年4月1日施行
  11. ^ 平成21年総務省令第15号による無線従事者規則改正の平成21年4月1日施行
  12. ^ 平成24年総務省令第56号による無線従事者規則改正と平成24年総務省告示第222号による平成2年郵政省告示第250号改正の平成25年4月1日施行
  13. ^ 消防法施行規則第33条の8第1項第8号及びこれに基づく平成6年消防庁告示第11号第2項第6号
  14. ^ 航空法 第28条第1項 - e-Gov法令検索
  15. ^ 電波法施行規則 第33条の2第1項第3号 - e-Gov法令検索

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

日本無線協会 国家試験指定試験機関・養成課程認定施設者