航空無線機

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航空無線機(こうくうむせんき)とは、航空交通管制にもちいられる無線機。一般にはエアバンドラジオと呼ばれる。

日本国内においての運用には航空特殊無線技士航空無線通信士総合無線通信士のいずれかの資格が、また無線機は航空局・航空機局の無線局免許が必要である。航空機は高高度を飛行し、電波が遠くまで伝播することから周波数の再利用が難しいため、非常に広い周波数帯が割り当てられている。変調方式はアナログの振幅変調 (AM(DSB)) であるが、これは、非常事態に陥った航空機が、通信のため既に送信中の他局に被せて送信しても、受信側である程度聞き取れるようにするため、と言う説がある。

この航空無線の聴取を趣味とする者はABL:エアバンドリスナーといわれる。大規模の空港の展望ラウンジには、ABLの姿が多く見られる。

周波数および出力[編集]

用途が指定されている周波数以外は(電波法上の)航空局の判断で自由に使用出来る(操縦士に対して「contact (当該担当部門 英語表記) on nnn.nn(nnn.nnメガヘルツで(当該担当部門)と交信して下さい)」と指示する)。 なお、後述のように25khzステップなのでnnn.n75などのように小数点以下が3桁になることもあるが、小数点以下2桁目までが指定されれば周波数は一つに限られるため、多くの場合、周波数を伝える際は小数点以下は2桁目まで伝える。

  • 民間用 VHF無線機
    • 118.0 - 136.975MHz、25kHzステップ、出力10W
      • 121.5MHz 緊急周波数。民間機の遭難通信、非常通信、安全通信に使用する。軍用周波数と1/2低調波の関係にある。
      • 122.6MHz 航空移動局(飛行機)相互通信用。
      • 123.1MHz 非常用周波数。
      • 123.45MHz 防災機関相互通信用。平時には防災訓練で、参加する航空機(ヘリコプター含む)の管制に用いられる。警察・消防・海上保安部・自衛隊・自治体が共通で使用出来る。
      • 134.5MHz 海上保安庁用。
    • 伝播距離は約200海里。ER VHF(エクステンデトレンジVHF)は、約350海里。
  • 軍事用 UHF無線機
    • 225.0 - 399.975MHz、25kHzステップ、出力10W
      • 243.0MHz 緊急周波数。軍用機の遭難通信、非常通信、安全通信に使用する。民間用周波数と2倍高調波の関係にある。1/3低調波がちょうど81.0MHzなので、日本ではこの周波数周辺は超短波放送の放送局に割り当てる事が出来ない(上限がNHK-FM千葉の本局、下限がJ-WAVE本局。諸外国の放送帯は88MHzから108MHzまでになっている)。
    • 通常の航空管制業務のほか、レーダーサイトとの地上要撃管制などにも使用する。
  • 洋上管制用 HF無線機
    • 2.000 - 22.00MHz、1kHzステップ、出力50 - 150W
      • 2.182MHz 緊急周波数。民間機及び船舶の遭難通信、非常通信、安全通信に使用する。
      • 6.532MHz 民間洋上管制用
      • 6.655MHz 民間洋上管制用
      • 6.727MHz 自衛隊の洋上管制用

ナロー化[編集]

欧州では25kHzステップを3等分 (25kHz/3) した8.33kHzステップに移行中である。AMの占有帯域は6kHzであるので、ガードバンドは2.33kHzと非常に狭くなる。そのため、ナロー化航空無線機には急峻なバンドパスフィルタと高純度なVCOと高精度な水晶発振器が要求される。

航空無線機製造者[編集]

関連項目[編集]

リンク[編集]