航空士 (自衛隊)
航空士(こうくうし)は、自衛隊の部内資格の1つ。 航空機搭乗員の内、操縦士と特殊な搭乗員(後述)以外の総称。
地上配置の一般隊員で適性検査、身体検査に合格した者から選抜され、各教育課程を経て搭乗配置の資格を得る。
概要
基本的に自衛官候補生か一般曹候補生として入隊した27歳未満の隊員から選抜される。航空機に搭乗して働くため航空身体検査の規定区分(操縦士よりやや緩い)に合格する必要があること、専門的な能力が要求されること、航空機に搭乗できることから人気があるが募集枠が少ないことから倍率は高い[1]。
海上自衛隊では航空部隊で地上勤務に就いた後に選抜を受け、第3術科学校の航空士課程や航空士専修課程を経て航空士として配属される。
航空自衛隊では第1・第2・第4・第5の各術科学校で専門教育を受け基地で経験を積んだ後に選抜を受ける。
航空士の徽章は操縦士と同じく航空機搭乗員徽章(ウィングマーク)と呼ばれるが、海陸は銀色(操縦士・戦術航空士は金色)であり、航空自衛隊では、操縦士とは形が異なる。
航法・通信
航法員
海上自衛隊の職域で、かつては新人の操縦士が見習いとして配置されていたが、現在では航法機器の進化により機上通信員と兼務する航法・通信員に統合されている。
機上通信員
略号は、RDO(RADIO MAN)
海上自衛隊の職域で、航空基地や洋上管制隊と無線による位置通報を行なう。航空電子整備員から選抜される。
現在では通信機器の進化により航法員と兼務する航法・通信員に統合されている。
航法・通信員
略号は、NAV/COM
海上自衛隊の職域で、航法員と機上通信員を兼務する。航空電子整備員から選抜される。
機上無線員
航空自衛隊の職域で、無線通信を担当する[2]。
機関・整備
機上整備員
略号は、FE(FLIGHT ENGINEER)
民間機の航空機関士に相当する。
海上自衛隊の哨戒機では、副操縦士が目視で洋上の監視を行っている間、スロットルの操作などを行い機長を補佐する。主に航空発動機整備員や航空電機計器整備員から選抜される。
陸上自衛隊では、輸送ヘリに搭乗している。
ヘリコプター整備員(機上)
航空衛隊の職域で、ヘリの搭乗員。飛行前の点検、ヘリに搭乗し各種装置の操作・整備、目視による周囲の監視を行う。救難ヘリでは、ホバリング時の操縦やホイスト操作などの機材操作も行う。
ヘリコプター整備員から選抜される。
航空機整備員(機上)
航空自衛隊の職域で、固定翼輸送機の搭乗員。飛行前の点検、航空機に搭乗し各種装置の操作・整備、ロードマスターの支援を行う。
航空機整備員から選抜される。
機上電子整備員
略号は、IFT(INFLIGHT TECHNITIAN)
海上自衛隊では哨戒機に搭乗し、搭載されている音響解析装置の状況を把握し、故障探求と修復時間を短縮することが任務である。飛行前作業では、APUを起動し、全電子システムの電源投入と稼動状況の把握を行なう。飛行中は監視員として目視で洋上の監視・写真撮影など哨戒任務の補助を行う。基地で勤務する航空電子整備員から選抜される。
航空自衛隊にも同名の職種があるが、こちらは航空機に搭載された電子機器を整備する地上要員である。
救助・救難
センサーマン
略号は、SENSO(SENSOR MAN)
海上自衛隊の職域で、搭載された電子機器の操作と降下救助員を兼務する。航空電子整備員から選抜される。
救難員
航空自衛隊の職域で、不時着・墜落した搭乗員の捜索救難を主任務とし、災害派遣では民間人の救難活動にも従事する。
救難員候補である救難学生に選抜されると自衛隊病院での衛生教育の他、陸上自衛隊での落下傘降下訓練や海上自衛隊での潜水訓練を受け、空挺レンジャー課程を卒業するなど過酷な訓練を受ける[3]。
パラシュートで降下し救助を行えることからParatrooper(英語版)の短縮形であるparaと衛生兵を意味するMedic(英語版)とを合わせパラメディック(Paramedic)とも呼ばれる。
機上救護員
海上自衛隊の職域で、遠洋において自衛隊機や自衛艦の事故・遭難時の海難救助を主任務とするが、平時には離島からの救急搬送など民間人の救助が多い。救難員との違いとしては海上自衛隊が飛行艇や艦載ヘリを有し現場海域へ直接移動が可能であり陸上や近海での活動は基本的に行わないため空挺・山岳・冬季訓練義務がないこと、第1術科学校で潜水士などの課程を適時受講できるため、開式・閉式スクーバの課程修了義務がないことが挙げられる。一方で艦船や基地で勤務する衛生要員から選抜されるため、准看護師や看護師、救急救命士などの医療系資格は全員が選抜前に取得している[4]。
陸上基地で待機する救難飛行隊の他、哨戒ヘリを有する一部の自衛艦に乗艦している。
レーダー・音響
ソナー員
略号は、SS(Sensor Station)
海上自衛隊の職域で、主任務はソノブイ解析システムのオペレーター、音響探知を行わない救難活動などでは目視で洋上の監視・写真撮影など哨戒任務の補助を行う。固定翼哨戒機には通常2名が乗り込む。
選抜された後、センサーツー(SS-2)として経験を積み、センサーワン(SS-1)の資格を付与される。
レーダー員
略号は、SS-3(Sensor Station 3)
海上自衛隊の職域で、捜索用レーダーのオペレーター、合成開口レーダー、赤外線暗視装置やMAD(磁気探知機)の操作も受け持つ。またATCトランスポンダのオペレーターでもあり、民間機との接近に対して機長に警告を発する。
機上警戒管制員
航空自衛隊の職域で、早期警戒機や早期警戒管制機に搭乗し、レーダーを監視する。レーダーサイトで勤務する警戒管制員から選抜され、警戒航空隊に所属し各飛行隊に配置される。
武装・貨物
機上武器整備員
略号は、ORD(ORDNANCE)
海上自衛隊の職域で、航空機に搭載された武装の整備とソノブイや救命器材の投下の他、目視で洋上の監視・写真撮影など哨戒任務の補助、火災発生時の消火、緊急時の脱出支援などの危機管理を受け持つ。基地で勤務する航空武器整備員から選抜される。
空中輸送員(戦術)
通称『ロードマスター』[1]
航空自衛隊の職域で、輸送機に搭載する貨物の重量バランスの調整、降下する人員の安全管理などを担当する[1]。
空中輸送員(特別)
航空自衛隊の職域で、民間旅客機の客室乗務員に該当する。特別航空輸送隊に所属し日本国政府専用機にのみ搭乗する[2]。
特殊な搭乗員
下記の搭乗員(要撃管制官以外)は現役操縦士もしくは操縦士の養成段階でコースを変更した幹部自衛官であり、航空士に含まれないが参考として記述する。
戦術航空士
略号は、TACCO(Tactical Coordinator)
海上自衛隊の職域。哨戒機に搭乗し哨戒パターンの設定やソノブイの敷設プランを設定するなど、戦術的な判断を下す乗員。
操縦士候補と一括して採用され、途中から適正により割り振られる。
捜索救難調整官
海上自衛隊の職域。救難機に搭乗し救難プランを設定する。英訳は『Search and Rescue Coordinator』
主にベテラン操縦士から選出される[5]。
ナビゲーター
航空自衛隊の職域。偵察機の後席に搭乗し監視・航法を担当、地上ではルートの事前策定を行う[6]。偵察航法幹部とも呼ばれる[7]。
要撃管制官
航空自衛隊の職域で、早期警戒機や早期警戒管制機に搭乗し、戦闘機や地上の高射部隊へ指示を出す[8]。
機上警戒管制とは違い戦闘機のパイロットに命令を出す立場であるため幹部であることが前提である。操縦士とは完全に別コースであり幹部候補生学校の卒業時に要撃管制を志望し合格する必要がある[9]。
機上警戒管制員と共に警戒航空隊に所属し各飛行隊に配置される。
出典
- ^ a b c ロードマスター|隊員インタビュー|スペシャルコンテンツ - 航空自衛隊
- ^ a b 特別航空輸送隊|茨城地方協力本部
- ^ 救難員|隊員インタビュー|スペシャルコンテンツ - 航空自衛隊
- ^ 海上自衛隊採用情報(衛生員)
- ^ 海上自衛隊の救難飛行艇US-2 ~引き継がれてきた技術と将来展望~ | 海洋情報 FROM THE OCEANS
- ^ ナビゲーター|隊員インタビュー - 航空自衛隊
- ^ Q&Aコーナー航空教育集団 - 航空自衛隊
- ^ プロフィール | 宇都隆史 公式ホームページ - 元要撃管制官の宇都隆史のプロフィール
- ^ 質問コーナー / 西部航空方面隊 -western air defense force- - 航空自衛隊