瞬きもせず (漫画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Kenja (会話 | 投稿記録) による 2014年8月29日 (金) 17:44個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (作品が描かれた当時は商業科がギリギリ存在していました。)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

瞬きもせず
ジャンル 少女漫画
漫画
作者 紡木たく
出版社 集英社
掲載誌 別冊マーガレット
レーベル マーガレットコミックス
集英社文庫(コミック版) ほか
発表期間 1987年 - 1990年
巻数 新書判全7巻
文庫全4巻 ほか
話数 全26話
テンプレート - ノート

瞬きもせず』(まばたきもせず)は、紡木たくによる日本漫画作品。『別冊マーガレット』(集英社)にて連載された。1987年9月号から同年11月号までに第1章(3話)が掲載され、のちに1988年6月号から1990年4月号まで第2章(23話)が連載された。

概要

山口県を舞台とし、主人公の小浜かよ子サッカー部紺野芳弘との恋愛を中心に、家族の問題、友人の問題、進路の問題など、多感な時期を田舎のゆったりとした時間の中で過ごす高校生の日常を描いている[1]。せりふは全編山口弁で書かれており[1][2][3]主人公達が通学する豊央高校のモデルとなった高校は山口県立山口高等学校である[要出典]。作者は神奈川県出身だが、この作品を描くために実際に山口に住んでいた[1]

漫画原作者で批評家の大塚英志は、この作品の結末について「前作の『ホットロード』の結末で思春期の主人公に「無限に広がる未来」を掲示したのに対し、『瞬きもせず』では、その「無限に広がる未来」の終末を潤いも含みもなくストレートに表現した」「選ばれし存在の主人公が外界へと旅立っていく展開は作品制作の上で容易いことだが、凡庸の中に帰着させる展開は難しい。紡木はそのことを可能とした例外的な作家」と評している[4]

ストーリー

山口県に住む高校1年生の小浜かよ子は同じクラスでサッカー部の紺野芳弘に告白され交際を始める。好意を寄せ合いながらも素直に気持ちを現すことができず、すれ違う2人だったが、友人の藤井美つ子や水谷輝哉の協力もあって徐々に信頼を深めていく。高校2年生になり、かよ子の兄・次男の家出、友人の輝哉と女子大生の交際、修学旅行などで慌しくなる。サッカーに情熱を傾けていた紺野は、やがて東京への憧れを抱くようになり、高校3年生になると卒業後の進路としてサッカー部のある神奈川県の工場への就職を、かよ子は地元での進学を希望していたが紺野と行動を共にすることを望み、家族の反対に逢いながらも東京の短大へ進学することを決める。

卒業後、かよ子と紺野は東京へと向かい、高校を中退して一足先に東京で生活を始めていた輝哉と再会する。しかし、かよ子は母が倒れたとの知らせを聞くと望郷の思いを募らせ、短大を辞めて山口へ帰郷する。一方、紺野は就職先のサッカー部から更に上のレベルのチームへ昇格できた者は誰一人いないとの現実や、社会人としての生活に追われるうちに、サッカー選手としての夢を諦めていた。それぞれの道を歩き始める2人だが、やがてお互いの大切さを再認識し、紺野が退職して山口へと帰郷したことで交際を再開させるのだった。

登場人物

主要人物

小浜 かよ子(こはま かよこ)
物語開始時高校1年。中学時代は陸上部だったが高校に入ってから始めたテニス部で美つ子と仲良くなり、その縁で紺野や輝哉たちと知り合う。男子に慣れていないこと、街から離れた場所に住んでいること、自分の家族のことなどに漠然としたコンプレックスを感じていたある日、突然紺野から告白され、付き合うことになる。
家族は父、母、祖母、兄・長男(ながお)と次男(つぐお)の6人暮らし。姉の桃子は就職して実家を離れている。
紺野 芳弘(こんの よしひろ)
物語開始時高校1年。サッカー部員。性格は明るく温厚で、いつも笑顔を絶やさない。
中学時代からサッカーに打ち込んでいて女子に興味のある素振りもなかったが、高校1年の夏に、ほとんど会話もしていなかったかよ子に突然告白し付き合うことになる。1年の時からサッカー部のレギュラーで、ポジションはフォワード。高校2年の秋からはキャプテンを務めた。実家は花屋を営んでいて、父親は長期入院中。母、妹と3人暮らし。

豊央高校

藤井 美つ子(ふじい みつこ)
通称「美っちゃん」。快活で他人思い。かよ子と入学早々親友になった。紺野や輝哉とは同じ中学出身で、男女関係なく仲がよい。かよ子と紺野の仲を取り持ち、その後もよき相談相手となった。輝哉に対し片思いをしているが、気持ちを隠して明るく振舞っている。
水谷 輝哉(みずたに てるや)
茶髪にパーマ、いかにもやんちゃな風体で、よく女子に声をかけたりしている。実家は喫茶店を営んでいる。紺野とは中学時代から大の親友で、紺野とかよ子を付き合わせるために根回しをしたり、紺野の恋の相談相手になっていた。東京から来た女子大生と恋仲になり、それがある事件を引き起こす。のちに高校を中退して東京へ。
箕輪(みのわ)
サッカー部監督。山口の出身で学生時代は東京のサッカー強豪校へ越境入学し、ジュニアユース代表に選ばれた経験がある。東京の高校で監督を務めていたが部員とトラブルになり、紺野達が2年生の時に豊央高校の監督に就任した。頬にはトラブルの際に負った大きな傷がある。サッカー部員に対しては基本的に厳しく接しているが、徐々に寛容さを見せるようになった。
相下 龍二(あいした りゅうじ)
サッカー部員でポジションはミッドフィールダー。かよ子たちの1年後輩。
箕輪が監督就任の際に地元の有望選手の中から引き抜いてきたうちの一人。ぶっきらぼうな性格で監督の箕輪ともたびたび衝突をする。紺野のことは「にやけた奴」と考えているが、一方で信頼もしている。

小浜家

かよ子の父(かよこのちち)
長男と共に自動車販売店で整備士を務めている。田舎の気のいい親父の風体だがデリカシーに欠ける面があり、末っ子のかよ子に何かとちょっかいを出している。かよ子と紺野との交際や東京行きについて一貫して反対の立場を採る。
かよ子の母(かよこのはは)
かよ子の理解者の一人。かよ子の東京行きを最終的に容認するが、彼女が旅立った後に心臓の病で倒れた。
小浜 次男(こはま つぐお)
かよ子の次兄で一つ年上。工業高校に通っている。田舎を嫌い、都会に憧れている。親に反発したり家出をしたりする小浜家の問題児であるが、かよ子には優しい兄。認知症になった祖母が、自分の存在を忘れてしまっていることに少し傷ついている。
小浜 桃子(こはま ももこ)
かよ子の姉。就職し実家を離れており、結婚し一児をもうけている。
かよ子の祖母(かよこのそぼ)
認知症を患っており次男のことを「よその子」と思い込んでいる。

その他

聖(きよし)
作中で登場する歌手。紺野とかよ子が彼の歌を聴くシーンや高校3年の夏に地元で行われたコンサートへ行くシーンがあり、紺野が卒業後の進路を選ぶ動機の一つとなった。
監督(かんとく)
紺野が就職した会社のサッカー部のトップチームを率いている人物。トップチームに昇格する可能性もなく娯楽としてサッカーに興じる下部チームの現状を憂いている。

作品の舞台

作品内では山口県内の繊細な田舎の風景が登場するが、先述のように作者の紡木が実際に現地に移住し実在の都市の景観や自然風景を写実的に描いたものである[1]。ただし、施設名について言及されることは少なく確認できるものは山陽本線岩国駅[5]岩国城[5]、山陽本線小郡駅[6][7][8]などである。このうちの岩国市の施設に関しては、かよ子と紺野のデートスポットとして描かれているものの両者が岩国に在住しているとは明示されていない。かよ子らが修学旅行から戻る際に新幹線の車内で「岡山の次は(中略)...小郡」というアナウンスを聞き帰郷したことを実感するシーンや[6]、小浜家が小郡駅からさらに電車を乗り継いだ5つ先の駅の近辺にあることを示唆するシーンがあり[8]、作品の主な舞台が小郡周辺に存在することが暗示されている。また、豊央高校の所在地については実在の地名ではなく「中央市」という架空の地名が用いられているが[9]、小郡駅からさらに5つ先の駅の近辺にある主人公・かよ子の実家から自転車で40分かかる場所にあること[10]普通科商業科が併設されていることが明示されている[11]

単行本

すべて集英社から刊行。2013年12月時点では紙媒体はいずれも絶版。

マーガレットコミックス全7巻と同構成の電子書籍がマーガレットコミックスDIGITALより刊行されている。

脚注

  1. ^ a b c d 第4回 紡木たく『瞬きもせず』”. 少女まんがアーカイブ/s-woman.net. 2007年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月8日閲覧。
  2. ^ 広がる「ご当地マンガ」 強まる地域色”. asahi.com(朝日新聞社) (2009年3月10日). 2013年6月8日閲覧。
  3. ^ 帰省気分が味わえる! 方言マンガ 後編・西日本編”. ダ・ヴィンチ電子ナビ (2012年12月28日). 2013年6月8日閲覧。
  4. ^ 大塚英志『戦後まんがの表現空間--記号的身体の呪縛』法藏館、1994年、184-187頁。ISBN 978-4831872050 
  5. ^ a b 文庫版4巻、86-87頁
  6. ^ a b 文庫版3巻、49-50頁
  7. ^ 文庫版4巻、97頁
  8. ^ a b 文庫版4巻、102頁
  9. ^ 文庫版4巻、18頁
  10. ^ 文庫版1巻、13頁
  11. ^ 文庫版2巻、113頁

外部リンク