直列4気筒

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直列4気筒(ちょくれつよんきとう)とは、レシプロエンジン等の形式の1つで、シリンダーが1列に4本配置されている形式。当記事では専らピストン式内燃機関のそれについて述べる。主に、排気量1L(リットル)から2.5L程度までの普及価格帯の車両に搭載されることが多い。

解説

車体の進行方向に対して縦向きに搭載されるエンジンを「直列4気筒」、横向きに搭載されるエンジンのことを「並列4気筒」と呼び、区別する場合もある(正確にはどちらも直列エンジンである)。縦置き、横置きの区別なく「インライン4(フォア)」、「i4」と呼ばれたり、書かれることがある(少し以前には、「ストレート4(フォー)」、「S4」、「L4」が主流だった)。日本国内での呼び方は「直4」が主だったものである。

現在では中型・小型の自動車前輪駆動の場合は横向きに搭載される場合が多い)、および4気筒エンジンを搭載するオートバイ(通常は横向きに搭載されるが、BMWの4気筒搭載車種では縦向きに搭載されるものもある)のほとんどがこの方式を採用している。

直列4気筒エンジンでは二次振動が問題となる。そのために自動車用としては小排気量から中排気量までのエンジンとして使用される。二次振動を低減するために排気量の大きい(おおむね2.0L以上)直4エンジンではバランスシャフトが使用されることが多い。このバランスシャフトは、互いに逆回転する2本一対の錘付きシャフトをクランクシャフトの回転数の2倍の速度で回転させることで二次振動を相殺する。

特徴的な自動車用エンジン

2代目・トヨタ・カローラスパシオ用の1NZ-FE型1,496ccエンジン

直列4気筒エンジンは、元来は小型車から中型車クラスをカバーする約1.0Lから約2.5Lの排気量のものが多い。

市販された自動車用ガソリンエンジンでもっとも排気量が小さい直4エンジンは、1961年軽自動車マツダ・キャロルのエンジン(排気量358ccのOHVエンジン)であったが、1963年の軽自動車ホンダ・T360のエンジン(排気量354ccのDOHCエンジン)により更新されている。軽自動車の排気量が660ccに変更されてからもこのクラスの直4エンジンは量産されていたが、燃費にシビアな時代背景から熱効率面で勝る直列3気筒に移行が進み、2012年8月にダイハツ・コペン(初代)の生産終了を持って全廃された。[1]

一方で、大排気量のものとしては三菱自動車ランチェスターの法則で知られるフレデリック・ランチェスターが考案したランチェスター・バランサーをベースに、サイレントシャフトと呼ばれる独創的なバランスシャフトを開発し、三菱・ジープ三菱・スタリオンは2.6L(2,555cc)を実現。後にこの技術を採用したポルシェ・968は3.0L(2,992cc)という大きな排気量の直4エンジンを使用を実現することができた。しかし、近年のディーゼルエンジンでないもっとも大きい排気量のエンジンは1961年ポンティアック・テンペストの3.2L(3,188cc)、195エンジンである。基本的に、このクラスの排気量は直列6気筒V型6気筒が主流であったが、昨今は直噴化によりノッキング問題が緩和されたこともあり、全長が長い直6や熱対策で劣るV6エンジンを直4ターボエンジンに置き換える事例も登場している。

なお、火炎伝播の問題からボア径に限界があるガソリンエンジンと異なり、トラック等に多用されるディーゼルエンジンでは気筒あたり1,000ccを超える大排気量のエンジンも使用されている。 かつて路線バスは無過給の直6エンジンが主流であったが、排ガス規制強化によって直4ターボエンジンに置き換えられる[2]など、採用が進んでいる。

オートバイでの直列4気筒

ホンダ・ドリームCB750FOURのエンジン

20世紀末~21世紀初頭において、ロードスポーツタイプのオートバイのエンジンには直列4気筒が用いられることが多い。ただし、二輪業界では慣例で横置きでシリンダーが横並びになる見た目から並列四気筒と呼ばれる事が一般的である。(厳密な意味での並列四気筒だとクランクシャフトが四軸あるエンジンになってしまう)250ccからは1,400ccまでのエンジンを採用した車種が各社から販売されている(あるいは、されていた)。

市販オートバイ史上最も小さな直列4気筒エンジンは、モト・グッツィが製作した231ccのBenelli/Moto Guzzi 254である。レース専用車両では1960年代にホンダが125ccのRC146を製作、後に世界最小の直列5気筒エンジンである125ccのRC148/149の製作に繋がっている。

逆に、市販オートバイで現在のところ史上最も大きな排気量のものはカワサキ・ZX-14Rの1,441ccである。

1929年式ヘンダーソン・KJの1340ccエンジン

古くは1910年代縦置き直列4気筒を搭載したヘンダーソン・モーターサイクルの事例が存在するが、近代的な直列4気筒を最初に搭載したオートバイは1966年MVアグスタが発売したDOHC2バルブのMV600である。しかし、MV600の生産数量は限られており、1969年にホンダが発売したSOHC2バルブのホンダ・ドリームCB750FOURが実質的に近代的な直列4気筒を最初に搭載したオートバイとすることが多い。

CB750FOURの爆発的なヒットにより、その後のオートバイ用エンジンの主流が直列4気筒に移る契機ともなった。今日ではクルーザー型オートバイオフロードバイクスクーターを除いて、ほとんど全ての形式のオートバイが直列4気筒を搭載している。特に、高速高性能を売りにしたフラッグシップ系のモデルはほぼ直列4気筒と言っても良い。なお、BMWなど一部のメーカーは縦置きエンジンの直列4気筒を販売しているが、その他のメーカーはほぼ全て横置きエンジン形式である。

デルビ4の2ストローク392ccエンジン

2ストローク機関においては、1954年スペインデルビモンジュイック24時間耐久レース用のロードレーサーのデルビ・4を製造しているが、エンジン破損でリタイアし、その後市販車両が発売される事もなかった。ロードレースにおいてはヤマハの500ccワークスレーサーYZR500による採用が著名で、1973年のOW20から1981年のOW53まで[3]この形式が採用された。1976年には500ccのOW23をベースに750ccにボアアップされたYZR750(0W31)も登場[4]、市販ロードレーサーのTZ500/TZ750としても市場投入された。

軽自動車などにおいては低回転域のトルク特性などを考慮して直列3気筒にエンジンの主流が移っていった経緯があるが、オートバイにおいてはある程度までそれを犠牲にしてでも高回転域を重視したセッティングを行えるため、パワー特性と製造コストの兼ね合いから最もバランスの取れた直列4気筒が広く用いられるエンジンとなっている。

なお、2009年のヤマハ・YZF-R1クロスプレーンクランクシャフトを採用し、不等間隔爆発エンジンとした直列4気筒を搭載し、低回転域でも安定したトルクを得ることにも成功している。また競技(MotoGP)用のヤマハ・YZR-M1でも、速く乗りやすいマシンとするために不等間隔爆発となるクロスプレーンクランクシャフトを採用している[5]

2気筒同爆エンジン

4ストロークの通常の直列4気筒エンジンは、180度ずつ位相をずらして点火タイミングが720度中1-3-4-2(1-2-4-3の例もあり)の順で等間隔に点火される。 これに対して、2ストローク2気筒同爆エンジンでは360度中1-4と、2-3の2気筒ずつが等間隔で同時に点火される。 高出力化には90度間隔で1気筒ずつ点火した方が有利だが、ピストンの往復が1-2気筒と3-4気筒で対称にならず1次の偶力振動が発生してしまう。2気筒同爆レイアウトでは4ストロークと同じく1次振動が発生せず、また均等爆発2気筒エンジンと同様の力強いトルクが得られる特性になる。

脚注

  1. ^ ただし実際に最後に販売を終了した直4エンジンを搭載した軽自動車は2017年3月を以って販売終了となった2代目三菱・パジェロミニである。
  2. ^ ジェイ・バス製の路線バス車両(エルガエルガミオブルーリボンレインボー)がそうである。また、同社製の観光バスタイプの車両(セレガ9m仕様メルファガーラ9m仕様ガーラミオ)も、直4ターボに置き換えられた。
  3. ^ マシン一覧(500cc) - バイクレース - ヤマハ発動機株式会社
  4. ^ YZR750(0W31) - バイクレース - ヤマハ発動機株式会社
  5. ^ モーターファン・イラストレーテッドVol.4 p.077

関連項目