症例対照研究

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症例対照研究しょうれいたいしょうけんきゅう、case-control study)とは分析疫学における手法の1つである。研究対象となる疾病に罹患した集団と罹患していない集団について、特定の要因への曝露状況を調査し比較することで、要因と疾病の関連を評価する研究手法。ケースコントロール研究患者対照研究結果対照研究とも訳される。

コホート研究と異なり、一般的に罹患率を直接求めることはできないため、曝露要因と疾病の関係はオッズ比によって評価される。対象となる疾病の発生頻度が稀であれば、オッズ比は相対リスク(罹患率比)の良い近似となり、「曝露を受けることによって、疾病発生のリスクが何倍になるか」と解釈することができる。

ケースコントロール研究は、すでに疾病を発生しているケースが利用できるため、疾病の発生を待つ必要はなく、コホート研究に比べて時間もコストもかからない。また、コホート研究が適さない稀な疾病(稀な疾病の場合、コホート研究では膨大な時間と費用をかけて、コホートの大部分の人が健康なままでいることを観察するだけとなる)に適している、対象としている疾病の原因と考えられる要因を複数調べることができるという利点がある。その反面、リスク要因に関する情報を過去にさかのぼって調べなくてはいけないので情報が不正確になりがちである。代表的なものには、思い出しバイアス(recall bias)が挙げられ、ケースは「過去に原因として考えられている要因の曝露を受けたかどうか」をよく記憶しているが、疾病を発生していないコントロールは同じ曝露を受けていても記憶していないという偏りがしばしば見られる。また、研究対象者の選択においても、コントロールの適切な選択は難しく、選択バイアス(selection bias)についての検討が十分になされる必要がある。


関連項目

参考文献

青山英康 監修「今日の疫学」第2版、真興社、2005年、ISBN 4-260-10637-6

ロバート H. フレッチャーら著、福井次矢 監訳「臨床疫学 EBM実践のための必須知識」第2版、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2006年、ISBN 4-89592-454-8