狂人軍

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狂人軍』(きょうじんぐん)は、藤子不二雄による日本漫画作品。登場人物全員きちがいであるという精神疾患を主題にした過激な内容の不条理系ギャグ漫画であることに加え、実在の人物(主に野球選手)や読売ジャイアンツに対する侮辱と取られかねない設定を含むため、現在も単行本化はされていない。

概要

少年チャンピオン』(秋田書店、連載当時隔週刊)1969年9月3日号から1970年3月18日号まで連載。全14話。

なお、タイトルにもなっている「狂人軍」は野球チームであるが、中盤は野球とは無関係なドタバタ調のギャグ展開に終始しており、実際に野球試合を行ったのは最終話のオープン戦のみ。しかも対戦相手の試合放棄というイレギュラーな決着になっている。

作者、藤子A自身も思い入れのある作品であったが、ほとんど受けなかった。作者曰く『あの作品をわかってくれる人は通ですよ。』とのこと。

ストーリー

平凡なサラリーマン・丸目蔵人は会社を無断欠勤したドライブ先で「狂楽園球場」なる野球場を発見し、覗いてみようとするが「気ちがい以外は中に入れない」と言われて追い出されてしまう。そこで丸目は気ちがいの振りをして「狂楽園球場」へ入ることに成功する。

その後、狂人軍の主砲・王選手の放ったホームランが顔面に直撃し、死亡。しかし死んだかと思われた蔵人は発狂した状態で意識を取り戻す。ところが、一旦下した死亡診断を覆すことを是としない医師は蔵人の殺害を決意し、凶器を手に蔵人を襲撃するが間一髪の所を王選手に救われる。しかし、自分が発狂した原因が王選手のホームランボールだと知った蔵人は「自分を狂人軍に入団させろ、そして4番を打たせろ」と要求する。

そして丸目と交代されると知った4番のナガヒマは激怒。丸目とバットで喧嘩をする。その後喧嘩は狂楽園球場全体を巻き込む乱闘に発展し、乱闘の最中に丸目はバットで頭を打ち気を失う。

しばらくして夕方になり丸目は正常な頭で意識を取り戻す。そこにはだれ一人いなかった。

丸目は不思議に思いながら自宅へ帰ろうと車に乗った。するとひとりの少年がいた。彼は丸目が発狂した時に服を交換されたのだった。

「ぼくの服かえしてチョーライ。」

少年はキチ吉と名乗り丸目はキチ吉を家へ招待するのだった。すると家には狂人軍のメンバーが待っていた…。

登場人物

丸目 蔵人(まるめ くらんど)
主人公。平凡なサラリーマンだったが、会社をさぼって狂楽園球場を覗こうとしたばかりに狂人軍の面々によって生活を狂わされる。ホームランボールが頭に直撃して気ちがいと化し、狂人軍に入団するが乱闘騒ぎの際にバットで頭を殴られて正気を取り戻し、退団している。
丸目 スズ子(まるめ スズこ)
蔵人の妻。子供はいない。夫と同様、狂人軍の面々に振り回され後始末をさせられる。

狂人軍関係者

キチ吉(キチきち)
狂人軍でピッチャーを務める少年。頭に氷嚢を括り付けている。ホームランボールの直撃で気ちがいと化した蔵人にユニフォームを盗まれたのがきっかけとなり、丸目家に居候する。語尾は「〜デス」。杉浦茂調の瞳にブタ鼻、常に鼻水を垂らす。後半は蔵人を食って実質的な主役となっていた。
ナガヒマ
4番・キャッチャーで通称「ミスター狂人軍」。非常に喧嘩っ早く、人間相手でも構わずバットを振り回す真性の気ちがい。目玉がつながっている。
王選手(おうせんしゅ)
狂人軍の3番打者。スペードのキングのような顔をしており、非常に気位が高い。蔵人が気ちがいと化す原因となった場外ホームランを放った張本人。
カワカム監督(カワカムかんとく)
狂人軍監督。顔面にカタカナの「キ」の形に絆創膏を貼っており、服装は金太郎ルック。腹掛けに背番号が書かれており、その番号は「80」。反抗的な相手には容赦なく(反駁するという意味ではなく、文字通りに)噛み付く。
ハットのオヤジ
狂人軍のオーナーと思われる人物。本名不詳。シルクハットに口髭の紳士然とした風貌だが、質問されたことに対する受け答えは支離滅裂。三島由紀夫の真似をしてみたかったと言い嬉々として割腹自殺を図るも、未遂に終わる。
アンパイヤ
狂楽園球場専属の球審だが、狂人軍のメンバーが足りない時は選手として試合に参加することもある。何事に対しても「アウト」「セーフ」と判定を下したがる。
アナウンサー
狂楽園球場専属の実況担当。マイクの代わりにトウモロコシを握り「本日はトコロ天なり、只今マイクの試食中」と言った調子でグラウンドの状況を解説する。アンパイヤと同様、狂人軍のメンバーが足りない時は選手として試合に参加することもある。
狂犬狂太郎(きょうけんきょうたろう)
キチ吉のペット。狂犬病に感染しており噛まれた者も狂犬病のウィルスに感染して発狂(既に発狂している者は正常になる)してしまう。水が弱点(狂犬病の症状による)。
原作者・藤子不二雄のお気に入りキャラクターらしく後に別作品『マボロシ変太夫』や『タカモリが走る』にも登場。ただし『タカモリが走る』の藤子不二雄ランド版では名前が「乱犬・乱四郎」に変更されている。

その他

  • 藤子不二雄が、この漫画の連載のあとに少年チャンピオンに連載した『チャンピオンマンガ科』にて、キチ吉のモデルが手塚治虫の『ザ・クレーター』の主人公である「オクチン」であること明かしている。
  • 藤子・F・不二雄『ドラえもん誕生(1978年発行『コロコロコミックデラックス ドラえもん・藤子不二雄の世界』掲載)』には、学年誌の新連載(『ドラえもん』)を頼まれたもののアイデアが浮かばず四苦八苦している藤子Fに対し、藤子は「『黒ベエ』と『狂人軍』を抱えていて、しかもそれらの締め切りが迫っているから」という理由でこのアイデア出しの協力から手を引く描写がある。但し1997年に発売されたムック『藤子・F・不二雄の世界』に『ドラえもん誕生』が収録された時には作品の具体的な名前が削除され、雑誌名(『チャンピオン』と『キング』)のみになっている(藤子・F・不二雄大全集ドラえもん20巻収録時には初出時のままで収録)。

関連項目