溶融塩電解
溶融塩電解(ようゆうえんでんかい、molten salt electrolysis)または融解塩電解(ゆうかいえんでんかい)は、イオン性の固体を高温にして融解させ、これを電気分解する方法である[1]。イオン化傾向が大きく水溶液では析出しないアルミニウムやナトリウムがこの方法で工業生産される。
アルミニウム
アルミニウムは世界的にホール・エルー法(Hall-Héroult process)により精錬されている[2]。氷晶石とフッ化ナトリウムを電気炉で1,010°Cで融解させ[2]、これに原料のアルミナを溶解し、黒鉛電極で電気分解を行う。分解されたアルミニウム(液体)は陰極に溜まり、酸素は陽極の黒鉛と反応して二酸化炭素となり、さらに反応して一酸化炭素となる。
- Al2O3 + 3C → 2Al + 3 CO
ナトリウム
ナトリウムの溶融塩電解には、カストナー法とダウンズ法がある。
カストナー法
カストナー法は、330°Cで溶融させた水酸化ナトリウムを特殊なるつぼで電気分解する方法である。分解された金属ナトリウム(液体)は水酸化ナトリウムよりも密度が低いため、るつぼ上部の採取装置 (P)に溜まる仕組みである。
- (陰極) 2Na+ + 2e– → 2Na
- (陽極) 2OH– → 1/2O2 + H2O + 2e–
陽極では高温にもかかわらず水が発生し反応効率が低下する。水は金属ナトリウムと反応を起こし、水素が生成する。
- Na + H2O → 1/2H2 + Na+ + OH–
生成した水素は採取装置 (P)に溜まり、これも反応効率を低下させる。
カストナー法は現在ほとんど使われず、ダウンズ法が主流となっている[3]。
ダウンズ法
ダウンズ法は溶融させた塩化ナトリウムをダウンズセル(Downs cell)と呼ばれる特殊な装置で電気分解する方法である[4]。
- (陽極) 2Cl– → Cl2 + 2e–
- (陰極) 2Na+ + 2e– → 2Na
- (全体) 2Na+ + 2Cl– → 2Na + Cl2
金属ナトリウムは塩化ナトリウムよりも密度が低いため、鉄電極(陰極)上の採取部分に浮かび上がってくる仕組みである。
出典
- ^ “融解塩電解”. 学研キッズネット. 2012年4月2日閲覧。
- ^ a b “アルミ・銅事業 やさしい技術”. 神戸製鋼グループ. 2012年4月2日閲覧。
- ^ “第1節 アルカリ金属とその化合物”. 啓林館. 2012年4月2日閲覧。
- ^ JAKES CLOYD DOWNS (1924-07-15), ELECTROLYTIC PROCESS AND CELL, Patent 1501756 2011年5月28日閲覧。