準惑星

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太陽系の天体の分類
恒星太陽
太陽の
周りを
回る
天体
惑星 地球型惑星
木星型惑星
天王星型惑星
準惑星
小惑星帯にあるもの
ケレスのみ)
冥王星型天体
太陽系
小天体
冥王星型天体以外の
太陽系外縁天体
小惑星
彗星
惑星間塵
太陽以外の
天体の周りを
回る天体
衛星(未定義)
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太陽系外縁天体
エッジワース
・カイパー
ベルト

(海王星との
軌道共鳴
(3:4)
冥王星族 (2:3)
(3:5)
キュビワノ族 ( - )
(1:2)
散乱円盤天体
オールトの雲
類似天体 ケンタウルス族
海王星トロヤ群
彗星遷移天体
関連項目 準惑星冥王星型天体
太陽系小天体
■Portal ■Project ■Template
76年間惑星とされてきたが、2006年に準惑星と位置づけ直された冥王星(左)と、その衛星のカロン(右)

準惑星(じゅんわくせい、: dwarf planet)とは、太陽の周囲を公転する惑星以外の天体のうち、それ自身の重力によって球形になれるだけの質量を有するもの。国際天文学連合(IAU)が2006年8月24日に採択した第26回総会決議5A(以下、決議5Aと略)の中で「惑星」を再定義した際に、同時に定義された太陽系天体の新分類である。

国際天文学連合による定義

採択された決議案に示される定義は下記の通りである。

dwarf planetドワーフ・プラネット (準惑星)とは以下の条件をすべて満たす天体である。

  • 太陽をめぐる軌道を周回している。
  • 固体をその形に維持するための力(分子間力)によるのではなくそれ自身をまとめあげている重力(自己重力)によって静水圧平衡(ほぼ球形)を保つに足る質量がある。
  • その軌道の近くに他の天体が存在している(他の天体を取り込んだりはじき飛ばしたりしていない)。
  • それ自体が衛星ではない(ただし、以下に明示したように「衛星」の定義はなされていない)。

なお、学術用語について、学会などが定義を明言することは極めて異例である。通常は、関連研究者内部で提唱されたものが淘汰されて決まるものである。

日本学術会議による提言

IAU総会の決議直後には dwarf planet の訳語として「矮惑星」などが使われたが、日本学術会議2007年4月9日の対外報告(第一報告)[1]において日本語では「準惑星」と表記することを推奨している。ただし、「冥王星ケレスエリスも性質が違うので同じ呼称に含めるのはおかしい」との意見があったこと、単に球形というだけでは自己重力によってその形状を保っているのかどうかわからないこと(直径 3.5km の球形小惑星も存在する)などから、IAU に対して定義の再検討を求めていくとしている。具体的には一定以上の直径を持つこと(例えば直径 1,000km とするなど)を「準惑星」の基準に加えるという案がある。日本学術会議では、dwarf planet という概念には未だに曖昧な部分があることから、学校教育の現場などでは積極的な使用を推奨しないとしている(詳細は惑星#日本学術会議の対外報告を参照)。

冥王星の扱い

冥王星1930年に発見されて以来、第9惑星として扱われてきたが、「自分の軌道周囲から他の天体を一掃している」とは判断されなかったため、準惑星に分類されることとなった。決議6Aで、冥王星は準惑星の典型例であると明示されている。

冥王星はエッジワース・カイパーベルトに位置する軌道を持つ天体であり、海王星と 3:2 の共鳴関係にある軌道を巡っている。trans-Neptunian objectsトランス・ネプトゥニアン・オブジェクツ (TNOs、太陽系外縁天体)のうち、このような共鳴軌道を巡る天体は冥王星族と呼ばれ、TNOs 全体の1割を超えている。この観測事実が、冥王星が惑星と見なされなかった要因となっている。

準惑星の一覧

IAU が決議案採択の時点で dwarf planet の例として示したのは冥王星からケレスまでの3個であり、2008年7月にマケマケ、9月にハウメアが追加されて5個となった。しかし、このカテゴリー自体の定義も今後の研究に委ねられることを留意する必要がある。

なお、冥王星は trans-Neptunian object 内の新しいサブグループの代表例であることも IAU において決議されたが、そのサブグループの正式名称を決定するには至らなかった。日本学術会議は2007年4月9日の対外報告(第一報告)で冥王星型天体との呼称の使用を推奨した。その後、2008年6月11日にIAUの執行委員会が開かれ、plutoidを正式名称とすることが決定された。

準惑星
名称 分類 直径 [km] 質量 [kg] 軌道傾斜角 [°] 軌道離心率 軌道長半径 [AU](1) 公転周期 [年] 自転周期 [日] 衛星数
冥王星 冥王星族 2,370 ~1.305 ×1022 17.09 0.250 39.445 247.74 6.387(2) 5
エリス 散乱円盤天体 2,400 ± 100 ~1.5 ×1022 44.08 0.437 67.840 558.77 1.08 ± 0.02 1
ケレス メインベルト天体 975 × 909 9.5 ×1020 10.581 0.080 2.767 4.60 0.377 0
マケマケ キュビワノ族 1,300 - 1,900 ~4 ×1021 29.00 0.160 45.482 306.74 0.3238 0
ハウメア キュビワノ族 1,960×1,518×996 ~(4.2 ± 0.1) ×1021 28.22 0.196 43.080 282.77 0.1646 1 2
  • (1):1天文単位 = 149,597,870 km
  • (2):逆行

上記のうち、ケレス以外の4個は plutoid である。さらに数十個の天体が plutoid に分類される可能性がある(準惑星候補の一覧を参照)。

trans-Neptunian object という分類呼称は、それをどう翻訳するのかを含めて、IAU の決議には左右されず、各国及び各自の判断に任されている(例えば、asteroidエッジワース・カイパーベルト天体、あるいは地球型惑星などの名称はもとから IAU の公式分類ではない)。IAU の公式用語には、各国でどのように分類しどのように呼ぶかについての強制力は全くない。

また、現在は冥王星の衛星とされているカロンは、「衛星かどうか」という判断を除き基準を満たしている。ただし、委員会原案では共通重心が主星の外にあるものは衛星としないと明示されていたが、それは最終決議案では記述されなかったため、IAU の公式見解としては、この点について何も示していない。

この他、小惑星帯の中ではケレスに次いで大きな天体であるベスタパラスヒギエアについては、自身の重力によって球に近い形を保っている可能性がある。このため、今後の観測の結果如何では準惑星に分類される可能性がある[2]。もちろん、これ以外の天体についても条件さえ満たすことがわかれば、順次、準惑星と呼ぶことになるであろう。

準惑星の大きさと質量

IAU が採択した決議 5A では、準惑星の大きさと質量については、その下限と上限が以下のようになっている。

上限については明確な定義はない。したがって、仮に、水星より質量の大きな天体がもし見つかったとしても、「その軌道周辺で他の天体を掃き散らしていない」なら、惑星には分類されず、準惑星と分類されることになるはずである(ただし、そのような天体は2006年8月時点では発見されていない)。

下限に関しては、「自重によって静水圧平衡形状(ほぼ球状)になっている」というのが定義である。具体的な数値は該当天体の天体物理学的性質によって変わるのは当然で、IAU 決議案として当初提示されていた委員会原案の補足文章では、半径や質量を数値的に明示するという形で定義するつもりはないとの意志が明確に提示されていた。国際天文連合決議 5B に相当する委員会原案では、正規の物理学的定義が理解できない人のために「この定義によれば、通常の岩石でできている天体ならば、5×1020kg の質量、あるいは 800km 以上の直径をもつ天体がこれに該当するであろう」というガイドラインがされていたが、これ自体は定義ではない。

また、具体的な天体がどの分類に属するかについての具体的な判断については、その都度、IAU が適宜判断する旨の注記がそえられている。

準惑星の命名法

太陽系内の新天体などの命名については、国際天文学連合内に小天体命名委員会(CSBN[3])と惑星系命名ワーキンググループ(WGPSN[4])があり、小惑星は前者が、衛星および天体表面の地形(クレーターなど)は後者が担当していた。

準惑星に分類された時点で正式名称がなかった2003 UB313については、総会直後の2006年9月に従来の小惑星(外縁天体)の命名規則に基づき、CSBNとWGPSNが共同で「エリス」と命名した(同時に冥王星とエリスには小惑星番号も付与された)。2008年6月に冥王星型天体 (: plutoid) の呼称が正式決定されると共に、冥王星型天体の命名手順についてはエリスの例を踏襲することになった。

各惑星および冥王星には和名があるが、エリス以降の準惑星に公式な和名を付けようという動きはない。

関連項目

参考文献

  1. ^ 対外報告(第一報告):国際天文学連合における惑星の定義及び関連事項の取扱いについて” (PDF). 日本学術会議. pp. 14 (2007年4月9日). 2007年4月17日閲覧。
  2. ^ Three new planets may join solar system”. New Scientist. 2006年8月16日閲覧。
  3. ^ : Committee on Small Body Nomenclature
  4. ^ : Working Group for Planetary System Nomenclature

外部リンク