法務省
法務省 ほうむしょう Ministry of Justice | |
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法務省が設置される中央合同庁舎第6号館A棟 | |
役職 | |
大臣 | 上川陽子 |
副大臣 | 田所嘉徳 |
大臣政務官 | 小野田紀美 |
事務次官 | 辻裕教 |
組織 | |
上部組織 | 内閣[1] |
内部部局 |
大臣官房 民事局 刑事局 矯正局 保護局 人権擁護局 訟務局 |
審議会等 |
司法試験委員会 検察官適格審査会 中央更生保護審査会 日本司法支援センター評価委員会 法制審議会 検察官・公証人特別任用等審査会 |
施設等機関 |
刑務所 少年刑務所 拘置所 少年院 少年鑑別所 婦人補導院 法務総合研究所 矯正研修所 |
特別の機関 | 検察庁 |
地方支分部局 |
矯正管区 法務局 地方法務局 地方更生保護委員会 保護観察所 |
外局 |
公安調査庁 公安審査委員会 出入国在留管理庁 |
概要 | |
法人番号 | 1000012030001 |
所在地 |
〒100-8977 東京都千代田区霞が関1-1-1 北緯35度40分35秒 東経139度45分12秒 / 北緯35.67639度 東経139.75333度座標: 北緯35度40分35秒 東経139度45分12秒 / 北緯35.67639度 東経139.75333度 |
定員 |
5万4614人(令和2年6月30日までは、5万4639人、令和2年7月1日から12月31日までは、5万4624人)[2] うち検察庁が1万1863人(令和2年12月31日までは、1万1873人) |
年間予算 | 8129億1580万1千円[3](2020年度) |
設置 | 2001年(平成13年)1月6日 |
前身 | 刑部省 - 司法省 - 法務庁 - 法務府 |
ウェブサイト | |
法務省 |
法務省(ほうむしょう、英: Ministry of Justice、略称: MOJ)は、日本の行政機関のひとつ。法の整備、法秩序の維持、国民の権利擁護、出入国管理等を所管する[4]。
概説
国家行政組織法および法務省設置法に基づき省の一つとして設置されている。
任務は「法務省は、基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護、国の利害に関係のある争訟の統一的かつ適正な処理並びに出入国の公正な管理を図ること」である(法務省設置法第3条)。
司法制度、民事行政(国籍、戸籍、登記、供託)、刑事、民事制度の企画、立案、検察、矯正、更生保護、行政訴訟、人権擁護、出入国管理、破壊的団体の規制、司法書士および土地家屋調査士に関することなどを管轄する。
法務省では桐紋を省の象徴として使用することが多い。桐紋は内閣や法治国家の象徴としても扱われるが、法務省では桐紋のなかでも主に五三桐を用いる。五三桐は省の標章として使用されており、法務省旧本館(中央合同庁舎第6号館赤れんが棟)の正門などに掲げられている。また、近年では、法務省の英語名称「Ministry of Justice」の頭文字「MOJ」を配置した図案もシンボルとして用いられている。
歴史
法務省の起源は、明治維新後の1869年(明治2年)に設置された刑部省にまで遡るが、直接の前身は1871年(明治4年)7月9日に設置された司法省とされている。司法省は、裁判所の監督など、司法行政事務を含む広範な法務、司法に関する事務を司っていた。
司法省の中でも検事局が主流を成しており、平沼騏一郎による検事主導の積極介入主義のもと、検事は、政党、軍部、官僚と並ぶ一大勢力に成長し、検察権力を第一義とする司法権の独立が明確化する。大正期から昭和戦前期には、「検尊判卑主義」が公然と囁かれるようになり、検事局、司法省、裁判所の要職を、検事がほぼ独占するようになっていた[5]。
1940年前後には、「司法権の独立」は、軍部の「統帥権の独立」と並ぶ政治的イデオロギーとなり、陸軍三長官会議をモデルに、司法大臣、大審院院長、検事総長による三長官会議の設置まで提唱されるようになる[5]。
第二次世界大戦での日本の敗戦から2年が経った1947年(昭和22年)4月の裁判所法及び検察庁法の成立、また三権分立体制を謳った日本国憲法の施行、また12月の法務庁設置法の成立に伴い、司法官僚は、司法省、検察庁、最高裁判所事務総局など、大きく分けて3つに分散し、裁判所関係の司法行政事務は最高裁判所事務総局の所管に移されることになった。
翌1948年(昭和23年)2月15日、司法省は廃止され、法務全般を司る政府の最高法律顧問府として法務庁が設置された。法務庁設置法(昭和22年12月17日法律第193号)はその後に改正を重ね、中央省庁再編が始まる1999年まで存続した。
その中で、1949年(昭和24年)6月1日の行政機構改革では、法務庁は法務府に改称され内部部局が簡素化された。
また、1952年(昭和27年)8月1日の行政機構改革では、法務府は法務省と改称され、法制に関する事務を内閣法制局に再び移管するなど、機構の大幅な整理が行われた。この行政機構改革の頃から、国家行政組織法別表において各省の筆頭に掲げられ、法務省は政府の各府省の建制順(列記する際の序列)では、内閣総理大臣が主任の大臣を務める総理府に次ぐ位置であった。
2001年(平成13年)1月6日の中央省庁再編により、法務省設置法(昭和22年法律第193号)に基づく法務省が廃止され、法務省設置法(平成11年7月16日法律第93号)に基づく法務省が設置された。序列は総務省に次ぐ位置となった。
2019年 (平成31年) 4月1日内局である入国管理局が廃止され、新たに外局に出入国在留管理庁を新設する組織改編を行った。
現行の司法法制部は、国内外の法令、法務に関する資料の整備、編纂、司法省であった1921年(大正10年)に始まる『法務資料』の刊行、霞が関の法務図書館の運営、2009年(平成21年)からは『日本法令外国語訳データベースシステム』(Japanese Law Translation)の運営などを行い、また日本司法支援センターの運営に関する業務を行っている。
沿革
- 1869年(明治2年):維新後の初代刑部卿に正親町三條實愛が任ぜられる。
- 1871年(明治4年) :刑部省を廃止し司法省となる。
- 1872年(明治5年) :初代司法卿に江藤新平が任ぜられる。
- 1885年(明治18年)12月22日:内閣設置により司法大臣に山田顯義が任ぜられる。
- 1947年(昭和22年)5月3日:日本国憲法と裁判所法の施行に伴い司法行政権を裁判所へ移管。
- 1948年(昭和23年)2月15日:法務庁設置法により、司法省を廃止し法務庁となる(長は法務総裁)。
- 1949年(昭和24年)6月1日:行政機構改革により、法務庁を法務府と改称(前同)。
- 1952年(昭和27年)7月21日:破壊活動防止法の施行と同時に、同法に関する業務を行う外局として、公安調査庁と公安審査委員会が発足した。
- 1952年(昭和27年)8月1日:行政機構改革により、法務府を法務省と改称(長は法務大臣)。
- 2001年(平成13年)1月6日:中央省庁再編における(新)法務省設置法により、(旧)法務省を廃止し(新)法務省発足。初代大臣は高村正彦、初代副大臣は長勢甚遠、初代法務大臣政務官は大野つや子。
- 2004年(平成16年)1月1日:それまでの、外局の司法試験管理委員会が廃止され、審議会等の一つとして司法試験委員会が設置された。
- 2015年(平成27年)4月10日:大臣官房の訟務部門を移管し、訟務局を設置。
- 2019年(平成31年)4月1日:入国管理局を格上げする形で出入国在留管理庁が発足。
所掌事務
上述の法務省設置法3条に規定された任務を達成するため、同法4条は計40号にわたって所掌事務を列記している。具体的には以下に関することなどがある。
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組織
法務省の内部組織は一般的に、法律の法務省設置法、政令の法務省組織令及び省令の法務省組織規則が階層的に規定している。
幹部
- 法務大臣(法律2条2項)
- 法務副大臣(国家行政組織法16条)
- 法務大臣政務官(国家行政組織法17条)
- 法務大臣補佐官(国家行政組織法第17条の2) - 必置ではない。
- 法務事務次官(国家行政組織法18条)
- 法務大臣秘書官
内部部局
- 大臣官房(政令2条1項)
- 政策立案総括審議官
- 公文書監理官
- サイバーセキュリティ・情報化審議官
- 審議官(政令11条1項)(6人)
- 参事官(政令12条1項)(8人)
- 秘書課(政令13条1項)
- 人事課
- 会計課
- 国際課
- 施設課
- 厚生管理官
- 司法法制部(政令13条2項)
- 参事官(政令12条1項)(2人)
- 司法法制課(政令13条2項)
- 審査監督課
- 民事局
- 参事官(4人)
- 総務課(政令22条)
- 民事一課
- 民事二課
- 商事課
- 民事法制管理官
- 刑事局
- 参事官(3人)
- 総務課
- 刑事課
- 公安課
- 刑事法制管理官
- 国際刑事管理官
- 矯正局
- 参事官
- 総務課
- 成人矯正課
- 少年矯正課
- 更生支援管理官
- 矯正医療管理官
- 保護局
- 参事官
- 総務課
- 更生保護振興課
- 観察課
- 人権擁護局
- 参事官
- 総務課
- 調査救済課
- 人権啓発課
- 訟務局
- 参事官
- 訟務企画課
- 民事訟務課
- 行政訟務課
- 租税訟務課
- 訟務支援管理官
審議会等
- 司法試験委員会(司法試験法、法律5条)
- 検察官適格審査会(検察庁法、法律5条)
- 中央更生保護審査会(更生保護法、法律5条)
- 日本司法支援センター評価委員会(総合法律支援法、法律5条)
- 法制審議会(政令59条)
- 検察官・公証人特別任用等審査会
施設等機関
法務省の施設等機関には以下の8区分がある。
- 刑務所(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、法律8条)(62)
- 支所(法律9条2項)
- 少年刑務所(5)
- 支所
- 拘置所(8)
- 支所
- 少年院(法律8条)(50)
- 分院(法律10条2項)
- 少年鑑別所(50)
- 分所(法律11条2項)
- 婦人補導院
- 分院(法律12条2項)
- 法務総合研究所(政令62条)
- 支所(政令63条2項)
- 検事、副検事、検察事務官、法務局職員、保護観察官、入国審査官、入国警備官等に対する研修のほか、発展途上国への法整備支援を行っている。
- 矯正研修所
- 支所(政令64条2項)
特別の機関
検察庁法にもとづき、特別の機関として検察庁がある(法律14条)。検察庁には最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁及び区検察庁の4区分に分かれ、それぞれ最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所に対応して置かれている(検察庁法2条1項)。
高等検察庁
地方検察庁
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地方支分部局
法務省の地方支分部局には以下の5区分がある。
- 矯正管区(法律15条)(8)
- 一部(政令66条1項)
- 二部
- 三部
- 地方更生保護委員会(8)
- 事務局(更生保護法20条1項)
- 法務局(8)
- 訟務部(政令69条1項)
- 民事行政部
- 人権擁護部
- 支局(法律19条)
- 出張所(法律20条)
- 地方法務局(42)
- 支局
- 出張所
- 保護観察所(50)
- 支部(法律25条)
矯正管区
地方更生保護委員会
- 北海道地方更生保護委員会(政令67条)
- 東北地方更生保護委員会
- 関東地方更生保護委員会
- 中部地方更生保護委員会
- 近畿地方更生保護委員会
- 中国地方更生保護委員会
- 四国地方更生保護委員会
- 九州地方更生保護委員会
法務局
地方法務局
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保護観察所
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外局
- 出入国在留管理庁(旧、入国管理局)
- 総務課
- 政策課
- 出入国管理部
- 在留管理支援部
- 入国者収容所(2)
- 地方出入国在留管理局(8) - 支局、出張所
- 公安審査委員会(国家行政組織法、公安審査委員会設置法、法律26条)
- 事務局(公安審査委員会設置法14条)
- 公安調査庁(国家行政組織法、公安調査庁設置法、法律26条)
- 総務部(政令77条)
- 調査第一部
- 調査第二部
- 公安調査庁研修所(政令83条)
- 公安調査局(政令84条)(8)
その他会議
- 法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会[6]
- 企業における法曹有資格者の活動領域の拡大に関する分科会
- 国、自治体、福祉等の分野における法曹有資格者の活動領域の拡大に関する分科会
- 法曹有資格者の海外展開に関する分科会
- 法曹養成制度改革連絡協議会
- 外国弁護士制度研究会
- 成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議
- 若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会
- 法教育推進協議会
- 「国民の声」を聴く会議
- 出入国管理政策懇談会
所管法人
法務省が主管する独立行政法人は2020年4月1日現在、存在しない[7]が、総合法律支援法にもとづいて設置され、独立行政法人通則法を準用する日本司法支援センターを主管している。
法務省が主管する特殊法人は2020年4月1日現在、存在しない[8]。
法務省が主管する地方共同法人、特別の法律により設立される法人および認可法人は存在しない。
財政
2020年度(令和2年度)一般会計当初予算における法務省所管の歳出予算は 8205億7062万8千円[3]。機関別の内訳は法務本省が2189億6583万7千円、法務総合研究所が23億4049万9千円、検察庁が1143億7721万8千円、矯正官署が2423億4944万1千円、更生保護官署が275億3985万9千円、法務局が1377億216万5千円、出入国在留管理庁が617億9476万6千円、公安審査委員会が6685万3千円、公安調査庁が154億3399万円となっている。
歳入予算は969億1485万6千円で、全額が「雑収入」(5部)に分類される。そのうち、「許可及手数料」(5部3款06項)の487億8955万5千円と「懲罰及没収金」(5部3款08項)422億3390万2千円が大半を占める。独自の項目としては刑務所作業収入と少年院職業補導収入から成る「矯正官署作業収入」(5部3款10項)があり、37億1740万2千円が計上されている。
特別会計としてかつては登記特別会計を所管していたが、2010年度限りで廃止された。現在は国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省所管[9]の東日本大震災復興特別会計を共管するのみである。
職員
職員数
一般職の在職者数は2019年7月1日現在、法務省全体で5万1,311人である[10]。内訳は本省が4万2567人(うち、女性8,506人)、出入国在留管理庁5,131人(うち、女性1,591人)、公安審査委員会4人(うち、女性0人)、公安調査庁1,507人(うち、女性251人)、検察官2,677人となっている。なお、一般職国家公務員在職状況統計表(令和元年7月1日現在)において検察官の女性の人数の記載はない。別途の資料[11]2018年3月31日現在で検察官総数2,691人(うち、女性505人)である。
行政機関定員令に定められた法務省の定員は特別職1人を含めて5万4614人(令和2年6月30日までは、5万4639人、令和2年7月1日から12月31日までは、5万4624人)[2]。うち、検察庁が1万1863人(令和2年12月31日までは、1万1873人)である。本省、各外局別の定員は省令の法務省定員規則に定められており、本省4万7084人(令和2年6月30日までは、4万7109人、令和2年7月1日から12月31日までは、4万7094人)で、うち検察庁1万1863人(令和2年12月31日までは、1万1873人)、出入国在留管理庁5,866人、公安審査委員会4人(事務局)、公安調査庁1,660人となっている[12]。2020年度一般会計予算における予算定員は特別職8人、一般職54,575人の計54,583人である[3]。機関別内訳は法務本省が795人、法務総合研究所が84人、検察庁が11,863人、矯正官署が23,606人、更生保護官署が1,845人、法務局が8,860人、出入国在留管理庁が5,866人、公安審査委員会(事務局)が4人、公安調査庁が1,660人となっている。
以上は定員内職員について述べたものであるが、これとは別に法務省には非常勤職員など多数の定員外職員が在籍している。非常勤職員については2019年7月1日現在の総数は5万7616人で[10]、国の行政機関の非常勤職員(14万9,696人)のおよそ4割が法務省に在籍している計算である。これは更生保護ボランティアである保護司4万7912人を含んでいることによる。ほかに委員顧問参与等職員が3,907人おり、厚生労働省(7,141人)の次に多い。続いて事務補助職員が3,621人、技能職員が529人、医療職員が505人、教育職員が377人などとなっている。教育職員は国の行政機関に任用された者(415人)の9割を占めている。非常勤職員とは別に再任用職員は2,616人となっている。さらに傷病や労組専従による休職が194人、育児等の休業が453人、派遣(国際機関、法科大学院、弁護士職務経験等)が44人となっている。
任用
職員の競争試験による採用は国家公務員採用総合職試験(院卒者試験)、国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)、国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)、国家公務員採用一般職試験(高卒程度試験)、刑務官採用試験、法務省専門職員(人間科学)採用試験の合格者の中から行われる。いずれも人事院が実施する。ただし検事の採用には国家公務員法の特例として検察庁法が適用され、主として司法修習生の修習を終えた者から任命される(検察庁法18条1項)。
前記の通り法務省と最高裁判所事務総局は共に司法省を母体として設立された機関であり、両者は司法省の廃止後も判検交流と呼ばれる人事交流を行っていた。これは人材育成の一環として行われていたとされる[13]が、検察と裁判所の癒着という指摘もあり[14][15]、日弁連も指定代理人制度と絡めて廃止を求めてきていた[16]。そのため、より職務の公正さを確保していくとして[15][17]、民事部門での交流縮小に次ぎ、2012年4月をもって刑事部門での人事交流が停止された。
給与
法務省職員は一般職の国家公務員なので、給与は一般職の職員の給与に関する法律(一般職給与法)によって規律される。ただし、検察官には検察官の俸給等に関する法律が適用され、検事総長、次長検事及び検事長は特別職の職員の給与に関する法律、検事及び副検事については一般職給与法の規定に準じた給与制度が設けられている。俸給表は基本的に行政職俸給表(一)および指定職俸給表が適用されるが、人事院規則九―二の規定により、入国者収容所及び地方出入国在留管理局の入国警備官(4条2号)と刑務所、少年刑務所、拘置所又は矯正管区に勤務する者並びに矯正研修所支所に勤務する教頭及び教官(4条3号)には公安職俸給表(一)が、検察事務官及び公安調査官(5条1号)と少年院、少年鑑別所又は婦人補導院に勤務する者(5条2号)には公安職俸給表(二)が適用され、検察官は検察官の俸給等に関する法律2条に規定された俸給表が適用される。令和2年度予算の予算定員[3]を俸給表別にみると、公安職俸給表(一)が2万648人と最も多く、次いで行政職俸給表(一)が1万6,263人、公安職俸給表(二)が1万3,704人、検察官が2,758人などとなっている。矯正施設や更生保護施設には被収容者の矯正医療のために、厚生労働省と並んで多数の医療従事者が勤務していることから、医療職俸給表(一)の適用を受ける定員が331人、医療職俸給表(二)が170人、医療職俸給表(三)が416人となっている。
職員団体
労働基本権のうち争議権と団体協約締結権は国家公務員法により認められていない。団結権は保障されており、職員は労働組合として国公法の規定する「職員団体」を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる(国公法108条の2第3項)。ただし、刑事施設に勤務する職員は国家公務員法によって団結権も認められておらず、職員団体を結成し、又はこれに加入してはならない(国家公務員法108条の2第5項)。
2019年3月31日現在、人事院に登録された職員団体の数は単一体1、支部30の計31団体となっている[18]。組合員数は4,602人、組織率は19.5%となっている。主要な職員団体は全法務省労働組合(全法務)で、国公労連(全労連系)に加盟している。
幹部人事
- 事務次官:辻裕教
- 大臣官房長:高嶋智光
- 政策立案総括審議官:竹内務
- 司法法制部長:金子修
- 民事局長:小出邦夫
- 刑事局長:川原隆司
- 矯正局長:大橋哲
- 保護局長:今福章二
- 人権擁護局長:菊池浩
- 訟務局長:武笠圭志
- 出入国在留管理庁長官:佐々木聖子
- 公安調査庁長官:和田雅樹
法務省の事務次官や内部部局の長など一般職の要職には、一般の国の行政機関とは異なり、国家I種試験(現国家総合職試験)合格者から採用された者ではなく、検察官(判検交流により裁判官から任用された者を含む)が任用される傾向が強い。元検事総長の但木敬一は、犯罪者の更生を担当する矯正局、保護局などのトップは検事にこだわらず適材適所で考えた方がいい時代になったと思うと述べている[21]。近年は、矯正局長に初の刑務官出身の局長や女性局長が誕生したり、保護局長にプロパー職員が就任するなど改革も見られる。他官庁の事務次官は最高位の「上がりポスト」であるが、法務省の場合は事務次官で退官することはほとんどなく、高検検事長(ほとんど東京)か次長検事に転出し多くは検事総長となるなど、キャリアパスの一つと化している[22](他省庁で同様の例として、次官経験後に重要国大使ポストに就くことが多い外務省が存在する)。その反面、総合職(旧1種)は出先機関などを多く所有しているため、他省庁ほど激しい出世レースもなく、ほぼ全員が本省課長級から審議官・管区局長級(指定職1号俸以上)まで出世でき、強制的に天下りさせられることはない。トップに立てない代わりに比較的安定したキャリアといえる。[要出典]
歴代法務事務次官
氏名 | 在任期間 | 前職 | 主な後職 |
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清原邦一 | 1952.8.1 - 1955.1.26 | 刑政長官 | 次長検事、検事総長 |
岸本義広 | 1955.1.26 - 1957.7.23 | 次長検事 | 東京高等検察庁検事長 |
馬場義續 | 1957.7.23 - 1961.12.22 | 最高検察庁検事 | 東京高等検察庁検事長、検事総長 |
竹原精太郎 | 1961.12.22 - 1964.7.1 | 仙台高等検察庁検事長 | 次長検事 |
竹内壽平 | 1964.7.1 - 1967.11.2 | 刑事局長 | 東京高等検察庁検事長、検事総長 |
大澤一郎 | 1967.11.2 - 1969.3.4 | 最高検察庁刑事部長 | 次長検事、検事総長 |
津田實 | 1969.3.4 - 1972.6.29 | 札幌高等検察庁検事長 | 退職 |
神谷尚男 | 1972.6.29 - 1975.1.25 | 東京地方検察庁検事正 | 東京高等検察庁検事長、検事総長 |
鹽野宜慶 | 1975.1.25 - 1977.3.22 | 東京地方検察庁検事正 | 東京高等検察庁検事長 |
安原美穗 | 1977.3.22 - 1979.8.21 | 刑事局長 | 東京高等検察庁検事長、検事総長 |
伊藤榮樹 | 1979.8.21 - 1981.7.23 | 刑事局長 | 次長検事、検事総長 |
藤島昭 | 1981.7.23 - 1983.12.2 | 東京地方検察庁検事正 | 次長検事、最高裁判所判事 |
前田宏 | 1983.12.2 - 1985.12.19 | 刑事局長 | 東京高等検察庁検事長、検事総長 |
筧榮一 | 1985.12.19 - 1988.6.17 | 刑事局長 | 東京高等検察庁検事長、検事総長 |
岡村泰孝 | 1988.6.17 - 1990.6.13 | 刑事局長 | 次長検事、検事総長 |
根來泰周 | 1990.6.13 - 1993.12.22 | 刑事局長 | 東京高等検察庁検事長 |
濱邦久 | 1993.12.22 - 1996.1.16 | 刑事局長 | 東京高等検察庁検事長 |
則定衛 | 1996.1.16 - 1998.6.23 | 刑事局長 | 東京高等検察庁検事長 |
原田明夫 | 1998.6.23 - 1999.12.22 | 刑事局長 | 東京高等検察庁検事長、検事総長 |
松尾邦弘 | 1999.12.22 - 2002.1.18 | 刑事局長 | 次長検事、検事総長 |
但木敬一 | 2002.1.18 - 2004.6.25 | 大臣官房長 | 東京高等検察庁検事長、検事総長 |
樋渡利秋 | 2004.6.25 - 2006.6.30 | 刑事局長 | 広島高等検察庁検事長、検事総長 |
大林宏 | 2006.6.30 - 2007.7.10 | 刑事局長 | 札幌高等検察庁検事長、検事総長 |
小津博司 | 2007.7.10 - 2009.7.14 | 刑事局長 | 札幌高等検察庁検事長、検事総長 |
大野恒太郎 | 2009.7.14 - 2011.8.11 | 刑事局長 | 東京高等検察庁検事長、検事総長 |
西川克行 | 2011.8.11 - 2014.1.9 | 刑事局長 | 札幌高等検察庁検事長、東京高等検察庁検事長、検事総長 |
稲田伸夫 | 2014.1.9 - 2016.9.5 | 刑事局長 | 仙台高等検察庁検事長、東京高等検察庁検事長、検事総長 |
黒川弘務 | 2016.9.5 - 2019.1.18 | 大臣官房長 | 東京高等検察庁検事長 |
辻裕教 | 2019.1.18 - | 刑事局長 |
問題点
行刑と人権に関わる問題
法秩序を維持する官庁ゆえの権威主義、行刑密行主義に代表される秘密主義が指摘されている[23]。
2001年及び2002年の名古屋刑務所における受刑者死亡多発事件(名古屋刑務所事件)、検察庁での「調査活動費」不正流用疑惑[24]などの不祥事が明るみに出た。
少年犯罪に対する加害者への人権には配慮しており、1997年の神戸連続児童殺傷事件の際、実名報道をした『FOCUS』などの複数の雑誌に対し法務省が削除要請を行った。また、『週刊新潮』の実名報道に対しても、たびたび是正勧告を行っている。しかし刑務所や入国者収容所といった「人権に制限を加える機関」を持つ官庁が「人権擁護活動」を行うのは問題があるという意見もある[25]。
また、女性や在日外国人などの人権にも配慮がされており、毎年11月の人権週間では女性の人権を真っ先に取り上げ、DVやセクハラの無料相談を受け付けている。在日外国人に対しても人権侵害の問題を多く取り上げ外国人差別をしてきたホテル・銭湯等に是正を勧告したことがある。
更にインターネット上の書き込みについても名誉毀損として法務省は厳しい姿勢を見せている[26]。
新司法試験漏洩問題における法務省の対応
2007年度
2007年度新司法試験における慶應義塾大学法科大学院教授による類題講義では、当該行政法教授の考査委員解任以降、司法試験委員会による調査結果により、影響が明らかでないとして何ら是正措置はとられなかった。但し、合格発表後、難問の択一行政法18問目における慶大生の正答率が5%以上高かったこと[27]、慶大の合格率は前年の9位から3位に上昇していたことなどが明らかとなっている。
ただ、その調査方法は問題の渦中にあったと指摘された複数の慶大教授らの自己申告を調査報告とし、さらに自己申告の任意とし、申告なき者は当該調査から外されるなど不可解な点が多く指摘されている。また解任された行政法の教授に対するヒアリングなどもなされていない。
これは、行政法同様に漏洩が指摘されていた刑事法では現職の派遣検察官が講義を行っていたためとされ[28]、よって法務省が当初から結論ありきに終始していたためとも指摘されている。
2015年度
2015年度司法試験において、青柳幸一明治大学法科大学院教授が、自身が同試験考査委員として作成した憲法問題を同大学法科大学院出身の女性受験者に漏洩したとして、同年5月、国家公務員法(守秘義務)違反容疑で東京地検特捜部に告発され、併せて法務省から考査委員を解任された[29]。
また、その他明大法科大学院生への影響の可能性も指摘されているが、調査等は実施されなかった[30]。
庁舎
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中央合同庁舎第6号館A棟外観
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中央合同庁舎第6号館赤れんが棟外観
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中央合同庁舎第6号館赤れんが棟外観
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中央合同庁舎第6号館赤れんが棟外観
発行物
脚注
- ^ 国会、裁判所、内閣、内閣府ほか11省等
- ^ a b 行政機関職員定員令(昭和44年5月16日政令第121号)(最終改正、令和2年6月16日政令第189号) - e-Gov法令検索
- ^ a b c d 令和2年度一般会計予算 (PDF) 財務省
- ^ 「基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護、国の利害に関係のある争訟の統一的かつ適正な処理並びに出入国の公正な管理を図る」(法務省設置法3条)
- ^ a b 御厨貴 『権力の館を歩く 建築空間の政治学』 ちくま文庫 p.246
- ^ 法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会『法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会取りまとめ』。平成27年5月25日
- ^ “独立行政法人一覧(令和2年4月1日現在)” (PDF). 総務省. 2020年4月7日閲覧。
- ^ “所管府省別特殊法人一覧(令和2年4月1日現在)” (PDF). 総務省. 2020年4月7日閲覧。
- ^ 国の予算を所管するすべての機関である。なお人事院は予算所管では内閣に属するのでここにはない。
- ^ a b 「一般職国家公務員在職状況統計表(令和元年7月1日現在)
- ^ 内閣府ホーム > 内閣府男女共同参画局ホーム > 基本データ > 調査研究等 > 女性の政策決定参画状況調べ > 平成30年度 女性の政策、方針決定参画状況調べ 各分野における参画状況 1. 国、地方公共団体○国の立法、司法、行政 d、司法 (2)検察官
- ^ 「法務省定員規則(平成13年1月6日法務省令第16号)」(最終改正:令和2年3月30日法務省令第21号)
- ^ 衆議院議員鈴木宗男君提出裁判官と検察官の人事交流に関する質問に対する答弁書 平成二十一年六月十六日
- ^ “裁判官と検察官の人事交流 廃止、縮小の動き加速 「なれ合い」指摘に配慮”. 産経新聞 (2012年5月3日). 2012年9月17日閲覧。
- ^ a b 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成24年5月8日
- ^ 日弁連がいま重要と考え、国民各層の意見を聞くための行政訴訟改革要綱案解説書 日本弁護士連合会 2002年11月29日
- ^ 第174回国会 参議院法務委員会 第6号 平成二十二年三月二十五日(木曜日)
- ^ 平成30年度 年次報告書(公務員白書) 「第1編第3部第6章:職員団体 - 資料6-2;職員団体の登録状況。2019年3月31日現在。
- ^ 法務省幹部一覧 令和2年12月24日現在 法務省
- ^ 出入国在留管理庁については、出入国在留管理庁幹部一覧 令和2年12月24日 出入国在留管理庁
- ^ 『ドキュメント検察官』 129頁。
- ^ 法務事務次官を最後に退職したのは歴代で津田實のみである。津田は田中角栄内閣の意向で最高裁判事に任命される予定だったが、石田和外長官らが強硬に反対して実現しなかったとされる。法の正義より政治家への「忖度」を重んじる、おかしな最高裁
- ^ 森達也 『死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う』 朝日出版社、2008年1月10日。ISBN 9784255004129
- ^ 『ドキュメント検察官』 141-144頁。
- ^ “人権擁護法案に関する意見”. 日本弁護士連合会 (2003年2月21日). 2015年8月2日閲覧。
- ^ 「ネット書き込みでの名誉毀損めぐり最高裁が初判断 有罪判決確定」 産経新聞2010年3月16日付け記事
- ^ 朝日新聞 2007年11月11日1面
- ^ 慶應大学法科大学院に在籍する新司法試験考査委員による平成19年度新司法試験の問題リークに関するwiki
- ^ 司法試験漏洩、法務省が刑事告発 東京地検特捜部が捜査 朝日新聞 2015年9月8日[リンク切れ]
- ^ 元教授、短答式の論点も漏らす? 大学院授業で学生に 産経ニュース 2015年9月20日
- ^ ウェブサイト『検察統計』。
- ^ ウェブサイト『犯罪白書』。
参考文献
- 読売新聞社会部『ドキュメント検察官…揺れ動く「正義」』(初版)中央公論新社〈中公新書〉(原著2006年9月25日)。ISBN 9784121018656。
関連項目
外部リンク
- 法務省
- 法務省 (@MOJ_HOUMU) - X(旧Twitter)
- 法務省 - YouTubeチャンネル
- 日本法令外国語訳データベースシステム・Japanese Law Translation(法務省)
- 出入国在留管理庁
- 検察庁
- 法務局
- 法務総合研究所フロントページ
- 法務総合研究所国際協力部
- 検察統計