江戸プロフェッショナル・必殺商売人

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必殺シリーズ > 江戸プロフェッショナル・必殺商売人
江戸プロフェッショナル・必殺商売人
ジャンル 時代劇
脚本 野上龍雄
安倍徹郎
中村勝行
監督 工藤栄一
松野宏軌
石原興
出演者 藤田まこと
梅宮辰夫
火野正平
鮎川いづみ
菅井きん
白木万理
草笛光子
ナレーター 桜田淳子
オープニング 作曲:森田公一
エンディング 小林旭夢ん中
製作
プロデューサー 山内久司(朝日放送)
仲川利久(朝日放送)
櫻井洋三(松竹
制作 朝日放送
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1978年2月17日 - 8月18日
放送時間金曜日22:00 - 22:54
放送分54分
回数26
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江戸プロフェッショナル・必殺商売人』(えどプロフェッショナル・ひっさつしょうばいにん)は1978年2月17日から8月18日まで、毎週金曜日22:00 - 22:54に、朝日放送松竹(京都映画撮影所、現・松竹撮影所)が共同製作・テレビ朝日系で放送された時代劇。全26話。主演は藤田まこと

必殺シリーズの第12作目、中村主水シリーズの第6作目である。

概要

本作は「商売人」であるが、中村主水シリーズとして「仕置人」シリーズを踏襲している作品であり、しばしば「仕置人」の名称が登場する。本作は「主水・正八」チームと「新次・おせい」チームに分けられ、互いに不信感を抱きながらも、殺しのプロフェッショナルとして協力しながら、晴らせぬ恨みを晴らしていく趣向がなされた。りつが懐妊し、「殺し屋なのに子供を持つ資格があるのか」という葛藤に主水が悩むというテーマが挿入された。後年、主水役の藤田はインタビューで「中村主水というキャラクターが自分の中に確立できたのはいつ頃か?」という質問に「『商売人』の頃だ」と答えていた[1]

本作の第18話「殺られた主水は夢ん中」で、シリーズ通算300回を達成した。これを記念して、過去のシリーズで個性的な悪役を演じて来た今井健二菅貫太郎神田隆江幡高志弓恵子らをゲスト出演者に迎え、冒頭部で、主水を全員で殺してしまうシーンが挿入された[2]

劇中の音楽は第1作『必殺仕掛人』以来、担当していた平尾昌晃が歌手としての活動と、他番組の音楽も掛け持ちしなければならなくなり、森田公一が担当している。

あらすじ

新・必殺仕置人』最終回で「寅の会」が崩壊し、念仏の鉄率いるチームが解散してから数カ月後。「足力屋」に転職した正八は、兄の仇の仕置人に復讐しようとした男が返り討ちにされる現場に遭遇する。その仕置人は踊りの師匠のおせいと箱屋の新次で、正八も見知った相手だった。正八は中村主水に、このことを語るが、女房のりつが懐妊したことで奮起を促されていた主水は表の仕事の手柄にしようと考える。正八の反対を突っぱね、おせいに揺さぶりをかける主水であったが、おせいはこれを逆にいなし、新次に頼み、主水のことを調べ始める。

一方、見世物小屋を開催している政五郎は、長崎から「キンタ」と名付けた奴隷の外国人を買い付け、これを見世物にしようとしていた。角兵衛獅子の大道芸をさせられている美代は、同じ境遇の少年らと共にキンタを助け出そうとし、主水に相談する。金にならない厄介ごとに首を突っ込みたく無かった主水は美代らの手助けで、キンタが脱走し、これを已む無く捕まえて保護しようとする。しかし、奉行所には既に政五郎の手が回っており、キンタは政五郎の下に送られ、拷問死させられる。

裏の仕事を久し振りに行うことを決意した主水は、美代に根津の神社に金を払えば、晴らせぬ恨みが晴らせると伝える。しかし、おせいたちは普段の主水の性格から、小さな女の子を騙して金をせしめようとしていると勘違いし、怒りを覚えた2人は主水を殺して金を取り戻し、代わって仕置きを実行しようとする。

金を取りにきた主水はそこで、新次と対決。その場は正八の仲裁と説得により、互いの目的を知るが、新次は主水を信用せず、おせいと2人だけで仕置きを行う。彼女らの見事な仕置きの現場を見た主水は帰宅しようとするが、途中、2人から「分け前」として、小銭を渡される。

こうして「主水・正八」チームと「新次・おせい」チームは互いに不信感を抱きながらも協力して、弱者の晴らせぬ怨みを晴らしていく。

登場人物

商売人

中村主水
演 - 藤田まこと
南町奉行所の定町廻り同心。本作は妻のりつが懐妊したことで、金策に追われることが多い。
正八を目明しのように使い、表稼業の範疇(袖の下や口利き)で金を手に入れようとするが、大概は失敗し、仕置の案件になる。
新次
演 - 梅宮辰夫
髪結い兼箱屋[3]。男前で、女性からの人気は高いが、色恋沙汰と男女の情に絡む話には興味を示さない。おせいを今も好いているらしい描写はあるが、距離を置いている。
主水の腕は認めているが、表稼業での姑息さを含め、あまり信用していない。商売人(仕置人)としてのプライドは高く、人の命を奪う者が子供を持っていいのかという観点でも、主水に懐疑心を抱いている。共に死線を潜り抜け、主水を理解するようになると仲間として認めるようになる。
最終話で、おせいを守るために単身で裏稼業の大元締 蛭子屋卯兵ヱの船を襲撃する。卯兵ヱは仕留めるも、蛭子屋一味との水中戦で手傷を負ったところに、蛭子屋と通じていた同心根来の放った矢で首を射抜かれ、絶命する。
梅宮は後年、「志村けんのだいじょうぶだぁ」にゲスト出演し、必殺シリーズのコントで飾り職人の秀のパロディキャラクターを演じている。本家必殺シリーズに仕事人役で登場した人物がパロディを担当した稀有な例である。
正八
演 - 火野正平
商売人の密偵。絵草子屋から転職し、足力屋(足踏みマッサージ)となる。
前作『新・必殺仕置人』同様、情報収集と仕置の段取りを付け、表稼業でも、主水の手下となっている。
主水に扱き使われつつも、儲け話があると自分から主水に持ちかけることも多い。主水とおせい・新次組の仲立ち的な役割も担っている。
不忍池の畔にある灯台を住処とし、前作同様、商売人の隠れ家となっている。
おせい
演 - 草笛光子
舞踊の師匠。新次と共に京都の仕置人であったが、標的を間違えるという失敗を犯し、足を洗い、江戸へやって来る。
相棒の新次とは夫婦であったが、先の失敗が原因で離縁し、現在は裏稼業の仲間として接する。しかし、新次のことは今も好いており、縒りを戻したいと考えている。主水については当初疑っていたが、主水の性格を理解し、新次ほど警戒はしなかった。
最終話で、裏稼業の大元締 蛭子屋の企みによって、江戸中の殺し屋から命を狙われる。秀英尼に匿われ、新次と共に江戸を発つはずだったが、新次はおせいを守るために戦い、殺害される。主水に顛末を聞かされた後、主水の子供が無事に産まれたことを祝い、江戸を旅立つ。
第13話で、『必殺必中仕事屋稼業』の「おせい」と同一人物であることが判明する。

その他

中村せん
演 - 菅井きん
主水の姑。あいかわらず、婿養子の主水をいびる。本作は娘のりつが懐妊し、中村家の跡取りができたと喜ぶ。
中村りつ
演 - 白木万理
主水の妻。せんとともに、婿養子の主水をいびる。
本作は主水の子供を懐妊し、安産祈願のために、主水を困らせることが多い。
秀英尼
演 - 鮎川いづみ(現・いずみ)
普段は数人の子供を引き連れ「恵まれない子供たちの為に御報謝を」と募金を募っている尼僧。廃品を回収し、それを売る商売も行っていた。
ひょんなことから出会った正八に募金を要求することが多く、次第に金をせびるようにまでなる。当初は金が無かった正八も秀英尼に惚れていたため、嫌々ながらも最後は応じていた。正八にたびたび口説かれ、その都度、「さようなら」などとかわしつづけたが、終盤で関係を持つ。中村家に入れない新次の為に介入役も行うことも。
最終話で、父親が裏稼業の殺し屋で、商売人のことを知っており、主水たちも商売人であることを知っていたことを明かす。そして、命を狙われる、おせいを匿う。
花竜 / 蝶々
演 - 八木孝子[4] / 森みつる[5]
芸者で、おせいの舞踊の弟子。登場する時は基本的に二人一緒である。新次に色目を使うが相手にされない。
正八のマッサージを受けていることも多く、主水を除いた表の顔の商売人3人たちとは顔見知りである。
与力 坂口
演 - 有川博[6]
南町奉行所の与力で、主水の上司。主水を疎んじており、些細なことでも厳しく当たる。
お梶
演 - 小柳圭子[7]
花竜と蝶々が所属する芸者置屋「分松葉」の女将。箱屋の新次が常に出入りし、おせいとは職業上、懇意にしている。
正八のマッサージを受けることも多く、花竜、蝶々と同様、表の顔の商売人たちとは主水以外顔見知りである。第21話で、一人息子を殺された母親として、おせいに裏の仕事を依頼する。
ナレーション
オープニング - 桜田淳子
次回予告 - 野島一郎(ABCアナウンサー(当時)。キャストロールに表記なし)
作 - 早坂暁

ゲスト

第1話 「女房妊娠 主水慌てる」
第2話 「誘拐されて女よろこぶ」
第3話 「むかし夫婦いま他人」
第4話 「お上が認めた商売人」
第5話 「空桶で唄う女の怨みうた」
第6話 「手折られ花は怨み花」
第7話 「嘘か真実かまことが嘘か」
第8話 「夢売ります手折れ花」
第9話 「非行の黒い館は蟻地獄」
第10話 「不況に新商売の倒産屋」
第11話 「女体が舞台の弁天小僧」
第12話 「裏口を憎む男にない明日」
第13話 「裏の稼業にまた裏稼業」
第14話 「忠義を売って得を取れ!」
第15話 「証人に迫る脅しの証言無用」
第16話 「殺して怯えた三人の女」
第17話 「仕掛けの罠に仕掛けする」
第18話 「殺られた主水は夢ん中」
第19話 「親にないしょの片道切符」
第20話 「花嫁に迫る舅の横恋慕」
第21話 「暴走を操る悪の大暴走」
第22話 「殺した奴をまた殺す」
第23話 「他人の不幸で荒稼ぎ」
第24話 「罠にはまって泣く主水」
第25話 「毒を食わせて店食う女」
第26話 「毒牙に噛まれた商売人」


殺し技

中村主水
大刀・脇差で悪人を斬る、刺す[8]。主に標的の部下、手下、用心棒を複数相手にした、華麗で派手な殺陣が主水シリーズの前作「新・仕置人」と比較しても格段に多く[9]、これは歴代の主水シリーズで、当作品のみの特徴である。
第1話で、新次と対決する時は二刀流を披露した。
新次
髪結いに用いる櫛の柄を、悪人の額や首筋に刺す。第1、2、4話では櫛の歯の一部を指で折り取り、残った歯の部分で突き殺していた。差し込んだ状態で櫛を折り、相手の体内に残し、折れた歯部分を更に指で奥深く押し込むこともある。
補助武器として、赤い帯や元結の糸で首を絞めたり、相手の身体を固定したりしながら、櫛で刺すこともある。
おせい
刃仕込み扇子で、悪人の首筋を斬る[10]。他に朱塗りの短刀、仕込み茶杓(第11話)、主水の脇差(第13話)、分断刃仕込み扇子などの多様な武器を用いる。
第15話は仕置する悪人に返り討ちに遭う所、咄嗟に屋敷の蔵の冷凍庫にあった氷柱を用い、刺した直後に崩れた巨大氷に押しつぶされ、悪人を凍死させた。

スタッフ

  • プロデューサー - 山内久司、仲川利久(朝日放送)、櫻井洋三(松竹)
  • 脚本 - 野上龍雄、安倍徹郎、中村勝行、岡本克己、長田紀生、保利吉紀、國弘威雄、原田雄一、松原佳成、南谷ヒロミ、辻良
  • 作詞 - 阿久悠
  • 音楽(クレジット上は「作曲」) - 森田公一
  • 監督 - 工藤栄一、渡邊祐介、松野宏軌、渡邊祐介、原田雄一、高坂光幸、石原興南野梅雄
  • 協力 - 新演技座
  • 制作協力 - 京都映画撮影所(現・松竹撮影所)
  • 制作 - 朝日放送、松竹

主題歌

放送日程

  • 第18話で、通算300回を迎えた。
話数 放送日 サブタイトル 脚本 監督
第1話 1978年2月17日 女房妊娠 主水慌てる[12] 野上龍雄 工藤栄一
第2話 1978年2月24日 誘拐されて女よろこぶ 安倍徹郎
第3話 1978年3月03日 むかし夫婦いま他人 野上龍雄 渡邊裕介
第4話 1978年3月10日 お上が認めた商売人 安倍徹郎
第5話 1978年3月17日 空桶で唄う女の怨みうた 中村勝行 松野宏軌
第6話 1978年3月24日 手折られ花は怨み花 岡本克己 渡邊裕介
第7話 1978年3月31日 嘘か真実かまことが嘘か 中村勝行 原田雄一
第8話 1978年4月07日 夢売ります手折れ花 長田紀生 高坂光幸
第9話 1978年4月21日 非行の黒い館は蟻地獄 中村勝行 松野宏軌
第10話 1978年4月28日 不況に新商売の倒産屋 保利吉紀
第11話 1978年5月05日 女体が舞台の弁天小僧 安倍徹郎 高坂光幸
第12話 1978年5月12日 裏口を憎む男にない明日 保利吉紀 原田雄一
第13話 1978年5月19日 裏の稼業にまた裏稼業 野上龍雄 渡邊裕介
第14話 1978年5月26日 忠義を売って得を取れ! 國弘威雄 松野宏軌
第15話 1978年6月02日 証人に迫る脅しの証言無用 保利吉紀 高坂光幸
第16話 1978年6月09日 殺して怯えた三人の女 中村勝行
原田雄一
原田雄一
第17話 1978年6月16日 仕掛けの罠に仕掛けする 松原佳成 松野宏軌
第18話 1978年6月23日 殺られた主水は夢ん中 安倍徹郎 石原興
第19話 1978年6月30日 親にないしょの片道切符 南谷ヒロミ 高坂光幸
第20話 1978年7月07日 花嫁に迫る舅の横恋慕 國弘威雄 原田雄一
第21話 1978年7月14日 暴走を操る悪の大暴走 保利吉紀 高坂光幸
第22話 1978年7月21日 殺した奴をまた殺す 辻良 原田雄一
第23話 1978年7月28日 他人の不幸で荒稼ぎ 松原佳成 南野梅雄
第24話 1978年8月04日 罠にはまって泣く主水 辻良 高坂光幸
第25話 1978年8月11日 毒を食わせて店食う女 中村勝行 南野梅雄
第26話 1978年8月18日 毒牙に噛まれた商売人 安倍徹郎 工藤栄一

ネット局

系列は放送当時のもの。
放送対象地域 放送局 系列 備考
近畿広域圏 朝日放送 テレビ朝日系列 制作局
関東広域圏 テレビ朝日
北海道 北海道テレビ
青森県 青森放送 日本テレビ系列
テレビ朝日系列
岩手県 テレビ岩手
宮城県 東日本放送 テレビ朝日系列
秋田県 秋田テレビ フジテレビ系列
山形県 山形放送 日本テレビ系列
福島県 福島テレビ TBS系列
フジテレビ系列
新潟県 新潟総合テレビ フジテレビ系列
日本テレビ系列
テレビ朝日系列
長野県 信越放送 TBS系列 1978年3月まで
長野放送 フジテレビ系列 1978年4月から
山梨県 テレビ山梨 TBS系列
富山県 富山テレビ フジテレビ系列
石川県 北陸放送 TBS系列
福井県 福井テレビ フジテレビ系列
静岡県 静岡放送 TBS系列
中京広域圏 名古屋テレビ テレビ朝日系列
鳥取県島根県 山陰放送 TBS系列
岡山県 テレビ岡山 フジテレビ系列
テレビ朝日系列
現・岡山放送
当時の放送エリアは岡山県のみ
広島県 広島ホームテレビ テレビ朝日系列
山口県 山口放送 日本テレビ系列 最初は第1、3話を放送し、第9話より同時ネットとなる
徳島県 四国放送
香川県 瀬戸内海放送 テレビ朝日系列 当時の放送エリアは香川県のみ
愛媛県 南海放送 日本テレビ系列
高知県 テレビ高知 TBS系列
福岡県 九州朝日放送 テレビ朝日系列
長崎県 長崎放送 TBS系列
熊本県 熊本放送 1978年3月まで
テレビ熊本 フジテレビ系列
日本テレビ系列
テレビ朝日系列
1978年4月から
大分県 大分放送 TBS系列
宮崎県 宮崎放送
鹿児島県 南日本放送

脚注

  1. ^ 『必殺! CD-ROM』(NECインターチャネル
  2. ^ これは直接、同話の内容と関係が無い。菅と江幡は同話では被害者役だった。
  3. ^ 三味線を入れた箱を持ち、芸者に付き添う役。
  4. ^ 第1 - 14、17、18、20、24、25話
  5. ^ 第1 - 14、17、18、20、24、25話
  6. ^ 第1、3、8 - 10、15、17、21話
  7. ^ 第1 - 4、7 - 9、11、14、18、21話
  8. ^ 第3、5話を除く。
  9. ^ 第2、7 - 10、14、15、17、18、21 - 23、25、26話など
  10. ^ 第3、6、24話
  11. ^ 第1、4話のみ表記。
  12. ^ 第1話の脚本は当時、テレビ朝日が放送した、アメリカのテレビドラマ『ルーツ』のテーマである、黒人解放運動を下敷きにして作られた。山田誠二『必殺シリーズ完全百科』p84に記載。

外部リンク

テレビ朝日 金曜22時台(当時は朝日放送の制作枠)
前番組 番組名 次番組
新・必殺からくり人
(1977年11月18日 - 1978年2月10日)
江戸プロフェッショナル・必殺商売人
(1978年2月17日 - 1978年8月18日)
必殺からくり人・富嶽百景殺し旅
(1978年8月25日 - 1978年11月24日)