水張り

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水張り (みずばり) とは、水彩画など、水を溶媒とする絵を描くときにに歪みが生じにくいよう、一旦水に塗らした紙をパネルに張り付けるという手法である。紙が水に濡れると繊維の間に水が入って伸び、ふたたび乾くと元に戻るという性質を利用している。たとえばスケッチブックなどに水彩画を描くと、生じた紙の凹凸が完成後の絵にも残って不恰好な形となってしまう。しかし水張りした紙を利用すれば、彩色中に紙が波打って変形しても、乾かせば元に戻り、水張りしたパネルからはがせば凹凸のない面となるわけである。

紙が波打ち易い水彩画以外でも、鉛筆画・ペン画などの用紙に用いることがあり、この場合はおもに描画面の安定などを目的としている。

方法

用意するものは描画のための紙(水彩紙・画用紙ケント紙など)・刷毛・木製パネルまたはベニヤ板・水張りテープ (紙テープの裏に糊のついたもの) 以下の手順で水張りをし、完成したらナイフなどでパネルから切り離す。なお、一旦切り離した後にまた水彩絵具などで手を加えてしまうと、その部分には水張りの効果は及ばないため、完全に完成してから紙を切り離さなければならない。 以下は一般的な方法である。

紙が大きい場合

  1. 描画面よりもひとまわり大きな紙の裏面を、刷毛を使って水で濡らし、なじませる。
  2. 紙がしっとりとしたら、濡らした面をパネルにはりつける。
  3. パネルからはみ出したふちの部分を、パネルの側面あるいは板の裏面に折り曲げる。
  4. 周囲を水張りテープで固定し、乾燥させる。

小さい場合

  1. パネルよりもひとまわり小さな紙の裏面を、刷毛を使って水で濡らし、なじませる。
  2. 紙がしっとりとしたら、濡らした面をパネルにはりつける。
  3. 紙の四方を水張りテープで固定するが、このとき無理に伸ばしたり波打たないように貼り付けたりすると、最終的に隅が波打つ遠因になる。
  4. 完全に乾燥させる。


紙を濡らす手法であるが、紙全体を水に漬ける、刷毛で両面とも湿らす、片面のみ濡らすなど様々なやり方が存在する。無論どの手段をとっても水張りには問題無い。また水張りをした後に絵が完成しても、すぐに切り離してはならない。見た目がしっかりしていても、乾燥が不十分だと剥がしたその瞬間から波打ってしまうからである。そのため十分乾燥を行なってから剥がすことが望ましい。

関連項目

参考文献

  • 『アートテクニック大百科 素描・遠近法・水彩・パステル・油絵・アクリル・ミクストメディア』美術出版社 1996年
  • 『すてきな花の水彩手帖』クレア・ウェイト・ブラウン著 グラフィック社 2009年