水上の音楽

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テムズ川上のジョージ1世とヘンデル(19世紀の想像図)

水上の音楽(すいじょうのおんがく、(水の上の音楽(みずのうえのおんがく)とも): Water Music)は、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルが作曲した管弦楽曲集。

弦楽合奏オーボエホルントランペットフルートリコーダーなどからなる管弦楽編成。フランス風序曲形式による序曲と、舞曲形式を主とする小曲数曲の楽章からなり、管弦楽組曲のジャンルに属する。今日ではヘンデルの代表的な管弦楽作品の一つとして知られる。

なお、ゲオルク・フィリップ・テレマンの管弦楽組曲『ハンブルクの潮の満ち干』TWV 55:C3 も英語で"Water Music"(ドイツ語で全く同義の"Wassermusik")と称される。

作曲の経緯[編集]

ヘンデルは、1710年にドイツのハノーファー選帝侯宮廷楽長に就いていたが、1712年以降、帰国命令に従わず外遊先のロンドンに定住していた。ところが、1714年にそのハノーファー選帝侯がイギリス王ジョージ1世として迎えられることになる。

そこでヘンデルが王との和解を図るため、1715年テムズ川での王の舟遊びの際にこの曲を演奏した、というエピソードが有名であるが、最近の研究では事実ではないと考えられている。しかし現在確実とされているのは、1717年の舟遊びの際の演奏であり、往復の間に3度も演奏させたという記録が残っている。後、1736年プリンス・オブ・ウェールズの妃に決まったオーガスタを迎えるための舟遊びが催され、そこでも『水上の音楽』が演奏されているが、この曲は1717年の曲とは別のものであったらしい。現行の『水上の音楽』は、これらの舟遊びに関係して数度に分けて作曲、演奏されたものと今日では考えられている。

構成[編集]

(新ヘンデル作品全集に含まれるH.F.レートリッヒ版(1962年))

  • 第1組曲 ヘ長調 HWV 348(9曲) オーボエ、ホルン主体
    • 第1曲「序曲(ラルゴ - アレグロ)」
    • 第2曲「アダージョ・エ・スタッカート」
    • 第3曲「(アレグロ) - アンダンテ - (アレグロ)」
    • 第4曲「メヌエット」
    • 第5曲「エアー」
    • 第6曲「メヌエット」
    • 第7曲「ブーレ」
    • 第8曲「ホーンパイプ」
    • 第9曲(アレグロ・モデラート)
  • 第2組曲 ニ長調 HWV 349(5曲) トランペット主体
    • 第1曲(序曲)
    • 第2曲「アラ・ホーンパイプ」…全曲の中で最も紹介される機会の多い曲
    • 第3曲「ラントマン」
    • 第4曲「ブーレ」
    • 第5曲「メヌエット」

(第1曲・第2曲にはヘ長調で第1組曲と同編成の異稿が存在する(協奏曲ヘ長調HWV331)。元来第1組曲に含まれていたのが転用されたと考えられている。)

  • 第3組曲 ト長調 HWV 350(5曲) フルート、リコーダー主体
    • 第1曲(メヌエット)
    • 第2曲「リゴードン」
    • 第3曲「メヌエット」
    • 第4曲(アンダンテ)
    • 第5曲「カントリーダンスI・II」

1723年ごろ、11曲のパート譜が出版され、1743年にはチェンバロ編曲版(26曲)が出版された。オリジナルの管弦楽曲は一旦遺失したが、レートリッヒ版(25曲)は、これらを元に管弦楽に復元したものである。他にも管弦楽復元版が数種類存在し、20曲からなるF.クリュザンダー版、6曲からなるH.ハーティ版が知られる。

演奏時間は約45分(各27分、9分、9分)

関連項目[編集]

  • 王宮の花火の音楽」…「水上の音楽」と類似点があり、よくセットで録音される。
  • 古楽の楽しみ」… NHK-FMで放送のクラシック音楽を題材としたラジオ番組。オープニング・エンディングのテーマ曲に使用されている。

外部リンク[編集]