機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

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機動戦士ガンダム
閃光のハサウェイ
小説
著者 富野由悠季
イラスト 美樹本晴彦
出版社 角川書店
レーベル 角川スニーカー文庫
巻数 全3巻
テンプレート - ノート

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(きどうせんしガンダム せんこうのハサウェイ)は、アニメ作品群ガンダムシリーズの1つで、富野由悠季小説作品。1989年から1990年にかけ、全3巻が角川スニーカー文庫より刊行された。

本作は、アニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』とは一部描写が異なる小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の続編となっており、映像作品から直接続く物語ではないとされているが、近年では公式年表に本作の出来事が含まれている場合があるため、この設定自体があいまいになっている。

物語

あらすじ

伝説のニュータイプ戦士アムロ・レイと、人類を粛清しようとしたシャア・アズナブル。後に「第二次ネオ・ジオン抗争」と呼ばれる戦火の中、少年ハサウェイ・ノアは、その男性2人の生き様を目の当たりにした。そしてもう1人、ハサウェイの前に現れた少女クェス・パラヤは、その戦争を子供のあどけない瞳で見て感性を飽和させ、死んでいった。その戦いの中でハサウェイもまたニュータイプとして萌芽しつつあったが、その若い目と耳で初恋の少女の死を目の当たりにし、地球のために戦い宇宙の戦場で死んでいった多くの人々の魂の声を聴いた。

宇宙世紀0105年、第二次ネオ・ジオン抗争当時に少年だったハサウェイは青年となっていたが、当時から10年あまりが過ぎたこの時代でも地球連邦政府の高官ら特権階級の人々は地球を汚染し、「人狩り」とも呼ばれる強引な手段で民衆を宇宙に送り出していた。地球を私物化しつつある特権階級の専横と腐敗を知ったハサウェイは、それが「人類の可能性」に賭けたアムロ、「地球を保全しなければならない」と自ら大罪を背負おうとしたシャア、そして地球のために戦い死んでいった全ての人々の行為を無意味にすることに気付いていた。

そんな中、「マフティー・ナビーユ・エリン」を名乗る人物が私設軍を率い、腐敗した特権階級を襲撃する。マフティーの行状はテロリズムであるにもかかわらず、民衆、特に抑圧された状況が続くスペースノイドたちに受け入れられた。そしてマフティーの中には、表向きのリーダー、マフティー・ナビーユ・エリンとなって連邦政府に戦いを挑むハサウェイの姿もあった。ハサウェイはアムロから「ガンダム」を、シャアから「地球を保全すべき」という遺志を受け継ぐ戦士になる。

マフティーの討伐を命じられたケネス・スレッグ大佐は、特権階級専用往還シャトル「ハウンゼン」で地球に降下する途中、植物監察官候補として降下しようとしていたハサウェイと、このシャトルには似つかわしくない少女ギギ・アンダルシアと出会うが、大気圏へ突入し始めたとき、突如マフティーを名乗る集団にハイジャックされる。機内にはアデレートで行われる連邦議会に出席するため、連邦政府高官らが多数搭乗していた。

マフティー動乱

第二次ネオ・ジオン抗争以後大きな戦乱の無い時代、加速度的に進む地球連邦の腐敗に危機感を持った人々によって結成された秘密結社「マフティー・ナビーユ・エリン(通称マフティー)」によって引き起こされた一連の紛争。マフティーは連邦政府の圧政下にあったスペースノイドの大きな支持を得るが、実質的指導者のマフティー・ナビーユ・エリンことハサウェイ・ノアが捕縛・処刑されたことで組織は瓦解し、宇宙世紀0105年5月1日にマフティー動乱は終結した。それ以降、20年近くもの期間にわたり、大規模な反連邦政府運動は鳴りを潜めることとなった。

登場人物

声の出演は『SDガンダム GGENERATION』シリーズなどによる。

主要キャラクター

マフティー・ナビーユ・エリン
声 - 佐々木望
本作の主人公で、マフティーの表向きのリーダー。正体は、ブライトの息子ハサウェイ・ノア
ギギ・アンダルシア
声 - 林原めぐみ(『G-GENERATION F』)/ 川上とも子(『GGENERATION SPIRITS』以降)
本作のヒロイン。大保険会社の創業者で大富豪のカーディアス・バウンデンウッデンの愛人。透き通るような白い肌と金髪を持つティーンエイジャー。カーディアスよりも一足早くホンコンのアパートメントに向かうためハウンゼンに搭乗し、そこでハサウェイやケネスと出会う。勘がよく、予言めいたことをいい、未来のことを当てる不思議な能力があった。ケネスにその才能を見込まれ、ホンコンに一度戻ってからもしばらくは彼の元に留まり、キルケー部隊の「勝利の女神」として扱われていたが、エアーズ・ロックにて自分の意思でハサウェイの元に渡る。その後はケネスのスパイではないかと疑われつつも、アデレートの爆撃までマフティーと行動を共にした。そしてアデレード以後、ケネスとハサウェイ、二人の男の闘いの行く末を見届けた後は、ケネスと共に日本の「キュシュー」へと渡った。ケネスやレーンが自覚したように、彼女を擁する組織の作戦が妙にうまくいったり、度々未来を予知したかの様なことを言って、キルケー部隊の危機を救ったりなどするが、これらが彼女のどういう能力によるものなのかは劇中では明らかにされなかった。本人曰く、「できてしまうことなのだから説明できない」とも。
ケネス・スレッグ
声 - 立木文彦(『GGENERATION F』以降)/ 大塚明夫(『サンライズ ワールド ウォー from サンライズ英雄譚』)
地球連邦軍所属。階級は大佐。指揮を執るときに乗馬鞭を振るう独特の癖がある。対マフティー部隊である地球連邦軍キンバレー部隊(後に彼自身によって「キルケーユニット」に改名)の司令官着任のため、ハウンゼンで地球に降下中ハサウェイ、ギギの二人と出会う。政府高官が多数搭乗するハウンゼンがハイジャックされるも、ハサウェイと協力しハイジャッカー(声:柴本浩行)を鎮圧した。この事件をきっかけにケネスはハサウェイを評価し、友人として親交するようになる。マフティーとの戦いの中、ハサウェイがマフティー・ナビーユ・エリンであることに気づき、苦悩しながらもΞガンダムのアデレード襲撃の阻止に成功。ブライトにマフティーの正体がハサウェイであることを隠すため、自らマフティー処刑の指揮を執るが、彼の努力は上官の裏切りによって無駄となってしまった。最終的にケネスは地球連邦軍を自主退役し、ギギと共に日本のキュシューに渡る。そして彼女に、いつかハサウェイやアムロ・レイのようなニュータイプと出会った時のため、彼らが活躍できるような組織を立ち上げたいと語った。
レーン・エイム
声 - 橋本晃一(『GGENERATION F』)/ 水島大宙(『GGENERATION SPIRITS』以降)
地球連邦軍所属。階級は中尉。キンバレー部隊(後のキルケーユニット)に所属する若きパイロットで、ペーネロペーに搭乗し、ハサウェイの前に立ちはだかる。優秀だが実戦経験が少なく、初戦では大量のミサイルの直撃を受けて海上に叩き落とされたり、ハサウェイの挑発に乗ってみすみす人質を解放してしまうなどの失態を見せる。
しかし、Ξガンダムの兄弟機ともいえる最新鋭のペーネロペーを乗りこなし、搭載されているサイコミュ兵器も十分に使いこなしていた。レーンに生来のニュータイプの素質があるのか、強化処置を受けていたのかは作中で明言されていなかったが、強化人間に見られるような情緒の不安定さは見られなかった。
最終決戦であるアデレートの攻防戦では、再びハサウェイとMS同士で対峙する。この頃にはレーンもハサウェイに食い下がる戦いぶりを見せるようになり、超々高速の空中MS戦を長時間にわたって展開する。次第に技量と経験の差が見え始めレーンは圧倒されるが、その中でケネスの戦術を成功させるという任務を果たしていた。レーンは、Ξガンダムをあるポイントまでおびき寄せ巨大なビームバリアを起動、Ξガンダム捕獲に成功する。直後に「マフティー」逮捕のためΞガンダムのコクピットを開けるが、その時初めて、その正体が上司であるケネスの友人で、自分も何度か顔を合わせていたハサウェイであることを知る。
この事態に、自分では処理しきれないと困惑したレーンは、しばらく天を仰いで呆然としていた。
ケネスが退役する頃に大尉に昇進した。

マフティー

指揮官

イラム・マサム
声 - 山崎たくみ
マフティー実戦部隊の作戦担当メンバー。ハサウェイの副官的存在。
ブリンクス・ウェッジ
マフティーの太平洋上における移動拠点となる鉱物運搬船ヴァリアントの艦長。
ビノエ・ハーバーの補給任務直後にペーネロペーによってヴァリアントを撃沈され、戦死。

パイロット

エメラルダ・ズービン
声 - 鵜飼るみ子
メッサー1号機のパイロット。豪快な性格の女性で、いざ決断すれば男よりも思い切りがいい。レイモンドとはメンバー公認の恋人同士の仲。エアーズ・ロック付近で合流してきたギギとハサウェイの間を取り持つが、二人の互いの間の溝を埋めることは出来なかった。アデレートでの連邦議会襲撃作戦に於いてレーンのペーネロペーによって戦死。
ガウマン・ノビル
声 - 竹村拓
メッサー2号機のパイロット。30歳前後の男で、長過ぎる顎を気にする癖がある。ダバオのタサダイ・ホテルに軟禁状態となったハサウェイを逃がすための陽動作戦に従事しダバオの市街地を襲うが、ペーネロペーにより撃墜・捕獲され、人質となる。初出撃となったΞガンダムによって救出され、以後の作戦に於いてもパイロットとして参加する。アデレートに於ける連邦議会襲撃作戦失敗後、消息は不明。
フェンサー・メイン
メッサー3号機のパイロット。
ゴルフ
メッサー4号機のパイロット。アデレートでの連邦議会襲撃作戦で戦死。
ハーラ・モーリー
メッサー6号機のパイロット。エアーズ・ロック付近の戦闘で死亡。
ロッド・ハイン
メッサー7号機のパイロット。エアーズ・ロック付近の戦闘で死亡。
レイモンド・ケイン
声 - 藤本隆行
ギャルセゾン1号機のパイロット。
シベット・アンハーン
声 - 田坂秀樹
ギャルセゾン2号機のパイロット。
ヘンドリックス・ハイヨー
ギャルセゾン3号機のパイロット。
カウッサリア・ゲース
ギャルセゾン4号機のパイロット。

その他の関係者

クワック・サルヴァー
"インチキ医者"というような意味を持つ偽名を名乗るマフティーの黒幕。連邦政府と連邦軍内部、アナハイム・エレクトロニクス社に太いパイプを持つと言われる大物の政治家らしいが、その正体は作中でも明らかにされていない。
ケリア・デース
鬱病に陥ってしまったハサウェイを支えてきた女性で、アマダ・マンサン教授を通じクワック・サルヴァーを知りマフティーとして起ったハサウェイに付き合う形で自身もマフティーのメンバーとして参加する。マフティーの大義へと自己を没入させていくハサウェイとの間に徐々に溝を深めるが、彼がギギと出会うことによってその隔たりが決定的となり、最終的に配置換えを申し出て自ら彼の許を離れる。
ジュリア・スガ
マフティーの女性メカニックマン。洋上を航行するヴァリアントの暑い船内に於いてトップレスで仕事をしても一向に気にかけない豪快な気質を持つ女性。そういう性格からかケリアとは反りが合わないようだが、彼女のハサウェイに対する気持ちには理解を示す。
ビノエ・ハーバーの補給任務直後にペーネロペーによって乗艦のヴァリアントを撃沈され、戦死。
チャチャイ・コールマン
ヴァリアントの通信担当。メナドのアマダ・マンサン教授から送られたギギのハサウェイへのメッセージを彼に届ける。字が汚いらしい。
ビノエ・ハーバーの補給任務直後にペーネロペーによって乗艦のヴァリアントを撃沈され、戦死。
ミツダ・ケンジ
マフティーの連絡員。
ミヘッシャ・ヘンス
マフティーの連絡員。
ファビオ・リベラ
声 - 望月健一
オエンベリ軍のリーダー。マフティーを騙って決起した。後にハサウェイに協力する。

地球連邦軍

エイレン
グスタフ・カールのパイロット。
オノレ・バレストリエーリ
外宇宙軍省の議員。
キンバレー・ヘイマン
階級は大佐。ケネスの前任のキンバレー部隊の司令官。文官上がり。ケネスの着任を目前に控え、その焦りからオエンベリに集結していたマフティーを名乗る私設軍隊に対して、モビルスーツによる虐殺を指揮する。
その後、Ξガンダムを手に入れた本物のマフティーであるハサウェイ達によって捕虜とされ、アデレート空爆の第二波の前にギギと共に解放される。
シーゲン・ハムサット
ラー・カイラムの副艦長。
ブライト・ノア
ラー・カイラムの艦長。ハサウェイの父親。
メジナウム・グッゲンハイム
宇宙軍幕僚長官。階級は大将。マフティーの正体がハサウェイであることをリークした張本人。

地球連邦政府

エインスタイン大臣
ハウンゼンに乗り合わせた閣僚の一人。
マクガバン
文化教育振興大臣。ハウンゼンに乗り合わせた閣僚の一人。

刑事警察機構

ハンドリー・ヨクサン
刑事警察機構長官。
ゲイス・H・ヒューゲスト
調査局部長。

民間人

アマダ・マンサン
ハサウェイの植物監察官の教官。ハサウェイは、彼を通じてマフティーと接触し、その活動にのめりこんでいった。劇中ではホンコンのギギから、ハサウェイに対しての連邦議会の開催場所の伝言を受ける。
ミライ・ノア
声 - 白石冬美
ブライトの妻で、ハサウェイの母。
メイス・フラゥワー
ブロンドの美人。ハウンゼンの客室乗務員をしており、ハイジャックに巻き込まれる。ケネスが自宅の番号を調べ上げて誘ったものの、その頃同じく彼の元にいたギギによって二人は破局させられる。ケネスは、「日本に着いたらよりを戻すよう言ってみる」と言っていた。

その他の人物

クェス・パラヤ
声 - 川村万梨阿
かつてハサウェイが出会ったニュータイプの少女。第二次ネオ・ジオン抗争にてハサウェイに殺されており[1]、彼の妄想の中に度々登場しては責め立て罵倒する。

登場兵器

モビルスーツモビルアーマーなど機動兵器に分類されるものは

それ以外のものについては

マフティー
地球連邦軍(キンバレー部隊/キルケー部隊)

MSデザイン変更

Ξガンダムをはじめとする本作のMSは、すべて森木靖泰がデザインしている。

後年のゲーム『SDガンダム GGENERATION-F』にて本作のMSが登場することになり、その際に機体のデザインが一新された。Ξガンダムとペーネロペーは元デザインも担当した森木が、メッサーとグスタフ・カール(およびドーラ・カール)は藤田一己がそれぞれリデザインしている。そのうち、グスタフ・カールはOVA版『機動戦士ガンダムUC』にも登場するが、『GGENERATION-F』からさらにリデザインされている。

Ξガンダムとペーネロペーは、本体のディテールアップや若干の形状変更、デザイン画が存在しなかった各種武装(ファンネル・ミサイル)など、比較的細かな部分に手が及んでいる。

既刊一覧

  • 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(上)(角川スニーカー文庫[2] 1989年2月28日刊行 ISBN 4-04-410131-0
    • カバー・本文イラスト:美樹本晴彦
    • 口絵イラスト:美樹本晴彦・森木靖泰
  • 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(中)(角川スニーカー文庫 1990年3月1日刊行 ISBN 4-04-410132-9
    • カバー・本文イラスト:美樹本晴彦
    • 口絵イラスト:美樹本晴彦・森木靖泰
  • 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(下)(角川スニーカー文庫 1990年4月11日刊行 ISBN 4-04-410133-7
    • カバー・本文・口絵イラスト:美樹本晴彦

商品化

  • #0025 RX-105 Ξ GUNDAM [RX-104FF PENEROPE] Ξ(クスィー)ガンダム
フィギュアシリーズ『GUNDAM FIX FIGURATION』より発売。外装の組み換えによりオデュッセウスガンダムおよびペーネロペーに換装が可能。また、オデュッセウスガンダムから分離したペーネロペーユニットはフライトフォームに合体変形もできる。ガレージキットを除き、当商品が初めて立体化となった。2005年5月発売。
  • Ka signature ROBOT魂 <SIDE MS> Ξ(クスィー)ガンダム
魂ウェブ商店限定。2013年6月発送。
  • Ka signature ROBOT魂 <SIDE MS> ペーネロペー
魂ウェブ商店限定。2015年8月発送。
  • Ka signature ROBOT魂 <SIDE MS> Ξ(クスィー)ガンダム マーキングプラスVer.(マイクロ・ミサイル・ポッド装備)
魂ウェブ商店限定。2016年2月発送。
  • Ka signature ROBOT魂 <SIDE MS> ペーネロペー マーキングプラスVer.
魂ウェブ商店限定。2015年9月発送。
  • BB戦士 No.386 RX-105 Ξガンダム
2013年12月発売。

登場するゲーム作品

脚注

  1. ^ この描写は、アニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』ではなく、小説版『ベルトーチカ・チルドレン』のもの。映画ではチェーン・アギに殺害されている
  2. ^ 初版刊行当時は角川スニーカー文庫の前身である「角川文庫・青版」として刊行された。