機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還

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機動戦士ガンダム MSV-R
ジョニー・ライデンの帰還
ジャンル ガンダム
漫画
作者 漫画:Ark Performance
原作:富野由悠季
原案:矢立肇
メカニックデザイン:大河原邦男
出版社 角川書店
掲載誌 ガンダムエース
レーベル 角川コミックス・エース
発表期間 2010年6月号 -
巻数 既刊12巻(2016年3月現在)
テンプレート - ノート

機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』(きどうせんしガンダム エムエスブイ‐アール ジョニー・ライデンのきかん)は、Ark Performanceによる日本漫画作品。原作:富野由悠季、原案:矢立肇、メカニックデザイン:大河原邦男角川書店の漫画雑誌『ガンダムエース』にて2010年6月号より連載されている。

概要

雑誌「ガンダムエース」にて連載しているメカニックデザイン企画『MSV-R』を題材にしたMSV公式続編である[1]。「第二次ネオ・ジオン抗争」前夜である「宇宙世紀0090年」を舞台に、歴史に埋もれた『MSV-R』に登場するメカニックの解説と模型企画『モビルスーツバリエーション(MSV)』のエースパイロット「ジョニー・ライデン」の行方と、所属していた「キマイラ隊」の解明を織り交ぜて描いた内容となっている。

なお、同作者の漫画『機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画』、『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』とは設定を共有している。

あらすじ

一年戦争(宇宙世紀0079年)で散逸した情報や資料を、収集編纂し保存する組織である地球連邦政府Federation Survey Service(略称FSS)に所属しているMSパイロット、レッド・ウェイラインは、シミュレーションでのMS戦闘データ調査中に、撃墜したはずの「MS-14A ゲルググ」が青く変色し「我々は・・・あなたの帰還を歓迎する・・・ジョニー・ライデン」との通信を受けるとともに撃墜される。シミュレーションを精査したが、データ中にその青いゲルググは存在しないものだった。不審に思ったレッド・ウェイラインはチームのリミア・グリンウッドと共にジョニーのことを調べ始めるが、FSSやキマイラ隊の謎に包まれていく。

そんな折、レッド・ウェイラインは「MS-06G 陸戦高機動型ザク」の性能調査中にジャコビアス・ノードの企みによりゲリラの戦闘に巻き込まれ、更にキマイラ残党のユーマ・ライトニングが駆る現実の「青いゲルググ(MS-14BR)」の襲撃を受けるが、レッド・ウェイラインは操縦経験が浅いはずのジオン軍製の「MS-06G」を巧みに操ってそれを凌いだ。

この事件により、かつての仲間であるキマイラ隊の残党達から、レッド・ウェインラインはジョニー・ライデンである可能性が高いと判断され、連邦議会議長ゴップの養女となっていたキマイラ隊残党であり強化人間のイングリッド0の襲撃、ユーマ・ライトニングや連邦軍特殊部隊「ナイト・イェーガー」の戦闘に巻き込まれる。

様々な勢力が絡み合う中、ユーマ・ライトニングと対立し、次期首相と名高い首相補佐官オクスナー・クリフの猟犬と呼ばれる「民間軍事会社テミス」の社長ジャコビアス・ノードは、「FSS」にてレッド・ウェインラインとリミア・グリンウッドに自分もキマイラ隊の残党であること、キマイラ隊の真実を証言し、解体された今は既に探るようなものは何も無いと告げて手を引くことを求める。

しかし、ジャコビアス・ノードは宇宙を彷徨うキマイラ隊のMSの製造プラント船「ミナレット」の航路を唯一回析できる「ザンジバル級 サングレ・アスル」をジャブロー基地跡に秘匿していた。

地球連邦政府の「首相補佐官」、「連邦議会議長」、勃興しつつある「新生ネオ・ジオン」、そして「キマイラ隊」の残党達は、「サングレ・アスル」、「ミナレット」、更にはミナレットから起動される「ザビ家の復讐装置」、そしてその鍵となる「ジョニー・ライデン」を求め更なる政争、紛争をひき起こすことになる。

キマイラ隊

キマイラ隊の概要

  • ジオン公国軍突撃機動軍司令キシリア・ザビ旗下の同軍特別編成大隊。「ザンジバル級改 キマイラ」を旗艦とし、「MS-14S/A ゲルググ」や「MS-14C ゲルググキャノン」を改修・改造したいわゆる『MSV群』を擁していた。
  • 各部隊の核であるエースパイロットを集めて編成し、機材・サポート要員に至るまで最高のものを結集した部隊でありながら、戦線で活用されず温存され続けたため、一年戦争において「最も有名な部隊」の一つでありながら「最も謎の多い部隊」とされ、「ザビ家の財宝を守護していた」とも噂された[1]。結果的には「ザビ家の復讐装置」をも守護していた。
  • ジャコビアス・ノードによる作中の証言では、創設期には大隊編成に満たない規模であり、末期は大隊編成を超す規模であったため「特別編成大隊」と呼ばれている[2]
  • 大きく分けて、中核となるエースパイロットで構成される「MS隊」、母艦・支援艦を含む「艦隊」、MS隊の予備ともされる「艦隊直衛MS隊」、MSの製造プラント船・ミナレットを含む「技術部隊ヒュドラ」の4隊で構成されていた。
  • 隠されたキマイラ隊設立の真の目的はキシリア傘下であった「シャア・アズナブル大佐が率いるニュータイプ部隊」の反乱に備える、キシリア自身の「オールドタイプによるカウンターニュータイプ部隊」であった。そのため、最高のパイロット・装備・サポート要員以外に、ごく初期のタイプとはいえ強化人間(ユーマ・ライトニング、イングリッド0等)も配属されていた。
  • ア・バオア・クー防衛戦では終盤に部隊内で意見の対立が起こり、地球連邦軍の艦船を巻き込んで「ザンジバル級改 キマイラ」と「ザンジバル級 サングレ・アスル」との間で戦闘が行われ[3]ア・バオア・クー空域を離脱、最終的にオクスナー・クリフ大佐旗下のルナツー部隊に包囲されて投降した[2]。この時、ユーマ・ライトニングとジョニー・ライデンはMS戦を繰り広げ、負傷したジョニー・ライデンはウェイライン隊に囲まれて戦闘の末に拿捕された[2]

ミナレット

  • キマイラ隊技術部隊ヒュドラのMS改修専用艦(巨大プラント船)。ジオニック社ツィマッド社MIP社のトップエンジニア、エースメカニックが出向し乗り込んでいた[2]
  • 技術部隊ヒュドラは「キマイラ隊の肝」といわれ、特にミナレットはCAD/CAMシステムを高度に発展させた「設計支援システム」により、各エースパイロットの個別要望によるカスタマイズも数日で実物を完成させるという高レベルの技術力、生産力を有し、1隻でジオン公国の『MSV群』を生み出す改修・改造システムの一端を担っていた[2]
  • 技術部隊ヒュドラのMS開発研究技術の遺産は戦後10年を経てもなお、他のより大きく進んでおり、戦後ジオン公国系のメーカーが地球連邦政府、アナハイム・エレクトロニクスに開示した開発データは意図的に分割されたため、全てが揃っているのはこの「ミナレット」だけといわれる[4]
  • 内部は物理的・データ的問わず細かくアクセスを制限されていて、その全貌を知るのは大隊の編成責任者であった「ヒュー・マルキン・ケルビン大佐」、MS隊指揮官の「ジョニー・ライデン少佐」、「エイシア・フェロー船医長」の三名のみであった[4]
  • 現在は無人のまま自動航行で宇宙を周回しており、その航路パターンは「ザンジバル級 サングレ・アスル」に搭載された航路検索システムでなければ突き止められない。

ザビ家の復讐装置

  • ジオン軍が開発した、旺盛すぎる繁殖力で他の生態系を破壊する環境破壊兵器「アスタロス」(機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…に登場)をスペースコロニー内部に対して散布・実行するシステム。ミナレットから起動される。
  • オクスナー・クリフはキマイラ隊の接収時に実際に起動確認画面を見てその存在を知っている。また、旧ジオン公国の上層部であったホルスト・ハーネスもその存在を知っている。

テミス

  • ジャコビアス・ノードが社長を務める民間軍事会社。キマイラ隊を捕獲したオクスナー・クリフ首相補佐官(初代FSS会長)のバックアップを受けている。
  • キマイラ隊由来の部隊でありその中核も旧「キマイラ隊MS第一小隊」であるが、それ以外にも元連邦・元ジオン、元ティターンズなどの構成員の寄り合い所帯となっている。練度は高くオクスナー・クリフから回されてくる装備(旧公国製やティターンズ系の払い下げ品)もあって一個中隊規模の戦力を維持し、表の業務以外に「ザンジバル級 サングレ・アスル」を守護している。
  • MS-14C-1A ゲルググキャノンRGM-79Q ジム・クゥエルMSM-07N ラムズゴックなどを所有。
  • テミス(THEMIS)とはギリシャ神話の「法と掟」の女神であり剣と天秤を持った姿で表現され、社のロゴもこれがモチーフにされている。古代ギリシア語では「不変なる掟」の意味

茨の園

  • サイド5にある破壊されたスペースコロニーや撃沈された戦艦などの残骸を中心に建造された基地。かつてはデラーズ・フリートが軍事拠点としていた。
  • デラーズ・フリートと通じていたアナハイム社常務の自殺後に常務の所持品から座標データが発見され、以後、アナハイム・エレクトロニクス社が秘密の運用テストエリアとして管理していた。
  • アナハイム社主計局次長フークバルトから、軍事拠点を欲していたユーマ・ライトニング、ジーメンス・ウィルヘッドら「キマイラ隊」残党に提供された。

Federation Survey Service

略称FSS。戦史や戦争によって散逸したデータ収集と資料の編纂を行う一種の外郭団体[5]。公的機関や民間に対しての公開可能なレベルの調査資料の提供や、一般公開可能な資料に基づいたドキュメンタリー番組の制作・それらのソフト販売も行う[1]。レッド・ウェインラインたちの所属するチームは、調査部第一課に属し、特にモビルスーツを始めとした機動兵器の調査を行っている。

FSSの経緯

  • 宇宙世紀0080年の一年戦争の終結後、連邦軍が卓越したジオン公国軍の技術を接収することを目的に設立された「兵器群調査委員会」を母体とする[3]。初代委員長は、オクスナー・クリフ大佐(1年戦争においてキマイラ隊を捕獲した)。
  • 宇宙世紀0082年、調査規模が当初の想定を上回った為、組織の拡充が行われ「Federation Survey Service」と改称されて、「第一次FSS」に移行した[3]
  • 宇宙世紀0084年、旧公国軍と連邦軍のモビルスーツバリエーションの発掘、分析、体系をまとめた「Action Graphic」を発表し、その成果により組織拡大が行われ「第二次FSS」に移行した。この時、スペースノイドとの融和政策の一環として戦史調査等が共同事業化され、ジオン共和国との人材交流プログラムが発足した[3]。(宇宙世紀0086年にリミア・グリンウッドが出向してきたのもその流れ。)
  • 宇宙世紀0089年より、新たに一年戦争当時に散逸した資料を収集・検討し、その編纂・保存する事業を連邦政府および連邦軍より委託され、その事業に関しては最大限の権限を保証されている。

FSSの組織概要

  • FSS代表:ジル・ブロッケン・フーバー。監査部(監査役員10名)、財務部、調査企画部、実行関係部署から組織されている[3]
  • 実行関係部署は、調査部、資料管理、保安、広報(代表:リバー・コーナー。ソフト開発・販売などを行う)、総務であり、その調査部に属する調査チームは4名から成り、現在(宇宙世紀0090年)16チームが編成されている[3]
  • 予算は連邦政府議会から捻出されているが、それ以外にも様々な個人・団体からの寄付を受けており、大口の団体にはジオン共和国そのものや、双方の政治家も含まれている。
  • 人員の内の約10%は幽霊役員とも呼ばれる軍部を始めとした組織からの天下りであり、それらのコネもあって組織的な保護や便宜をはかられている。その引き換えとして様々な、公にできるものや極秘資料を含め記録保管庫として利用されている。保管されている極秘資料を全て公開した場合、連邦政府が崩壊するとも言われている。

FSS報告書「MOBILE SUIT PROFILE」

各巻にはFSS報告書が挟まれている。

ウェイライン隊

  • 一年戦争末期、ジョニー・ライデンが搭乗する「MS-14B 高機動型ゲルググ」と交戦・捕獲した連邦のMS部隊。この時、ウェイライン隊は壊滅寸前にまで追い込まれた。隊長はウェイライン少尉(後のFSS会長)、「RGM-79KC ジム・インターセプトカスタム」及び「RGM-79HC ジム・ガードカスタム」で編成されている。
  • 交戦時のジョニー・ライデンはユーマ・ライトニングとの戦闘でMS、パイロット共に深手を負った状態であった。

登場人物

FSS

レッド・ウェイライン (Led Wayline)
本作の主人公。FSSに所属するテストパイロット。立場的には連邦軍からの出向人員。ルナツーにおける「FA-78-1B フルアーマーガンダム(タイプB)」のデータを使用したシミュレーション中に何者かの接触を受け、一年戦争時のジオン軍エースパイロット「ジョニー・ライデン」の記録を追うことに。やがて、彼自身がジョニー・ライデン本人なのではないかという疑いを、周囲から抱かれるようになっていく。
U.C.0056年生まれ(34歳)、北米オハイオ出身で母親も存命、一年戦争中の所属などの軍歴もハッキリ残っていると言い、本人もそれを疑っていない様子。ただし作中では、当時のデータの多くは戦争で消失しており、それ自体が決定的な証拠とは言えないことも示唆されている。
名前は「Red(赤)」ではなく「Led(Leedの短縮形、“導く、導かれる”の意)」で、「よく赤いヤツの方に間違えられる」とは本人の弁。それを快く思っていないらしく、最近は自身をジョニー・ライデン呼ばわりする人間を誰彼かまわず怒鳴ったり殴ったりしている。そんな短絡的に見える彼だが、時折一介のパイロットとしてはかなり深く、広い見識を披露する事もある。ただしそれは、本人に言わせると「一年戦争で死に掛けた結果、多少は物を考えるようになった」だけとのこと。
本人は「ジオン系の機体は歩かせるのが精一杯」だと主張していたが、危機に陥った際には知らない筈の「FCS(火器管制システム)の手動操作による設定変更」を無意識に行い、苦手な筈の射撃でも神業を見せ、周囲の人間はおろかレッド本人にさえも疑念を抱かせた。また後にゴップ議長がレッドの「FF-X7Bst PLAN004 コア・ブースタープラン004(紅塗装)」操縦データを秘密裏に入手し、過去のジョニー・ライデンの操縦テレメトリーと比較検証した結果、「89.972%」の一致を見たことがイングリッドへ告げられている。
連邦に引き渡されれば十中八九研究所送りになるユーマに仏心を出したリミアにせっつかれて彼に逃亡を促し、それを「追跡(実質は同行)」することでジャブローを目指す。その際、ユーマが手配した「ユーコン型潜水艦」と、その内部に秘匿されていた「紅いゲルググ(MS-14BR 高機動型ゲルググ改)[6]」など、呼び集めた戦力全てを委譲された。ジャブロー戦にてイングリッドと対峙した際には、彼女の搭乗機に搭載されていたサイコミュの影響で「知らないはずの記憶」を垣間見て戸惑いを見せた。その後、リミアの危機やカリフォルニアベースでの会談に際しては「自身がジョニー・ライデンであること」を肯定するかのような態度をとったが、本人は「自分が“ジョニー・ライデン”として振舞うことで皆が納得するなら、それも良い」とフーバーに述懐している。
フーバーによると、10年前にジョニー・ライデンを捕らえ、収容された病院船が戦闘で被弾。彼を収容したブロックは辛うじて無事だったが、収容者が全員意識不明だったことも含めて、個人を特定する方法が無くなっていた。レッドはその中でもキマイラ隊から回収したデータや動態反射から92%(フーバーは自身の感覚から+7で99%)の確率でジョニーと判断された。
強化人間であるユーマやイングリッドは彼がジョニー・ライデンであることに疑いを抱いておらず、またジョニーの腹心であったジャコビアスも、半ばそれを確信している様子を見せている。
リミア・グリンウッド (Rimia Greenwood)
サイド3ジオン共和国)出身で、U.C.0086年に人材交換プログラムの一環でやって来た工科大学院生[7]。レッドの所属するチームの技術担当兼エンジニア。頭脳労働専門なためか、甘味と食事に関しては並々ならぬこだわりがある。
ジオンマークが入ったハロを所有。それに記録していたデータや、度々引き起こされるトラブルから「レッドの正体」に関心を持ち始め、調査テストが認められたコア・ブースターをメンテする際にはジョニー・ライデン専用機のように紅く塗ったりするなどして彼をからかっていた。そんな半面、レッドのことを憎からず思っているようで、環境改善プラントで保護されたユーマにインタビューをした際には、直観の働く彼にレッドとの仲を勘繰られた挙句「姐さん」と呼ばれる様になってしまい憤然としていた。
ジャブロー戦では、三つ巴の状況の中でユーマと共にジャブロー内部のネットワークと繋がった施設を探すための偵察に出たのだが、その先でミナレットへの道標となる船「サングレ・アスル」を発見。争いの火種であるそれを戦場から遠ざけるため、自ら無人の船に乗り込み打ち上げを実行、そのまま宇宙へと飛び立ってしまった。
アマリアという姉がおり、今でも頭が上がらない。終戦時に行方不明となった一年戦争時のエースパイロット・ロイ・グリンウッド(MSVの登場人物)の娘である。また、義父であるレオポルド・フィーゼラーからは、電子ロックのキーコード解析機などの扱いも習っている。
リミアが一年戦争終戦の日にズム・シティ(ジオン公国首都)で体験したエピソード(防空壕に避難させられ、とても寒かった)は、『機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画』で描かれた事件に基づいている。
アシュレイ・ブラウン・ブランドン (Ashley Brown Brandon)。
通称・ボブ(リミアとの初対面時に第一印象のみで決定した)。レッドやリミアの同僚で、リミアには顎で使われている。元は軍属で多少肥えた体の割りに身のこなしは早い。一年戦争当時はまだ大学生だった。ジャブロー戦以降は部隊の先任下士官的な立場として行動する。
アイシュワリヤ (Aishwaya)
FSSに所属するコンピュータ関連の専門家。ストレートのロングヘアを流して眼鏡をかけた褐色の女性で、FSS内でも指折りのハッカーなのだが、少々天然が入っている。作戦中、上司のフーバーからのメールが届いても、あえて「見なかった」ことにして笑顔で自身の希望をゴリ押しするなど意外と逞しい様も見せる。ジャブロー戦の最中、サングレ・アスルの打ち上げを止められなかった代わりに目的座標を書き換えてしまった。この時点でサングレ・アスルがどこに向かうかは彼女しか知らない。
ジル・ブロッケン・フーバー (Jill Brocken Hoover)
FSS会長。一年戦争当時は連邦軍MS部隊の大隊長で、レッドの元上官を自称している。実は一年戦争で「RGM-79KC ジム・インターセプトカスタム 」に搭乗しジョニー・ライデンの「MS-14B 高機動ゲルググ」と戦い、負傷していた彼を捕らえた「ウェイライン隊」の隊長。現在の名は偽名、あるいは変名で後述のディドコットからは「アルベルト」とよばれている。
陽気でおおらかな性格だが、昔から軍内部の裏道に詳しく、それを悪用して様々な便宜を図っていたらしい(主に補給物資の横流しに関与していたとのこと)。「情報屋」を自称し、連邦の技術・機材を流用したと思われる“謎のゲルググ”の調査を進めるリミアに、過去の戦争で壊滅した(記録上は「MIA(行方不明)」扱いで、なおかつ所属隊員の個人情報が紛失している)部隊になりすます「ニセ部隊の絡繰り」に関する裏話を教授した。
社員の独走もかなり多目に見ていたが、ジャブローでの紛争が始まるとさすがに堪忍袋の緒が切れたか、自らも腰をあげ、ジャブローへの足としてアーガマ級強襲巡洋艦ニカーヤを引っ張り出してくる。ジャブローでは「RGM-79KC ジム・インターセプトカスタム」とΖガンダム用のメガランチャー(動力はニカーヤから)を用いて、テミスのラムズゴック隊と戦うクリストバル、エメの援護射撃を行った。
スコット・アンデルセン
リミアとは別のチームに属しており、整備マニュアルなど文書データ等の調査・収集を担当。FSSの裏にも通じている。スキンヘッドと染めた顎鬚が特徴。
本名は「スコット・ウォレス」。元キマイラ隊の主計官であり、今でも元キマイラ隊の面々やジオン共和国下院議員レオポルド・フィーゼラーとも繋がっている。リミアの父を「隊長」と呼んでいることから、彼もかつてはカラカル隊に所属していた模様で、そのためかリミアに対してはかなり慇懃な態度で接し、姫と呼んで敬う様子を見せている。ジル・ブロッケン・フーバーには本名と素性を知られている様子。
地球に降りてきたエメとクリストバルにMSとジャブローまでの足を都合するが、堪忍袋の緒が切れたフーバーに現地まで付き合わされることになる。

旧キマイラ隊関係者

ジョニー・ライデン
本作の中心人物。元キマイラ隊、階級は中佐。元々は『MSV』の登場人物であり、一年戦争当時、ジェラルド・サカイトーマス・クルツと共にキマイラ隊に配属された。本作ではこれまでの「ジョニー・ライデンを描いた諸作品」を前提とした上で「様々な説が記録に残る謎の人物」とされており、主人公のレッド・ウェイライン(参照:#FSS)と同一人物なのではという疑念を抱かれている。作中にはレッドを含めた12名の「ジョニー・ライデン候補」が存在していたが、既に5人までが処分済みとなっている。
ジャコビアス・ノードによると「真紅の稲妻」の異名に違わず、常に最速にして最短経路の行動をとると判断されているなど、一年戦争から10年を経てもキマイラ隊メンバーからの信頼は篤い。また、「腹芸は到底不可能なタイプ」とのことで、外科手術などで如何に外見を変えても、その身に纏った気配は誤魔化し様がなく、キマイラ隊のメンバーなら直接会えば判るだろうとのこと。ジョニー・ライデンの部下であるユーマやイングリッドの現在の言動から、リミアは彼が「底抜けにデカイ器か、我慢強さの持ち主」だったんじゃないかと推測している。
巨大プラント船「ミナレット」に保管されたデータの全貌を知る3人のうちの1人。
ヒュー・マルキン・ケルビン
「ジオン公国突撃機動軍」情報統括局局長。階級は大佐。
キマイラ隊の編成責任者で、「オールドタイプによるニュータイプ殲滅部隊の研究と開発。そしてその運用」という構想からキマイラ隊設立をキシリア・ザビに上申した。巨大プラント船「ミナレット」に保管されたデータの全貌を知る3人のうちの1人。ジーメンスの言によれば、既に死亡している。
レッドの垣間見た記憶では、エイシアの死因をジョニーとしたり、ユーマにアスタロスのサンプルを持ち出させたりしたことから、彼自身にも何らかの野心があった模様。
エイシア・フェロー
元キマイラ隊の船医長。現在でもキマイラ隊関係者の間で度々名前が出てくる女性であり、ヒュー・マルキン・ケルビン大佐、ジョニー・ライデン少佐と並んで部隊内でもトップ3に入る立場の人物であった。ユーマ曰く「ジョニーの良い人」。巨大プラント船「ミナレット」に保管されたデータの全貌を知る3人のうちの1人。ジーメンスやユーマの言によれば既に死亡しているとのことで、レッドの垣間見た記憶では、沈む寸前の艦内で「グリモワール」と呼ばれるとあるプログラムの解除を決死の覚悟で敢行し、爆発に巻き込まれて亡くなった様子だった。
ユーマ・ライトニング (Uma Lightning)
元キマイラ隊の強化人間で、「青いゲルググ(MS-14BR 高機動型ゲルググ改)」を駆り、ジョニー・ライデンと「ミナレット」と呼ばれる物を探す人物。元隊員の中でも最年少の若手(当時10代前半)だが、旧公国軍で研究されていた強化パイロット試験体で、若年ながらライデンと互角の腕を有し、「青き雷光」の異名を誇っていた。一年戦争後は、その混乱に乗じて連邦軍第202技術試験大隊の軍籍を手に入れ、連邦軍部隊を装いながら地球上の「キマイラ隊」及び志を同じくするジオン軍残党の事実上のリーダーとして活動していた。ただし、配下のパイロットはキマイラ隊出身者ばかりではない模様。
ユーマの運用する「MS-14BR 高機動型ゲルググ改」は連邦軍の最新技術素材とジオン系技術で改修された高度なハイブリッドカスタム機となっている。既に中身は別物になっているが「MS-14B 高機動型ゲルググ」の外見にこだわるのは「(自分だと)ジョニーに気付いてもらう為」。この事も含め、エースパイロット、軍人としての冷徹な面を持ちながらも少年の様な無邪気さが混在している様子が伺える。後に彼を診察したFSSの医師も、その若干の幼児性が強化の結果なのか、生い立ちからくるものなのかは判断しかねている[8]。一年戦争末期、部隊内で起きたイザコザでライデンと戦い、生身のジョニー・ライデンを銃撃してしまった事がトラウマになっている。
環境改善プラントにてナイトイェーガー隊のヴァースキが搭乗する「RGM-79V ジム・ナイトシーカー」と戦うが、一瞬の差で海ヘビによる電磁攻撃を喰らい昏倒。その後、「CB-X5[SGT] ガンペリー強襲タイプ」の墜落によって発生した火災に機体ごと巻き込まれるが、レッドがプラントの最終エマージェンシーシステムを開放して起こした大放水でかろうじて生存し、FSSに回収された。その時にレッドと邂逅した際には、ヘルメットを外した彼を「ジョニー」と呼んで気を失っている。
イングリッド同様にレッドが「ジョニー・ライデン」であると確信しており、本人曰くレッドの乗る「MS-06G 陸戦高機動型ザク」と戦った際に、マゼラトップ砲で肩を撃たれた時にそう悟ったとのこと。
FSSに入院加療と調査を建前に保護されたが、連邦軍からは軍歴詐称を始めとした服務規程違反等で引き渡し命令が来てしまう。しかし、彼の境遇に同情したリミアと、イングリッドによって示されたジャブロー行きを画策するレッドの手引きによって脱走に成功。事前に示し合わせていた段取りで手配したユーコン級潜水艦を呼び寄せ、南米へ向かう。その際、再びジョニー・ライデン(=レッド・ウェイライン)の役に立てるということでかなり浮かれており、呼び集めた戦力全てをレッドに委譲し、自身は「MSM-04 アッガイ」に搭乗している。
イングリッド0(イングリッド・ゼロ)
元キマイラ隊の少女で、現在はゴップの養子。クローン技術を用いて造られた生まれながらの強化人間であり、高機動戦闘に特化した能力を持つ。一年戦争末期にキマイラ隊に配属される。当時はユーマと共にジョニー・ライデンの隊に属しており、上司と部下というより師弟関係に近い間柄だったが、普段から訓練では引っ掛けに近い戦法で一杯喰わされていたため「データ上の戦術機動はジョニーより赤い彗星の方が上」と言ったりしては、ジョニーに心酔しているユーマとケンカをしていた。
冷凍睡眠中にキマイラ隊が連邦軍に拿捕され、表向きは養女としてゴップ議長に分配された。実はユーマとは同い年なのだが、ごく最近まで冷凍睡眠していたせいで未だにミドルティーンの容姿を保っている。そのため現在の世界情勢にも疎いが、そもそも本人はジョニー・ライデンとミナレット以外にはあまり興味を抱いていない様子。極端に過激な思考と行動力の持ち主でもあり、ゴップ議長の命令でユーマとジャコビアスの戦闘を監視させられた際には「つまらない事」で呼び出されたのが不本意だったらしく、本気で戦っている訳ではなかった二人に上空の「ガルダ級 ガルダ」から対地ミサイルの雨を降らせるなどしていた。
FF-X7Bst PLAN004 コア・ブースタープラン004」を飛行試験中のレッドを改造した「ORX-005 ギャプラン」(イングリッド0専用機)で襲撃するが、相撃ちとなり環境改善プラントに墜落した。プラント内で共に行動し、制御室での会話を経てレッドがジョニーである事を確信している。迎えの部隊が来た事で別行動をとるが、別れ際に「ジャブローへ」と言い残す。その際、レッドと直に顔を合わせた時に「ジョニ子」と呼ばれ憤慨していた。しかし、「ジョニ子」と呼ばれるようになったきっかけは、レッドとの交戦中に通信で「私も“ジョニー・ライデン”て呼ばれてるよ」と名乗ったことに起因している。
ゴップの元へ帰還した後、ジャブロー攻略作戦に参加する為の機体として各部をアップデートしバイオセンサーを搭載した「FA-78-2 ヘビーガンダム」(イングリッド0専用機)を受領して出撃。ヴァースキ(ヤザン・ゲーブル)をして「末恐ろしい」と評される戦闘力を持ってジャコビアスを凌駕し撃破に成功するが、続いて現れたレッドの駆る「紅いゲルググ(MS-14BR)」との戦闘に突入すると、互角の攻防を繰り広げた。
「ミナレット」に封印された「ザビ家の復讐装置」の存在を知っており、「テミス」や味方であるはずの「ナイト・イェーガー」をも出しぬいて、「ザンジバル級 サングレ・アスル」を手に入れ、レッドと共に「ミナレット」を破壊しようと画策する。
ジャブローでの戦い終結後は現地から撤収、ゴップ議長の伝手で宇宙に上がり、ペガサス級ブランリヴァルに乗り込んでミナレット探索に出る。
ジャコビアス・ノード(Jacobius Node)
元キマイラ隊MS第一小隊のNo.2でジョニー・ライデンの元相棒。階級は大尉。彼曰く、MS第一小隊のモットーは「諦めるな、最後まで見届けろ」。
トップスナイパーであり三連式多目的カメラモジュールを装備した「MS-14C-1A ゲルググキャノン(ジャコビアス・ノード専用機)」を駆る。戦時中に愛用のライフルを失ったらしく、連邦製ロングレンジライフルを使用していた。ジャブローでの戦闘後、カスタマイズが施されている。ノーマルスーツのヘルメットもライフルのセンサーと同調したシステムを搭載した特製。
現在は、民間軍事会社「テミス」社長でオクスナー・クリフの「猟犬」を自称している。オクスナーからはジョニー・ライデン候補の選別を命じられた際には、数ある候補の中から真っ先にレッドと接触する。しかし彼が「ジョニー・ライデンかもしれない」という判断をオクスナーには伝えないなど、独自の考えで動いている様子も見せている。
最初のジャブローでの遭遇では立場の違いからユーマとの戦闘になったが、環境改善プラントでのユーマの危機に際しては、社の損失を省みず“ユーマの救助”を“表の仕事”として成立させる指示を行った。環境改善プラントの戦いの後にはFSSを訪れ、レッドらに自身の知る「キマイラ隊の概要」を証言した。証言内容の真偽については不明だが、それに依ればキマイラ隊へ転属する前は、ガルマ・ザビ麾下の地球方面軍に所属。ホワイトベース隊との戦闘には招集されていない。ガルマ戦死後にオデッサに転属となり、オデッサ作戦後にキマイラ隊に招聘された、としている。
一年戦争終戦後は連邦政府首相補佐官オクスナー・クリフの部下となりジャブローに秘匿された「ザンジバル級 サングレ・アスル」を守り続け、その奪取を目指すユーマ・ライトニング達と対立する構図となっていた。ゴップ議長が手配した「ナイトイェーガー隊」のジャブロー侵攻に際しては、自ら出撃してヴァースキが操る「ORX-005 ギャプラン」と激闘を繰り広げるが、遅れて登場したイングリッドの「FA-78-2 ヘビーガンダム」に機体を撃破され、自身の「歳を取ったという事実」に感じ入るも、スナイパー仕様のジム・クゥエルで再出撃し部隊を指揮し続けた。ジャブローでの戦い終結後は現地から撤収、ジャコビアス本人はオクスナーの指示でニカーヤに合流した。
ジーメンス・ウィルヘッド
元キマイラ隊MS第二小隊隊長[9]。階級は大尉。地球上空にて「MS-14BR 高機動型ゲルググ改」で「RGM-86R ジムIII」や「AMX-003 ガザC」を撃墜する。ユーマからの要請でキマイラ隊の残党を率い、「ザンジバル級改 キマイラ」を母艦としてジャブローからの打ち上げ軌道上の宙域を押さえている。
キマイラ隊創設時から配属された古参であり、戦後は後述のエメと結婚、ユーマから連絡が届くまではサイド1でパン屋を営んでいた。「スペースノイドはキャリアからリタイアするとパン屋を始めたがる」とはクリストバルの言。現在の彼らは表向き「アナハイムの社員」という事になっており、アナハイムから提供される援助と引き換えに試作・開発された各種部材のテストも行っている。
クリストバルに留守を任せてエメと二人でスゥイート・ウォーターに向かいホルスト・ハーネスと接触した結果、「ミナレット」に自分たちも知らない秘密があると判明、ジャコビアスと接触して情報を得るためクリストバルとエメを地球に派遣する。その際に指示した地球降下の建前は「新婚旅行」である。この時、クリストバルに対し「MSが必要になる様な事態には陥るな」「もしもの時には現地で調達しろ」と無茶な命令を出している。
エメ・ウィルヘッド
元キマイラ隊MS第二小隊のNo.2。階級は中尉[10]。キマイラ隊唯一の女性パイロットだった。現在はジーメンスの妻。旧姓はディプロム。中々に茶目っ気のある女性でクリストバルをイジって楽しんでいる他、作戦中バックアップをする立場であり亭主であるジーメンスをも結構扱き使っている。
クリストバル
元キマイラ隊MS第二小隊隊員。キマイラ隊配属前は「アフリカ戦線・カラカル隊」在籍時はロイ・グリンウッドの部下であった。エース級のパイロットではあるが、第二小隊では一番下っ端である為、苦労が絶えない。リミア・グリンウッドのことを恩人の娘と考えている。
アナスタシエフ
ザンジバル級改 キマイラの艦長。ジーメンスと共に元第2小隊とキマイラ艦の指揮を執っている。
マイヤー・メイ、ガーニム
元キマイラ隊々員。別行動をとっていたが、ジャブローでの紛争開始時に、地球上空でジーメンスらと合流した。マイヤー・メイは皮肉屋で、物ごとや相手を揶揄する言い廻しをよく使う。ガーニムは髭を蓄えた巨漢でマイヤー・メイからは「我らが盾」とも称されている。
ジェラルド・サカイ
階級は大尉。『MSV』の登場人物でもある。ア・バオア・クー戦前に部隊を離脱した一人で、元キマイラ隊々員としては数少ない一年戦争後の生存が公となっている人物[11]。サイド3(ジオン共和国)での情報収集中であることをクリストバルらが語っているが本編には未登場。なお、6巻冒頭にて1年戦争当時の姿が、ユーマ、ジャコビアス、トーマス・クルツと共に描写された。

地球連邦政府・連邦軍関係者

オクスナー・クリフ (Oksner Cliff)
連邦政府首相補佐官。一年戦争時は開戦派だったレビル大将の幕僚の1人で当時は大佐。FSSの前身である連邦軍兵器群調査委員会の初代委員長でもあった。政界では次期首相の有力候補とされているが、自身は戦乱の時代を「運良く生き延びただけ」と自嘲し、派閥を持たず傍観している。知恵の輪ルービック・キューブなどのパズルを手慰みにする癖がある。裏ではジャコビアス等「猟犬」を飼っており、「ジョニー・ライデンと呼ばれる存在」に関して警戒している。
シドニー出身で、当初は開戦論者であったが、戦後に故郷の惨状(シドニーはコロニー落しの被災地)を見て、人類の底知れぬマイナス面を強く意識する。その後、人類存続の助力になればと政界に転身。「人類の存続」という目的はゴップ議長と共有しているが、そのために目論んでいる手法は「ザビ家の復讐装置」を用いて、全てのスペースコロニーを居住不可能な状態にすることで、現存人類全てを一度地球に戻し、宇宙世紀を一旦終了させる。棄民同様に始まった現在のスペースコロニーを廃棄し、改めて人々の希望と祝福による宇宙開発をやり直すことで、アースノイドとスペースノイド間のわだかまりや争いを無くそうというものである。
スモリアノフ
オクスナーの秘書。秘書としてラムズゴックの手配等の表の仕事をこなすだけではなく、ジョニー・ライデン候補の排除等、裏の仕事も行う。リミア・グリンウッドの排除に関してははジオン共和国との外交問題となるため断念した。主人に対するジャコビアスの態度に激昂するなど、オクスナーに対して心酔している様子が見て取れる。
ゴップ (Gopp)
地球連邦議会議長。オクスナーの選挙のために根回しを進めているが、同時に「キマイラ隊の生き残り」を監視しており、「ジョニー・ライデン(コードネーム〔イングリッド0〕)」と呼ばれる少女を派遣する。『機動戦士ガンダム』の登場人物であり、一年戦争時は連邦軍の将官だったが、軍政を担当し、前線に出ることはなかった。連邦軍の管理運営者として、必要とされる資金、物資を確保し、必要とされる場所に配備することに成功してきた。これは一年戦争に従軍していたヴァースキ大尉(後述)も作中で認めるところである。
一年戦争後に退役し連邦議会議員に転身する。一年戦争以後も紛争の続いた10年をティターンズエゥーゴのいずれにも与せず生きのびて、結果として連邦議会の最大派閥を形成するに至った老獪さは高く評価されている。作中での行動に対して彼自身はスペースノイド・アースノイドの区別なく「人類の存続」を望んでおり、アースノイドにとって重要な地球環境を維持・改善するプラントを不要と言い放つが、彼自身は自分が人類社会の寄生虫であり、自分が得た利益も人類社会あっての物である事も理解している。
イングリッドを表向き「養子」として引き取っており、曰く「娘は持った事が無く、新鮮な毎日」との事。あちこち連れまわしている。これは「幼女を養子にして喜んでいる俗物」と周囲の目を欺き、政敵の油断を誘う意味と、表面的なものに騙される人となりであるかを判別するために行っている。また、どこまで本気かは不明だが、イングリッドの将来(嫁ぎ先)に関してはよく話題にしている。
「ミナレット」に関しては破壊することを望んでおり、オクスナーとはその点では対立しているが、「人類の存続」についてより良い案をオクスナーが提供できるのならば、例え意見が異なっていても手を貸す(オクスナーを連邦首相の座につけるよう議会協力を行う)度量も持ち合わせている。
ヴァースキ
階級は大尉。連邦軍特殊部隊「ナイト・イェーガー」の中隊長として登場し、環境改善プラントでユーマと戦い、地上戦での経験の差で打ち倒す。その後、ゴップ議長に引き抜かれて少数精鋭の独立部隊(ゴップの私兵部隊)「ヴァースキ隊」の指揮官となった。「ナイト・イェーガー」所属時は「RGM-86R ジムIII」をベースに作り上げられた「RGM-79V ジム・ナイトシーカー」のカスタム機(特殊装備「海ヘビ」も装備している)に登場。「ヴァースキ隊」では青いカスタムカラーの「ORX-005 ギャプラン」を乗機として受領し、ジャブロー攻略作戦にイングリッドの御守り役を兼ねて従事する。
その正体はヤザン・ゲーブル(機動戦士Ζガンダム、機動戦士ガンダムΖΖの登場人物)で、「ヴァースキ」という名前は偽名、またはコードネームであるが、遠まわしに認めつつも本人はあくまで別人であると韜晦している。
バレンスタイン、カワセ
「ナイトイェーガー」に所属するパイロット。バレンスタインは長髪の優男でナイトイェーガーでは副隊長を務め、カワセは多少厳つい見た目で頭にバンダナを締めている。共にゴーグル型の眼鏡を着用している。環境改善プラント作戦後、「ヴァースキ隊」に引き抜かれジャブロー攻略作戦に参加する。デチューンされているとは言え「ORX-005 ギャプラン」を乗りこなしヴァースキのサポートを任されるなど腕は確かだが、レッドの乗る「紅いゲルググ(MS-14BR 高機動型ゲルググ改)」に出会いがしらに大破させられた。
宇宙に上がってからはナイトシーカーに最新型量産試作機(ジェガン)のパーツを移植した機体で訓練を行っている。
ブロイ・リゲラ
地球連邦軍第100MS飛行中隊隊長。階級は中尉。乗機は、「NRX-004 アッシマー」。一年戦争中期(当時の階級は少尉)「RB-79M ボール 機雷散布ポッド装備タイプ」に搭乗し、地球衛星軌道上での機雷散布任務中にジョニー・ライデン率いるMS隊と接触し、所属していた隊は艦隊ごと壊滅。その際に通信とはいえジョニー・ライデンと言葉を交わし、ユニコーンの紋章を譲り受けた(現在は彼が率いる中隊の部隊章となっている)。
その正体は連邦軍内部へ潜り込んだ元キマイラ隊の工作員。当時の所属はエース部隊ではなく、艦隊直衛のMS隊所属だった。レッド達に語った内容自体は事実だが、ブロイ(正確には、現在ブロイ・リゲラを名乗っている人物)は艦隊を壊滅させた側である。ユニコーンの紋章とその逸話を餌に、ジョニー・ライデンに関して探りを入れている者や「ジョニー・ライデン候補」に接触するのが主な任務となっている。なお、レッド・ウェイラインとの接触後、「・・・・・・あなたの帰還を歓迎しますよ・・・」と呟いていた。レッド等がジャコビアスの手配したゲリラや乱入したユーマに襲われた時に、ブロイは救援に駆け付けユーマと交戦している。
ディドコット
ジャブローへ向かう足としてフーバーが手配したアーガマ級強襲巡洋艦「ニカーヤ」の艦長。フーバーとは古馴染だが、本来は艦長になる様なタイプではなく、一年戦争で上官がいなくなった結果、最先任だった彼にお鉢が回ってきた。警告を含む通信を送って来た連邦軍第109戦区司令部に「うるさい、黙れ」と返答し、操舵手に「手動操作で艦をカタパルトに降ろせ」と丸投げするような人物。

アナハイム・エレクトロニクス社関係者

旧ジオン公国系の企業を買収し急成長を遂げた軍産複合企業。新規に開発した機材の「試用とその運用データフィードバック」を引き換えとして旧キマイラ隊第2小隊を事実上匿っている。

フークバルト
ミリィと共に旗艦キマイラに派遣されてきた黒人男性で、アナハイム社主計局次長。
アナハイム社内のキマイラ隊残党の存在を問題視している派閥から派遣されてきた「鈴」であるが、彼自身はキマイラ隊の価値を認めていて、上層部と交渉し「茨の園」をキマイラ隊に委譲する認可を手に入れてきた。
新拠点を運用する分も含めてキマイラ隊の主計業務を引き受ける。
ミリィ・チルダー
アナハイム・エレクトロニクス社から派遣されてきた女性メカニック。『機動戦士ガンダムΖΖ』の登場人物でもあり、ネェル・アーガマに乗艦していた。
マイヤー・メイ、ガーニムがジーメンスらのキマイラ隊残党に合流する際に、旗艦キマイラに派遣された。「自分の派遣先はこんなのばかり」とボヤいている。

ネオ・ジオン

作品の舞台は「第二次ネオ・ジオン抗争」前夜であり、アデナウアー次官によるネオ・ジオン崩壊後のアクシズ接収について触れられている他、「スウィート・ウォーター(サイド1)」に不穏分子が集結しているなども語られている。

ホルスト・ハーネス
ネオ・ジオンの文官。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の登場人物でもある。
本作では一年戦争時点からジオン軍の軍政を担当していたことになっており、ジーメンスとはキマイラ隊発足時に面識がある。
「スウィート・ウォーター」でジーメンスと接触し、キマイラ隊が隠匿したMS製造プラント船「ミナレット」の返還を求めた。また、「ザビ家の復讐装置」を5thルナの代わりにすることを考えてシャア・アズナブルに具申、探索自体は5thルナ占拠の計画と並行して進め、確保に成功したら再考すると任される。
なお、ジオン共和国での目撃情報がジェラルドからキマイラに送られてきた際には、クリストバルに「性質の悪い軍閥官僚オヤジ」と評されている。
シャア・アズナブル
ネオジオンの新たな総帥として、難民収容のために建造されたコロニー・スウィートウォーターで活動している。ホルストたちが「ザビ家の復讐装置」を求めていることは知っているが、それを「悪趣味」と言い放ち、自身の目的を達するには不適格なものだと考えている。

旧ジオン軍兵士・その他

ルーベンス
車椅子の男性。FSSからの依頼で地球を訪れ、同組織の回収したMSを「MS-06A ザクII 初期生産タイプ」と確認した。
作中の12年前(宇宙世紀0078年3月)は旧ジオン公国軍のパイロット候補生で、前述の機体で訓練を受けていた。教導機動大隊の慣習でパイロットシートにはその機体で訓練を受けた多くのパイロットたちの署名があり、彼の署名も存在していたため確認の連絡を受けた。
戦後、復員してからの長い期間、悪夢と隣合わせながら命を預け合った仲間と共に過ごした場所である戦場。そして、そこから放り出された孤独に苦しんでいたが、かつての愛機のコックピットで10年ぶりの安らぎを得る。
ラトヴィッジ
大戦中からユーコン級潜水艦「U-207」を率いている艦長。ユーマが自分たちの正体が露見した時に備えて、自身の艦含めて三隻の潜水艦に軍からチョロまかしていた装備を預かり、脱出した隊員たちを回収していた。ユーマからの連絡を受けてレッドたち一行をジャブローまで送迎する。ユーマの言を真に受けてレッドを「ジョニー・ライデン」呼ばわりして殴り倒されていた。
地上からの「支援要請の可能性あり」との連絡を受けて退路を確保するべく、テミスのラムズゴック隊との戦闘に突入する。
デーヴァ・ヴェル
ラトヴィッジの呼び掛けに応えて合流したユーコン級潜水艦「U-47」の艦長。ラトヴィッジからの要請を受けて、接近するラムズゴック隊との戦闘を開始する。
艦番号からそれなりに名の知れた特殊戦部隊とされているが、それは事実であり母艦を囮にして静粛仕様の水中用ザク(MIP社水陸両用MS実験機)による攻撃を行うというもの。善戦したが艦の整備不足が祟り緊急浮上、居合わせたニカーヤに乗員を移譲して艦とMSは機密保持のために沈めた。
彼のクルーを含めたユーコン級潜水艦は共にキャリフォルニアベースに入港。フーバーからの依頼と「“ジョニー・ライデン”の説得」で、FSSがニカーヤを中心として編成する艦隊のクルーとして協力する。

登場した機体

ジオン系
地球連邦軍系

単行本

角川コミックス・エース(角川書店)より刊行されている。

  1. 2010年12月25日刊行 ISBN 978-4-04-715592-3
  2. 2011年 4月26日刊行 ISBN 978-4-04-715693-7
  3. 2011年10月26日刊行 ISBN 978-4-04-715812-2 - 特典にアーケードゲーム『機動戦士ガンダム 戦場の絆』にてザクII(S)(ジョニー・ライデンカラー)が使用可能になるキャンペーンコードが付随。
  4. 2012年 3月26日刊行 ISBN 978-4-04-120209-8 - 特典にアーケードゲーム『機動戦士ガンダム 戦場の絆』にて高機動型ゲルググ(ジョニー・ライデンカラー)が使用可能になるキャンペーンコードが付随。
  5. 2012年 9月26日刊行 ISBN 978-4-04-120450-4 - 「角川書店ニュージェネレーションキャンペーン(~2013年1月31日)」の対象書籍であり、応募券が付随。
  6. 2013年 3月26日刊行 ISBN 978-4-04-120637-9 - 特典にアーケードゲーム『機動戦士ガンダム 戦場の絆』にてゲルググキャノン(ジョニー・ライデンカラー)が使用可能になるキャンペーンコードと、プレイステーション3用ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』にてジム・ナイトシーカーIIが使用可能になるキャンペーンコードが付随。また、「角川書店MSV-Rキャンペーン(~2013年4月25日)」の対象書籍であり、応募券が付随。
  7. 2013年9月26日刊行 ISBN 978-4-04-120841-0
  8. 2014年3月24日刊行 ISBN 978-4-04-121063-5
  9. 2014年9月26日刊行 ISBN 978-4-04-102105-7
  10. 2015年3月26日刊行 ISBN 978-4-04-102106-4 - 特典にアーケードゲーム『機動戦士ガンダム 戦場の絆』にてゲルググキャノン(JN)(3連スコープ装備型)が使用可能になるキャンペーンコードが付随。
  11. 2015年9月26日刊行 ISBN 978-4-04-103501-6 - 特典にソーシャルゲーム『ガンダムマスターズ』、『ガンダムスピリッツ』にてアイテム「ジョニーライデン専用機」がもらえるキャンペーンコードと、家庭用ゲーム機のゲーム『ガンダムバトルオペレーションNEXT』、『ガンダムバトルフォートレス』、『ガンダムコンクエストV』にて各種アイテムがもらえるキャンペーンコードが付随。
  12. 2016年3月26日刊行 ISBN 978-4-04-104095-9

機動戦士ガンダムMSV-R

  1. 連邦編 2012年3月26日刊行 ISBN 978-4-04-120210-4 - 『ジョニー・ライデンの帰還 特別編』(宇宙世紀0086年のリミア・グリンウッドの着任)を収録。

脚注

  1. ^ a b 2巻
  2. ^ a b c d e 6巻
  3. ^ a b c d e f 『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』
  4. ^ a b 7巻
  5. ^ MSV-Rで設定された調査組織であり、同作者の描くガンダム作品にたびたび登場する。ソフトバンククリエイティブ発行の「マスターアーカイブ モビルスーツ RX-78GP01」7頁にも、設定を拾う形で紹介されている。
  6. ^ ユーマの機体と同様に中身は最新の部材・技術で建造された最新鋭機でアナハイム・エレクトロニクス製。コクピットも当時は最新鋭で一般化していなかったアームレイカーが採用されている(他の機体ではイングリッドのヘビーガンダムのみ)。航海中に真紅は目立ちすぎるから「せめて色は変えよう」とレッドが提案したが、却下された。
  7. ^ 『ジョニー・ライデンの帰還 特別編』より。本編2巻49pでは作中時期の半年前に来たと発言している。
  8. ^ 8巻141P
  9. ^ 8巻紹介より。
  10. ^ 「機動戦士ガンダム MSV-R モビルスーツバリエーション ジオン編」P.18。
  11. ^ 6巻13P