有職読み

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有職読み(ゆうそくよみ)は、古来からの慣例に従って、漢字で書かれた語を特別な読み方で読むこと。故実読み(こじつよみ)、名目(みょうもく)、名目読みと同じ。例として「笏(こつ)」を「しゃく」と読む、「定考(じょうこう)」を「こうじょう」と読むなどがある[1][2]

歌学の世界などで、特定の歌人(俊頼(しゅんらい)、俊成、定家、式子(しょくし)内親王など)が音読みされることを有職読みの例とする説がある[3][4]

江戸時代以前の歌人文人・宮廷貴族について使われることが多いが、存命中の人物を含む近現代の政治家・一般人に対しても使用されることがある。

有職読みは、いわゆる下の名前に対して使われる用語であり、姓(苗字・名字・氏)に対しては用いられない。例えば源氏平氏を「みなもとし」「たいらし」でなく「げんじ」「へいし」と呼ぶのは有職読みとは呼ばない。

名前の音読み

江藤新平(エトウ シンペイ)や三木武吉(ミキ ブキチ)のように、と紛らわしい音読みの名乗り・本名を持つ人物がいるが、これを有職読みとは言わない。さらに、あくまでも習慣なので、木戸孝允が「キド コウイン」と呼ばれることが多いのに対し、西郷隆盛は「サイゴウ リュウセイ」とは呼ばれないように、有職読みで呼ばれるか呼ばれないかに一定の基準があるものでもない。

江戸時代以前には、その人物の本名をとし、他人が諱で呼ぶことを避ける習慣があった。代わりに輩行名百官名などの仮名で呼ぶ場合が多かったが、諱を音読みする場合もあった。例えば徳川慶喜を「ヨシノブさん(様)」と他人が呼ぶことは極めて無礼な行為であり、代わりに「ケイキさん」と呼ぶことが多く、慶喜本人もそう呼ばれることを好んでいたとされる。

高島俊男によると、戦前には有職読みをすることが一般的であり、例えば滝川事件瀧川幸辰については「タキガワ コウシン」以外の読みを戦前では聞いたことがなかったという[5]

現在では多く政治家、創作家、芸能関係者など、広く一般の人に名前を呼ばれることの多い人物が、本来の読みがわからないときに音読みで呼びかけられることが多いため、一種の通名として用いることが多い[6]

諱の訓読み不明の人物への援用

有職読みそのものではないが、王朝史の研究などにおいて、正確な読み方のわからない女性名を音読みにすることがある。代表的例としては、清少納言が仕えた一条天皇皇后定子紫式部が仕えた中宮彰子があり、各々「さだこ」「あきこ」であったと想像されるが、国文学史等においては「テイシ」「ショウシ」と呼慣わされている。これは式子内親王(有職読みで「ショクシ」)などの例を援用したものと思われる。

現代でも読み方が不明の場合などは音読みにする場合がある。

音読みが有職読みである例

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人物 読み 本来の読み 備考
0894年生/小野道風 オノ ノ トウフウ 本来は ミチカゼ 三蹟の一人
0912年生/多田満仲 タダ ノ マンジュウ 本来は ミツナカ 平安中期の武将。正しくは源満仲であるが、有職読みするのは「多田満仲」の場合のみ。
0944年生/藤原佐理 フジワラ ノ サリ 本来は スケマサ 三蹟の一人
0948年生/源頼光 ミナモト ノ ライコウ 本来は ヨリミツ 平安中期の武将
0921年生/安倍晴明 アベ ノ セイメイ 本来は ハルアキ・ハルアキラ 平安時代の陰陽師
0972年生/藤原行成 フジワラ ノ コウゼイ 本来は ユキナリ 三蹟の一人
1114年生/藤原俊成 フジワラ ノ シュンゼイ 本来は トシナリ 鎌倉時代の歌人
1149年生/式子内親王 ショクシ ナイシンノウ 本来は ノリコ と読んでいたのではないかと推測されているが不明
1158年生/藤原家隆 フジワラ ノ カリュウ 本来は イエタカ 鎌倉時代の歌人
1162年生/藤原定家 フジワラ ノ テイカ 本来は サダイエ 鎌倉時代の歌人、「小倉百人一首」撰者
1402年生/一条兼良 イチジョウ カネラ[7] 本来は カネヨシ 室町時代の公卿、古典学者
1522年生/三好長慶 ミヨシ チョウケイ 本来は ナガヨシ 戦国武将
1545年生/上井覚兼 ウワイ カクケン 本来は サトカネ 戦国武将
1642年生/関孝和 セキ コウワ 本来は タカカズ 江戸時代の和算
1718年生/伊勢貞丈 イセ テイジョウ 本来は サダタケ 江戸時代の有職学者
1745年生/伊能忠敬 イノウ チュウケイ 本来は タダタカ 江戸時代の測量家
1787年生/二宮尊徳 ニノミヤ ソントク 本来は タカノリ 江戸時代の農政家
1829年生/由利公正 ユリ コウセイ 本来は キミマサ 第4代東京府知事
1830年生/尾高惇忠 オダカ ジュンチュウ 本来は アツタダ 明治期の実業家。同名の作曲家の曾祖父。
1833年生/木戸孝允 キド コウイン 本来は タカヨシ 幕末・明治初期の長州藩出身の政治家
1836年生/榎本武揚 エノモト ブヨウ 本来は タケアキ 幕末の幕臣・明治初期の政治家
1837年生/徳川慶喜 トクガワ ケイキ 本来は ヨシノブ 江戸幕府第15代将軍。「ヨシヒサ」とも。
1837年生/児島惟謙 コジマ イケン 本来は コレカタ 第6代大審院長
1841年生/伊藤博文 イトウ ハクブン 本来は ヒロブミ 初代内閣総理大臣。以後も3度にわたり首相を務めた。
1843年生/伊東祐亨 イトウ ユウコウ 本来は スケユキ 初代連合艦隊司令長官
1843年生/田中光顕 タナカ コウケン 本来は ミツアキ 初代内閣書記官長
1849年生/湯地定監 ユチ テイカン 本来は サダノリ 海軍機関中将。義弟に乃木希典陸軍大将、実妹にその妻である乃木静子、甥に乃木勝典乃木保典
1855年生/末松謙澄 スエマツ ケンチョウ 本来は ノリズミ 内務大臣
1856年生/原敬 ハラ ケイ 本来は タカシ 第19代内閣総理大臣
1861年生/牧野伸顕 マキノ シンケン 本来は ノブアキ 明治から戦中にかけての政治家
1870年生/濱口雄幸 ハマグチ ユウコウ 本来は オサチ 第27代内閣総理大臣
1889年生/井上成美 イノウエ セイビ 本来は シゲヨシ 海軍大将
1889年生/柳宗悦 リュウ ソウエツ 本来は ヤナギ ムネヨシ 思想家・美学者・宗教哲学者
1891年生/瀧川幸辰 タキガワ コウシン 本来は ユキトキ 法学者
1892年生/徳川頼貞 トクガワ ライテイ 本来は ヨリサダ 紀州徳川家当主、戦前から戦後の政治家、実業家、音楽学者。
1903年生/板垣正貫 イタガキ ショウカン 本来は マサツラ 板垣家第12代当主、板垣退助の孫。

明治の元勲である西郷従道は「サイゴウ ジュウドウ」「サイゴウ ツグミチ」両方の読みがあるが、ジュウドウが本来の読みである。詳しくは西郷従道の項目を参照のこと。

その他、似て異なるものとして、俗名の兼好(カネヨシ)を音読みした「ケンコウ」を法名とした吉田兼好(卜部兼好)、同じく出家後に読みを改めた鈴木正三(スズキ マサミツ→ショウサン)、山本常朝(ヤマモト ツネトモ→ジョウチョウ)などの例や、明治維新以前の通称(仮名)を読みを変えて戸籍名にした伊藤雋吉(イトウ シュンキチ→トシヨシ)、神田孝平(カンダ コウヘイ→タカヒラ)などの例がある。この他、旧藩主などを敬って名単独で呼ぶときのみ有職読みにするケースもある。例えば加藤清正(カトウ キヨマサ)を、清正公(セイショウコウ)と呼ぶたぐいである。

音読みで読ませて通名とする例

現代においては上述のように、本名では訓読みもしくは重箱読み湯桶読みする名前を、自ら音読みで読ませて通名とする例がある。

政治家の通名

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人物 通名 の読み 本来の読み 備考
1890年生/大野伴睦 オオノ バンボク 本名は トモチカ 昭和(戦中・戦後)の政治家。
1900年生/細川隆元 ホソカワ リュウゲン 本名は タカチカ 戦後の衆議院議員、政治評論家。
1928年生/佐藤孝行 サトウ コウコウ 本名は タカユキ 戦後の衆議院議員、自民党役員。
1936年生/山﨑拓 ヤマサキ タク 本名は ヒラク 戦後(昭和・平成)の衆議院議員、閣僚。
1942年生/北川一成 キタガワ イッセイ 本名は カズナリ 平成期の参議院議員。表記は全て片仮名の「イッセイ」を使用。
1945年生/西川一誠 ニシカワ イッセイ 本名は カズミ 平成期の福井県知事。
1945年生/伊藤一長 イトウ イッチョウ 本名は カズナガ 平成期の長崎市長。
1950年生/中村法道 ナカムラ ホウドウ 本名は ノリミチ 平成期の長崎県知事。
1954年生/下村博文 シモムラ ハクブン 本名は ヒロフミ 平成期の衆議院議員。第18代文部科学大臣。
1959年生/松木謙公 マツキ ケンコウ 本名は シズヒロ 平成期の衆議院議員。
1974年生/飯泉嘉門 イイズミ カモン 元の読みは ヨシカド 平成期の徳島県知事。戸籍上の読みものちに改めている。
1974年生/鈴木英敬 スズキ エイケイ 本名は ヒデタカ 平成期の三重県知事。

他、第二次世界大戦中、リトアニアの領事館に赴任中の外交官杉原千畝が、外国人向けに発音し易いよう「SEMPO SUGIHARA」と名乗っていた。戦後、ユダヤ人協会がこの名で問い合わせたところ、日本の外務省は「日本外務省にはSEMPO SUGIHARAという外交官は過去においても現在においても存在しない」と回答した。

ペンネーム・芸名

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人物 ペンネーム ・芸名の読み 業種 本来の読み 備考
1866年生/黒田清輝 クロダ セイキ 画家 本名は キヨテル
1888年生/菊池寛 キクチ カン 作家 本名は ヒロシ 筆名としての読みでカンが定着した。
1898年生/横光利一 ヨコミツ リイチ 作家 本名は トシカズ
1902年生/横溝正史 ヨコミゾ セイシ 作家 本名は マサシ 作家仲間がセイシと読んだものがそのまま定着した。
1908年生/中村哲 ナカムラ テツ 俳優 本名は サトシ
1909年生/松本清張 マツモト セイチョウ 作家 本名は キヨハル
1915年生/柳宗理 ヤナギ ソウリ プロダクトデザイナー 本名は ムネミチ 父は柳宗悦
1917年生/角川源義 カドカワ ゲンギ 俳人/実業家 本名は ゲンヨシ 俳号としてゲンギを名乗る。
1921年生/和田信賢 ワダ シンケン アナウンサー 本名は ノブカタ
1924年生/安部公房 アベ コウボウ 作家 本名は キミフサ 本名の読みも改めていたという証言もある。
1925年生/平岡公威 ヒラオカ コウイ 作家 本名は キミタケ 筆名は三島由紀夫
1925年生/渡辺宙明 ワタナベ チュウメイ 作曲家 本名は ミチアキ 息子に渡辺俊幸
1926年生/西村望 ニシムラ ホウ/ボウ 作家 本名は ノゾム 西村寿行は実弟。
1930年生(05月12日)/山本廉 ヤマモト レン 俳優 本名は キヨシ
1930年生(05月30日)/竹中労 タケナカ ロウ ルポライター 本名は ツトム
1930年生(06月03日)/和田勉 ワダ ベン テレビディレクター/プロデューサー 本名は ツトム
1930年生(11月03日)/西村寿行 ニシムラ ジュコウ 作家 本名は トシユキ 西村望は実兄。
1932年生(01月11日)/石森達幸 イシモリ タッコウ 声優 本名は タツユキ
1932年生(月日不明)/青木信光 アオキ シンコウ 作家 本名は ノブミツ
1933年生/藤本義一 フジモト ギイチ 作家 本名は ヨシカズ
1935年生/河野典生 コウノ テンセイ 作家 本名は ノリオ
1937年生/猪俣公章 イノマタ コウショウ 作詞・作曲家 本名は キミアキ
1938年生/野沢那智 ノザワ ナチ 声優 本名は ヤストモ 生前、本名が何故「ヤストモ」と読むのかについては野沢本人も「判らない」と語っていた。
1940年生(02月11日)/有本欽隆 アリモト キンリュウ 声優 本名は ヨシタカ
1940年生(08月21日)/斉藤安弘 サイトウ アンコー アナウンサー 本名は ヤスヒロ カメ&アンコーの一人。
1941年生(05月15日)/前田忠明 マエダ チュウメイ 芸能レポーター 本名は タダアキ
1941年生(11月03日)/長坂秀佳 ナカサカ/ナガサカ シュウケイ 作家/脚本家 本名は ヒデカ
1942年生/高橋長英 タカハシ チョウエイ 俳優 本名は オサヒデ
1943年生/小林稔侍 コバヤシ ネンジ 俳優 本名は トシジ 長男に小林健、長女に小林千晴
1944年生(03月22日)/大塚博堂 オオツカ ハクドウ 歌手 本名は ヒロタカ
1944年生(04月22日)/坪内稔典 ツボウチ ネンテン 俳人/文学研究者 本名は トシノリ 俳号としてネンテンを名乗る
1945年生/谷恒生 タニ コウセイ 作家 本名は ツネオ
1946年生(05月07日)/新井満 アライ マン 作家/音楽家 本名は ミツル
1946年生(08月07日)/板垣英憲 イタガキ エイケン 政治評論家 本名は ヒデノリ
1947年生/吉川忠英 ヨシカワ チュウエイ 音楽家 本名は タダヒデ
1948年生/井上陽水 イノウエ ヨウスイ 歌手 本名は アキミ 歌手デビュー時からヨウスイと自称している。
1950年生/佐々木譲 ササキ ジョウ 作家 本名は ユズル
1951年生/石塚運昇 イシヅカ ウンショウ 声優 本名は ユキノリ
1953年生/伊藤政則 イトウ セイソク 音楽評論家 本名は マサノリ 海外アーティストとのインタビューでは「マサ・イトウ」で通っている。
1954年生(05月19日)/大塚芳忠 オオツカ ホウチユウ/ホウチュウ 声優 本名は ヨシタダ 音読みで呼ばれることが多いため、芸名としての読みを改めた。
1954年生(11月20日)/島田敏 シマダ ビン 声優 本名は サトシ
1955年生/今野敏 コンノ ビン 作家 本名は サトシ
1958年生/塩屋翼 シオヤ ヨク 声優/俳優/音響監督 本名は ツバサ
1959年生/辻仁成 ツジ ジンセイ 作家/歌手 本名は ヒトナリ 文筆ではヒトナリ、音楽・映画ではジンセイを用い、活動分野によって読み方を使い分けている。
1961年生/津久井教生 ツクイ キョウセイ 声優 本名は ノリオ
1962年生/伊藤史隆 イトウ シリュウ アナウンサー 本名は ノブタカ
1963年生/佐藤竹善 サトウ チクゼン 歌手 本名は タケヨシ
1966年生/清家利一 セイケ リイチ 俳優/スーツアクター 本名は トシカズ
1968年生/内野聖陽 ウチノ セイヨウ 俳優 本名は マサアキ 音読みで呼ばれることが多いため、芸名としての読みを改めた。
1973年生/向井秀徳 ムカイ シュウトク ミュージシャン 本名は ヒデノリ
1978年生/天野浩成 アマノ コウセイ 俳優 本名は ヒロナリ 姓は本名とは異なる。デビューから長くヒロナリで活動していたが、のちに読みを改めた。
生年不明/平野仁 ヒラノ ジン 漫画家 本名は ヒトシ

この他に以下の類例がある。

  • 大西巨人(オオニシ キョジン、本名はノリト)、杉浦太陽(スギウラ タイヨウ、本名・旧芸名はタカヤス)も上記の例に準ずるが、音読みすると熟語になる点では特殊な例である。
  • 宇野功芳(ウノ コウホウ)の本名は 宇野功(ウノ イサオ)であるが、元は功芳を本名と同じくイサオと読ませていて、のちに読みを改めた。
  • 林望(ハヤシ ノゾム)がニックネームのような形で自ら「リンボウ先生」と称し、自著のタイトルに冠したりしている。
  • 堀川りょう(ホリカワ リョウ)は、本名が堀川亮(ホリカワ マコト)で、元は亮をリョウと読ませて堀川亮(ホリカワ リョウ)を芸名としていた。
  • 本来の芸名やペンネームおよび本名ではないが、音読みでも通称される人物に、小沢征悦(オザワ ユキヨシ→通称でセイエツ)、中野昭慶(ナカノ テルヨシ→通称でショウケイ)、阿部寛(アベ ヒロシ→通称でカン)、加藤嘉(カトウ ヨシ→通称で。本名は同字でタダシ)、佐藤優(サトウ マサル→通称でユウ)、森一生(モリ カズオ→通称でイッセイ)などの例がある。

出典・脚注

  1. ^ 三省堂『大辞林』「故実読み」の解説
  2. ^ 吉川弘文館『国史大辞典』「故実読み」の解説 「漢字一字または二字以上の連結形式が、一つの概念をあらわす語の表記と考えられるとき、そのよみ方を、一般の字音・字訓の慣用によって推理すると、かえって誤読となるような、伝統的な特殊なよみ方をすることをいう。すなわち、漢字のよみの特殊な伝統が故実である。「故実」とは、近世になると、もっぱら形式的な前例遵守の慣行だけを故実と解すに至った。「こじつけ(故実付け)」の語源でもある。年中行事のよび名、地名・人名・書名などの固有名詞その他が主要なもの。また古典文学や古記録・古文書にみえる普通語でありながら、日本語の変遷の中で取り残された古い形、また禁忌によるよみ替え、ある時代に慣用となった不規則な変形などが故実読みとして一括されているが、一語一語について言語史的な追究は今後の課題として残っている。」
  3. ^ 角田文衞『日本の女性名 歴史的展望』(上)(教育社歴史新書30、1980年)、173頁。
  4. ^ 小谷野敦は、ブログで 「『名前とは何か なぜ羽柴筑前守は筑前と関係がないのか』(青土社)のp.100に「有職読み」という語が出てくるが、このような言葉は存在しない。これは2006年何者かによってWikipediaに立項され、その内容がいかにもありそうだったため、以後増補が続けられてきたもの」と記していたが、後に付記として角田文衞『日本の女性名』に使用例があったことを記している。 - 猫を償うに猫をもってせよ”. 小谷野敦 (2011年5月1日). 2011年12月7日閲覧。
  5. ^ 高島「お言葉ですが…」(文春文庫)より
  6. ^ 例えば、松木謙公は本来「マツキ シズヒロ」が正しい読みだが、支持者から「ケンコウ」と呼ばれることが余りにも多く、以後ケンコウで通していると、『毎日新聞』夕刊の「特集ワイド」のインタビューで答えている。また、漫画家の小林よしのりは、友人の呉智英(クレ トモフサ)〔ペンネーム〕について、「読みがわからないからゴチエイと読んでいる」と書いている(『ゴーマニズム宣言』)。
  7. ^ 「カネ」は「」の訓読み。「ラ」は「」の熟字訓「野良」などに見られるが、標準的な読みではない。

関連項目