時をかける少女

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時をかける少女』(ときをかけるしょうじょ)は、筒井康隆ヤングアダルト向けSF小説1967年刊)と、それを原作とする映画・ドラマ・コミック・アニメなどの作品。

概要

筒井の作品には珍しい、正統派少年少女向け小説である。発表から約50年たった現在でも広く親しまれており、何度も映像化されている。

ストーリー

ある日、中学3年生の少女・芳山和子は、同級生の深町一夫や浅倉吾朗と一緒に理科室の掃除を行っていた時に、実験室でラベンダーの香りを嗅いで意識を失う。その3日後、和子の周囲にはいくつかの事件が起こる。深夜に起こった地震により、吾朗の隣の家が火事になる。そして、その翌日に吾朗と共に交通事故に巻き込まれそうになった瞬間、和子は前日の朝に時間を遡行する。もう1度同じ1日を繰り返した和子は、一夫と吾朗にこの奇妙な体験を打ち明ける。最初は信じなかった2人も、和子が地震と火事を予言した事で、和子の話を受け入れる。3人の話を聞いた理科の担任である福島先生は、和子の能力はテレポーテーションタイム・リープと呼ばれるものであることを説明し、事件の真相を知るためには、4日前の理科室に戻らなければならないことを指摘する。

やがて自分の意思でタイム・リープを行えるようになった和子は、4日前の理科実験室で正体不明の訪問者を待ち受ける。そこへ訪れたのは、深町一夫であった。一夫は自分が西暦2660年の未来で暮らしていた未来人であると語り、未来では採取できなくなったラベンダーを得るためにこの時代にやってきたのだと説明する。さらに和子や周囲の人間が持っている一夫の記憶は催眠術によるものであり、実際に和子が一夫と過ごした時間は、1ヶ月程度であることも打ち明ける。しかし、その1ヶ月の間に一夫は和子に好意を抱くようになっていた。タイム・リープのための薬品を完成させた一夫は再び未来へ帰還するが、その直前に、和子の前にいつか再び別の人間として現れることを約束する。

タイム・リープの秘密を守るために和子や他の人々から一夫の記憶は消されてしまうが、和子は心の底に残るいつか再び自分の前に現れると約束した誰かを待ち続けるのだった。

派生作品

小説

  • シナリオ・時をかける少女
    筒井による短編小説。1983年の映画のパロディであり、同年に書かれた。映画を演じる役者の作る虚構の世界と、現実に学校社会で起こる生徒の問題を絡ませ、役者たちの虚構の世界が現実世界に飲み込まれていく様を描く。

映画

1980年以降で4回も劇場映画化された小説は他に存在しない(シリーズ化は除く)。

テレビドラマ

ステレオドラマ

フジテレビ 月曜ドラマランド
前番組 番組名 次番組
ライパチくん
(1985.10.21)
時をかける少女
(1985年版)
(1985.11.4)
同棲時代
(1985.11.11)
フジテレビ系 ボクたちのドラマシリーズ(第2期)
時をかける少女
(1994年版)
(廃枠)
フジテレビ系 土曜20時枠
幕末高校生
時をかける少女
(1994年版)
【当番組までドラマ枠

舞台

演劇集団キャラメルボックスが2015年7月28日~8月9日までサンシャイン劇場・8月20日~24日までサンケイホールブリーゼにて、本作を原作とした舞台を上演した[1]

あらすじ

高校2年生の尾道マナツは伯母の芳山和子が下垂体腫瘍により入院・手術をする為、祖父・八郎の面倒を見る為に札幌から上京する。和子の家に到着した所で、幼なじみの輝彦と再会。輝彦は和子が務めている大学の教え子で、病気により視野が狭くなった和子の運転手や荷物持ち等身の回りの世話をしていたのだ。

その翌日。和子に連れられて大学を見学しに来たマナツは研究室に行き、和子の同僚・世羅と江田島を紹介される。そこへ、山岳雑誌が沢山入った箱を持った輝彦もやって来た。雑誌は和子の友人・神石に頼まれてのけていたモノで、和子と神石は交際はしていないものの良い仲であると知る。その後マナツは輝彦に大学の案内をしてもらい、研究室への帰る前にお手洗いに行く際に輝彦と別れる。しかし道に迷い困っていると誰かが実験室に入るのを見かけ、道を聞こうとマナツも中へと入る。誰も見当たらず探していると卓上のフラスコが急に倒れ、白い煙が出てきた。それはラベンダーの香りのする煙だった。その煙を吸ったマナツは倒れてしまい、そのマナツを見つけた輝彦も煙を吸って倒れてしまう。

そのまた翌日。和子とマナツが研究室へ行くと、神石が訪れていた。神石が土産に買って来た酒を飲んで酔っ払った江田島は、勢い余ってマナツに酒をかけてしまう。世羅は持って居たハンカチをマナツに貸すが、そのハンカチからはラベンダーの香りがした。その後昨日のフラスコの中からは水しか検出されなかったと聞かされ、世羅に「のぼせて倒れたんじゃないか」と言われたマナツは逆上して研究室を飛び出し、世羅が煙を作った犯人ではないかとハンカチの成分を調べてもらおうと医学部へと向かう。その後を追って来た輝彦と言い争いをしていると大きな地震が発生し、マナツが倒れた場所の頭上からエアコンの室外機が落ちてきた。

その瞬間時間がまき戻り、マナツは地震が起きる1分前に戻っていた・・・・

出演

漫画

楽曲

  • 1983年時をかける少女」(歌:原田知世、作詞・作曲:松任谷由実
    1983年版映画の主題歌。映画同様に大ヒットした。
  • 1983年 「時をかける少女」(歌・作詞・作曲:松任谷由実)
    上記の曲を松任谷由実がセルフカバーしたもの。アルバム『VOYAGER』に収録。
  • 1987年 「時をかける少女」原田知世ベストアルバム『From T』(1987年11月28日発売)に収録
    上記の曲を原田知世が別アレンジにて歌い直したもの。
  • 1997年 「時のカンツォーネ」(歌・作詞・作曲:松任谷由実)
    1997年版映画の主題歌。上記の曲と歌詞は同じだが、全く別の曲を当てたもの。アルバム『スユアの波』に収録。
  • 2003年 「時をかける少女」(歌:清水愛、作詞・作曲:松任谷由実)
    上記の曲のカバー。シングル「Angel Fish」に収録。
  • 2007年 「時をかける少女」原田知世アルバム『music & me』(2007年11月28日発売)に収録
    上記の曲を原田知世がさらに別アレンジにて歌い直したもの。
  • 2009年 「時をかける少女」(歌:白石涼子名塚佳織野中藍堀江由衣、作詞・作曲:松任谷由実)
    上記の曲のカバー。シングル「乙女の順序」に収録。
  • 2010年 「時をかける少女」(歌:いきものがかり、作詞・作曲:松任谷由実)
    上記の曲のカバー。シングル「ノスタルジア」に収録。

その他

  • 登場人物「深町」「浅倉」「福島」の姓は、SF関係者である、深町眞理子浅倉久志福島正実から取られた、と言われる。
  • 映画版のパロディとして、ハウス食品がインスタントラーメン「303」のCMで「お湯をかける少女」編を制作した。主演は工藤夕貴
  • 南野陽子主演の『月曜ドラマランド』版の放送は1985年11月4日で、彼女の代表作となる『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』第1話放送の3日前であった。
  • 『月曜ドラマランド』版では、深町一夫役を中川翔子(1985年5月5日生まれ)の父、中川勝彦(1962年 - 1994年)が演じている。彼女は幼少の頃より亡き父親の姿が見られるというので、幾度となくこの作品をビデオで観ているという。なお、一番著名な原田知世版は近年まで観る機会がなかったとのことである。
  • バンダイ(当時の発売元。後のバンダイナムコゲームス)から1998年秋頃にプレイステーション用ソフトとして発売される予定であったが、発売中止となっている(発売が見送られた理由については不明)。なおキャラクターデザインは桜野みねね、シナリオは山口宏で、川上とも子草尾毅松野太紀らの出演が予定されていた。
  • Matthew南(藤井隆)が司会を務める『Matthew's Best Hit TV+』(2001年 - 2006年)の深夜枠移動(2006年)のお知らせで、原田知世版の映画のラストシーンを使用した。マシューに時間移動を知らせるADの名前が「深町」と、マシューのこの映画へのオマージュが感じられる内容となった。
  • 2006年に出された新装文庫版(小説)では、新たに江藤茂博が解説を寄せている。
  • 繰り返し映像化されていることから、筒井はしばしば本作に「金を稼いでくれる孝行娘」といった表現をおこなっている。出演したテレビ番組では、2007年の『BSアニメ夜話』(アニメ映画版を取り上げた回)[2]や、2010年版の制作が公表された後の『ビーバップ!ハイヒール』(朝日放送)で見られた。
  • 筒井はライトノベルの盛況を見てライトノベルを書き始めたがTBSの『オトナの!』に中川翔子と出演したときに「ライトノベルを最初に書いたのはおれだよ『時をかける少女』。40年前だよ」と『時をかける少女』を以て「ライトノベルの最初」と発言している。

脚注

  1. ^ キャラメルボックス30th vol.3『時をかける少女』”. 演劇集団キャラメルボックス. 2015年4月2日閲覧。
  2. ^ キネ旬ムック『BSアニメ夜話 VOl.9 時をかける少女』キネマ旬報社、2008年、p.66 - 67。筒井は「あとは『パプリカ』や『七瀬』とか言いますけどね、この娘が一番良く稼いでくれる」とも述べている。