日本国憲法第67条

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日本国憲法 第67条(にほんこくけんぽう だい67 じょう)は日本国憲法第5章内閣」にある条文の一つ。内閣総理大臣の指名、衆議院優越について規定する。

条文

内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ[1]

衆議院参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする[1]

解説

1項

内閣の活動に空白が生じないために定められ、すべての案件には緊急を要する案件も含まれる。ただし、指名のための投票を行う前提として最低限必要となる議院の構成手続(議長・副議長の選出、座席の指定、会期の決定等)は首班指名よりも先に行われる。また、「国会議員の中から」とあるため、超然内閣中間内閣(政党員以外の者を首班とし多くの閣僚を政党以外から取るが若干の政党出身者を入閣させる)はもとより、国会議員以外の者を首班とする政党内閣も否定されることとなる。

2項

衆議院と参議院の指名が異なった場合の調整に関する規定で、2015年10月現在、衆議院参議院で異なった指名を議決した例は5回ある。いずれも両院協議会を開いているが、すべて協議会で決着が着かず、本規定に従い衆議院の指名が優先された。

沿革

大日本帝国憲法[2]
第十條 天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ條項ニ依ル
第五十五條 國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
凡テ法律勅令其ノ他國務ニ關ル詔勅ハ國務大臣ノ副署ヲ要ス
憲法改正要綱
二十[3] 第五十五条第一項ノ規定ヲ改メ国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ帝国議会ニ対シテ其ノ責ニ任スルモノトシ且軍ノ統帥ニ付亦同シキ旨ヲ明記スルコト
二十一[3] 衆議院ニ於テ国務各大臣ニ対スル不信任ヲ議決シタルトキハ解散アリタル場合ヲ除ク外其ノ職ニ留ルコトヲ得サル旨ノ規定ヲ設クルコト(要綱二参照)
GHQ草案
  • (日本語)
第五十五条[4] 国会ハ出席議員ノ多数決ヲ以テ総理大臣ヲ指定スヘシ総理大臣ノ指定ハ国会ノ他ノ一切ノ事務ニ優先シテ行ハルヘシ
国会ハ諸般ノ国務大臣ヲ設定スヘシ
  • (英語)[4]
Article LV. The Diet by a majority vote of those present shall designate the Prime Minister. The designation of a Prime Minister shall take precedence over all other business of the Diet.
The Diet shall establish the several Ministries of State.
憲法改正草案要綱
第六十三[5] 内閣総理大臣ハ国会ノ決議ヲ以テ選定スルコト此ノ選定ハ他ノ凡テノ議事ニ先チ之ヲ行フベキコト
衆議院ト参議院トガ異リタル選定ヲ為シタル場合ニ於テ法律ノ定ムル所ニ依リ両議院ノ協議会ヲ開クモ仍意見一致セザルトキハ衆議院ノ決議ヲ以テ国会ノ決議トスルコト
憲法改正草案
第六十三条[6] 内閣総理大臣は、国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて二十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
帝国憲法改正案[7]
第六十三条 内閣総理大臣は、国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて二十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
日本国憲法
第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

脚注

  1. ^ a b 日本国憲法”. 法令データ提供システム. 総務省. 2009年9月1日閲覧。
  2. ^ 東京法律研究会 p.6/11
  3. ^ a b 3-12 GHQに提出した「憲法改正要綱」”. 日本国憲法の誕生. 国立国会図書館. 2009年9月1日閲覧。
  4. ^ a b 3-15 GHQ草案 1946年2月13日”. 日本国憲法の誕生. 国立国会図書館. 2009年9月1日閲覧。
  5. ^ 3-22 「憲法改正草案要綱」 の発表”. 日本国憲法の誕生. 国立国会図書館. 2009年9月1日閲覧。
  6. ^ 3-25 口語化憲法草案の発表”. 日本国憲法の誕生. 国立国会図書館. 2009年9月1日閲覧。
  7. ^ 「帝国憲法改正案」、国立国会図書館「日本国憲法の誕生」。

参考文献

関連項目