旅滬型駆逐艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。123.117.35.54 (会話) による 2016年3月24日 (木) 13:44個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎装備)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

旅滬型駆逐艦 (052型)
艦級概観
艦種 駆逐艦
艦名 中華人民共和国の都市 (副省級市)
前級 旅大III型 (051G型)
次級 旅海型 (051B型)
性能要目
排水量 基準: 4,800トン
満載: 5,700トン
全長 148.0 m
水線長 142.6 m
全幅 16.0 m
吃水 7.5 m
機関 CODOG方式
MTU 12V1163 TB83
ディーゼルエンジン
(4,420馬力)
2基
(1番艦) LM2500ガスタービンエンジン (26,800 shp) 2基
(2番艦) DN80ガスタービンエンジン
スクリュープロペラ 2軸
速力 31.5ノット
航続距離 4,000海里(15ノット巡航時)
乗員 266人
兵装 H/PJ-33A 100mm連装砲 1基
H/PJ-76A 37mm連装機銃
H/PJ-12の2基に後日換装
4基
HHQ-7短SAM 8連装発射機 1基
YJ-8 SSM 連装発射筒
YJ-83の4連装発射筒に後日換装
4基
75式12連装240mm対潜ロケット砲 (FQF-2500)
※87式6連装252mm対潜ロケット砲(FQF-3200)に後日換装
2基
3連装短魚雷発射管
(Yu-7短魚雷用)
2基
艦載機 Z-9C哨戒ヘリコプター 2機
C4I SNTI-240衛星通信装置
HN-900戦術データ・リンク
ZKJ-4B/6戦術情報処理装置
FCS 344型 主砲・SSM用 1基
345型 短SAM用 1基
347G型 機銃用 2基
レーダー 518型 対空捜索用
517A型英語版に後日換装
1基
363型 対空・対水上用 1基
362型 低空警戒用
364型に後日換装
1基
RM-1290 航海用 1基
ソナー SJD-8/9 艦首装備式 1基
ESS-1 可変深度式 1基
電子戦
対抗手段
862C型(BM-8610)

旅滬型駆逐艦(るふがたくちくかん、: Luhu-class destroyer)は、中国人民解放軍海軍駆逐艦の艦級に対して付与されたNATOコードネーム。中国人民解放軍海軍での名称は052A型駆逐艦中国語: 052A型驱逐舰)[1]

西側技術を大規模に導入し、中国の新しい海洋戦略に基づく初の外洋型大型艦として建造された[2]。2隻が建造されたが、ほぼ同等の装備でより安価な江衛型フリゲートの実用化により、後続艦の建造はなされなかった。

設計

本型は、竣工時点では中国が建造した最大の水上戦闘艦であった。船体は乾舷の高い遮浪甲板型とされており、大型の艦橋構造物や太い単煙突、また後部に航空艤装を設けた配置と相まって、フランス海軍ジョルジュ・レイグ級駆逐艦との類似性も指摘されている[2]

主機関としては、人民解放軍海軍の水上戦闘艦としては初めてガスタービンエンジンを採用しており、1番艦ではアメリカ製のゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジンをドイツ製のV型12気筒機関であるMTU 12V1163 TB83ディーゼルエンジンと組み合わせたCODOG機関とされた。ただし1989年の六四天安門事件を受けてアメリカからの軍事技術供与が停止されたため、2番艦では、ほぼ同出力のウクライナ製DN80ガスタービンエンジンが搭載されたとされている[2][3]

装備

近代化改修前の「青島」

1980年代後半より、中国海軍では051・051D型駆逐艦(旅大型)をテストベッドとして、西側のテクノロジーによる防空システムや哨戒ヘリコプターの運用を模索しており、これらの各種装備を、新設計の艦体に搭載した新型艦として開発されたのが本型といえる。

防空システムは、1991年に051DT型「開封」で導入されたフランス製品をもとに、051G型で搭載された山寨版が踏襲されており、対空・対水上捜索用の363型レーダーZKJ-4戦術情報処理装置[4]HHQ-7個艦防空ミサイル・システムが連接されている。対空・対水上捜索用の363型レーダーは前檣上に、またHHQ-7の火器管制レーダーである345型レーダーは艦橋上に、HHQ-7の8連装発射機は船楼前端に設置された。

一方、航空艤装については、1987年から051型「済南」で試験されていたものがおおむね導入されている。後部上部構造物は哨戒ヘリコプター2機分のハンガーとされた。その後方の艦尾甲板はヘリコプター甲板とされており、ここにはフランス製のSAMAHE着艦拘束装置と機体移送装置2条が設けられている[3]

主砲としては、051G型と同様にH/PJ-33A 56口径100mm連装砲が搭載されたが、本型では砲盾の形状を改めて軽量化を図るなどした小改正型の79A/92型とされた[5]

近代化改修

「哈爾浜」は2010~2011年頃、「青島」は2011~2012年頃に近代化改修を受け、YJ-8A連装発射筒をYJ-83四連装発射筒に、75式12連装240mm対潜ロケット砲を87式6連装252mm対潜ロケット砲を換装され、CIWSも051G型と同じく76A式37mm連装機銃H/PJ-76A4基を30mmガトリング砲を用いた730型H/PJ-122基に換装された[1]

また、363型レーダーを補完して、長距離捜索用の518型レーダーが後部上部構造物上に、また低空警戒用の362型レーダーが後檣上に設置されていたが[3]、改装で、前者は古典的な517A型レーダー英語版に換装、また後者も新しい標準である364型レーダーに更新された[1]

ソナーも051G2型と同様の構成であるが、いずれも山寨化されたとみられており、艦首装備のものはDUBV-23を山寨化したSJD-8/9、可変深度式のものはDUBV-43を山寨化したESS-1とされている。ただし可変深度ソナーの曳航体の外見がDUBV-43と若干異なっていたことから、艦首装備のものも含めて、アメリカ合衆国レイセオン社のDE-1164システムではないかという異説もある[6]

同型艦

艦番号 艦名 造船所 起工 進水 就役 配備先
112 哈爾浜
(Harbin)
上海江南造船廠 1990年
5月24日
1991年
6月
1993年
2月2日
北海艦隊
113 青島
(Qingdao)
1991年 1993年
10月
1996年
3月

活動状況

2012年10月16日には、中国海軍艦隊7隻が太平洋から東シナ海へ向かって、沖縄県与那国島の南南東約49kmの海上を航行しているのを海上自衛隊P-3が確認したと防衛省が発表している。中国中央電視台は、山東省青島市に帰港したのは北海艦隊所属の7隻で、旅滬型の112 哈爾浜が艦隊の指揮を執り、瀋陽級駆逐艦(116 石家荘)・江凱型フリゲート(546 塩城)・江衛型フリゲート(528 綿陽)などで構成されていたと報じている[7]。なお、哈爾浜には、中国海軍で初めて10人の女性軍人が遠洋任務に就いていた。

2013年1月30日に中国国営通信社新華社は、113 青島が、江凱型フリゲート2隻(538 煙台・546 塩城)とともに青島市を29日に出航したと報じた。西太平洋やバシー海峡などで軍事演習を行うため、東シナ海から宮古島沖(宮古島ー沖縄本島間)を抜ける見通しとされる[8]

参考文献

  1. ^ a b c 「写真特集 今日の中国軍艦」『世界の艦船』第816号、海人社、2015年5月、21-51頁、NAID 40020406561 
  2. ^ a b c 梅野和夫「ソ連式から西側志向へ 中国駆逐艦の変針」『世界の艦船』第587号、海人社、2001年10月、98-99頁。 
  3. ^ a b c Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. pp. 117-118. ISBN 978-1591149545 
  4. ^ 陸易「中国軍艦のコンバット・システム」『世界の艦船』第748号、海人社、2011年10月、94-97頁、NAID 40018965309 
  5. ^ 「世界の艦載兵器」『世界の艦船』第811号、海人社、2015年1月、111頁、NAID 40020297435 
  6. ^ James C. Bussert、Bruce A. Elleman『People's Liberation Army Navy: Combat System Technology, 1949-2010Naval Institute Press、2011年。ISBN 978-1612510323https://books.google.co.jp/books?id=ERwSQC8r868C 
  7. ^ 中国海軍艦隊が釣魚島海域に初進入 - チャイナネット(2012年10月21日)
  8. ^ 演習出港の中国軍艦、宮古海峡を通過予定 日本へ示威行為 - MSN産経ニュース(2013年1月30日)

外部リンク