新潮新人賞

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新潮新人賞(しんちょうしんじんしょう)は、新潮社が主催する純文学の公募新人文学賞である。受賞作の発表は同社が刊行する文芸誌『新潮』で行われる。毎年3月31日締め切り。

純文学系の公募している新人賞には他に、文學界新人賞群像新人文学賞すばる文学賞文藝賞太宰治賞などがある。

概要[編集]

  • 1968年、新潮文芸振興会が三大新潮賞のひとつとして開始した。
    • 当時の名称は新潮文学新人賞
    • 同人雑誌賞の後継として運営されていたため、選考対象も『新潮』に応募された同人雑誌の中から、編集部による選考を経て『新潮』3月号の同人雑誌特集に掲載された作品とされていた。
    • 受賞作は『新潮』5月号に再掲載され、受賞者には記念品と副賞として賞金20万円が、また受賞者の所属同人雑誌にも賞金10万円が授与された。
  • 第4回から応募規定を変更し公募新人賞となる。対象は小説のみ。
    • 候補作は『新潮』6月号に掲載され、受賞作は『新潮』8月号に再掲載された。
    • 受賞者には記念品と副賞として賞金は30万円が授与された。
  • 第10回から候補作の掲載をやめ、受賞作が『新潮』8月号に掲載されるのみとなった。
  • 第20回より主催が『新潮』編集部に移行する。
    • 規定が変更され、小説評論ノンフィクションを対象とする賞となる。
    • 副賞の賞金が50万円に増額される。
    • 受賞作の掲載が『新潮』11月号になる。
  • 第31回より新潮新人賞と名を改め、同時に小説部門と評論・ノンフィクションの2部門制に変更した。
  • 2008年の第40回より評論・ノンフィクション部門を廃止し、小説のみの募集となった。
  • 現在、受賞作は『新潮』11月号に掲載され、受賞者には正賞として特製記念ブロンズ楯、副賞として50万円が授与される。

受賞作の一覧[編集]

小説部門[編集]

回(年) 応募総数 受賞作 枚数 受賞者 掲載 備考
第1回(1969年) 170編 「ママは知らなかったのよ」[注 1] 北原亞以子 『新潮』1969年5月号
第2回(1970年) 120編 「老父」 倉島斉 『新潮』1970年5月号
第3回(1971年) 205編 「しかして塵は―」 須山静夫 『新潮』1971年5月号
第4回(1972年) 120編 「魔法」[注 2] 山本道子 『新潮』1972年5月号
第5回(1973年) 570編 「流蜜のとき」 太田道子 『新潮』1973年8月号 第70回芥川賞候補
「剥製博物館」 泉秀樹 『新潮』1973年8月号
第6回(1974年) - 該当作なし
第7回(1975年) 360編 「浮遊」 宮本徳蔵 『新潮』1975年8月号
第8回(1976年) 350編 「ウォークライ」 笠原淳 『新潮』1976年8月号
第9回(1977年) 570編 「榧の木祭り」 高城修三 『新潮』1977年8月号 第78回芥川賞受賞
第10回(1978年) 485編 該当作なし
【佳作】「チャズ」 替田銅美 『新潮』1978年7月号
【佳作】「紫陽花を踏め」 野瀬圭子 『新潮』1978年7月号
第11回(1979年) 613編 該当作なし
【佳作】「毛鉤」 田中知太郎 『新潮』1979年7月号
【佳作】「坂の辛夷」 別所真紀子 『新潮』1979年7月号
【佳作】「雨」 中岡典子 『新潮』1979年7月号
第12回(1980年) 715編 「二十歳の朝に」 木田拓雄 『新潮』1980年7月号
「僕の出発」 運上旦子 『新潮』1980年7月号
第13回(1981年) 718編 「橋の上から」 川勝篤 『新潮』1981年7月号
「幻の川」 小田泰正 『新潮』1981年7月号
第14回(1982年) 811編 「カメ男」 小磯良子 『新潮』1982年7月号
「野餓鬼のいた村」[注 3] 加藤幸子 『新潮』1982年7月号
第15回(1983年) 763編 「ハイデラパシャの魔法」 左能典代 『新潮』1983年7月号
第16回(1984年) 734編 「星からの風」 青木健 『新潮』1984年8月号
「夏の淵」(『夏の記憶』と改題) 高瀬千図 『新潮』1984年8月号 第92回芥川賞候補
第17回(1985年) 785編 「過越しの祭り」 米谷ふみ子 『新潮』1985年7月号 第94回芥川賞受賞
第18回(1986年) 750編 該当作なし
第19回(1987年) 817編 「カワセミ」 図子英雄 『新潮』1987年7月号 第98回芥川賞候補
第20回(1988年) 713編 「温かな素足」 上田理恵 『新潮』1988年11月号
第21回(1989年) 715編 「縄文流」 杉山恵治 『新潮』1989年11月号
第22回(1990年) 711編 「ランタナの花が咲く頃に」 長堂英吉 『新潮』1990年11月号
「ドッグ・デイズ」 藤枝和則 『新潮』1990年11月号
第23回(1991年) 691編 「十二階」 小口正明 『新潮』1991年11月号
第24回(1992年) 671編 「螺旋の肖像」 別唐晶司 『新潮』1992年11月号
「カワサキタン」[注 4] 中山幸太 『新潮』1992年11月号
第25回(1993年) 718編 「骸骨山脈」 野間井淳 『新潮』1993年11月号
第26回(1994年) 814編 該当作なし
第27回(1995年) 918編 「紅栗」 冬川亘 『新潮』1995年11月号
第28回(1996年) 976編 「マンモスの牙」 小山右人 『新潮』1996年11月号
第29回(1997年) 978編 「叶えられた祈り」[注 5] 萱野葵 『新潮』1997年11月号
第30回(1998年) 1002編 「底抜け」 青垣進 『新潮』1998年11月号
第31回(1999年) 916編 「クレア、冬の音」 遠藤淳子 『新潮』1999年11月号
第32回(2000年) 1058編 「生活の設計」 佐川光晴 『新潮』2000年11月号
第33回(2001年) 1025編 「グラウンド」(「よしわら」に改題) 鈴木弘樹 『新潮』2001年11月号 第126回芥川賞候補
第34回(2002年) 1062編 「フェイク」 犬山丈 『新潮』2002年11月号
「銃」 中村文則 『新潮』2002年11月号 第128回芥川賞候補
第35回(2003年) 1275編 「四十日と四十夜のメルヘン」 青木淳悟 『新潮』2003年11月号
「家畜の朝」[注 6] 浅尾大輔 『新潮』2003年11月号
第36回(2004年) 1518編 「真空が流れる」[注 7] 佐藤弘 『新潮』2004年11月号
第37回(2005年) 1940編 「冷たい水の羊」[注 8] 田中慎弥 『新潮』2005年11月号
第38回(2006年) 1885編 「ポータブル・パレード」 吉田直美 『新潮』2006年11月号
第39回(2007年) 1910編 「アウレリャーノがやってくる」 高橋文樹 『新潮』2007年11月号
第40回(2008年) 2077編 「クロスフェーダーの曖昧な光」[注 9] 飯塚朝美 『新潮』2008年11月号
第41回(2009年) 2078編 「神キチ」 赤木和雄 『新潮』2009年11月号
第42回(2010年) 2030編 「工場」 小山田浩子 『新潮』2010年11月号
「ののの」 太田靖久 『新潮』2010年11月号
第43回(2011年) 1933編 「楽器」[注 10] 滝口悠生 『新潮』2011年11月号
第44回(2012年) 1870編 「肉骨茶」 高尾長良 『新潮』2012年11月号 第148回芥川賞候補
「黙って喰え」 門脇大祐 『新潮』2012年11月号
第45回(2013年) 2039編 「太陽」[注 11] 上田岳弘 『新潮』2013年11月号 第27回三島賞候補
第46回(2014年) 1807編 「指の骨」 高橋弘希 『新潮』2014年11月号 第152回芥川賞候補
第47回(2015年) 1828編 「恐竜たちは夏に祈る」[1] 高橋有機子 『新潮』2015年11月号
第48回(2016年) 1933編 「二人組み」[2] 鴻池留衣 『新潮』2016年11月号
「縫わんばならん」 古川真人 『新潮』2016年11月号 第156回芥川賞候補
第49回(2017年) 1969編 「蛇沼」[3] 佐藤厚志 『新潮』2017年11月号
「百年泥」 石井遊佳 『新潮』2017年11月号 第158回芥川賞受賞
第50回(2018年) 2099編 「いかれころ」 三国美千子 『新潮』2018年11月号 第32回三島賞受賞
第51回(2019年) 1972編 「尾を喰う蛇」 230枚 中西智佐乃 『新潮』2019年11月号
第52回(2020年) 2042編 「わからないままで」 130枚 小池水音 『新潮』2020年11月号
「追いつかれた者たち」 220枚 濱道拓 『新潮』2020年11月号
第53回(2021年) 2396編 「彫刻の感想」 160枚 久栖博季 『新潮』2021年11月号
第54回(2022年) 2630編 「世界地図、傾く」[注 12] 220枚 黒川卓希 『新潮』2022年11月号
第55回(2023年) 2788編 「海を覗く」 240枚 伊良刹那 『新潮』2023年11月号 最年少受賞
「シャーマンと爆弾男」 110枚 赤松りかこ 『新潮』2023年11月号

評論部門[編集]

回(年) 応募総数 受賞作 受賞者 掲載 備考
第31回(1999年) 320編 「渦中であるということ」[注 13] 酒井隆之 『新潮』1999年11月号
第32回(2000年) 299編 「媒介と責任」 中島一夫 『新潮』2000年11月号
第33回(2001年) 250編 該当作なし
第34回(2002年) 133編 該当作なし
第35回(2003年) 86編 「〈一〉と〈二〉をめぐる思考」 松井博之 『新潮』2003年11月号
第36回(2004年) 49編 該当作なし
第37回(2005年) 84編 該当作なし
第38回(2006年) 76編 該当作なし
第39回(2007年) 98編 「宮澤賢治の暴力」 大澤信亮 『新潮』2007年11月号

第39回をもって休止となった。

選考委員[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 『こはだの鮓(すし)』に所収
  2. ^ 「ベティさんの庭」に所収
  3. ^ 「夢の壁」(単行本のみ)に収録
  4. ^ 『人人人人』に所収
  5. ^ 「Merci la vie」に改題し『ダイナマイト・ビンボー』所収
  6. ^ 『ブルーシート』に所収
  7. ^ 「すべては優しさの中へ消えていく」より改題
  8. ^ 『図書準備室』に所収
  9. ^ 『地上で最も巨大な死骸』に所収
  10. ^ 『寝相』に所収
  11. ^ 『太陽・惑星』に所収
  12. ^ 「gurgle」より改題
  13. ^ 「賭け、待ち、決着す―三島由紀夫と近代の青春」より改題

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]