指令誘導

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指令誘導英語: command guidance)は、ミサイルが外部の射撃指揮装置の指令に従って操舵・誘導する方式。

手動操縦

最も初期の誘導爆弾であるフリッツXAZONでは人間が目測で進路のずれを観測し、操縦装置を操作して有線でミサイルに対して進路の補正を命令した。この方式はリモコン操縦方式とも呼ぶ。

指令照準線一致

指令照準線一致英語: Command to Line Of Sight, CLOS)誘導方式は、外部の射撃指揮装置が目標を追尾する際の照準線と、実際のミサイルの針路とのずれをもとにして、ミサイルに針路を修正するよう指示する方式。すなわち、目標の捕捉・追尾や、ミサイルの誘導・操舵に必要な情報処理はすべて外部の射撃指揮装置において行なわれることになる。射撃指揮装置が目標を捕捉する際に、どれだけ人間に依存するかに応じて、下記のように分類される。

手動指令照準線一致

手動指令照準線一致英語: Manually CLOS, MCLOS)誘導方式は、CLOS誘導のうち、射撃指揮装置による目標捕捉・追尾から情報処理に至るまでを全面的に人間に依存する方式である。すなわち、人間が射撃指揮装置を操作して目標を照準し、照準線とミサイルの進路とのずれを計測して、さらに操縦装置を操作して有線でミサイルに対して進路の補正を命令するものである。9M14マリュートカ(AT-3サガー)に代表される第一世代型対戦車ミサイルで主用された。

最初期の手動操縦よりは改善されたものの、依然として人間への依存度が高く、操作員の技量に左右される部分が大きかった。このことから、より自動度を高めて開発されたのが、下記の半自動指令照準線一致(SACLOS)誘導方式である。

半自動指令照準線一致

半自動指令照準線一致英語: Semi-Automatic CLOS, SACLOS)誘導方式は、射撃指揮装置による目標捕捉・追尾は人間に依存するものの、ミサイルの誘導・操舵に必要な情報処理は自動的に行なわれる方式である。すなわち、操作員が射撃指揮装置を操作して目標を照準し、射撃指揮装置が照準線とミサイルの進路とのずれを自動計測し、ミサイルに対して進路の補正を命令する。操作員はミサイルが命中するまで目標を照準しつづけなければならないため、半自動とされる。

技術的に簡単で安価であることもあり、西側の代表的な対戦車ミサイルであるTOWをはじめとして、第二世代型対戦車ミサイルによく使われる。当初は、ミサイルと射撃指揮装置とは有線で接続されており、ミサイルはワイヤーを曳いて飛ぶ必要があったが、のちに無線やレーザービームによる方式も実用化された。

ビームライディング

照準線ビームライディング誘導英語: Line-Of-Sight Beam Riding Guidance, LOSBR)方式は、外部の射撃指揮装置が目標を追尾する際の照準線と、実際のミサイルの針路とのずれをもとにして、ミサイル自身が針路を修正する方式。通常、照準線は電磁波ビーム(レーダービームないしレーザービーム)の形をとっており、ミサイルはこのビームに乗り続けるよう自動制御する形となることからこの名前がある。

外部の射撃指揮装置が目標を追尾する際の照準線を基準とする点では指令照準線一致(CLOS)誘導方式と類似するが、制御をミサイル自身が行なうという点で異なっている。自動誘導方式としては最初に開発されたものであり、同時期に用いられていたMCLOSより優れていた。

指令照準線非一致

指令照準線非一致英語: Command Off Line-Of-Sight, COLOS)は、射撃指揮装置が目標とミサイルの双方を追尾し、双方の針路が交錯するよう、ミサイルに対して比例航法(PN)あるいは増強比例航法(APN)に基づく操舵を指令する誘導方式である。いわばCLOS誘導とホーミング誘導の中間的な手法と言える。

終末誘導において電波ホーミング誘導光波ホーミング誘導を採用した機種において、中間誘導(midcourse guidance)として採用されることが多い。

参考文献

  • 防衛技術ジャーナル編集部「第1章 ミサイルシステム概説」『兵器と防衛技術シリーズ3 ミサイル技術のすべて』防衛技術協会、2006年、1-21頁。ISBN 978-4990029821 
  • M P Horton「Autopilots for Tactical Missiles: An Overview」(PDF)『Journal of Systems and Control Engineering』第209巻、IMechE、1995年5月、127-139頁。