拉致問題対策本部
拉致問題対策本部(らちもんだいたいさくほんぶ)は、日本の内閣に設置された機関。
概要
北朝鮮による日本人拉致問題への政府の取組みを強化するため鳩山由紀夫内閣によって新たに設置された機関である。2009年10月13日の閣議決定により設置された。本部は内閣に、事務局は内閣官房に属する。政府が省庁横断で拉致事件へ対応していくことを目的としている。
2006年9月29日に安倍内閣における閣議決定で設置された全閣僚を構成員とする旧拉致問題対策本部を廃止し、陣容を改めて発足させたものである。情報収集面では旧拉致問題対策本部よりも人員・予算を増加させた。
一方で、能力不足により情報収集費が十分使われておらず執行率が低いと与党議員から国会で問題視されたり、会計操作が報じられたりするなど、多くの課題を抱えている[1][2]。産経新聞によれば、予算の7割が使われていないにもかかわらず、職員は情報収集のため自腹を切っている[3]。
不祥事
2015年12月17日未明、拉致問題対策本部に出向中の警察庁警備局の男性警部が、立川市の多摩都市モノレール立川北駅のエスカレーターで、20代女性のスカート内にスマートフォンを差し向けた盗撮容疑で、警視庁立川署によって東京都迷惑防止条例違反容疑で逮捕された。同署によると容疑を認め、「前の女性がスカートをはいていて、盗撮してみたいと思った」と話している。警部は酒を飲んで帰宅しているところだった。目撃者の男性に取り押さえられ現行犯逮捕された[4]。
2012年には、職員が騙されて支出した200万円を捻出するため不正会計操作が行われていたり、三谷秀史事務局長代理と参事官との間の内扮で機能不全に陥っていたり、民間委託で利権が生まれているといった内容の内部告発が出た[2]。
批判
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)元副代表の蓮池透は著書『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』の82ページで、「いまは削除されているが、以前、対策本部のホームページに赤い大きな文字で、「アイデア募集」と掲出されたことがあった。私はそれを見てカチンときた。「自ら戦略を練らなければならない組織が一般にアイデアを募るとは、どういうことか」と抗議の電話をした。対応した職員は、「あれは啓発活動に関するアイデアの募集でして・・・・・」と釈明するので、「いずれにせよアイデアを一般に募るということは、組織の機能という面で末期症状ではないのか」といい帰した。すると「そうかもしれませんね」と、いけしゃあしゃあといってのける・・・・・失望の極みだったが、もう触れたくない」と酷評した。
特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は、拉致問題対策本部が作っているテレビCMについて、「正直なところ、これを見て「人を馬鹿にしているのか」と思いました。民間か自治体が作るならともかく、政府の拉致問題対策本部がこんな人ごとのようなCMを作っている神経を疑います」と評した[5]。また拉致問題対策本部が行っている「拉致問題啓発コンサート」について、「今の企画では何のためにやるのか全く分からず、税金の無駄遣い以外の何者でもありません」「誘拐犯のところに高級官僚を送って「最重要課題ですよ」と言わせる一方でプロの歌手でコンサートというのはほとんどジョークです。人質をとって立てこもっている犯人のところに警察署長が「私たちはこの問題を大事だと思っています」と言いながら、一方で「人質救出のためのカラオケ大会」でもやるようなものです」と酷評した[6]。
構成員
本部長には内閣総理大臣が就く。副本部長には内閣官房長官、外務大臣、そしてもう1名の国務大臣が就く。この国務大臣は、主任の大臣や内閣府特命担当大臣とは異なり、国務大臣としての所管事項として「北朝鮮による拉致問題の早期解決を図るため企画立案及び行政各部の所管する事務の調整」を担当する者である。俗称として「拉致問題担当大臣」「拉致問題担当相」「拉致問題相」「拉致相」などと表現されることもある。内閣官房長官や国家公安委員会委員長、法務大臣が兼任することが多い。
歴代の構成員
本部長
平成21年10月13日閣議決定に基づき、本部長には内閣総理大臣が就く。
副本部長
平成21年10月13日閣議決定に基づき、本部長には国務大臣として「北朝鮮による拉致問題の早期解決を図るため企画立案及び行政各部の所管する事務の調整」を担当する者、および、内閣官房長官、外務大臣が就く。
拉致問題担当大臣
国務大臣(北朝鮮による拉致問題の早期解決を図るため 企画立案及び行政各部の所管する事務の調整担当) | |||||||
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氏名 | 内閣 | 就任日 | 退任日 | 党派 | 備考 | ||
塩崎恭久 | 第1次安倍内閣 | 2006年9月26日 | 2007年8月27日 | 自由民主党 | |||
与謝野馨 | 改造内閣 | 2007年8月27日 | 2007年9月26日 | 自由民主党 | |||
町村信孝 | 福田康夫内閣 | 2007年9月26日 | 2008年8月2日 | 自由民主党 | |||
中山恭子 | 改造内閣 | 2008年8月2日 | 2008年9月24日 | 自由民主党 | |||
河村建夫 | 麻生内閣 | 2008年9月24日 | 2009年9月16日 | 自由民主党 | |||
中井洽 | 鳩山由紀夫内閣 | 2009年9月16日 | 2010年6月8日 | 民主党 | |||
菅内閣 | 2010年6月8日 | 2010年9月17日 | 民主党 | 再任 | |||
柳田稔 | 第1次改造内閣 | 2010年9月17日 | 2010年11月22日 | 民主党 | |||
仙谷由人 | 2010年11月22日 | 2011年1月14日 | 民主党 | ||||
中野寛成 | 第2次改造内閣 | 2011年1月14日 | 2011年9月2日 | 民主党 | |||
山岡賢次 | 野田内閣 | 2011年9月2日 | 2012年1月13日 | 民主党 | |||
松原仁 | 第1次改造内閣 | 2012年1月13日 | 2012年10月1日 | 民主党 | |||
第2次改造内閣 | 民主党 | 留任 | |||||
田中慶秋 | 第3次改造内閣 | 2012年10月1日 | 2012年10月23日 | 民主党 | |||
藤村修 | 2012年10月24日 | 2012年12月26日 | 民主党 | ||||
古屋圭司 | 第2次安倍内閣 | 2012年12月26日 | 2014年9月3日 | 自由民主党 | |||
山谷えり子 | 改造内閣 第3次安倍内閣 |
2014年9月3日 | 2015年10月7日 | 自由民主党 | |||
ファイル:Katsunobu Kato cropped 1 Shinzo Abe Mike Penning Katsunobu Kato and Keiichi Hayashi 20130616.jpg | 加藤勝信 | 第3次安倍改造内閣 | 2015年10月7日 | 現職 | 自由民主党 |
- 緊急施策等の特命事項の担当を命ぜられた国務大臣は、常設必置でないことから通常は代数の表記は行わない。そのため、本表では代数の欄を設けない。
- 辞令のある再任は就任日を記載し、辞令のない留任は就任日を記載しない。
- 「党派」の欄は、就任時、および、内閣発足時の所属政党を記載した。
庶務
本部の庶務は、内閣官房に置かれる拉致問題対策本部事務局が行う。
- 事務局長 - 拉致問題担当大臣
脚注
- ^ “衆議院拉致問題特別委員会ニュース” (PDF). 2013年9月26日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b “「拉致問題対策本部 内紛劇を暴く!」”. SPA! 2012年2月7日・14日合併号 (2012年1月30日). 2013年9月26日閲覧。
- ^ “拉致問題対策本部予算、7割使われず 膠着状態浮き彫りに”. MSN産経ニュース. (2012年1月31日)[リンク切れ]
- ^ 盗撮容疑で拉致対事務局の警部を逮捕 警視庁 産経新聞 2015年12月18日
- ^ [1]
- ^ [2]