彩雲国物語の登場人物

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彩雲国物語の登場人物(さいうんこくものがたりのとうじょうじんぶつ)では、ライトノベルアニメ漫画彩雲国物語』に登場する人物について説明する。

声優は、アニメ版 / ドラマCD版である。

紫州組

紅 秀麗(こう しゅうれい)
本作の主人公。紅秀麗を参照
紫 劉輝(し りゅうき)
声:関智一 / 幼少:岡村明美
彩雲国国王。秀麗より3歳上。先王戩華の第六公子として生まれ、母親や異母兄達に邪険にされて育った為、無意識の内に相手に好かれるよう性格を作っていた。愛情に対して貪欲。異母兄の中で唯一優しかった第二公子・清苑が戻って来ることを望み、兄に王位を受け渡すために昏君のふりをしていた。秀麗に出会って以降本来の能力を発揮し、政務にはげむ。後世、その治世を「最上治」と讃えられる賢君となる。
学問は邵可、剣術は宋太傅仕込み。文武両道だが、天然ボケで世間知らずなお子様かつ、寂しがり屋・素直・優しい性格。言動が幼く、自身の政治基盤を固めることに疎く、自身を支える派閥は皆無。
秀麗を愛し、妃にと望んでいるが決して無理強いはしない。秀麗以外の妃を娶る意志はなく、縁談から逃げ回っていた。リオウ曰く、離別の相が出ている。誰もが一人の人間としてではなく王として接してくることに強い孤独感を抱いている。
本編12巻で、自分の中の「王でありたかった」意思に気付き、本当の王になろうと決意する。その際に、王の義務としての婚姻を遂行するため、十三姫を筆頭女官として後宮に入れる。後に、黎深の吏部尚書解任をきっかけとした紅家をとりまく情勢の急変から、王として「紅家直系長姫」たる秀麗を娶る決断を下す。
一度は旺季に禅譲を決意するも、逃亡中に自身のある思いを自覚し、紅州で冬を過ごし、「戦を起こさない」思いの元、旺季との会談に挑み、一騎打ちで彼に勝利し、自決しようとした旺季に莫邪を譲渡することで彼を守った。
32歳のとき、妻・秀麗との間に1女をもうけた(娘は70歳くらいまで生きた)。
茈 静蘭(し せいらん)
声:緑川光
紅家の家人。秀麗より10歳上。邵可と薔薇姫に拾われて育てられた。茈 静蘭と名付けたのも2人で(名字は邵可が,名前は薔薇姫)、「茈」には紫の意味があり,「静蘭」は「清苑」と母親の「鈴蘭の君(すずらんのきみ)」から。酒には非常に強い。右羽林軍所属の武官。元は十六衛所属の米蔵門番だったが、秀麗や劉輝ら大切な人を守る権限と力を得るため右羽林軍に入隊。州牧専属武官などを経て、現在は鄭悠舜の専属武官。
実は昔流罪になった第二公子・清苑で、劉輝の異母兄。公子の中で一番優秀だった様子。弟想いであり、秀麗以上に劉輝を大切に思っている。このことは楸瑛を奪還すべく藍州に向かった劉輝の留守を守るために、貴陽に留まったのを見た燕青に見抜かれている。茶州州牧専属武官任命の日に、劉輝から国宝級の双剣の片割れ“干將(かんしょう)”(先王から清苑に下賜されたものだったが流罪になった際に手放した)を贈られる。
野菜の値切りから山菜取り、大工仕事まで何でもこなす。いつも微笑を浮かべる優しげな青年だが、正体がばれてからは、時々本性を出す。いくつもの修羅場をくぐってきた所為か、時に陰りのある表情を見せる。
燕青とは以前殺刃賊を滅ぼした旧知の仲で、彼の前では口調も態度も荒々しい。過去を秀麗に知られることが一番嫌。殺刃賊時代の呼び名は「小旋風」。時には年齢不詳を自称する(5歳サバを読んでいる)。蘇芳に対しても、丁寧口調なまま本性を出す。蘇芳には、以前蘇芳にタケノコを投げつけたことから「タケノコ家人」と呼ばれている。
李 絳攸(り こうゆう)
声:檜山修之 / 幼少:金田晶代
前吏部侍郎にして劉輝の側近。秀麗より6歳上。紅黎深の部下で養い子にして、秀麗の義理の従兄。劉輝・静蘭とも義理の従兄弟である。子供の頃、人身御供にされかけていた(アニメでは路上で籤を売っていた)ところ、黎深に人攫い同然に拾われた。元々の名は、黎深より前の養い親がつけた「コウ(光)」。現在の名付け親は黎深、彼の配慮から李姓を与えられた。「李」は黎深の好きな植物であり、「絳」は紅より深い真紅、「攸」は水の流れる様の意味がある。彼自身には黎深の子である誇りと、紅家に囚われずに望む道を生きて欲しい意味が込められている。黎深に拾われたばかりの頃、百合姫と黎深の仲をとりもとうとした。
武術は護身術程度。16歳で国試に状元(一位)及第し、朝廷に入った。生真面目で頑固。公では感情を見せない凄腕の能吏で、「朝廷随一の才人」「次期宰相候補」「鉄壁の理性」と有名だが、実はかなりの短気で感情豊か。劉輝の天然ボケに厳しいツッコミ役。劉輝から藍楸瑛と共に紫の花菖蒲を贈られ、王に最も近い臣下となる。花菖蒲の花言葉は「あなたを信頼します」、紫の花菖蒲にはもう一つの「王の花(秀麗)を守れ」という意味がある。
上述の通り、吏部では「鉄壁の理性」の異名を持つ能吏だが、上司が養父の黎深であったことが災いし、「吏部侍郎たる資格なし」として楊修と陸清雅に追い落とされ、さらに瑠花がかけた術で昏睡状態に陥るが、劉輝や養母である百合、秀麗の頑張りで御史大獄前に回復、辛うじて退官は免れ、長期の謹慎処分となった。
30歩の距離の場所でも迷うほどの方向音痴(※百合姫の策によるもの)。唯一、府庫だけは何とか自力で辿り着ける。楸瑛曰く「元々狂っている感覚に頼らず、深く道を考えない方が迷わない」。
邵可を先人として尊敬、心底敬愛しているが、私生活では全く敵わない。状元及第時の縁談攻勢が原因で女嫌いだが、秀麗とは親しい。秀麗と結婚して次期紅家当主になることを、紅玖琅から望まれている。
藍 楸瑛(らん しゅうえい)
声:森川智之
劉輝の側近だったが、現在は茈静蘭の部下。秀麗より8歳上。藍家出身。藍家の前当主と正妻の間に生まれた直系の男子。藍龍蓮の兄で、藍家三つ子当主達の弟。その他にも異母兄弟・姉妹が多い。絳攸とは国試受験以来の付き合いの親友で、からかっている。絳攸と同じ年に18歳で国試に榜眼(二位)及第するが数年で文官を辞め武官に転向。かつては清苑公子に仕えることを望んでいた。絳攸と共に、劉輝から紫の花菖蒲を贈られる。
女性関係が非常に華々しい。後宮から度々朝帰りをし、珠翠からは毛嫌いされている。一方で、何年も本命(玉華)への適わぬ想いを捨てられずにいた。珠翠にちょっかいをかけることがしばしばある。本編12巻にて珠翠への想いを自覚し、玉華への想いを吹っ切る。軽薄と誤解されがちだが、実は真面目で優しく楽観的で、何か考えているようで何も考えていないお坊ちゃま。いつも迅に頼りっきり。蒼遙姫曰く、藍家で一番運が強い。
王と藍家との狭間で王に本当に忠誠を誓っているのか悩んでいた。一度は王に花と将軍職を返して藍州に帰った。その後兄たちとの賭けで勝ち自ら藍家を勘当され、劉輝に真の忠誠を誓い貴陽へ戻る。本気の実力は、劉輝以上である。羽林軍の中でも大将軍以外は本気を出さなくとも勝てる。
現在は、静蘭の部下の下っ端武官。人使いの荒い静蘭の下で働く自分の行く末に不安を抱いている。王に頼まれ、行方をくらました秀麗を探して縹家に迅とともに赴く(龍蓮に宿った藍仙に飛ばされる)。そして、珠翠を救うべく「時の牢」に入り、蒼遙姫の手助けを得て彼女の元に辿り着き、見事彼女を救う。「骸骨を乞う」では左羽林軍大将軍となっている。
紅 邵可(こう しょうか)
声:池田秀一
秀麗の父。朝廷の文官で、黎深の手回しで秘書省府庫(図書室)に勤めていたが、「黒蝶」にて文官を辞め、貴族派に引きずり出される形で紅家当主に就任。劉輝に恭順の意を示してはいるが、別に劉輝が王である必要はないと主張している。おっとりとした性格で、紅家長子ながら次弟・黎深を紅家当主にたてた際に、妻子と共に貴陽に移り住む。貴陽の邸は邵可が本家を出る際、一族が建てた広すぎるほどの邸だが、妻の急死後、使用人に全ての金品を持ち逃げされ、貧乏になった。
幼い劉輝に勉強を教え、静蘭を保護する。非常に不器用で、彼の淹れる「父茶」は娘すらも裸足で逃げ出す苦さである。実は漢方薬満載である。笑顔で父茶を飲めるのは黎深・劉輝・珠翠だけである。
実は、先王に仕えた暗殺集団“風の狼”の首領、黒狼(こくろう)の二代目。弟達の命を守るために紅家を出た。先代黒狼の死亡により、黒狼の名を継ぐ。黎深ら一部の人間からは紅家一の切れ者と認められている。幼いころから能力の高さをきれいに隠し、玖琅にも気づかせていない。琵琶は大叔母の紅玉環から習ったのでかなりの腕だが、玉環暗殺を境に断固として弾かなくなった。
以前、家庭教師をしていた藍家の三つ子当主たちに非常に慕われ、能力の高さを買われている。楸瑛曰く「邵可が政事に参画すれば藍姓官吏の復帰も早まる」。また、愛娘と国を天秤にかけられるほどの「氷の理性」を持ち、先王に見い出され霄太師に認められたほどの凄腕の政治家だが、非常時のための「切り札」のため、閑職の秘書省・府庫にいた。時折、為政者としての発言をする。静蘭曰く「細君よりは弱いが、酒には強い」。秀麗が生まれる前に拾う形になった珠翠をもう一人の娘と思っている。

朝廷

王家

紫 劉輝
詳細は紫 劉輝の項目を参照。
清苑公子(せいえんこうし)
第二公子。文武両道。劉輝を唯一可愛がる。母親は“鈴蘭の君”。外戚の謀反により流罪となる。
蒼玄王(そうげんおう)
彩雲国初代王。劉輝の先祖。遥かな昔、魑魅魍魎が跋扈していた頃、志を得て魑魅魍魎討伐の旅に出、彩八仙の助力を得て国の礎を築き、人の世に夜明けを拓いたという伝説がある。
蒼周王(そうしゅうおう)
彩雲国第二代国王。劉輝の先祖。秀麗が尊敬する統率者で、蒼玄王の後をついで国を平定した後、食料と財貨を貧しい人々に開放し、全ての武器を溶かして農具や釜に鋳直し、兵車は農業用に民に下げ渡し、全ての軍馬と牛を解き放って、兵士を兵役から解放して家に帰すことで、二度と戦をしないことを天下に示した。
紫 戩華(し せんか)
声:前田剛
故人。先王で劉輝および清苑(静蘭)の父で、名君と誉れ高い。結ばれることはなかったが、幼なじみだった先代黒狼に想いを寄せていた。子は男6人で、それぞれ母が違う。正妃は置いていない。三十過ぎまで妃を置かなかったが、世継ぎを残すため、自分に愛されないことを承知ならという条件で後宮に妃を入れ、子が出来るまでの間だけ妾妃を寵愛した。しかし結局のところ妃たちは彼の覇気に魅入られ、本当に愛して貰おうと愛憎を生み、王位争いにまで発展した。縹家の呪詛を息子・清苑の代わりに受けたために亡くなったとされていたが、本当は旺季に殺された(公式には病死とされている)。
自分以外の王位継承者を殺しつくした『妖公子』『血の覇王』と呼ばれているが、これは彼の王位継承権が下から数えた方が早く、そうでもしなければ王位に就けなかったため。
鈴蘭の君(すずらんのきみ)
声:小野未喜
清苑公子(茈 静蘭)の母で故人。先王の第二妾妃。実家は元紫門四家の家柄で血筋は妃の中で一番高かった。先王を愛し、彼のために劉輝の母を暗殺し、宮中の争いごとの種になる我が子清苑を自分もろとも流罪にするため暗躍した。体が弱く、私室の寝台から一歩も動かなかったにもかかわらずこうした計画を実行し、旺 季や葵 皇毅すら最後まで証拠をつかむことはできなかった。主のため我が子をも追い落とす冷静な判断力とその頭脳は、先王をして「妃ではなく私の臣下にすればよかった」と言わしめる。清苑とともに流罪になった途上、刺客に襲われ殺される。
第六妾妃(だいろくしょうひ)
劉輝の母で故人。先王の第六妾妃。元は貴陽一の妓女であった。鈴蘭が先王の寵妃だと思い込み、嫌がらせをして後宮を追い出した。息子を生んだことで若さと美貌が衰えたと認識しており、劉輝を折檻していた。劇薬入りの化粧品で顔が爛れ醜くなったことから錯乱し、庭の池に飛び込み自殺と思われていたが…。発見したのは息子の劉輝。

尚書省

鄭 悠舜(てい ゆうしゅん)
声:神奈延年
尚書令。紫州出身。前茶州州牧補佐(州尹)。自ら志願して茶州の州尹となった(自主左遷)が、茶州の問題が片付いた後宰相(尚書令)に就任した。補佐時代の十年間、浪燕青の右腕を務めた。
悪夢の国試組の一人で、紅黎深と黄奇人を抑えて状元及第した伝説の人物。紫州州試首席及第。優しく穏やかな人柄だが、かなりの無茶もする。黎深に頼み事や意見ができる数少ない人間の一人。過去に怒って黎深を殴ったことがあり、彼が怒ると黎深と奇人はいつも二人で先に謝りに来るらしい。黎深に大人しく仕事をさせた事で朝廷を震撼させる。
仕事に関しては鬼のように厳しい。
足が悪いが、これは生来のものではなく紅家を訪れた折に拷問と腱の切断を施されたため。歩くことはかろうじてできるが走ったりすることはできず、いずれ全く動かなくなるらしい。
出自が抹消されているが、凌晏樹などごく一部の人間は知っており、その正体は紅家の切り札であり伝説的な軍師の一族「紅家の頭脳」と呼ばれる紅門姫家の唯一の生き残りにして当代の「鳳麟」であった。彼は、約30年前に姫家が先王に滅ぼされる前に次期紅家当主と目した黎深に助けを求めに行ったが、「滅ぶなら勝手に滅べ。私の知ったことか。どうでもいい」という言葉で切り捨てられた。
実は宰相を引き受けたのは自分が成し遂げたいことがあるからで劉輝のためではなかった。実際、劉輝の王位が危ぶまれるようなことも普通にしている。だが悠舜の意志は明らかにされておらず、貴族派なのか、王派なのか、はたまた違うのかは明らかにされていない。すべてを終えたら死ぬつもりでいる。
妻は柴凛。専従護衛官は茈静蘭。静蘭より碁が強い。劉輝に「最後まで」ついていくと言っている。
彼の成し遂げたいことは「最後まで自分を信じる『誰か』に会い、その『誰か』の願いを叶えること」。最後まで自分を信じた劉輝の願いに答え、劉輝と旺季の会談の場に北方三家の起請文と軍勢を率いて、現れた。
吏部
李 絳攸
詳細は李 絳攸の項目を参照。
紅 黎深(こう れいしん)
声:真殿光昭 / 井上和彦
前吏部尚書。藍龍蓮と同じく、天つ才を持つ男。『黒蝶』にて兄・邵可にその座を譲るまでは紅家当主であった。兄と姪の秀麗のことを溺愛している。当主の地位はその才能ゆえに無理矢理就かされただけのものであって、本人は兄を軽視して追い出した紅一族を嫌っている。扇を常に持ち、トレードマークとなっている。
「怜悧冷徹冷酷非情な氷の長官」と恐れられているものの、紅一族と同様に王族の事も嫌っているため、朝廷の仕事を真面目にやることは少ない。そもそも紅家当主でありながら官吏となったのは、兄一家を追って貴陽の都へ行った際、兄のそばに残るために出された条件が朝廷に入ることだったためである。後に悠舜が茶州に飛ばされた際も、彼が生きて中央へ帰還する時のためだけに吏部尚書の地位に就く。だが、兄一家の事となると人格が変わり、彼らの一言でやる気が増減することも多い。「本気」を出せば、一年分の仕事も三日で終わる天才。ただし、さぼった時とは別の形で支障が出る事もある。
悪夢の国試組の一人で、悠舜・奇人・飛翔・文仲と同期である。「及第した後、どのような官吏を目指し、国をどう導くか」との会試最後の問いに「貴様なんかに仕えるつもりはさらさらない!!!」と解答用紙いっぱいにデカデカと書いて提出したため榜眼で及第した。奇人を本名の「鳳珠」と呼ぶ数少ない人物。国試中にあることがきっかけで、飛翔と取っ組み合いの大喧嘩をした。
妻は百合。実は、幼い頃からの想い人だったが本人は無自覚。
敬愛する邵可が静蘭を拾ったのを真似して絳攸を養子にするが、それ以前から大嫌いな紅家へ対する意趣返しで実子を持つ気はなかった。絳攸を拾った理由は、生贄として山に置き去りにされた絳攸(この時点ではコウ)が「誰かを待っているはずなのに、誰を待っているかを忘れてしまった」と泣く姿を、幼い頃に邵可を待っていた自分と重ね合わせたため。
長い間「兄と姪以外の他人=ぺんぺん草」という世界にいたため大切な人達への接し方や愛情表現は非常に不器用。大切な人が望むことをかなえる、大切な人のためになるように動くという他の人間が容易くできることが最も不得手。百合に対してすら素直に愛情を示す事ができないが、彼女に対する独占欲はかなりのもの。彼女に求婚してきた奇人に対し彼女本人の与り知らぬところで勝手に断りの文を出したり、当主の仕事をしない自分の代わりに忙しい彼女をいきなり呼び出すことが多々ある。百合以外には髪を触らせないため、髪を切っているのも百合。また、邵可譲りで琵琶が上手く、百合に弾いてやる事がある。
悠舜が「恋人同士でおしるこを食べると縁が切れず、末永く暮らせる」と余計なことを言ったため、最初は馬鹿にしていたが、結婚後、おしるこを三日に一回信心深く食べている。(百合はその訳を全く知らされていない)
絳攸の姓でもある李(スモモ)が花でも実でも一番好き。しかし、相当な天邪鬼な為、その事を誰にも知られないようにしているが、邵可と楊修と百合にはバレている(後に邵可によって絳攸にもバレる)。
秀麗の男装時に自分のことを「おじさん」と呼ばせているが、「邵可を追い出して紅家当主におさまった鬼畜叔父」と秀麗に嫌われることを恐れ「叔父さん」であることを告白出来ずにいる。叔父と名乗れないことを、奇人にからかわれている。秀麗が国試を受ける際、後見人になったことも教えていない。秀麗に会うことを恐れる傾向が強まっており、秀麗に自らの存在を認知された後で吏部に押しかけたときにも逃亡してしまったほど。このせいで秀麗に「自分を嫌っているのでは」と思い込みを与える事になってしまった。
先述したように邵可と秀麗、特に秀麗に対する愛情表現は不器用なれど凄まじく、秀麗の為に蜜柑を品種改良までさせているほどである(弟である玖琅が秀麗にみかんを食べさせて、秀麗が喜んでいるのを見て、黎深自身も秀麗に不器用ながらみかんをあげたところとても喜んだことに感動したため)。時折、蜜柑は扇同様に投げる武器として用いられる。
"風の狼"の解散後も邵可を兇手として使う王家および霄太師を憎んでいる。また、邵可に可愛がられている上に秀麗を諦めず、更には親友の鄭悠舜を宰相にした劉輝を「洟垂れ小僧」と呼んで忌々しく思い、絳攸に(側近である事を)後悔させたら即刻首をすげかえると劉輝に宣言している。劉輝に不幸の手紙を送ったり、腐った生卵を投げつけたりしていたため悠舜に呆れられた。
王家に貢献する意思が全くないため普段から吏部尚書としての仕事を放棄気味だったが、悠舜が劉輝に忠誠を誓った後から、悠舜にかかっている負担や絳攸の将来などを考え、辞任でなく罷免されるために完全放棄した。
今は紅本家で蟄居中。悠舜の脚を奪ったのは自分かもしれないと、初めて自分が人であることに気づけたかのような自失状態になっている。
碧 珀明(へき はくめい)
声:私市淳
秀麗の同期で、第四位及第。絳攸に憧れ、16歳状元の彼に敬意を表して1年遅らせて受けたが、影月・龍蓮・秀麗に越され、17歳状元の野望は潰えた。秀麗と同い年。秀麗には「珀」または「珀明」と呼ばれている(アニメ版では「珀明君」で統一されている)。
一本気で曲がったことの嫌いな性格。照れ隠しらしき文句も同時に出るが、同期官吏の中で唯一、影月と秀麗を助ける。国試で秀麗や影月と共に、龍蓮とまともに向き合ったことから、龍蓮に「心の友・其の三」として認知される。また、茶州の奇病騒ぎの折、同期の二人を心底心配していたようで、騒動終結後に櫂瑜を経由して、文一つ遣さなかった彼らの下へ友を想う気持ちを土台とした、かなり長い説教文を送る。
現在は希望通り絳攸と同じ吏部でこき使われ中。当初は貴族らしい純粋さがあったものの、「悪鬼巣窟」と呼ばれる吏部での激務により、罵詈雑言の語彙が日々増加している。
官吏になった理由は、碧家の芸術を政治的思惑から守るため。中央官吏を目指していたのはそのためである。芸能の一族の碧家の出身で、碧州では神童と呼ばれており、芸才はないものの鑑定眼は碧家でも屈指。
碧歌梨の弟。姉想いで、贋金の件では官位剥奪も覚悟していた。今は姉と碧州のことが気にかかっているが、碧家系官吏を辞めさせるわけにはいかず、朝廷にとどまっている。
楊修(よう しゅう)
声:荻原秀樹
現吏部侍郎。
吏部の覆面官吏。本編10巻『緑風』において、国試に及第したのに吏部試に及第できない冗官のふりをして紛れ込み、密かにそれぞれの人物の査定をしていた。吏部官で黎深に楯突ける一人。秀麗に最低の(吏部的には正当な)評価をしたうえ、「でも嫁にしてもいい」と報告書に書いたため黎深に睨まれる。蘇芳の父親の暗殺未遂を知っていた。自分の正体に勘付いた陸清雅に協力し、秀麗の上申書の詐取をする。
絳攸を弟子として、仕事の全てを叩き込んだ人物。絳攸の侍郎就任前は吏部侍郎最有力候補だった。絳攸が尊敬する官吏。いつまでたっても「吏部侍郎」ではなく「吏部尚書のお守り」でしかない絳攸に失望し追い落としを図るが、自ら引導を渡し免官を逃れる道を残していた。
適当な上の位で楽をしたいと思っている。また、自分より能力の低いものの下で働くのは嫌。欧陽玉の親友で、美的感覚抜群の彼には侵入捜査の際の変装を手助けしてもらっている(そのため妙な髪形および髪色になったこともある)。
「黒蝶」で吏部侍郎に着任早々出仕を拒否した紅姓官吏の首を次々切り、後に能吏を据えたことで注目を浴びる。
好きなものは「枇杷の実」「雪柳」「秋の鈴虫」「降るような銀杏の葉」「夏の虹」「紅黎深の琵琶」「李絳攸」。
戸部
黄 奇人(こう きじん)
声:中多和宏 / 速水奨
戸部尚書、本名・黄 鳳珠(こう ほうじゅ)。いつも仮面を着けており、周りに奇人変人と言われ続けたため、それならと自分から奇人と改名してしまった。仕事に関しては非常に有能かつ厳格。仕事を能力によってその人の限界ぎりぎりまで振り分けるため、高官になるほどこき使われて辞めていく 。その代わり彼の下に残った戸部の文官らはもれなく有能で、少数精鋭状態となっている。
仮面の下には黎深曰く、「飛んでる鴉も気絶してバラバラ落ちてくるような顔」が隠れている。実はこの世のものとは思えないほどの美顔・美声の持ち主(コミックスでは「その姿は天女天人のごとく、その声は迦陵頻伽の調べのごとし」と称され、秀麗も「迫力美人」と感じている)なのだが、素顔を知らない人(楸瑛や絳攸など)は、逆だと思っていることが多い。髪がさらさらすぎて結えない。微妙に毎日仮面が違い、それによって一部の人には機嫌が分かるらしい。仮面は当代一の職人・雅旬の作品などがある(柴凛の鑑定より)。口の部分が開閉式で、着用時でも食事が出来る。折畳み式の仮面もある。
彼が国試を受ける時、彼の顔に見惚れて筆記試験で彼と同じ宿舎になった者は黎深以外の全員が落第したどころか、他舎の受験者もろくな答えを返せず、毎年殆ど落第者の出ない殿試において落第者が続出した。ゆえに彼が受験した年は国試及第者が異常に少なく、この年に及第した者たちは「悪夢の国試組」と呼ばれている。鄭悠舜・紅黎深に次いで探花(第三位)で及第した。
彼の素顔を見た者は「よくて三年仕事が手につかなくなり、悪ければ一生廃人」になると言われている。彼が仮面を着ける前の時代からの古参官吏たちは「今度見たら一生仕事ができなくなる」と恐れ続けており、声を聞いただけでも慌てふためいたり、失神する者までいた。実際、秀麗や燕青は彼が名前を明かさずに素顔を晒した際、しばらく思考回路が停止するほどの衝撃を受けていた。
自分の素顔を見ても普通に接してくれた百合姫に惚れ求婚するも、「その顔の隣で奥さんなんかやってられません」という百合姫からの文(と見せかけた黎深の文)を送りつけられ振られる。その後百合姫は黎深と結婚したことが仮面をつけた原因。しかし本当のところ、当の百合姫には「好青年」と評され、かなり好印象であった。
当初は急な女人の国試受験に反対していたが、猛暑の影響で人手不足の折、絳攸が男装させて送り込んだ秀麗の働きぶりと政事への視野の広さを見て、考えを変える。
気功の達人。秀麗とは季節の便りを交わしている。
黄家から戻るように言われたが、悠舜のために朝廷にとどまっている。しかし朝議での発言がどんどん少なくなってきており、本編では縹家の次に黄家が落とされるのではないかと書かれている。
彩雲国物語4(マンガ)では、素顔が明かされている。
景 柚梨(けい ゆうり)
声:西村仁 / 宮本充
戸部侍郎。奇人の仮面の下の表情を読める稀有な人。奇人が仮面を付ける前から傍にいる。奇人との初対面は黄州州試。奇人と同年に州試を受けるも落第したその他大勢の一人だったが、奇人のせいにする受験者が多い中で「来年は受かってみせるからあなたは絶対及第しててくださいね」と激励をした。穏やかな人柄。欧陽侍郎曰く「数少ないまともな高官」。秀麗を気に入り、絳攸に後見人につきたいと望んだほど。秀麗が少女と知ってからも、男装時の偽名である「秀くん」と呼んで可愛がっている。奇人と二人の時は、奇人を本名の「鳳珠」と呼ぶ数少ない人物。
数少ない王派の人物で、「蒼宮」では晏樹に喧嘩を売った。
後に鄭悠舜の次の宰相位につく。
高 天凱(こう てんがい)、碧 遜史(へき そんし)
両名とも戸部の施政官でかなりの高齢。猛暑の夏、倒れる官吏が続出する中、最後まで頑張っていたがついに戦線離脱した。後任の施政官は燕青(臨時)。
礼部
魯尚書(ろしょうしょ)
声:家中宏
蔡前尚書の失脚に伴い、これまでの功績を認められ礼部尚書に就任。いつも仏頂面。国試に及第した進士たちが官職を任命されるまでの研修期間に、教導官を務める。紅黎深には珍しく気に入られている。
身分に関係なく、上位及第した優秀な者にのみ雑用ととてつもない仕事量を割り振る。実はその雑用は朝廷内の内情を良く知るため、大量の仕事は周りに舐められて潰されないようにするためで、彼なりの官吏への英才教育である。ついて来られなかったり賄賂を渡したりする者は見限り、仕事量を減らすため、「魯官吏は賄賂に甘い」という正反対の噂すらある。徹夜して頑張る進士たちのために、こっそり夜食を人数分持ってきて置いていく。
蔡前尚書(さいぜんしょうしょ)
声:藤本譲
魯尚書の前の尚書で、秀麗らが進士として研修した際の尚書。恰幅がよく、表向きはいつも笑顔の優しそうな人物。女性官吏反対派だった。秀麗が国試において不正を働いて及第したという噂を流し、その後見人であった黎深を紅家当主だとは知らずに拘束してしまう。後でそれを知った時には黎深の怒りを再び買ってしまった後だった。
一度は「捨て子」と馬鹿にした絳攸に、官位が上がると娘を娶らせようとして縁談を持ってくる、面の皮が厚い小物。茶州に偽の当主の指輪を届けて出世しようとしていた。他にも悪事を色々と働いていた為に18話にて失脚。黎深を二度も怒らせたので財産は没収。家族、親族、友人と縁を切られ、紅家に全国指名手配される。鬘着用。
和官吏(わかんり)
声:こぶしのぶゆき
礼部に所属する官吏で、白粉に眉墨と雅な顔立ち。賄賂で官位を手に入れたと専らの噂であり、地位に相応しい能力があるかは疑問符が付く。蔡尚書(当時)より金銭と出世を約束されて影月と秀麗に嫌がらせをする。のちに蔡尚書の不正に関する捜査が自身にも伸びるに至り、行ってきたことを自白した。
工部
管 飛翔(かん ひしょう)
声:長嶝高士
工部尚書。「悪夢の国試組」の一人で、悠舜・黎深・奇人・文仲と同期である。仕事は出来るが、無類の酒好きでかなりの飲兵衛。彼の執政室には大小の酒瓶酒樽がごろごろ転がっている。実家は黒州と白州を纏めるやくざの組で、飛翔はその総領息子。あだ名は「九紋龍」。国試中に黎深とあることがきっかけで取っ組み合いの大喧嘩をしたことがある。
国試の女人受験制に最後まで反対していたが、秀麗との飲み比べで負けたことと、官吏になった理由が自分と同じ「官吏になりたかったからなった」だったため、秀麗を認める。
飛翔が尚書になって以来、工部に配属になった官吏は尚書と飲み比べをすることになっており、下戸官吏に恐れられている。
劉輝を認めていなかったが、現在は悠舜の説得により劉輝側についた。
欧陽 玉(おうよう ぎょく)
声:羽多野渉
元工部侍郎で、現碧州州牧(異例であり、臨時)。飛翔とは「六部一、仲の悪い尚書と侍郎」として有名。いつも「陽玉」と呼ばれ苛立っている。服装に非常に気を遣っていて、常に装飾品をジャラジャラと飾り立てているが、「似合っているからいいんです」と平然としている(実際、美意識が優れているので派手ではあっても悪趣味にはならない)。髪は毎日時間をかけて鏝で巻いている。奇人の美貌に心酔しており、「管尚書より黄尚書の下で働きたい」という旨の発言もしている。実は飛翔以上に酒に強いが、酒の匂いが服につくことを嫌って飛翔に付き合わない。
最初は秀麗のことが気に食わなかったが、飛翔と秀麗の飲み比べの一件で少しだけ評価を変え、手助けもしている。
欧陽家は、碧家の門家筋、「碧門四家」のひとつであり、相当な目利きでもある。珀明の義兄で歌梨の旦那である欧陽 純とは従兄弟関係。
戸部の景侍郎、吏部の楊 修とは親しい間柄。
前碧州州牧の彗茄の事故死により臨時の碧州州牧に就任し、羽林軍とともに碧州に向かった。
陶老師(とうろうし)
声:澤田将考
王の筆頭侍医。工部管轄の太常寺大医署の長官も兼務(アニメでは下記の専属官が登場している)。王宮で最高の医師。老師は先生、というような意味である。弟子の医師には、陶師匠と呼ばれる。秀麗が貴妃であったことを知る数少ない人物で、今も貴妃に戻ってほしいと思っている。
若い医師たち(わかいいしたち)
陶老師の弟子たち。奇病事件のときに茶州に借り出された。葉老師の下で人体切開の手術を教わり、食材をつかって王宮の厨房や町の料理屋で猛練習した。茶州に着いた際、実際の人体切開に怯むものの、医師としての役割を思い直し手術に臨む。練習のためか、本番では手術ミスによる患者死亡はゼロ。衰弱で死亡した患者の遺族からも治療について感謝される。
奇病事件後は貴陽に帰った者もいれば、茶州に残り医療技術を伝える者もいた。ちなみに茶州に残った者たちは、医者の仕事のほか、切開の練習がてら料理屋で食肉解体の賃仕事などもしている。たまに血が体に付いたまま街を移動し、血みどろの人食い鬼集団と間違われたりもした。
刑部
来 俊臣(らい しゅんしん)
刑部尚書。悪夢の国試組の一人。大理寺長官を歴任。四十五歳。古今東西あらゆる法律に通暁し、矛盾だらけだった膨大な法律を極限までそぎ落とし、司法官の絶大な信頼のもと刑部及び大理寺を掌握。
昼間は刑部の牢屋にある棺桶で寝ている。夜行性で夜に働く。自分が気に入った人に棺桶を贈りたがる。俊臣にあうと黎深でさえも逃げ出してしまう(黎深は異様に気に入られている)。悪夢の国試組の国試の際に、黎深らが幽霊退治に繰り出す原因を作った人。黎深のために拍手喝采大爆笑の生前葬式を計画している。黎深を見ると色々な案が浮かんでくるらしい。
秀麗と初めて会った時に一緒に棺桶に入らないかと言って白菊を渡そうとしたが、気絶されてしまった。それ以来秀麗を少し気に入り、彼女を「小鳩ちゃん」と呼び、彼曰く「お茶目な棺桶」を贈りたがったり墓地の予約をしたがったりしている。
棺桶を出れば刑部尚書になり、仕事はきちんとする。一人称はボク。人に棺桶を贈ったり読経を読むことにはまったく嫌がらせや悪気などの気持ちはなく、彼にとっては親愛の表れ。
戴く王次第で左右される『人治』でなく、堅固な法体制で民草を救える『法治』の世を求めている。
兵部
孫 陵王(そん りょうおう)
声:牛山茂
兵部尚書。前藍州州牧で、五年前に貴陽に戻る。五十歳以上で旺季の古くからの友人。愛煙家でいつも煙管をくわえている。黒家四門孫家の生き残りで黒狼が気配を隠していても読めたり、過去に宋太傅と司馬龍、戩華王をいっぺんに相手できるくらい武術の腕に長け、「剣聖」の異名を持っている。
孟侍郎(もうじろう)
声:蓮岳大
前兵部侍郎。自分の娘を後宮に入れるために十三姫と秀麗を兇手を使って殺そうとした。自作自演で襲われた際、兇手によって殺される。故人。別件で地方官吏を兇手を使って殺し、後任に自分にゆかりのある官吏を赴任させていた。

羽林軍

右羽林軍

茈 静蘭も所属していた。

白 雷炎(はく らいえん)
声:大橋佳野人
右羽林軍大将軍。豪快な性格で、工部の管尚書並に酒が強い。黒家と並んで武勲で有名な白家の出身で、黒燿世とは喧嘩友達(好敵手)。常に火花を散らしまくるが、黒燿世の無言を通訳できる。静蘭の上官。静蘭を清苑公子と見破っているにもかかわらずしつこく勧誘していた。髭を生やして隠しているが、静蘭曰く、実は童顔らしい。
「自分が助けてやりたいと思った奴が王」という信念から、貴陽を落ちる覚悟を決めた劉輝に家宝である「青剣」を預け、個人での忠誠を誓った。しかし後に「青剣を王に渡すこと」=「白家が王に忠誠を誓うこと」であったことが発覚し、嘆いている。
皇 子竜(こう しりゅう)
右羽林軍将軍にして白雷炎の副官。口が堅い。劉輝の貴陽落ちの際に楸瑛や上官とともに劉輝を守り、紫州と紅州の境付近で追っ手をかわすため別れたが、その後無事に合流している。
左羽林軍

藍 楸瑛も所属していた。

黒 燿世(こく ようせい)
声:松本大
左羽林軍大将軍。無口でほとんどしゃべらず、相手の目をジッと見て心と心で語り合おうと試みることがある。工部の管尚書並に酒が強い。楸瑛の上官。白家と並んで武勲で有名な黒家の出身で、白雷炎とは喧嘩友達(好敵手)。楸瑛が彼の存在ゆえに左羽林軍を選んだとまでいう人。雷炎と同じく静蘭の正体を見破っているにもかかわらず、勧誘していた。
皐 韓升(こう かんしょう)
声:立花慎之介
左羽林軍に所属し楸瑛を慕う部下。そばかすのせいか実年齢より幼く見える。奇病騒ぎの際に秀麗や医師らを茶州近くまで送るときに加わったり、監察御史となった後の秀麗を何度か助けたりしている。弓術に優れ、将来を嘱望されている武人。孫兵部尚書からも「いい武人になる」と評価されている。
外伝「恋愛指南争奪戦!」(単行本『隣の百合は白』収録)では、両大将軍が企画した武術大会に力試しと称して参加。優勝賞品に興味はなかったが、強運と得意の弓術の腕で見事優勝してしまう。
紅州の救援に向かう旺季の強行軍についていけたため、馬術の腕が劇的に上がった。また、旺季を殺そうとしていた静蘭の抑え役をしていたことから、彼との力関係が逆転した。

朝廷三師

霄 瑤璇(しょう ようせん)
声:石井康嗣 / 柴田秀勝 / 青年:高木渉
朝廷三師(実務には携わらないが、王の教育係や相談役といった役割を務める名誉職)の一人で、太師。前尚書令。先王時代は長年宰相を務めた。王のためなら何でも犠牲にする、食えない爺さん。鬼畜。王の教育係に秀麗を雇った。よく劉輝に嘘を教えてからかっている。奇人の素顔には免疫がある。鴛洵の死後、本物の茶家当主の指輪を守り、最後まで茶家更生に陰ながら助力した。英姫には頭が上がらない。本当は英姫に思いを寄せていたが、彼女が鴛洵を愛しているのを知っていたので身を引いた。櫂瑜が苦手で、彼のことを「筋金入りの格好付け」と称した。珠翠の後見人。黒狼に命令することができる現在では唯一の人。実は彩八仙(太古の昔、蒼玄王と共に彩雲国を作った、色の名を持つ八人の仙人)の一人で紫霄と呼ばれる。最後は自分に関する記憶を全て消した。
宋 隼凱(そう しゅんがい)
声:小形満 / 塚田正昭
朝廷三師(太傅)。剣の太刀筋で静蘭の正体を見破る。劉輝の剣の師匠。あまりにも厳しすぎて誰もついていけないので、引退後は指南役にも抜擢されなかった。奇人の素顔には免疫がある。先王の時代から国一番の猛将。先王から「沈丁花」を下賜された。恋愛に関しては晩熟であり、妻と出会って結婚するまでに丸五年、初めて逢引に誘った言葉が「悪徳剣道場へ道場破りに行くから一緒に来るか」、ハネムーンが「全国戦場跡巡り」であった。妻と交わした恋文を未だに大切に所持している。
誰の記憶からも消し去られたはずの霄 瑤璇の事を唯一覚えているらしく、酒と三つの盃を準備していた。
茶 鴛洵(さ えんじゅん)
声:坂東尚樹 / 丸山詠二
前茶家当主で朝廷三師(太保)。故人。傍流ではあったが、茶家直系の男子がすべて死んだ為(一般には鴛洵が暗殺したと認識されているが、実際は当時の茶家直系長子が鴛洵に当主の座を渡そうと直系男子全員を殺害し、自身も自殺した)に、茶家当主に就任。しかし自らは朝廷に伺候し、貴陽から舵取りをした。10年前、準試にも受かっていない燕青を茶州州牧に推し、後見する。霄太師の上に立つため静蘭を王にしようとするが、計画は失敗し、霄太師に殺された。しかし、その真意は腐敗した茶家を糾弾する口実を与え、茶家の更生を願うものだった。死んだ後は茶家の当主印に魂を宿し、若い姿で茶州へ赴く前の秀麗達の前に現れた。克洵が次期茶家の当主になることを予想していた。妻は縹英姫。先王から"菊花"を下賜された。作者曰く「彩雲国で1、2を争うほどいい男」らしい。

後宮

珠翠(しゅすい)
声:岡村明美 / 湯屋敦子
筆頭女官。才色兼備で、かつては連日回廊に溢れるほど求婚者が列をなしたという美女。邵可に拾われ、暗殺集団「風の狼」の一員となる。当時から邵可とその周囲全てを愛しつづけている。以前は貴妃付きであったが、秀麗が後宮を辞した後に、劉輝付きの女官となる。作法・家事類は何でも出来るが、裁縫だけは大の苦手。
縹家出身。縹瑠花のことをお母様と呼ぶ。元々は生まれたときに洗脳された縹家の兵隊「暗殺傀儡(あんさつにんぎょう)」の一人で薔薇姫の傍仕え(兼、薔薇姫の体が使い物にならなくなった時のための予備の体)だが、暗殺傀儡としての洗脳は、話し相手を欲した薔薇姫の手で一部を解かれていた。乗り込んできた邵可によって薔薇姫とともに家から連れ出され、以来二十年も洗脳から逃げ続けてきた。しかしリオウと会った事によって再びその暗示が発動。体調不良になりながら必死に耐えていたが最終的には操られてしまい十三姫を襲撃した。逃げる事をやめて瑠花に向き合うことを決め、十三姫に筆頭女官の座につくように頼み、後宮から姿を消す。暗示は一度発動したら死ぬまで操られるのだが、秀麗の声などにより一時的に解けている。
縹家に連れ戻されてからは、洗脳に抗い続け、ついには「時の牢」へ幽閉されてしまうが、一千刻を耐え抜き大巫女となりうるほどの強い異能を持つまでになった。使える異能は「千里眼」。もともとは異能を持っていなかったが、家を出た後、成長につれて異能が顕現したという稀な例の女性である。また、「時の牢」での試練を乗り越えたことで、「千里眼」以外にも複数の異能を身に付けた。瑠花の跡継ぎ(次期大巫女)候補。
女官に手を出しては振り、自分のことも口説き続ける楸瑛をボウフラ扱いして毛嫌いしているが、楸瑛に本命がいることを気付いている数少ない一人でもある。但し、後にそれをふっきった彼が、自分に本当の想いを寄せていることには全く気づいていない。楸瑛と初めて会った時に「優しかった」らしいが、珠翠本人は忘れている。
瑠花の死後、新たな大巫女となり、残された暗殺傀儡たちに『槐の守り手』という大巫女の守護者に本来与えられる名前を与えた。
香鈴(こうりん)
声:仙台エリ / 釘宮理恵
秀麗が後宮に入ったときに仕えた女官。年齢は秀麗より3歳年下で、影月より1歳年上。生粋の姫君のような可憐な容姿だが、元は庶民。
茶太保の養女。王位争いの際、都の茶太保の邸の門前で行き倒れていたところを拾われた。茶太保の下で後宮に勤められるほどの教育を受け、後宮入りした後も交流を持ち、心から慕っていた。秀麗に好意を抱いていたが、茶太保の野望を知って独断で秀麗に毒を盛る。陰謀が崩れた後は、茶太保の妻・縹英姫がいる茶州に送られる。その後立ち直り、罪の償いとして茶州州牧となった秀麗に尽くす。見かけによらず、いざとなると敵に捕らわれても上手く立ち回る度胸の持ち主。
影月と相思相愛になり、秀麗が貴陽に帰ってからも茶州の影月の元に残った。ただし影月の前では非常な意地っ張りでもあり、なかなか彼への想いを素直に認めようとしない。
作者曰く「鴛洵(茶太保)といい、影月といい香鈴には彩雲国一いい男を見る目がある」らしい。また罪によって茶州に送られた際にも、英姫から開口一番「鴛洵を選ぶとはあっぱれ」と言われている。
十三姫(じゅうさんひめ)
詳細は十三姫の項目を参照。
紅 玉環(こう ぎょくかん)
詳細は紅 玉環の項目を参照。

仙洞省

四省の一。王家や貴族の婚姻や、神器の管理といった「仙」関係を担当。長官は縹家の人間。

羽 羽(う う)
声:坂東尚樹
仙洞省仙洞令尹。縹門羽家出身で、羽家唯一の最高位術者。櫂州牧と共に官吏の最長老格であり、彼の友人でもある。背が低く、真っ白な眉毛やヒゲに顔が埋もれた可愛らしいフカフカの外見で「うーさま」とこっそり呼ばれて、女官などに大人気。劉輝に縁談を持って追い掛け回している。王家や大貴族の婚姻を取り持つ副長。リオウを仙洞令君に招聘した。そのリオウからは「一寸じぃさん」と呼ばれている。幼いリオウに「縹家の男のなんたるか」を教えた人物。秀麗を王のただ一人の妃にすることには反対している。命を削る術者としては縹瑠花を除外すれば高齢だが、微弱な術ですら使用したあとに凄まじい疲労に襲われるなど、やはり年齢的に限界が来ている。
昔の縹瑠花を知り、彼女を愛している人物であり、彼女と縹家の現状を憂いている。かつて五歳のころ、「時の牢」に幽閉された瑠花を一人で助けに来たことがある。その際に神力が上がったらしいが、もともとあまり高くなかったという。また、縹家の神器「蒼」の半分を瑠花から受け取っているためもあり、縹家一門の最高位術者でいられた、という経緯もある。
蝗害の鎮圧のため、長雨続きだった藍州にあった雨雲を紅州に呼んだことで瀕死の重体となった。その状態で、瑠花の首が落ちたことで起きた結界の綻びを鎮めるために人柱になろうとしていたが、秀麗の身体を借りた瑠花に離魂させられ、瑠花・英姫とともに結界の修復作業を行った。
結界を一時補修したところで、瑠花によって身体に戻されるが、仙洞官の一人によって殺害される。そして、瑠花に約束していた波の音のする巻貝を渡し、『いつか永い眠りから覚めたあとで、迎えに行く』と約束を交わし、ともに人柱となった。
リオウ
茶州の邪仙教騒動の頃に秀麗と知り合った少年。実は現在の縹家当主・縹璃桜と旺季の娘・飛燕姫との間に生まれた子供で、漢字表記は父親と同じ。中盤以降、仙洞省のトップに立つ。縹家は「裏の王家」ともいうべき血筋であるため、彩雲国王位継承権も持ち、最終巻巻末では劉輝の養子として王族に加わるが、劉輝と秀麗との間の娘に継承権を譲り、最後は宰相となったことが記されている。
詳細はリオウの項目を参照。

門下省

旺季(おう き)
声:家中宏
門下省長官。玉座を狙っている。先代黒狼だった鬼姫の弟。資蔭制で朝廷に入った。冗官のリストラ案と塩・茶・鉄に関する独立した官位を作る案を出した張本人。紫門四家で、貴族としてのプライドが高い。七家と縹家が優遇されていることに不満を持つ。彼が長官を務める門下省は、御史台と並んで「貴族の牙城」と呼ばれている。以前は御史台の長官だった。五十代後半で孫(縹リオウ)がいる。本名蒼季。蒼玄王の子孫であり、血統における王位継承者としては第一位。
十代、戩華(当時は公子)と対立し一族の総てを喪い、二十代、孫陵王と共に左遷の日々を送った。(その時期に悠舜・皇毅・晏樹らの養い親となる)三十代、御史として中央に返り咲いたが、妾妃達の対立に巻き込まれ百以上の兵士を切り捨てながら城を落ち延びる。以来十年「巡察」と銘打った流浪を経験する。門下省の侍中として城に戻った晩秋の夜、呪いによって弱りきった戩華に止めをさした。
劉輝とは彼が幼児の頃からの顔見知り。清苑公子が流刑に処された一年後の雪の夜に対話したことがあり、そのときに「自分を捨てて、何かから逃げていきることはしない」と決意した。その決意の元、王座に就くために雌伏し劉輝を追い詰めるも、「ただの一人の命も落とさせない」という決意をもって現れた劉輝との一騎打ちの末に破れ、責任を取って自決しようとするが、リオウと秀麗の身体を借りた飛燕姫に止められ、劉輝から莫邪を受け取った。
本編終了の10年後、山家の変にて秀麗を庇って死ぬ。
凌 晏樹(りょう あんじゅ)
声:千葉一伸
門下省次官。黄門侍郎。皇毅とは幼なじみ。資蔭制で朝廷に入ったが、貴族派と国試派の中立的立場を取る。凌家の養子であり、かつ唯一の生き残りであるが、出生に関しては禁句となっている。それを持ち出したものは朝廷の表舞台からことごとく抹消されているのは有名な話である…というのが表向きの話。
その正体は幼少時に母を殺した(その報酬が桃だった事から好物になった)のを皮切りに生来の美貌と気質で数々の人間を破滅させてきた生粋の暗躍者。その過程で旺季と邂逅する度に彼に興味を持つも、旺季の方は自分だけを特別扱いしてくれない事に焦れ、彼を度々殺したいという衝動に駆られる。しかし、本当は誰よりも旺季を守りたいと思っており、何としてでも生かそうと行動する。
悠舜達より年上の三十代後半で、官吏経験も長い。
彼から桃をもらうと不幸になるらしい。皇毅から「トドの背後霊」と称された(ただしこれは、秀麗がおぼろげな記憶を要約したもの)。常に笑顔のように思えるが実際には地顔で笑顔なわけではない。
秀麗には表向き好意的で、たまにちょっかいを出す。秀麗に、何かしらの物(行動や情報など)と引き換えに情報を与える。果物(特に桃)が好き。秀麗が幼い頃(10歳頃)「姮娥楼」で賃仕事をしているときに会ったことがある。絶対身元を明かさない謎の人として秀麗は覚えていたが本人は忘れていた。本人いわく「好きな人はいじめたくなるタイプ」らしい。自称「嘘つき」。
茶朔洵の『抜け殻』を操っている術者であり、瑠花の暗殺を企て、秀麗たちや縹家の高位術者が出払った隙を見計らい、瑠花の本体の首を落とすことに成功した。実は茶仲障の息子であり、茶朔洵の異母兄。黒仙と契約しており、契約の対価に朔洵を差し出した。(朔洵の『抜け殻』を操れたのはそのため)
本編終了後、山家の変にて旺季の最期を看取った後に姿を消す。

御史台

葵 皇毅(き こうき)
声:成田剣
御史台長官(御史大夫)。名門葵家の唯一の生き残り。晏樹とは幼なじみ。無表情でめったに顔を動かさない。資蔭制で朝廷に入った。酷で他を蹴落とす性格。葵家は音楽に秀でているらしく、龍笛が得意。悠舜達より年上の三十代後半で、官吏経験も長い。お茶は濃い方が好みのようだ。
秀麗に冷たいことを言っているが気にしている節はある。旺季を慕っている。
牢に刑部尚書を探しに来た秀麗と居合わせ(本当は刑部尚書を起こすために来ていたのだが)、亡くなったと勘違いされて泣かれた(俊臣曰く、彼が死んだと思って泣いてくれる部下は少ないらしい)。しかも屍人(キョンシー)になって彷徨っているとさらに勘違いされて縋りつかれ、その光景を見た清雅には大笑いされてしまう。
本編終了後、景柚梨と共に宰相として双立する。
陸 清雅(りく せいが)
声:森久保祥太郎
監察御史。秀麗のライバル。御史台長官の秘蔵っ子、官吏殺しと呼ばれている。他を蹴落とすためならどんなことでもする。14歳のときに資蔭制で入朝。冗官の解雇騒ぎの際、上司の命で謹慎代わりに冗官になったフリをしていた。
最初は穏やかそうに装って協力していたが、贋作・贋金事件や塩事件で秀麗の手柄を奪う。事件に下手な介入をする秀麗が邪魔で贋作・贋金に一本の糸で繋がる塩の事件で退官に追いやろうとしたが、前々から不審を抱いていた蘇芳に阻止される。元から冗官の中にいると浮いていた上に、秀麗が「タンタン」としか呼んでいなかった頃に「蘇芳さん」と呼んだことで蘇芳の疑惑に拍車を掛けた。
御史監察は基本的に覆面が原則だが、やりようが派手で御史台内部でも噂になっている。その噂は蘇芳の耳に入るほど。自分が如何に派手にやっているかを自覚していないため、蘇芳が自分の正体に気づいていたと知った時には「そんな馬鹿な」と愕然としていた。
人に甘く物事に全力投球する秀麗と違い、冷酷に観察して五割の力で要領よく事を片付けようとするタイプ。多くの面で秀麗と対照であり、秀麗の「好敵手もしくは天敵」になるといわれている。秀麗によくちょっかいを出し、日々舌戦を繰り広げているが、仕事上でコンビを組めば相性は最高である。
彼の出身である陸家は旧紫門四家で、一度没落した。清雅は陸家の直系で、跡取りが嵌める銀の腕輪をしているが、現在すでに実質的な当主である。
女性のタイプは「女々しくないヤツ」だが、何らかの理由から女性一般に不信感を抱いている。髪結いが得意。蘇芳からは「セーガ」と呼ばれる。
紅 秀麗
詳細は紅秀麗の項目を参照。
浪 燕青
詳細は浪 燕青の項目を参照。
榛 蘇芳(しん すおう)
声:勝杏里
監察御史。下級貴族の家のお坊ちゃんであった。あだ名はタンタン。身に付けていた金色の狸(露天商を装った清雅が売りつけた「たんたん狸」)から静蘭が命名。父・淵西の命令で、秀麗と結婚する気もないのに求婚する。
元々は中書省にいたが、口を開くたび上司の機嫌を損ねる言葉が出てくるため、官位を下ろされた挙句に地方に飛ばされてしまい、やる気のない性格に。異動で御史台に籍を置くものの、秀麗と会うまでろくに働かず家でゴロゴロしていた。秀麗の鼻の低さが気になるのか、やたらと秀麗の鼻をつまんだり、ピンとはじいたりしている。
贋作・贋金事件に父が関与したために父と一緒に捕まるが、秀麗が保釈金を肩代わりしたおかげで釈放される。しかし事件の影響で冗官に降格、秀麗と共に職を探す事となる。獄中の父親のところに毎日通って差し入れをしていた。同じ放蕩をしても何とも思わない者が多い中、自分の自堕落ぶりを冷静に把握しており、静蘭曰く「貴族なのに人として正常な感性を持っている」。
何も取り得がないが勘の良さと分析力に優れている。その勘は、贋作・贋金事件を利用して秀麗を葬り去ろうとする清雅の企みに気付くほどに鋭い、御史台長官に秀麗を拾ってくれるように頼みこんでいた。
ポンポンと遠慮の無い言葉を口にするが、人が必死に隠している本質でも簡単に見抜ける(本人は自覚なし)。また、特に悪意はないが思った事をポロポロと口に出す性格でもある。このため静蘭が燕青以外で珍しく外面抜きの本来の性格で接してしまう相手。
だがそこにはいつも根拠があり、実際に中書省時代に彼に諫言された官吏の多くがその直後に失脚している。人にとっての「最後の一線」の見極めができる稀有な観察力の持ち主であり、いつも一言で核心ど真ん中を射抜く。黎深・絳攸からは「補佐の才」があると認められる。こうした能力から秀麗の甘さを補うため御史台に再び拾われ、秀麗の御史裏行(ぎょしみならい)として彼女を補佐する。しかし自分が静蘭や燕青と違って、秀麗のために何もかも捨てられる人間でないことを認識してもいる。
「白虹」にて正式な監察御史となり、両親と共に地方監察の旅に出る。
後年、軍権をほとんど使うことなく数々の冤罪事件を晴らし、凄腕の監察御史として史実に名を残すことになる。また「自分の人生は、紅秀麗のせいで波乱万丈になった」が口癖だったとも伝えられることになる。

風の狼

鬼姫(きひめ)
先代黒狼。先王・紫戩華が生涯唯一愛した女性と言われている。最も平和を好む女性だったが、最も人を殺した女性でもあった。薔薇姫の暗殺に失敗し縹家に殺された。戩華とは幼馴染。厳しく、優しい人。自らを人質に紅家の保証を願った邵可を風の狼に引き入れ、暗号名として魁斗(かいと)と名付けた。邵可が尊敬する人。旺季の姉でもある。本名は栗花落(つゆり)[1]
紅 邵可
詳細は紅 邵可の項目を参照。
珠翠
詳細は珠翠の項目を参照。
北斗(ほくと)
詳細は茶州の禿鷹の項目を参照。

その他

鳳 叔牙(ほう しゅくが)
冗官仲間の一人だった。下級貴族。外見はチャラチャラしていて軽そうに見えるが、恩義に厚い。榛蘇芳とは親友で、地方監察に出た蘇芳と秀麗の傍についた燕青の繋ぎ役をしている。秀麗の胸の小ささを気にかけ、手製の桃色草子を贈った。
実家は食料が裕福らしく、国の義倉に倣い、冗官仲間たちと協力して、実家の領地の食料を貴陽へ集めて蝗害からの飢饉に備えようとしたり、終盤で秀麗が紅州から貴陽へさらわれた際に、仲間たちを集めて燕青と連絡を取りながらその居場所を探るなど、中央に残った冗官仲間のまとめ役を担う。
冗官たち(じょうかん)
冗官室でふらふら遊んでいた貴族たち。秀麗の説得で全員リストラされず各部署に配属された。現在も昼休みは冗官室で過ごすものも多く、お悩み相談や情報交換の場になっている。
「王が秀麗に退官および婚姻を申し込んだ」という噂が広まった際には、「秀麗をいいように利用している」と反発し、「官吏としての秀麗を守ろう」と下級貴族を中心にまとまり始め、旺季と劉輝の和解後に、「秀麗を退官させるな」という内容の陳情書を度々尚書令室へ投げ込んでいる様子。

貴陽の人々

胡蝶(こちょう)
声:山像かおり
花街一の妓楼「姮娥楼」の妓女で、貴陽の花街一の妓女。絶世の美女で、彼女の微笑みのためだけに財産を投げ打つ者も多い。秀麗とは10年以上の付き合いで、母親兼姉的存在である。
幼い頃、母親に春を売らされていた所を晏樹の気まぐれで拾われ姮娥楼に引き取られた。
楸瑛は仕事がてらよく通っていて、彼女の座敷を途中で抜け出した唯一の客でもある。碧歌梨と古なじみ。歌梨ほどではないが胡蝶も相当な目利き。しかし、歌梨とは長い付き合いだが、彼女が「碧幽谷」だとは知らなかった。
実は貴陽の下町を牛耳る組連の親分衆の一人。主に妓楼に関する権限を握っており、胡蝶が一言いうだけで親分衆すら妓楼遊びができなくなるため、組連での発言権は大きい。賭博も強い。
大旦那(おおだんな)
声:稲葉実
「姮娥楼」の大旦那で、本名未詳。美術品・骨董品集めが好きで、何日か一人で楽しんだ後は姮娥楼に飾る。その趣味の良さが姮娥楼が長年貴陽一の妓楼と讃えられる所以でもある。中でも一階の中央は名誉ある場所で、趣味人達にも注目される。
葉 棕庚(よう しゅこう)
声:田原アルノ/藤本譲、黄葉:河本邦弘
下町の医者。霄大師と親しい。実は伝説の医仙で、華娜を弟子にした。秀麗のかかりつけの医師(主治医)である。「茶州の禿鷹」が貴陽に来た夏、猛暑で倒れた曜春を診た。
茶州の奇病事件の際、医仙であることが判明。医師団の長となり、王宮の若い医師たちに人体切開を教えた。秀麗の体の秘密を知っている。実は彩八仙の一人で、黄葉と呼ばれる。
榛 淵西(しん えんさい)
声:松山鷹志
元翰林院図画局の官吏。榛蘇芳の父。位の高い人から蘇芳と秀麗の結婚と引き換えに金と爵位をやると言われ、それに目が眩んで蘇芳に「秀麗に求婚してこい」と命令した。蘇芳に金で官位を買ってやっていた。
金や出世を望んだのは別れた妻に見直してもらいたいがためである。その結果まんまと騙され、贋作・偽金の事件に知らぬ間に利用されて、最後はトカゲの尻尾切り状態で見捨てられた。気が弱く、小さな悪事は「まあいいか」で行っていたが、牢獄に入れられてもなお息子は関係ないと訴え続ける息子思いの人。事件後、牢獄で口封じに暗殺されかけ命拾いするが、そうと知った蘇芳がすぐさま御史台長官・葵皇毅にかけあい、父の安全の確保を願ったため、結果的に蘇芳(と秀麗)の弱味となる。
後に蘇芳が旅に出た時には同行した。田舎で畑仕事をするつもりらしい。別れた妻を一途に想い続け、賃仕事をしていて路頭に迷っていた元妻を見かけて宥めて連れ帰った。短いくるんとした髭が自慢。
王 慶張(おう けいちょう)
声:杉山紀彰
秀麗と幼馴染。秀麗からは「三太」という幼名で呼ばれている。全商連認定酒問屋の三男。元々は典型的な金持ちのボンボンで、恋敵の静蘭を見返すために、青巾党の子分になったことがある。だが秀麗が官吏になってから家業を学ぶようになり、縁談がひきもきらないという一人前のまっとうな男に成長。叔父が贋作・贋金の被害にあった。秀麗が冗官降格して謹慎となったとき、秀麗に求婚。その後、秀麗と影月が設立した茶州の研究機関に行っている。
王位争いの際は貴陽から疎開していたために生き延びる。同年代の友人たちは秀麗以外、全員亡くなるか行方不明になったため、秀麗の幼少期の友人で存命なのは彼ただ一人である。

茶州組

州官

杜 影月(と えいげつ)
声:浪川大輔 / 幼少:洞内愛
史上最年少十三歳で状元及第した、秀麗の同期。秀麗と共に茶州州牧に任命され奮闘する。奇病事件での行動からその任をとかれ、現在は茶州州牧補佐(州尹)。後任州牧の櫂瑜の元で研鑽を積んでいる。黒州の出身。努力家でのんびり屋だが、意外に頑固。酒を飲むと陽月というもう一人の人格が現れるが、陽月が出る度に影月の寿命は磨り減っていく。秀麗に拾われる前は玖琅に助けられ、その恩として秀麗の情報を流していた。
昔、口減らしのため実父に鉈で殺されかけ、死にかけていたところを水鏡道寺の堂主・華眞に拾われ、そのままそこで成長する。拾われたときに一度は死んだが、陽月によって生かされる。邪仙教の事件の時に再び死ぬが、このときも陽月に助けられた。その時陽月が眠りについたため、今後は酒を飲んでも陽月は出てこない。本当の名前は月(げつ)。影月は「陽月の影で生きる」という意味で、陽月がつけた名前。
碧珀明からは小動物と呼ばれる。龍蓮の「心の友・其の二」。香鈴とは相思相愛。だが香鈴が意地っ張りでなかなか自分に笑いかけてくれないことをひそかに気にしている。翔琳と同い年。
蝗害の後、櫂瑜の許可を得て茶州の医師団を率い、自ら飛び出した。それを「夢見」で知っていた秀麗は、目覚めるなり助けに来た燕青と静蘭に合流させ、旺季が作った隠れ村の焼き討ちを防がせた。
陽月(ようげつ)
声:浪川大輔
影月とは性格正反対で、喧嘩に強い。影月曰く、酒好き。気まぐれの割におせっかい。影月を3度助ける。香鈴には影月の秘密を喋る。実は彩八仙の一人で白夜と呼ばれる。縹家がこの世で2番目に嫌い。邪仙教事件の後、影月を生かすため、深い眠りについている。アニメでは龍連から「心の友其の2.5」と呼ばれている。
浪 燕青(ろう えんせい)
声:伊藤健太郎 / 藤原啓治
元茶州州牧。十七歳から二十六歳まで十年間、これまでにないほど良く茶州を治めるが、実は国試はおろか準試すら受けずして州牧となった例外的な存在。性格は大雑把。優しいが厳しい。いつもは無精髭を生やした怪しい容貌の人物だが、剃れば好青年。静蘭の過去を知る人物。静蘭からは「こめつきバッタ」「筋肉バッタ」とよばれ邪険にされている。
茶太保の反逆後に州牧を辞し、彼の遺志を叶えるため単身で貴陽に上り、秀麗と出会う。翌年(秀麗が国試を受けた年)に茶州の準試を受け、下から二番目というぎりぎりの順位で及第。州牧補佐(州尹)に任命されて秀麗と影月を助ける。また、秀麗と共に黄奇人の下で臨時に働いた際、戸部臨時施政官を務めた事もある。
元は茶州の商家の出。幼い時、自宅に押し入った殺刃賊に両親と兄弟姉妹を惨殺されるという過去を持つ。武術の腕は静蘭よりも上で、棍を武器にしているが、彼が最も得意とするのは素手での格闘。剣は全くの下手だと言っているが、本当は剣で人を斬ることだけに長けており、剣を握ると手加減できない自分を制御するため。昔は「小棍王」と呼ばれていた。 
茶州の邪仙教事件後、秀麗に人生を賭けてもいいと思い、国試を受けるために勉強中。州尹は辞して、秀麗を助ける必要のため制試を受ける事を口実に貴陽に来ている。その後、皇毅から御史台入りを薦められ一度断るも、結局蘇芳が御史に昇格したため空白となっていた秀麗の御史裏行の後釜を命じられる。女性として秀麗の事を好いているようだが他の者には気づかせておらず、現在気づいているのは悠舜と蘇芳のみ。左頬に十字傷があるが、長い方は殺刃賊の晁蓋に、短い方は静蘭によって付けられた。師匠である南老師の借金を肩代わりさせられている。
鄭 悠舜
詳細は鄭 悠舜の項目を参照。由准(ゆ じゅん)として、秀麗と影月の州牧就任までの騒動の頃、悠舜の命令という形で州府から金華郡府に派遣された官吏。
香鈴
詳細は香鈴の項目を参照。
茗才(めいさい)
国試にも合格している有能な茶州官。実は監察御史。秀麗や影月は彼を慕い、頼りにしていたが、他の人には恐れられている謎の人物。州牧着任式の前に秀麗に萩の花を贈った。秀麗が貴陽に帰る時に引きこもっていた。実は監察御史で、茶州の監察にきていたのだが、燕青や悠舜にこき使われていた。そのため、燕青は制試のため、という名目で貴陽に来た時、葵皇毅に挨拶兼お礼兼謝罪をしにいく。朝賀には大体悠舜か茗才が出ていた。
丙太守(へいたいしゅ)
声:星野充昭
虎林郡の太守。冷静さを買われて太守になった。秀麗達の州牧着任式の際には、「置物」の扮装をして荷に紛れて琥璉入りした。秀麗・影月曰く、魯尚書に似ている。彼が守る虎林郡は疫病の出た村の属する地域であり、邪仙教事件の際には疫病治療のために太守の居城を提供した。現在は朱鸞に国試の勉強を教えたり、資金集めをしている。毎日「青汁」を飲んでいる。
櫂 瑜(かい ゆ)
声:秋元羊介
現茶州州牧。前黒州州牧で、年老いてもなお一線にいる名官吏。影月の国試受験の後見代理となる。年は八十を超え、朝廷三師より年上で現役最高齢。華眞の医学書を秀麗に渡す。羽 羽と友人。先王の時代から華眞や邵可とも交流があり黒狼の正体を知る人物。名誉官位を辞退し続けている。
老いた現在も年寄り臭さが無く優雅であり、未だに若い女性達を本気でよろめかせてしまう伝説的色男。捕虜となり拷問を受けた際、決してそれに屈しなかったばかりか、身なりに気を配っていた。あげく助けに来た先代・黒狼に「相変わらずあなたはお美しい」と虫の息で告げた過去を持つ。恋愛ごとに疎い秀麗ですら彼と初めて会ったときにはドキドキさせられていた。それでいて男達にも分け隔てなく優しく、紳士で、老若男女の尊敬を集めている。
劉輝と旺季の一騎打ちの後、茶州軍とともに先陣を切って駆けつけるが、影月には「血圧が上がるから絶対に来るな」と言われていたらしい。

全商連

柴 彰(さい しょう)
声:千葉進歩
全商連金華特区長兼茶州副支部長。柴凛は双子の姉兼上司。商人気質で、金が絡む仕事になると鬼になる。信念を貫くため暮らしに窮するほどの日々を送ってきた父を見て、父と同じ道を金銭の面から模索する道を選んで姉弟で全商連に入った。茶州の事件後、自分にはやはり官吏の血が流れていると自覚し、全商連を辞して官吏になるために勉強中。
柴 凛(さい りん)
声:佐々木瑶子
前全商連茶州支部長。柴彰は双子の弟。茶州の州牧補佐をしていた悠舜を慕い続け、何度も求婚してはふられ続けていたが、実は悠舜もずっと彼女に想いを寄せており、茶州の事件後十年越しの想いを実らせて悠舜と結婚した(燕青によると、先に悠舜の方が凛に惚れたらしい)。悠舜に何かあったときは、自分も一緒に死ぬと夫婦同士で決めている。
物づくりが好きで、足の悪い悠舜のためにいつもいろいろな物を考えては作ってあげている。全商連をやめた後は発明家になる。奇病事件のときには黔鉱石を発見し、医療道具を発明した。悠舜が尚書令となったときに、ともに都へ上る。
秀麗が冗官になってからも色々と手を貸し、「カッコイイ女性」として大いに慕われている。
夫婦で黄奇人のもとへ結婚の挨拶に行った際、奇人の素顔を見ても何の反応もなく、仮面の方に興味を示したうえ奇人の顔を「むだ美貌(綺麗すぎて弊害になるばかりで役に立たない美貌の意)」と評するなど、肝のすわった人物。
最終巻で妊娠していることが発覚した。また、悠舜が尚書令である間に工部尚書にもなったらしい。

茶家の人間

茶 鴛洵
詳細は茶 鴛洵の項目を参照。
茶 克洵(さ こくじゅん)
声:鳥海浩輔
現在の茶家当主。藍龍蓮と同い年。茶仲障の末の孫で、鴛洵は大伯父にあたる。鴛洵によく似ている。名前の由来は「鴛洵に克つ者」。性格はやや気弱なところがあるが、人が良く真面目で悩むことが多い。妻は春姫。子供の頃に春姫に一目惚れし、以来相思相愛。龍蓮の笛を褒め称え、彼の奇抜な服装に感動するなど、大物な面も持つ。龍蓮は彼に「親しき友其の一」の称号を与えるかどうか検討中。
当主襲名後最初の朝賀の時に、先王ですらかなわなかった黎深と龍蓮の祝辞を受けたことで、紅藍両家の後ろ盾を得る。また、愚兄達に苦労させられる末弟同士ということで紅玖琅からも祝辞と励ましの言葉を受けた。七家当主で数少ない、劉輝に忠誠を誓っている当主のひとり。
春姫の方が仕事を処理する能力が高いため、家の近くの洞窟の中で落ち込み涙するのが日課。それが噂を呼んで「恋人に捨てられた女がすすり泣く洞窟」として有名になってしまうなど、当主就任後も情けない面はあまり変わっていない。
後世、鴛洵の二つ名「菊花君子」を継ぐ名当主として歴史に名を残す。
茶 春姫(さ しゅんき)
声:宍戸留美
茶鴛洵と縹英姫の孫娘。秀麗と同い年。克洵の妻であり、従妹でもある。英姫仕込みの才媛で可憐な美少女。縹家の血を引いていて声に関する異能の力「命声(声で人を操る能力)」があったため、利用されないように口を閉ざすよう、英姫と約束していた。口が利けないフリをしていたために茶家では無視される存在であると同時に、それ故動きやすい立場であった。祖父母以外に一族で唯一優しく接してくれた克洵と相思相愛になり、お家騒動で捕らわれた彼を助けるために異能を使う。長く筆談生活を送っていたために、「言葉の選び方」がよく分からず、かなり過激なことを言ってしまうこともある。匿われた時に山の中で自給自足をしていたので、家事は得意。異能のため巫女の候補として縹家から狙われたこともある。物静かだが芯がしっかりしている。
縹 英姫(ひょう えいき)
声:堀越真己
茶鴛洵の妻。元々は縹家の女性で、縹瑠花の後継として育てられていた。夫の茶鴛洵が生きている時は、茶家の当主代行をこなしていた。夫が死んだときにその務めを放棄し、自ら囚われの身になる。鴛洵が自分より霄太師に執着していたため嫉妬していた(霄太師が鴛洵を殺したのも知っていた)。昔鴛洵が花を摘んで彼女に届けたとき、「狐か狸が鴛洵に化けよったな!」と叩き出したことがある。
縹家の異能の継承は生娘だけが可能な為、春姫を縹家から護るために茶州当主に就いたばかりの克洵に、婚儀の前に初夜を迎えろと迫る。
英姫自身も異能の持ち主であり、未来を予知する力がある。別名「先見の巫女」。既婚者である事と加齢のため若い頃より力が衰えているが、それでも普通の縹家の術者では勝てないほど。秋祭りの事件後、春姫を守るために力を使い果たす。
最後は朔洵の『抜け殻』に殺された……と思われたが、実際は朔洵の魂魄が事前に警告していたことで、殺されたふりをして離魂し、瑠花・羽羽とともに結界の修復作業を行った。碧州・茶州の神域の修復のため、立香とともに人柱となった。
茶 仲障(さ ちゅうしょう)
声:岩崎征実
茶鴛洵の弟。才ある兄に嫉妬の念を抱き、茶家の当主の証である指輪、茶州州牧印と佩玉、紅家の血筋を狙っていた。当主になるためなら実の息子や孫の克洵さえ捕らえる。だが、茶家の事件で克洵を庇った息子に刺殺される。故人。妻は茶家の直系。
茶 草洵(さ そうじゅん)
声:諏訪部順一
克洵、朔洵の兄。仲障に当主になるように命令された。何でも暴力で解決する単細胞な性格。茶州に就任する秀麗一行の足止めをするが失敗し、瞑祥に殺される。
茶 朔洵(さ さくじゅん)
声:子安武人
克洵の兄で草洵の弟。29歳。かつて流罪になった清苑公子(静蘭)を拾い、殺刃賊に連れて行った。仲障の命令で秀麗と婚約するように言われる。殺刃賊に命令して琳家を全滅させ、琳家の子息(琳千夜)と偽って秀麗を金華まで送る。性格は正反対だが、劉輝にどこか似ている。毒を飲んで失踪。
極端に飽きっぽい性格で、その退屈を癒す為になら人の人生すらも玩具にする男だが、最後まで秀麗には飽きなかった。秀麗への愛を心の内に激しく燃え上がらせ、不器用に静かにぶつけ続けた。最後まで秀麗に自分の名前を呼んでもらえないことと甘露茶を淹れてもらえないことに執着していた(秀麗は以前「大切な人達のために甘露茶を淹れる」と発言)。
後に人参が嫌いなのと勉強を教えることが得意ということが判明。
現在、秀麗の命を使って黒仙に生かされている。しかし英姫を殺したり、碧州の神器を壊したりと、行動は謎に包まれている。実は、現在肉体である『抜け殻』と魂に分かれており、『抜け殻』のほうは凌 晏樹に利用され、魂はさまよっている。秀麗や英姫の前に現れたのは、魂の方である。
実は茶仲障と克洵たちの母との間に生まれた子で、凌 晏樹の異母弟。彼がキョンシー化していたのは、秀麗の命を吸い取っていたから。

邪仙教

朱温 (しゅおん)
声:樫井笙人
元茶州の武官。女性官吏嫌いで丙太守より除名されたのを逆恨みする。邪仙教に寝返り、秀麗を殺そうとして逆に燕青に殺される。故人。
千夜(せんや)
声:遊佐浩二
邪仙教の教祖。秀麗のせいで奇病にかかったと噂を流した張本人。その正体はが操る華眞の遺骸。秀麗を誘き出すために朔洵の使った偽名を使用した。

殺刃賊

晁蓋(ちょうがい)
故人。かつての殺刃賊の頭目。燕青が幼い頃、一家を惨殺した張本人。その際の傷(十字傷のうち、縦傷)が燕青の頬に残る。燕青に復讐され殺される。
瞑祥(めいしょう)
声:永野広一
かつての殺刃賊(副頭目)の生き残り。現殺刃賊の頭目。草洵に知恵を授ける。静蘭に異常な執着を持っているが、燕青のことは疎ましく思っていた。秀麗たちの茶州州牧就任を阻もうとするが、静蘭に殺される。
智多星(ちたせい)
かつての殺刃賊第三位。参謀の役割を担っていた。本名は浪 叔斉、殺されたはずの燕青の三番目の兄である。家族が晁蓋に殺されたとき、「自分が殺刃賊で働く代わりに燕青は殺さないでほしい」「もし手を抜いたら燕青を殺す」という取引を晁蓋と交わし、以後参謀の役割に徹していた。
殺刃賊壊滅の際、死んだことになっているが現在も生きており、茶州の寒村で官吏として銀次郎とともに働いている。燕青と別れる際、「生涯会わない」との約束を交わしたが、弟が会いにくるかもしれないと思っている。
小旋風(しょうせんぷう)
詳細は静蘭の項目を参照。
小棍王(しょうこんおう)
詳細は浪 燕青の項目を参照。

その他の人々

シュウラン
声:綱掛裕美
虎林郡石榮村の少女。名前の漢字表記は朱鸞。両親が奇病にかかり、父は死亡したが、母は秀麗達のお陰で助かる。将来は秀麗のように官吏になることを夢見ている。最終巻では、その後も単発で行われていた女人国試に及第し史上初の女宰相になったことが判明。
リオウ
詳細はリオウの項目を参照。
南老師(なん ろうし)
燕青の師匠で、彼よりも強い。神業的な身体能力と格闘術の持ち主らしく、度々「伝説の武闘派老師」と評される。脇侍である銀狼が拾った燕青を養育するが、彼の常識はどこかずれている。恥ずかしがり屋で表に出てこない。飲食店に現れるとき、料理の代金代わりに食材を落としていくので、妖怪と間違えられる。喋るときはメモを落としていく。悠舜が自ら閉じこもっていたときは護衛をしていた。おそらくは茶仙であろうと思われる(最終巻で確定)。
北斗
故人。義賊「茶州の禿鷹」前頭領。元々は風の狼の一員。先代黒狼とは面識はない。風の狼が解散後に茶州に移り住み結婚。妻の連れ子であった翔琳・曜春を、彼女の死後も男手一つで育てる。春になったら邵可達に会いに行こうと子供たちに誘われていたが、病を患い、こんな姿を見せるのは恥ずかしいという理由で出立を先送りにしているうちに亡くなる。
子供たちが山を飛び回り獣を捕らえられるよう鍛えるが、人殺しと関係ない人生を送れるよう、獣に使う技が人間にも使えるという事を教えなかった。また、危険になったら「逃げる」ということで勝つのではなく負けない強さを教えたり、かつて自分が国中を旅した昔話を聞かせることにより正確で無駄のない地理知識と情報を与えるなど、生きていくための術を子供達に授ける。
翔琳(しょうりん)
声:杉山紀彰 / 浅野まゆみ
茶州、峯盧山に住む「茶州の禿鷹」現頭領。先代・北斗の養子。影月と同じ年。素晴らしい逃げ足を持ち、動物並みの身体能力で駆け回れる。本編『黄金の約束』にて弟と共に貴陽を訪れ、宮廷に忍び込んで宝物庫の鍵を盗む。また、茶家の御家騒動の際には燕青に頼まれて茶春姫を山に匿っていた。早とちりや間違った知識で失敗することも多いが、義に厚く颯爽とした性格であり、香鈴から「意外と素敵な殿方になるかも」と言われている。龍蓮の衣装に感激し、正式な「茶州の禿鷹」の衣装にしようとしている。弟と共に山を駆け回り、猿の化け物と間違えられることがある。
曜春(ようしゅん)
声:笹島かほる / 小林由美子
茶州、峯盧山に住む義賊「茶州の禿鷹」の唯一の手下。先代・北斗の養子で翔琳の一つ違いの弟。素晴らしい逃げ足を持つ。『黄金の約束』では貴陽の猛暑で熱射病に倒れ、秀麗に助けられる。語彙が少々少ないのか、たまに変な敬語を喋ったりする。葉っぱ日記帳をつけている。

紅州組

州官

劉 志美(りゅう しび)
紅州州牧。元下っ端兵士で旺季のもとで従軍し、戩華王率いる軍と戦ったことがある。結果は負け戦だった。その時の精神的な傷から逃げる為に麻薬を服用していた。悪夢の国試組の一人だが、その時は死んだ戦友「劉 子美」の名を借りて潜り込んでた。
時々オネエ言葉をつかう。美容に気をつけている。煙草と柚子茶が好き。
荀彧(じゅんいく)
紅州州尹。劉 志美と同年代。志美いわく粗大ゴミ系オッサンではなく、結構イイ線いっているのが気にくわないらしい。
旺季側の人間であり、経済封鎖のときの大量密輸を見逃すなどの行為を行ったが、戦争に繋がる可能性のある鉄炭と技術者の移送に関する書類に判を押すことは出来なかった。口封じのために暗殺されかけたが、志美にかばわれ、命をとりとめた。
父・筍馨はかつて旺季の一族が妖公子・戩華から命懸けで守った名軍師であり、旺季の後見人でもあった。

紅家の人間

紅 秀麗
詳細は紅秀麗の項目を参照。
紅 邵可
詳細は紅 邵可の項目を参照。
紅 黎深
詳細は紅 黎深の項目を参照。
李 絳攸
詳細は李 絳攸の項目を参照。
紅 玖琅(こう くろう)
声:置鮎龍太郎
邵可と黎深の弟で、邵可を紅家から追い出して黎深を紅家当主にした張本人。紅家当主名代。普段は紅州の紅本家にいる。邵可のことを嫌っているような素振りを見せているが、本心では兄二人ともを慕っている。絳攸を秀麗と結婚させて、紅家を継がせようとしている。兄たちが兄たちなので、何でも器用にできるようになった。妻の九華との間に、伯邑(はくゆう)・世羅(せら)という二人の子供がいる。息子の伯邑を最初から絳攸の補佐として教育している。絳攸のことは、最初から紅一族と認め、絳攸にも慕われている。百合姫に育てられた。妻は九華。
百合(ゆり)
黎深の妻。当主の仕事をしない夫に代わり、あちこち飛び回って仕事している有能な女性で、半年以上夫と養息子に会わないこともしばしば。悠舜からは、黎深を任せられるのは百合姫くらいしかいないといわれている。黎深と遠慮なく物を言い合うことができ、彼を甘やかすこともできる。悠舜の言葉から、結婚直後は三日に一回夫婦でおしるこを食べるよう黎深から強要されていたりもした。
紅家の三兄弟が子供の頃、紅玉環に連れられてきた。実は紅玉環と(当時の)先王の娘で、玉環の策により男装した姿(譲葉)と本来の姿(百合)を使い分け、譲葉の時は黎深の補佐として、百合の時は邵可の婚約者として振舞っていた。母譲りの琵琶の技量は、ある事情から「姮娥楼」で仕事をしていた際に「傾国の琵琶姫」とまで評されたほど。また、黎深の護衛役も兼ねた「譲葉」であるために護身術を叩き込まれている。母を殺害しながらも自分に優しすぎる邵可へどう接したらよいのかわからず、婚約解消後から黎深との結婚まで邵可を避けていた。
黎深が国試を受けた年、紅家を出る前の最後の仕事として「姮娥楼」で働きながら嫁探しをしていた。そのとき、美貌のせいで周囲に恐れられ傷ついていた黄鳳珠(奇人)に動じず(「黎深の性格以上に倒れたくなるものはない」から)、にこやかに会話をしたため惚れられる。百合本人もまた当時の鳳珠を「好青年」「邵可以外で初めてときめいた」と高評価していたものの、その後黎深が勝手に彼女の名を騙って断りの文を送りつけている。当時の本人曰く「黎深と真剣に接してこなかった」らしく、彼の人間としての軌道修正を諦めていた。そのためどんな黎深でも許容し受け入れられる存在であり、婚姻も彼に押し切られる形で成立した。
養い子に絳攸がいる。邵可曰く、絳攸がまともに育ったのは百合のお陰。ただし、絳攸の超絶方向音痴の原因は百合にある。玖琅を見事に育て上げたことに対しては邵可から一目置かれている。
黎深の罷免騒動および、絳攸の投獄事件の際に後宮の一角へ軟禁されるが、絳攸が秀麗と共に御史大獄を切り抜けた後も解放されてはおらず、筆頭女官の十三姫とともに後宮に留まり続けていた。また、後宮にいながら外朝の状況をきっちり把握しており、凌晏樹が貴陽の焼き討ちを計画していると察して十三姫と共に貴陽の紅藍両家を動かし、未遂で終わらせようとしていた。
劉輝と静蘭の叔母であり、秀麗の叔母。最終巻では妊娠したような描写がある。
薔薇姫(ばらひめ)
声:園崎未恵
故人。秀麗の母。邵可は弟たちにも彼女の素性を隠し通した。邵可の妻として生活していた間は「紅 薔君(こう しょうくん)」と名乗っていたらしい。他に、邵可だけが呼ぶことを許された特別な名前もある。
ぬばたまの髪と雷光のような眼差しを持つかなりの美女で、葉棕庚(黄仙)に言わせると短気で誇り高い。縹家の先代当主に閉じ込められる前までは節度なく自儘に生きてきて、人間とはずっと冷淡な距離をあけてきた。
黒狼として活動していた当時の邵可は縹家に閉じ込められていた薔薇姫を殺す任務にあったが、一目惚れをして縹家から奪った。邵可の求婚を長年断り続けたが、最終的には受け入れた。酒には相当強い。もともと子をなす事が出来ない身体だったが奇跡的に秀麗が生まれたといわれている。幼い頃病弱だった秀麗のために効き目抜群の薬湯を作っていたが、爆発したり一騒動になるため静蘭に怒られていた。元気だったが、幼い秀麗が当時かかっていた病気の回復と入れ替わるように亡くなり、秀麗は自分のかわりに母は死んだのだと、長い間自分を責め続けていた。物語が始まる半月前に幽霊として絳攸・楸瑛に会っている。実は伝説の彩八仙の一人、紅仙で、強力な脇侍「雨師」、「風伯」を持つ。八仙は基本的に死体に宿るが、縹家の暗殺傀儡を主とする生体に宿っていたのは彼女が関わったために「奇跡の子」と呼ばれた先代の縹家当主と璃桜によるもの。
彩雲国には「薔薇姫」という御伽噺が存在する。どんな怪我や病をも治すという不思議な力を持つ永遠の美姫・薔薇姫は強欲な主に監禁されていたが、数多の罠を潜り抜け、自分のもとへと辿り着いた男に一目惚れされ連れ去られる。二人はやがて愛し合い子を授かるが、その子は病に冒されていた。その頃には異能を失っていた薔薇姫だったが、自らの命と引き換えにその子を救うことができた。薔薇姫は「二度と誰にも囚われないように棘をはやす。私を愛し私に愛された貴方だけがその棘を抜けるように」と言って、薔薇に戻ってしまう。薔薇姫の愛の証に、薔薇には棘がある、というストーリー。実は予言を元に作られた実話。
朝廷三師である霄太師によると、「彼女に惚れるような悪趣味な人間がこの世に二人も(璃桜と邵可)いるとは思わなかった」らしい。
紅 玉環(こう ぎょくかん)
邵可たちの大叔母。劉輝の二代前の王(祖父)の愛妾であった。紅家の影の女当主。頭の良い野心家。藍家・碧家をも凌ぐ琵琶の腕から、琵琶姫と呼ばれた。後宮では百合姫と呼ばれており、娘に自分の名前を継がせる。後宮で権謀術数を学んだため、政治家としては優秀。百合姫を身篭った際、紅家に戻った。邵可を紅家当主にさせようとしていたが、弟達を家取り潰しによる被害から守ろうとした邵可に毒殺される。戩華曰く百合姫を戩華の後釜にさせようとしており、宮城内の見取り図や隠し通路の数々を百合姫に叩き込んでいた。
絶世の妖姫と謳われ、先々代の王を絹紐で絞殺し逃げのびたという噂がある。

藍州組

州官

姜 文仲(きょう ぶんちゅう)
声:上田陽司
藍州州牧。悪夢の国試組のひとり。厄病神のような陰鬱な顔で無愛想な印象。四十代半ば。現時点では現王に対して中立、静観の立場を取る。
有能な官吏で、しばしば名言を残す。
藍州州尹(らんしゅうしゅういん)
声:川原慶久
本名未詳。「白虹」では四十三歳。いずれ「姜州牧名言集」を出す野望を持っている。

藍家の人間

藍 楸瑛
詳細は藍 楸瑛の項目を参照。
藍 龍蓮(らん りゅうれん)
声:木内秀信
楸瑛の弟で、藍家直系五人兄弟の末弟。楸瑛を「愚兄其の四」と呼ぶ。紅黎深と同じく「天つ才」を持つ人物。
秀麗と同じ年に国試を受ける。天才は何もしないでも何でもできるから天才なのだ、という言葉を実証するかのように、寝てばかりいても榜眼(第二位)で及第するが、兄達との約束のために受けただけなので進士式をすっぽかし、官吏になる意思もないまま流浪の生活に戻る。
風流と美を愛し、武術にも長ける。しかしその美的感覚は常人とはかなり離れていて、奇抜でど派手な格好をし、事あるごとに理解不能な笛の音を鳴らす。普通の服装さえすれば顔の造りは楸瑛によく似た正統派美青年で、華奢なぶん「綺麗」といわれる容姿。
普段は札勝負をしながら旅をしている。勝ったら必ず吹いていく「慰めの笛」故に、「龍笛賭博師」と呼ばれる知る人ぞ知る名賭博師でもある。
彼の横笛の音は聞いた者がノイローゼになるほど酷いものであり、国試の際にも甚大な被害をもたらしたが、自身ではそれを風雅であると信じきっている。宝鏡山の御神体が壊れた際には、鎮めの効果を発揮していた。縦笛をはじめ、他の楽器は完璧にこなす。
秀麗、影月、珀明の三人とは国試の同期。試験中、龍蓮が嵐のように周囲に被害をもたらす中、この三人だけは彼に対して一定の耐性を持って接することが出来たため、晴れてその世話を押し付けられる羽目となった。この三人は龍蓮にとっては、生まれて初めて出来た友人。秀麗を「心の友・其の一」、影月を「心の友・其の二」、珀明を「心の友・其の三」と呼ぶ。茶州にいる頃は、克洵夫妻の家に厄介になっていた。龍蓮の笛を心から喜んでくれるので、克洵を「親しき友其の一」と呼ぼうか検討している。ちなみに州牧邸周辺では龍蓮の笛は怪奇音扱いされていた。
龍蓮は元々の名ではなく、その天つ才を認められ、四歳の時に襲名した名前。「藍龍蓮」とは藍家の象徴であり、最後の切り札。過去、その名を承継したほとんどの者が当主になっているが、彼は当主になる気はない。「藍龍蓮」の元には藍家当主と同等の情報が届けられるようになっている。
全く知られていないが、藍龍蓮とは唯一生きて藍仙を宿せる器である。
藍 雪那(らん せつな)
声:宮本充
藍家直系五人兄弟の長男で、三つ子の弟二人と共に藍家当主を務める。三つ子の中に「双龍」の片割れがいる(もう一人は龍蓮)。当主になる前は朝廷に居り、それぞれ要職に就いていた。黎深と同い年で、同じ時期に当主になり、当主就任と同時に藍姓の官吏を一斉退官させた。妻の名は玉華(ぎょくか)。当主拝命の際、三つ子は不吉とされているため、当主となる「雪那」以外の2人は殺されることが決まっていた経緯から、他の誰にも誰が「雪那」なのか悟られないように暮らしている(他人に見分けられた時点で「雪那」以外の2人は殺される)。ごく親しいものには、上から「雪」「月」「花」の愛称で呼ばれる。黎深のことは嫌っているが、以前家庭教師を務めていたことがある邵可のことは慕っており、折々に便りを交わす。靴が嫌いで裸足で過ごす事が多い。三つ子なりに弟たちを愛しており、当主になったのも、藍家の切り札でもある龍連が政治的に縛られることを防ぐためであった模様。楸瑛を朝廷から藍本家に帰らせようと計画するも、彼との三つ子を見分けるという賭けに負けた為に勘当することとなった。甘い卵焼きは好きではない。
藍 十三姫
声:豊口めぐみ
藍家直系五人兄弟の異母妹。3歳で実母を亡くした後、武勇で鳴らす藍門筆頭の司馬家で育った闊達な姫君。迅の親友だった異母兄・楸瑛とは仲がいい。「妃は一人」と公言した劉輝の元へ、藍家当主によって送り込まれる。
司馬迅とはかつて恋仲だった。しかし司馬迅のことで藍家当主とした約束を守るべく、自分の意思で後宮にやって来たため、劉輝の妃となることに抵抗はしていない。秀麗とは同じ年。性格も容姿も(バストを除いて)よく似た雰囲気で、楸瑛や静蘭を驚かせたほど。そのことが後宮に送られる決め手となったらしく、秀麗に似せるため饅頭作りなども練習させられていたという。
武芸を嗜んでいて馬術は男顔負け、大の馬好き。愛馬は「夕影」(元々は迅の愛馬)。会話でも何かと馬に例える。司馬迅には「螢」と呼ばれる。楸瑛が劉輝の元を辞して藍州へ帰った際、彼を連れ戻すため劉輝に同道を求められる。貴陽に戻った後、後宮の筆頭女官となる(珠翠による指名)。劉輝は秀麗との賭けに負けた場合に彼女を妃とすることを秀麗に対して宣言している。
玉華(ぎょくか)
声:足立友
雪那の妻。もともとは前藍家当主の妾になるところを雪那に求愛され結婚。心から雪那を愛していて、三つ子の弟二人に「時が止まったように仲がいい」と言われている。見分けが付かない三つ子の「雪」を一度も間違えることがなかった(他の二人については「雪」でないと分かる程度)。楸瑛の初恋の相手。雪那には「玉子焼きみたいに平凡な女」、楸瑛には「お日様の色をしたふわふわの玉子焼き」と表現される。顔は平凡らしく、鼻が低くてそばかすがある。しとやかだがお転婆なところがあり、おしゃべりではないが無口でもない、合理的かつ行動的な女性。甘い玉子焼きを作るため雪那たちに抗議されているが、彼ら三つ子の誕生日にだけは甘くない玉子焼きを作る。
藍家前当主
雪那たち、楸瑛、龍蓮、十三姫等の父。未登場。正妻は楸瑛の母であるが、その外にも多くの妻妾と子を持つ。その中には政略結婚も含まれるが、女性から愛される天賦の才があり、楸瑛曰く多くの女性を同時に愛せる博愛主義者でもある。

四門家

司馬 迅(しば じん)
声:小野坂昌也
藍門筆頭司馬家出身。嫡子であったが、11歳で隻眼となったために廃嫡され、祖父の司馬龍のもとで十三姫とともに育つ。公的には、21歳の時、父(司馬勇)を殺した為に死刑に処されたことになっている。
現在は司馬迅の名を捨て隼(しゅん)と名乗っている、「牢の中の幽霊」の一人。地方官吏殺害事件の兇手の頭領。隻眼で、額に死刑囚を表す刺青がある。
楸瑛の親友であった。十三姫の元婚約者で、十三姫のことを螢という呼び名で呼んでいる。
十三姫(と秀麗)を殺そうとしたが楸瑛に阻まれる。邵可曰く、元婚約者を殺すことに迷いを覚えていたため、楸瑛が来るよう仕向けたらしい。秀麗たちが駆けつけたのと秀麗の声で珠翠の暗示が解けたことにより珠翠を連れて逃亡。ついでに黒狼が誰か探り仲間にするよう命じられていたが、断念する。その後も珠翠と宝鏡山まで行動を共にする。
実は監察御史の上位にあたる侍御史。旺季に忠誠を誓う反面、彼を止めて欲しいという気持ちもあるらしく、秀麗に情報をもらしたり、助けたりするのもそのためである。
最終巻で、「(楸瑛か迅のどちらかが)一騎打ちで白雷炎に勝利し、青剣をもぎとってこられたら司馬家への帰還を認める」ということが一族会議で決定し、楸瑛とともに挑んでいるものの、ことごとく完敗している。
司馬 勇(しば ゆう)
迅の父で故人。司馬家の前総領(当主)。十三姫の母とは幼馴染で従兄妹に当たる(つまり十三姫と迅は再従兄妹)。その十三姫の母を愛するが故に殺めてしまう。その後、成長した十三姫を強姦しようとし、息子の迅によって殺される。
司馬 龍(しば りゅう)
迅の祖父で元司馬家総領。迅と十三姫の育ての親。宋隼凱と並び称された一騎当千、知勇兼備の名将。殺刃賊の討伐に赴いたことがある。宝剣干将・莫耶を両方扱えた数少ない人物の一人。劉輝と旺季の会談が行われた五丞原に集結した藍州の軍勢に参加し、迅を怯えさせた。

黄州組

黄家の人間

黄 奇人
詳細は黄 奇人の項目を参照。

その他の人々

景 柚梨
詳細は景 柚梨の項目を参照。

碧州組

碧州官吏

彗茄(けいな)
碧州州牧。孫陵王や旺季と同期で超有能な官吏だった。碧州の地震でバタバタしていたが、女性を助けて瓦礫の下敷きになり消息不明。
「凶運のケイナ」と呼ばれており、「全てが終わった後、ひょっこり現れて袋叩きに遭う」のがお約束らしい。七回ほど葬式を挙げられている。あるときは、骨を拾っているときにひょっこり出てきた。
最終巻では宰相になった景柚梨の補佐を務めるも地方巡察に飛び回るので「空飛ぶ副宰相」の異名で呼ばれる。一匹狼で派閥は作らず、王にも辛辣な態度を取り続けている様子。

碧家の人間

碧 珀明
詳細は碧 珀明の項目を参照。
碧 歌梨(へき かりん)
声:沢海陽子
珀明の姉。「碧宝(碧家の至宝)」とまで言われる、千年に一度の天才画家。雅号は碧 幽谷(へき ゆうこく)。男名の雅号を拒んだために碧家から監禁されたのが引き金となり、才能が一気に目覚める。またその為に極度の男嫌いになる。女の子が好きで、妓楼に通っている(仕事場兼宿屋代わり)。姮娥楼にもたまに滞在する。愛せる男は夫と息子のみ。高飛車でわがままだが、息子の万里が贋作・贋金の真犯人だと分かると、万里の身代わりに刑罰を受けようとする母親らしい人でもある。
基本的に男性の肖像画は描かないが、劉輝のように「描いてもいいかな」と思う例外はいる。
今まで当主は男性が務めることが常識であったが、秀麗という女性官吏が朝廷に誕生したことから当主候補選びの視野が広まり、碧家当主候補となっている。
劉輝に翰林院図画局の長官に請われるが、女性官吏がいないため断った。珀明によると可愛過ぎない、美人過ぎない、胸が大き過ぎないという理由で秀麗が好みらしい。胡蝶とは古なじみ。目利きであるため、万里を探す間に貴陽の画店の絵の真贋鑑定をしていた。観相や骨相も出来る。実際に、骨格から劉輝が名乗っていないのに王と見抜く。
新貨幣意匠を製作。その後、破壊された宝鏡山の新しいご神体の鏡を製作。宝鏡を製作中、朔洵の『抜け殻』に襲撃されるが、碧仙の助けにより危機を脱し、見事宝鏡を完成させた。
欧陽 純(おうよう じゅん)
声:野島裕史
歌梨の夫。万里の父。絵は下手だが、歌は天才的に上手く、不思議な能力を持つ。優しいが、判断は素早い。工部侍郎の欧陽 玉とは従兄弟関係にある。独身時代に歌梨が碧家に監禁された際、ただ一人彼女の元に駆けつけて助けようと奔走した。歌梨に頭が上がらない。
かつて幽閉された歌梨を救うため、碧仙に『歌』を永遠に捧げた。本来ならば歌の才能は、「碧宝」に値する程のものであったらしい。『抜け殻』に襲撃された歌梨をかばって重傷を負い、碧仙の器とされた。
碧 万里(へき ばんり)
声:洞内愛
歌梨と欧陽 純夫妻の息子。わずか五歳にして絵画・彫刻に優れた才を現す。それ故に囚われ、榛 淵西邸で贋作及び、贋金の極印、鳳麟の極印を製作させられていた(本人は何を作っているか知らなかった)。才を認められ、歌梨からは雅号・碧 幽山(へき ゆうざん)を与えられるが、彼自身は「碧歌梨」の雅号を希望している。一番嫌なことは歌梨に捨てられること。

四門家

欧陽 玉
詳細は欧陽 玉の項目を参照。

黒州組

州官

櫂 瑜
詳細は櫂 瑜の項目を参照。

黒家の人間

黒 燿世
詳細は黒 燿世の項目を参照。

その他の人々

杜 影月
詳細は杜 影月の項目を参照。
華 眞(か しん)
声:遊佐浩二
黒州西華村水鏡道寺堂主である医者。故人。影月の師。華 娜の末裔。医仙の寵児と呼ばれる名医、十代にして華家に伝わる医術のことごとくを習得した神童として知られる。王家や大貴族のお抱えになるのを避けて放浪していた。黒狼としての邵可と戦場で出会ったことがある。性格は影月を越えるお人よしで騙されることが多い。人間の醜さを十分知りながらもなお人間を愛する人物。実は一度死んで、影月に頼まれた白仙が生かしていた。自分が書いた医学書を櫂 瑜に渡していた。

白州組

白家の人間

白 雷炎
詳細は白 雷炎の項目を参照。

その他

蒼家の人間

紫家、縹家、葵家の祖先にあたる一族。

蒼玄王
詳細は蒼玄王の項目を参照。
蒼遙姫(そうようき)
蒼玄王の妹姫。縹家の初代当主。名前の由来は炎帝の娘・瑤姫から。古、後に九彩江となる地に兄・蒼玄と赴き、一〇八の妖を二胡により鎮めた。後世、彼女の名を冠した詩と、特に難しいとされる曲が作られる。
縹家の槐の大木の下に埋葬されたといわれるが、現在もその魂を留めていて、「時の牢」へ大巫女候補を救いに行こうとする者の前に、道案内として赤い傘の巫女様の姿を現す。
蒼周王(そうしゅうおう)
蒼玄王の後を継いで王になった。彼の治世中一度も戦は起こらなかった。

縹家の人間

神祇、異能一族の家系。蒼遙姫に始まる。歴代当主のほとんどは女。

縹 璃桜(ひょう りおう)
声:関俊彦
縹家の当主、満月の月下彩雲紋をつけている。しかし、生来怠け者であるため当主の仕事はほぼすべて放棄している。若い姿で何十年も生きている。リオウ曰く、年は80歳ぐらいで不老長命、髪の毛だけ年相応で白髪(銀に一雫金を垂らしたような髪色)らしい。薔薇姫と珠翠を奪った邵可とは憎み合っている。秀麗と影月が茶州州牧だったとき、秋祭りのときに占い師に化け、春姫に暗示をかける。ひたすら薔薇姫だけを思い続け、現在は娘の秀麗の中の薔薇姫を待っているが、秀麗が最後まで生き続けることを許した。
不老長命ではあるが、異能を持たない。また、その寿命は統計的に150年ほどらしい。
リオウ
声:甲斐田ゆき
縹家当主・璃桜の息子にあたる少年。名前の漢字表記は父と同じ。奇病事件の時に石榮村に居て、秀麗達と行動を共にしていた。邪仙教の本陣に踏み込んだ際は、縹家の手の者によって切断された漣の首を持って登場。その後、茶州から姿を消す。父の命令で貴陽に行き、劉輝と茶飲み友達になる(当初、劉輝は彼が幽霊だと思っていた)。
羽羽の招聘により、仙洞省の長官・仙洞令君として朝廷に現れる。羽羽を一寸じぃさんと呼んでいる。老齢を気遣ってか、よく羽羽を背負って歩いている。読書(かなり本を読むのが速い)と父親の話し相手と占いが趣味。
経済封鎖を解除するべく勅使となった秀麗とともに紅州に向かうが、寿命が近づいたために衰弱した秀麗を縹家に連れて行く。旺季の孫であり、血統における王位継承権では第二位にあたる。
最終巻では劉輝の養子となり、後に宰相となったことが明らかになっている。
縹 漣(ひょう れん)
声:矢口アサミ
縹家当主たる璃桜の姉・瑠花の息子で、リオウとはいとこにあたる。奇病事件のときに華眞の遺骸を使い、影月を襲う。その最中に捨て駒にされて本体の首を縹家の術者に切断されてしまう。リオウに切断された自らの首を示され、自分が死んだことを認め、華眞の体を手放す。故人。
縹 瑠花(ひょう るか)
声:氷上恭子
璃桜の姉。昔から弟の璃桜の事しか見ていない。愛する弟を当主に据えるが、実質的に縹家の権力を一手に握っており、邪仙教の陰の黒幕でもある。西華村が奇病で二人を除いて全滅したことにも係わっているらしい。弟の愛を手に入れるため、秀麗の体を狙う。珠翠に呪術をかけた。過去に璃桜とともに黒仙と会ったことがある。
父殺しの宿星を持っていたため、先代当主である父に何度も殺されかけた過去を持つ。彼女自身はその宿命に抗おうとしていたが、愛する縹家の腐敗を無くすため、父をはじめとする多くの人間を粛清し、以来八十年に渡って大巫女として縹家を支え続けてきた。すでに寿命は短く、神力も衰えてきている。
かつては、縹家の使命である「弱者救済」のため気高い誇りをもって采配を振っていたが、その強すぎる異能と親しい者が離れていく孤独に耐えきれず、次第に精神が壊れていくようになってしまった。
縹家に帰ってきた珠翠を「時の牢」に閉じ込め、縹家に来た秀麗に憑依するが、迅と楸瑛が持ってきた双剣に阻まれる。その後秀麗と対峙し、最後に残った「白い子供」の少女の体を使って生きるかどうかを問う。
ある男に命を狙われ殺されかけるが、楸瑛と迅に助けられる。その後縹家の系列の寺社に救援を乞うていた秀麗とリオウの前に現れ、蝗害への対策を出来る限り講じるよう命じる。
幼くして時の牢から自分を助け出した羽羽に璃桜に向けるものとは違った愛情を抱いているようだが、本人はその想いを認めていない。
凌晏樹の策略により本体の首を落とされるが、魂魄となって秀麗の元に飛び、彼女の身体を借りて、羽羽・英姫とともに結界の修復作業を行った。結界を完全修復させるため、羽羽とともに人柱となった。
飛燕姫(ひえんひめ)
璃桜の妻。旺季の一人娘。リオウの実母。縹家を変えるために旺季が送り込んだ。また縹家に保管されていた蝗害に関する情報を、旺季に対して送っていた。
リオウを生んだ後、産褥で死に逝く前に瑠花によって『棺』に入れられ、命を永らえていた。朔洵の魂から秀麗の命を返還させるための『巫女』として働き、自決しようとする旺季をリオウとともに説得した。
珠翠
詳細は珠翠の項目を参照。
蒼遙姫
詳細は蒼遙姫の項目を参照。
薔薇姫
詳細は薔薇姫の項目を参照。
縹家前当主
璃桜と瑠花の父。元々異能を持たなかったが、薔薇姫に命を救われた際、副作用として強力な癒しの異能を手に入れ、その力を使い縹家の権力を強固なものとした。そのため、『奇跡の子』と呼ばれる。癒しの異能の枯渇を防ぐために薔薇姫を呼び、彼女を幽閉した。父殺しの宿星を持つ瑠花を恐れ何度も殺そうとしたが、瑠花に幽閉され璃桜に殺された。
立香(りっか)
神域修復のため術者が出払った縹家で、瑠花の世話役を務めていた少女。異能もちではないため縹家の巫女としての力はなく、それでも瑠花を敬愛しており、瑠花の次代の体にはなれないことを悲しんでいた。
瑠花を思うあまり、独断で彼女への情報を遮断したり、晏樹にそそのかされて、瑠花が封印した朔洵の『抜け殻』を外へ出したりと動いていたが、最後は朔洵の『抜け殻』が使えなくなった晏樹の手で殺され、魂をとどめた死体を利用される。

華家の人間

医師の家系。華娜の遺言を葉 棕庚に伝えるため、華家には放浪者が多い。

華 娜
葉棕庚の弟子の名医。王の病を治そうとして刃物を出したら殺害を企てたと疑いを掛けられ、処刑された。葉棕庚に惚れていたようで、「あなたの子供が生みたかったわ」、「あなたから言ってくれるのをずーっと期待していた私が馬鹿だったわ」という言葉を遺言としている。華眞は子孫である。故人。
華 眞
詳細は華 眞の項目を参照。

人間以外

雨師、風伯(うし、ふうはく)
黒い鞠状の生き物。その正体は紅仙の脇侍。茶州時代から秀麗の前に時折姿を現す。茶州での奇病事件が収束して秀麗が貴陽に戻る際もついてきた。宋 隼凱がシロ、クロと名づけ気に入っている。八仙のなかで忠誠心があり、その実力は脇時の中でも最強クラス(宋 隼凱を指で倒せるほど強いらしい)。たまに秀麗のところに遊びに行っている。クロは秀麗の中に入って怪我を治している。その際、人間以上の能力が備わる。礼儀正しい。宋 隼凱は「何かの小動物だ」と説明している。名前は玄冥、飛廉。
銀次郎(ぎんじろう)
南老師とともに住んでいた銀色の狼の外見を持つ山の主。現在は浪燕青の兄・叔斉とともにいる。南老師(茶仙)の脇侍。
大鴉(おおからす)
三本足の神烏。黒仙の脇侍。

脚注

  1. ^ 角川書店「ビーンズ王国マメレージキャンペーン」の80pt賞品、彩雲国物語Curtain Call「花のあと」より。

関連項目