平泳ぎ

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競技としての平泳ぎ
レクリエーションやリラクゼーションとしての平泳ぎ

平泳ぎ(ひらおよぎ、breaststroke)は、水泳で、左右対称に「手を胸の前で一かき」、「足を後方に一蹴り」という動作を繰り返す泳ぎ方である。競泳種目の1つで、日本では競泳選手を中心にブレストとも呼ばれている。俗にカエル泳ぎという言い方もあるが、手足のタイミングが異なる等、カエル泳ぎと競技者の平泳ぎでは異なる部分がある。

概要

平泳ぎは4泳法最古の泳法とされており、人類が泳ぎ始めた最初期の泳ぎも「両手で同時に水を掻き、両足で同時に水を蹴る」という左右対称の現在の平泳ぎのような泳ぎであった。9000年前に存在した人が泳いでいる姿を示す壁画などの記録、水泳が重要科目であった古代ギリシア古代ローマ時代の泳ぎも動物を模倣した平泳ぎに似ているものであったとされている。オランウータンチンパンジーも平泳ぎで泳ぐことが確認されており、人間を含む霊長類が最も本能的に行う泳法であるとも言える。19世紀の近代スポーツ化の流れで泳ぎにスピードが求められるようになって競技としての平泳ぎは完成し、1837年イギリスで行われた世界初の水泳大会から1896年第1回オリンピックの頃まで平泳ぎが主流とされ、自由形として競われていた。その後、1899年にクロール泳法が生み出されて、1900年第2回オリンピックでクロール泳法がオリンピックにおいて初登場したことで、1904年第3回オリンピックから平泳ぎは独立種目となった。最も古くから泳がれていることに加えて、現在も最も普遍的な泳法として広く認知されているので、競技人口としては自由形短距離に次いで多い種目となっている[1]

速度と効率

初心者の壁である息継ぎ動作が比較的簡単に習得でき、かつ顔を上げたままの泳法がほかの泳法よりも安易であること、また人間にとって本能的に行える最も普遍的な泳法であることなどから、競技者以外も含めると最も多く泳がれている泳法であり、初心者からは「楽で遠泳に適している泳法」だと思われがちである。しかし、平泳ぎは4泳法で最も大きく加速と減速を繰り返す泳法であり、実際はクロールよりも遥かに、そしてバタフライよりもエネルギー効率が悪く、スタミナを多く使う。そのため、オープンウォータースイミングトライアスロンなどの遠泳競技では、最も効率の良いクロールが用いられている。効率が悪いがゆえ、4泳法の中で抵抗の減らし方等の技術が最も必要と言われている。その影響か、他の種目と比べて技術面に勝敗を左右する要素が多い傾向にあるとも言われているため、アジア人にとって体格的に不利な短距離タイム競技の競泳で、オリンピックにおいて日本人が最も多数の金メダルを獲得している種目となっている。ただし、メダルの獲得数は200m種目に偏っており、100m種目や50m種目(世界選手権)での獲得は少なく、短距離における人種の体格差の壁は平泳ぎにおいても大きいと言える[2]

サバイバル術としての平泳ぎ

推進効率の悪さという短所がある一方で、平泳ぎは、容易に水中に顔を入れることなく正面を向いて泳ぎ続けられる長所をもっているため、呼吸法を習得していない初心者にも受け入れられやすく、また、遭難者に接近する泳法としても重宝されていた。船舶が沈没した際、重油まみれだったり、障害物が多数浮遊する海面を泳ぐ際も、顔を水に付けない平泳ぎは、極めて有効である。競技としての平泳ぎはスピード向上の研究が常に図られているが、近年、サバイバル泳法としても見直されてきている。4泳法の中で牽引泳では最も重い重量を引くことができる馬力がある泳法であり、特に平泳ぎのキックによる推力は4泳法中最大であることから、ロープで物を引っ張りながら泳ぐ際に平泳ぎのキックを使うこともある[1]

競技としての平泳ぎ

抵抗を減らすための研究や、ルール変更の影響を受け、その時代ごとに主流とされる泳ぎが大きく変化している。特に、後述のバタフライ泳法の分離や、潜水泳法の禁止があった時期には世界記録が後退するということもあった。現在、泳ぐ方法は大雑把に区別してウェーブ泳法(ウェイブ泳法)とフラット泳法がある。また、キックにはウェッジキックとウィップキックがあり、プルには外掻きと内掻きがある。主流とされる泳ぎの変遷は、フォーマルブレストナチュラルブレスト⇒ウェーブ泳法⇒フラット泳法と辿ることができる。

平泳ぎから生まれたバタフライ

当初、平泳ぎの泳法規定は「うつぶせで、左右の手足の動きが対称的な泳法」とだけ定められていた。ここから1935年にアメリカのJack Sieg選手が現在のバタフライのような手の掻きの新型泳法を開発し(脚の動きは平泳ぎのまま)、1936年ベルリンオリンピックで好成績を収めた。それからしばらくの間は、従来の平泳ぎと新型泳法と潜水泳法(当時は潜水の距離に制限はなかった)が入り交じる状態が続いていたものの、研究が進むにつれ”新型泳法”と従来の平泳ぎの差は大きくなり、1952年ヘルシンキオリンピックではほとんどの選手が”新型泳法”で泳いだ。そのため、国際水泳連盟は1955年にバタフライ競技という種目を新設し、”新型泳法”は平泳ぎから独立した。現在、平泳ぎ競技でバタフライの動作を用いることは(スタート・ターン後のひとかきひとけり動作中の1度のドルフィンキックを除き)認められていない[1]

ルール

スタート・折返し

審判長の笛の合図の後、スタート台に上がる。出発合図員の「Take your marks...(日本では、「用意」)」の号令でスタート台前方に少なくとも一方の足の指をかけスタートの姿勢を取る。スタートの姿勢を取ったあとは、出発合図まで静止しなければならない。出発合図の前にスタートの動作を起こした場合、失格となる。スタート、および折り返し後には水没状態でのひとかき・ひとけりが許されている。このひとかきの動作はヒップラインを越えて脚のところまで完全にかききってよく、このとき、最初の平泳ぎの蹴りの動作を行う前に1度だけドルフィンキックの使用が認められている(2015年FINAのルール改正により、ひとけりの動作はひとかきの動作とは無関係に行えるようになった)。スタート、折り返し後の二かき目の動作が内向きの動きに入るまでに頭の一部が水面上に出ていなければならない。

泳法

泳ぎのサイクルは「一度掻いて一度蹴る」であり、この順序で行う組み合わせでなければならない。このため、折り返し及びゴールタッチの直前でタイミングをあわせるためにサイクルを無視した連続での掻きや蹴りは違反となる。両手は、スタートおよび折返し後のひとかきを除き、ヒップラインより後まで掻いてはならない。両腕両脚の動作は左右対称でなければならず、ひじを水面より上に出してはならない(ターンやゴールタッチの最後のひとかきを除く)。また、足の甲で水を蹴ってはならないが(あおり足やドルフィンキックなど)、足が水面より出ただけでは失格とはならない。スタート、折り返し後の一サイクル(一掻き一蹴り)を除き、泳ぎの各サイクルの間に必ず頭の一部が水面から出なければならない(常に出ている必要はない)。ターン・ゴールのタッチは両手同時にしなければならない。動作が左右対称であれば、手は水面の上下どちらでもいいし、同じ高さでなくてよい。ほかの種目と同様に、自分のレーンを逸脱したり、コースロープを掴んだり引っ張ったり、プールの底を歩いたり蹴ったりした場合は失格である。

歴代日本人金メダリスト

男子

女子

主な平泳ぎの選手

主な平泳ぎの男子選手

主な平泳ぎの女子選手

関連項目

脚注

外部リンク