山本文緒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
山本やまもと 文緒ふみお
ペンネーム 山本 文緒[3]
誕生 (1962-11-13) 1962年11月13日
日本の旗 神奈川県横浜市
死没 (2021-10-13) 2021年10月13日(58歳没)[1][2]
日本の旗 長野県北佐久郡軽井沢町[1][2][4]
職業 小説家
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
最終学歴 神奈川大学経済学部卒業
活動期間 1987年 - 2021年
ジャンル 少女小説
エッセイ
代表作恋愛中毒』(1999年)
『プラナリア』(2001年)
自転しながら公転する』(2020年)
主な受賞歴 1987年 『プレミアム・プールの日々』 コバルト・ノベル大賞 佳作[5]
1999年 『恋愛中毒』 第20回吉川英治文学新人賞[5]
2001年 『プラナリア』 第124回直木賞[5]
2021年 『自転しながら公転する』 第27回島清恋愛文学賞[6]
同 第16回中央公論文芸賞[6]
デビュー作 『プレミアム・プールの日々』(1987年)
配偶者 大村浩二[1][2]
テンプレートを表示

山本 文緒(やまもと ふみお、1962年11月13日[5] - 2021年10月13日)は、日本の女性小説家

神奈川県横浜市生まれ[7]神奈川大学経済学部卒業[5][8]。本名は大村暁美[1][2]

経歴[編集]

大学では落語研究会に所属、高座名は「則巻家あられ[9][10]」)。

卒業後、証券系の財団法人に勤め、横浜の実家から毎日満員電車で通うのがつらく、会社のそばにアパートを借りるための副業として少女小説を書き始める。1987年に『プレミアム・プールの日々』でコバルト・ノベル大賞の佳作を1回めの応募で受賞し、少女小説家としてデビュー[5]、後に「少女小説というジャンルが作家不足だったので、今だったら取れなかったと思うんですけど」と語る[9]。ペンネームの「山本」は友人の名前に、「文緒」は槇村さとるの短編漫画の主人公の名前に由来し、「中性さを出したかった」と語る[9]。1992年の『パイナップルの彼方』から一般文芸へシフトする。作品のタイトルを、少女小説では編集者に決められることが多かったが、一般文芸では『ブルーもしくはブルー』を除き自分で決めていた[9]

1999年、『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞[5]2000年に『プラナリア』で第124回直木賞を受賞[5]。2002年に再婚[7]。2003年、40歳の時にうつ病を発症し、治療のため執筆活動を中断し、約6年の闘病後、エッセイ『再婚生活』で復帰する[3]。2011年に長野県北佐久郡軽井沢町に移住。2021年、7年ぶりに執筆した小説『自転しながら公転する』で第27回島清恋愛文学賞、第16回中央公論文芸賞を受賞[11][6]

2021年春頃より体調を崩し、ステージ4bの膵臓癌と診断され余命4か月の宣告を受けて自宅療養を続け[6]、同年10月13日、軽井沢の自宅で死去した[1][2][4]。58歳没。『小説新潮』(2021年12月号)に、親交があった角田光代唯川恵らの追悼エッセイが掲載された[12]

2022年10月、亡くなる9日前まで綴った闘病日記『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』が刊行された[13]。タイトルは2021年8月12日時点での担当者打ち合わせで最初から決まっていた[14]

著作[編集]

ジュニア小説[編集]

  • きらきら星をあげよう(1988年5月 集英社コバルト文庫 / 1999年3月 集英社文庫
  • 野菜スープに愛をこめて(1988年8月 集英社コバルト文庫 / 2001年5月 集英社文庫)
  • まぶしくて見えない(1988年10月 集英社コバルト文庫 / 2001年7月 集英社文庫)
  • おまえがパラダイス(1989年2月 集英社コバルト文庫)
  • ぼくのパジャマでおやすみ(1989年4月 集英社コバルト文庫 / 1999年5月 集英社文庫)
  • 黒板にハートのらくがき(1989年7月 集英社コバルト文庫)
  • 踊り場でハートのおしゃべり(1989年10月 集英社コバルト文庫)
  • ドリームラッシュにつれてって(1990年1月 集英社コバルト文庫)
  • 校庭でハートのよりみち(1990年4月 集英社コバルト文庫)
  • おひさまのブランケット(1990年7月 集英社コバルト文庫 / 1999年7月 集英社文庫)
  • 青空にハートのおねがい(1990年10月 集英社コバルト文庫)
  • シェイクダンスを踊れ(1991年1月 集英社コバルト文庫)
  • ラブリーをつかまえろ(1991年4月 集英社コバルト文庫)
  • アイドルをねらえ!(1991年8月 集英社コバルト文庫)
    • 【改題】ココナッツ(2000年7月 角川文庫) - 「チェリーブラッサム」続編
  • 新まい先生は学園のアイドル(1991年8月 ポプラ文庫

一般文芸[編集]

  • パイナップルの彼方(1992年1月 宙出版 / 1995年12月 角川書店
  • ブルーもしくはブルー(1992年9月 宙出版 / 1996年5月 角川文庫)
    • ブルーもしくはブルー 改版(2021年5月 角川文庫)
  • きっと、君は泣く(1993年7月 光文社カッパ・ノベルス
    • 【改題】きっと君は泣く(1997年7月 角川文庫)
  • あなたには帰る家がある(1994年8月 集英社 / 1998年1月 集英社文庫 / 2013年6月 角川文庫)
  • 眠れるラプンツェル(1995年2月 ベネッセコーポレーション / 1998年4月 幻冬舎文庫 / 2006年6月 角川文庫)
  • ブラック・ティー(1995年3月 角川書店 / 1997年12月 角川文庫)
    • 収録作品:ブラック・ティー / 百年の恋 / 寿 / ママ・ドント・クライ / 少女趣味 / 誘拐犯 / 夏風邪 / ニワトリ / 留守番電話 / 水商売
  • 絶対泣かない―あなたに向いている15の職業(1995年5月 大和書房
    • 【改題】絶対泣かない(1998年11月 角川文庫)
      • 収録作品:花のような人 / ものすごく見栄っぱり / 今年はじめての半袖 / 愛でしょ、愛 / 話を聞かせて / 愛の奇跡 / アフターファイブ / 天使をなめるな / 女神の職業 / 気持ちを計る / 真面目であればあるほど / もういちど夢を見よう / 絶対、泣かない / 卒業式まで / 女に生まれてきたからには
  • 群青の夜の羽毛布(1995年11月 幻冬舎 / 1999年4月 幻冬舎文庫 / 2006年5月 文春文庫 / 2014年1月 角川文庫)
  • みんないってしまう(1997年1月 角川書店 / 1999年6月 角川文庫)
    • 収録作品:裸のネルにシャツ / 表面張力 / いつも心に裁ちバサミ / 不完全自殺マニュアル / 愛はお財布の中 / ドーナッツ・リング / ハムスター / みんないってしまう / イバラ咲くおしゃれ道 / まくらともだち / 片恋症候群 / 泣かずに眠れ
  • シュガーレス・ラヴ(1997年5月 集英社 / 2000年6月 集英社文庫)
    • 収録作品:彼女の冷蔵庫 / ご清潔な不倫 / 観賞用美人 / いるか療法 / ねむらぬテレフォン / 月も見ていない / 夏の空色 / 秤の上の小さな子供 / 過剰愛情失調症 / シュガーレス・ラヴ
  • 紙婚式(1998年10月 徳間書店 / 2001年2月 角川文庫)
    • 収録作品:土下座 / 子宝 / おしどり / 貞淑 / ますお / バツイチ / 秋茄子 / 紙婚式
  • 恋愛中毒(1998年11月 角川書店 / 2002年6月 角川文庫)
  • 落花流水(1999年10月 集英社 / 2002年10月 集英社文庫 / 2015年1月 角川文庫)
  • プラナリア(2000年10月 文藝春秋 / 2005年9月 文春文庫)
    • 収録作品:プラナリア / ネイキッド / どこかでないここ / 囚われ人のジレンマ / あいあるあした
  • ファースト・プライオリティー(2002年9月 幻冬舎 / 2005年6月 角川文庫)
    • 収録作品:偏屈 / 車 / 夫婦 / 処女 / 嗜好品 / 社畜 / うさぎ男 / ゲーム / 息子 / 薬 / 旅 / バンド / 庭 / 冒険 / 初恋 / 燗 / ジンクス / 禁欲 / 空 / ボランティア / チャンネル権 / 手紙 / 安心 / 更年期 / カラオケ / お城 / 当事者 / ホスト / 銭湯 / 三十一歳 / 小説
  • アカペラ(2008年7月 新潮社 / 2011年8月 新潮文庫
    • 収録作品:アカペラ / ソリチュード / ネロリ
  • カウントダウン(2010年10月 光文社 / 2016年12月 角川文庫) - コバルト文庫の『シェイクダンスを踊れ』を改題・大幅加筆・修正したもの
  • なぎさ(2013年10月 KADOKAWA / 2016年6月 角川文庫)
  • 自転しながら公転する(2020年9月 新潮社 / 2022年11月 新潮文庫)
  • ばにらさま(2021年9月 文藝春秋 / 2023年10月 文春文庫)

エッセイ[編集]

  • かなえられない恋のために(1993年12月 大和書房 / 1997年6月 幻冬舎文庫 / 2009年2月 角川文庫)
  • そして私は一人になった(1997年5月 KKベストセラーズ / 2000年8月 幻冬舎文庫 / 2008年2月 角川文庫)
  • 結婚願望(2000年5月 三笠書房 / 2003年11月 角川文庫)
  • 日々是作文(2004年4月 文藝春秋 / 2007年4月 文春文庫)
  • 再婚生活(2007年5月 角川書店)
    • 【改題】再婚生活―私のうつ闘病日記(2009年10月 角川文庫)
  • 無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記(2022年10月 新潮社)

共著[編集]

アンソロジー[編集]

「」内が山本文緒の作品

  • LOVE SONGS(1997年12月 幻冬舎 / 1999年4月 幻冬舎文庫)「これが私の生きる道」
  • 短篇ベストコレクション 現代の小説2000(2000年5月 徳間文庫)「また夢をゆく」
  • 短編復活(2002年11月 集英社文庫)「いるか療法」
  • 君へ。―つたえたい気持ち三十七話(2004年3月 ダ・ヴィンチ文庫)「試行錯誤はまだまだ続く」
  • 鉄路に咲く物語(2005年6月 光文社文庫)「ブラック・ティー」
  • 作家の放課後(2012年2月 新潮文庫)「一週間で痩せなきゃ日記」
  • 文芸あねもね(2012年2月 新潮文庫)「子供おばさん」

オーディオブック[編集]

メディア・ミックス[編集]

テレビドラマ[編集]

映画[編集]

アニメ[編集]

舞台[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 直木賞作家の山本文緒さんが死去 「恋愛中毒」、「プラナリア」”. 共同通信. 共同通信社 (2021年10月18日). 2021年10月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月11日閲覧。
  2. ^ a b c d e 「プラナリア」で直木賞、山本文緒さん死去…58歳”. 読売新聞オンライン. 読売新聞社 (2021年10月18日). 2022年3月11日閲覧。
  3. ^ a b 山本文緒(インタビュアー:残間里江子)「シリーズインタビュー「生きる力」 第九回 山本文緒さん(作家)」『こころの耳(厚生労働省)』、厚生労働省、2010年11月https://kokoro.mhlw.go.jp/column/intv009/2022年3月11日閲覧 
  4. ^ a b 直木賞作家、山本文緒さんが死去 58歳 「プラナリア」など”. 毎日新聞. 毎日新聞社 (2021年10月18日). 2022年3月11日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h 【プロフィール】山本文緒インフォメーション”. 山本文緒オフィシャルサイト 旧ホームページ. 2021年1月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月26日閲覧。
  6. ^ a b c d “山本文緒さんが死去 直木賞作家”. 産経新聞 (産経新聞社). (2021年10月18日). https://www.sankei.com/article/20211018-4YDQCCKITBOBZC4WUOV353HPLM/ 2022年3月11日閲覧。 
  7. ^ a b 山本文緒(インタビュー)「向き合って 作家・山本文緒さん(45)(上)」『ゆうゆうLife』、産経新聞社、2007年11月22日http://www.sankei.co.jp/yuyulife/mukiatte/200711/mkt071122001.htm2022年3月11日閲覧 
  8. ^ 鬱病から復帰の山本文緒氏「病前のことは遠い前世の出来事」”. マイナビニュース. マイナビ (2013年11月21日). 2022年3月11日閲覧。
  9. ^ a b c d 山本文緒(インタビュー)「山本文緒インタビュー 〜とらわれずに生きていく〜 『がんばらなきゃいけないのはこれからなんです』」『山本文緒オフィシャルサイト 旧ホームページより、蒼生 第三十六号』、早稲田大学 第一文学部 文芸専修室。 オリジナルの2021年1月26日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20210126061957/http://www001.upp.so-net.ne.jp/fumio/09_waseda_1.html2021年1月26日閲覧 
  10. ^ 山本文緒 [@fumioyamamoto] (2022年3月21日). "〈中略〉高座名は「則巻家あられ」、キーンなんてね。". Instagramより2022年11月23日閲覧
  11. ^ 山本文緒さん受賞 「自転しながら公転する」 島清恋愛文学賞決定 金沢学院大が主催”. 北國新聞デジタル. 北國新聞 (2021年5月18日). 2022年3月11日閲覧。
  12. ^ 小説新潮”. 新潮社. 新潮社. 2022年11月23日閲覧。 “【追悼エッセイ】ありがとう、山本文緒さん”
  13. ^ 山本文緒 『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』”. 新潮社. 新潮社. 2022年11月23日閲覧。
  14. ^ 桜井京子(新潮社)(インタビュアー:FRaU web新町真弓)「58歳で天国に旅立った直木賞作家・山本文緒さんが最後まで担当編集者に伝えたこと(FRaU編集部)」『FRaU - 現代ビジネス』、講談社、2頁、2022年12月28日https://gendai.media/articles/-/103901?page=22022年12月30日閲覧 
  15. ^ "松本穂香×藤原季節のドラマ「自転しながら公転する」3週連続で放送、長谷川慎らも出演(コメントあり)". 映画ナタリー. ナターシャ. 2023年11月16日. 2023年11月16日閲覧

外部リンク[編集]