山の手言葉
山の手言葉(やまのてことば)とは、東京の山の手で使われてきた日本語の方言。江戸言葉とともに東京方言を構成する。
江戸の上層武家が日常用いた言葉を基盤に、明治時代に成立した。日本語の標準語は中流階層の山の手言葉を母体として形成された。ただし、後述するように標準語との違いもあり東京弁とも言われる。
特徴
- 敬語表現が非常に発達している。現代の首都圏方言や共通語ではあまり使われない敬語表現(後述)がある。
- 江戸言葉のように[ai](アイ)や[oi](オイ)がそれぞれ[ɛ:](エー)になるような訛りは見られない。(例:ない→×ねえ、遅い→×おせえ)
- ガ行鼻濁音が存在する。東京方言のガ行鼻濁音に関する規範は、標準語教育に取り入れられたが十分に定着せず、現在の東京では鼻濁音の使用は衰退している。
- 江戸言葉ほど顕著ではないが、「ひ」と「し」の区別が曖昧になることがある。
代表的な表現
- ごきげんよう
- ざ(あ)ます
- あそばす
- 「遊ぶ」の未然形に尊敬の助動詞「す」が接続して成立した尊敬語。「ざます」と同様に「あそばせ言葉」(「あそばせ」は「あそばす」の命令形)とも呼ばれる。「おいであそばせ」(=いらっしゃい)「ごめんあそばせ」(=失礼しました・します)のように、多くは「お…あそばす」「ご…あそばす」の形で用いられる。
- 形容詞の丁寧語は「痛うございます」「危のうございます」のように「ウ音便連用形+ございます」が用いられる。
「山の手言葉」を駆使する人物を扱った主な戦後作品
映像作品
いずれも「〜ですの」といった女性版「山の手言葉」を頻繁に多用する。
- 紀行番組「兼高かおる世界の旅」- MCの一人として番組にレギュラー出演していた、兼高かおる。
- アニメ「魔法の妖精ペルシャ」 - 主人公「速水ペルシャ」。
- アニメ(およびゲームソフト)「サクラ大戦」シリーズ - 主要ヒロインの一人「神崎すみれ」。
- アニメ「とある」シリーズ - 主要ヒロインの一人「白井黒子」。
書籍作品
- コミックス「ねえ、ぴよちゃん」 - 主要登場人物の一人(主人公の友人)「蘭ひみこ」。
主な話者著名人
脚注
文献
- 加藤ゑみ子『お嬢さまことば速修講座』ディスカヴァー・トゥエンティワン、ISBN 9784887591233