ZELDA (バンド)

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小嶋さちほから転送)
ZELDA
出身地 日本の旗 日本
ジャンル ロック
実験音楽
ポストパンク
ニュー・ウェイヴ(初期)
ワールドミュージック(後期)
活動期間 1979年 - 1996年
レーベル ジャンク・コネクション
日本フォノグラム
CBS・ソニー
Cutting edge
共同作業者 モモヨ(LIZARD
白井良明
佐久間正英
旧メンバー 小嶋さちほ(ベース)
高橋佐代子(ボーカル)
鈴木洋子(ギター)
石原富紀江(ギター)
本村直美(ギター)
野沢久仁子(ドラムス)
小澤亜子(ドラムス)
ケイ(ボーカル)
トヨ(シンセサイザー)

ZELDA(ゼルダ)は、1980年代から1990年代にかけて活躍していた日本ロックバンドパンクニューウェイヴポップスファンクブラックミュージック、そしてルーツ・ミュージックと多才な音楽性を示し、ガールズバンドのパイオニアとして次世代バンドに影響を与えた[1]

バンド名は、アメリカ小説家F・スコット・フィッツジェラルドの妻、ゼルダ・フィッツジェラルドにちなむとのこと[2]1979年結成、1996年解散。「もっとも長く活動した女性ロックバンド」としてギネスブックにも掲載されている。

来歴[編集]

1979年、BOYS BOYSのベーシスト小嶋さちほを中心に結成。新宿ロフトで初ライブを行う。初代メンバーは、小嶋(ベース)以外に、ケイ(ボーカル)、鈴木洋子(ギター)、野沢久仁子(ドラムス)、トヨ(シンセサイザー)の五人であったが、すぐにケイとトヨが脱退[3]

1980年3月、小嶋が発行していたミニコミ『チェンジ2000』に出したメンバー募集に応募してきた高橋佐代子がボーカルとして加入する。二人が最初に会ったのはストラングラーズの来日公演である。当時中学生であった高橋は上下黒づくめの服であったと小嶋は後のインタビューで述べている。同年12月、インディーズ・レーベルのジャンク・コネクションより1stシングル『ASH-LAH』をリリース。

1981年ソノシート『ZELDA』をリリース。メジャー・デビュー1982年8月25日、日本フォノグラム(後のマーキュリー・ミュージックエンタテインメント。現在はユニバーサルミュージックK.K.に吸収)より、1stアルバムZELDA』とシングル『ミラージュ・ラヴァー』を同時リリース。プロデュースはLIZARDのモモヨ[4]。なお、この時のメンバーは小嶋、高橋、鈴木、野沢の4人であった。

ZELDAの結成当時は、1970年代末から1980年代前半にかけて東京で発生したパンク・ロックムーブメント「東京ロッカーズ」のバンドの一つとみなされていた。1980年代に入るとガールズバンドブームが起きてZELDAはその先駆者として注目され、同時期に活動した水玉消防団、タンゴ・ヨーロッパパパイヤパラノイア、キャ→などの女性ニュー・ウェイヴバンドと共に、音楽雑誌や『宝島』などのサブカルチャー雑誌で取り上げられることが多くなる。

1983年に、ギターが鈴木から石原富紀江、ドラムが野沢から小澤亜子(ex.新●月)に交替。石原はハードロック出身であるにもかかわらずテクニック面では「ヘタウマ」であったが、これが当時のZELDAの雰囲気に適合した。また石原のハーモナイザーを使用した独特のキラキラした音色と、インド音階を上手に組み合わせた中近東的なソロは、現在でも革新的である(ライブ・アルバム『Dancing Days』で堪能できる)。そしてジャパンスティーヴ・ジャンセンを師と仰ぐ[5]小澤は、ロックバンドのドラマーには珍しく16ビートを基調とした端正かつタイトなドラミングであり、ミュージックシーケンサーの操作やシンセサイザーの音色作りにも習熟していた。

メンバー交代を経て1983年、ムーンライダーズ白井良明をプロデューサーに、武川雅寛などムーンライダーズ関連の人脈から多彩なゲストを迎え、2ndアルバム『CALNAVAL』をリリース。ZELDAはニュー・ウェイヴバンドとして不動の地位を築いた。

1984年には小嶋、高橋のコアメンバー2人が別ユニット招き猫カゲキ団」としても活動開始し、同年9月にテレグラフ・レコードからアルバム『第一歌曲集』をリリース。昭和レトロ懐メロ童謡・唱歌の要素を取り入れたアコースティック・ユニットで、聞き手に緊張を強いた当時のZELDAとは対極をなす脱力系の曲調であった。

1985年に所属レコード会社をCBS・ソニー(現:ソニー・ミュージックレコーズ)に移籍。前作同様、白井良明プロデュースの3rdアルバム『空色帽子の日』をリリース。

1986年公開の映画『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』に、バンド・ZELDAとしてメンバー全員が出演。主題歌挿入歌を担当し、映画の中で歌唱。

1987年、元四人囃子佐久間正英をプロデューサーに迎え、4枚目のアルバム『C-ROCK WORK』をリリース。

1988年頃より、小嶋がファンクブラックミュージックに傾倒。プログレッシブ・ロック出身でもともと16ビートを叩いていたドラムの小澤はすんなり対応できたが、8ビートのハードロック出身であり「ヘタウマ」であった石原は適性を活かせないようであった(ライブではファンク特有の16ビートカッティングに苦渋する石原の姿が見られた)。同年、それにより音楽性を大きく転換して5枚目のアルバム『SHOUT SISTER SHOUT』をリリース。

1989年、前作以上にファンク・ブラックミュージック色を強めた6枚目のアルバム『D.R.O.P.』をリリース。

1990年、ギターの石原が脱退。これより約1年間活動を休止、この間に所属レコード会社がavex系のレーベル「cutting edge」に移る。

1991年、ギタリストとして本村直美が加入。世界の各種音楽要素をギターにより表現できる本村の加入により、ZELDAはワールドミュージックを基調とした伸び伸びした音楽に一転した。

1992年ジャマイカ録音の7枚目のアルバム『LOVE LIVE LIFE』をリリース。

1993年、プロデュースにサンディー&ザ・サンセッツの井上ケン一、ゲストにスライ・ダンバーイエローマンオーガスタス・パブロなどを迎えたジャマイカ録音の8枚目のアルバム『FULLMOON PUJAH』をリリース。

1996年、高橋がSAYOKO名義でソロ・アルバムをリリース。ZELDAとしては小嶋の沖縄生活などが反映された9枚目のアルバム『虹色のあわ』をリリースした。その後、同年に解散(活動を継続しないこと)を発表する。

メンバー[編集]

  • 小嶋さちほ (こじま さちほ、1958年12月26日 - )
  • 高橋佐代子 (たかはし さよこ、1964年10月10日 - )
  • 鈴木洋子 (すずき ようこ)
    • ギター
    • 愛称「ヨウコ」。アルバム『ZELDA』に参加。ZELDA脱退後、CLANにボーカル、ギタリストとして参加。
  • 石原富紀江 (いしはら ふきえ、1960年12月23日 - )
  • 本村直美 (もとむら なおみ)
    • ギター
    • 現在はエレクトリック・ギターのソロギタリストとして活動中。
    • 2013年にソロアルバム『whole』を発表。国内外でライブを行っている。
  • 野沢久仁子 (のざわ くにこ)
    • ドラムス
    • 愛称「マル」。ファンからは「マルさん」と呼ばれていた。アルバム『ZELDA』に参加。
  • 小澤亜子 (おざわ あこ、1963年2月16日 - )
  • ケイ
    • 初代ボーカル
    • ZELDA脱退後、PTA'Sにボーカルとして参加。
    • セカンドソノシート『New Songs』(1981年、クラゲイル・レコード)の発表後に脱退。
  • トヨ

ディスコグラフィー[編集]

カッコ内は発売日。

シングル[編集]

ジャンク・コネクション(インディーズ)
  • ASH-LAH (1980年10月10日)
アスピリン・レコード(インディーズ)
  • ZELDA (1981年2月) ※ソノシート
日本フォノグラム
CBS・ソニー
アルファレコード
cutting edge(当時は東芝EMIに販売委託)

アルバム[編集]

タイトルの横のカッコ内の日付は発売日。タイトルの下は収録曲一覧。

オリジナルアルバム[編集]

日本フォノグラム
  • ZELDA (1982年8月25日)
    エスケイプ / 真暗闇―ある日の光景― / 月光飛翔(ムーンライト・フライト) / ロボトメイア / 開発地区はいつでも夕暮れ / ミラージュ・ラヴァー / 密林伝説 / Ash-Lah / と・ら・わ・れ / ソナタ815
  • CARNAVAL (1983年11月5日
    うめたて / 私の楽団(オーケストラ) / サラブレッド(ソナタII) / Are You “Lucky”? ―ラッキー少年のうた / スローターハウス / 天鵞絨(ビロード)の島 / セイレーン / 東京TOWER / Z-JA-Z / 遊糸飛行
  • ZELDA〜CARNAVAL(1987年9月30日) ※カップリングアルバム(再発売)『ZELDA』から3曲カット
    真暗闇―ある日の光景― / ロボトメイア / 開発地区はいつでも夕暮れ / ミラージュ・ラヴァー / 密林伝説 / Ash-Lah / と・ら・わ・れ / うめたて / 私の楽団(オーケストラ) / サラブレッド(ソナタII) / Are You “Lucky”? ―ラッキー少年のうた / スローターハウス / 天鵞絨(ビロード)の島 / セイレーン / 東京TOWER / Z-JA-Z / 遊糸飛行
CBS・ソニー
  • 空色帽子の日 (1985年10月21日
    DEAR NATURAL / 自転車輪の見た夢 / FOOLISH GO-ER / FLOWER YEARS OLD / WATER LOVER / 湖のステップ(STEP ON THE LAKE) / 小人の月光浴 / 時折の色彩 / 無人号地・357 / ハベラス
  • C-ROCK WORK (1987年4月1日
    夜の時計は12時 / Electric Sweetie / 風の景 -Mind Sketch- / 時計仕掛けのせつな / ファンタジウム / Endless Line / Emotional Beach,Communication Party / Question-1 / MOO/六月はいつも魔の月 / アービルジョー
  • Dancing Days1988年6月22日) ※ライブ・アルバム
    Dancing Days / Question-1/ Are You “Lucky”? ―ラッキー少年のうた / Ash-Lah / 湖のステップ / 遊糸飛行 / 小人の月光浴 / 浴ビル情 / FOOLISH GO-ER / 黄金の時間
  • SHOUT SISTER SHOUT (1988年10月21日)
    Sky Bohemian / Manhattan Hole / 69times / Darling Missing / My Diamond Your Dynamite / Holiday Everyday / Black Boy Bad Baby / Planet News / Blue Desert / Dancing Days
  • D.R.O.P.1989年9月21日
    LAZY HEAD / MAGIQ MYSTIQ DISCOTIQ / MIDNIGHT WALK / WELCOME TO MY GARDEN / TUNING YOUR HEART / D.R.O.P. / LADY SADISTIC / HEAVY BABY / FRIENDS&LOVERS / GOLDY まぶしい瞳
アルファレコード
  • LOVE LIVE LIFE (1992年10月21日)
    廻るい星(everybody everybody around&round) / BROTHER SUN SISTER MOON / JAHPANG島の娘 / MY LITTLE CRYING ―Jamaica Version / 天国と地獄のくりかえし / まやかし都の愚か者 / 宇宙の河をゆく2つの小舟 / KARMA NO.8 / MAMAREAJA / LOVE LIVE LIFE / MY LITTLE CRYING(Single Version)
  • Jahpang Stylee - Love Live Life Mix (1993年4月21日)
    Love Live Life (We Be Mix) / Mamareaja (Dub Mamareaja Mix) / Jahpang To No Musume (Ragga Taiko Mix) / Karma No.8 (Version) / Maarui Hoshi (Round Around Mix) / Mayakashi Miyako No Orokamono (Rocky Mix) / Pump Up! From Fareast (Dancing Dayz III) / Uchu No Kawao Yuku Futatsu No Kobune (Bongo Bingi Mix)
  • FULLMOON PUJAH (1993年10月21日)
    PUJAH PONG! / 印度の夢 / シャンティ シャンティ / 冷たくしないで / 愛の奇蹟 / ETERNAL LAND / LOVE FAMILY / OM Song / SAYONARA(I Am Your Missing Girl) / 七つの世界のかけら
Cutting edge
  • 虹色のあわ (1996年5月2日)
    AWA / おお神様 / Tokyo Time / かなしくて / ぐるぐる(SISTER DRUM) / 赤田首里殿内 / 金木犀 / フラチ・ライフ / 水をくれ / 涙の河 / touch the light of my soul 〜魂の光にふれて〜 / 冷たくしないで

ベスト・アルバムなど[編集]

Sony Music House Inc.
  • GOLDEN☆BEST/ZELDA-time spiral (2003年3月19日)
    • ベスト・アルバム。アルバムタイトルは、新作→旧作の順に年代を遡るように収録されていることから。
    [Disc 1]AWA / 金木犀 / 冷たくしないで / LOVE LIVE LIFE / MAGIQ MYSTIQ DISCOTIQ / WELCOME TO MY GARDEN / FRIENDS & LOVERS / Sky Bohemian / Dancing Days / Question-1 / ファンタジウム / 浴ビル情
    [Disc 2]黄金の時間 / 彼の人 / BEAUTIFUL RAIN / DEAR NATURAL / 自転車輪の見た夢 / 湖のステップ/STEP ON THE LAKE / 小人の月光浴 / 時折の色彩 / FOOLISH GO-ER / スローターハウス / と・ら・わ・れ / SONATE815 / ASHU-LAH
  • ZELDA 1985-1990(2014年3月24日)[6]
    • 「オーダーメイドファクトリー」から予約限定販売された、CBSソニー時代の音源をリマスターしたボックスセット。CD5枚+DVD1枚組。価格は16,500円(税込、送料無料)[6]
    [Disc 1]『空色帽子の日』 ボーナス・トラック:黄金の時間(12inch version)、彼の人
    [Disc 2]『C-ROCK WORK』 ボーナス・トラックなし
    [Disc 3]『DANCING DAYS』 ボーナス・トラックなし
    [Disc 4]『SHOUT SISTER SHOUT』 ボーナス・トラックなし
    [Disc 5]『D.R.O.P.』 ボーナス・トラックなし
    [Disc 6]DVD『Dancing Days +Clips』ボーナス・クリップ:VIDEO JAM(「空色帽子の日」告知)/ 時折の色彩(Video Clip)/「D.R.O.P.」告知コメント / MIDNIGHT WALK(Video Clip)
いぬん堂(インディーズ)
  • はじまりのゼルダ 最初期音源集1980-1982(2019年4月20日)
    • メジャー・デビュー直前までのライブ音源、インディーズ時代のEP『Ash-Lah』3曲、ソノシート『ZELDA』3曲を収録。
    [Disc 1]Ash-Lah / ソナタ815 / BE-POP / とまればまたくる / アヴァンブラ / E=MC2 / WHY DON’T YOU? / PARADOX / つれてってよ / WHITE LIGHT WHITE HEAT(カプセルベイビー) / 密林 / Ash-Lah(another version) / 灰スクール(灰色少年original version) / MERCY / +α / マッチングシュール / MACKINTOSH-POPOUT / 灰色少年
    [Disc 2]PLEASURE GROUND / アメリカナイズ / まっくら / E=MC2(another version) / ワルツ / シャンソニエ / クラリネット / ソナタ815(another version) / MACKINTOSH-POPOUT(another version) / 問1 / スイッチひとつで / とらわれ / 黒い華 / 開発地区はいつでも夕暮れ / マリアンヌ / ハベラス / うめたて / 野性のポケット / Z-JA-Z / スローターハウス

ビデオ[編集]

映画出演[編集]

関連書籍[編集]

カバー[編集]

COTTON CLUB
  • American Express presents InterFM897×COTTON CLUB THE ROOTS OF MUSIC 森高千里(2015年12月12日開催)[7]
    • アーティストが自身のルーツ・ミュージックをテーマにカバーソングも演奏するライブシリーズ。オリジナルアルバム『CARNAVAL』収録の「東京TOWER」のカバーが森高千里のドラムとボーカルにより演奏された。この演奏については森高千里のオフィシャルYouTubeチャンネルにて視聴可能である。
LAZY ART
  • FUTURETRON RECYCLER(2019年9月25日発売)

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 日本のガールズバンドのパイオニアZELDAによる国産ニューウェイブの最高傑作『空色帽子の日』 OKMusic、JAPAN MUSIC NETWORK、2014年4月16日、2021年10月22日閲覧。
  2. ^ 『GOLDEN☆BEST/ZELDA-time spiral』(2003年)付属のブックレット、p.5より
  3. ^ 雑誌『MUNION SPECIAL EDITION 日本のパンクロック』(1982年発行)より。
  4. ^ 篠原章『J-ROCKベスト123 1968-1996』249頁、講談社文庫講談社、1996年。
  5. ^ 雑誌『キーボードスペシャル』創刊号より。
  6. ^ a b オーダーメイドファクトリー ZELDA 1985-1990 Sony Music Shop、2014年、2022年5月5日閲覧。
  7. ^ 【LIVE REPORT】Vol.1 森高千里 - American Express presents THE ROOTS OF MUSIC)、2023年10月8日閲覧

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]