宮田一郎

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宮田 一郎(みやた いちろう)は、森川ジョージ漫画作品およびそれを原作とするアニメ『はじめの一歩』に登場する架空の人物。アニメ版での声優関智一、少年時代は田野恵。ドラマCD版では檜山修之、少年時代はくまいもとこ

人物

川原ボクシングジム所属のプロボクサー。本作の主人公幕之内一歩の目指す最大の目標でありライバル。現東洋太平洋フェザー級チャンピオン、WBC同級5位(単行本103巻現在)。戦績は25戦23勝1敗1引き分け21KO。生年月日は1973年8月27日。身長172cm。血液型はA型。

体格でいえばライト級がベストなのだが、一歩と戦うことにこだわりフェザー級に留まり毎試合「魂を切り売りするような」とまで言われる無茶な減量と、休養のない合間で試合を行っていた。

経歴

元は鴨川ボクシングジム所属であったが、一歩とのスパーリングで敗北したのを機に彼をライバルとして認め、川原ジムに移籍(同門では試合が出来ないため)。その後、順当に勝ち進むが、東日本新人王トーナメント準決勝の間柴了戦で内容的には圧勝していたにも関わらず間柴の故意の反則から形勢を覆され敗退。武者修行のためアジア各地を渡り歩く。一歩を強烈に意識しながら練習を積み、ほぼアウェー状態の中、1年間で11戦10勝8KO1分という記録を手みやげに帰国。東洋太平洋タイトルマッチで王者のアーニー・グレゴリーを倒し、東洋太平洋フェザー級チャンピオンとなる。その後の防衛戦で両拳を粉砕骨折し長期離脱。その間、同級1位のランディー・ボーイ・Jr.が暫定王者となるが、復帰後の統一戦で勝利した。

ファイトスタイル

自分からインファイトに持ち込むラッシュ力をもっているが耐久力とパワーに欠けるため基本的にはアウトボクサーである。構えとしてはヒットマンスタイルを用いる。「目の前から身体ごといなくなる」と言われる程のスピードと、絶妙のタイミングで繰り出される芸術的なカウンターを武器にし、電光石火のスタイルから一歩の「風神」に対して「雷神」としばしば称される。特にカウンターに関して相当強いプライドを持っており、OPBF東洋太平洋タイトル戦で、アーニー・グレゴリーの「ブラッディ・クロス」でカウンターが破られたときには「プライドを根こそぎなぎ倒された気分だ」とレフェリーによってカウントが行われていたにもかかわらずグローブでリングを叩きつけながら悔しがっている。鷹村守をして「ディフェンス・テクニックだけなら俺より上」と言わせたステップワークは見る者全てを魅了する。非力でパンチの質が軽く打たれ弱い体質という弱点があるが、最大の弱点は減量苦によるスタミナの無さで、中盤以降は足も止まり、苦戦を強いられることが多い。

冷静に試合展開を読む戦術眼も優秀だが、その一方、たとえ打ち合うことになっても一歩も引かずに同じ土俵で勝負しようとする程、気が強く負けず嫌い。パンチの軽さを克服すべく東南アジア遠征時に体を投げ出すように放つ捨て身のジョルトカウンターを身につけるが、帰国後に鷹村からインパクトの瞬間体が開くジョルトの欠点を指摘され、背筋力を内側に集約しコンパクトに鋭く打ち抜くカウンターのアドバイスを受けた。これは本来、一歩戦を想定して開発していたものだったが、父を引退に追い込んだ男の息子で両利き(スウィッチヒッター)のランディー・ボーイ・Jr.との王座統一戦を優先したことで、一歩と距離をおく決意を固めたことを伝えるため、あえて骨折明けの復帰戦で手の内を披露した。

性格

普段のそっけないほどの冷静さや華麗なボクシングスタイルと異なり、実際にはかなり短気かつ不器用で熱くなりやすい性格であり、釣りをしたときもなかなかうまく釣れずにムキになり、脇で「貴様もボクシング以外はまるでダメな口だな」とバカにする鷹村にパンチを放ったことがある。勝利の際に軽く微笑むことはあったが普段は大抵厳しい表情である。整った顔立ちでファッションセンスも抜群であることから女性人気も非常に高い(キャラクター人気投票では常に上位にランクされる)[要出典]。しかし今まで作中で女性とのロマンスが描かれたことは一度もない。

幼少の頃に鴨川ジムの門を叩いたため、学生時代に鴨川にスカウトされた鷹村より入門は先であり、新人時代の鷹村が問題を起こさないよう見張り役をしていたこともある。年齢の為プロライセンス取得が鷹村よりも遅かったため鷹村には後輩扱いされているが「ジムでは自分の方が先輩」と内心思うことはあっても特に口に出すことはなく、後輩扱いを嫌がっている様子もない。

ジム移籍後もかつての同門・木村達也の間柴との日本タイトル挑戦時にはスパーリング・パートナーを務めたり、鷹村に眼の疾患の疑いがかかったときも本気で心配していたように、鴨川ジムのメンバーなど1度深い関わりを持った者には情に厚く接する。特に鷹村に対しては「鷹村だけには心を開いている」と父親が評するほど先輩としても兄貴分としても強い敬意を抱いている。網膜剥離疑惑の件では干渉を控え一歩に後を託しているが、一歩が簡単な確認だけで医師の診察に行かせなかったことを取り乱し責めるほど鷹村を心配していた。

宮田の勝利によりタイトルを失ったことで関係者に見放された元王者アーニー・グレゴリーを気遣って控え室を訪ねるなど、表のイメージとは裏腹に他者に対して感傷的な顔を持つ。アジア諸国転戦中に理不尽なジャッジに苦しめられた為、地元選手を優遇しアウェイ選手に不利な判定を下すホームタウンデシジョンには否定的であり、日本を主戦場とするヴォルグの苦境に共感を示していた。間柴からお坊ちゃん扱いされるなど華やかな雰囲気を纏い苦労知らずのエリートなイメージがあるが、幼少期は過酷であり高校生から親元を離れ自活している苦労人である。

東洋太平洋タイトルに挑戦した時から「ビジネスを邪魔された」と、金に盲信するプロモーターMr.サカグチと因縁が生まれる。その執念の前に、結果的には一歩との約束の試合を諦めざるを得なくなった。別の意味で宮田親子の宿敵ともいえる。

オーストラリア人であるアーニー・グレゴリーと通訳無しで会話したことから、かなりのレベルの英会話を身につけているようである。海外遠征でフィリピン、タイ、韓国に滞在しており、ランディー・ボーイ・Jr.の言葉がすぐにタガログ語であると分かったり、メッガン・ダッチボーイの言葉を聞き取るなど複数の外国語を理解している。武者修業時代はタイ語が出来なかったので、その後覚えたようである。

父親

父は元鴨川ジム所属のプロボクサーであり、世界を嘱望され東洋太平洋チャンピオンまで上り詰めた有望なアウトボクサーだったが、7度目の東洋太平洋タイトル防衛戦で相手に顎を砕かれ、敗戦のショックと自分の非力さに限界を感じてそのまま引退。妻に離別され以後は自堕落な生活に陥り幼い息子にまで辛くあたっていたが、ある時息子の中に自分以上の才能を見出し立ち直る。宮田は憧れていた父が負けた途端に母をはじめ多くの人が去っていったことへの悔しさから、父のボクシングスタイルが間違っていないことを証明するためボクサーを目指すようになる。引退後、父は専属トレーナーとして毎試合セコンドについており、全幅の信頼を寄せている。

得意技

カウンター
宮田がもっとも得意とする技。相手のパンチに向かって飛び込んでゆくような、攻撃的なカウンターを好む傾向にある。
本人曰く、カウンターに必要なのは、タイミングと勇気(ハート)。
JOLTのカウンター
パンチの軽さを克服するために編み出したカウンター。ジョルトブローを応用して、全身を叩き付けるように打つ。繰り出すときは、前足に体重をのせた前傾姿勢をとる。
相手を一撃でKOできるほどの威力を持つ反面、失敗したときのリスクも大きい。
クロスカウンター
アーニー戦では序盤、相手がカウンターを警戒していたにもかかわらずその鋭さと切れでダウンを取った。相手の左に右を被せる形のクロスカウンターが多く見られる。
コーク・スクリューブローのカウンター
ランディー戦で咄嗟に放った、拳を大きく捻り加速させた右のクロスカウンター。その速度は尋常ではなく「音が後から聞こえた」「音速を超えた光速の拳」とまで言われるほど。
見えないパンチ
「見えないカウンター」「究極のカウンター」「究極のパンチ」とも。相手の意識の外から打つカウンター。
沢村によれば、その状況を作り出す力量、相手の急所に正確に打ち込む度胸と技量、相手のパンチを読む洞察力が高い次元で揃ってないと成立しない。実戦で繰り出すのは極めて難しいパンチだが、宮田はランディー戦で狙って使用した。

モデル等

作者によればファイトスタイルのモデルは実在するプロボクサーのシュガー・レイ・レナード[1]。作中でも尊敬するボクサーとして名前を挙げている。高橋ナオトがモデルと答えたことも[2]。また、間柴との試合は「シュガー・レイ・レナード対トーマス・ハーンズ」の試合がモデルとなっている[3]

当初は一歩とスパーリングをするだけで終わる嫌味な脇役のつもりで出したが、予想外に読者に人気が出たために結果として主人公のライバルとなったと語っており、重要キャラのわりに名前が地味なのはそのせいである。[4]。初期のころの顔は、当時のドラマで嫌な男の役を演じていた俳優の吉田栄作をモデルにして描いたという[5]

脚注

  1. ^ 別冊宝島四〇九号「ザ・マンガ家」212-215ページ。
  2. ^ 講談社『はじめの一歩&栄光のチャンピオンの勝つ方程式』57ページ。
  3. ^ 講談社『はじめの一歩&栄光のチャンピオンの勝つ方程式』155ページ。
  4. ^ 『週刊少年マガジン』2012年16号ロングインタビュー記事
  5. ^ 『はじめの一歩 公式ガイドブック』 137ページ。